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特許7100364流体制御器の異常検知装置、異常検知システム、異常検知方法、及び流体制御器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】流体制御器の異常検知装置、異常検知システム、異常検知方法、及び流体制御器
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20220706BHJP
   G01M 3/28 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G01M3/26 R
G01M3/28 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018568126
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2018004006
(87)【国際公開番号】W WO2018150949
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2017028654
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】川田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】河内 勇人
【審査官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-306721(JP,A)
【文献】特開2014-021029(JP,A)
【文献】特表2015-528916(JP,A)
【文献】実開平02-091933(JP,U)
【文献】特開平08-105813(JP,A)
【文献】特開平10-318385(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045987(WO,A1)
【文献】特開2007-248278(JP,A)
【文献】特開2016-023928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0231874(US,A1)
【文献】特開2003-037881(JP,A)
【文献】特開2011-005880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0043506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
G01L 7/00 -23/32
G01L 27/00 -27/02
F16K 31/00 -31/05
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路と、ダイヤフラムにより当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、当該流路に設けられたシートに当該ダイヤフラムが当接離反する弁機構とを有する流体制御器の異常を検知する装置であって、
前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記流体制御器の駆動圧を検出する駆動圧センサと、
所定の情報処理を実行する処理モジュールと、
前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、を有し、
前記処理モジュールは、
前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、
前記駆動圧センサにより検出された前記流体制御器の駆動圧に応じて、前記所定の閾値を補正する補正処理と、
前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する通信処理と、を実行する、
流体制御器の異常検知装置。
【請求項2】
流路と、ダイヤフラムにより当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、当該流路に設けられたシートに当該ダイヤフラムが当接離反する弁機構とを有する流体制御器の異常を検知する装置であって、
前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記流体制御器の開閉動作を検知する開閉検知機構と、
所定の情報処理を実行する処理モジュールと、
前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、を有し、
前記処理モジュールは、
前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、
前記開閉検知機構により検知された前記流体制御器の開閉動作に応じて、前記所定の閾値を補正する補正処理と、
前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する通信処理と、を実行する、
流体制御器の異常検知装置。
【請求項3】
外部温度を測定する温度センサ、をさらに有し、
前記処理モジュールはさらに、
測定された前記外部温度に応じて、前記所定の閾値を補正する、
請求項1又は2記載の流体制御器の異常検知装置。
【請求項4】
前記処理モジュールによって実行される通信処理は、前記サーバに対し、前記閉空間への流体の漏出の判別結果を所定の周期で送信するものである、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の流体制御器の異常検知装置。
【請求項5】
複数の流体制御器を集積させた流体制御装置において、
各流体制御器に取り付けられた装置の処理モジュールによって実行される通信処理は、前記サーバに対し、自己識別情報と共に、前記流体の漏出の判別結果を装置ごとに異なるタイミングで送信するものである、
請求項4記載の流体制御器の異常検知装置。
【請求項6】
流路と、ダイヤフラムにより当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、当該流路に設けられたシートに当該ダイヤフラムが当接離反する弁機構とを有する流体制御器の異常を検知するシステムであって、
前記流体制御器に着脱可能に固定される情報提供装置と、サーバと、が通信可能に構成され、
前記情報提供装置は、
前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記流体制御器の駆動圧を検出する駆動圧センサと、
前記サーバに対し、前記圧力センサにより検出した検出値及び前記駆動圧センサにより検出した前記流体制御器の駆動圧を送信する通信モジュールと、
前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、を有し、
前記サーバは、
