IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 池田 龍二の特許一覧

特許7100349プログラム、情報処理装置及び情報処理方法
<>
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図1
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図2
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図3
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図4
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図5
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図6
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図7
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図8
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図9
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図10
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図11
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図12
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図13
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図14
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図15
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図16
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図17
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図18
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図19
  • 特許-プログラム、情報処理装置及び情報処理方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20220706BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20220706BHJP
【FI】
G06Q40/02
G06Q50/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018047067
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019159935
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518089311
【氏名又は名称】池田 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍二
【審査官】後藤 昂彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/059580(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/178956(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/205902(WO,A1)
【文献】特開2017-156976(JP,A)
【文献】国際公開第2017/095833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
不動産を特定する不動産情報及び前記不動産に対する評価額情報を取得し、
前記評価額情報に基づき仮想通貨量を算出し、
前記不動産の所有者のウォレットアドレスを取得し、
前記ウォレットアドレス宛とし、前記仮想通貨量及び前記不動産情報に関する情報を含むトランザクションをブロックチェーンへ送信し、
前記不動産を譲渡する場合に、付与した前記仮想通貨量に相当する仮想通貨量を返却するスマートコントラクトを含む前記トランザクションを前記ブロックチェーンへ送信する
処理を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記不動産情報、前記評価額情報及び前記仮想通貨量を記憶する
処理を実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記不動産情報のハッシュ値を算出し、算出したハッシュ値を前記トランザクションに含ませる
処理を実行させる請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記スマートコントラクトは、前記仮想通貨量を発行した支払い者の電子署名が記入された場合に、
前記不動産の所有者から前記仮想通貨量に相当する仮想通貨を前記支払い者に返却する処理が実行されるコードを含む
処理を実行させる請求項1から3までのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項5】
前記仮想通貨量を法定通貨と等価又は市場の変動価格により算出する
処理を実行させる請求項1からまでのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項6】
前記トランザクションに係る取引手数料を所定の基準により算出し、
算出した前記取引手数料の額に相当する仮想通貨を前記仮想通貨量から差し引く
処理を実行させる請求項1からまでのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
不動産に対する評価額情報に基づいて算出された仮想通貨量を受け取るウォレットアドレスを取得し、
ブロックチェーンに送信された前記仮想通貨量及び前記不動産を特定する不動産情報に関する情報を含むトランザクション、並びに前記ウォレットアドレスに基づいて前記仮想通貨量を取得し、
前記不動産を譲渡する場合に、取得した前記仮想通貨量に相当する仮想通貨量を返却するスマートコントラクトを含む前記トランザクションを前記ブロックチェーンから取得する
処理を実行させるプログラム。
【請求項8】
前記仮想通貨量に対応する前記不動産情報及び前記評価額情報を取得し、
前記仮想通貨量ごとに、取得した前記不動産情報及び前記評価額情報を表示する
処理を実行させる請求項に記載のプログラム。
【請求項9】
