(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】液体材料塗布方法および当該方法を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20220706BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220706BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220706BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2019522206
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2018020263
(87)【国際公開番号】W WO2018221432
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2017107664
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137271(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/108097(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1301107(KR,B1)
【文献】特開2007-167844(JP,A)
【文献】特開2006-035076(JP,A)
【文献】特開2009-106934(JP,A)
【文献】特開2014-073668(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 5/00-21/00
G02F 1/13
1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布装置を用いて塗布対象物上に線状塗布を行う方法において、
前記塗布装置が、
ジェット式の吐出装置と、
前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、
前記吐出装置が、
複数の吐出口を有するノズルと、
前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、
前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、
を備え、
前記ノズルが、前記液室と連通し、前記プランジャロッドが進入する円錐台状の内部空間を有し、
前記複数の吐出口
の全てが、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること、
前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記複数の吐出口が、二つの同一形状の吐出口により構成されること、
前記二つ
の同一形状の吐出口から吐出された二つの液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成することを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記複数の吐出口が、第1の開口面積を有する吐出口と、第1の開口面積よりも大きい第2の開口面積を有する吐出口とを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記第2の開口面積が、前記第1の開口面積の1.4~16倍であることを特徴とする請求項3に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記プランジャロッドが、前記ノズルの前記円錐台状の内部空間のテーパ面に着座すること、
前記複数の吐出流路の流入口が、前記テーパ面と連続する傾斜した流入口であり、前記吐出流路の流入口より下の部分は鉛直方向に延びる同径の円柱状流路であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項6】
塗布装置を用いて塗布対象物上に線状塗布を行う方法において、
前記塗布装置が、
ジェット式の吐出装置と、
前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、
前記吐出装置が、
複数の吐出口を有するノズルと、
前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、
前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、
を備え、
前記複数の吐出口が、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること、
前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成すること、
前記塗布対象物が、段差部を有しており、
前記段差部の上段
に第1の開口面積を有する吐出口を対向させ、前記段差部の下段に
前記第1の開口面積より大きい第2の開口面積を有する吐出口を対向させて前記塗布線を形成することを特徴とする塗布方法。
【請求項7】
前記液体材料が遮光性のある液体材料であり、液晶パネルの縁部に前記塗布線を形成することを特徴とする請求項6に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記塗布線の高さを前記塗布線の幅で割った値が0.8より小さいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項9】
前記塗布線の高さを前記塗布線の幅で割った値が0.6より小さいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項10】
前記ノズルが、前記吐出装置に着脱自在に取り付けられる第一のノズルと、前記吐出装置に着脱自在に取り付けられ、前記第一のノズルと前記複数の吐出口間距離が異なる第二のノズルとを含み、形成しようとする塗布線の幅に応じて選択した一のノズルを前記吐出装置に取り付けて前記塗布線を形成することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の塗布方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の塗布方法を実施するためのジェット式の吐出装置であって、
複数の吐出口を有するノズルと、