前記情報提供装置から受信した前記検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、
前記駆動圧センサにより検出された前記流体制御器の駆動圧に応じて、前記所定の閾値を補正する補正処理と、を実行する、
流体制御器の異常検知システム。
【請求項7】
流路と、ダイヤフラムにより当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、当該流路に設けられたシートに当該ダイヤフラムが当接離反する弁機構とを有する流体制御器の異常を検知する方法であって、
前記リークポートに圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する装置により、
前記閉空間内の圧力を検出する工程と、
前記流体制御器の駆動圧を検出する工程と、
前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する工程と、
検出された前記流体制御器の駆動圧に応じて、前記所定の閾値を補正する工程と、
前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する工程と、を実行する、
流体制御器の異常検知方法。
【請求項8】
異常を検知可能な流体制御器であって、
流路と、
ダイヤフラムにより前記流路と隔離された閉空間と、
前記閉空間と外部を連通可能なリークポートと、
前記流路に設けられたシートに前記ダイヤフラムが当接離反する弁機構と、
前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記流体制御器の駆動圧を検出する駆動圧センサと、
前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、
所定の情報処理を実行する処理モジュールと、を有し、
前記処理モジュールは、
前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、
前記駆動圧センサにより検出された前記流体制御器の駆動圧に応じて、前記所定の閾値を補正する補正処理と、
前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する通信処理と、を実行する、
流体制御器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御装置において流体の漏出を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を惹き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御器における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、半導体製造プロセスにおいては反応性が高く極めて毒性の高いガスが使われるため、漏出が微小なうちに、かつ遠隔的に漏出を検知できることが重要である。
【0003】
この点、特許文献1では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取り付けられる漏れ検知部材とからなるシール部破損検知機構であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏れ検知部材は前記孔に取り付けられる筒状体とこの筒状体に設けられた可動部材とからなり、この可動部材は制御器内の前記空隙内に充満した漏出流体の圧力によって前記筒状体の外方へ可動とされてなるものが提案されている。
また、特許文献2では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取付けられる漏洩検知部材とからなるシール部破損検知機構付制御器であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏洩検知部材は特定の流体の存在によって感応するものが提案されている。
さらに、特許文献3では、流体の漏れを検出する漏れ検出装置であって、センサ保持体と、漏れ検出対象部材に設けられて漏れ検出対象部材内の密封部分と外部とを連通するリークポートに対向するようにセンサ保持体に保持された超音波センサと、超音波センサのセンサ面とリークポートとの間に設けられた超音波通路と、超音波センサで得られた超音波を処理する処理回路とを備えているものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-093736号公報
【文献】特開平05-126669号公報
【文献】特開2014-21029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシール部破損検知機構では、制御器内の空隙の加圧は判別することができるが、負圧を判別することができず、流体の漏出が僅かである場合には、可動部材が十分に可動せず、漏出を検知できないおそれがある。
また、特許文献2記載のシール部破損検知機構付制御器では、流体の漏出が僅かである場合には、パージガスで希釈化されて漏洩検知部材が感応しないおそれがあり、また、漏洩検知部材が所定の流体に対しては感応しないおそれもある。
さらに、特許文献3記載の漏れ検出装置では、流体の漏出が僅かである場合には、超音波が微弱で漏出を検知できないおそれがある。
いずれも流体の微小な漏出に対する検知能力に改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、流体制御器において、流体の漏出が僅かな場合でも漏出を検知可能なものを提供することを目的の一つとする。また、情報通信技術を活用することにより、離れた場所にある流体制御器や複数の流体制御器における流体の漏出を監視し易いものとすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る流体制御器の異常検知装置は、流路と、隔離部材により当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、が設けられた流体制御器の異常を検知する装置であって、前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、所定の情報処理を実行する処理モジュールと、前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、を有し、前記処理モジュールは、前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する通信処理と、を実行する。
【0008】
また、前記流体制御器の駆動圧を検出する駆動圧センサ、をさらに有し、前記処理モジュールはさらに、検出された前記流体制御器の駆動圧に応じて、前記所定の閾値を補正するものとしてもよい。
【0009】
また、前記流体制御器の開閉動作を検知する開閉検知機構、をさらに有し、前記処理モジュールはさらに、検知された前記流体制御器の開閉動作に応じて、前記所定の閾値を補正するものとしてもよい。