不動産を特定する不動産情報及び前記不動産に対する評価額情報を取得する取得部と、
前記評価額情報に基づき仮想通貨量を算出する算出部と、
前記不動産の所有者のウォレットアドレスを取得する第2取得部と、
前記ウォレットアドレス宛とし、前記仮想通貨量及び前記不動産情報に関する情報を含むトランザクションをブロックチェーンへ送信する送信部とを備え、
前記送信部は、前記不動産を譲渡する場合に、付与した前記仮想通貨量に相当する仮想通貨量を返却するスマートコントラクトを含む前記トランザクションを前記ブロックチェーンへ送信する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
不動産を特定する不動産情報及び前記不動産に対する評価額情報を取得し、
前記評価額情報に基づき仮想通貨量を算出し、
前記不動産の所有者のウォレットアドレスを取得し、
前記ウォレットアドレス宛とし、前記仮想通貨量及び前記不動産情報に関する情報を含むトランザクションをブロックチェーンへ送信し、
前記不動産を譲渡する場合に、付与した前記仮想通貨量に相当する仮想通貨量を返却するスマートコントラクトを含む前記トランザクションを前記ブロックチェーンへ送信する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
不動産を特定する不動産情報及び前記不動産に対する評価額情報を取得し、
前記評価額情報に基づき仮想通貨量を算出し、
前記不動産の第1所有者のウォレットアドレスを取得し、
前記ウォレットアドレス宛とし、前記仮想通貨量及び前記不動産情報に関する情報を含むトランザクションをブロックチェーンへ送信し、
前記不動産を譲渡する場合に、前記不動産の譲渡先となる第2所有者のウォレットアドレスを取得し、
前記第2所有者のウォレットアドレス宛とし、前記第1所有者に発行済仮想通貨量を含むトランザクションを前記ブロックチェーンへ送信する
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不動産の売却においては、不動産所有者は不動産会社又は不動産仲介会社に売却を依頼することができる。また、インターネット等のネットワークを介して不動産の売却を実施することも可能である。特許文献1には、不動産売買に関わる様々なユーザにとって有用な情報を提供するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/009682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、物件又は地域等により売却が困難な不動産について、売却するまでに時間を要することが多い。これに伴い、生活又は事業等の置かれている状況が急激に変化することで資金調達が必要となる場合に、柔軟に対応することができないという問題がある。
【0005】
本発明は斯かる事情によりなされたものであって、その目的とするところは、不動産の担保権と連動して、法定通貨と相互交換可能な仮想通貨を迅速に発行することが可能なプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、コンピュータに、不動産を特定する不動産情報及び前記不動産に対する評価額情報を取得し、前記評価額情報に基づき仮想通貨量を算出し、前記不動産の所有者のウォレットアドレスを取得し、前記ウォレットアドレス宛とし、前記仮想通貨量及び前記不動産情報に関する情報を含むトランザクションをブロックチェーンへ送信し、前記不動産を譲渡する場合に、付与した前記仮想通貨量に相当する仮想通貨量を返却するスマートコントラクトを含む前記トランザクションを前記ブロックチェーンへ送信する処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不動産の担保権と連動して、法定通貨と相互交換可能な仮想通貨を迅速に発行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】不動産担保権連動型仮想通貨の発行及び運用システムの概要を示す説明図である。
図2】サーバの構成例を示すブロック図である。
図3】所有者情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図4】不動産情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図5】評価額情報DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図6】管理DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図7】電子署名DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図8】端末の構成例を示すブロック図である。
図9】仮想通貨の発行処理の動作を説明する説明図である。
図10】発行された仮想通貨量ごとの不動産情報及び取引情報を表示するイメージ図である。
図11】仮想通貨の発行の処理手順を示すフローチャートである。
図12】仮想通貨の発行の処理手順を示すフローチャートである。
図13】ウォレットアドレスの作成のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
図14】スマートコントラクトを含む不動産の担保権連動型仮想通貨の発行及び運用システムの概要を示す説明図である。
図15】スマートコントラクトを含む仮想通貨の発行の処理手順を示すフローチャートである。
図16】不動産が譲渡される際に発行済仮想通貨の自動返却の処理手順を示すフローチャートである。
図17】マルチシグ対応のスマートコントラクトを含むトランザクション処理の概要を示す説明図である。
図18】不動産が譲渡される際に発行済仮想通貨量の継承処理の概要を示す説明図である。
図19】不動産情報の更新の処理手順を示すフローチャートである。
図20】取引手数料の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、不動産担保権連動型仮想通貨の発行及び運用システムの概要を示す説明図である。本実施形態のシステムは、情報処理装置1、情報処理端末2、ブロックチェーン3、不動産4、小売店5、仮想通貨取引所6及び投資家7を含み、インターネット等のネットワークNを介して情報の送受信を行う。
【0011】
情報処理装置1は、不動産情報、取引情報等種々の情報処理、情報記憶及び情報送受信を行い、仮想通貨の発行及び運用等サービスを提供する情報処理装置であり、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。本実施形態において情報処理装置1はサーバ装置であるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。
【0012】
情報処理端末2は、不動産4の所有者に対する仮想通貨の受取、不動産情報及び取引情報等の表示を行う端末装置であり、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット、パーソナルコンピュータ端末等の情報処理機器である。以下では簡潔のため、情報処理端末2を端末2と読み替える。