前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、
前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、
を備える吐出装置。
【請求項12】
前記プランジャロッドの幅が、前記複数の吐出口の最外縁間の距離よりも大きいこと、前記プランジャロッドが、前記ノズルの前記円錐台状の内部空間のテーパ面に着座することを特徴とする請求項11に記載の吐出装置。
【請求項13】
前記ノズルが、前記テーパ面の下端に位置する内底面を有し、前記複数の吐出流路の流入口が前記テーパ面と前記内底面とが交わる位置に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の吐出装置。
【請求項14】
前記複数の吐出流路の流入口が、前記テーパ面と連続する傾斜した楕円形の流入口であり、前記吐出流路の流入口より下の部分は同径の円柱状流路であることを特徴とする請求項13に記載の吐出装置。
【請求項15】
前記ノズルが、前記複数の吐出口が形成された下端面を有し、当該下端面には前記複数の吐出口を囲む環状溝が形成されていることを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の吐出装置。
【請求項16】
前記液室が形成された筒部を備える接液部材を備え、
前記ノズルが、前記筒部の下端に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項11ないし15のいずれかに記載の吐出装置。
【請求項17】
前記筒部に対する前記ノズル配置線の位置決めを可能とする位置決め機構を備えることを特徴とする請求項16に記載の吐出装置。
【請求項18】
前記位置決め機構が、
前記筒部に設けられた位置決め面と、前記ノズルに設けられた第一の面および前記第一の面と直角な方向に設けられた第二の面と、を備えて構成され、
前記ノズルを前記筒部に取り付ける際に前記第一の面を前記位置決め面と合わせることで前記
筒部に対し前記ノズル配置線が第一の角度を有する第一の位置と、
前記ノズルを前記筒部に取り付ける際に前記第二の面を前記位置決め面と合わせることで前記第一の角度から前記ノズル配置線を90度回転させた第二の位置と、を位置決めできることを特徴とする請求項17に記載の吐出装置。
【請求項19】
請求項1ないし10のいずれかに記載の塗布方法を実施するための塗布装置であって、
ジェット式の吐出装置と、
前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、
前記吐出装置が、
複数の吐出口を有するノズルと、
前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、
前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、
を備える塗布装置。
【請求項20】
塗布線の方向にノズル配置線が直交するようにして行う塗布方法と、塗布線の方向とノズル配置線を一致させて行う塗布方法と、を択一的に実現するための塗布プログラムを備える制御装置を備えることを特徴とする請求項19に記載の塗布装置。
【請求項21】
ジェット式の吐出装置と、
前記吐出装置と塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、
前記吐出装置が、
複数の吐出口を有するノズルと、
前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、
前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、
前記液室が形成された筒部を備える接液部材と、
前記筒部に対する前記ノズル配置線の位置決めを可能とする位置決め機構と、
を備え、
前記複数の吐出口が、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること
、
前記位置決め機構により、前記ノズル配置線が前記筒部に対し第一の角度を有する第一の位置に
前記ノズルを位置決めした状態で、前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続的に吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成する第一の塗布と、
前記位置決め機構により、前記ノズル配置線が前記筒部に対し前記第一の角度から90度回転させた
第二の角度を有する第二の位置に
前記ノズルを位置決めした状態で、前記ノズル配置線と同一方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と同一方向の塗布線を形成する第二の塗布と、を実行可能である塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
線引き塗布を行うための液体材料塗布方法および当該方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出口を有するノズルと連通する液室内に配設されたプランジャロッドの進出作用により、液体材料を滴の状態で吐出口から吐出する、いわゆるジェット式吐出装置を用いて、液滴を連続吐出し、塗布線を形成することが行われている(特許文献1)。被塗物に付着した液体材料の滴あるいは滴が連なってできた線の断面は、半円状あるいは半楕円状となり、幅に比べて高さが比較的大きい。言い換えると、断面の高さと幅との比が1に近い塗布線しか形成することができないのが現状である(以下では、塗布線の断面の高さ/幅を「アスペクト比」とよぶことがある)。
【0003】
ところで、液晶表示装置は、液晶を閉じ込めた2枚のガラス基板等からなる液晶パネルと、光源等からなるバックライトとを主要な構成要素とする。液晶表示装置において、バックライトからの光が、ガラス基板の縁から回り込む等して漏れ出し、液晶パネルを透過する光の妨げとなることがある。これを防ぐため、液晶パネルの縁部に遮光部材を設けている。遮光部材は、成形品やテープなどを用いることが多い(特許文献2、3)が、遮光性のある液体材料を塗布することも増えてきている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/137271号
【文献】特開2015-158525号公報
【文献】特開2015-135384号公報