【0010】
また、外部温度を測定する温度センサ、をさらに有し、前記処理モジュールはさらに、測定された前記外部温度に応じて、前記所定の閾値を補正するものとしてもよい。
【0011】
また、前記処理モジュールによって実行される通信処理は、前記サーバに対し、前記閉空間への流体の漏出の判別結果を所定の周期で送信するものとしてもよい。
【0012】
また、複数の流体制御器を集積させた流体制御装置において、各流体制御器に取り付けられた装置の処理モジュールによって実行される通信処理は、前記サーバに対し、自己識別情報と共に、前記流体の漏出の判別結果を装置ごとに異なるタイミングで送信するものであるものとしてもよい。
【0013】
また、前記隔離部材がダイヤフラムであり、前記流路に設けられたシートに前記ダイヤフラムが当接離反する弁機構を有したものとしてもよい。
【0014】
また、本発明の別の観点に係る流体制御器の異常検知システムは、流路と、隔離部材により当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、が設けられた流体制御器の異常を検知するシステムであって、前記流体制御器構に着脱可能に固定される情報提供装置と、サーバと、が通信可能に構成され、前記情報提供装置は、前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、前記サーバに対し、前記圧力センサにより検出した検出値を送信する通信モジュールと、前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、を有し、前記サーバは、前記情報提供装置から受信した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理、を実行する。
【0015】
また、本発明の別の観点に係る流体制御器の異常検知方法は、流路と、隔離部材により当該流路と隔離された閉空間と、当該閉空間と外部を連通可能なリークポートと、が設けられた流体制御器の異常を検知する方法であって、前記リークポートに圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する装置により、前記閉空間内の圧力を検出する工程と、前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する工程と、前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する工程と、を実行する。
【0016】
また、本発明の別の観点に係る流体制御器は、異常を検知可能な流体制御器であって、流路と、隔離部材により前記流路と隔離された閉空間と、前記閉空間と外部を連通可能なリークポートと、前記閉空間内の圧力を検出する圧力センサと、前記リークポートに前記圧力センサを着脱可能に固定すると共に、固定状態において前記リークポートを外部と遮断する着脱機構と、所定の情報処理を実行する処理モジュールと、を有し、前記処理モジュールは、前記圧力センサにより検出した検出値と所定の閾値を比較することにより、前記流体制御器の異常を判別する判別処理と、前記流体制御器の異常の判別結果をサーバに送信する通信処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体制御器において、流体の漏出が僅かな場合でも漏出を検知することができる。また、サーバとの連携により、離れた場所にある流体制御器や複数の流体制御器についても流体の漏出を監視し易い等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態に係る流体制御器の異常検知装置を流体制御器に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
図2】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置を流体制御器に取り付けた状態を示す断面図であって、(a)閉弁状態、(b)開弁状態を示す。
図3】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置が形成するネットワークの構成を示した模式図である。
図4】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置が着脱可能に取り付けられる流体制御器を示した外観斜視図である。
図5】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置を示した外観斜視図であって、(a)外側、(b)流体制御器に当接する側を示す。
図6】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置を流体制御器に取り付ける際の様子を示した分解斜視図である。
図7】本実施形態に係る流体制御器の異常検知装置、当該異常検知装置と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
図8】本発明の第二の実施形態に係る流体制御器の異常検知装置、当該異常検知装置と通信可能に構成されたサーバが備える機能を示した機能ブロック図である。
図9】本発明の第三の実施形態に係る流体制御器の異常検知システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
図10】本発明の第四の実施形態に係る流体制御器の異常検知システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の第一の実施形態に係る流体制御器の異常検知装置について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
図1図2に示されるように、本実施形態に係る異常検知装置1は、流体制御器2に着脱可能に取り付けられ、流体制御器2の異常、特に流体制御器2内における流体の漏出を検知する装置である。
また、この異常検知装置1は図3に示されるように、サーバ3とネットワークNW1、NW2を介して通信可能に構成され、当該サーバ3に対して流体制御器2の異常に関する情報を提供する。なお、図3は、流体制御器2が複数、集積して流体制御装置10を構成した例を示している。
【0020】
まず、本実施形態に係る異常検知装置1が適用される流体制御器2について説明する。
本実施形態に係る異常検知装置1が適用される流体制御器2として、ダイレクトダイヤフラムバルブを図4に示す。この流体制御器2は外観上、バルブボディ21、バルブボディ21の上端に配設された略円筒状のアクチュエータボディ22、アクチュエータボディ22の上端に取り付けられたアクチュエータキャップ23によって構成されている。
【0021】
図2に示されるように、バルブボディ21内には、流体が流入する流入路211aと流体が流出する流出路211b、及び当該流入路211aと流出路211bに連通する弁室211cが設けられている。この流入路211a、流出路211b、及び弁室211cは、流体が流通する流路211を一体的に構成している。