【0013】
ブロックチェーン3は、分散型台帳技術又は分散型ネットワークである。ブロックチェーン3は、ブロック(ノード)と呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、鎖のように連結していくことによりデータを保管する。ブロックチェーン3は、ピアツーピア(Peer to Peer)ネットワークと分散型タイムスタンプサーバーの使用により自律的に管理される。鎖状に保存することによって、ブロック内のデータを一度記録した場合、該データを遡及的に変更することができない。なお、ブロックチェーン3は、パブリック型、プライベート型のいずれであっても良い。
【0014】
不動産4は、土地及びそれに定着する建物又は立ち木等である。不動産4に対して、売買、贈与及び担保権設定等の取引を行うことができる。小売店5は、法定通貨又は仮想通貨等により消費者と直接に品物を取引する店舗である。なお、本実施形態では、小売店5を図示したが、これに限るものではない。例えば、仮想通貨で決済が可能な百貨店、スーパーマーケット又はオンラインショップ等であっても良い。
【0015】
仮想通貨取引所6は、金融庁又は財務局に登録される仮想通貨交換業者である。仮想通貨取引所6は、仮想通貨の購入、売却又は交換等サービスを提供している。投資家7は、仮想通貨に投資する人、団体又は組織等である。例えば、投資家7は、法定通貨を仮想通貨に変え、資金を集めている運営会社に運用を委託し、売却益を得ることが可能となる。
【0016】
続いて、仮想通貨の発行及び運用の全体の流れを説明する。サーバ1は、不動産4を特定する不動産情報及び該不動産4に対する評価額情報を取得し、取得した評価額情報に基づき仮想通貨量を算出する。不動産情報は、例えば法務局により発行した登記事項証明書に記載された土地又は建物に関する登記事項である。評価額情報は、固定資産税を賦課するための基準となる固定資産税評価額である。固定資産税評価額は、例えば本人確認書類等を用いて、不動産4が所在する地域の行政機関に請求して取得することができる。サーバ1は、取得した不動産情報及び評価額情報を手入力により記憶しても良く、また紙文書を電子化して記憶しても良い。
【0017】
サーバ1は、評価額情報に基づいて算出された仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を含むトランザクションをブロックチェーン3に送信する。ハッシュ値に関しては後述する。ブロックチェーン3は、サーバ1から送信された仮想通貨量を端末2に送信することができる。発行された仮想通貨は、小売店5での商品購入に用いることができ、又は仮想通貨取引所6で法定通貨との交換取引に用いることもできる。更に、投資家7は、仮想通貨取引所6で法定通貨を仮想通貨に変え、仮想通貨を用いて小売店5で商品を購入することができる。
【0018】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、撮影部16、読み取り部17及び大容量記憶部18を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0019】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を含み、記憶部12に記憶された制御プログラム1Pを読み出して実行することにより、サーバ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。また、制御部11は、ハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bを含む。ハッシュ値算出部11aは、暗号学的ハッシュ関数を用いて各種情報のハッシュ値を算出する処理を行う。電子署名作成部11bは、偽造又は改ざんを防止するため、公開鍵暗号方式に基づくデジタル認証用の署名を生成する。なお、図2では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0020】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1P又はデータ等を記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための処理回路等を含み、ネットワークNを介して、端末2及びブロックチェーン3等との間で情報の送受信を行う。
【0021】
入力部14は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン等の入力デバイスであり、受け付けた操作情報を制御部11へ出力する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であり、制御部11の指示に従い各種情報を表示する。撮影部16は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等の撮影装置である。制御部11は、撮影部16によりQRコード(登録商標)等を認識することが可能となる。なお、撮影部16はサーバ1の中に内蔵せず、外部で直接にサーバ1と接続し、撮影可能な構成としても良い。その他の画像データは、図示しない他のコンピュータ又はスマートフォンのカメラで撮影したものを、サーバ1の通信部13を介して受信するようにしても良い。
【0022】
読み取り部17は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読み取り部17を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、大容量記憶部18に記憶しても良い。また、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、大容量記憶部18に記憶しても良い。さらにまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0023】
大容量記憶部18は、例えばハードディスク等を含む大容量の記憶装置である。大容量記憶部18は、所有者情報DB181、不動産情報DB182、評価額情報DB183、管理DB184及び電子署名DB185を含む。所有者情報DB181は、不動産4の所有者の個人情報を記憶している。不動産情報DB182は、例えば法務局により発行した登記事項証明書に記載された不動産4の関連情報を記憶している。評価額情報DB183は、不動産4に対する評価額情報を記憶している。管理DB184は、担保権を設定した不動産4に対して、評価額情報に基づいて算出された仮想通貨量及び取引情報等を記憶している。取引情報は、担保権が設定されている不動産4に対する仮想通貨量の発行日時、返却日時及び返済状況等の関連情報である。電子署名DB185は、公開鍵暗号方式に基づく電子署名用の公開鍵及び秘密鍵を記憶している。
【0024】
