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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】化学修飾siRNA
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20220706BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220706BHJP
   A61P 37/00 20060101ALN20220706BHJP
   A61K 31/712 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
C07H21/02 ZNA
C12N15/113 Z
A61P37/00
A61K31/712
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019020856
(22)【出願日】2019-02-07
(62)【分割の表示】P 2018540174の分割
【原出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2019089820
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016230640
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425088
【氏名又は名称】ナパジェン ファーマ,インコーポレテッド
【氏名又は名称原語表記】NapaJen Pharma,Inc.
【住所又は居所原語表記】#527,533 Airport Boulevard,Burlingame,California 94010 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貞春
(72)【発明者】
【氏名】宇野 篤
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘法
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191223(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/115481(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/020795(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/078470(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されている化学修飾siRNAであって、
センス鎖の塩基配列が、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含み、
アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列が、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含み、且つ
下記条件(i)~(ix)を満たす化学修飾siRNA:
(i)センス鎖の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(ii)センス鎖の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(iii)センス鎖の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(iv)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(v)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vi)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vii)アンチセンス鎖の5'末端側から1~7番目のリボヌクレオチド残基は、化学修飾が施されていない。
(viii)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾されない場合には、センス鎖の5'末端側から1番目のリボヌクレオチド残基がシチジル酸残基又はウリジル残基であれば2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該リボヌクレオチド残基がアデニル酸残基又はグアニル酸残基であれば2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(ix)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾される場合には、アンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基は化学修飾が施されない。
【請求項2】
前記ポリデオキシアデニル酸が10~100塩基長である、請求項1に記載の化学修飾siRNA。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化学修飾siRNAがシゾフィランと複合化されている、シゾフィラン/化学修飾siRNA複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が、化学修飾siRNAに関する。より具体的には、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されている化学修飾siRNAであって、シゾフィランと複合化した場合に、RNaseに対する耐性が高く、しかも効果的にRNAi活性を示す化学修飾siRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
1998年に発見されたRNA干渉(RNAi)、その効果の大きさや持続性が従来のアンチセンス法に比較して顕著に優れており、画期的な遺伝子発現阻害方法であることから医薬応用が期待されてきた。しかしながら、RNAi活性を示す2本鎖RNA(即ちsiRNA)は、投与から標的細胞に取り込まれる過程、もしくは細胞内で分解されることが多く、その活性本体であるRISC複合体を細胞内で形成することが困難であった。
【0003】
好適なアルゴリズムでデザインされた未修飾のsiRNAは、期待されるRNAi活性を果たすために生体内や細胞内での脆弱性から、例えば血中等に存在するRNaseにより極めて容易に分解され、標的細胞でRNAi効果を発揮するものは少ない。そこで、従来から、RNase耐性となるような様々な化学修飾をsiRNAに施すことが提案されている(非特許文献1~3)。しかしながら、核酸医薬として開発されているsiRNAは、その殆どが全塩基に対して化学修飾を施しており、そのことが起因して、配列設計当初の未修飾のsiRNAに期待されたRNAi 活性を果たし得ない結果に繋がっている。即ち、少ない化学修飾でRNase耐性に優れ、且つ本来期待された通りにRNAi 活性を誘導するような化学修飾siRNAは見出されていないのが現状である(非特許文献4)。
【0004】
一方、siRNAのデリバリー技術として、ポリデオキシアデニル酸が付加されたsiRNAとシゾフィラン(SPG)のsiRNA/SPG複合体が提案されている(特許文献1を参照)。当該siRNA/SPG複合体は、樹状細胞等のDectin-1発現細胞に対してsiRNAを選択的に送達でき、しかも細胞内に送達されると、RNAi効果を有効に発揮できるので、核酸医薬としての実用化が期待されている。当該siRNA/SPG複合体は、siRNAがSPGによって包埋された状態になっているため、ある程度のRNase耐性は期待できるが、多くのRNaseが存在する血中内では、RNaseによる分解は避けられず、当該siRNA/SPG複合体を核酸医薬として開発するには、RNAi活性を維持させつつ、RNaseに対する耐性を向上させる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Development of Therapeutic-Grade Small Interfering RNAs by Chemical Engineering, Jesper B. Bramsen and Jorgen Kjems, Front Genet. 2012; 3: 154.
【文献】Oligonucleotide Therapies: The Past and the Present, Karin E. Lundin, Olof Gissberg, and C.I. Edvard Smith, Hum Gene Ther. 2015 Aug 1; 26(8): 475-485.
【文献】siRNAmod: A database of experimentally validated chemically modified siRNAs, Showkat Ahmad Dar, Anamika Thakur, Abid Qureshi & Manoj Kumar, Sci Rep.2016; 6: 20031.
【文献】Preclinical and clinical development of siRNA-based therapeutics, Gulnihal Ozcan, Bulent Ozpolat, Robert L. Coleman, Anil K. Sood, and Gabriel Lopez-Berestein, Adv Drug Deliv Rev. 2015 June 29; 87: 108-119.