【0022】
また、流入路211aと弁室211cとが連通する箇所の周縁には環状のシート212が設けられている。シート212上にはさらに、シート212に当接離反することによって流入路211aから流出路211bへ流体を流通させたり、流通を遮断させたりするダイヤフラム213が設けられている。
【0023】
ダイヤフラム213は、ステンレス、NiCo系合金等の金属やフッ素系樹脂からなる円盤状の部材であり、流路211と閉空間Sとを隔離する隔離部材として機能する。このダイヤフラム213は、駆動圧としてのエアが供給されてディスク221による押圧から開放されると、自身の復元力や流路211内の圧力によって中央部がシート212から離反する方向に変位してシート212から離反する。その結果、弁室211cが開放され、流入路211aと流出路211bとが連通した状態となる。
一方、駆動圧としてのエアの供給が止まってダイヤフラム213がディスク221に押圧されると、シート212に対してダイヤフラム213の中央部がシート212に当接する方向に変位してシート212に当接する。その結果、弁室211cが遮断され、流入路211aと流出路211bが遮断された状態となる。
【0024】
なお、一般的に、隔離部材には本例のダイヤフラム213のほか、べローズが用いられる。しかし、べローズはストローク(流量レンジ)を大きく取れる反面、アクチュエータボディ内の体積変化が大きくなるため、流体制御器の開閉動作時に呼吸口(本例のリークポートLPに相当)を開放する必要がある。
一方、本例のようなダイレクトダイヤフラム構造、即ち、ダイヤフラム213がシート212に当接離反することによって流入路211aから流出路211bへ流体を流通させたり、流通を遮断させたりする構造では、アクチュエータボディ22内の体積変化が少ない。そのため、本例の異常検知装置1によってリークポートLPを外部と遮断したままの状態であっても、流体制御器2は問題なく開閉動作を行うことができる。したがって、本例の異常検知装置1はダイレクトダイヤフラム構造からなる流体制御器2に好適なものといえる。
【0025】
アクチュエータボディ22内には、ダイヤフラム213を押圧するディスク221、ダイヤフラム213の周縁を押える押えアダプタ222、上下に摺動することでディスク221を介してダイヤフラム213をシート212に当接離反させるピストン223、ピストン223を下方に付勢するバネ224が設けられている。
【0026】
押えアダプタ222は、ダイヤフラム213の周縁を上方から押さえつけ、流路211を流れる流体が、ダイヤフラム213の周縁部近傍からアクチュエータボディ22内に漏出するのを防止している。
【0027】
ピストン223の上端側には小径の保持部が設けられ、当該保持部にOリング225が保持されている。このOリング225は、ピストン223の外周面と、アクチュエータキャップ23の駆動圧導入口23aに連通する駆動圧導入路231の内周面の間をシールしている。これにより、駆動圧導入口23aから導入されるエアが漏れなくピストン233内の駆動圧導入路232へ導入される。
【0028】
ピストン223の中間部にも小径の保持部が設けられ、当該保持部にOリング226が保持されている。このOリング226はピストン223の外周面とアクチュエータボディ22の内周面の間をシールしている。Oリング226とOリング227によって形成された空間は、ピストン223内の駆動圧導入路232に連通する駆動圧導入室233を形成する。
【0029】
この駆動圧導入室233には、駆動圧導入口23aに連通する駆動圧導入路231とピストン223内の駆動圧導入路232を介して、アクチュエータキャップ23の駆動圧導入口23aからエアが導入される。エアが駆動圧導入室233に導入されると、ピストン223がバネ224の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム213がシート212から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室233にエアが導入されなくなると、ピストン223がバネ224の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム213がシート212に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0030】
ピストン223の下端側にも小径の保持部が設けられ、当該保持部にOリング227が保持されている。このOリング227はピストン223の外周面とアクチュエータボディ22の内周面の間をシールしている。これにより、アクチュエータボディ22内のディスク221が上下動する部分において、ダイヤフラム213とOリング227によって仕切られた閉空間Sが形成されている。
この閉空間Sは、アクチュエータボディ22に設けられたリークポートLPによってのみ、外部と連通しているが、リークポートLPに異常検知装置2の圧力センサ11が固定されると、リークポートLPが外部と遮断されて気密状態となる。
【0031】
ここで、アクチュエータボディ22に設けられたリークポートLPは、閉空間Sと外部とを連通させる貫通孔として構成されている。このリークポートLPは、ダイヤフラム213の破損等によって閉空間Sに流体が漏出するのを検知するための孔であって、このリークポートLPに本実施形態に係る異常検知装置1が取り付けられる。
【0032】
なお、リークポートLPは、流体制御器2が通常動作している際には、ピストン223の上下動に伴うアクチュエータボディ22内の空気の吸排を可能とする呼吸口としても機能する。
また、リークポートLPは、流体制御器2の完成品検査では流路211の気密性を検査する際のテストポートとしても機能する。この完成品検査は、異常検知装置1を流体制御器2から取り外し、この状態で流路211に不活性なヘリウムガス(He)等を流通させることによって行われる。
本実施形態に係る異常検知装置1は、既製あるいは既設の流体制御器2に後付け可能であって、呼吸口やテストポート等として設けられているリークポートLPを使用して流体の漏出を検知できる。そのため、本発明の異常検知装置1を取り付けるための専用のリークポートを流体制御器2に設ける必要がない。
【0033】
以上の構成からなる流体制御器2は図3に示されるように、複数、集積して流体制御装置10を構成する。この場合においても、異常検知装置1は、流体制御装置10を構成する個々の流体制御器2に取り付けられる。
【0034】
異常検知装置1は、閉空間S内の圧力を検出することにより、流路211から閉空間Sへの流体の漏出等を検知して、ダイヤフラム213の破損等、流体制御器2の異常を検知する装置である。
