(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】チューニング装置
(51)【国際特許分類】
G10G 7/02 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
G10G7/02 100
(21)【出願番号】P 2019507803
(86)(22)【出願日】2017-08-09
(86)【国際出願番号】 IL2017050881
(87)【国際公開番号】W WO2018029686
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2016-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】519044047
【氏名又は名称】シリキ イツァーク
【氏名又は名称原語表記】SHRIKI,Itzhak
【住所又は居所原語表記】4 Ben Zion Dinor, Apt. 3 Herzlia, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シリキ イツァーク
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-193023(JP,A)
【文献】特開2011-053649(JP,A)
【文献】実開平01-117537(JP,U)
【文献】実開昭58-195841(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074677(US,A1)
【文献】中国実用新案第203607091(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器用のチューニング装置であって、
前記楽器が、
ボディと、
前記楽器のボディから延びているネックと、
を有し、
前記ネックが、ヘッドを備えた自由端部を有し、
前記ヘッドが、
楽器前面と、
前記楽器前面と反対側の楽器背面と、
前記楽器背面に配置されている少なくとも1つのチューニングキーと、
を備えており、
前記チューニング装置が、
チューニングディスプレイを備えており、
前記少なくとも1つのチューニングキーの1つまたは複数に係合可能であり、
長方形に結合された直角三角形を備えた形状を有し、
前記三角形の底辺が前記長方形の長辺と連続しており、
前記底辺に垂直である前記三角形の辺が、前記長方形の短辺に結合されており、かつ、前記長方形の前記短辺より長いかまたは等しく、
前記チューニングディスプレイが、前記三角形の斜辺を含む面上に配置されており、
前記チューニング装置が前記1つまたは複数のチューニングキーに係合しており、かつ全体が前記楽器背面の上に配置されているときに、前記ディスプレイが、前記楽器のボディの方を向くように、前記チューニング装置に配置されている、
チューニング装置。
【請求項2】
前記チューニング装置が、前記1つまたは複数のチューニングキーから取り外し可能である、請求項1に記載のチューニング装置。
【請求項3】
前記チューニング装置が、前記1つまたは複数のチューニングキーに磁気的に係合可能である、請求項1または請求項2に記載のチューニング装置。
【請求項4】
楽器用のチューニング装置であって、
前記楽器が、
ボディと、
前記楽器のボディから延びているネックと、
を有し、
前記ネックが、ヘッドを備えた自由端部を有し、
前記ヘッドが、
楽器前面と、
前記楽器前面と反対側の楽器背面と、
を備えており、
前記チューニング装置が、
チューニングディスプレイを備えており、
前記楽器背面に係合可能であり、かつ、
長方形に結合された直角三角形を備えた形状を有し、
前記三角形の底辺が前記長方形の第1の長辺と連続しており、
前記底辺に垂直である前記三角形の辺が、前記長方形の短辺に結合されており、かつ、前記長方形の前記短辺より長いかまたは等しく、
前記チューニングディスプレイが、前記三角形の斜辺を含む面上に配置されており、
前記チューニング装置が前記楽器背面に係合しており、かつ、全体的に前記楽器背面の上に配置されており、かつ、前記楽器前面に係合しておらず、その一方、前記チューニングディスプレイが、前記楽器のボディの方を向くように、前記楽器背面に配置される、
チューニング装置。
【請求項5】
前記チューニング装置が、前記背面から取り外し可能である、請求項4に記載のチューニング装置。
【請求項6】
前記チューニング装置が、吸引力によって前記背面に係合可能である、請求項4または請求項5に記載のチューニング装置。
【請求項7】
前記楽器が、アコースティックギター、エレクトリックギター、およびベースギター、を含む群、から選択される、請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか1項に記載のチューニング装置。
【請求項8】
