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特許7100361ポリアデニル化のアプタマー介在型調節を通じた哺乳類遺伝子発現の外因的制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】ポリアデニル化のアプタマー介在型調節を通じた哺乳類遺伝子発現の外因的制御
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220706BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220706BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/17 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220706BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220706BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20220706BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALN20220706BHJP
【FI】
C12N15/63 100Z
C12N15/115 Z ZNA
C12N15/14
C12N15/12
C12N15/17
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12Q1/6851 Z
A61P43/00 111
A61K48/00
C12Q1/66
C12Q1/6897 Z
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2018524382
(86)(22)【出願日】2016-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 US2016061665
(87)【国際公開番号】W WO2017083747
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/254,435
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェン、ライシン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、リーミン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ぺイ-ウェン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500030(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136591(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0260164(US,A1)
【文献】Biotechnolog Journal,2015年02月,Vol. 10,p. 246-257,doi:10.1002/biot.201300498
【文献】FEBS Letters,2012年02月,Vol. 586,p. 2076-2083,doi:10.1016/j.febslet.2012.02.038
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 5/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含む、遺伝子発現の調節のためのシステムであって、該ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって:
a)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
b)発現可能なポリヌクレオチド;
を含み、
(i)前記少なくとも1つのリガンド結合アプタマーが前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域(UTR)内に存在し、
(ii)前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、前記システムに存在しない場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合しない場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解され;
前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、前記システムに存在する場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合する場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されず、かつ遺伝子産物が前記発現可能なポリヌクレオチドから発現する、
システム。
【請求項2】
前記システムは、前記リガンドを発現するポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのGリッチ領域の上流に存在する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
a)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記アプタマーは、2つのポリAシグナル及び2つのU/UGリッチ領域を含む;及び/又は
b)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くのアプタマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記リガンドを発現する前記ポリヌクレオチドは、ベクターの少なくとも一部分であり、前記ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、または直鎖DNAである、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
a)前記発現可能なポリヌクレオチドは、前記リガンドをコードする;及び/又は、
b)前記発現可能なポリヌクレオチドの発現は、組織特異的プロモーターにより制御される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステムを含む、医薬。
【請求項8】
疾患細胞又は欠損細胞を治療するための、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
前記疾患細胞又は欠損細胞は、幹細胞または癌細胞である、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
治療の有効性をモニタリングするための医薬であって:
a)ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含むベクターであって、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって;
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー、及び
2)発現可能なポリヌクレオチド、を含むベクター;及び/または
b)前記a)のベクターを含む1つまたは複数の細胞;を含み、
(i)前記少なくとも1つのリガンド結合アプタマーが前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域(UTR)内に存在し、
(ii)前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在しない場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合しない場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解され;
前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在する場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合する場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されず、かつ遺伝子産物が前記発現可能なポリヌクレオチドから発現し;
(iii)前記リガンド結合アプタマーに結合するリガンドは、前記治療の有効性の指標であるタンパク質の特定遺伝子産物である、医薬。
【請求項11】
病的状態の存在、危険性、または易罹患性をアッセイするための医薬であって:
a)ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含むベクターであって、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー、及び
2)発現可能なポリヌクレオチド、を含むベクター;及び/または
b)前記a)のベクターを含む1つまたは複数の細胞;
を含み、
(i)前記少なくとも1つのリガンド結合アプタマーが前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域(UTR)内に存在し、
(ii)前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在しない場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合しない場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解され;
前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在する場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合する場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されず、かつ遺伝子産物が前記発現可能なポリヌクレオチドから発現し;
(iii)前記発現可能なポリヌクレオチドからの遺伝子産物の発現または前記発現可能なポリヌクレオチドからの遺伝子産物の発現の不在は、前記リガンドが存在して前記アプタマーと結合したかどうかを同定し、
前記リガンドの個々の存在または不在は、前記病的状態の存在、易罹患性、または危険性の指標である、医薬。
【請求項12】
5’から3’に向かって:
a)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
b)発現可能なポリヌクレオチド
を含み、
(i)前記少なくとも1つのリガンド結合アプタマーが前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域(UTR)内に存在し、
(ii)前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在しない場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合しない場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解され;
前記リガンド結合アプタマーと結合するリガンドが、存在する場合又は前記リガンド結合アプタマーに結合する場合に、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されず、かつ遺伝子産物が前記発現可能なポリヌクレオチドから発現するポリAアプタマーポリヌクレオチド。
【請求項13】
さらに、少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または少なくとも1つのU/UGリッチ領域と少なくとも1つのGリッチ領域の両方を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシステムを含む、細胞。
【請求項16】
請求項12又は13に記載のポリヌクレオチドを含み、
a)ウイルスベクター、又は
b)プラスミド、である、
ベクター。
【請求項17】
前記リガンドを発現するポリヌクレオチドを含み、
前記リガンドを発現するポリヌクレオチドが、前記アプタマーと前記発現可能なポリヌクレオチドとを含む前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドと同一のものである、請求項1のシステム。
【請求項18】
前記リガンドを発現するポリヌクレオチドを含み、
前記リガンドを発現するポリヌクレオチドが、前記アプタマーおよび前記発現可能なポリヌクレオチドを含むポリAアプタマーポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドが、前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域に2つ、3つ、またはそれより多くのポリAシグナルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドが、
a)少なくとも1つのポリAシグナル、
b)前記少なくとも1つのポリAシグナルを含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;および
c)少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または、少なくとも1つのU/UGリッチ領域と少なくとも1つのGリッチ領域の両方を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
a)前記リガンド結合アプタマーが、1つ、2つ、3つ、もしくはそれ以上のU/UGリッチ領域を含む;または
b)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に、少なくとも1つのポリAシグナルが存在する;または
c)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーが、1つ、2つ、もしくはそれ以上のU/UGリッチ領域の上流に存在する;または
d)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルが、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
第一のアプタマーと第二のアプタマーを含み、
前記第一のアプタマー及び前記第二のアプタマーが、5’から3’の直線方向で、同じ方向を向いている;または
a)前記第一のアプタマー及び前記第二のアプタマーが、5’から3’の直線方向で、異なる方向を向いている、および/または
b)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドが1つのGリッチ領域を含む;
請求項4に記載のシステム。
【請求項23】
a)前記Gリッチ領域が、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって最も3’側のアプタマー中に存在する;または
b)前記Gリッチ領域が、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって2番目のアプタマー中に存在する;および/または
c)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドが、2つ以上のアプタマー間で塩基対形成していない;または
d)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドが、2つ以上のアプタマー間で塩基対を含む、および/または
e)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの2つの異なるアプタマーのループの少なくとも一部の間で塩基対形成している、および/または
f)アプタマー内の2つのループの間のヌクレオチド数が10~25ヌクレオチドである、または
g)アプタマー内の2つのループ間のヌクレオチドの数が18~20ヌクレオチドである、および/または
h)前記リガンドが、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、薬物、代謝産物、またはそれらの組み合わせである、および/または
i)アプタマーの長さが14~250ヌクレオチドである;および/または
j)前記発現可能なポリヌクレオチドが、レポーター遺伝子、治療用遺伝子、または細胞の代謝状態を変更する産物をもたらす遺伝子である、および/または
k)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドがベクターの少なくとも一部分である、
請求項11に記載の医薬。
【請求項24】
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドがベクターの少なくとも一部分であり、前記ベクターが、プラスミド、ウイルスベクター、または直鎖DNAである、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
前記リガンドが、細胞代謝産物、核酸、小分子、または細胞タンパク質である、請求項7に記載の医薬。
【請求項26】
前記細胞タンパク質が、疾患状態と関連したタンパク質である、請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