この異常検知装置1は図5図6に示されるように、圧力センサ11、及び、筐体121と固定部材122によって構成される着脱機構12(筐体121と固定部材122をまとめて「着脱機構12」と称する)のほか、所定の情報処理を実行する処理モジュール13(図7を参照して後述する)を有する。なお、処理モジュール13は、圧力センサ11とは別体として筐体121内に格納されていてもよいし、圧力センサ11の一部として構成されていてもよい。
【0035】
圧力センサ11は、リークポートLPを介して流体制御器2の閉空間S内の圧力を検出する。
この圧力センサ11は、閉空間S内の圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。
【0036】
なお、圧力センサ11は、ゲージ圧あるいは大気圧のいずれを検出するものでもよく、それぞれの場合に応じて、判別処理部131(図7を参照して後述する)が参照する閾値が設定されればよい。
また、本実施形態では、閉空間S内の圧力変化を圧力センサ11によって検出することにより、流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を検知するが、コンデンサ型マイクロホンユニットを圧力センサ11として用いることが可能である。即ち、コンデンサ型マイクロホンユニットは、音波を受けて振動する振動板と、振動板に対向して配置された対向電極を有し、振動板と対向電極との間の静電容量の変化を電圧の変化に変換して音声信号とすることができる。そして、このコンデンサ型マイクロホンユニットは、振動板の背面側に設けられる空気室を塞ぐことで無指向性(全指向性)となる。無指向性の場合、コンデンサ型マイクロホンユニットはあらゆる方向からの音波による音圧の変化をとらえて動作するため、圧力センサとして利用することが可能となる。
【0037】
筐体121と固定部材122によって構成される着脱機構12は、異常検知装置1を流体制御器2に着脱可能に取り付けるための機構であって、リークポートLPに圧力センサ11を着脱可能に固定すると共に、固定状態においてリークポートLPを外部と遮断する。
略箱型形状からなる筐体121は、一の側面に圧力センサ11を保持するための嵌合孔1211aを有しており、この嵌合孔1211aに圧力センサ11の先端部を嵌合させることにより、圧力センサ11が保持される。
また、筐体121の流体制御器2に当接する面は、流体制御器2の当接する箇所の形状に合わせて略半円柱状に切り欠いた形状からなり、筐体121の幅方向の両側面には、固定部材122の端部を固定するためのボルト12bが螺合するボルト穴1212aが設けられている。
なお、筐体121内には適宜、圧力センサ11を駆動させる内部電源等を格納することができる。
【0038】
固定部材122は、弾性の金属、ゴム等の伸縮可能な弾性材料からなる紐状の部材であって、流体制御器2の当該固定部材122が巻き付けられる部分(本例ではアクチュエータボディ22)の外周の長さと略同じ、あるいはこれよりも僅かに短い長さからなる。
この固定部材122の両端には、筐体121の一対のボルト穴1212aに対応して一対のボルト孔122aが形成されている。固定部材122のボルト孔122aと筐体121のボルト穴1212aにボルト12bを螺合させることで、固定部材122の両端が筐体121の側面に固定され、固定部材122が流体制御器2に巻き付けられた状態に維持される。これにより、筐体121に保持された圧力センサ11はリークポートLPに押し付けられる。
【0039】
ここで、流体制御器2に異常検知装置1を取り付けた状態からは、ボルト12bを緩め、筐体121と固定部材122とを分離させることで、異常検知装置1を流体制御器2から取り外すことができ、これによりリークポートLPが開放される。
【0040】
なお、本例では、圧力センサ11と筐体121の間がOリング1213によってシールされている。また、圧力センサ11とリークポートLPの間にはシール材1214が取り付けられており、流体制御器2の閉空間Sに漏出した流体が外部へ漏出するのを防いでいる。
【0041】
処理モジュール13は、CPU(Central Processing Unit)やメモリによって構成され、これにより図7に示されるように、判別処理部131と通信処理部132からなる機能ブロックを備える。この処理モジュール13は、所定の配線等によって圧力センサ11と連携可能に構成されており、当該圧力センサ11からデータの供給を受けることができるようになっている。
【0042】
判別処理部131は、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を判別する処理を実行する。即ち、通常使用時において、流体制御器2の弁の開閉で想定される閉空間S内の圧力の限界値を所定の閾値としておく。そして、閉空間S内の圧力の検出値が当該閾値を超えた場合に、流体制御器2に異常が生じたものと判別する。このような判別の合理性は、ダイヤフラム213の破損等によって閉空間Sへ流体が漏出して閉空間S内の圧力が上昇した結果として、あるいは流路211内の減圧によって閉空間S内の圧力が減少した結果として閉空間S内の圧力の検出値が閾値を超えたとみなせることによる。
【0043】
通信処理部132は、サーバ3に対し、判別処理部131による判別結果を送信する処理を実行するための機能部である。本実施形態では、異常検知装置1とサーバ3との間に中継装置4が設けられており、当該中継装置4を介して、異常検知装置1からの情報がサーバ3に提供される。
【0044】
具体的に、通信処理部132によって送信されるデータは例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった無線通信によって実現されるネットワークNW1を経由して一旦、中継装置4に送信され、中継装置4から無線あるいは有線のLAN等によって実現されるネットワークNW2を介してサーバ3に送信される。
【0045】
また、この通信処理部132は、判別処理部131による判別結果を1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で送信することができる。この点、流体の微量な漏出はその瞬間を検知するのが難しいが、数日程度であれば昇圧するため検知可能となる。一方、閉空間Sは気密な空間であるため、微小な漏出が発生しても直ちに問題となりにくい。そのため、所定の周期による送信であっても支障がない。さらに、このように所定の周期で情報の送信を行う場合には、消費電力を抑えることができる。
【0046】
また、図3に示されるように、流体制御器2が複数、集積されて流体制御装置10を構成する場合、各流体制御器2に取り付けられた異常検知装置1の通信処理部132は、サーバ3に対して自己を識別可能な自己識別情報と共に、判別処理部131による判別結果を異常検知装置1ごとに異なるタイミングで送信することができる。
【0047】
サーバ3に対して、異常検知装置1を個々に識別可能な自己識別情報が送信されることで、流体制御装置10を構成する複数の流体制御器2のうちのいずれが異常を来しているのかを判別することができる。