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2009/078470公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸(特に限定されない限り、以下、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニル酸も含む意味で用いる)が付加されている化学修飾siRNAであって、シゾフィランと複合化した場合に、RNaseに対する耐性が高く、しかも効果的にRNAi活性を示す化学修飾siRNAを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されているsiRNAに対して、化学修飾を行ってRNaseに対する耐性を向上させる場合には、当業者であれば、通常、(1)センス鎖との接合力が特に弱いとされるアンチセンス鎖の5'末端側、(2)siRNAとポリデオキシアデニル酸のつなぎ目の近傍、の2カ所には化学修飾によるRNaseに対する耐性の強化が不可欠と考えられるところ、本発明者等は、これらの2カ所に化学修飾を施しても、RNaseに対する耐性が十分に向上しないことを確認した。更に、公知文献で報告されているsiRNAの化学修飾法について検討を行った。
【0009】
このような状況の下、本発明者等は、鋭意検討を行うことにより、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されているsiRNAに対して、通常のポリデオキシアデニル酸を付加しないsiRNAに比較して、特定の塩基に特定の化学修飾を施すことにより、比較的少ない化学修飾であっても、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されているsiRNAに対して、シゾフィランと複合化した際のRNaseに対する耐性を格段に向上させて、効果的にRNAi活性を示すことが可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。下記項1の条件(i)~(ix)に示す本発明の修飾法を本明細書中ではA-3修飾ともいう。
項1. センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されている化学修飾siRNAであって、
センス鎖の塩基配列が、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含み、
アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列が、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含み、且つ
下記条件(i)~(ix)を満たす化学修飾siRNA:
(i)センス鎖の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(ii)センス鎖の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(iii)センス鎖の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(iv)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(v)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vi)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vii)アンチセンス鎖の5'末端側から1~7番目のリボヌクレオチド残基は、化学修飾が施されていない。
(viii)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾されない場合には、センス鎖の5'末端側から1番目のリボヌクレオチド残基がシチジル酸残基又はウリジル残基であれば2'位をフルオロ基で修飾されており、当該リボヌクレオチド残基がアデニル酸残基又はグアニル酸残基であれば2'位をメトキシ基で修飾されている。
(ix)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾される場合には、アンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基は化学修飾が施されない。
項2. 前記ポリデオキシアデニル酸が10~100塩基長である、項1に記載の化学修飾siRNA。
項3. 項1又は2に記載の化学修飾siRNAがシゾフィランと複合化されている、シゾフィラン/化学修飾siRNA複合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的少ない化学修飾を施すことにより、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されている化学修飾siRNAであって、シゾフィランと複合化した場合に、RNaseに対する耐性が高く、しかも効果的にRNAi活性を示す化学修飾siRNAを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】参考試験例1において、各種化学修飾siRNA、及び化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、遺伝子発現抑制効果を評価した結果を示す図である。
図2】参考試験例2において、各種化学修飾siRNA、及び化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、血清中での安定性を評価した結果を示す図である。
図3】参考試験例3において、各種化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、遺伝子発現抑制効果を評価した結果を示す図である。
図4】参考試験例4において、各種化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、血清中での安定性を評価した結果を示す図である。
図5】試験例1において、各種化学修飾siRNA、及び化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、遺伝子発現抑制効果を評価した結果を示す図である。
図6】試験例2において、各種修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、血清中での安定性を評価した結果を示す図である。
図7】試験例3において、各種修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、ex-vivo MLR(リンパ球混合培養)アッセイにより細胞増殖抑制効果を評価した結果を示す図である。
図8】試験例4において、各種化学修飾siRNA、及び化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、遺伝子発現抑制効果を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、2以上の塩基からなる塩基配列を示す場合には、塩基配列の左端が5'末端、右端が3'末端である。
【0014】
1.化学修飾siRNA
ポリデオキシアデニル酸が付加されたsiRNAの塩基配列・構造