なお、本実施形態において記憶部12及び大容量記憶部18は一体の記憶装置として構成されていても良い。また、大容量記憶部18は複数の記憶装置により構成されていても良い。更にまた、大容量記憶部18はサーバ1に接続された外部記憶装置であっても良い。
【0025】
本実施形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば音を電気信号に変換するマイク、電気信号を音に変換するスピーカ等を含んでも良い。なお、本実施形態でサーバ1は単体のものとして説明するがこれに限るものではない。例えば物理的に複数のサーバにより構成されていても良く、また複数の仮想マシンにより構成されていても良い。
【0026】
図3は、所有者情報DB181のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。所有者情報DB181は、所有者ID列、所有者氏名列及び住所列を含む。所有者ID列は、各所有者を識別するために、一意に特定される所有者のIDを記憶している。所有者氏名列は、所有者の氏名を記憶している。所有者の氏名は、例えば戸籍法による氏と名を構成する。住所列は、所有者の現住所を記憶している。なお、所有者の現住所は、所有者の不動産4の登記の所在地と異なる住所であっても良い。
【0027】
図4は、不動産情報DB182のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。不動産情報DB182は、不動産番号列、所在地列、種類列、面積(平方メートル)列、登記の目的列、権利部列及び所有者ID列を含む。不動産番号列は、各不動産4を識別するために、一意に特定される不動産4の番号を記憶している。例えば、不動産番号は、行政機関により発行した登録事項証明書に記載された13桁の英数記号である。所在地列は、不動産4の所在地の住所情報を記憶している。種類列は、不動産4の種類情報を記憶している。不動産4の種類情報は、例えば宅地、居宅、農地、店舗又は賃地等である。面積(平方メートル)列は、不動産4の面積情報を記憶している。登記の目的列は、不動産4を登記する目的を記憶している。権利部列は、不動産4の所有権に関する記載事項を記憶している。
【0028】
図5は、評価額情報DB183のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。評価額情報DB183は、不動産番号列及び評価額(円)列を含む。評価額(円)列は、不動産4に対する評価額を記憶している。不動産4に対する評価額は、例えば地価公示価格の7割として算定することができる。なお、上述した算定例は一例であり、これに限るものではない。
【0029】
図6は、管理DB184のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。管理DB184は、管理ID列、不動産番号列、発行仮想通貨量(コイン)列、発行日時列、返却日時列及び状態列を含む。管理ID列は、不動産4ごとの管理タスクを識別するために、一意に特定される管理タスクのIDを記憶している。発行仮想通貨量(コイン)列は、不動産4に対する評価額情報に応じて算出された発行可能な仮想通貨量を記憶している。該仮想通貨量を法定通貨と等価により算出しても良く、または市場の変動価格により算出しても良い。発行日時列は、仮想通貨を発行した日時情報を記憶している。返却日時列は、仮想通貨を返却した日時情報を記憶している。状態列は、仮想通貨の借入及び返済等状況を記憶している。
【0030】
図7は、電子署名DB185のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。電子署名DB185は、電子署名ID列、公開鍵列、秘密鍵列及び管理ID列を含む。電子署名ID列は、各電子署名を識別するために、一意に特定される電子署名のIDを記憶している。公開鍵列は、公開鍵暗号における第3者に公開する鍵のデータを記憶している。秘密鍵列は、公開鍵暗号における第3者に公開しない鍵のデータを記憶している。
【0031】
なお、上述した各DBの記憶形態は一例であり、データ間の関係が維持されていれば、他の記憶形態であっても良い。
【0032】
図8は、端末2の構成例を示すブロック図である。端末2は、制御部21、記憶部22、通信部23、入力部24、表示部25及び撮影部26を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0033】
制御部21はCPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部22に記憶された制御プログラム2Pを読み出して実行することにより、端末2に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。また、制御部21は、ハッシュ値算出部21a及び電子署名作成部21bを含む。ハッシュ値算出部21aは、暗号学的ハッシュ関数を用いて、ウォレットアドレス等を算出する処理を行う。ウォレットアドレスに関しては後述する。電子署名作成部21bは、偽造又は改ざんを防止するため、公開鍵暗号方式に基づくデジタル認証用の署名を生成する。なお、図8では制御部21を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。記憶部22はRAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部21が処理を実行するために必要な制御プログラム2P又はデータ等を記憶している。また、記憶部22は、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0034】
通信部23は通信に関する処理を行うための処理回路等を含み、ネットワークNを介して、サーバ1及びブロックチェーン3等と情報の送受信を行う。入力部24は、キーボード又はマウスである。表示部25は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21の指示に従い各種情報を表示する。また、入力部24は表示部25と一体化したタッチパネルでも良い。撮影部26は、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ等の撮影装置である。なお、撮影部26は端末2の中に内蔵せず、外部で直接に端末2と接続し、撮影可能な構成としても良い。
【0035】
図9は、仮想通貨の発行処理の動作を説明する説明図である。図9に示すように、不動産4の所有者は担保権が設定されていない不動産4を所有し、該不動産4を担保として仮想通貨の運営又は発行会社から仮想通貨を借りることができる。以下では簡潔のため、仮想通貨の運営又は発行会社を支払い者と読み替える。
【0036】
サーバ1は、不動産4を特定する不動産情報及び該不動産4に対する評価額情報を取得し、大容量記憶部18に記憶する。不動産情報及び評価額情報は、例えば法務局により発行した登記事項証明書及び固定資産税評価証明書等に記載されている。不動産情報及び評価額情報が紙文書である場合、サーバ1の制御部11は、紙文書の内容に基づいてサーバ1の入力部14により、不動産情報の入力を受け付けても良い。また、紙文書が電子化され、USB(Universal Serial Bus)等の可搬型記憶媒体又は図示しない外部装置によりサーバ1に転送されても良い。本実施形態では、紙文書の電子化を行うPDF(Portable Document Format)文書の例に挙げて説明する。