前記リガンドがウイルスタンパク質である、請求項7に記載の医薬。
【請求項28】
糖尿病、糖尿病前症、または糖尿病合併症の治療のための、請求項7に記載の医薬。
【請求項29】
前記リガンドがグルコースであり、前記発現可能なポリヌクレオチドがインスリンをコードする、請求項28に記載の医薬。
【請求項30】
癌の治療用である、請求項7に記載の医薬。
【請求項31】
前記リガンドが癌バイオマーカーの遺伝子産物であり、前記発現可能なポリヌクレオチドが自殺遺伝子をコードする、請求項30に記載の医薬。
【請求項32】
1つまたは複数の細胞中のリガンドの空間分布、時間変動、またはその両方についての情報を提供するための、請求項7に記載の医薬。
【請求項33】
前記発現可能なポリヌクレオチドが、レポーター遺伝子または検出可能な遺伝子産物をコードする、請求項32に記載の医薬。
【請求項34】
前記リガンドが、前記細胞にとって内因性である、請求項8に記載の医薬。
【請求項35】
前記遺伝子が、ジストロフィン、アルブミン、または第IX因子である、請求項8に記載の医薬。
【請求項36】
前記a)のベクターおよび/または前記b)の細胞が、前記治療の前、前記治療の間、および/または前記治療の後に提供される、請求項10に記載の医薬。
【請求項37】
a)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルが、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に存在する;または
b)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーが、1つ、2つ、もしくはそれ以上のU/UGリッチ領域の上流に存在する;または
c)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルが、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する;または
d)前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーが、1つ、2つ、またはそれ以上のGリッチ領域の上流に存在する;請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
哺乳類細胞である、請求項14に記載の細胞。
【請求項39】
前記哺乳類細胞ヒト細胞ある、請求項38に記載の細胞。
【請求項40】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項41】
前記哺乳類細胞がヒト細胞ある、請求項40に記載の細胞。
【請求項42】
前記ベクターがウイルスベクターであって、前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、請求項16に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月12日出願の米国仮特許出願番号第62/254,435号の優先権を主張し、この出願はそのまま全体が、本明細書中に参照として援用される。
【0002】
連邦支援の研究または開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所により認められた1RO1EB013584-02の下、政府支援でなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示の実施形態は、少なくとも、細胞生物学、分子生物学、遺伝子調節、遺伝子治療、幹細胞治療、医薬、分子イメージング、バイオセンサー、及び診断法に関する。
【背景技術】
【0004】
導入遺伝子の発現を正確に制御する能力は、特定遺伝子産物の機能を解明するために、または安全範囲内で治療タンパク質を生成させるために、常に不可欠であった。現在、複数の遺伝子制御システムが利用可能であり1-3、それらは、非常に強力な実験道具であることが実証されている。しかしながら、それらの有用性にも関わらず、そのようなシステムは、ハイブリッド転写トランスアクチベーター及び専用プロモーターに依存しているために、いくらか実用面の制約を抱えている。そのような制約として、以下が挙げられる:(i)2つの転写単位を必要とすること、1つはトランスアクチベーター発現のためのもの、もう一つは制御しようとする導入遺伝子の発現のためのものであり、結果として、このようなシステムを使用するには、2つの発現構築物を同時に導入する必要がある。(ii)ハイブリッドトランスアクチベーターの発現に由来する毒性の可能性(例えば、外来タンパク質であるトランスアクチベーターに向けられた宿主免疫応答の誘導、内因性転写に対するトランスアクチベーターの効果など)。(iii)専用プロモーターを必要とするが故の、そのようなシステムを組織特異的様式で遺伝子制御に応用することの難しさ。(iv)実験及び治療用途に利用可能な小分子インデューサーの数が限られていること(利用可能なシステムの数が限られているため)。こうした制約は、RNAのみを含む、本質的にRNAのみからなる、またはRNAのみからなり、どのようなトランスアクチベータータンパク質も専用プロモーターも含まない遺伝子制御システムにより克服することが可能である。遺伝子発現を制御するための完全にRNAに基づく機構の存在が、報告されている。詳細には、自己触媒的リボザイムの調節に基づくシステムが記載されており、これは、遺伝子治療及び生物学研究においてより幅広く応用できるRNAのみのシステムの開発に合理的な説得力を与えている。
【0005】
トランスアクチベーターを使用した転写制御に基づく遺伝子制御システムとは対照的に、本明細書中提供されるポリAに基づくシステムは、どのようなタンパク質トランスアクチベーター産物の発現も必要とせず、どのような専用プロモーター配列要素の使用にも依存せず、したがって、理論的には、任意の内因性遺伝子または改変ベクター転写単位に「埋め込む」ことができる「ポータブル」制御システムとなる。そのため、本システムは、1つの転写単位(1つの発現構築物)しか必要とせず、本システムを使用することで組織特異的(空間的)及び時間的様式で導入遺伝子を制御することができるようなプロモーター順応性がある。ポリアデニル化は、全ての哺乳類細胞で起こる普遍的過程であるため、記載される本システムは、広く応用可能である。
【0006】
既存技術の限界故にフル活用されていなかった遺伝子制御の別の重要な応用領域は、遺伝子制御システムを使用して、特定細胞タンパク質の発現または病的事象をin vivoで検出するバイオセンサーとして機能させる能力である。そのようなバイオセンサープラットフォームは、生体分子レベルでの変動に関するin vivoでの時間的情報及び空間的情報を提供することが可能であり、インプット情報を使用して、細胞の挙動を調節するあるいはイメージングまたは検出のためのレポーターシグナルを生成させることができる。例えば、リガンドとして発癌性タンパク質と結合する遺伝子制御システムは、結合に反応して、遺伝子の特定セットのスイッチのオンオフを切り替える。こうした遺伝子は、定量的検出またはイメージングのためのレポーターシグナルを生成させること、代謝経路の課程に影響を及ぼすこと、または治療タンパク質を発現させることができる。特定細胞タンパク質の分子センシングは、疾患の根底にある生細胞の生化学的異常を描出することを可能にすると思われる。そのような技術は、特定マーカータンパク質の発現をモニタリングすることにより、臨床治療の進行をモニタリングするのに有用であると思われ、さらに、特定の実施形態においては、新規治療パラダイムの試験及び開発を可能にする重要なプラットフォームを形成する。そのうえさらに、そのような技術は、生物学的過程ならびに疾患発症における特定遺伝子産物の役割を理解するのに有用であると思われる。
【0007】
現代のプロテオミクス技術は、内因性細胞タンパク質を可視化または同定する有用な方法を複数提供してきた。質量分析などの方法は、哺乳類の細胞または組織に存在する数百のタンパク質分子の同定を可能にする。しかしながら、これらの方法は、その過程において細胞及び組織を破壊し、生きた動物またはヒト中の特定細胞タンパク質を検出することを目指す目標とは相容れない。シグナル生成モチーフと結合した抗体を使用する方法は、細胞膜外の特定タンパク質を可視化するのには有力であるものの、生細胞内で発現タンパク質の大部分を占める細胞内タンパク質を検出またはイメージングするのには不適切である。in vivoで特定生体タンパク質を検出する有用な方法がないことは、バイオセンシングのための新規戦略が必要であることを指摘するものであり、そのような新規戦略があれば、基礎的生物学過程及び疾患状態を理解するのに大きな影響を与えると思われる。
【0008】
本開示は、生来タンパク質の発現を検出するため、及びまた生細胞中の関心対象の遺伝子を制御するために、RNAスイッチに基づくアプローチを使用する方法及びシステム及び組成物を提供することで、当該分野の長年の切実な要求を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、ポリアデニル化のアプタマー介在型調節を用いた遺伝子制御の外因的制御に関する。本開示の実施形態は、リガンドがポリAシグナルを包含するアプタマーに結合するというゲートキーパー作用により統制されるポリA切断の調節を介した、哺乳類遺伝子発現に関する。
【0010】
本開示の実施形態は、ポリアデニル化のアプタマー介在型調節を用いた、特定ポリヌクレオチドの発現を制御する分子スイッチに関する。特定の実施形態において、分子スイッチは、5’UTRポリAシグナルに基づいたRNAスイッチ(本明細書中、ポリAスイッチまたはポリAセンサーと称する場合もある)である。
【0011】
特定の実施形態において、本開示のシステムは、生細胞、組織、または生体で1つまたは複数の細胞内「署名」(sigunature)を検出するバイオセンサーシステムとして利用される。「署名」は、問題になっている1つまたは複数の遺伝子の発現;1種または複数の内因性で生成した化合物、例えばタンパク質または代謝産物などの有無;疾患状態、または正常状態、または治療効果、あるいはそれらの組み合わせの指標となる分子(複数可)の有無;などを反映することができる。システムは、1つまたは複数の細胞または組織の、もしくは生体の代謝状態または生理状態を示すことができる。
【0012】
特定の実施形態において、システムは、ポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む1つまたは複数のリガンド結合アプタマー;及び発現可能なポリヌクレオチド、を含み;このシステムは、リガンドがシステムまたはその環境に存在しない場合、もしくはリガンドがリガンド結合アプタマーに結合していない場合に、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されるような適切な条件に曝される。実施形態によっては、システムは、リガンドがアプタマーに結合している場合、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが分解されず、かつ遺伝子産物が発現可能なポリヌクレオチドから発現可能であるような適切な条件に供される。
【0013】
ある特定の実施形態において、本開示のシステムは、問題になっている1つまたは複数の特定遺伝子の発現を調節する能力に関する。本システムは、5’UTRポリAシグナルに基づいたRNAスイッチを阻害することができ、それにより遺伝子(複数可)の発現を招くことができる特定リガンドを採用することにより、遺伝子(複数可)の発現を調節することを可能にする。本システムは、小分子などのリガンドを用いて、例えば、組織特異的及び/または時間特異的様式をはじめとする様式で、発現を制御する個別化遺伝子発現を可能にする。特定の実施形態において、本システムは、ある特定環境中の内因性リガンドについての情報を提供するための、個別化アプタマー/発現可能なポリヌクレオチドの組み合わせを使用するバイオセンサーシステムとして作用する。
【0014】
1つの実施形態において、遺伝子発現を調節するシステムが存在し、このシステムはポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、a)それぞれ少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に有する少なくとも1つのリガンド結合アプタマー(もっとも、代替実施形態では、全てのアプタマーがポリA切断シグナルを有するのではない);及びb)発現可能なポリヌクレオチド、を含む。特定の実施形態において、ポリA切断シグナルを有するリガンド結合アプタマーは、発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域内に存在する。特定の実施形態において、本システムは、リガンドを発現するポリヌクレオチドを含む。態様によっては、リガンドを発現するポリヌクレオチドは、アプタマー及び発現可能なポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドと同一ポリヌクレオチドである。他の場合において、リガンドを発現するポリヌクレオチドは、アプタマー及び発現可能なポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドとは異なるポリヌクレオチドである。
【0015】
ある特定の実施形態において、本開示に包含されるポリヌクレオチドは、発現可能なポリヌクレオチドの5’UTRに、2つ、3つ、またはそれより多くのポリAシグナルを含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、a)少なくとも1つのポリAシグナル;b)リガンド結合アプタマー;及びc)少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または少なくとも1つのU/UGリッチ領域及び少なくとも1つのGリッチ領域の両方、を含む。システムの実施形態によっては、リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域を含む。ある特定の態様において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に存在する。他の態様において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域の上流に存在する。特定の態様において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する。態様によっては、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのGリッチ領域の上流に存在する。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、アプタマーは、2つのポリAシグナル及び2つのU/UGリッチ領域を含む。ポリヌクレオチドが2つ以上のアプタマーを含む場合、ポリヌクレオチドは、ある特定の態様において、1つのGリッチ領域しか含まない場合がある。そのような場合、Gリッチ領域は、ポリヌクレオチドの最も3’側にあるアプタマー上に位置する場合もあるし、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、2番目のアプタマーに位置する場合もある。
【0016】
本開示の実施形態によっては、リガンドは、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、薬物、代謝産物、またはそれらの組み合わせである。特定の態様において、アプタマーは、長さが14~250ヌクレオチドである。特定の実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子、治療遺伝子、または細胞の代謝状態を変更する産物をもたらす遺伝子である。場合によっては、ポリヌクレオチドは、ベクターの少なくとも一部分である。リガンドを発現するポリヌクレオチドは、プラスミド、ウイルスベクター、または直鎖DNAなどのベクターの少なくとも一部分の場合がある。特定の実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドは、リガンドをコードする。発現可能なポリヌクレオチドの発現は、態様によっては、組織特異的プロモーターにより制御される場合がある。
【0017】
ある特定の実施形態において、遺伝子発現を調節する方法が存在し、本方法は、以下の工程を含む:a)システムを用意する工程、このシステムはポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって:1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;2)発現可能なポリヌクレオチド;及び3)任意選択で、リガンド発現構築物、を含み;及びb)システムを適切な条件に供する工程、この工程において、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが望ましくない場合、リガンドはリガンド結合アプタマーに結合しない、またはシステムもしくはその環境中に存在せず、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解され;またはc)リガンド発現構築物を含むシステムを適切な条件に供する工程、この工程において、発現ポリヌクレオチドの発現が望まれる場合、リガンドは、アプタマーに結合する、及び/またはシステムもしくはその環境中に存在し、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解されない。