【文献】特開2016-27352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体材料を線状塗布することにより所望の塗布パターンを実現する用途によっては、塗布線の幅に対する高さの比が小さい断面形状が求められる場合がある(例えば、近年の液晶表示装置では、薄型化の要求から、高さの低い遮光部を形成することが求められている。)。
ジェット式吐出装置は、塗布線を高速に形成できる点で優れているが、ジェット式吐出装置では、塗布線の断面形状の幅に対する高さ比を小さくすることが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、ジェット式吐出装置を用いて、幅に対する高さ比が小さい断面形状の線引き塗布を行うことができる技術を提供することを目的とする。
また、液体材料を段差部に線状塗布することが必要とされる場合もある。本発明は、段差部への線状塗布を一回の走査により行うことを可能とする技術を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗布方法は、塗布装置を用いて塗布対象物上に線状塗布を行う方法において、前記塗布装置が、ジェット式の吐出装置と、前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、前記吐出装置が、複数の吐出口を有するノズルと、前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、を備え、前記ノズルが、前記液室と連通し、前記プランジャロッドが進入する円錐台状の内部空間を有し、前記複数の吐出口の全てが、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること、前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成することを特徴とする。
上記塗布方法において、前記複数の吐出口が、二つの同一形状の吐出口により構成されること、前記二つの同一形状の吐出口から吐出された二つの液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成することを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記複数の吐出口が、第1の開口面積を有する吐出口と、第1の開口面積よりも大きい第2の開口面積を有する吐出口とを備えて構成されることを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記第2の開口面積が、前記第1の開口面積の1.4~16倍であることを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記プランジャロッドが、前記ノズルの前記円錐台状の内部空間のテーパ面に着座すること、前記複数の吐出流路の流入口が、前記テーパ面と連続する傾斜した流入口であり、前記吐出流路の流入口より下の部分は鉛直方向に延びる同径の円柱状流路であることを特徴としてもよい。
本発明の第2の観点の塗布方法は、塗布装置を用いて塗布対象物上に線状塗布を行う方法において、前記塗布装置が、ジェット式の吐出装置と、前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、前記吐出装置が、複数の吐出口を有するノズルと、前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、を備え、前記複数の吐出口が、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること、前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成すること、前記塗布対象物が、段差部を有しており、前記段差部の上段に第1の開口面積を有する吐出口を対向させ、前記段差部の下段に前記第1の開口面積より大きい第2の開口面積を有する吐出口を対向させて前記塗布線を形成することを特徴とする。
上記塗布方法において、前記液体材料が遮光性のある液体材料であり、液晶パネルの縁部に前記塗布線を形成することを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記塗布線の高さを前記塗布線の幅で割った値が0.8より小さいことを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記塗布線の高さを前記塗布線の幅で割った値が0.6より小さいことを特徴としてもよい。
上記塗布方法において、前記ノズルが、前記吐出装置に着脱自在に取り付けられる第一のノズルと、前記吐出装置に着脱自在に取り付けられ、前記第一のノズルと前記複数の吐出口間距離が異なる第二のノズルとを含み、形成しようとする塗布線の幅に応じて選択した一のノズルを前記吐出装置に取り付けて前記塗布線を形成することを特徴としてもよい。
【0008】
本発明の吐出装置は、上記塗布方法を実施するためのジェット式の吐出装置であって、複数の吐出口を有するノズルと、前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、を備える。
上記吐出装置において、前記プランジャロッドの幅が、前記複数の吐出口の最外縁間の距離よりも大きいこと、前記プランジャロッドが、前記ノズルの前記円錐台状の内部空間のテーパ面に着座することを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記ノズルが、前記テーパ面の下端に位置する内底面を有し、前記複数の吐出流路の流入口が前記テーパ面と前記内底面とが交わる位置に設けられていることを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記複数の吐出流路の流入口が、前記テーパ面と連続する傾斜した楕円形の流入口であり、前記吐出流路の流入口より下の部分は同径の円柱状流路であることを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記ノズルが、前記複数の吐出口が形成された下端面を有し、当該下端面には前記複数の吐出口を囲む環状溝が形成されていることを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記液室が形成された筒部を備える接液部材を備え、前記ノズルが、前記筒部の下端に着脱自在に取り付けられることを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記筒部に対する前記ノズル配置線の位置決めを可能とする位置決め機構を備えることを特徴としてもよい。