【0037】
サーバ1の制御部11は、不動産情報及び評価額情報を記載されたPDFファイルを記憶部12に一時に読み込み、必要な情報を抽出する。PDFによりテキストの抽出処理に関しては、例えばApache(登録商標) PDFBoxライブラリーを用いて、テキスト情報を抽出することが可能となる。サーバ1の制御部11は、抽出したテキスト情報を分析し、大容量記憶部18に記憶する。
【0038】
具体的には、サーバ1の制御部11は、登記事項証明書により不動産4の所有者情報を取得し、所有者IDを振り、所有者氏名及び住所を一つのレコードとして所有者情報DB181に記憶する。制御部11は、登記事項証明書により不動産4を特定する不動産情報を取得し、所有者IDに対応付け、不動産番号、所在地、種類等不動産情報を一つのレコードとして不動産情報DB182に記憶する。また、制御部11は、固定資産税評価証明書により評価額を取得し、取得した評価額情報を不動産情報DB182の不動産番号に対応付け、評価額情報DB183に一つのレコードとして記憶する。
【0039】
サーバ1の制御部11は、記憶した評価額情報に応じて、発行可能な仮想通貨量を算出することができる。なお、発行可能な仮想通貨量を法定通貨と等価により算出しても良く、または市場の変動価格により算出しても良い。法定通貨と等価の算出方法を利用する場合、1仮想通貨は1法定通貨に相当する。市場の変動価格の算出方法を利用する場合、記憶部12に記憶された市場レートに基づき算出する。例えば、仮想通貨/法定通貨の市場レートが2の場合、1仮想通貨は2法定通貨に相当する。サーバ1の制御部11は、算出した仮想通貨量を不動産情報DB182の不動産番号に対応付け、大容量記憶部18の評価額情報DB183に一つのレコードとして記憶する。
【0040】
サーバ1のハッシュ値算出部11aは、暗号学的ハッシュ関数を用いて不動産情報のハッシュ値(不動産情報に関する情報)を算出することができる。暗号学的ハッシュ関数は、デジタル文書の改ざんを検出する一方向の暗号処理方法であり、出力値は常に16進数表記として64桁と固定されている。例えば、SHA(Secure Hash Algorithm)2-256アルゴリズムを用いたハッシュ関数を採用し、不動産情報のハッシュ値を算出しても良い。なお、ハッシュ化する不動産情報は不動産情報DB182の不動産番号のほか、不動産番号及び所在地等の組み合わせであっても良い。また不動産番号そのものを不動産情報に関する情報として送信しても良い。本実施形態では、ハッシュ関数を用いたが、これに限らず、他の暗号化方式であっても良い。
【0041】
続いて、サーバ1がブロックチェーン3を経由して端末2へ仮想通貨量を送信する流れを説明する。サーバ1の制御部11は、端末2のハッシュ値算出部21a及び電子署名作成部21bにより作成した不動産4の所有者のウォレットアドレスを、通信部13を介して取得する。ウォレットアドレスは、取引ごとに作成された仮想通貨用の口座番号であり、文字列又はQRコードとして表示する。ウォレットアドレスは、ブロックチェーン3で利用されている公開鍵暗号を基にして、数学的に導出されたアドレスである。また、送信元と送信先のウォレットアドレスは、ブロックチェーン3に記録され、ブロックチェーン3のシステムが維持し続ける限り改ざんされない。ウォレットアドレスは計算で生成されるため、オンライン又はオフラインでも作成することが可能となる。端末2のハッシュ値算出部21a及び電子署名作成部21bにより作成した不動産4の所有者のウォレットアドレスは、端末2の通信部23によりサーバ1に送信しても良く、また所有者により手渡しても良い。更にまた、サーバ1の制御部11は、サーバ1の撮影部16により不動産4の所有者のウォレットアドレスのQRコードを識別し、ウォレットアドレスを抽出しても良い。
【0042】
サーバ1のハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bは、仮想通貨を発行する支払い者の電子署名を含むウォレットアドレスを作成する。サーバ1の通信部13は、作成した支払い者のウォレットアドレスから、取得した不動産4の所有者のウォレットアドレス宛として、トランザクションをブロックチェーン3へ送信する。該トランザクションは、不動産4に対する評価額情報に応じて算出された仮想通貨量、及び不動産情報のハッシュ値を含む。端末2の通信部23は、ブロックチェーン3から送信された仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を所有者のウォレットアドレスで受信する。また、サーバ1の制御部11は、大容量記憶部18の不動産情報DB182により不動産情報を取得し、管理DB184により管理IDごとの取引情報を取得する。サーバ1の通信部13は取得した不動産情報及び取引情報を端末2に送信し、端末2の通信部23はサーバ1から送信された不動産情報及び取引情報を受信する。
【0043】
端末2の制御部21は、受信した仮想通貨量、不動産情報及び取引情報を端末2の表示部25により表示することができる。図10は、発行された仮想通貨量ごとの不動産情報及び取引情報を表示するイメージ図である。なお、発行された仮想通貨量ごとの不動産情報及び取引情報の表示方式に限らず、発行日時又は発行日時と仮想通貨量との組み合わせごとの不動産情報及び取引情報を表示しても良い。所有者が複数の不動産4に対する仮想通貨を取得した場合、制御部21は、発行された仮想通貨量を一覧表示する。端末2の制御部21は、端末2の入力部24によりタップ操作を受け付け、サーバ1から送信された管理IDに対応する取引情報を取得し、該取引情報に関連付けられた不動産情報を取得する。制御部21は、取得した不動産情報及び取引情報を端末2の表示部25を介して表示する。例えば、制御部21は、入力部24により「15884900」のタップ操作を受け付け、「15884900」仮想通貨量に対応する管理IDを基づいて不動産情報及び取引情報を取得し、表示部25により表示する。なお、不動産情報及び取引情報は上述した表示形式に限らず、例えば仮想通貨量のごとのタブメニューを作成し、タブメニューの切り替えの操作により、仮想通貨量に対応する不動産情報及び取引情報を表示しても良い。
【0044】
図11及び図12は、仮想通貨の発行の処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、不動産4を特定する不動産情報及び不動産4に対する評価額情報が記載されているPDFファイルを読み込む(ステップS101)。サーバ1の制御部11は、読み込んだPDFファイルの内容を分析し、不動産情報及び評価額情報を抽出する(ステップS102)。サーバ1の制御部11は、抽出した不動産情報を大容量記憶部18の所有者情報DB181及び不動産情報DB182に記憶し、評価額情報を大容量記憶部18の評価額情報DB183に記憶する(ステップS103)。サーバ1の制御部11は、抽出した評価額情報に基づき発行可能な仮想通貨量を算出する(ステップS104)。サーバ1の制御部11は、不動産番号に対応付け、算出した仮想通貨量を大容量記憶部18の管理DB184に記憶する(ステップS105)。具体的には、サーバ1の制御部11は、取引を管理するユニークな管理IDを振り、不動産番号と対応付け、発行仮想通貨量、発行日時及び状態取引情報を一つのレコードとして管理DB184に記憶する。