【0018】
1つの実施形態において、遺伝子発現を調節する方法が存在し、本方法は、以下の工程を含み:a)システムを用意する工程、このシステムはポリヌクレオチドを含み、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって:1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;2)発現可能なポリヌクレオチド;及び3)任意選択で、リガンド発現構築物を含み;及びb)システムを適切な条件に供する工程、この工程において、リガンドは、システムもしくはその環境中に存在しない、またはリガンド結合アプタマーに結合せず、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解され;あるいはc)リガンド発現構築物を含むシステムを適切な条件に供する工程、この工程において、リガンドは、アプタマーに結合し、発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解されず、遺伝子産物は、発現可能なポリヌクレオチドから発現可能である。特定の実施形態において、本方法は、細胞、例えば、幹細胞、癌細胞、または遺伝子(ジストロフィン、アルブミン、または第IX因子など)の遺伝子治療の必要がある疾患細胞もしくは欠損細胞などで行われる。特定の態様において、リガンドは、細胞に内因性のものである。特定の態様において、本方法は、in vivoで、例えば、ヒトをはじめとする哺乳類で行われる。他の態様において、本方法は、in vitroで行われる。実施形態によっては、本方法は、個体の1つまたは複数の細胞で行われ、リガンドはグルコースであり、個体は、糖尿病、糖尿病前症、または糖尿病合併症を有し、及び/または発現可能なポリヌクレオチドはインシュリンである。態様によっては、本方法は、個体の1つまたは複数の細胞で行われ、リガンドは癌バイオマーカーの遺伝子産物であり、発現可能なポリヌクレオチドは自殺遺伝子である。特定の態様において、本方法は、個体で行われ、発現可能なポリヌクレオチドはレポーター遺伝子であり、レポーター遺伝子の発現の場所及び/または強度は、個体の1つまたは複数の細胞中のリガンドの、空間分布、時間変動、またはその両方についての情報を提供する。実施形態によっては、本方法はさらに、リガンドと適切に結合するようにアプタマーを設計する工程を含む。特定の実施形態において、本方法は、個体、組織、または細胞で行われ、発現可能なポリヌクレオチドは、検出可能な遺伝子産物をコードし、個体、組織、または細胞が、個々に、イメージングされる。
【0019】
ある特定の実施形態において、個体の治療をモニタリングする方法が存在し、本方法は、個体に、以下:a)ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び2)発現可能なポリヌクレオチド、を含み;及び/またはb)a)のベクターを抱える1つまたは複数の細胞、を提供する工程を含み、リガンドは、治療の有効性の指標となるタンパク質の特定遺伝子産物である。特定の実施形態において、a)のベクター及び/またはb)の細胞は、治療前、治療中、及び/または治療後に、個体に提供される。
【0020】
1つの実施形態において、個体における病的状態の存在、危険性、または易罹患性を評価する方法が存在し、本方法は、個体に、以下:a)ポリヌクレオチドを含むベクター、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び2)発現可能なポリヌクレオチドを含み;及び/またはb)a)のベクターを抱える1つまたは複数の細胞、を提供する工程を含み、発現可能なポリヌクレオチドが発現すること、または発現可能なポリヌクレオチドの発現がないことは、リガンドが存在してアプタマーに結合したかどうかを同定するものであり、個体またはその細胞におけるリガンドの有無それぞれが、病的状態の存在、易罹患性、または危険性の指標である。
【0021】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドが存在し、このポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、a)少なくとも1つのポリA切断シグナルを各内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及びb)発現可能なポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、リガンド結合アプタマーは、発現可能なポリヌクレオチドの5’UTRに位置する。態様によっては、ポリヌクレオチドは、さらに、少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または少なくとも1つのU/UGリッチ領域及び少なくとも1つのGリッチ領域の両方を含む。他の態様において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に存在する。特定の場合において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域の上流に存在する。特定の場合において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する。特定の態様において、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのGリッチ領域の上流に存在する。
【0022】
他の実施形態は、本開示により包含されるポリヌクレオチドのいずれかを含む細胞に関する。特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞などの哺乳類細胞であり、細胞は、ヒトの中に存在する場合がある。実施形態によっては、細胞は、本開示により包含されるシステムのいずれかを含む。特定の実施形態において、細胞は、ヒト細胞などの哺乳類細胞であり、細胞は、ヒトの中に存在する場合がある。特定の実施形態において、本開示により包含され、かつ本開示により包含されるポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターが存在する。特定の場合において、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターなどである。特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドである。
さらに本発明の実施形態は、以下を含む。
[1]
ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含む、遺伝子発現の調節のためのシステムであって、該ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって:
a)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
b)発現可能なポリヌクレオチド
を含む、システム。
[2]
前記ポリA切断シグナルを含む前記リガンド結合アプタマーは、前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域内に存在する、[1]に記載のシステム。
[3]
前記システムは、前記リガンドを発現するポリヌクレオチドを含む、[1]または[2]に記載のシステム。
[4]
前記リガンドを発現する前記ポリヌクレオチドは、前記アプタマー及び発現可能なポリヌクレオチドを含む前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドと同一のものである、[3]に記載のシステム。
[5]
前記リガンドを発現する前記ポリヌクレオチドは、前記アプタマー及び発現可能なポリヌクレオチドを含む前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである、[3]に記載のシステム。
[6]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、前記発現可能なポリヌクレオチドの前記5’非翻訳領域に、2つ、3つ、またはそれより多くのポリAシグナルを含む、[3]~[6]のいずれか1に記載のシステム。
[7]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは:
a)少なくとも1つのポリAシグナル;
b)前記少なくとも1つのポリAシグナルを含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
c)少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または少なくとも1つのU/UGリッチ領域と少なくとも1つのGリッチ領域の両方、
を含む、[1]から[6]のいずれか1に記載のシステム。
[8]
前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域を含む、[7]に記載のシステム。
[9]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に存在する、[7]に記載のシステム。
[10]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域の上流に存在する、[7]に記載のシステム。
[11]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する、請求項7に記載のシステム。
[12]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのGリッチ領域の上流に存在する、[3]に記載のシステム。
[13]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記アプタマーは、2つのポリAシグナル及び2つのU/UGリッチ領域を含む、[1]~[12]のいずれか1に記載のシステム。
[14]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くのアプタマーを含む、[1]~[13]のいずれか1に記載のシステム。
[15]
第一のアプタマー及び第二のアプタマーは、5’から3’の直線方向で、同じ方向を向いている、[14]に記載のシステム。
[16]
第一のアプタマー及び第二のアプタマーは、5’から3’の直線方向で、異なる方向を向いている、[14]に記載のシステム。
[17]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、1つのGリッチ領域を含む、[14]~[16]のいずれか1に記載のシステム。
[18]
前記Gリッチ領域は、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって最も3’側のアプタマー中にある、[17]に記載のシステム。
[19]
前記Gリッチ領域は、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって2番目のアプタマー中にある、[17]に記載のシステム。
[20]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、2つ以上のアプタマー間で塩基対形成していない、[14]~[19]のいずれか1に記載のシステム。
[21]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、2つ以上のアプタマー間で塩基対形成している、[14]~[19]のいずれか1に記載のシステム。
[22]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの2つの異なるアプタマーのループの少なくとも一部の間で、塩基対形成している、[14]~[21]のいずれか1に記載のシステム。
[23]
アプタマー内の2つのループ間のヌクレオチド数は、10~25ヌクレオチドである、[1]~[22]のいずれか1に記載のシステム。
[24]
アプタマー内の2つのループ間のヌクレオチド数は、18~20ヌクレオチドである、[1]~[22]のいずれか1に記載のシステム。
[25]
前記リガンドは、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、薬物、代謝産物、またはそれらの組み合わせである、[1]~[24]のいずれか1に記載のシステム。
[26]
アプタマーは、長さが、14~250ヌクレオチドである、[1]~[25]のいずれか1に記載のシステム。
[27]
前記発現可能なポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子、治療遺伝子、または細胞の代謝状態を変更する産物をもたらす遺伝子である、[1]~[26]のいずれか1に記載のシステム。
[28]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、ベクターの少なくとも一部分である、[1]~[27]のいずれか1に記載のシステム。
[29]
前記リガンドを発現する前記ポリヌクレオチドは、ベクターの少なくとも一部分である、[3]に記載のシステム。
[30]
前記ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、または直鎖DNAである、[28]または[29]に記載のシステム。
[31]
前記発現可能なポリヌクレオチドは、前記リガンドをコードする、[1]~[30]のいずれか1に記載のシステム。
[32]
前記発現可能なポリヌクレオチドの発現は、組織特異的プロモーターにより制御される、[1]~[31]のいずれか1に記載のシステム。
[33]
遺伝子発現の調節方法であって、以下の工程:
a)システムを用意する工程であって、前記システムはポリAアプタマーポリヌクレオチドを含み、ポリAアプタマーポリヌクレオチドは5’から3’に向かって:
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;
2)発現可能なポリヌクレオチド;及び
3)任意選択でリガンド発現構築物;を含む工程、及び
b)前記システムを適切な条件に供する工程であって、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAが所望のものでない場合、前記リガンドは、前記リガンド結合アプタマーに結合しないか、または前記システムもしくはその環境に存在せず、かつ前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解される工程;または
c)前記リガンド発現構築物を含む前記システムを適切な条件に供する工程であって、前記発現可能なポリヌクレオチドの発現が望まれる場合、前記リガンドは、前記アプタマーに結合する、及び/または前記システムもしくはその環境に存在し、かつ前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解されない工程、
を含む、方法。
[34]
遺伝子発現の調節方法であって、以下の工程:
a)システムを用意する工程であって、前記システムはポリAアプタマーポリヌクレオチドを含み、ポリAアプタマーポリヌクレオチドは5’から3’に向かって:
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;
2)発現可能なポリヌクレオチド;及び
3)任意選択でリガンド発現構築物;を含む工程、及び
b)前記システムを適切な条件に供する工程であって、前記リガンドが、前記システムもしくはその環境に存在しない、または前記リガンド結合アプタマーに結合しない場合、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解される前記工程;または
c)前記リガンド発現構築物を含む前記システムを適切な条件に供する工程であって、前記リガンドが前記アプタマーに結合する場合、前記発現可能なポリヌクレオチド由来のmRNAは分解されず、かつ遺伝子産物は、前記発現可能なポリヌクレオチドから発現可能である工程、
を含む、方法。
[35]
前記方法は、細胞中で行われる、[33]または[34]に記載の方法。
[36]
前記リガンドは、前記細胞にとって内因性である、[35]に記載の方法。
[37]
前記細胞は、幹細胞、癌細胞、または遺伝子の遺伝子治療を必要とする疾患細胞もしくは欠損細胞である、[35]または[36]に記載の方法。
[38]
前記遺伝子は、ジストロフィン、アルブミン、または第IX因子である、[37]に記載の方法。
[39]
前記方法は、in vivoで行われる、[33]~[38]のいずれか1に記載の方法。
[40]
前記方法は、哺乳類で行われる、[33]~[39]のいずれか1に記載の方法。
[41]
前記哺乳類は、ヒトである、[40]に記載の方法。
[42]
前記方法は、in vitroで行われる、[33]または[34]に記載の方法。
[43]
前記方法は、個体の1つまたは複数の細胞で行われ、前記リガンドは、グルコースであり、前記個体は、糖尿病、糖尿病前症、もしくは糖尿病合併症を有しており、及び/または前記発現可能なポリヌクレオチドは、インシュリンである、[33]~[41]のいずれか1に記載の方法。
[44]
前記方法は、個体の1つまたは複数の細胞で行われ、前記リガンドは、癌バイオマーカーの遺伝子産物であり、かつ前記発現可能なポリヌクレオチドは、自殺遺伝子である、[33]~[41]のいずれか1に記載の方法。
[45]
前記方法は、個体で行われ、前記発現可能なポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子であり、前記レポーター遺伝子の前記発現の場所及び/または強度は、前記個体の1つまたは複数の細胞中のリガンドの、空間分布、時間変動、またはこれらの両方に関する情報を提供する、[33]~[41]のいずれか1に記載の方法。