上記吐出装置において、前記位置決め機構が、前記筒部に設けられた位置決め面と、前記ノズルに設けられた第一の面および前記第一の面と直角な方向に設けられた第二の面と、を備えて構成され、前記ノズルを前記筒部に取り付ける際に前記第一の面を前記位置決め面と合わせることで前記筒部に対し前記ノズル配置線が第一の角度を有する第一の位置と、前記ノズルを前記筒部に取り付ける際に前記第二の面を前記位置決め面と合わせることで前記第一の角度から前記ノズル配置線を90度回転させた第二の位置と、を位置決めできることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明の塗布装置は、上記塗布方法を実施するための塗布装置であって、ジェット式の吐出装置と、前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、前記吐出装置が、複数の吐出口を有するノズルと、前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、を備える。
上記塗布装置において、塗布線の方向にノズル配置線が直交するようにして行う塗布方法と、塗布線の方向とノズル配置線を一致させて行う塗布方法と、を択一的に実現するための塗布プログラムを備える制御装置を備えることを特徴としてもよい。
別の観点からの本発明の塗布装置は、ジェット式の吐出装置と、前記吐出装置と塗布対象物とを相対移動させる相対駆動装置と、を備え、前記吐出装置が、複数の吐出口を有するノズルと、前記複数の吐出口と複数の吐出流路を介して連通する液室と、前記液室内を進退動する前記液室よりも幅狭のプランジャロッドと、前記液室が形成された筒部を備える接液部材と、前記筒部に対する前記ノズル配置線の位置決めを可能とする位置決め機構と、を備え、前記複数の吐出口が、直線であるノズル配置線上に配置され、且つ、塗布対象物に着弾した液体材料が結合して塗布線を形成する距離に配置されること、前記位置決め機構により、前記ノズル配置線が前記筒部に対し第一の角度を有する第一の位置に前記ノズルを位置決めした状態で、前記ノズル配置線と直交する方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続的に吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と直交する塗布線を形成する第一の塗布と、前記位置決め機構により、前記ノズル配置線が前記筒部に対し前記第一の角度から90度回転させた第二の角度を有する第二の位置に前記ノズルを位置決めした状態で、前記ノズル配置線と同一方向に前記吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら、前記複数の吐出口から吐出された複数の液塊が塗布対象物に着弾する前に接触しないように液体材料を連続吐出し、前記塗布対象物上で着弾した液体材料を結合させることにより前記ノズル配置線と同一方向の塗布線を形成する第二の塗布と、を実行可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジェット式吐出装置を用いて、幅に対する高さ比が小さい断面形状の線引き塗布を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る吐出装置の要部断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る吐出装置が備えるノズルの(a)断面図および(b)底面図である。
【
図3】第1実施形態に係る吐出装置が備える接液部材のノズル取付部を拡大した底面図である。
【
図4】第1実施形態に係る塗布装置の概略斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る塗布装置の動作を説明する説明図である。
【
図6】第1実施形態で吐出された複数の液滴が結合する様子を上面視したイメージ図であり、(a)は二つの液滴が着弾した直後を示し、(b)は四つの液滴が着弾した直後を示し、(c)は六つの液滴が着弾した直後を示し、(d)は八つの液滴が着弾した直後を示している。
【
図7】第2実施形態に係る吐出装置が備えるノズルの(a)断面図および(b)底面図である。
【
図8】段差のあるワークへの塗布を説明する図であり、(a)は重ねて配置された2枚の板が構成する段差部への塗布を示し、(b)は垂直方向に並べて配置された2枚の板が構成する段差部への塗布を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態例を説明する。本明細書にいうジェット式吐出装置とは、ノズルと連通する液室内に位置する液室より幅狭のプランジャロッド(弁体)の先端部を進出移動させ、次いで急激に停止して液体材料に慣性力を印加して吐出する吐出装置(ディスペンサ)をいう。ジェット式吐出装置には、弁体着座タイプのジェット式(例えば、弁座に弁体を衝突させて液体材料を吐出するジェット式)と、弁体非着座タイプのジェット式(例えば、弁体を進出移動させ、次いで急激に停止して液体材料に慣性力を印加して吐出するジェット式)とがあるが、本発明はいずれのタイプのジェット式にも適用可能である。
【0013】
《第1実施形態》
(1)吐出装置
第1実施形態の吐出装置1は、
図1に示すように、ベース部材2と、アクチュエータ(12、13)と、アーム14と、プランジャロッド18と、接液部材25と、ノズル50と、を主要な構成要素とし、液体材料113を液滴112として飛翔吐出する弁体着座タイプのジェット式吐出装置に関する。
なお、以下では、説明の都合上、ノズル50側を「下」、アーム14側を「上」、プランジャロッド18側を「前方」、アクチュエータ(12、13)側を「後方」と称する場合がある。
【0014】
ベース部材2は、ブロック状部材であり、後方の上面4には揺動機構7が設けられる凹部3が設けられており、前方には上面4から下面5にわたって貫通して延在するプランジャロッド挿通孔6が形成されている。
【0015】
揺動機構7は、ベース部材2の凹部3の底面に設けられた溝に柱状部材を嵌入して固定する支持部材(8、9)と、支持部材(8、9)の上に設けられるアクチュエータ(12、13)と、アクチュエータ(12、13)の下端に連結される接続部材(10、11)と、ロッド状の固定具15と、から構成される。
支持部材(8、9)の上面は凸状の滑らかな曲面からなり、この曲面に対向する接続部材(10、11)の下面には、支持部材(8、9)上面の形状に沿う滑らかな凹状の曲面からなる窪み部が形成される。窪み部は、支持部材(8、9)の上面と同じかまたは小さい曲率(言い換えると、大きい曲率半径)を有する。