係合しておりかつ全体が前記背面の上に配置されているとき、前記チューニング装置が、前記楽器背面から垂直に突き出している長さと少なくとも同じだけ前記楽器背面に平行に延びている、請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか1項に記載のチューニング装置。
【請求項9】
前記チューニング装置が、前記楽器背面から垂直に15mm未満突き出しており、前記楽器背面に平行な、少なくとも15mmの長さの縁部を有する、請求項8に記載のチューニング装置。
【請求項10】
前記楽器から前記チューニング装置が離脱することなく前記楽器を手で動かすことができるように構成されている、請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか1項に記載のチューニング装置。
【請求項11】
前記楽器背面が第1の色を有し、前記チューニング装置が第2の色を有し、前記第1の色と前記第2の色が類似している、請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか1項に記載のチューニング装置。
【請求項12】
前記第2の色が、視覚的に前記第1の色と区別され得ない、請求項11に記載のチューニング装置。
【請求項13】
前記楽器が、前記楽器背面に配置されている少なくとも2つのチューニングキーを備えており、前記チューニング装置が、前記少なくとも2つのチューニングキーのうちの2つ以上に係合可能である、請求項1または請求項4のいずれか1項に記載のチューニング装置。
【請求項14】
請求項1または請求項4のいずれか1項に記載のチューニング装置および楽器を備えたキットであって、ケースをさらに備えており、前記キットが、前記チューニング装置がチューニングキーに係合している間、前記楽器から前記チューニング装置を取り外さなくても邪魔にならずに前記楽器を前記ケースの中に配置して確実に収納することを可能にするように構成されている、キット。
【請求項15】
請求項1、請求項2、または請求項3に記載のチューニング装置および楽器を備えたキットであって、前記チューニング装置が前記チューニングキーに係合し、前記楽器前面に係合しない、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用のチューニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルチューナーでは、使用者は、弦楽器(ギターなど)を容易にチューニングすることができる。特に、デジタルチューナーは、理解しやすいディスプレイを提供することができ、このディスプレイによって使用者は、生成される音が、使用者が意図する音であるように、演奏される音を迅速に判定して弦楽器をチューニングすることができる。
【0003】
しかしながら、これらのデジタルチューナーには、いくつかの欠点がある。例えば、正確な指示値を生成するためには、デジタルチューナーが弦楽器に近くなければならない。十分に近くない場合、デジタルチューナーは音を正しく測定することができず、弦楽器をチューニングすることが困難である、または不可能である。しかしながらこのことは、使用者がチューナーを手で持つ、または弦楽器の近くでバランスさせることを意味する。どちらも望ましくなく、なぜならどちらも使用者による通常の演奏ポジションを再現していないためである。
【0004】
使用者によっては、近接性を確保するため、弦楽器のヘッドにデジタルチューナーをクリップで固定する。しかしながら、これはせいぜい一時的な解決策であることがしばしばあり、なぜなら輸送する前、または壁掛けハンガーやスタンド、またはケースに保管する前に、クリップを外さなければならないためである。これに加えて、クリップおよびチューナーが観客から見えるため、演奏中に取り付けたままにするには見た目に美しくない。さらには、使用中、取り付ける、または取り外すときに、クリップによって弦楽器の仕上げにキズが付くことがある。
【0005】
したがって、特許文献1には、ヘッド以外の位置においてデジタルチューナーを楽器に取り付けることのできるシステムが記載されている。特許文献1は、弦楽器で演奏された音を検出するように構成されている振動感知デバイスを含む、弦楽器に装着可能な装置を説明している。弦楽器に装着可能な装置は、振動感知デバイスを弦楽器に取り付けるように構成されているアタッチメントも含む。
【0006】
しかしながら、特許文献1の図から明らかであるように、使用者から離れた楽器の側にチューナーを配置しなければならない。そうしないとチューナーが使用者に接触し、また、観客からチューナーが実際に見える。さらに、ヘッド以外の位置にチューナーを取り付けるときには、チューナーをヘッドに係合させる利点(演奏中にディスプレイが見えるなど)が失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、楽器に(ヘッドを含む)直接係合させることができ、それにもかかわらず特に演奏中に楽器が使用されているときに目立たないおよび/または見えない、新規のチューナーを提供することである。