[46]
さらに、前記リガンドと適切に結合する前記アプタマーを設計する工程を含む、[33]~[45]のいずれか1に記載の方法。
[47]
前記方法は、個体、組織、または細胞で行われ、前記発現可能なポリヌクレオチドは、検出可能な遺伝子産物をコードし、前記個体、組織、または細胞の個々がイメージングされる、[33]~[46]のいずれか1に記載の方法。
[48]
個体用治療のモニタリング方法であって、前記個体に:
a)ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含むベクターであって、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、:
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
2)発現可能なポリヌクレオチド;を含む、ベクター、及び/または
b)前記a)のベクターを含む1つまたは複数の細胞、
を提供する工程を含み、
前記リガンドは、前記治療の有効性の指標であるタンパク質の特定遺伝子産物である、方法。
[49]
前記a)のベクター及び/または前記b)の細胞は、前記治療前、前記治療中、及び/または前記治療後に、前記個体に提供される、[48]に記載の方法。
[50]
個体における病的状態の存在、危険性、または易罹患性のアッセイ方法であって、前記個体に以下:
a)ポリAアプタマーポリヌクレオチドを含むベクターであって、前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、5’から3’に向かって、:
1)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
2)発現可能なポリヌクレオチド;を含む、ベクター、及び/または
b)前記a)のベクターを含む1つまたは複数の細胞、
を提供する工程を含み、
前記発現可能なポリヌクレオチドの発現、または発現可能なポリヌクレオチドの発現の不在は、前記リガンドが存在して前記アプタマーと結合したかどうかを同定し、前記個体またはその細胞中の前記リガンドの個々の存在または不在は、前記病的状態の存在、易罹患性、または危険性の指標である、方法。
[51]
前記ポリヌクレオチドが5’から3’に向かって、以下:
a)少なくとも1つのポリA切断シグナルを内部に含む少なくとも1つのリガンド結合アプタマー;及び
b)発現可能なポリヌクレオチド
を含む、ポリAアプタマーポリヌクレオチド。
[52]
前記リガンド結合アプタマーは、前記発現可能なポリヌクレオチドの5’非翻訳領域に位置する、[51]に記載のポリヌクレオチド。
[53]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドは、さらに、少なくとも1つのU/UGリッチ領域、少なくとも1つのGリッチ領域、または少なくとも1つのU/UGリッチ領域と少なくとも1つのGリッチ領域の両方を含む、[50]または[51]に記載のポリヌクレオチド。
[54]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の上流に存在する、[53]に記載のポリヌクレオチド。
[55]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域の上流に存在する、[53]に記載のポリヌクレオチド。
[56]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、少なくとも1つのポリAシグナルは、少なくとも1つのGリッチ領域の上流に存在する、[3]に記載のポリヌクレオチド。
[57]
前記ポリAアプタマーポリヌクレオチドの5’から3’に向かって、前記リガンド結合アプタマーは、1つ、2つ、またはそれより多くのGリッチ領域の上流に存在する、[53]に記載のポリヌクレオチド。
[58]
[51]~[57]のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
[59]
前記細胞は、哺乳類細胞である、[58]に記載の細胞。
[60]
前記哺乳類細胞は、ヒト細胞である、[59]に記載の細胞。
[61]
前記細胞は、ヒトに存在する、[58]~[60]のいずれか1に記載の細胞。
[62]
[1]~[32]のいずれか1に記載のシステムを含む、細胞。
[63]
前記細胞は、哺乳類細胞である、[62]に記載の細胞。
[64]
前記哺乳類細胞は、ヒト細胞である、[63]に記載の細胞。
[65]
[51]~[457]のいずれか1に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[66]
前記ベクターは、ウイルスベクターである、[65]に記載のベクター。
[67]
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、[66]に記載のベクター。
[68]
前記ベクターは、プラスミドである、[65]に記載のベクター。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】ポリAシグナル切断の調節を介した特定細胞内タンパク質のイメージングの実例的戦略を示す。5’UTR内で操作されたポリAシグナル(pA)の効率的な切断は、mRNAの破壊及びレポーターシグナル発現の損失を招く。ポリA部位と結合したアプタマーにリガンドタンパク質が結合することで、切断がブロックされ、その結果、インタクトmRNAが保存されて、レポーターシグナル発現が可能になる。三角は、pA切断部位を示す。明確にするため、3’UTRに通常存在するpAは省略してある。下段画像は、ポリAスイッチをコードするDNAプラスミドを、リガンドタンパク質(tat)をコードするプラスミドとともに(右側)またはなし(左側)で、ヒト293T細胞に同時形質移入することにより得られた。リガンドタンパク質の存在は、イメージングにより容易に検出可能な生物発光レポーターシグナルの発現を、明らかに誘導した。
図1B】小分子-アプタマー相互作用が、ポリA切断を調節することを示す。小分子と結合する改変pAを持つアプタマーを、遺伝子の5’UTRに挿入する。5’UTRポリA切断は、mRNAの3’部分の破壊を招き、したがって遺伝子が発現しない。しかしながら、投与された小分子がアプタマーに結合することで、5’UTRポリAをブロックして、インタクトmRNAの生成を招き、したがってタンパク質が発現する。mRNAの5’UTRを、黒線で示し、目的の遺伝子を橙色四角で示す。小分子リガンドは、桃色六角で示し、切断部位は、黒色三角で示す。
図1C】アプタマー内で操作されたポリA構成要素の詳細な図を示す;
図2】3’UTRで通常生じるポリアデニル化が、mRNA切断、5’断片へのポリAテール付加、及び3’断片の分解に関与することを示す;
図3】ウシ成長ホルモンのポリA切断部位(青色三角)が安定RNAステム中に隠された場合、ポリアデニル化が、測定によれば100%から40%へと大幅に減少したことを示す。(出典Gimmi et al, 1989)[配列番号1;配列番号2];
図4】ポリAセンサーシステムが、既存のアプタマー技術及びイメージングレポーターを利用して柔軟な分子イメージングプラットフォームを形成することを可能にすることを示す。pA:ポリAシグナル。IFP:赤外蛍光タンパク質。Luc:ルシフェラーゼ;
図5】ポリAシグナルが、5’UTRで効率的に切断され得ることを示す。図5A は、レポーター遺伝子である緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の5’UTRにポリAシグナルをU/GUリッチ領域とともに挿入したレポーター遺伝子の構造を示す。図5Bは、U/GUリッチ領域の後に1又は2コピーのGリッチ領域が付加された態様を示す。図5Cは、ポリA切断を促進するように2コピーのポリAシグナルを含ませたものである。様々なポリAモチーフでの切断効率を、フローサイトメトリー分析により、間接的に測定した。X軸は、GFP発現レベルを示す。赤色対角線は、GFP陽性細胞とGFP陰性細胞を分ける。最下段の配置が最も少ない緑色細胞をもたらしたが、これは2つのポリAシグナルコピーがGFPレベルの大幅な低下を招いたことによる[配列番号3];
図6】「クランプ」アプローチを示す。リガンド結合は、アプタマーを、安定二重鎖ステム構造に効果的にロックし、三角で示す切断部位を物理的にブロックする;
図7A】ウイルスtatタンパク質を検出するように設計されたポリAセンサーの用量依存的反応を示す。レポーター発現レベルは、形質移入されたプラスミド量に関して、様々なリガンド構築物投与量でIVIS200生物発光撮像装置により視覚化された。各ウェルには、おおまかに10000の細胞が入っていた。不活性ポリAベクターの発現レベルが、基準となる100%誘導である。
図7B】ウイルスtatタンパク質を検出するように設計されたポリAセンサーの用量依存的反応を示す。誘導「増倍数」は、様々な投与量で、形質移入されたリガンド構築物の存在下対不在下でのレポーターシグナル(ルシフェラーゼ)の比として計算した。レポーターシグナルは、ルミノメーターで測定する。3種の異なるポリAセンサー(活性pAを持つセンサー、不活性pAを持つセンサー、またはpAのない対照プラスミド)を、様々なリガンド投与量で、形質移入されたプラスミドの量に関して示す。
図7C】ウイルスtatタンパク質を検出するように設計されたポリAセンサーの用量依存的反応を示す。ルシフェラーゼmRNA発現のノーザン解析を、全てのプラスミドベクターが共有する5’UTRに対するプローブで視覚化した。TatのmRNAは、mRNAに対するプローブで視覚化した。GAPDHに対するプローブを、内部対照として使用する。pA:ポリAシグナル。結果から、リガンド(tat)の存在が、インタクト全長導入遺伝子mRNA(ランド5、上部バンド)を招くことが確認された;
図8A】テトラサイクリン結合アプタマー(cb32tcアプタマー)の例において、ポリA切断効率が、ポリAシグナルの位置に依存することを示す。(配列番号4)。テンプレートとして使用したtcアプタマー(左側パネル)及びポリAシグナル(AAUAAA)を配置した位置を、示す。ポリAシグナルを作製する目的でtcアプタマー内に作った変異を、青文字で示す。
図8B】テトラサイクリン結合アプタマー(cb32tcアプタマー)の例において、ポリA切断効率が、ポリAシグナルの位置に依存することを示す。プロットは、テトラサイクリン(tc)なしで測定した相対ルシフェラーゼ活性を示し、すなわち、ポリA切断効率を反映している。ポリAスイッチを持たない親プラスミドの活性を100%に設定する。この系列では、A6配置が、最も高いポリA切断効率を示す。A6の白抜き棒グラフは、不活性ポリA(CACACA)対照のものである;
図9A】構築物A6に基づいて、効率の調節に対するP1ステムの長さ及びGUリッチ領域の位置の効果を示す。赤色線は、2つのポリAシグナルを示す。P1長、及びGUリッチ領域とB1-2の間の距離は、bp単位で与えられる。遺伝子発現の誘導は、15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での構築物の相対ルシフェラーゼ活性により示される。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる。P1長が様々でありGU距離が2bpである構築物。結果は、P1長が12bpであると、tcによる遺伝子発現が誘導されることを示す。
図9B】構築物A6に基づいて、効率の調節に対するP1ステムの長さ及びGUリッチ領域の位置の効果を示す。赤色線は、2つのポリAシグナルを示す。P1長、及びGUリッチ領域とB1-2の間の距離は、bp単位で与えられる。遺伝子発現の誘導は、15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での構築物の相対ルシフェラーゼ活性により示される。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる。P1長が12bpであるがGUリッチ距離が様々である構築物。GUリッチ距離が5bpまたは8bpであると、tcによる遺伝子発現が最も良好に誘導される。
図9C】構築物A6に基づいて、効率の調節に対するP1ステムの長さ及びGUリッチ領域の位置の効果を示す。赤色線は、2つのポリAシグナルを示す。P1長、及びGUリッチ領域とB1-2の間の距離は、bp単位で与えられる。遺伝子発現の誘導は、15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での構築物の相対ルシフェラーゼ活性により示される。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる。P1長が様々であるがGU距離が8bpに固定された構築物。GU距離が8bpに固定されている場合、P1長が11bpまたは12bpであると、tcによる遺伝子発現が最も良好に誘導される;
図10A】ループ中の第二のポリAシグナルが、ポリA切断に、より重要な役割を果たしたことを示す。(配列番号5;配列番号6;配列番号7)P1長が12bpで2bpのGU距離を持つ構築物。
図10B】ループ中の第二のポリAシグナルが、ポリA切断に、より重要な役割を果たしたことを示す。(配列番号5;配列番号6;配列番号7)P1長が12bpで8bpのGU距離を持つ構築物。左側:様々な構築物の模式図。活性ポリAシグナルを赤色線で示し、不活性ポリAシグナルを青色線で示し、活性から不活性ポリAシグナル(CACACA)に変換する変異を青文字にしてある。右側:15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での相対ルシフェラーゼ活性。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる。両方の場合において、ループ中の第二のポリAシグナルが、ポリA切断に、より重要な役割を果たした;
図11A】新たなP1ステムに部分的に埋め込まれたポリAシグナルを示し、これは調節効率の改善を招く。(配列番号8;配列番号9)試験した構築物の模式図。構築物A8とA8は、青色四角で示すとおり、1つのA-U対が異なっている。
図11B】新たなP1ステムに部分的に埋め込まれたポリAシグナルを示し、これは調節効率の改善を招く。15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での相対ルシフェラーゼ活性。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる;
図12A】A8構築物に基づいて、P1領域を改変した例を示す。構築物の模式図。A8g構築物は、ポリAシグナルを挟む2つのtcアプタマーを用いる。A8h構築物は、ポリAシグナルを挟む1つのtcアプタマー及び1つのネオマイシンアプタマーを用いる。
図12B】A8構築物に基づいて、P1領域を改変した例を示す。15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での相対ルシフェラーゼ活性。なお、ポリAシグナルの5’に続けて追加のG-C塩基対を挿入すると、これはP1ステムを安定化させるものであるが、ポリA活性の損失を招く(構築物A8f)。このことから、P1ステムを安定化させることによりポリAシグナルを効率的に不活化することができることが確認される。また、2つのtcアプタマーでポリAシグナルを挟むと、調節効率がさらに改善される(構築物A8g)。全ての場合において、15μg/mlのtcを用いるが、A8hは例外で、15μg/mlのtc及び15ug/mlのネオマイシンを用いた;
図13A】ポリA切断が、tc結合核のB1-2バルジ周囲で起こることを示す。([配列番号10;配列番号11;配列番号12])5’UTRポリアデニル化mRNA断片のサンガー配列決定法の結果。黒色垂線は、ポリAテールを5’UTR断片に付加する位置を示す。
図13B】ポリA切断が、tc結合核のB1-2バルジ周囲で起こることを示す。(配列番号13)同定されたポリA切断部位を、tc結合核のB1-2バルジ周囲で、黒色矢印で指し示す;
図14A】ポリA-GU距離の改変、予想される切断部位、及び調節効率に対するそれらの効果を示す。(配列番号14)A8から派生した、様々なP1長の娘構築物の模式図(A8a、A8b、A8c、A8d)。矢印は、図13のデータに基づいて予想される、各構築物の主要ポリA切断部位を指し示す。
図14B】ポリA-GU距離の改変、予想される切断部位、及び調節効率に対するそれらの効果を示す。15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での様々なP1長の構築物の相対ルシフェラーゼ活性。この結果は、A8が依然として最も効率的な配置であることを示す。
図15図15A~15Bは、第42位での変異を調べた結果、より良好な調節効率を持つ構築物が明らかになったことを示す。正方形で囲って印をつけた位置は、変異不耐性であることが知られており、一方丸で囲ったものは、全て、ヌクレオチド交換がtc結合に影響しない位置を示す。第A13位及び第A42位は、非標準塩基対形成を形成し、これらを変異試験用に選択した。結果は、A42G変異が、調節効率の改善を招くことを示す(構築物A8-A42G)[配列番号15]。(15B)15μg/mlのtcの不在下(黒塗棒グラフ)及び存在下(白抜き棒グラフ)での相対ルシフェラーゼ活性。tcありとなしとでの相対ルシフェラーゼ活性の比として求められた調節効率は、プロット下の数字で与えられる;