【0016】
アクチュエータ(12、13)は、下端で接続部材(10、11)に連結され、上端でアーム14に連結されている。本実施形態のアクチュエータ(12、13)は、例えば、高歪率圧電セラミック材料、内部電極、外部電極および絶縁物を積み重ねて構成された棒状の積層圧電素子であり、電圧をかけることによって積層方向(本実施形態では上下方向)に伸縮する。本実施形態で用いたアクチュエータ(12、13)は、例えば、厚みが5~100mmで、積層方向の変位量は5~100μmである。本実施形態では、アクチュエータ(12、13)を前後方向に2つずつ並べて配置する態様としている。
【0017】
アクチュエータ(12、13)の上端に連結するアーム14は、前後方向に、ベース部材2の上面4と実質的に平行に伸びる長尺部材であり、固定具15によりベース部材2に対して直接または間接に固定されている。アーム14は、撓みの小さい金属などの硬質材料により構成され、アクチュエータ(12、13)の駆動力をアームロッド16を介してプランジャロッド18に直接的に伝達する。アーム14は、少なくともアクチュエータ(12、13)の伸長よりも大きい長さを有しており、アクチュエータ(12、13)の変位量を拡大する変位拡大機構として機能する。本実施形態では、例えば、アクチュエータ(12、13)の変位がアーム14により3~100倍(好ましくは5~50倍)に拡大されてプランジャロッド18に伝達される。アクチュエータ(12、13)の変位量を調節してベース部材2に対してアーム14を所望の傾斜角度とすることで、ストロークを動的に調節することもできる。
【0018】
アーム14の前方部には、押圧部17を構成するアームロッド16が着脱自在に固定される。アームロッド16の下端には、凸状の押圧部17が設けられている。プランジャロッドの上端部20から離れた位置にある押圧部17が下降して上端部20を衝打することにより、プランジャロッド18が高速で進出移動する。押圧部17は、アーム14がアクチュエータ(12、13)付近を中心とした円弧状の軌跡で動作するため、その上下位置によっては、プランジャロッドの上端部20との接触位置および接触角度が変化する。したがって、押圧部17のプランジャロッドの上端部20との対向面は曲面をなす形状とすることが好ましい。本実施形態では、例えば、半球状または半楕円体状である。
【0019】
プランジャロッド18は、上下方向に直線状に伸びる棒状部材からなるロッド部19と、半球状の下端部21と、ロッド部19より大径の板状部材からなる上端部20とから構成される。プランジャロッド18は、例えば、金属材料、セラミック材料、樹脂材料から構成することができる。プランジャロッド18は、上端部20とロッド部19の上端側の一部とがベース部材2の上面4より突出する長さに構成されている。また、プランジャロッド18は、下端部21とロッド部19の下端側の一部とがベース部材2の下面5より突出するよう、ベース部材2のプランジャロッド挿通孔6および弾性体22に挿通されている。換言すると、プランジャロッド18はベース部材2の上下方向厚さより長く構成され、プランジャロッド挿通孔6に挿通した状態で、上端部20側および下端部21側それぞれがベース部材2から突き出る格好となる。本実施形態では、プランジャロッド18の下端部21は半球状に形成したが、任意の形状とすることができ、例えば、平面、先端に突起が設けられたもの、半楕円体などとすることができる。
【0020】
プランジャロッド挿通孔6の下方側には、ガイド23およびシール部材24が配設される。前述のように、アーム14がアクチュエータ(12、13)付近を中心とした円弧状の軌跡で動作するが、ガイド23およびシール部材24を配設することで、プランジャロッド18の動作方向を上下方向に直線状になるよう規制する。
【0021】
プランジャロッドの上端部20とベース部材の上面4との間には、ロッド部19を囲むような形状の弾性体22が配設される。本実施形態では、弾性体22をコイル状の圧縮バネで構成しているが、板バネや空気バネなどにより構成してもよい。プランジャロッドの上端部20は、ロッド部19および弾性体22よりも大径に形成されており、弾性体22から常時上方向の力を受けている。そして、プランジャロッドの上端部20は、アームロッドの押圧部17に当接した位置で止まる。プランジャロッドの上端部20とアームロッドの押圧部17とは、連結されていないので、プランジャロッド18の取り外しは容易である。
【0022】
ベース部材2の下面5の前方には、液室26と供給流路27とが内部に形成される接液部材25が着脱自在に取り付けられる。液室26は、プランジャロッド挿通孔6の下端から下方へ伸びる円筒状の筒部28の内部に形成された空間であり、ベース部材の下面5から突出しているプランジャロッド18の下端部21およびロッド部19の下端側を囲むように形成される。液室26は、ロッド部19よりも大径に形成しているので、プランジャロッド18の下端部21やロッド部19が、液室26の内周面に当接することなく往復移動できるため、高速移動することが可能である。筒部28の下端内周側には、液室26よりも拡径した段部29によりノズル取付部が構成される。ノズル取付部の形状は、ノズル50上端の外側形状に沿う形状をしており、ノズル50が嵌入するようになっている(詳細は後述する)。液室26の下端外周側には、ノズル50を接液部材25に固定するためのノズル固定具30が着脱自在に取り付けられる。液室26上端とベース部材の下面5との間には、シール部材24が設けられ、液体材料がガイド23へ侵入することを防止している。
【0023】
ノズル50は、液室26と外部とを連通する二つの吐出口(62、62)が下端に設けられ、上端に液室26と連続する上端開口60が設けられる。上端開口60は、液室26の内径と同径となっており、液体材料113が流れるのを容易にする。詳細は後述する。
【0024】
供給流路27は、液室26から前方へと伸びる流路であり、一方の側端部が液室26に連通し、液室26と反対側の上端部は供給口31と連通している。供給流路27の液室26と反対側の側端部は、着脱自在に取り付けられた閉止栓35により閉止されている。供給口31には、貯留容器32が接続されている。貯留容器32内の液体材料113は、アダプタチューブ33を介して供給される圧縮気体により加圧されており、供給流路27を通り、液室26へと供給される。本実施形態では、貯留容器32を供給口31に直接接続する態様としているが、液送配管を間に介して据え置き型の比較的容量の大きな(例えば、数リットルから数十リットル)容器と接続するようにしてもよい。なお、液体材料113が流動性の高いものである場合には、貯留容器32を加圧しなくてもよい。