また、サーバ3に対して、異常検知装置1ごとに異なるタイミングで判別結果が送信されることで、パケット衝突の問題を回避することができるし、一斉に送信される場合と比べて一時的な処理の過負荷を防ぐこともできる。さらに、一斉に送信される場合と違い、データ送信に利用される無線のチャンネルを異常検知装置1ごとに変える必要がないため、多くのチャンネルを用意する必要がない。特にネットワークNW1をBluetooth(登録商標)によって構成する場合には、同時接続台数が限られるため(通常7台)、送信のタイミングを変えることで同時接続台数を超える数の異常検知装置1を用いることができる。
【0048】
サーバ3は、CPU(、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成される。
このサーバ3は、中継装置4を介して、異常検知装置1から流体制御器2の閉空間Sへの流体の漏出の判別結果を受信するための通信処理部31を有している。サーバ3が異常検知装置1から受信した情報は適宜、流体制御器2の管理者あるいは監視者等が利用する端末からの求めに応じて、当該監視者等が利用する端末に提供される。
【0049】
中継装置4は、ネットワークNW1を介して異常検知装置1からデータを受信すると共に、ネットワークNW2を介して当該受信したデータをサーバ3に対して送信する。
なお、本実施形態では、異常検知装置1とサーバ3との間に中継装置4を介在させたが、異常検知装置1とサーバ3とが直接、データ通信可能となるように構成することもできる。
【0050】
以上の構成からなる異常検知装置1が流体制御器2に取り付けられることにより、圧力センサ11によって検出された閉空間S内の圧力と所定の閾値との比較に基づき、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を検知することができる。
また、異常検知装置1は流体制御器2に着脱可能に取り付けられるため、流体制御器2における流体の漏出をチェックする場合等、必要に応じて容易に異常検知装置1を取り外すことができるし、既製品の流体制御器2に取り付けることもできる。
また、流体制御器2の異常に関する情報がサーバ3に集約されるため、流体制御器2の監視者等は、流体制御器2の動作状況を負担なく監視することができる。
また、異常検知装置1の取り付けられる流体制御器2はダイレクトダイヤフラムバルブであるため、閉空間S内の圧力変化が小さく、異常検知装置1によってリークポートLPを塞いでも流体制御器2の動作に支障を来すことがない。
さらに、異常検知装置1は、流体制御器2の閉空間S内の圧力を検出した上、所定の閾値と検出値とを比較することによって流体制御器2の異常を検知するため、閉空間S内が負圧となる異常を来した場合でも、これを検知することができる。
【0051】
なお、以上の本実施形態において、異常検知装置1には、流体制御器2に異常があったものと判別された際に、その旨の警告を異常検知装置1自体が発するための手段が設けられていてもよい。具体的には例えば、視認可能なランプ等によって構成することができる。この点は後述する他の実施形態についても同様である。
【0052】
また、異常検知装置1を流体制御器2に着脱可能に取り付けるための着脱機構12の構造は一例に過ぎず、圧力センサ11を流体制御器2のリークポートLPに宛がい、着脱可能に固定することができれば、他の構造を採用することもできる。
【0053】
また、ダイヤフラム213とOリング227によって仕切られた空間を閉空間Sとして、その内部の圧力を検出することによって流体制御器2の異常を検知したが、ダイヤフラム213によって隔てられると共に、リークポートLPが設けられた流体制御器2内の密閉空間であれば、当該密閉空間を閉空間Sとして圧力を検出することで、ダイヤフラム213の破損等の流体制御器2の異常を検知することができる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の第二の実施形態に係る流体制御器の異常検知装置について説明する。
図8に示されるように、本実施形態に係る異常検知装置5は上述の第一の実施形態に係る異常検知装置1が備えた圧力センサ11や着脱機構12に加え、流体制御器2の駆動圧を検出する駆動圧センサ51や外部温度を測定する温度センサ52を有する。また、本実施形態に係る異常検知装置5が備える処理モジュール53は、判別処理部531、補正処理部532、及び通信処理部533からなる機能ブロックを構成する。
【0055】
なお、処理モジュール53は上述した第一の実施形態と同様、圧力センサ11や着脱機構12を構成する筐体121内等に格納される。また、本実施形態における処理モジュール53は、所定の筐体や配線等によって、駆動圧センサ51や温度センサ52とも連携可能に構成されており、当該駆動圧センサ51や温度センサ52からデータの供給を受けることができるようになっている。
【0056】
また、本実施形態に係る異常検知装置5が着脱可能に取り付けられる流体制御器2の機能及び構造は上述の第一の実施形態におけるのと同様である。また、本実施形態に係る異常検知装置5が、ネットワークNW1、NW2により、中継装置4を中継して通信可能に構成されたサーバ3へ判別処理部531による判別結果を送信する機能も上述の第一の実施形態と同様である。
また、特段の言及がない限り、本実施形態の説明において、第一の実施形態と同じ番号(符号)の付された部材や機能部等は、上述の部材や機能部等と同じ機能を保持あるいは処理を実行するものであるため、説明を省略する。
【0057】
駆動圧センサ51は、流体制御器2の駆動圧を検出する。
この駆動圧センサ51は例えば、流体制御器2の駆動圧導入口23aに取り付けられ、流体制御器2内に導入される駆動圧としてのエアの圧力を検出する。検出されたエアの圧力に係る情報は補正処理部532に供給される。
【0058】
温度センサ52は、流体制御器2が設置されている環境における外部温度を測定する。測定された外部温度に係る情報は補正処理部532に供給される。
【0059】
判別処理部531は、第一の実施形態における判別処理部131と同様、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を判別する処理を実行する。一方、本実施形態では、当該所定の閾値が補正処理部532によって補正されるところ、補正がなされた際には、判別処理部531は補正後の閾値と、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を判別する処理を実行する。
【0060】
補正処理部532は、駆動圧センサ51によって検出されたエアの圧力や温度センサ52によって測定された外部温度に応じて、判別処理部531が閉空間Sへの流体の漏出を判別するべく参照する所定の閾値を補正する。
【0061】