【0009】
別の目的は、チューナーが楽器から落下することなく楽器を急激に動かすことのできるチューナーを提供することである。
【0010】
さらに別の目的は、チューナーを取り外し可能であるようにする、すなわち楽器に貼り付けられるのではなく、必要に応じて、楽器をケースに収納するときに、チューナーが邪魔になったり動いてしまうことが最小限であるかまたはまったくなしに楽器に付けたままにできるようにすることである。
【0011】
本発明のさらなる目的および利点は、説明を読み進めるにつれて明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特に定義されていない限り、本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明を実施または試験するとき、本明細書に記載されている方法および材料に類似するかまたは同等の方法および材料を使用できるが、好適な方法および例示的な材料は以下に記載してある。矛盾が生じる場合、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらには、これらの材料、方法、および例は、説明のみを目的としており、本発明を制限することを意図していない。
【0013】
一態様によれば、楽器用のチューニング装置であって、楽器が、
ボディと、
ボディから延びているネックと、
を有し、
ネックが、ヘッドを備えた自由端部を有し、
ヘッドが、
楽器前面と、
楽器前面とは本質的に反対側の楽器背面と、
楽器背面に配置されている少なくとも1つのチューニングキーと、
を備えており、
チューニング装置が、
チューニングディスプレイを備えており、
少なくとも1つのチューニングキーの1つまたは複数に係合可能であり、
チューナーが1つまたは複数のチューニングキーに係合しており、かつ全体が背面の上に配置されているときに、ディスプレイが、本質的にボディの方を向くように、チューニング装置に配置されている、
チューニング装置、を提供する。
【0014】
チューニング装置は、1つまたは複数のチューニングキーから取り外し可能であることが好ましい。
【0015】
特に、チューニング装置は、好ましくは磁気的に、1つまたは複数のチューニングキーに係合可能である。
【0016】
別の態様によれば、楽器用のチューニング装置であって、楽器が、
ボディと、
ボディから延びているネックと、
を有し、
ネックが、ヘッドを備えた自由端部を有し、
ヘッドが、
楽器前面と、
楽器前面とは本質的に反対側の楽器背面と、
を備えており、
チューニング装置が、
チューニングディスプレイを備えており、
楽器背面に係合可能であり、かつ、
チューナーが楽器背面に係合しており、かつ全体が背面の上に配置されている間、ディスプレイが、本質的にボディの方を向くように、楽器背面に配置される、
チューニング装置、を提供する。
【0017】
背面に係合可能であるチューニング装置は、背面から取り外し可能であることが好ましい。
【0018】
背面に係合可能であるチューニング装置は、吸引力によって背面に係合可能であることが好ましい。
【0019】
楽器は、例えば、以下、すなわち、アコースティックギター、エレクトリックギター、ベースギター、のいずれかである。
【0020】
好ましい実施形態においては、係合しておりかつ全体が背面の上に配置されているとき、チューニング装置が、楽器背面から垂直に突き出している長さと少なくとも同じだけ楽器背面に平行に延びている。
【0021】
例えば、チューニング装置は、楽器背面から垂直に15mm未満突き出しており、楽器背面に平行な、少なくとも15mmの長さの縁部を有する。
【0022】
好ましい実施形態は、楽器からチューニング装置が離脱することなく楽器を手で動かすことができるように構成されている。
【0023】
好ましい実施形態においては、楽器背面が第1の色を有し、チューニング装置が第2の色を有し、第1の色と第2の色が実質的に類似する。
【0024】
より好ましい実施形態においては、第2の色は、視覚的に第1の色と本質的に区別され得ない。
【0025】
いくつかの実施形態は、斜面を備えた台形プリズムの形状を有し、ディスプレイが斜面上である。
【0026】
いくつかの実施形態は、本質的に
図5cに示した形状を有する。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態においては、楽器は、楽器背面に配置されている少なくとも2つのチューニングキーを備えており、チューニング装置は、これら少なくとも2つのチューニングキーのうちの2つ以上に係合可能である。
【0028】