図16】非変性ゲルを用いた、アプタマーへのtcの結合を視覚化したものを示す。設計したポリAスイッチ(5uM)を含有するRNAアプタマーをIn vitroで転写して、これをtc(50uM)ありまたはなしでインキュベートし、非変性10%ポリアクリルアミドゲルに添加した。Tcは、365nmのUVで励起させて、蛍光発光により直接視覚化した(中段パネル、青色)。次いで、ゲルをSYBRゴールドとともにインキュベートして、RNAを染色した(上段パネル、赤色)。tcとRNAの同時局在化を、重ね合わせにより実証する(下段パネル)。tcチャネルからのピクセル強度を、RNAチャネルからのものに対して正規化し、相対tcシグナルとする。構築物A8-A42Gは、A8と、またはcb32と比較した場合に、より高いtc親和性を有するようである。構築物A8-A42Gは、アプタマー内のtc結合部位に変異を有するが、これらは非常に少ないtc結合をもたらした;
図17】A8-A42Gの用量依存的調節を実証する。A8-A42G構築物(青色円)、不活性アプタマー対照A8-A42G(赤色円)、及び不活性pA対照(AAUAAAからCACACAへの変異、緑色三角)の相対誘導増倍数を示す。各データ点は、tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に相当する;
図18A】効率的ポリA切断及び調節を可能にする、追加のポリAスイッチ位置ならびに様々なアプタマー配置を示す;
図18B】効率的ポリA切断及び調節を可能にする、追加のポリAスイッチ位置ならびに様々なアプタマー配置を示す;
図18C】効率的ポリA切断及び調節を可能にする、追加のポリAスイッチ位置ならびに様々なアプタマー配置を示す;
図19】実例的アプタマーの改変例を示す。アプタマー103Gを、記載の位置で改変して、103GP2及び103GS3というアプタマーを製造した[配列番号16;配列番号17;配列番号18];
図20】実例的103G、103GP2、及び103GS3アプタマーの対応するルシフェラーゼ発現レベル及び誘導を提示する。構築物103GP2は、423倍という最も高い理論上のダイナミックレンジ、及び30倍という最も高いtcによる誘導を示す。
図21】103GP2のP2領域の多様な改変、及び遺伝子発現の誘導に対するそれに応じた影響を実証する[配列番号19]。
図22】103GP3のL3領域の多様な改変、及び遺伝子発現の誘導増倍数に対するそれに応じた影響を実証する[配列番号20]。
図23】103GP3のL1領域の多様な改変、及び遺伝子発現の誘導に対するそれに応じた影響を実証する[配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25]。
図24】P1を安定化させ、その結果ポリA活性の顕著な阻害を招く、塩基対形成の改変の例を示す。改変領域は、明青色四角で囲まれている[配列番号26;配列番号27]。
図25】異なる方向の2つのアプタマーに挟まれたポリAシグナルを持つポリAセンサー構築物、GP2の例を提示する[配列番号28、29、30]。
図26】2つのGP2アプタマーが背中合わせに接続されていて、代替折り畳み形状を可能にする配置を有するポリAセンサー構築物、GP2SLGP2の例を示す。5’GP2アプタマーを、ヘルパーと呼び、3’GP2アプタマーをセンターと呼ぶ。両方とも活性ポリAシグナルを有するが、センターアプタマーのみが、Gリッチ領域を有する。
図27】ヘルパーGP2及びセンターGP2のステム/ループII領域(四角で囲んだ領域)の長さ及び配列における多様性を実証し、遺伝子発現誘導に対する、それらに応じた影響を示す。様々な構築物間での配列多様性を示す[配列番号31~58]。
図28】GP2SLGP2[配列番号59]、C12[配列番号60]、及びD11A[配列番号61]の実例的ポリAセンサーの完全配列を提示する。
図29】GP2SLGP2の用量依存的調節を実証する。各データ点は、tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に該当する。平均誘導増倍数を標準偏差と合わせて示す。誘導は、15μg/mLのTcで104倍に達した。
図30】C12の用量依存的調節を実証する。各データ点は、tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に該当する。平均誘導増倍数を標準偏差と合わせて示す。誘導は、15μg/mLのTcで151倍に達した。
図31】D11Aの用量依存的調節を実証する。各データ点は、tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に該当する。平均誘導増倍数を標準偏差と合わせて示す。誘導は、15μg/mLのTcで127倍に達した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
アプタマーとは、レセプターのように折り畳まれて、特定リガンドと結合する短いRNA配列である19-21。特定リガンドに対して高い親和性を持つアプタマーを創出する効率的な‘in vitro進化の8、12方法が、十分に確立されている7、9、22。アプタマーの結合親和性は、ナノモル範囲に到達する場合が多く、抗体の結合親和性に匹敵する。これに関して、アプタマーは、RNAでできた抗体と見ることができる。アプタマーを抗体と区別するものは、その大きさが小さいこと(50塩基未満のことが多い)及びそのモジュラー性質である。これらの特性により、アプタマーは、その結合機能を失うことなく、他のRNA構造体と一体化してそれを制御することができる。アプタマーは、試験管中で、リガンド依存的様式で自己切断RNAリボザイムを変換して操作し、分子スイッチのように機能することが、実証されている23、24
【0025】
自然は、遺伝子発現を制御するのに、アプタマー機構を「リボスイッチ」の形で活用することに成功している25。多くの自然発生アプタマーが細菌で見られ、インプットリガンドがアプタマーに結合することで、RNA切断の他に、転写減衰、翻訳阻害、及び選択的スプライシングの機構を介して、遺伝子発現を調節する25、26。全ての細菌遺伝子のうち推定2~3%及び数知れないほどの酵母菌遺伝子が、この様式で制御されていると思われる27。アプタマー介在型機構を通じて、レポーター遺伝子発現の場所及び強度は、経時的に、in vivoでの特定細胞内リガンドの空間分布及び時間変動を反映すると思われる。ルシフェラーゼ、チミジンキナーゼ、近赤外または赤外蛍光タンパク質(例えば)などのレポーター遺伝子産物は、例えば、生物発光撮像装置またはポジトロン放出断層撮影(PET)などの最新撮像装置によりモニタリングすることができる。近赤外または赤外蛍光タンパク質は、in vivoでの全身撮像技法に有用である。このアプローチは、研究対象の未変性タンパク質をあらかじめ標識化または操作する必要がなく、よって、それまではin vivoで対処することが困難であった部類の測定に対処できる。
【0026】
RNAアプタマーは、特定リガンドを高い親和性で認識するが、アプタマー結合により生成するシグナルを増幅する強力な方法がこれまで欠けていた。わずかな研究で、アプタマーを使用してリボザイム切断を制御することが報告され、アプタマーを哺乳類細胞で、特定リガンドに反応する分子スイッチとして機能させることができたものの、そのようなセンサーが提示する乏しいダイナミックレンジ(5倍未満の誘導範囲が多い)、及び高い漏出発現28、29は、それらの使用にとって深刻な制約であった。
【0027】
アプタマーを哺乳類細胞でセンシング装置として利用することの妨げとなっているのは、リガンド/アプタマーの結合とレポーター遺伝子発現を結びつける強力なスイッチング/増幅機構の不在であると考えることができる。本開示は、アプタマーとレポーター遺伝子(または、例えば、導入遺伝子など)を、効率的に結合して、生細胞で特定分子署名を検出するまたは導入遺伝子の発現を制御することができるように、そのようなスイッチング/増幅機構を提供する。本明細書中記載されるとおり、1つの実施形態は、リガンドアプタマー相互作用を介したポリAシグナル切断の調節が関与する。
【0028】
「a」及び「an」という語は、請求項も含めて本明細書中、comprisingという語と連携して使用される場合、「1つまたは複数の」を意味する。本開示のいくつかの実施形態は、1つまたは複数の、開示される要素、方法工程、及び/または本開示の方法からなる、または本質的にそれらからなる場合がある。本明細書中記載される方法または組成物はどれでも、本明細書中記載される他の方法または組成物、開示される実施形態のいずれに関しても実行することができ、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、依然として同様または類似の結果を得ることができることが企図される。
【0029】
本開示は、哺乳類細胞で特定分子署名または状態の高感度検出を可能にする、あるいは哺乳類細胞で小分子、例えば、薬物または薬物様分子などを用いて、導入遺伝子の発現を制御する、効率的分子スイッチの創出に、ポリA切断の力を利用することに関する。改変分子スイッチは、ポリアデニル化のアプタマー介在型調節により、レポーター遺伝子または導入遺伝子(例えば)の発現を制御することができる(図1A及び図1B)。ポリアデニル化は、全ての哺乳類細胞に普遍的に存在する必須のmRNAプロセシング機構である。哺乳類ポリAシグナルは、通常、3’非翻訳領域(UTR)に位置する。新たなポリA部位を、正常な転写単位では決して位置することがない5’UTRに人為的に作製した場合、ポリAシグナルの効率的切断は、そのmRNAの破壊を招き、したがって、遺伝子が発現しなくなる。しかしながら、リガンド分子が改変ポリAシグナルに結合することで切断が効率的にブロックされ、その結果、インタクトmRNAが保存されて、遺伝子発現を誘導することが可能になる。
【0030】
[I.ポリAに基づくスイッチの実施形態総論]
【0031】
本開示は、発現構築物中、遺伝子などの発現可能なポリヌクレオチドの3’非翻訳領域(UTR)以外の場所に存在するポリAシグナルを、概して及び意図的に利用するシステムに関する。特定の実施形態において、ポリAシグナルの異所的所在は、本開示のシステムの実施が、関心対象の発現可能なポリヌクレオチドを調節することを可能にする。特定の実施形態において、ポリAシグナルは、発現するポリヌクレオチド(mRNA)の翻訳開始部位の上流に存在し、特定の実施形態においては、ポリAシグナルはmRNAの5’UTRに位置する。特定の実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドは、RNAポリメラーゼIIによる転写が可能である。特定の実施形態において、発現構築物の設計は、意図的に、ポリAシグナルを、発現可能なポリヌクレオチドの5’UTRに配置する。
【0032】
ある特定の実施形態において、5’UTRにポリAシグナルが存在することの狙いは、mRNAの分解であり、この能力が、本開示のシステムで活用される。特定の実施形態において、ポリAシグナルは、1つまたは複数のリガンドが結合できるアプタマーを伴っており、リガンドのアプタマーへの結合が、mRNAを分解するか否かを指図する。特定の実施形態において、mRNAが発現することが望まれる場合、アプタマーに結合するリガンドが提供される。場合によっては、リガンドが特定環境(例えば、細胞、組織、または生体)中に存在するかどうかという疑問に対して、そのリガンドが結合することができる特定のポリA/アプタマーによる調節により、特定の発現可能なポリヌクレオチドが発現するかどうかにより答えがでる。リガンドがアプタマーに結合し、mRNAが発現する実施形態において、本システムは、シグナルの増幅を可能にする。なぜなら、1つのmRNAから複数の遺伝子産物を産生することが可能だからである。
【0033】
図1A及び図1Bに示すとおり、特定リガンドのアプタマーへの結合は、ポリA切断をブロックし、その結果、インタクトmRNAが保存され、したがって、レポーターシグナル(開示のバイオセンサーシステムにおけるものなど)または治療遺伝子などの特定遺伝子(開示の遺伝子制御システムにおけるものなど)が発現する;リガンドはどのような種類のものでも可能であり、例えば、タンパク質または小分子が挙げられる。特定の実施形態において、バイオセンサー実施形態のシステムのリガンドは、特定細胞、組織、または生体にとって内因性であり、一方、遺伝子制御システムの場合のシステムのリガンドは、必ずしも内因性リガンドではない。
【0034】
特定の実施形態において、ポリAシグナルを含む構築物中、アプタマーは、自身の中にポリAシグナルを含む。実施形態によっては、アプタマーは、1つまたは複数のポリAシグナル、例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのポリAシグナルを含む(図11を参照)。CACACAでAAUAAAを置き換えると、ポリAシグナルは大幅に不活性化される、すなわち、ポリAシグナルがブロックされた場合の遺伝子発現レベルの理論上の上限に似る。CACACA対AAUAAAの発現レベル比は、増倍数での遺伝子誘導の理論上のダイナミックレンジを見積もるのに使用される。場合によっては、ポリAシグナルは、標準AAUAAA配列と比較して配列に1つ、2つ、またはそれより多くの変更を有するなどの改変を有する。例えば、AAUAAAの代わりに、別の配列を使用することができ、そのような配列として、少なくとも、AUUAAA、AGUAAA、UAUAAA、CAUAAA、GAUAAA、AAUAUA、AAUACA、AAUAGA、AAAAAG、またはACUAAAが挙げられる。2つ以上のポリAシグナルを構築物に用いる実施形態において、ポリAシグナルは、同じ場合も、異なる場合もある。
【0035】
特定の実施形態において、ポリA切断部位近くでのRNA構造の調節を用いて、ポリA切断の活性を向上させる、及び/またはリガンド結合を向上させる。特定の実施形態において、ポリAシグナルの、アプタマー中またはアプタマー近くへの配置を最適化して、ポリA部位の切断の改善及び/またはリガンドのアプタマーへの結合を可能にする(例えば、図12を参照)。アプタマー内でのポリA部位の間隔は、最適化することができ、アプタマー内の概して中央に位置してもしなくてもよい。ポリAシグナルの位置は、アプタマーの隣接部位が互いに近くで並列することができ、リガンドがアプタマーに結合することを可能にするようになっている場合がある(例にすぎないが、図6を参照)。
【0036】
ポリAシグナルを含む構築物の実施形態において、1つまたは複数の他の配列を利用して、リガンドの結合を向上させる及び/またはポリA切断部位での切断を向上させることができる。特定の実施形態において、ポリAシグナルを含む構築物は、ポリAシグナルの下流に、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのGリッチ領域も含む。特定の実施形態において、ポリAシグナルを含む構築物は、ポリAシグナルの下流に、1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのU/UGリッチ領域も含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数のGリッチ領域は、少なくとも1つのU/UGリッチ領域の下流にある。特定アプタマー中の1つまたは複数の特定ステムもしくはループの長さ、及び/またはポリAシグナル、Gリッチ領域、及び/またはU/UGリッチ領域の位置は、特定の実施形態において、調節効率に影響を及ぼす場合があり(図5図10図13~25)、当業者なら、定法を用いて適切な配置を最適化することができる。
【0037】
ポリAスイッチを含む構築物の配置は、任意の適切な手段により行うことができるが、特定の実施形態において、構築物は、細胞、組織、または生体中に存在し、外来物としてベクター(ウイルスベクター(アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴、レンチウイルスなど)またはプラスミドなど)上に存在する場合も、細胞のゲノム内に存在する場合もある。ポリAスイッチ及び発現可能なポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、標的細胞、組織、または生体に、ネイキッド核酸として提供される場合があり、それらは、適切なキャリア(リポソームまたはナノ粒子など)内に含まれている場合も、ベクター上に存在して、ベクター自身が適切なキャリアを有する場合もある。
【0038】
特定の実施形態において、アプタマーは、特定リガンドと結合するように設計され、そうでなければ、例えば、アプタマーのライブラリーをスクリーニングすることで得ることも可能であるし、既存アプタマーからモデリングすることも可能である。アプタマーの異なる領域を改変して、リガンドの結合及び/またはポリA部位での切断を最適化することができる。特定の実施形態において、ポリAシグナルの位置は、ポリA切断の効率と関連する(例えば、図8を参照)。1つの例において、アプタマーA8を調節して(図13図15を参照)、効率に対して得られる効果を検討する。同じく、例として、表1に、模範的A8アプタマーに基づいた、リガンド結合部位の変異分析の結果を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
当業者は、高い親和性で化合物を標的とするアプタマーを創出する定法7-12を心得ている。
【0041】
特定の実施形態において、2つ以上の別々のポリAスイッチを利用するシステムが採用される。第一アプタマーと第二アプタマーが同一ではなく、第一リガンドと第二リガンドが同一ではない特定の実施形態において、1つのポリA構築物は、第一リガンドと結合する第一アプタマー応答性であることができ、別のポリA構築物は、第二リガンドと結合する第二アプタマー応答性であることができる。他の場合において、複数のアプタマーを有するポリA構築物は、同じリガンドに反応することができる。
【0042】
[II.バイオセンサーシステムの実施形態]
【0043】