本発明の化学修飾siRNAは、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されてなり、センス鎖及びアンチセンス鎖が特定のジヌクレオチド配列を含み、当該ジヌクレオチド配列に特定の化学修飾が施されていることを特徴とする。以下、本発明の化学修飾siRNAについて詳述する。
【0015】
本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖とアンチセンス鎖の塩基配列については、標的遺伝子中の標的配列に応じて設定される。標的遺伝子中の標的配列は、IDT社(Integrated DNA Technologies, INC)のマニュアル(Dicer Substrate RNAi Design)等に従って公知の手法で設定することができる。siRNAは、通常、当該標的配列に対して100%一致する配列を含むか、所望のRNA干渉効果が得られる限り当該標的配列から1又は数個の塩基が置換・付加されていている配列を含むように設計される。また、アンチセンス鎖の5'末端がA/Uペアであり、センス鎖の5'末端がG/Cペアであり、アンチセンス鎖の5'末端側に5つ程度のA/Uペアがあり、且つ2本鎖中に9つ以上のG/Cペアが無い2本鎖RNAを設計することによって、優れたRNA干渉効果をもつsiRNAをデザインできることも報告されている(Ui-Tei et. al, Nucleic Acids Res., 32, 936-948 (2004))。例えば、CD40に対するsiRNAとして、配列番号1に示す塩基配列からなるセンス鎖と配列番号2に示す塩基配列からなるアンチセンス鎖からなるsiRNA、配列番号3に示す塩基配列からなるセンス鎖と配列番号4に示す塩基配列からなるアンチセンス鎖からなるsiRNA、配列番号5に示す塩基配列からなるセンス鎖と配列番号6に示す塩基配列からなるアンチセンス鎖からなるsiRNA、配列番号7に示す塩基配列からなるセンス鎖と配列番号8に示す塩基配列からなるアンチセンス鎖からなるsiRNA、配列番号9に示す塩基配列からなるセンス鎖と配列番号10に示す塩基配列からなるアンチセンス鎖からなるsiRNA等が挙げられる。
【0016】
本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖の塩基配列は、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含み、且つアンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列が、CA、UA、及びUGからなる群から選択される少なくとも1種のジヌクレオチド配列を含む。かかるジヌクレオチド配列について、後述する特定の化学修飾を施すことにより、SPGと複合化した際に、RNAi活性を維持させつつRNaseに対する耐性を向上させることが可能になる。
【0017】
本発明の化学修飾siRNAの標的遺伝子については、特に制限されず、当該化学修飾siRNAの用途に基づいて適宜選択すればよいが、医薬用途への使用という観点からは、病態に関与しており、その発現抑制が望まれている遺伝子が好適である。
【0018】
本発明の化学修飾siRNAの標的遺伝子の好適な一態様として、Dectin-1発現細胞において発現され、且つ当該細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子が挙げられる。Dectin-1とは、細胞膜上に存在するC型レクチンレプチンタイプの糖鎖認識ドメインを有する受容体(Pattern Recognition Receptor)である。Dectin-1は、細胞外にSPGを特異的に認識する領域を有し、細胞内にITAM(immunoreceptor tyrosinase-based activation motif-1)と呼ばれる活性化シグナルを伝えるモチーフを持つ。Dectin-1はSPGを認識すると、NF-κBや炎症性サイトカインの産生を促し、生体防御反応を惹起する。Dectin-1発現細胞としては、具体的には、マクロファージ、樹状細胞、好中球等が挙げられる。SPGはβ-1,3-グルカン骨格を有しており、Dectin-1発現細胞の細胞膜に存在するDctin-1と結合することによって、エンドサイトーシスでDectin-1発現細部内に送達されることが知られている。本発明の化学修飾siRNAをSPGと複合化すると、SPGがDectin-1に認識されることにより、本発明の化学修飾siRNAがDectin-1発現細胞内に選択的に送達することが可能になる。また、本発明の化学修飾siRNAの標的遺伝子として、Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子を選択することにより、生体内の免疫抑制を誘導して、免疫を調節することが可能になる。
【0019】
本発明の化学修飾siRNAにおいて、Dectin-1発現細胞において発現され、当該細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子を標的遺伝子にする場合、その遺伝子の種類は特に制限されず、本発明の化学修飾siRNAの用途に基づいて適宜選択することができるが、生体内の免疫調節、とりわけ免疫抑制をより有効に誘導するとの観点から、好適な標的遺伝子として、CD40等の共刺激因子(共刺激分子ともいう)をコードする遺伝子をはじめとする抗原提示に関連する遺伝子等が挙げられる。
【0020】
本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖の塩基長については、特に制限されないが、好ましくは21が挙げられる。
【0021】
また、本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖が、両3'末端の2~5個程度度のリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドからなるダングリングエンドを持つようにハイブリダイズして二本鎖を形成しているものであってもよい。
【0022】
本発明の化学修飾siRNAの好適な態様の一例として、センス鎖及びアンチセンス鎖の塩基長が共に21であり、且つセンス鎖の5'末端及びアンチセンス鎖の3'末端に2個のリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドからなるダングリングエンドが形成されているものが挙げられる。即ち、このようなsiRNAの場合には、アンチセンス鎖の3'末端側から3~21番目のリボヌクレオチド配列は、センス鎖の5'末端側から1~19番目のリボヌクレオチド配列に相補的になる。
【0023】
本発明の化学修飾siRNAでは、センス鎖の5'末端にポリデオキシアデニル酸が付加されている。当該ポリデオキシアデニル酸は、2本のSPGと3重螺旋構造を形成し、本発明の化学修飾siRNAをSPGと複合化させる役割を担う。
【0024】
ポリデオキシアデニル酸を構成するデオキシアデニル酸残基の数としては、SPGとの複合体形成が可能であることを限度として、特に制限されるものではないが、例えば、10~100個、好ましくは20~100個、より好ましくは20~80個、更に好ましくは30~50個が挙げられる。
【0025】
本発明の化学修飾siRNAにおいて、ポリデオキシアデニル酸は、センス鎖の5'末端にホスホジエステル結合によって直接結合していることが好ましいが、センス鎖の5'末端にリンカー(スペーサー)を介して結合していてもよい。