別の態様によれば、チューニング装置と、上記の楽器のいずれかとを備えており、さらにケースを備えているキットが提供され、キットは、チューニング装置がキーに係合している間、楽器からチューニング装置を取り外さなくても邪魔にならずに楽器をケースの中に配置して確実に収納することを可能にするように構成されている。
【0029】
いくつかの好ましいキットの実施形態においては、チューニング装置は、チューニングキーに係合し、前面には係合しない。
【0030】
いくつかの別の好ましいキットの実施形態においては、チューニング装置は、前面に係合し、前面には係合しない。
【0031】
本明細書では、実施形態を、添付の図面を参照しながら一例としてのみ説明してある。以下では図面を詳細に参照するが、図示されている細部は一例であり、好ましい実施形態を実例を通じて説明することを目的としており、最も有用であると考えられる形態を提供し、実施形態の原理および発想上の態様を理解しやすく説明するために提示してあることを強調しておく。この点において、本発明を基本的に理解するために必要である以上には構造上の細部を詳しく示しておらず、当業者には、図面を参照しながらの説明によって、本発明のいくつかの形態が実際にどのように実施されうるかが明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1aは、従来技術の楽器の面の一部の概要であり、
図1bは、同じ楽器の反対側の面の一部の概要であり、
図1cは、楽器を側面図で示している。
【
図2】楽器前面(この図では見えない)と、楽器前面とは本質的に反対側の楽器背面と、チューニング装置と、を有する楽器を示しており、チューニング装置は、楽器のチューニングを可能にするように構成されており、楽器背面を見たとき最小限に見えるかまたは見えない。
【
図3】チューニング装置および楽器を備えており、楽器を中に確実に収納することができるように構成されているケースをさらに備えているキット、を示しており、このキットは、楽器からチューニング装置を取り外さなくても邪魔にならずに楽器をケースの中に配置することができるように構成されている。
【
図4】クランプを備えた1つの装置実施形態を斜視図で示している。
【
図5】
図5aは、アダプタを使用して楽器に結合することができる別の装置実施形態として、アダプタの上面図を描いており、
図5bは、アダプタを斜視図で示しており、
図5cは、チューナーのみを示しており、
図5dは、互いに組み立てられたチューナーおよびアダプタを示している。
【
図6a】アダプタおよび装置がどのように楽器に取り付けられるかを示す、楽器背面の図を示している。
【
図7】傾斜したチューニングディスプレイを備えた装置を示している。
【
図8】これに代えて、弾性端部を有する「スパイダー(spider)」クランプを使用することによって、
図8に示したようにチューニング装置を楽器背面に係合させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
少なくとも一実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載した、または図面に示した構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、別の実施形態をとることができる、またはさまざまな方法で実施または実行することができる。さらに、本明細書において採用されている表現および用語は、説明を目的としており、本発明を制限するようにはみなされないものとする。いくつかの図面では、明確さのため、示す必要のないチューニングキーを省いた。
【0034】
図1aは、従来技術の楽器10の面の一部(具体的にはギターのヘッド19および指板の一部)の概要である。弦11が見えており、すなわち楽器10を演奏するときには、一般に楽器のこの面が観客の方を向く。楽器10は、楽器前面12を有する。
【0035】
図1bは、同じ楽器10の反対側の面の概要である。この面からは弦が見えない。楽器10は楽器背面14を有し、この面は一般に観客の視野から隠れる。
【0036】
楽器は、楽器チューニングキー16をさらに含み、これらのキー16は、自身に結合されている弦11をチューニングするために一般には手動で調整可能である。キー16は、楽器10に取り付けられており、楽器前面12および楽器背面14に配置されている。
【0037】
弦11は、定期的なチューニングを必要とする。チューニングは、演奏前に完了することができる。しかしながら楽器10は、演奏中に追加的な再チューニングをしばしば必要とする。このチューニングを行うために、一般にはチューナー(またはチューニング装置とも称される)が使用される。
【0038】
図1cは、楽器10全体を側面図で示している。楽器10は、ボディ15と、ボディ15から延びているネック17とをさらに備えている。ネック17は、ヘッド19を備えた自由端部を有する。