本開示は、5’UTRポリAに基づくRNAスイッチを提供し、このスイッチは、生細胞の細胞内署名を検出するための既存技術に勝る複数の重要な利点をもたらすものであり、本明細書中、バイオセンサーアプローチとして採用される。第一に、そのようなセンサーからのレポーターシグナルは、ヒト生細胞でごくわずかな漏出発現しか示さず、特定リガンドタンパク質を検出する際、シグナルは、100倍超で効果的に誘導されたことが、本明細書中示される。この信号対雑音比は、ヒト生細胞でこれまでに達成されていたよりも少なくとも1桁高い大きさであり、様々な実験設定で新規応用を可能にすると思われるダイナミックレンジを与える。第二に、ポリAセンサーは、標識、タグ、または染色を必要とせずに生細胞中の内因性タンパク質を非侵襲性検出/撮像することを可能にし、これまで対処することが困難であった部類の測定に対処できる。最後に、既存のアプタマー技術を本発明のイメージングレポーターシステムと効率的に連結することにより、本方法は、広範囲のタンパク質リガンドを分子撮像により検出するプラットフォームを可能にする。すなわち、ポリAセンサーは、分子検出において現在可能なものよりもはるかに広い用途がある、in vivoで分子署名を検出する独自の能力を提供し、撮像用の臨床使用可能なレポータープローブ(すなわち、PET、MRI、NIRF)を用いて、診療に変換することさえ可能である。
【0044】
そのようなバイオセンサーは、例えば、疾患の特定リガンドのレベルに関して空間的ならびに時間的情報を提供し、インプット情報を用いて、治療目的を達成するために細胞挙動を調節することができる。例えば、ポリAバイオセンサーの例の1つは、リガンドとしてグルコースを認識するように操作されたものであり、それに応じて、改変インシュリンタンパク質の発現を調節して、糖尿病患者のグルコースレベルを調節する。同様のポリAバイオセンサーは、安全スイッチとしても機能することができる。例えば、バイオセンサーは、幹細胞中の癌バイオマーカーの存在を検出するように操作することができる。正常幹細胞が誤って癌細胞に変換された場合、バイオセンサーは、自己破壊のため自殺遺伝子のスイッチを入れると思われる。
【0045】
特定の実施形態において、バイオセンサーシステムに採用される場合の、ポリAを利用したスイッチのリガンド分子の例として、少なくとも、細胞代謝産物;核酸(調節核酸、例えばmiRNAまたは分子に干渉するRNA(shRNAまたはsiRNA)などを含む);小分子;細胞タンパク質(例えば、疾患状態と関連したタンパク質、例えば、癌タンパク質など)、またはウイルス感染により産生されるウイルスタンパク質が挙げられる。
【0046】
実施形態によっては、発現可能なポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子産物、または治療遺伝子産物をコードする。実施形態によっては、レポーター遺伝子産物は、融合タンパク質として治療遺伝子産物と融合している場合がある。他の実施形態において、レポーター遺伝子産物及び治療遺伝子産物の発現は、IRESを用いて、1つのmRNAから別々に翻訳される。レポーター遺伝子の例として、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼなどが挙げられる。治療遺伝子の例として、インシュリン、成長ホルモン、ジストロフィン、アルブミン、第IX因子などが挙げられる。他の場合では、本システムは、レポーター遺伝子産物をコードする発現可能なポリヌクレオチド及び治療遺伝子産物をコードする別個の発現可能なポリヌクレオチドを利用し、それらの発現は、同一または異なるリガンド結合アプタマーにより統制される場合がある。レポーター遺伝子産物用及び治療遺伝子産物用の構築物(複数可)は、同じベクター上にある場合も、異なるベクター上にある場合もある。
【0047】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、直線様式で、5’から3’に向かって機能的に連結した2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くのアプタマーを含む。アプタマーは、実質的に同じ配列または構造を有しても有していなくてもよく、それぞれが、ポリAシグナルを含んでも含まなくてもよい。複数のポリAシグナルが、1つのアプタマー内、または複数のアプタマー内に存在する場合、ポリAシグナルは、同一であってもなくてもよい。特定の実施形態において、1つのポリヌクレオチドは、複数のアプタマーを含むが、Gリッチ領域は1つしか含まず、Gリッチ領域は、場合によっては、ポリヌクレオチドのどのアプタマーに存在してもよいが、特定の場合においては、ポリヌクレオチドの5’から3’に向かって第二のアプタマー上、または分子の最も3’側にあるアプタマー上に存在する。2つ以上のアプタマーを含むポリヌクレオチドの折り畳みは、様々な因子に依存して変わる可能性があり、そのような因子として、ポリヌクレオチドの長さ及びその配列が挙げられるが、特定の場合において、1つのポリヌクレオチドは、複数の折り畳み配置で作用することができる。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、アプタマーがアプタマー間でどのような塩基対形成もしないように構成される(例えば、図26の左側図)が、他の場合では、アプタマー間に少なくとも何か塩基対形成がある(アプタマーの配列の大部分に沿ったものを含む)、例えば、図26の右側図。折り畳み配置によっては、1つのアプタマーのステムループは、同一分子の別のアプタマーのステムループと対向して構成される(図26の右側図を参照)。
【0048】
実施形態によっては、2つ以上のアプタマーを含むポリヌクレオチドは、直線的に、5’から3’に向かって、ある特定の配列により分離されている。ある特定の配列は、ランダムの場合も、Gリッチ領域のように規定されている場合もある。ある特定の場合において、2つのループ間の5’から3’に向かっての直線的長さは、特定の長さのものである。例えば、2つのループ間のヌクレオチド数は、10~25、10~24、10~23、10~22、10~21、10~20、10~19、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、10~11、11~25、11~24、11~23、11~22、11~21、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12、12~25、12~24、12~23、12~22、12~21、12~20、12~19、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、12~13、13~25、13~24、13~23、13~22、13~21、13~20、13~19、13~18、13~17、13~16、13~15、13~14、14~25、14~24、14~23、14~22、14~21、14~20、14~19、14~18、14~17、14~16、14~15、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、15~16、16~25、16~24、16~23、16~22、16~21、16~20、16~19、16~18、16~17、17~25、17~24、17~23、17~22、17~21、17~20、17~19、17~18、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、18~19、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~25、21~24、21~23、21~22、22~25、22~24、22~23、23~25、23~24、または24~25ヌクレオチドの場合がある。アプタマー中またはポリヌクレオチド中の2つのループ間のヌクレオチド数は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25の場合がある。特定の場合において、2つの異なるアプタマーの少なくとも一部分の間に塩基対形成がある複数のアプタマーの配置において、1つのループと別のループとの間の距離は、アプタマーのステムループ2配列を含めて(図26を参照)、10~25ヌクレオチド、例えば、18~20ヌクレオチドである。
【0049】
[III.バイオセンサーシステムの使用方法]
【0050】
本開示の実施形態において、特定の所望の生物学的状態をセンシングまたは検出するための本開示のシステムの利用方法が存在し、目的として、例えば、ある特定細胞、組織、及び/または生体をはじめとするある特定場所または環境中の1つまたは複数の組成物の有無の検出が挙げられる。バイオセンサーシステムは、空間的及び/または時間的様式で、特定環境または場所について情報を提供することができる。バイオセンサーシステムは、特定の疾患状態またはそれに対する易罹患性もしくは危険性について情報を提供することができる。バイオセンサーシステムは、個体が、特定疾患を有する、または特定疾患を有する危険性があるかどうか、あるいは個体が疾患の治療に反応するかどうかを判定する方法に使用することができる。バイオセンサーシステムは、ある特定の治療が個体に有効であるかどうかの情報を提供することができる。
【0051】
特定の実施形態において、バイオセンサーシステム用のリガンドは、細胞、組織、または個体にとって、内因性である。リガンドは、あらゆる時点及びあらゆる組織において、内因的に発現する場合も、そうでない場合もある。内因性リガンドは、組織特異的、または時間特異的様式で発現する場合がある。ある特定の実施形態において、本システムのポリヌクレオチドを含むベクターは、個体のある特定組織または領域を標的とするように指向化されており、この組織または領域は、特定内因性リガンドを有するまたは有さないことが疑われる。
【0052】
バイオセンサーシステムを利用する実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドの発現は、ポリAスイッチ以外の1つまたは複数の実体により制御される場合がある。すなわち、場合によっては、ある特定の環境でまたはある特定の時間設定(例えば、生物学的発達のある特定段階または疾患ステージなど)で発現を許容または阻害する1つまたは複数の転写配列要素が存在する場合がある。ポリAスイッチシステムの発現がある特定環境中で起こることが望ましい場合、ポリヌクレオチドの発現は、組織特異的プロモーターにより制御することができる。組織特異的プロモーターの選択は、問題の環境により決まる場合があり、組織特異的プロモーターの例は、当該分野で既知であり、例えば、TiProDなどのデータベースで利用可能である。
【0053】
1種または複数の治療が個体に有効であるかどうかを判定することが望ましい場合、治療に関する特定指標化合物の有無を検出するためなどで本システムを個体に使用してから、治療を提供することができ、次いで、治療が提供された後に1回または複数回、本システムを個体に使用して特定指標化合物の有無を検出することができる。他の実施形態において、本システムは、治療が提供された後に初めて、1回または複数回、個体に対して治療をモニタリングするため、例えば治療の効果の指標である特定化合物の有無を同定するためなどに使用される。
【0054】
場合によっては、バイオセンサーシステムを採用して情報を提供するが、他の実施形態では、バイオセンサーシステムは、治療目的で利用される場合がある(及び任意選択で、情報も提供する場合がある)。例えば、本システムは、リガンドとして代謝産物を認識することができ、代謝産物リガンドがアプタマーに結合する際に、代謝産物がマーカーである(またはその存在もしくはレベルが病的状態もしくはその易罹患性の指標である)病的状態の治療をもたらす遺伝子産物の発現を許容する場合がある。他の実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドは、それ自身は治療遺伝子産物ではないが、有害な病的状態またはその易罹患性もしくは危険性の指標であるリガンドが存在する場合に発現する自殺遺伝子産物であり;特定の実施形態において、リガンドは、例えば、癌性または前癌性である細胞中に存在するようになる。
【0055】
本開示のバイオセンサーシステムにおいてアプタマーを調節することができるリガンドの例として、少なくとも、細胞代謝産物、小RNA(miRNAなど)、正常及び異所性細胞タンパク質、ウイルス及び他の病原により発現した外来タンパク質、細胞死を誘導する自殺タンパク質などが挙げられる。
【0056】
本開示のバイオセンサーシステムにおいてアプタマーを調節することができるリガンドの例として、少なくとも、細胞代謝産物、小RNA(miRNAなど)、細胞タンパク質、などが挙げられる。
【0057】
[IV.遺伝子制御システムの実施形態]
【0058】
遺伝子発現を制御する能力は、特定遺伝子産物の機能を解明する、または特定タンパク質のレベルを操作して治療効果をもたらす目的で、常に有用であった。本開示の実施形態において、ポリAスイッチをmRNAの5’UTRに埋め込んだ場合、ポリAシグナルの切断は、mRNAの分解を招き、したがって導入遺伝子発現が失われる。ポリAスイッチを阻害することができる薬物様小分子(例えば)は、インタクトmRNAの保存をもたらし、したがって、遺伝子発現を誘導する。本明細書中他の部分で記載されるとおり、そのようなスイッチにより制御される導入遺伝子発現は、ヒト生細胞で非常に低い漏出発現しか示さず、小分子(この場合は、テトラサイクリン)を投与した際、導入遺伝子発現は、効率的に30倍超で誘導された。この遺伝子制御システムの最適化及び一般化を行うことで、多くの個別化遺伝子制御システムの創出につなげることができ、例えば、個別化遺伝子制御システムはそれぞれ、FDA承認小分子薬などのリガンドにより制御されるものである。トランスアクチベーターを用いた転写制御に基づく現行の遺伝子制御システムとは対照的に、本明細書中記載されるポリAに基づくシステムは、どのようなタンパク質トランスアクチベーター産物(重篤な宿主免疫応答を引き起こす可能性がある)の発現も必要とせず、かつどのような専用プロモーター配列要素の使用にも依存せず、したがって、任意の内因性遺伝子または改変ベクター転写単位中に「埋め込む」ことができる「ポータブル」制御システムとなる。そのため、本システムは、1つの転写単位(1つの発現構築物)しか必要とせず、組織特異的(空間的)及び時間的様式で導入遺伝子を制御するのに使用可能であるようなプロモーター順応性を有する。そのような遺伝子制御システムは、安全な小分子をRNAに基づく非免疫原性ポリAスイッチと組み合わせているので、臨床用途ならびに生物学的研究において使用する上で非常に安全性が高いと思われる。
【0059】
特定の実施形態において、遺伝子制御システムは、小化合物を、ポリAに基づくスイッチ用のリガンド分子として使用する。小化合物の例として、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体(例えば、ドキシサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、クロロテトラサイクリン、サンサイクリン、メタサイクリン、またはチゲサイクリンなど)またはそれらの機能的誘導体;アミノグリコシドまたはそれらの機能的誘導体;ラパマイシンまたはそれらの機能的誘導体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、デフォロリムス、リダフォロリムス);及びFDA承認薬またはそれらの機能的誘導体が挙げられる。遺伝子制御システムの他の実施形態において、小分子以外のリガンド、例えばタンパク質、ペプチド、核酸などが使用され、特定の実施形態において、本システムのリガンドは、適切なキャリアに入れられて提供される。
【0060】
ある特定の実施形態において、遺伝子制御システムは、2つ以上のアプタマーを使用して、異なるリガンド、例えば、異なるテトラサイクリン類似体に個別に反応させる。すなわち、1つのポリAスイッチシステムをテトラサイクリンなどのリガンドに反応するように作ることができる場合には、アプタマーRNA配列を変異させて異なるテトラサイクリン類似体(ドキシサイクリンなど)に反応するようにすることにより、多くの個別化遺伝子制御システムを創出することができる。
【0061】
実施形態によっては、発現可能なポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子産物、または治療遺伝子産物をコードする。実施形態によっては、レポーター遺伝子産物は、融合タンパク質として治療遺伝子産物と融合している場合がある。他の実施形態において、レポーター遺伝子産物及び治療遺伝子産物の発現は、1つのmRNAから、IRESを用いて、別々に翻訳される。レポーター遺伝子の例として、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼなどが挙げられる。治療遺伝子の例として、インシュリン、成長ホルモン、ジストロフィン、アルブミン、第IX因子などが挙げられる。他の場合、本システムは、レポーター遺伝子産物をコードする発現可能なポリヌクレオチド及び治療遺伝子産物をコードする別個の発現可能なポリヌクレオチドを使用し、それらの発現は、同じまたは異なるリガンド結合アプタマーにより統制される場合がある。レポーター遺伝子産物用及び治療遺伝子産物用の構築物(複数可)は、同じベクター上または異なるベクター上にある場合がある。
【0062】
[V.遺伝子制御システムの使用方法]
【0063】