【0026】
また、本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖、アンチセンス鎖、及びポリデオキシアデニル酸のホスホジエステル結合は、一部又は全てがホスホロチオエート化(S化)されていてもよい。本発明の化学修飾siRNAのポリデオキシアデニル酸部分については、S化されていることが好ましい。S化されているホスホジエステル結合とは、ホスホジエステル結合部分のリン酸残基の酸素原子の一つが硫黄原子に置換されている結合構造である。
【0027】
siRNAの化学修飾
本発明の化学修飾siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖に対して、後述する条件(i)~(ix)に従った化学修飾(A-3修飾)が施されている。なお、本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖及びアンチセンス鎖は後述する条件(i)~(ix)以外の化学修飾は行わないことを要する。
【0028】
<センス鎖の化学修飾>
本発明の化学修飾siRNAのセンス鎖は、以下の条件(i)~(iii)を満たすように化学修飾が施される。
(i)センス鎖の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(ii)センス鎖の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(iii)センス鎖の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
【0029】
即ち、例えば、siRNAのセンス鎖が表1の(A)に示す21塩基長の塩基配列である場合には、条件(i)~(iii)に従った化学修飾を施したものとして、表1の(B)に示す態様が挙げられる。
【表1】
【0030】
<アンチセンス鎖の化学修飾>
本発明の化学修飾siRNAのアンチセンス鎖は、以下の条件(iv)~(vii)を満たすように化学修飾が施される。
(iv)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、CAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(v)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UAからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vi)アンチセンス鎖の5'末端側から8番目以降の塩基配列において、UGからなるジヌクレオチド配列が含まれる場合には、当該ジヌクレオチド配列中のウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、当該ジヌクレオチド配列中のグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。
(vii)アンチセンス鎖の5'末端側から1~7番目のリボヌクレオチド残基は、化学修飾が施されていない。
【0031】
即ち、例えば、siRNAのアンチセンス鎖が表2の(A)に示す21塩基長の塩基配列である場合には、条件(iv)~(vii)に従った化学修飾を施したものとして、表2の(B)に示す態様が挙げられる。
【表2】
【0032】
<ポリデオキシアデニル酸の近傍における化学修飾>
本発明の化学修飾siRNAにおいて、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基は、ポリデオキシアデニル酸に最も近接する位置に配されている。本発明の化学修飾siRNAでは、これらのリボヌクレオチド残基については、前記条件(i)~(vii)をそのまま当てはめてはいけない場合がある。
【0033】
具体的には、本発明の化学修飾siRNAでは、センス鎖及びアンチセンス鎖は、前記条件(i)~(vii)に従って化学修飾が施されるが、かかる条件に従って化学修飾を施した場合、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾されない、又は共に化学修飾されている場合には、下記条件(viii)及び(ix)に従った化学修飾が必要になる。
(viii)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾されない場合には、センス鎖の5'末端側から1番目のリボヌクレオチド残基がシチジル酸残基又はウリジル残基であれば2'位をフルオロ基で修飾されており、当該リボヌクレオチド残基がアデニル酸残基又はグアニル酸残基であれば2'位をメトキシ基で修飾されている。
(ix)前記(i)~(vi)に従って化学修飾を施すと、センス鎖の5'末端側から1番目及びアンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基が共に化学修飾される場合には、アンチセンス鎖5'末端側から19番目のリボヌクレオチド残基は化学修飾が施されない。
【0034】
<化学修飾の方法>
シチジル酸残基及びウリジル酸残基のリボース部分の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換(修飾)する方法、アデニル酸残基及びグアニル酸残基のリボース部分の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換(修飾)する方法は公知であり、本発明の化学修飾siRNAは、公知の手法で製造することができる。
【0035】
2.SPG/化学修飾siRNA複合体
本発明の化学修飾siRNAは、SPGと複合化させて、シゾフィラン/化学修飾siRNA複合体の状態で使用される。SPGは、β-1,3-グルカン骨格を有する多糖であり、シゾフィラン/化学修飾siRNA複合体は、SPGが前述の細胞表面に存在する受容体Dctin-1と結合することによって、エンドサイトーシスで細部内に送達される。
【0036】
SPG/化学修飾siRNA複合体の構成成分であるシゾフィラン(SPGと略記することがある)は、文献(A.C.S.38(1),253(1997);Carbohydrate Research, 89, 121-135(1981))記載の定法に従って製造することができる。このようにして得られたシゾフィランは、超音波処理により所望の分子量のシゾフィランを得ることができる。
【0037】
SPG/化学修飾siRNA複合体に使用されるシゾフィランの分子量については、特に制限されず、化学修飾siRNAに付加されているポリデオキシアデニル酸の鎖長等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、シゾフィランの分子量として、通常25,000~500,000、好ましくは25,000~250,000が例示される。
【0038】
SPG/化学修飾siRNA複合体は、SPGとポリデオキシアデニル酸を複合化させる公知の方法に従って調製することができる。具体的には、以下の(1)~(3)の工程で製造する方法が例示される:(1)ポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAを公知の方法に従って調製する、(2)また、別途、SPGを用意する、(3)次いで、化学修飾siRNAに結合しているポリデオキシアデニル酸とSPGとを用いて複合体を形成させる。