【0039】
図2に示したように、キー16も、楽器背面14から本質的に垂直に突き出している(ただし通常では、楽器前面および楽器背面14に平行に楽器10からさらに大きく突き出している)。
【0040】
図2にさらに示したように、楽器10をチューニングするための装置110が設けられている。チューニング装置110は、チューニングディスプレイ118を備えている。チューニング装置110は、少なくとも1つのチューニングキー16に係合可能である。チューニング装置110が1つまたは複数のチューニングキー16に係合しており、かつ全体が背面14の上に配置されているとき、ディスプレイ118は、本質的にボディ15の方を向くように、チューニング装置110に配置されている。
【0041】
代替実施形態においては、チューニング装置は、チューニングキー16に係合可能であることに代えて、またはこれに加えて、背面14に係合可能である。
【0042】
チューナーのこの位置および構造によって、楽器10を持って演奏している演奏者が、ディスプレイ118の指示値に従って楽器10をチューニングすることが可能である。
【0043】
これと同時に、チューニング装置110の構造によって、チューニング装置110が観客から見える程度が最小限であり、かつチューニング装置110の係合に安定性をもたらすことができ、すなわちチューニング装置110は、特に(例えばエレクトリックギターがライブ演奏においてときおり扱われるように)楽器がかなりエネルギッシュに操作されるときに、背面14に沿って移動しない。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態においては、係合を強化するため、チューニング装置110はチューニングキー16の少なくとも2つに係合可能である。強化された係合によって、背面14上でのチューニング装置110の位置をさらに安定させることができる。
【0045】
好ましい実施形態においては、チューニング装置110は取り外し可能である、すなわち楽器に貼り付けられていない。取り外し可能な装置110は、背面14に対してフラットに置いて、チューニングキー16と係合するまで楽器背面14に沿って移動させることができる。取り外すためには、チューニング装置110をキー16から引き離す必要がある。
【0046】
楽器10およびチューニング装置110は、キット100として提供することができる。
【0047】
図3に示したように、いくつかの実施形態においては、キット100は、楽器10を確実に収納することを可能にするケース20、をさらに備えている。キット100では、チューニング装置がチューニングキー16と係合している間、楽器10からチューニング装置を取り外さなくても邪魔にならずに楽器10をケース20の中に配置することができる。なお、この図ではチューニング装置が見えておらず、なぜなら楽器10は、一般には前面12が内側を向いた状態でケース20に配置されるためである。
【0048】
楽器は、エレクトリックギター、アコースティックギター、およびベースギター、を含む群、から選択される。
【0049】
チューニング装置110は、楽器背面14から垂直に突き出しているよりも実質的に長く楽器背面14に平行に延びていることが好ましく、すなわちチューニング装置110は本質的に平たい。平たいことによって、例えば演奏中に楽器が振り回されるとき、装置110の位置が安定するのみならず、チューニング装置110が観客から見える程度が最小になり、さらにはチューニング装置が取り付けられた状態で、壁掛けハンガーやスタンド、またはケースに楽器を保管することができる。
【0050】
最も好ましくは、チューニング装置は、楽器背面に垂直にわずか15mm突き出しており、楽器背面に平行な少なくとも15mmの長さの縁部を有する。
【0051】
楽器背面14が第1の色を有し、チューニング装置110が第2の色を有する。いくつかの好ましい実施形態においては、第1の色および第2の色は実質的に類似する。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態においては、第2の色は、視覚的に第1の色と区別され得ない。
【0053】
図4は、クランプ111aを備えた1つの装置実施形態110aを切取り斜視図(perspective cutout view)で示している。クランプ111aは、チューニング装置110aがチューニングキー16と弾性的に係合することができるように構成されており、なぜならクランプ111aはチューニング装置の底面112aにばね113aを備えているためである。実施形態110aの試作品による実験では、装置110aが、相当に安定した係合を有することが判明した。
【0054】
図5a~
図5dは、アダプタ120によってヘッドに結合することのできる、別の装置実施形態110bを示している。
図5aは、アダプタ120の上面図を描いており、