【0025】
ベース部材2の上面4より上の部分には、アクチュエータ(12、13)やアーム14等を覆うカバー34を設けている。これにより、可動部分であるアクチュエータ(12、13)やアーム14等へ不具合の原因となる塵埃や液体材料113などが付着することを防いでいる。また、作業者が可動部分であるアクチュエータ(12、13)やアーム14等へ不用意に触れてしまうことを防いでいる。
【0026】
本実施形態では、プランジャロッド18を動作させるための駆動装置として、圧電素子とアーム14による変位拡大機構を用いたが、他の方式の駆動装置(アクチュエータ)を用いてもよい。例えば、プランジャロッド18の駆動室側にピストンを設けて駆動室を二分し、圧縮気体やバネの力を利用してプランジャロッド18を動作させるもの(すなわち特許文献1のようなもの)、電動モータとボールネジを組み合わせてプランジャロッド18を動作させるもの、電磁石を利用してプランジャロッド18を動作させるもの、などを用いることができる。
【0027】
本実施形態のノズル50は、
図2に示すように、円筒状の胴部51と、胴部51から下方に向かうに従って狭まる傾斜部52と、傾斜部52から下方へ伸びる先端部53とから構成される。胴部51から傾斜部52にわたる部分の内側には、胴部51の延出方向(中心軸線63に沿う方向)と平行な上部内側面54と、上部内側面54から下方に向かうに従って狭まるテーパ面55と、テーパ面55の下端に位置する内底面56とが形成されている。
図2(a)に示すように、内底面56、上端面57および下端面58は、いずれも中心軸線63と直交する面と平行な平面により構成されている。
ノズル50の内部空間59(すなわち、上部内側面54、テーパ面55および内底面56に囲まれた空間)は円錐台状であり、液室26と常時連通している。上部内側面54の内径と液室26の内径とは同じ大きさとすることが好ましい。先端部53の内部には、中心軸線63に沿って延びる二つの吐出流路(61、61)が設けられている。吐出流路(61、61)の上端は内部空間59に連通する流入口(68、68)を構成し、下端は外部に連通する吐出口62を構成する。本実施形態では吐出流路(61、61)の流入口(68、68)より下の部分は同径の円柱状流路であり、例えば、吐出流路61の直径は、0.03~0.3mmの範囲となるように設定している。これとは異なり、流入口(68、68)を吐出口(62、62)と比べ大径に構成してもよいし、また、吐出流路(61、61)を多角柱形状や楕円柱形状に構成してもよい。また、テーパ面55の角度(符号67)は、75~150度の範囲に設定している。後述するように、テーパ面55からなる内壁を設けることにより、プランジャロッド18の下端部21に押圧された液体材料の加速作用を高めている。ただし、いずれの設定も上記の範囲に限定されず、用いる液体材料の性質や所望とする線形状(すなわち幅や高さ)により、適宜変更されるものである。
【0028】
二つの吐出口(62、62)は、中心軸線63を挟んで対称な位置で、テーパ面55と内底面56とが交わる位置から中心軸線63と平行に下方へ延長した線上に形成される。別の言い方をすると、二つの吐出口(62、62)は、内底面56の縁部(
図2(b)の点線参照)に外接するような位置で、中心軸線63を挟んで一つの直線上に並ぶよう形成される(以下では、二つの吐出口(62、62)の中心を結んだ線を「ノズル配置線」という場合がある。)。本発明の塗布方法により塗布線を形成する際は、ノズル配置線が塗布方向と直交するようにノズル50を配置して塗布を行う。
図6に示すように、塗布対象物であるワーク102に着弾した二つの液滴(112、112)は、ワーク102上で結合して一本の真っ直ぐな塗布線を構成するので、吐出口(62、62)は塗布線と直交する一つの直線上に並んで配置されていることが必要である。ここで、吐出口(62、62)間の距離D(左側の吐出口62の右端と、右側の吐出口62の左端との距離をいい、以下では最近接距離という場合がある。)を一定以下とすると、吐出口(62、62)から吐出された液滴が空中で結合して一つの液滴を構成することになるので注意が必要である。吐出口(62、62)から吐出された液滴が空中で結合して一つの液滴となってからワークに着弾すると、一つの吐出口から液滴を吐出した場合と同様、前述のアスペクト比が大きくなる蓋然性が高いからである。二つの吐出口(62、62)の直径は同一であり、吐出口(62、62)間の最近接距離である距離Dは、例えば、吐出口62の直径の2~12倍である。
【0029】
塗布動作時は、二つの吐出流路(61、61)が並んでいる方向(ノズル配置線)とは直角な方向へ移動しながら吐出を行い、線引き塗布が行われる。二つの吐出流路(61、61)間の距離Dが、所望とする塗布線幅を実現するのに適したノズル50が選択される。すなわち、所望とする塗布線幅を実現するためのノズルを複数用意しておき、各作業で所望とする塗布線幅に応じて対応する距離Dを有するノズル50を選択して塗布を行うことが好ましい。所望の塗布線幅を形成するのに適した二つの吐出口(62、62)の直径は、一つの吐出口で同一の塗布線幅を形成する場合と比べると小さくなる。このように、従来は一つの液滴として吐出していたものを、実施形態では二つに分散して1滴分の量は小さくしつつ、所望とする線幅と実質的に同じ幅に吐出をしているので、高さを抑えながらも幅の広い線引き塗布を行うことができる。
【0030】
吐出流路(61、61)の上端は、テーパ面55を横切るように設けられているので、流入口(68、68)は傾斜している。そのため、流入口(68、68)は楕円形となり、軸線に直角な断面(すなわち円)よりも面積が広い。また、流入口(68、68)は、それぞれノズル50の中心側へ向かうように傾斜している。つまり、流入口(68、68)の面積が広いことと、流入口(68、68)のそれぞれがノズル50の中心側(プランジャロッドの下端部21側)へ向いていることにより、液体材料113が吐出流路(61、61)に流れ込みやすくなるという効果を奏する。
【0031】
下端面58の吐出口62の周囲には、一定幅の環状の溝部64を設けている。本実施形態では、例えば、溝部64の幅は二つの吐出流路(61、61)間の距離Dと同程度、溝部64の深さは二つの吐出流路(61、61)間の距離Dの半分程度とした。また、吐出流路61から溝部64までの距離(管でいうところの管の厚さに相当;符号65)は、吐出流路61の径の0.5~1倍程度とした。溝部64の形状は、例えば、底面から見たとき、二つの吐出口(62、62)を囲むような長円状とする。これにより二つの吐出口(62、62)は周囲から突出して縁ができる。そのため、吐出口62周辺の下端面58に余分な液体材料の付着を防ぐことができ、バラツキを少なくして安定して吐出することができる。吐出量が少ない場合は特に効果がある。なお、本実施形態のノズル50は、線引き塗布に用いるため、二つの吐出口(62、62)の間には、例示するように溝部64を設けなくともよいが、これとは異なり、二つの吐出口(62、62)の間に溝部を設けてもよい。