【0045】
サーバ1のハッシュ値算出部11aは、ハッシュ関数を用いて不動産情報のハッシュ値を算出する(ステップS106)。サーバ1の制御部11は、サーバ1の撮影部16により不動産4の所有者のウォレットアドレスを含むQRコードを取得する(ステップS107)。不動産4の所有者のウォレットアドレスを含むQRコードが、端末2のハッシュ値算出部21a及び電子署名作成部21bにより作成される(ステップS201)。サーバ1の制御部11は、取得したQRコードを読み込んで、不動産4の所有者のウォレットアドレスを抽出する(ステップS108)。サーバ1のハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bは、仮想通貨量を発行する支払い者のウォレットアドレスを作成する(ステップS109)。ウォレットアドレスの作成処理のサブルーチンに関しては後述する。サーバ1の通信部13は、支払い者のウォレットアドレスから不動産4の所有者のウォレットアドレス宛とし、仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を含むトランザクションをブロックチェーン3に送信する(ステップS110)。
【0046】
ブロックチェーン3は、サーバ1から送信された仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を含むトランザクションを受信する(ステップS301)。ブロックチェーン3は、受信した仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を含むトランザクション、並びに支払い者及び不動産4の所有者のウォレットアドレスを記録する(ステップS302)。ブロックチェーン3は、記録した仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を含むトランザクションを端末2に送信する(ステップS303)。
【0047】
端末2の通信部23は、ブロックチェーン3から送信された仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値を受信する(ステップS202)。サーバ1の通信部13は、発行済仮想通貨量の取引に対応する不動産情報及び取引情報を端末2に送信する(ステップS111)。端末2の通信部23は、サーバ1から送信された不動産情報及び取引情報を受信する(ステップS203)。端末2の制御部21は、端末2の表示部25により仮想通貨量ごとの不動産情報及び取引情報を表示する(ステップS204)。
【0048】
図13は、ウォレットアドレスの作成のサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の電子署名作成部11bは、疑似乱数列生成法により秘密鍵を生成する(ステップSa01)。疑似乱数列生成法は、模擬乱数列を生成するアルゴリズムであり、例えば暗号学的ハッシュ関数を用いて疑似乱数列を生成することが可能となる。サーバ1の電子署名作成部11bは、生成した秘密鍵を利用して公開鍵を生成する(ステップSa02)。例えば、ECDSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm)又はシュノア署名(Schnorr Signature)方式により秘密鍵から公開鍵を生成しても良い。サーバ1の制御部21は、生成した公開鍵及び秘密鍵を大容量記憶部18の電子署名DB185に一つのレコードとして記憶する(ステップSa03)。サーバ1のハッシュ値算出部11aは、公開鍵を暗号学的ハッシュ関数に通しハッシュ値を算出し取得する(ステップSa04)。サーバ1の制御部11は、取得したハッシュ値のエンコーディング処理を行い(ステップSa05)、ウォレットアドレスを生成し返却する(ステップSa06)。なお、ウォレットアドレスの作成処理に関しては、上述した処理方式に限らず、他のアルゴリズムを用いてウォレットアドレスを生成しても良い。
【0049】
本実施形態によると、支払い者はブロックチェーン3を介して、不動産4に対する評価額情報を基づいて算出された仮想通貨量を不動産4の所有者に発行することができる。これにより、不動産4の所有者は、生活又は事業等の置かれている状況が急激に変化することで資金調達が必要となる場合に、柔軟に対応することが可能となる。また、ブロックチェーン3を利用し、取引情報は過去の取引履歴と連鎖して保存されているため、取引情報の改ざんが難しく、信頼性が高い取引を実現することが可能となる。
【0050】
本実施形態によると、不動産4に担保権を設定して仮想通貨の発行及び運用を行うため、支払い者は損失リスク等を回避又は低減することが可能となる。
【0051】
(実施形態2)
不動産4が譲渡される場合、不動産4の所有者は、発行済仮想通貨量を支払い者に返却する義務を負う。仮想通貨の返却に関しては、例えば支払い者のウォレットアドレスを再取得し、再取得したウォレットアドレス宛とし発行済仮想通貨量に相当する仮想通貨を送信しても良い。又は、スマートコントラクトを利用して、不動産4が譲渡される際に、発行済仮想通貨量に相当する仮想通貨を自動的に支払い者のウォレットアドレスに返却させても良い。スマートコントラクトは、事前に執行条件及び契約内容の定義がプログラム化されてトランザクションに組み込まれ、執行条件及び契約内容に合致した取引が発生した場合、自動的に契約が履行される仕組みである。
【0052】
図14は、スマートコントラクトを含む不動産4の担保権連動型仮想通貨の発行及び運用システムの概要を示す説明図である。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0053】
図14Aは、スマートコントラクトを含むトランザクションに関する仮想通貨発行の概要を示す説明図である。サーバ1の通信部13は、契約成立のために必要な執行条件が記述されたスマートコントラクトのコードを含むトランザクションをブロックチェーン3に送信する。ブロックチェーン3は、受信した改ざん困難な状態のスマートコントラクトを含むトランザクションを記録している。スマートコントラクトのコードの内容は、本実施形態では不動産4が譲渡される場合、発行済仮想通貨量に相当する仮想通貨を支払い者のウォレットアドレスに返却する契約をコードで定義している。ブロックチェーン3は、トランザクションに記述された不動産4に対する評価額情報に基づいて算出された仮想通貨量を不動産4の所有者のウォレットアドレス宛として送信する。
【0054】