図5bはアダプタ120を斜視図で示している。
図5cはチューニング装置110bのみを示しており、
図5dは、組み立てられたチューニング装置110bおよびアダプタ120を示している。チューニング装置110bは、一般には、長方形113bに結合された
直角三角形111bとして形成されている。三角形111bの底辺は長方形113bの長辺と連続している。底辺に垂直である三角形111bの辺119bは、長方形113bの短辺に結合されており、長方形113bの短辺より長いかまたは等しい。チューニングディスプレイは、一般には三角形111bの斜辺116bに配置されている。チューニング装置110bは、1つまたは複数のチューニングキーに磁石[図示していない]によって磁気的に係合することが好ましい。
【0055】
チューニング装置110bは、できる限り見えないように最小限のサイズを有するが、しっかりした係合を可能にするための十分なサイズを有し、チューニングディスプレイのための大きな傾斜(116b)面を有する(後から
図7に描いた実施形態を参照)。
【0056】
図6a~
図6cは、アダプタ120および装置110bが楽器10にどのように取り付けられるかと、どのように見えるかを、さまざまな視野から示している。
図6aは、楽器背面14の図を示している。
図6bは、楽器前面12の図を示しており、
図6cは、楽器10の上面図を描いている。
【0057】
チューニング装置110bは、楽器10において完全に安定的であり不注意に外れることはなく、アダプタ120は本質的に透明である。しかしながら本発明者らは、楽器前面の視点から見えない実施形態を設計することを目指した。
【0058】
図7は、装置実施形態110cを斜視図で示している。
【0059】
チューニング装置110cは、斜面116cを備えた台形プリズム形状を有し、チューニングディスプレイ118cは斜面116c上である。チューニング装置110cは、ディスプレイ118cがボディ15の方、および楽器10を持つ演奏者の方に本質的にまっすぐに向くように、第1の装置側面112cを介してチューニングキー16と係合する。オプションとして、チューニング装置110cは、長方形113cに結合されている直角三角形111cとして形成されている。三角形111cの底辺は、長方形113cの長辺と連続している。底辺に垂直な三角形111cの辺が、長方形113cの短辺に結合されており、長方形113cの短辺より長いかまたは等しい。チューニングディスプレイは、一般には三角形111cの斜辺116cに配置されている。チューニング装置110cは、1つまたは複数のチューニングキーに磁石117cによって磁気的に係合することが好ましい。
【0060】
いくつかの装置実施形態(図示していない)は、上に簡潔に述べたように、チューニングキーの代わりに、またはチューニングキーに加えて、楽器背面に係合し、さらに、楽器背面に係合しているときにボディの方を向くディスプレイを有する。このような係合は、固着を伴わないことが好ましい。例えば、係合は、真空/吸引力による(吸盤を介するなど)ことができる。楽器の塗装および/またはニスに対する、係合による損傷を避けるように注意するべきである。
【0061】
これに代えて、
図8に概略的に示したように、弾性端部を有する「スパイダー」クランプによって、チューニング装置を楽器背面に、少なくとも楽器背面の縁部において係合させることができる。
【0062】
装置および楽器のキットの好ましい実施形態においては、チューニング装置は、背面および/またはチューニングキーと係合するときには前面には直接的または間接的に係合せず、したがって前面には、目に見える余分な部品が存在しない。
【0063】
より好ましい実施形態においては、チューニング装置110は、チューニングキー16と磁気的に係合可能である。チューニング装置110は、一般には、第1の装置側面112にほぼ垂直である第2の装置側面114(
図2を参照)またはその近傍に、磁石117または磁化物質を備えており、キー16は強磁性物質を含む。
【0064】
本発明者は、現在のところ、この実施形態が最も効率的に動作すると考えているが、それ以外の実施形態も満足のいくものである。
【0065】
明確性のため個別の実施形態の文脈の中で説明した本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて設けることもできる。逆に、簡潔性のため1つの実施形態の文脈の中で説明した本発明のさまざまな特徴は、個別に設ける、または任意の適切な部分的な組合せにおいて設けることもできる。
【0066】
本発明についてその特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多数の代替形態、修正形態、および変形形態が明らかであろう。したがって、添付の請求項の趣旨および広義の範囲内に含まれるすべての代替形態、修正形態、および変形形態を包含するように意図されている。