【0032】
吐出動作時、本実施形態の吐出装置1では、プランジャロッド18の下端部21をノズル50のテーパ面55に着座させてプランジャロッド18の下降移動が停止される(
図2(a)の点線を参照)。これにより、プランジャロッド18の下端部21の下面、内底面56およびテーパ面55の一部により形成される加圧空間66内の液体材料がプランジャロッド18の下端部21により加圧され、吐出口(62、62)から液体材料が飛翔吐出される。本実施形態では、中心軸線と直交する面と平行な内底面56を設け、加圧空間66を円錐台状に構成して容積を小さくすることで、加圧空間66内の圧力を高めやすくしている。また、プランジャロッド18の径を二つの吐出口(62、62)の最外縁間の距離(=上述の距離D+吐出流路の直径×2)より大きくしたこと、およびテーパ面55を下方に向かって狭まる形状としたことにより、プランジャロッド18の進出動作により、二つの吐出流路(61、61)へと同時に液体材料113を十分な圧力をもって流し込むことができるので、吐出口(62、62)を従来の一つの吐出口を有する吐出装置よりも小さく構成した場合でも二つの液滴(112、112)を飛翔吐出することができる。別の観点からは、プランジャロッド18の下端部21は内底面56より上方でテーパ面55に接触する(符号69)ことによっても、二つの吐出流路(61、61)へと液体材料113を円滑に流し込むための圧力を生じさせている。
本実施形態では、吐出口62および吐出流路61を二つとしたが、三つ以上でもよい。
【0033】
本実施形態では、ノズル50の胴部51に位置決め機構として機能する二つの平面部(70、71)を設ける。平面部(70,71)は、二つの吐出口(62、62)が並んでいる方向と平行な方向の面70、およびその面70とは直角な方向の面71の二つの面(70、71)を設ける。一方、
図3に示したように、接液部材25の筒部28の下端に設けられたノズル取付部(段部29)にも位置決め機構として機能する平面部72を1箇所設ける。本実施形態では、ノズル取付部の平面部72の向きは、供給流路27が伸びている方向と平行な方向である。ノズル50を取り付ける際には、ノズル50の二つの平面部(70、71)のいずれか一つと、ノズル取付部の平面部72とを合わせるよう取り付ける。ノズル50の平面部(70、71)は二つの吐出口(62、62)に対して向きが決まっており、ノズル取付部の平面部72は供給流路27、ひいては吐出装置1の本体に対して向きが決まっているので、平面部同士を合わせるだけで、吐出装置1本体に対する二つの吐出口(62、62)が並んでいる向きを容易に定めることができる。
【0034】
ノズル50には向きの異なる平面部(本実施形態では直角なので90度向きが異なる)が設けてあるので、その向きの異なる平面部をノズル取付部の平面部72に合わせてノズル50を付け替えることで、二つの吐出口(62、62)の並んでいる向きを容易に変えることができる。このように、ノズル50およびノズル取付部それぞれに平面部(70、71、72)を設けることで、吐出装置1本体に対する二つの吐出口(62、62)が並んでいる向きを容易に定めることができる。また、その平面部をノズル50側は2箇所(70、71)、ノズル取付部側は1箇所(72)とすることで、二つの吐出口(62、62)の並んでいる向きを容易に変えることができる。すなわち、ノズル50を90度回転して付け替えるだけで、二つの異なる方向に対して線引き塗布を行うことができる(換言すれば、本発明の塗布方法と特許文献1に記載の塗布方法を実現することができる。)。なお、1台の吐出装置1でノズル50を適宜付け替えるのではなく、2台の吐出装置1を用意して、それぞれ異なる向きにノズル50を取り付けるようにしてもよい。また、ノズル50に平面部を一つのみ形成し、ノズル50の平面部とノズル取付部の平面部72の向きを合わせることで、常に本発明の塗布方法を実現するための位置決めをしてもよい。
【0035】
(2)吐出動作
以上のように構成される本実施形態の吐出装置1は、次のように動作する。
(2-1)ニュートラルポジション
第1および第2アクチュエータ(12、13)に通電しない非動作状態で、アーム14がベース部材2の上面とほぼ平行な状態にあるとき、これをニュートラルポジションと呼ぶ(
図1参照)。このとき、プランジャロッド18の下端部21は、ノズル50のテーパ面55と非接触状態にあり、吐出口(62、62)は開口されている。また、プランジャロッド18の上端部20は、弾性体22の付勢作用により、アームロッド16の押圧部17と当接状態にある。これとは異なり、アームロッド16の押圧部17やプランジャロッド18の上下位置や弾性体22の付勢力等を調節して、プランジャロッド18の下端部21をテーパ面55と接触状態にあるときをニュートラルポジションとしてもよい。接触状態とすることで、液体材料113が吐出口(62、62)から漏出することを防ぐことができる。
【0036】
(2-2)上昇動作
前方にある第1アクチュエータ12に通電して伸長させ、後方にある第2アクチュエータ13には通電せず伸縮させない状態にすると、第1および第2アクチュエータ下端(12、13)に連結した各接続部材(10、11)が各支持部材(8、9)上を移動し、第1および第2アクチュエータ(12、13)を後方側に傾斜させる。すると、第1および第2アクチュエータ(12、13)の上端に連結したアーム14が、固定具15付近を中心に反時計回りに回動し、アームロッド16を上方へ移動させる。アームロッド16が上方へ移動すると、弾性体22の付勢作用により、プランジャロッド18も上方へ移動する。なお、上方への移動時、アームロッド16の押圧部17とプランジャロッド18の上端部20は、当接状態を保持していてもよいし、一時的に非接触状態となった後に当接状態となってもよい。また、アームロッド16の押圧部17は、アーム14が回動するために、円弧状の軌跡を描いて上昇移動するが、プランジャロッド18は、ガイド23の作用により直線的に上昇移動する。そのため、アームロッド16の押圧部17とプランジャロッド18の上端部20は前後方向に位置がズレながら移動する。しかし、前述のように、押圧部17の下面を曲面で構成し、プランジャロッド18の上端部20を位置ズレが許容できる大きさに構成しているので、適切な当接状態を確保できるようになっている。この押圧部17と上端部20の構成は、次に説明する下方への移動時にも同様の効果を奏する。ここで、第1アクチュエータ12だけでなく、後方にある第2アクチュエータ13に収縮するよう電圧を印加することで、より大きな変位を押圧部およびプランジャロッド18にもたらすようにしてもよい。