即ち、流体制御器2を開閉させるべくエアの圧力が変化させられると、ピストン223の上下動によって閉空間S内の圧力が変化する。そのため補正処理部532は、判別処理部531がこのエアの圧力による閉空間S内の圧力の変化と、流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化とを区別して、流体制御器2の異常を判別できるよう、所定の閾値を補正する。具体的には、エアが導入された場合には閉空間S内の圧力が減少するため閾値を低い値に補正し、エアが排出された場合には閉空間S内の圧力が上昇するため閾値を高い値に補正する。この結果、判別処理部531は、エアの圧力変化に伴う閉空間S内の圧力変化に関わらず、流体の漏出等の流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化を判別することができる。
【0062】
ここで、駆動圧センサ51を用いたため、流体制御器2の開閉動作中であっても、流体の漏出等に起因した閉空間S内の圧力変化を判別することができる。即ち、駆動圧から必要な補正値へと変換する適当な伝達関数を実験的に求めることで、ピストン223が移動している瞬間の閉空間S内の過渡的な圧力変化を補正することもできる。
同時に、駆動圧センサ51の検出値から閉空間S内の圧力上昇が予期されるにも関わらず、圧力センサ11の検出値が上昇しない場合には、ピストン223若しくは圧力センサ11の故障を判断することができる。
【0063】
また、外部温度によっても閉空間S内の圧力は変化する。そのため補正処理部532は、判別処理部531がこの外部温度による閉空間S内の圧力の変化と、流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化とを区別して、流体制御器2の異常を判別できるよう、所定の閾値を補正する。具体的には、外部温度の上昇に応じて閾値を高い値に補正すると共に、外部温度の下降に応じて閾値を低い値に補正する。この結果、判別処理部531は、外部温度の変化に伴う閉空間S内の圧力変化に関わらず、流体の漏出等の流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化を判別することができる。
【0064】
通信処理部533は、上述の第一の実施形態における通信処理部132と同様、判別処理部531による判別結果を送信する処理を実行するための機能部である。本実施形態でも、異常検知装置5とサーバ3との間には中継装置4が設けられており、当該中継装置4を介して、異常検知装置5からサーバ3に情報が提供される。
なお、通信処理部533による通信手段や方式、ネットワークNW1、NW2の構成は上述の第一の実施形態と同様である。また同様に、本実施形態においてもデータの送信は所定の周期で実行することができる。
【0065】
以上の構成からなる本実施形態に係る異常検知装置5によれば、駆動圧としてのエアや外部温度に起因して閉空間S内の圧力が変化しても、これと流体の漏出等の流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化とを識別して、流体制御器2の異常を検知することができる。
【0066】
なお、本実施形態の変形例として、流体制御器2の駆動圧を検出する駆動圧センサ51に代えて、流体制御器2のスイッチ操作等による開閉動作を検知する開閉検知機構を設けることもできる。
即ち、流体制御器2の開閉動作によって駆動圧としてのエアの圧力は変化し、これにより閉空間S内の圧力変化が引き起こされる。そのため、流体制御器2の開閉動作を検知することによっても、補正処理部532に所定の閾値を補正させることで、流体制御器2の開閉による閉空間S内の圧力の変化と、流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化とを区別して、流体制御器2の異常を判別することができる。
【実施例3】
【0067】
本発明の第三の実施形態に係る流体制御器の異常検知システムについて説明する。
図9に示されるように、本実施形態に係る異常検知システム60は、情報提供装置6、中継装置4、及びサーバ7によって構成される。この異常検知システム60では、上述の第一の実施形態に係る異常検知装置1が備えた判別処理部131と同様の機能部をサーバ7が備えており、サーバ7側で閉空間S内への流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常が判別される。
【0068】
本実施形態に係る情報提供装置6は、上述の第一の実施形態に係る異常検知装置1と同様に圧力センサ11や着脱機構12を有する一方、処理モジュール13に代えて、データ通信のみを実行する通信モジュール63を有する。
【0069】
通信モジュール63は、上述した第一の実施形態の処理モジュール13と同様、圧力センサ11や着脱機構12を構成する筐体121内等に格納されるたりすると共に、所定の配線等によって圧力センサ11と連携可能に構成され、当該圧力センサ11からデータの供給を受けることができるようになっている。
そして、この通信モジュール63が備える通信処理部631は、サーバ7に対し、圧力センサ11によって検出された閉空間S内の圧力の検出値を送信する処理を実行する。
【0070】
なお、本実施形態でも、情報提供装置6とサーバ7との間には中継装置4が設けられており、当該中継装置4を介して、情報提供装置6からサーバ7に情報が提供される。また、通信処理部631による通信手段や方式、ネットワークNW1、NW2の構成は上述の第一の実施形態と同様である。また同様に、本実施形態においてもデータの送信は所定の周期で実行することができる。
また、本実施形態に係る情報提供装置6が着脱可能に取り付けられる流体制御器2の機能及び構造は上述の第一の実施形態と同様である。また、特段の言及がない限り、本実施形態の説明において、第一の実施形態と同じ番号(符号)の付された部材や機能部等は、上述の部材や機能部等と同じ機能を保持あるいは処理を実行するものであるため、説明を省略する。
【0071】
サーバ7は、CPU、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAMやROM、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成され、判別処理部71と通信処理部72からなる機能部を構成する。
【0072】
判別処理部71は、第一の実施形態における判別処理部131と同様、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を判別する処理を実行する。ここで、本実施形態においては、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値は、ネットワークNW1、NW2を経由して、通信処理部72により取得されたものである。
【0073】
通信処理部72は、中継装置4を介して、情報提供装置6から圧力センサ11による閉空間S内の圧力の検出値に係る情報を受信する。
【0074】
本実施形態においては、流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常の判別がサーバ7側で実行されるが、第一の実施形態と同様、サーバ7において判別された流体制御器2の異常の判別結果は適宜、流体制御器2の監視者等が利用する端末からの求めに応じて、当該監視者等が利用する端末に提供される。