【0039】
前記方法の(3)の工程において、化学修飾siRNAとSPGとの混合比は、ポリデオキシアデニル酸の鎖長やSPGの分子量に応じて適宜選択することができる。SPG/化学修飾siRNA複合体は、ポリデオキシアデニル酸のデオキシアデニル酸残基1個に対してSPGの主鎖のグルコース1分子が対応して、ポリデオキシアデニル酸1本とSPG2本が3重螺旋構造をとる。即ち、SPG/化学修飾siRNA複合体では、2本のSPGで形成された2重螺旋構造の1カ所又は2カ所以上にポリデオキシアデニル酸が取り込まれて3重螺旋構造が形成されている。例えば、40塩基長のポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAと分子量150000のSPGであれば、分子量150000のSPG2分子に塩基長のポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAを17分子含んで3重螺旋構造をとることができる。ポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAとSPGの好ましいモル比としては、20:1~1:5、好ましくは10:1~1:1で混合し、化学修飾siRNAに結合している1本鎖ポリデオキシアデニル酸領域とSPGを複合化させることが好ましい。このようなモル比で、ポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAとSPGとを複合体形成条件下に晒すことにより、両者を効率的に相互作用させることが可能になり、SPG/化学修飾siRNA複合体の製造効率を向上させることができる。
【0040】
SPG/化学修飾siRNA複合体におけるポリデオキシアデニル酸とSPGとの3重鎖螺旋構造の形成は、具体的には以下の方法に従って実施できる。SPGは、天然若しくは水中では、3重螺旋構造をとっている。このSPGを、DMSO(ジメチルスルホオキシド)等の極性溶媒や水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液に溶解して1本鎖に変性させた後、ポリデオキシアデニル酸を含む化学修飾siRNAを加え、溶媒を水に戻すこと又はアルカリ水溶液を中和すること(再生過程)によって、化学修飾siRNAに連結したポリデオキシアデニル酸1本鎖部分と2本のSPGからなる、3重螺旋型に複合化された構造(会合構造)が形成される。このようなポリデオキシアデニル酸と多糖の複合化は、主に、水素結合と疎水性相互作用を介して形成されると考えられる。
【0041】
SPG/化学修飾siRNA複合体は、細胞内に導入されることにより、細胞内での標的遺伝子の発現を抑制することができるので、標的遺伝子の発現抑制を目的とした医薬組成物として使用できる。当該医薬組成物は、有効成分としてSPG/化学修飾siRNA複合体を治療有効量含有させ、更に薬学的に許容される担体を適宜組み合わせて調製することができる。このような担体としては、精製水、糖含有水溶液、緩衝液、生理食塩水、ヌクレアーゼフリーの水等の水性担体;賦形剤等が挙げられる。
【0042】
SPG/化学修飾siRNA複合体の投与経路は、経口、非経口(静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内投与を含む)、吸入、全身投与、局所投与(皮膚や頬面窩洞への外用;眼、耳、鼻等の実質的に血流に侵入しない部位への点滴注入を含む)等、患者の症状、病態、疾患の種類等に基づいて従来利用されている方法から適宜選択することができる。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0044】
製造例:SPG/化学修飾siRNA複合体の製造
以下の試験例で用いたSPG/化学修飾siRNA複合体は次のようにして形成した。分子量約15万のSPGを、0.25N水酸化ナトリウム水溶液に最終濃度15mg/mlになるように調製した後、1時間振動攪拌して4℃で1日静置し変性させた。330mMの第1リン酸ナトリウムに溶解させた、S化されたポリデオキシアデニル酸を付加した所定配列の化学修飾siRNAの溶液を、この変性SPG溶液に加えて中和し4℃で24時間以上静置した。この時、化学修飾siRNA 1モルに対してSPGが0.27モルとなるようにした。なお、S化されたポリデオキシアデニル酸を付加した化学修飾siRNAは、siRNAのセンス鎖5'末端に40個のデオキシアデニル酸が、リン酸エステル結合によって連結されたものである。
【0045】
参考試験例1
化学修飾がなされたCD40に対する化学修飾siRNA(表3に示すNJ050.11及びNJ050.13)を用いて、SPG/化学修飾siRNA複合体を調製した。また、ポリデオキシアデニル酸が付加されていない化学修飾siRNAとして、表3に示すNJ050.12及びNJ050.13を準備した。当該化学修飾siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列は、それぞれ配列番号1及び2に該当している。
【0046】
NJ050.11では、センス鎖において、全てのアデニル酸及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換し、全てのシチジル酸及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換しており、アンチセンス鎖において、5'末端側から8番目以降のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換し、5'末端側から8番目以降のシチジル酸及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換している。
【0047】
NJ050.12では、センス鎖及びアンチセンス鎖の双方において、CA、UA、及びUGからなるジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換し、且つ、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換している。
【0048】
NJ050.13では、センス鎖において、CA、UA、及びUGからなるジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換し、且つ、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換しており、アンチセンス鎖において、5'末端側から8番目以降のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換し、5'末端側から8番目以降のシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のメトキシ基をフルオロ基で置換している。
【表3】
【0049】