特定の実施形態において、本開示のシステムは、遺伝子制御用途に使用することができ、その用途では、特定の発現可能なポリヌクレオチドが、特定場所で及び/または特定の事象もしくは時点で発現することが望まれる。ある特定の実施形態において、遺伝子発現の制御は、特定遺伝子産物の機能の解明を可能にし、一方他の実施形態では、遺伝子発現の制御は、治療効果をもたらす。場合によっては、導入遺伝子の発現可能なポリヌクレオチドは、発現することが望まれず(例えば、ある特定の時点及び/または場所において)、リガンドは、導入遺伝子と一緒に提供されない場合があるか、その発現が阻害される場合があり、リガンドが発現することが望まれるときに初めて発現して、導入遺伝子(例えば、ある特定の調節配列要素を持つもの)の発現のためにそのアプタマーと結合することができる。
【0064】
ある特定の実施形態において、遺伝子制御システム実施形態用のリガンドは、細胞、組織、または生体にとって内因性のものではない。特定の実施形態において、遺伝子制御用のシステムのリガンドは、薬物または薬物様分子(少なくともいくつかの実施形態において、薬物様は、典型的には分子量が500ダルトン未満の小分子化合物と定義される)である。特定の実施形態において、遺伝子制御システムのリガンドは、任意の適切な様式の1種、例えば、経口、筋肉内、吸入によるなどで、個体に提供される。
【0065】
ある特定の実施形態において、ポリAスイッチに基づく遺伝子制御システムは、正負のフィードバックループを持つ自己調節システムとして構成することができる。遺伝子をそれ自身の産物により調節することは、自己調節として知られるが、これは、独特の応用特性を生み出すことができる。特定の実施形態において、ポリAスイッチは、自己調節システムとして機能するように構成することができる。すなわち、ポリAスイッチの制御下にある遺伝子の産物は、それ自身の発現を正または負に調節することができる。負の自己調節は、遺伝子産物が、それ自身の発現を抑制する場合に生じる。これは、定常状態発現の頑健性を高めることが知られており、細胞中の遺伝子発現レベルの変動を縮小する。(1)ポリAスイッチで構成することができる負の自己調節の一例は、グルコースを検出するように設計されたバイオセンサーシステムである。この場合、ポリAスイッチは、リガンドとしてグルコースを認識するアプタマーを用いて操作され、グルコースの結合に反応して、インシュリンタンパク質をコードする導入遺伝子の発現を作動させる。誘導されたインシュリン発現は、グルコースレベルを低下させ、その結果、インシュリンの発現が減少する。対照的に、正の自己調節は、遺伝子産物が、それ自身の発現を促進する場合に生じる。これは、双安定状態を作り出すことが知られている。すなわち、いったん導入遺伝子がそのリガンドにより活性化されると、その遺伝子は、高発現状態にロックされて、最初のインプットリガンドが消失した後でさえも、自身をONに維持することができる(2-6)。ポリAスイッチで構成することができる正のフィードバックシステムの一例は、ウイルスtatタンパク質を検出するように設計されたバイオセンサーシステムである。この場合、ポリAスイッチは、リガンドとしてtatを認識するアプタマーを用いて操作され、tatの結合に反応して、tatタンパク質をコードする導入遺伝子の発現を作動させる。最初に導入されたtatタンパク質が、より多くのtatタンパク質の発現を誘導する。これは、正のフィードバックループを確立し、システムを高発現状態にロックして、自身をONに維持する。
【0066】
[VI.本開示のキット]
【0067】
本明細書中記載される組成物のどれでも、キットに含めることができる。非限定的な例において、本開示に包含される任意のポリヌクレオチド、リガンド、またはベクターを、キットに含めることができる。
【0068】
キットは、本開示の組成物を適切に等分割したもの(複数可)を含むことができる。キットの構成要素(複数可)は、水性媒体に入れて、または凍結乾燥状いずれかでパッケージ化することができる。キットの容器手段は、概して、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ビン、シリンジ、または他の容器手段を含むことになり、その中に、構成要素を、好ましくは適切に等分割して、入れることができる。キットに複数の構成要素が存在する場合、キットは、概して、第2、第3、または他の追加容器を含むことになり、その中にさらなる構成要素を別々に入れることができる。しかしながら、構成要素を様々な組み合わせでバイアルに入れることもできる。本発明のキットは、典型的には、市販用に容器を密に詰めて収容する手段も含むことになる。そのような容器として、例えば、射出成形またはブロー成形したプラスチック容器が挙げられ、その中に所望のバイアルを保持させる。
【0069】
キットの構成要素が、1種及び/または複数の溶液に含まれて提供される場合、溶液は、水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物は、シリンジ使用可能な組成物に配合することもできる。この場合、容器手段は、それ自身、シリンジ、ピペット、及び/または他の同様な装置であることが可能であり、そこから、配合物を、身体の感染部位に施す、動物に注射する、及び/またはキットの他の構成要素に施す及び/または他の構成要素と混合することさえもできる。しかしながら、キットの構成要素は、乾燥粉末(複数可)として提供することもできる。試薬及び/または構成要素が、乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒もまた、別の容器手段に入れて提供することができることが、想定されている。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、本開示の好適な実施形態を実証するために挙げられている。当業者には当然のことながら、実施例に開示される技法は、本開示を実施するのにうまく機能するように、本発明者らが発見した本技術に倣うものであり、したがって、その実施に好適な様式を構成するものとみなすことができる。しかしながら、当業者なら、本開示に照らして、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお類似または同様の結果が得られることを認めるはずである。
【0071】
[実施例1]
[開示の革新性]
[ポリA切断の力を利用した細胞内センサーシステムの作製]
【0072】
ポリアデニル化は、全ての哺乳類細胞に普遍的に存在する必須のmRNAプロセシング機構である。ヒストン遺伝子を除いて、哺乳類タンパク質をコードする全てのmRNAは、およそ200~300のアデノシン残基からなる3’末端を有する30、31。ポリAテールの形成は、連続した2工程を含む:プレmRNAの切断、及びそれに続く新たに切断された3’末端へのポリAテール付加。このポリアデニル化過程は、プレmRNAに存在する配列要素により、及び多くの多量体タンパク質因子からなるポリアデニル化機構により指示される。ポリAテール付加の前に、プレmRNAは切断されなければならない。切断部位は、高度に保存されたAAUAAAシグナルと、下流のUまたはGUリッチモチーフとの間にある(図2)。切断は、「A」ヌクレオチドの後ろで優先的に起こる32。重要なことは、切断された3’RNA断片が、キャップ構造を失ったために速やかに分解されることである。
【0073】
複数の報告から、ポリA部位内のRNA二次構造は、哺乳類細胞中のポリアデニル化効率に大きな影響を及ぼす可能性があることが示されている6,33,34。1つの研究では、安定化RNAステム内の切断部位をただ隠すだけで、切断/ポリアデニル化の程度が大幅に低下したことが報告された図3)。このことは、切断が局所RNA構造により効率的に制御される可能性があることを示唆する。1つの実施形態において、タンパク質結合の検出及びレポーター遺伝子発現の制御は、ポリA切断部位近くのRNA構造のこの単純だが効果的な調節に基づく。図1に示すとおり、新たなポリA部位を、正常な転写単位ではそれらが絶対に局在しない5’UTRに、人為的に作製した場合、そのポリAシグナルの効率的切断によって、切断されキャップのとれた3’mRNA断片の速やかな分解のため、mRNAの分解及びレポーター遺伝子発現が失われる。遺伝子の後方で3’UTRに位置する正常ポリAシグナルとは異なり、5’UTRに人為的に挿入されたポリAシグナルは、mRNA中で「自殺単位」として機能する。mRNAは、切断部位にアプタマーを挿入することにより、自殺から救出することができる。特定リガンドがアプタマーに結合することにより、切断をブロックし、その結果インタクトmRNAが保存され、したがってレポーターシグナルまたは導入遺伝子産物が発現する。本明細書中他の部分で記載されるとおり、そのようなポリA切断介在型センサーは、アプタマー結合を介したリガンドのダイナミックセンシングを通じた特異性、及びレポーター遺伝子または導入遺伝子のリガンド依存性指数関数的増幅による感度の両方を提供する。
【0074】
[遺伝子でコード可能なイメージングツールとしてのポリAセンサーの利点]
【0075】
ポリAセンサー配列は、送達用プラスミドまたはウイルスベクター(例えば)の型式でDNAとしてコードすること、または細胞(幹細胞または癌細胞など)もしくは移植用及び遺伝子導入用途のマウスのゲノムに遺伝子操作で導入することが可能である。遺伝子でコードされたセンサーの1つの重要な利点は、in vivoでそれらの空間分布を限定し、及びそれらの時間的間隔を制御する能力である。非標的組織の広い範囲を非意図的に染色する可能性がある化学染料プローブとは異なり、RNAセンサーの発現は、組織特異的プロモーターをDNAベクターに含ませて使用することにより、標的細胞または組織に有効に限定することができる。特定の実施形態において、これらのさらなる安全特性は、in vivoでのバックグラウンドノイズを減少させるだけでなく、センサーがその標的リガンドに結合することから生じる副作用の可能性を明らかに最小限に抑えると思われる。そのうえさらに、シグナル増幅を欠いた検出方法とは異なり、細胞中の1つのコードされたDNAコピーは、数百の同一RNAセンサーを生成することができ、次いでセンサーは、数千を超えるレポータータンパク質を生成することができ、さらにレポータータンパク質による酵素反応を通じて、結果的に、シグナルの指数関数的増幅をもたらすことができる。
【0076】
[ポリAセンサーは、in vivoで分子署名(molecular signature)をモニタリングするために重大な障壁を乗り越えることができる]
【0077】
ポリAセンサーは、in vivoで、センシング、増幅を、シグナル検出/イメージングと連結することにより、切望されていた生体タンパク質モニタリング機構を提供する。上記のとおり、タンパク質は化学相互作用のための官能基を豊富に有しているため、高い親和性でタンパク質を標的とするためのアプタマーを作製する方法は、十分に確立されている7-12。例えば、数例挙げるとすると、HIV tatタンパク質35、36、トロンビン37、血管内皮増殖因子38、DNA修復タンパク質Ku39、及び腫瘍制御因子オステオポンチン40と特異的に結合するアプタマーが作製されてきた。アプタマーの特異性は、転写因子NF-kBのP50アイソフォームとP65アイソフォーム41、42またはタンパク質キナーゼERK2の未ホスホリル型とホスホリル型43など同一タンパク質の異なるアイソフォームを認識することさえ可能にする。これらの例は、疾患関連タンパク質及びそれらの代謝状態を認識する上でのアプタマーの有効性を実証する。
【0078】
イメージングレポーターの分野も急速に発展しつつある。例えば、GFPは、遺伝子発現のレポーターとして生物学の多くの分野に大変革をもたらしたが、in vivoイメージングでのそれらの使用は、主に光学撮像の組織透過性の限界故に、透明組織に限定されてきた。深部組織を透過することができる励起/発光波長を持ち、全身イメージングに適した改変赤外蛍光タンパク質(IFP)が開発されてきている44。その上、放射性基質[18F]FHBGと結合したチミジンキナーゼが、臨床の場でin vivoでのPETイメージングに使用可能であることが実証されてきている45-47。さらに最近では、GFPの発現をin vivoでモニタリングする新たな核磁気共鳴撮像(MRI)法が開発され、磁気共鳴を介した非侵襲性イメージングへのGFPの使用を新たにもたらした48
【0079】
すなわち、アプタマーに基づくセンシング及びレポーターに基づく検出/イメージングは、それらの意図する機能において強力であるが、組み合わせることで、in vivoでの分子署名検出などにおいてより一層強力となる。欠けているものは、これら2つの機能を連結することができ、「アプタマーのセンシング」を、現在の撮像様式または他の検出方法で検出することができる「レポーター発現」へと翻訳する強力な生物学的増幅器である。これを実現する実施形態を一般化した概略図を図4に示す。特定のタンパク質リガンドをモニタリングするため、高親和性アプタマーを、in vitro進化を通じて、最初に作製する。ポリAスイッチは、生物学的増幅器として機能するが、これは、アプタマーとイメージングレポーターとを連結して、センシング装置を形成する。そのようなセンシング装置は、コード化してDNAベクターに導入し、適切なウイルスまたは非ウイルス転移方法を用いて標的細胞/組織に送達することができる。細胞リガンドの存在下、アプタマーの結合は、レポーター遺伝子のリガンド依存性指数関数的増幅を通じて強力なシグナルを生成する。重要なことは、アプタマーの柔軟性が、広範囲の生来タンパク質を検出する可能性を許容し、レポーター選択の柔軟性が、異なる検出様式を介した可視化を許容することである。すなわち、提案されるポリAセンサーは、既存技術を用いて、柔軟で非侵襲性のin vivo分子検出戦略を可能にするものであり、この分子検出戦略は天然分子署名の存在及び濃度に依存する。
【0080】
この10年間に、高処理配列決定及びDNAマイクロアレイから得られた爆発的な量の遺伝子発現データは、将来、疾患のバイオマーカーとして利用できる可能性があるタンパク質及びそれらの変異アイソフォームを何百種ともたらした。in vivoで分子署名を探査することは、診断に役立つだけでなく、特定タンパク質バイオマーカーの増加に基づいた細胞増殖、代謝の変化、及び治療反応の測定も提供する(例えば)。ある特定の実施形態において、ポリAセンサーは、これまで対処することが困難であったこの部類の測定に対処し、分子検出において、現在可能な範囲よりも大幅に広がった用途を提供する。
【0081】
特定の実施形態において、本開示の方法及び組成物は、導入遺伝子の発現を正確に制御する能力を提供するが、現在使用されている遺伝子発現試薬、例えばハイブリッド転写トランスアクチベーター及び特殊プロモーターなどへの依存を回避する。特定の実施形態において、本方法は、複数の発現構築物を使用しなければならないことを回避し、ハイブリッドトランスアクチベーターの発現による毒性(外来タンパク質であるトランスアクチベーターに対して向けられる宿主免疫応答の誘導を含む)の可能性を回避し、専用プロモーターの必要性に伴う困難を回避し、さらに実験用途及び治療用途で利用可能な数の限られた小分子インデューサー(利用可能なシステムが限られた数しかないため)を使用しなければならないことを回避する。
【0082】
その代わりに、本開示のポリAに基づくシステムは、どのようなタンパク質トランスアクチベーター産物の発現も必要とせず、どのような専用プロモーター配列要素の使用にも依存しない。すなわち、本システムは、任意の内因性遺伝子または改変ベクター転写単位に「埋め込む」ことができる「ポータブル」制御システムを提供する。そのため、本システムは、1つの転写単位(1つの発現構築物)しか必要とせず、そのプロモーターは、プロモーターを使用することで組織特異的(空間的)及び時間的様式で導入遺伝子を制御することができるような順応性がある。ポリアデニル化が全ての哺乳類細胞に存在する普遍的性質であることで、本システムは、広く応用可能となっている。
【0083】
[実施例2]
[実例的初期実験]
この実施例に記載される初期実験は、ポリAセンサーシステムの開発を示す。具体的には、複数のポリAシグナルの分析を通じて、標準発現ベクターの5’UTRに埋め込んだ場合に、ヒト細胞で効率的に切断されるポリA切断介在型センサーが開発される。重要なことは、ここで記載されるのが、ポリA切断効率に影響することなく、センサーの一部分として特定リガンドと結合するように設計されたアプタマー配列だということである。最後に、ヒト生細胞でリガンドタンパク質を同時発現することにより、センサーは、そのリガンドを容易に検出し、100倍超に増加したレポーターシグナルを招く。結果から、特定標識を含まない細胞内タンパク質の検出が、ヒト生細胞で容易に達成されること、及び誘導の度合いは、信号対雑音比で測定した場合に、多くの用途で有用であると思われる範囲になることが、実証される。
【0084】
[ヒト細胞中、5’UTRで効率的に機能するポリAモチーフの同定]
【0085】
ポリA切断の調節を介してタンパク質を検出及び撮像する総合戦略は、5’UTRでのポリAシグナルの高度に効率的な切断に大きく依存する(図1)。第一工程は、細胞での効率的なポリA切断を可能にする、ポリAシグナル候補ならびに関連する上流及び下流モチーフを試験することであった。ポリA切断効率を試験するため、哺乳類発現ベクターが関与する一過性形質移入アッセイ49を、GFPまたはルシフェラーゼレポーター(例にすぎない)とともに使用した。ポリAシグナル配列候補を、発現ベクター内のレポーター遺伝子または導入遺伝子の5’UTRにクローン導入した。不活性ポリAシグナル(AAUAAAからCACACAへの変異)を持つ対照ベクター50も作って、ヒトHEK293T細胞への形質移入後の活性ポリAシグナルによる切断の効率と比較するための、発現レベルの上限とした。
【0086】