【0075】
以上の本実施形態に係る異常検知システム60に係る構成によっても、第一の実施形態と同様、流体制御器2における流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、流体制御器2の異常の判別処理がサーバ7側で実行される結果、流体制御器2に取り付けられる情報提供装置6の構成をシンプルにすることができ、判別処理部71が実行するプログラムのデバッグ等、保守も容易になる。
【実施例4】
【0076】
本発明の第四の実施形態に係る流体制御器の異常検知システムについて説明する。
図10に示されるように、本実施形態に係る異常検知システム80は、上述の第三の実施形態に係る異常検知システム60と同様、情報提供装置8、中継装置4、サーバ9によって構成される一方、情報提供装置8が駆動圧センサ81と温度センサ82を有すると共に、サーバ9が補正処理部92を有する例である。
【0077】
駆動圧センサ81と温度センサ82は夫々、上述した第二の実施形態における駆動圧センサ51と温度センサ52と同様の構成及び機能からなるものであって、それぞれ流体制御器2の駆動圧と外部温度を検出する。
【0078】
通信モジュール83は、上述した第一の実施形態の処理モジュール13と同様、圧力センサ11や着脱機構12を構成する筐体121内等に格納される一方、所定の配線等によって圧力センサ11に加えて駆動圧センサ81及び温度センサ82と連携可能に構成されている。そして、圧力センサ11、駆動圧センサ81、及び温度センサ82によって検出された閉空間S内の圧力の検出値、駆動圧、及び外部温度に係る情報は、通信モジュール83が備える通信処理部831により、中継装置4を中継してサーバ9に送信される。
【0079】
なお、本実施形態でも、情報提供装置8とサーバ9との間には中継装置4が設けられており、当該中継装置4を介して、情報提供装置8からサーバ9に情報が提供される。また、通信処理部831による通信手段や方式、ネットワークNW1、NW2の構成は上述の第一の実施形態と同様である。また同様に、本実施形態においてもデータの送信は所定の周期で実行することができる。
また、本実施形態に係る情報提供装置6が着脱可能に取り付けられる流体制御器2の機能及び構造は上述の第一の実施形態と同様である。また、特段の言及がない限り、本実施形態の説明において、第一の実施形態と同じ番号(符号)の付された部材や機能部等は、上述の部材や機能部等と同じ機能を保持あるいは処理を実行するものであるため、説明を省略する。
【0080】
サーバ9は、CPU、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAMやROM、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源によって構成され、判別処理部91、補正処理部92、及び通信処理部93からなる機能部を構成する。
【0081】
判別処理部91は、第二の実施形態における判別処理部531と同様、所定の閾値と、圧力センサ11によって検出された圧力の検出値とを比較することにより、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を判別する一方、流体制御器2の異常の判別処理の基準となる所定の閾値が補正処理部92によって補正された際には、補正後の閾値を基準として流体制御器2の異常を判別する処理を実行する。
【0082】
補正処理部92は、第二の実施形態における補正処理部532と同様、駆動圧センサ81によって検出されたエアの圧力や温度センサ82によって測定された外部温度に応じて、判別処理部91が流体制御器2の異常を判別するべく参照する所定の閾値を補正する。ただし、本実施形態では第二の実施形態と異なり、エアの圧力や外部温度に係る情報は、ネットワークNW1、NW2を経由して、情報提供装置8からサーバ9に供給されたものである。
【0083】
通信処理部93は、中継装置4を介して、情報提供装置8から圧力センサ11による閉空間S内の圧力の検出値、駆動圧センサ81による駆動圧、及び温度センサ82による外部温度に係る情報を受信する。
【0084】
以上の構成からなる本実施形態に係る異常検知システム80によっても、第二の実施形態と同様、駆動圧としてのエアや外部温度に起因して閉空間S内の圧力が変化した場合でも、これと流体の漏出による閉空間S内の圧力の変化とを識別して、閉空間Sへの流体の漏出等に起因した流体制御器2の異常を検知することができる。また、本実施形態によれば、流体制御器2の異常の判別処理がサーバ9側で実行される結果、流体制御器2に取り付けられる情報提供装置8の構成をシンプルにすることができるし、判別処理部91や補正処理部92が実行するプログラムのデバッグ等、保守も容易になる。
【0085】
なお、本実施形態についても、流体制御器2の駆動圧を検出する駆動圧センサ81に代えて、流体制御器2のスイッチ操作等による開閉動作を検知する開閉検知機構を設けた変形例を構成することもできる。この場合、開閉検知機構によって流体制御器2の開閉動作が検知されると、かかる情報がネットワークNW1、NW2を経由して、補正処理部92に供給される。これに応じて、補正処理部92によって所定の閾値が補正されると、流体制御器2の開閉による閉空間S内の圧力の変化と、流体制御器2の異常によって惹き起こされた閉空間S内の圧力の変化とを区別して、流体制御器2の異常を判別することができる。
【0086】
なお、以上の本実施形態においては、異常検知装置1、5あるいは情報提供装置6と流体制御器2とを別体として構成したが、これに関わらず、異常検知装置1、5あるいは情報提供装置6と流体制御器2とが一体的に流体制御器を構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、5 異常検知装置
11 圧力センサ
12 着脱機構
121 筐体
122 固定部材
13、53 処理モジュール
131、531 判別処理部
132、533 通信処理部
51、81 駆動圧センサ
52、82 温度センサ
532 補正処理部
2 流体制御器
21 バルブボディ
211a 流入路
211b 流出路
211c 弁室
212 シート
213 ダイヤフラム
22 アクチュエータボディ
221 ディスク
222 押えアダプタ
223 ピストン
224 バネ
23 アクチュエータキャップ
23a 駆動圧導入口
231、232 駆動圧導入路
233 駆動圧導入室
LP リークポート
S 閉空間
3、7、9 サーバ
31、72、93 通信処理部
71、91 判別処理部
92 補正処理部
4 中継装置
6、8 情報提供装置
63、83 通信モジュール
631、831 通信処理部
NW1、NW2 ネットワーク
図1
図2
図3
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図10