図14Bは、スマートコントラクトのコードを含むトランザクションのイメージ図である。トランザクションは、スマートコントラクトのコード、発行仮想通貨量、不動産情報のハッシュ値及び支払い者の電子署名を含む。ブロックチェーン3は、不動産4が譲渡に関する執行条件に合致した場合、不動産4の所有者のウォレットアドレスから支払い者のウォレットアドレスに発行済10000仮想通貨(コイン)を自動的に返却する。なお、当該スマートコントラクトは、実施形態1で述べたトランザクションに含めれば良い。又は当該トランザクションに関連付けた他のトランザクションに含めても良い。
【0055】
図14Cは、不動産4譲渡の際に発行済仮想通貨の自動返却処理の概要を示す説明図である。サーバ1の制御部11は、サーバ1の入力部14により不動産4の譲渡指示を受け取った場合、サーバ1の通信部13は、予め定義された契約履行の条件に合致するトリガーをブロックチェーン3に送信する。スマートコントラクトは、ブロックチェーン3に契約及び合意の内容が取引中に変更されない仕組みであるため、ブロックチェーン3の外部情報をトリガーにしてスマートコントラクトを発動させる。これにより、予め定義された契約履行の条件に合致するか否かとの判断処理は、ブロックチェーン3の外部情報を参照することが必要である。
【0056】
本実施形態では、不動産4が譲渡される場合、譲渡に関連する情報をブロックチェーン3に取り込んで、予め定義された契約履行の条件に合意形成する。ブロックチェーン3は、形成した合意に応じて自動的に仮想通貨量を支払い者のウォレットアドレスに返却する契約を履行することができる。スマートコントラクトは、ブロックチェーン3の外部情報を直接に参照することができないため、外部情報をブロックチェーン3内部に提供するサービス又はサーバ等により実現することができる。例えば、サーバ1は信頼できる情報を提供するオラクルシステム(Oracle System)と連携しても良く、またサーバ1で類似の機能を実装しても良い。
【0057】
ブロックチェーン3は、スマートコントラクトを発動させるトリガーを受け付け、予め定義された契約履行の条件に基づき、スマートコントラクト処理を自動的に実行させる。これにより、ブロックチェーン3は、スマートコントラクトコードに記述された支払い者のウォレットアドレス宛とし事前に定義された返却の仮想通貨量を送信する。支払い者は返却の仮想通貨量を受け取り、契約が自動的に解除される。
【0058】
図15は、スマートコントラクトを含む仮想通貨の発行の処理手順を示すフローチャートである。図15の先行処理は、図11と同様であるため説明を省略する。また、図12と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。サーバ1の制御部11は、不動産4の譲渡の条件が記述されたスマートコントラクトのコードを作成する(ステップS112)。サーバ1の通信部13は、作成したスマートコントラクトのコード、不動産4に対する評価額情報に応じて算出された仮想通貨量及び不動産情報のハッシュ値をブロックチェーン3に送信する(ステップS113)。ブロックチェーン3は、サーバ1から送信されたスマートコントラクトのコード、仮想通貨量及び不動産のハッシュ値を受信し(ステップS304)、記録する(ステップS305)。
【0059】
図16は、不動産4が譲渡される際に発行済仮想通貨の自動返却の処理手順を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、サーバ1の入力部14により所有者の不動産4を譲渡する指令を受け付ける(ステップS131)。なお、譲渡の指令に関しては、上述した方式に限るものではない。例えばサーバ1の通信部13は、図示しない外部装置から譲渡の指令を受信しても良い。サーバ1の通信部13は、発行済仮想通貨量を返却するスマートコントラクトの発動トリガーをブロックチェーン3に送信する(ステップS132)。ブロックチェーン3は、サーバ1から送信されたコントラクトの発動トリガーを受信し(ステップS331)、スマートコントラクト処理を起動する(ステップS332)。ブロックチェーン3は、スマートコントラクトコードに記述された支払い者のウォレットアドレス宛として事前に定義された返却の仮想通貨量を送信する(ステップS333)。サーバ1の通信部13は、ブロックチェーン3から送信された返却の仮想通貨量を受信する(ステップS133)。サーバ1の制御部11は、大容量記憶部18の管理DB184の取引情報を更新する(ステップS134)。具体的には、例えばサーバ1の制御部11は、管理DB184の返却日時列に返却の仮想通貨量を受け取った日時に基に記憶し、状態列に「返却済」を更新する。
【0060】
なお、上述した処理は、一つの公開鍵に対して一つの秘密鍵を照合するシングルシグ(Single Signature)仕組みを採用したが、これに限るものではない。例えば、マルチシグ(Multi Signature)を採用しても良い。マルチシグは、公開鍵暗号方式において、秘密鍵が一つではなく、複数に分割され、一定数以上の鍵を合わせて照合する仕組みである。
【0061】
図17は、マルチシグ対応のスマートコントラクトを含むトランザクション処理の概要を示す説明図である。マルチシグは、例えば三つがある秘密鍵の中に二つの鍵で署名する「2 of 3」方式があるが、これに限るものではない。本実施形態では、二つがある秘密鍵の中に一つの鍵で署名する「1 of 2」方式に基づいて説明する。
【0062】
ブロックチェーン3に送信されたマルチシグトランザクションは、支払い者の公開鍵及び所有者の公開鍵を含む。不動産4の所有者及び支払い者はブロックチェーン3に記録されたそれぞれの公開鍵に対応する秘密鍵を持つ。端末2が不動産4の譲渡指示を受け付けた場合、端末2は不動産4の所有者の秘密鍵により電子署名を行い、ブロックチェーン3に送信する。なお、譲渡指示に関しては、端末2の制御部21は、入力部24により受け付けても良く、通信部23により図示しない外部装置から受信しても良い。ブロックチェーン3は送信された電子署名の承認処理を行い、承認がされた場合、予め定義された契約履行の条件に基づき、スマートコントラクト処理を自動的に実行させる。なお、端末2が電子署名を送信しない場合、サーバ1は支払い者の秘密鍵により電子署名を行い、ブロックチェーン3に送信しても良い。「1 of 2」方式が採用されるため、ブロックチェーン3は、不動産4の所有者及び支払い者のいずれかひとつの電子署名により承認処理を行うことができる。支払い者は秘密鍵を管理することにより、たとえ不動産4の所有者が、仮想通貨量の返却義務を負わないものとしても、取引の安全を確保することができ、セキュリティ面を強化することが可能となる。
【0063】
本実施形態によると、スマートコントラクトを活用することにより、契約履行の条件に合致する場合、契約が自動的に履行されるため、不正な取引を防ぐことができる。また、取引に第三者が介入しないため、決済期間を短縮することが可能となる。
【0064】
(実施形態3)