各SPG/化学修飾siRNA複合体及び化学修飾siRNAを、20万個のc-wrt-7LR細胞(ラット骨髄単球性白血病由来細胞)に電気穿孔法によって導入した。導入後、各細胞を48穴プレートに2×105cells/wellとなるように播種して、37℃、5% CO2下で2時間インキュベートした。その後、各穴に10ng/mLになるようにリポポリサッカライド(LPS)を添加し、37℃、5% CO2下で22時間インキュベートした。次いで、細胞から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、CD40 primerを用いてリアルタイムPCRを行い、CD40のmRNA量を測定した。siRNAを挿入することなくLPS処理を行ったものを陽性コントロールとし、siRNAを挿入することなくLPS処理も行なわなかったものを陰性コントロールとした。また、CD40のmRNA量は、ハウスキーピング遺伝子である18SrRNA量で補正した。
【0050】
得られた結果を図1に示す。図1中、「LPS(-)」は陰性コントロール、「LPS(+)」は陽性コントロール、「21bp of NJ050.12」はNJ050.12の化学修飾siRNA(21塩基長)、「21bp of NJ050.13」はNJ050.13の化学修飾siRNA(21塩基長)、「NJ050.11(dA40-dsRNA)」はNJ050.11の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、及び「NJ050.13(dA40-dsRNA)」はNJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を示す。
【0051】
この結果、NJ050.13の化学修飾siRNAは、NJ050.12の化学修飾siRNAよりも、CD40のmRNA量が低下しており、アンチセンス鎖において5'末端側から7番目までのリボヌクレオチド残基は化学修飾を施さない方が、遺伝子発現抑制効果が高くなることが確認された。一方、NJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体では、遺伝子発現抑制効果は認められなかった。
【0052】
参考試験例2
NJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体では、遺伝子発現抑制効果は認められなかった要因として、塩基配列の脆弱性に起因するRLCへの取り込み不全の可能性が考えられたことから、本試験では、化学修飾siRNA、及びSPG/化学修飾siRNA複合体の血清中での安定性の評価を行った。
【0053】
センス鎖5'末端に40個のデオキシアデニンをリン酸エステル結合によって連結させたNJ050.13の化学修飾siRNA(Naked)を1μMになるように、10容量%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI1640培地(Gibco)に添加し、37℃で16時間インキュベートした。次いで、試料と同量のTE飽和フェノール/クロロホルムを加え、ボルテックスで強撹拌した後、12000 ×gで15分間遠心分離した。次いで、上清を回収し、上清中の核酸濃度を分光光度計で測定し、核酸200ng相当量を15%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に供した。また、コントロールとして、センス鎖5'末端に40個のS化したポリデオキシアデニル酸をリン酸エステル結合によって連結させたNJ003.2のdsRNAを使用した。NJ003.2のdsRNAの塩基配列は、表4に示す通りであり、血清中でも比較的安定であることが分かっている。
【0054】
また、NJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、及びNJ003.2のdsRNAを使用したSPG/siRNA複合体についても、電気泳動に供する核酸量を400ngに設定したこと以外は、前記と同様に試験を行った。
【0055】
得られた結果を図2に示す。図2の(A)には、NJ050.13の化学修飾siRNA(Naked)、及びNJ050.13の化学修飾siRNA(Naked)の結果を示す。図2の(A)中、「Naked」とはFBS存在下でインキュベートを行わなかった場合、「Naked in FBS」とはFBS存在下でインキュベートを行なった場合である。図2の(B)には、NJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、及びNJ003.2のdsRNAを使用したSPG/siRNA複合体の結果を示す。図2の(B)中、「Naked」とは、NJ050.13の化学修飾siRNA又はNJ003.2のdsRNAをFBS存在下でインキュベートを行わなかった場合、「Complex」とはSPG/化学修飾siRNA複合体又はSPG/siRNA複合体をFBS存在下でインキュベートを行なった場合、「Complex in FBS」とはSPG/化学修飾siRNA複合体又はSPG/siRNA複合体をFBS存在下でインキュベートした場合である。
【0056】
この結果から、センス鎖の5'末端にS化したポリデオキシアデニル酸を付加したNJ050.13の化学修飾siRNAは、ポリデオキシアデニル酸とセンス鎖の結合部位付近で切断されている可能性が示唆された。
【0057】
参考試験例3
参考試験例2の結果から、S化したポリデオキシアデニル酸とsiRNAのセンス鎖との結合部位付近の安定性を高める必要性が示唆されたことから、センス鎖の接合部位に化学修飾を入れることとした。また、参考試験例1の結果から、NJ050.11で採用したセンス鎖修飾では活性を喪失することが懸念されるため、表4に示すNJ050.14の化学修飾を施したsiRNAを調製した。
【表4】
【0058】
2×104 cells/wellとなるようにdRAW細胞(マウスマクロファージ;Dectin-1を過剰発現するRAW264細胞)を48穴プレートに播種して、37℃、5% CO2下で24時間インキュベートした。次いで、SPG/化学修飾siRNA複合体を200nM又は400nMとなるように添加して、37℃、5% CO2下で12時間インキュベートした。その後、各穴に0.2ng/mLになるようにインターフェロンγ(IFNr)を添加して37℃、5% CO2下で4時間インキュベートした。次いで、細胞から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、CD40 primerを用いてリアルタイムPCRを行い、CD40のmRNA量を測定した。SPG/化学修飾siRNA複合体を添加することなくIFNr処理を行ったものを陽性コントロールとし、SPG/化学修飾siRNA複合体を添加することなくIFNr処理も行なわなかったものを陰性コントロールとした。また、CD40のmRNA量は、ハウスキーピング遺伝子である18SrRNA量で補正した。
【0059】
得られた結果を図3に示す。図3中、「NT」は陰性コントロール、「IFNγ(+)」は陽性コントロール、「NJ050.13 SPG complex」はNJ050.13の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、「NJ050.14 SPG complex」はNJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を示す。この結果から、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体は、NJ050.13の化学修飾siRNAを使用した複合体の場合と同程度に良好な遺伝子発現抑制効果を有していることが確認された。
【0060】
参考試験例4
NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体200ngを血清(マウス血清、ヒト血清、及びFBS)に添加し、37℃で1分間又は30分間インキュベートした。次いで、試料と同量のTE飽和フェノール/クロロホルムを加え、ボルテックスで強撹拌した後、12000 ×gで15分間遠心分離した。次いで、上清を回収し、上清中の核酸濃度を分光光度計で測定し、核酸200ng相当量を15%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に供した。
【0061】
得られた結果を図4に示す。図4中、レーン1の「Naked」とは、S化したポリデオキシアデニル酸が付加されたNJ050.13の化学修飾siRNAを血清存在下でインキュベートを行わなかった場合、レーン2の「Complex」とは、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を血清存在下でインキュベートを行わなかった場合、レーン3~5及び9~11の「NJ050.14 complex」とは、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、レーン12の「21mer」とは、NJ003.2の化学修飾siRNA部分のセンス鎖配列でありサイズマーカーとして用いた。この結果から、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体は、血清存在下で比較的安定であることが確認された。
【0062】
試験例1
NJ050.14の化学修飾siRNAは、アデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換している箇所が多く、製造上、収率が低下することが懸念される。また、NJ050.14の化学修飾siRNAは、血清存在下で比較的安定であるとはいえ、NJ050.13の化学修飾siRNAよりも血清下での安定性が悪く、in vivoでの使用に耐えないと考えられる。そこで、S化したポリデオキシアデニル酸とsiRNAのセンス鎖との結合箇所への化学修飾は不可欠とするも、安定性を犠牲にしても、可能な限り化学修飾の数を減らして、適切な遺伝子発現抑制効果を備える化学修飾siRNAを開発することが必要になる。
【0063】
そこで、表5に示すNJ050.15の化学修飾を施したsiRNAを調製した。NJ050.15の化学修飾を施したsiRNAは、本発明で規定している条件(i)~(ix)を満たすものである。
【表5】
【0064】
5×104 cells/wellとなるようにdRAW細胞(マウスマクロファージ;Dectin-1を過剰発現するRAW264細胞)を48穴プレートに播種し、同時に200nMのSPG/化学修飾siRNA複合体(NJ050.14及びNJ050.15の化学修飾siRNAを使用)、及び0.2ng/mLのインターフェロンγ(IFNr)を添加して、37℃、5% CO2下で24時間インキュベートした。次いで、細胞から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、CD40 primerを用いてリアルタイムPCRを行い、CD40のmRNA量を測定した。SPG/化学修飾siRNA複合体を添加することなくIFNr処理を行ったものを陽性コントロールとし、SPG/化学修飾siRNA複合体を添加することなくIFNr処理も行なわなかったものを陰性コントロールとした。なお、CD40のmRNA量は、ハウスキーピング遺伝子である18SrRNA量で補正した。また、比較のために、S化したポリデオキシアデニル酸が付加されたNJ050.14及びNJ050.15の化学修飾siRNAを使用して、同様に試験を行った。
【0065】
得られた結果を図5に示す。図5中、「NT」は陰性コントロール、「IFNγ(+)」は陽性コントロール、「NJ050.14 naked」は、センス鎖5'末端に40個のデオキシアデニンをリン酸エステル結合によって連結させたNJ050.14の化学修飾siRNA、「NJ050.14 complex」は、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、「NJ050.15 naked」は、センス鎖5'末端に40個のデオキシアデニル酸をリン酸エステル結合によって連結させたNJ050.15の化学修飾siRNA、「NJ050.15 complex」は、NJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体である。この結果、NJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体は、NJ050.14の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体に比べて、同等若しくは良好な遺伝子発現抑制効果を有していることが確認された。
【0066】
試験例2
NJ050.14又はNJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、及び表6に示す化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体について、血清中での安定性を評価した。具体的には、各SPG/化学修飾siRNA複合体を1μMとなるように血清(ヒト血清、及びFBS)に添加し、37℃で16時間インキュベートした。次いで、試料と同量のTE飽和フェノール/クロロホルムを加え、ボルテックスで強撹拌した後、12000 ×gで15分間遠心分離した。次いで、上清を回収し、上清中の核酸濃度を分光光度計で測定し、核酸20ng相当量を15%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動に供した。分解されていない化学修飾siRNAについて、Image J解析ソフトを用いて定量を行い、残存率(%)を求めた。
【表6】
【0067】
得られた結果を図6に示す。図6の(A)にはヒト血清を使用した結果、(B)にはFBSを使用した結果を示す。意外なことに、NJA050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体は、NJA050.14を使用した場合に比して、化学修飾の数が少ないにも拘らず、それと同等若しくは良好な安定性を備えていた。
【0068】
試験例3
NJ050.14又はNJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を用いて、x-vivo MLR(リンパ球混合培養)アッセイを行い、細胞増殖抑制効果を評価した。具体的には、NJ050.14又はNJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を0.2μg/head又は2μg/headとなるように、BALB/cマウス(オス、9週齢)に尾静脈より投与した。20時間経過後、BALB/cマウスより脾臓を摘出し、定法に従って脾臓細胞(5×106 cells/mL)を調製した。得られた脾臓細胞に15Gyの放射線を照射して不活性化処理を行い、stimulator細胞を準備した。別途、C57BL/6マウス(オス、9週齢)の脾臓を摘出し、定法に従って脾臓細胞(5×106 cells/mL)を調製し、responder細胞を準備した。96穴プレートの各穴にstimulator細胞及びresponder細胞をそれぞれ100μLを入れて、37℃、5% CO2下で96時間混合リンパ球反応(MLR)を行った。反応後、細胞をCell Proliferation ELISA, BrdU kit(Roche Lifescence)を用いて細胞増殖を測定した。なお、SPG/化学修飾siRNA複合体の代わりに、PBSを使用したものをコントロールとした。