複数の異なるポリAシグナルならびに関連する上流及び下流モチーフを、初期分析に使用した。試験したこれらポリAシグナルの大部分は、5’UTRにおいて異なる度合いでレポーター遺伝子発現を抑制するそれらの能力に反映されるとおり、ヒト細胞である度合いで機能するように見えたものの、Proudfoot研究室が発表した1種の合成ポリA51は、特定の実施形態において、試験条件下で特に有用であった。切断活性のレベルが他より見かけ上高いことに基づいて、このポリAを、さらなる試験目的に使用した。切断活性の効率を改善するため、ポリA配列に一連の改変を行って評価した。もっとも目立ったことは、Gリッチ配列の配置52がポリA部位の下流であると、切断が著しく向上し、おそらくこれは、Gリッチ配列により引き起こされる転写の一過性停止による53、54。Gリッチ領域のコピー数を1から2に増やすと、切断はさらに向上した。「AAUAAA」を2コピー直列で配置することも、切断を目に見えて増加させた(図5を参照)。得られる、「2AAUAAA+スペーサー+G/Uリッチ領域+2Gリッチ領域」の組み合わせを含むポリA配置を、その後の試験で、一般テンプレートとして用いた。
【0087】
特定の実施形態において、「AAUAAA」とG/Uリッチ領域の間のスペーサー長を14塩基から25塩基に変更すること、またはスペーサーをアプタマーに置き換えることは、ポリA切断効率にほとんど影響を及ぼさず、試験した範囲内でスペーサー長は自由であること及び様々な長さのアプタマー配列を収容できることを示す。すなわち、ポリAシグナルは、ヒト細胞中、5’UTRで効率的に切断可能であり、スペーサー内での配列変更も変更によっては十分耐性がある。
【0088】
[ヒト細胞中の細胞内リガンドを検出するためのポリAに基づくセンサーにアプタマーを操作して導入する試み]
【0089】
ポリAシグナルが細胞中5’UTRで切断される能力を実証するため、特定の実施形態において、リガンド結合アプタマーを操作して、ポリAセンサーの一部分とする。これにより、センサーは、特定のタンパク質リガンドと結合することができ、その結果、切断が阻害され、したがって、レポーター発現が誘導される。具体的な実施形態として、HIV tatタンパク質と結合するアプタマーを使用した。この結合は、他の補因子が関与しない単純な1対1相互作用であり、解離定数Kdは0.1nM35、36で、抗体により達成される親和性に匹敵する。効率的センサーを作製するため、「クランプ」と称する操作原理を用いる「合理的設計」アプローチを利用した(図6)。今回、アプタマーは、戦略的に、AAUAAAシグナルと隣接するように配置し、スペーサー領域の大部分を置き換える。得られるRNAは、2つの主要立体構造間で切り替わるように設計される:一方は、リガンドがセンサーに結合し、したがってスペンサー領域を「クランプ」するもの;他方は、センサーが結合しておらず、スペーサーが、主に一本鎖として存在するもの。第一の立体構造において、リガンド結合は、スペーサーを安定二本鎖ステム構造に効率的にロックし、このことが、ポリA介在型切断を大幅に減少させる6、33、34。そのうえさらに、リガンドは、切断部位に物理的にドッキングし、切断を開始するために必要とされるポリA関連細胞タンパク質の接近を本質的にブロックする。
【0090】
この「クランプ」原理に基づいて、40を超える様々な構築物を設計し、その中で、スペーサーの安定性及び長さ、ならびにスペーサー内のアプタマーの配置を調節して、「結合」状態(リガンドが存在、切断なし)及び「非結合」状態(リガンド不在、切断)間のレポーター活性の比を最大化した。この設計シリーズをヒト細胞で試験することにより、この「クランプ」戦略が、卓越したスイッチング挙動を持つ高感度センサーをもたらすことが明らかとなった。1つの設計は、非結合状態での非常に低い漏出発現、及び細胞にリガンドが存在する場合の強力なレポーターシグナル誘導を示した(以下を参照)。上記の操作実施形態は、それらが、生細胞において細胞内リガンドを検出する目的で機能的センサー/増幅器を建設するのに、改変RNAを、どのように効率的に利用することができるかという例を確立したとおり、効率的なポリAに基づくセンサーシステムを作り出す。
【0091】
[細胞中での細胞内リガンドに応じたポリAセンサーの機能の実証]
【0092】
改変ポリAセンサーを用いて、リガンド発現ベクターを、センサーベクターと一緒に、293T細胞に形質移入することは、ルシフェラーゼレポーターシグナルの劇的な増加を招いたことが示された(図7)。リガンドが存在しない場合、そのようなセンサーからのレポーターシグナルは、非常に低い漏出発現を示した(図7a、不活性ポリA対照の発現レベルの1%未満)。この漏出発現は、リガンドの存在下対不在下でのレポーターシグナルの比として「増倍数」で誘導を計算するための基準レベルを提供する。重要なことは、センサーの反応が「調整可能」であり、用量依存様式で、細胞中のリガンドの量を反映したことである。そのうえさらに、誘導は、最高120倍(図7b)、または参照として不活性ポリAセンサーの発現レベルを用いて理論上誘導可能な範囲の約76%(図7A)にまで達した。この誘導度合いは、ヒト生細胞でこれまでに達成さたものよりも大きさが約2桁大きく、センサープラットホーム用の基準を形成するのに十分である。対照的に、不活性ポリAまたはポリAセンサーが埋め込まれていない親ベクターで形質移入した細胞では、目立った誘導は観察されず(図7B)、誘導の原因となる機構が、実際に、ポリAシグナルに介在されることを示す。
【0093】
mRNAレベルにおいて、反応も、提案される機構と一致することを確立するため、ノーザン解析を、リガンド結合に反応したルシフェラーゼmRNAについて行った。図7Cに示すとおり、リガンドが存在しない場合(レーン4)、ルシフェラーゼmRNAは観察されず、切断されたmRNAが迅速に分解されたことを示唆した。対照的に、リガンドの存在は、ルシフェラーゼmRNAの量を顕著に増加させた(レーン5)。そのうえさらに、参照の切断5’断片よりも僅かに高いバンドが、活性センサーを保有する細胞で観察され(レーン4、5、レーン1との比較)、切断された5’断片がポリアデニル化されていたことを示唆した。RT-PCR及び次いでcDNA配列決定を用いて、ポリAテールが、実際に、5’切断断片の末端で、予想される切断部位に付加していたことを確認した。まとめると、これらの結果は、リガンド結合が、ポリA切断をブロックし、誘導のためのインタクトmRNAを保存した機構とほぼ一致する。
【0094】
RNAに基づくセンサーのin vivoでの有用性についての以前の実証
【0095】
in vivoで効率的に機能するハンマーヘッド型リボザイムの自己切断に基づく別のRNAセンサーのin vivo実験が行われてきている4、55。このリボザイムを用いてRNAセンサーが構築されたが、このRNAセンサーでは、5’UTRに埋め込まれたリボザイムの自発的自己切断がmRNAの分解を招き、したがってレポーター遺伝子発現が失われる。リボザイムの小分子阻害剤であるトヨカマイシンの存在は、リボザイム自己切断をブロックし、その結果、インタクトmRNAが保存され、したがって、レポーター発現が誘導される。リボザイムに基づくセンサーの機能をin vivoで実証するため、リボザイムに基づくRNAセンサーをコードする組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を作製し、宿主組織としてヌードマウスの目に送達した。対照として、不活性リボザイムをコードするAAVを送達して、ハムストリング筋肉を感染させた。次いで、分子トヨカマイシンを、マウスの背側皮膚に薬物ペレットを埋め込むことで投与した。マウスを、IVIS200イメージング装置で撮像して、光子検出に基づいてルシフェラーゼ発現の定量的測定を行った56、57。トヨカマイシン処置の前後に撮影したマウスの代表的画像は、センサーが網膜中のトヨカマイシンの存在を検出することができ、最高180倍になるルシフェラーゼレポーター発現誘導をもたらしたことを示した。対照的に、ルシフェラーゼ発現の増加は、不活性リボザイムを保有する筋肉では観察されなかった。これらの結果から、標的組織に送達されたウイルスベクターにコードされたRNAセンサーは、in vivoで効率的に機能することができ、誘導されたレポーターシグナルの強度は、全身イメージングで容易に検出可能であったことが実証された。これらの研究は、機構としてアプタマーもポリA切断も使用していなかったが、in vivoイメージングのための一般的実験設定を改変することで、生マウスでのポリAセンサーの有用性を実証することができる。
【0096】
HIV tat用に開発された最適化センサーは、HIV感染した血液細胞または組織をin vivoで検出及び撮像するために使用することができる一例である。あるいは、このまたは別のセンサーを操作して、細胞株に導入し、安定な「センサー細胞」を作製して、患者の血液中の感染性HIV粒子数を測定する(titer)ことができる。近年の爆発的なバイオマーカー発見は、疾患の分子署名として同様に利用できる可能性があるさらなるタンパク質を何百ともたらしてきた。こうした分子署名をin vivoで探査することは、診断だけでなく、特定タンパク質の評価に基づく治療反応のモニタリングにも役立つ。本技術は、これら及び他の特定細胞タンパク質を検出/撮像するのに有用であり、これまで達成することが困難であった部類の測定に対処する。ポリAセンサーにより検出可能な分子署名のスペクトルは、タンパク質だけでなく、他の生体分子、及びFDA承認小分子も含むことができる。赤外44、PET45-47、またはMRI48により撮像可能な次世代の臨床利用可能なレポーターと合わせて、ポリAセンサーは、分子イメージングに幅広い用途がある。
【0097】
FDA承認薬を用いた遺伝子制御用ポリAスイッチの有用性の実証
【0098】
図19に示すとおり、ポリAシグナルは、リガンドとしてテトラサイクリンを認識するアプタマーに、効率的に操作して導入することができる。テトラサイクリンは、臨床使用及び安全性記録の長い歴史を持つFDA承認薬である。テトラサイクリンが存在しない場合、導入遺伝子またはレポーター遺伝子は、非常に低い漏出発現を示し(図20)、不活性ポリA対照の発現レベルの0.2%未満であった。テトラサイクリン投与に際して、導入遺伝子またはレポーター遺伝子の発現は、作動して約30倍まで増えた。テトラサイクリンによる誘導は、用量依存的であり(図17)、安全なFDA承認薬による導入遺伝子発現の正確な制御を可能にする。
【0099】
[実施例3]
[複数のアプタマーを含むポリAアプタマー]
本開示のいくつかの実施形態において、ポリAアプタマー分子は、2、3、4、5、またはそれより多くのアプタマーを含み、特定の場合において、アプタマーは、1つの分子の5’から3’方向に沿って、直線的に連結されている。異なるアプタマー間には、非アプタマー配列が存在する場合もしない場合もある。特定の実施形態において、複数のアプタマーが存在する場合、1つのアプタマーは、別のアプタマーとの関係において、アプタマーの向きが逆の場合がある(すなわち、1つのアプタマーの5’から3’への方向は、第二のアプタマーの3’から5’への方向と逆転する)(図18A(中央図)及び図25)が、代替例においては、第二のアプタマーは、同じ向きにある(図18A(最右側図)。1つまたは複数のアプタマーを含む構築物の特定例において、Gリッチ領域は、分子の最も3’側の末端に、またはその近くに存在し、Gリッチ領域の例は、MAZ領域である(図25)。すなわち、図25は、新規構築物GP2を例示し、この中で、ポリAシグナルは、異なる向きの2つのアプタマーに挟まれている。設計は、図18に記載される配置の1つに基づいている。5μg/mLのTcで処理した場合、図21に記載される103GP2の誘導が10倍であったのに比べて、GP2は、12.6倍という誘導の改善を示した。GP2のP2b領域の多様な改変及びそれに応じた遺伝子発現誘導に対する影響も示す。
【0100】
実施形態によっては、ポリAアプタマー分子は、直線的に連結された2つのアプタマーを含むが、分子は、様々な形状の三次元形状を有することができる。図26は、新規構築物GP2SLGP2を例示し、この中で、2つのGP2アプタマーは、背中合わせに接続されている。5’GP2アプタマーをヘルパーと称し、3’GP2アプタマーをセンターと称する。両方とも、活性ポリAシグナルを有するが、センターアプタマーのみが、Gリッチ領域を有する。この配置は、2種の異なる構造、デフォルト構造とスーパー構造Cとの間での択一的折り畳みを可能にするように設計されている。5μg/mLのTcで処理した場合、GP2SLGP2は、GP2の12.6倍誘導に比べて70倍という劇的に改善された誘導を示す。三次元構造に発展する複数のアプタマーが存在する場合において、2つのループの配列は、一列に並ぶ場合がある(図26の右側図を参照)。複数のアプタマーが分子に存在する場合において、特定の実施形態では1つのGリッチ領域のみが分子に存在し、場合によっては、Gリッチ領域は、第二アプタマー上に(5’から3’に向かって)存在する可能性があるか、または分子の最も3’側のアプタマー上に存在する。
【0101】
図27は、図26の右側図と似通った、図25に列挙するループP2bのGP2配列を有する特定のスーパー構造分子を示す。ヘルパーGP2及びセンターGP2のステム/ループII領域(四角で囲った領域)の長さ及び配列の多様性、ならびに対応する遺伝子発現誘導に対する影響を示す。異なる構築物間の配列多様性を、赤で示す。スーパー構造Cの構造で折り畳まれている場合、GP2SLGP2の中央ステムは、18bpに等しい長さを有し、一方C12は、20bpに等しい長さを有する。構築物C12は、5μg/mLのTcで誘導が94倍に達したが、一方で構築物D11Aは、5μg/mLのTcで誘導が84倍に達した。両方とも、5μg/mLのTcでGP2SLGP2の70倍誘導を大幅に上回った。特定の実施形態において、ループ2の配列(図27の四角で囲った領域)は、領域を、ループではなく二本鎖領域として存在させた。図26(右側画像)及び図27に示すとおりのスーパー構造分子において、四角で囲ったL2領域も含めたポリA(pA)「ドッグボーン」間の領域の長さは、10~25ヌクレオチド、例えば、18~20ヌクレオチドなどである。
【0102】
例にすぎないが、図28は、GP2ステムループ配列(図25を参照)、C12ステムループ配列(図25を参照)、及びD11Aステムループ配列(図25を参照)を含むGP2SLGP2ポリAセンサー構築物の完全配列を提示する。それらが持つ、発現を誘導する能力を特性決定するため、3種の分子を、様々な濃度のテトラサイクリン(Tc、結合ポケット用リガンドの例として)で試験した。図29は、GP2SLGP2の用量依存的調節を実証する。各データ点は、Tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に相当する。平均誘導増倍数を標準偏差とともに示す。誘導は、15μg/mLのTcで104倍に達した。図30は、C12配列を含む構築物の用量依存的調節を実証する。各データ点は、Tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に相当する。平均誘導増倍数を標準偏差とともに示す。誘導は、15μg/mLのTcで151倍に達した。図31は、D11A配列を含む構築物の用量依存的調節を実証する。各データ点は、Tcありとなしとでのルシフェラーゼ活性の比として求められた相対誘導増倍数に相当する。平均誘導増倍数を標準偏差とともに示す。誘導は、15μg/mLのTcで127倍に達した。
【0103】
本出願の範囲は、本明細書中記載される、プロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されないものとする。
【0104】
[参考文献]
本明細書中言及される全ての刊行物は、本発明が関連する分野の当業者のレベルを示すものである。本明細書中全ての刊行物は、個々の刊行物がそれぞれ、具体的かつ個別に、そのまま全体が参照として援用されると示されたのと同じぐらいに、参照として援用される。
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本開示及びその利点を詳細に説明してきたものの、当然ながら、添付の請求項により定義されるとおりの本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、交換、及び改変を、その中で行うことが可能である。その上、本出願の範囲は、明細書中記載されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程の特定実施形態に限定されないものとする。当業者なら、本開示の内容から、既存のまたは今後開発されると思われる、プロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び工程で、本明細書中記載される実施形態と実質的に同じ機能を行うものまたは実質的に同じ結果をもたらすものを、本開示に従って利用することができるとすぐにわかるだろう。したがって、添付の請求項は、それらの範囲内において、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、または工程を包含するものとする。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
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図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
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図9A
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図9C
図10A
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図12A
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【配列表】
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