不動産4が譲渡される場合、不動産4の新所有者は、不動産4の前所有者から発行済仮想通貨量を継承することができる。以下では簡潔のため、不動産4の前所有者はA氏と読み替え、不動産4の新所有者はB氏と読み替える。例えば、支払い者はA氏の不動産4に対する担保権を設定し、10000仮想通貨量をA氏に発行したとする。A氏の不動産4がB氏に譲渡される際に、B氏は支払い者がA氏に発行した10000仮想通貨量を継承することができる。B氏はA氏から10000仮想通貨量を引き継ぎ、該仮想通貨量の権利及び義務が同時にB氏に移転されるため、支払い者が不動産4を所有するB氏と契約を締結する。これにより、B氏は支払い者と解約する場合、B氏はA氏から継承された10000仮想通貨量を支払い者に返却する義務を負う。
【0065】
なお、A氏は支払い者から発行された10000仮想通貨量に対し、一部分を使用し、残りの仮想通貨量のみをB氏に引き継ぐ場合がある。この場合、B氏は支払い者と解約を行った際に、B氏は支払い者がA氏に発行された全部仮想通貨量を支払い者に返却する義務を負う。例えば、支払い者はA氏に10000仮想通貨量を発行し、A氏は6000仮想通貨量を使用した場合、B氏は残り4000仮想通貨量を継承することができる。B氏は支払い者と解約する場合、B氏は支払い者がA氏に発行した10000仮想通貨量を返却する義務を負う。
【0066】
上述した発行済仮想通貨量の継承に関しては、スマートコントラクトを利用することができる。図18は、不動産4が譲渡される際に発行済仮想通貨量の継承処理の概要を示す説明図である。支払い者はA氏の不動産4に対してA氏と契約を締結した場合、仮想通貨量、不動産情報のハッシュ値及びスマートコントラクトのコードを含むトランザクションがブロックチェーン3へ送信される。スマートコントラクトのコードは、事前に定義された契約履行の契約条件を含み、契約条件に合致する場合、自動的に契約が履行される。ブロックチェーン3は、トランザクションに記述された仮想通貨量をA氏に付与する。
【0067】
その後、売却又は贈与等に伴い、A氏からB氏に不動産4の所有権が移転された場合、B氏は支払い者がA氏に発行した仮想通貨量を継承することができる。図示のように、ブロックチェーン3を介して、継承される仮想通貨量がA氏のウォレットアドレスからB氏のウォレットアドレスに渡される。仮想通貨量がB氏に引き継がれた後に、支払い者は該不動産4を所有するB氏と契約を締結する。具体的には、サーバ1のハッシュ値算出部11a及び電子署名作成部11bは、仮想通貨を発行する支払い者の電子署名を含むウォレットアドレスを作成する。なお、ウォレットアドレスの作成処理に関しては、実施形態1と同様であるため説明を省略する。サーバ1の制御部11は、作成したウォレットアドレス及びB氏のウォレットアドレスに基づき、不動産4が譲渡される際にB氏から支払い者に返却する契約を定義されるスマートコントラクトコードを含むトランザクションを生成する。サーバ1の通信部13は、生成したトランザクションをブロックチェーン3へ送信し、仮想通貨の継承処理を完了する。なお、スマートコントラクトの処理に関しては、実施形態2と同様であるため説明を省略する。
【0068】
図19は、不動産情報の更新の処理手順を示すフローチャートである。法務局は、不動産4が譲渡される際に所有権移転登録の手続きを行い、登記事項証明書に記載された土地又は建物に関する登記事項を変更する。不動産4の新所有者は、法務局により変更後の登記事項証明書を取得することができる。また、取得された登記事項証明書の紙文書が電子化され、デジタル文書が作成されても良い。サーバ1の制御部11は、不動産情報及び評価額情報を読み込む(ステップSb01)。なお、本実施形態では、電子化されたPDFを図示したが、これに限るものではない。例えば、サーバ1の制御部11は、サーバ1の入力部14により、不動産情報及び評価額情報の入力を受け付けても良い。サーバ1の制御部11は、不動産情報の新所有者情報を取得する(ステップSb02)。サーバ1の制御部11は、不動産情報の新所有者情報を一つのレコードとして大容量記憶部18の所有者情報DB181に記憶する(ステップSb03)。サーバ1の制御部11は、読み込んだ不動産情報に応じて、大容量記憶部18の不動産情報DB182に記憶された不動産情報を更新する(ステップSb04)。
【0069】
本実施形態によると、不動産4が譲渡される場合、発行済仮想通貨量を支払い者に返却するのではなく、不動産4の譲渡先に発行済仮想通貨量を引き継ぐことができる。不動産4の所有権移転に伴い、発行済仮想通貨を含む権利及び義務が同時に不動産4の譲渡先に移転される。これにより、解約及び再契約等煩雑な手続きを簡略化することができる。
【0070】
(実施形態4)
本実施形態では、仮想通貨の取引手数料について説明する。支払い者は、仮想通貨の発行に応じて手数料を取得することができる。定められた取引手数料の基準は、例えば発行する仮想通貨量に対する比率を設定する他、固定の仮想通貨量を手数料として設定しても良い。更にまた、取引手数料は法定通貨により取得しても良い。なお、取引手数料をゼロとしても良い。
【0071】
図20は、取引手数料の処理手順を示すフローチャートである。図12と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。以下では、発行仮想通貨量に所定の比率を乗じた手数料の算出方式について説明する。サーバ1の制御部11は、不動産4に対する評価額情報に基づいて算出された仮想通貨量に応じて、取引手数料を算出する(ステップS151)。例えば、仮想通貨量の10%の基準により定めた取引手数料が設定された場合、10000仮想通貨量に対する取引手数料は1000仮想通貨量である。サーバ1の制御部11は、算出した取引手数料に相当する仮想通貨を差し引いた仮想通貨量を取得する(ステップS152)。例えば、上述した10%の基準の手数料の場合、10000仮想通貨量から1000仮想通貨量を差し引き、サーバ1の通信部13は、残りの9000仮想通貨量をブロックチェーン3へ送信する。
【0072】
本実施形態によると、取引手数料が発行の仮想通貨から徴収されることにより、取引の手続きを簡便化することができる。また、利用者は法定通貨の用意が不要となり、支払い者は確実に収益を取得することが可能となる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 情報処理装置(サーバ)
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
1P 制御プログラム
11 制御部
11a ハッシュ値算出部
11b 電子署名作成部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 撮影部
17 読み取り部
18 大容量記憶部
2 情報処理端末(端末)
21 制御部
21a ハッシュ値算出部
21b 電子署名作成部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 表示部
26 撮影部
2P 制御プログラム
3 ブロックチェーン
4 不動産
5 小売店
6 仮想通貨取引所
7 投資家
B バス
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20