【0069】
得られた結果を図7に示す。この結果から、NJ050.15の化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体は、より少ない化学修飾で、安定性を向上させ、且つ高いノックダウン活性を誘導できることが確認された。
【0070】
試験例4
特定の法則の下で化学修飾を施したsiRNA(CD40に対するsiRNA、ヒト配列用)を用いてSPG/化学修飾siRNA複合体を調製した。具体的には、表7に示す各種化学修飾siRNAのセンス鎖5'末端に40個のS化されたデオキシアデル酸が、リン酸エステル結合によって連結されたものを準備し、前述する方法で各種SPG/化学修飾siRNA複合体を調製した。なお、表7に示すhsiCD40(208)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列は、それぞれ配列番号3及び4に該当し、hsiCD40(867)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列は、それぞれ配列番号5及び6に該当し、hsiCD40(1019)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列は、それぞれ配列番号7及び8に該当し、hsiCD40(998)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列は、それぞれ配列番号9及び10に該当している。
【0071】
表7に示す化学修飾パターンA-1は、事前にS化したポリデオキシアデニンが付加したsiRNAとSPGとの複合体の安定化検討の結果、見出した比較的安定性が高く、活性の強い修飾パターンである。当該化学修飾パターンA-1は、センス鎖において、5'末端側から1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、13、16、17、及び18番目のリボヌクレオチド残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換し、5'末端側から6、12、14、15、及び19番目のリボヌクレオチド残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換している。また、当該化学修飾パターンA-1は、アンチセンス鎖において、CA、UA、及びUGからなるジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換し、且つ、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換している。
【0072】
表7に示す化学修飾パターンA-2は、センス鎖において、全てのシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基がフルオロ基で置換されており、全てのアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシキ基がメトキシ基で置換されている。また、当該化学修飾パターンA-2は、アンチセンス鎖において、CA、UA、及びUGからなるジヌクレオチド配列中のシチジル酸残基及びウリジル酸残基の2'位のヒドロキシ基をフルオロ基で置換し、且つ、当該ジヌクレオチド配列中のアデニル酸残基及びグアニル酸残基の2'位のヒドロキシ基をメトキシ基で置換している。但し、ただし、アンチセンス鎖の5'末端側からから1~7番目のリボヌクレオチド残基に対しては修飾を行なっていない。
【0073】
表7に示す化学修飾パターンA-3は、本発明で規定している条件(i)~(ix)を満たすものである。
【0074】
【表7】
【0075】
各SPG/化学修飾siRNA複合体400nMを50万個のヒト末梢血単核球細胞(PBMC)に電気穿孔法によって導入した。導入後、各細胞を48穴プレートに2×105cells/wellとなるように播種し、同時にTNFαを2.5ng/mLとなるように添加して、37℃、5% CO2下で24時間インキュベートした。次いで、細胞から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、CD40 primerを用いてリアルタイムPCRを行い、CD40のmRNA量を測定した。siRNAを挿入することなくLPS処理を行ったものを陽性コントロールとし、siRNAを挿入することなくLPS処理も行なわなかったものを陰性コントロールとした。また、結果の解析はΔΔCT法にて行い、CD40のmRNA量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDH量で補正した。また、比較のために、SPG/化学修飾siRNA複合体の代わりに、化学修飾を施していないsiRNAを使用したSPG/siRNA複合体、及びセンス鎖5'末端にS化した40個のデオキシアデニル酸がリン酸エステル結合によって連結した各種化学修飾siRNAを使用して同様に試験を行った。
【0076】
得られた結果を図8に示す。図8中、「Complex」とは化学修飾を施していないsiRNAを使用したSPG/siRNA複合体、「A-1」とは化学修飾パターンA-1を施した化学修飾siRNAのセンス鎖5'末端にS化した40個のデオキシアデニル酸をリン酸エステル結合によって連結させたもの、「Complex A-1」とは化学修飾パターンA-1を施した化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、「A-2」とは化学修飾パターンA-2を施した化学修飾siRNAのセンス鎖5'末端にS化した40個のデオキシアデニル酸をリン酸エステル結合によって連結させたもの、「Complex A-2」とは化学修飾パターンA-2を施した化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体、「A-3」とは化学修飾パターンA-3を施した化学修飾siRNAのセンス鎖5'末端にS化した40個のデオキシアデニル酸をリン酸エステル結合によって連結させたもの、「Complex A-3」とは化学修飾パターンA-3を施した化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体である。この結果、化学修飾パターンA-3を施した化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体を使用した場合に、遺伝子発現抑制効果が最も高くなっていた。
【0077】
以上の試験例1~4の結果から、本発明で規定している条件(i)~(ix)を満たす化学修飾を施した化学修飾siRNAを使用したSPG/化学修飾siRNA複合体によって、RNaseに対する耐性及びRNAi活性が共に高く、in vivoで使用しても、十分な遺伝子発現効果が奏され得ることが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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