【0037】
(2-3)下降動作
前方にある第1アクチュエータ12への通電を停止して伸縮しない状態にし、後方にある第2アクチュエータ13に通電して伸長させると、第1および第2アクチュエータ(12、13)下端に連結した各接続部材(10、11)が各支持部材(8、9)上を移動し、第1および第2アクチュエータ(12、13)を前方側に傾斜させる。すると、第1および第2アクチュエータ(12、13)上端に連結したアーム14が、固定具15付近を中心に時計回りに回動し、アームロッド16を下方へ移動させる。アームロッド16が下方へ移動すると、アームロッド16の押圧部17がプランジャロッド18の上端部20を押圧し、弾性体22の付勢力に抗して、プランジャロッド18が下方へ移動する。プランジャロッド18が下方へ移動すると、プランジャロッド18の下端部21がノズル50のテーパ面55に着座して、液体材料113が吐出口(62、62)より液滴112の状態で吐出される。上方への移動時と同様に、下方への移動時においても、アームロッド16の押圧部17とプランジャロッド18の上端部20は、当接状態を保持していてもよいし、一時的に非接触状態となった後に当接状態となってもよい。ここで、第2アクチュエータ13だけでなく、前方にある第1アクチュエータ12に収縮するよう電圧を印加することで、より大きな変位を押圧部17およびプランジャロッド18にもたらすようにしてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、プランジャロッド18の下端部21をノズル50のテーパ面55に着座させてプランジャロッド18の移動を停止しているが、着座させない態様も本発明の技術思想に含まれる。
(2-4)吐出動作
【0039】
上記(2-2)、(2-3)の動作が基本となる1回の吐出動作となる。この動作を繰り返すことで、連続的に吐出を行い、線引き塗布を行うことができる。本実施形態では、例えば、1秒間に100~500回またはそれ以上の周波数でプランジャロッド18を往復移動させることができる。
【0040】
以上に説明した吐出装置によれば、一つの液滴として吐出していたものを二つに分散して1滴分の量を小さくし、幅を持たせて吐出するので、高さを抑えながらも幅の広い線引き塗布を行うことができる。
【0041】
(3)塗布装置
【0042】
第1実施形態に係る塗布装置100は、
図4に示すように、液体材料113を吐出するための吐出装置1、塗布対象物102をその上面に載置するステージ101、吐出装置1とステージ101とを相対移動させる相対駆動装置(103、104、105)、前記相対駆動装置の動作を制御する制御装置109、から主に構成される。
【0043】
ステージ101は、上面に塗布対象物102を載置する平面を有する平板状の部材である。塗布対象物102をステージ101に固定するには、例えば、ステージ101内部から上面へ通じる複数の孔を開け、その孔から空気を吸い込むことで塗布対象物102を吸着固定する機構、塗布対象物102を固定用部材で挟み込み、その部材をネジ等の固定手段でステージ101に固定することで塗布対象物102を固定する機構などを用いることができる。
【0044】
相対駆動装置は、X方向駆動装置103、Y方向駆動装置104、Z方向駆動装置105から構成される。本実施例では、吐出装置1をステージ101に対してX方向(符号106)、Y方向(符号107)、Z方向(符号108)に相対移動させる構成となっている。ただし、相対駆動装置(103、104、105)は、吐出装置1とステージ101とが相対移動できればよく、上記構成に限定されない。例えば、吐出装置1をX方向(符号106)およびZ方向(符号108)、ステージ101をY方向(符号107)にそれぞれを移動するようにしてもよいし、ステージ101を跨ぐような逆U字形(あるいは門型ともいう)のフレームに吐出装置1をZ方向(符号108)に移動できるように設置し、ステージ101をX方向(符号106)およびY方向(符号107)に移動するようにしてもよい。相対駆動装置(103、104、105)には、電動モータ(サーボモータ、ステッピングモータなど)とボールネジを組み合わせたものや、リニアモータなどを用いることができる。
【0045】
制御装置109は、図示しない処理装置と、記憶装置と、入力装置と、出力装置と、から構成され、上述した吐出装置1、相対駆動装置(103、104、105)が接続されて、これら各装置の動作を制御する。処理装置、記憶装置として、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などを用いることができる。また、入力装置、出力装置として、キーボード、マウス、ディスプレイのほか入出力を兼ねるタッチパネルを用いることができる。制御装置109は、塗布線の方向にノズル配置線が直交するようにして行う塗布方法(本発明の塗布方法)と、塗布線の方向とノズル配置線を一致させて行う塗布方法(特許文献1に記載の塗布方法)を択一的に実現するための塗布プログラムを備えている。
【0046】
上述の各装置は、架台110の上部および内部に配置される。上述した吐出装置1、ステージ101、相対駆動装置(103、104、105)が設けられる架台110の上部は、点線で示すカバー111で覆うことが好ましい。これにより、装置の故障や製品の不良の原因となる塗布装置100内部への塵埃の進入を防止し、作業者と相対駆動装置(103、104、105)などの可動部と不用意な接触を防止することができる。なお、作業の利便性のため、カバー111の側面に開閉可能な扉を設けてもよい。
【0047】
(4)塗布動作
本実施形態に係る塗布装置100は、吐出装置1の動作と相対駆動装置(103、104、105)の動作とを組み合わせることで、所望の断面形状(幅W、高さH)を有する直線状の液体材料113を塗布対象物102に塗布することができる。
【0048】
図5に示すように、図示しない相対駆動装置に設置された吐出装置1(ノズル50のみを図示する)を、塗布対象物102に対して符号114で示す方向に移動させて線引き塗布を行うことを例に説明する。ここで、吐出口(62、62)から吐出された液体材料は、
図5に示すように吐出口(62、62)から分断され、塗布対象物102に着弾する前に吐出口数と同数の滴を形成してもよいし、ワーク102に接触した後に吐出口(62、62)から分断され、塗布対象物102上で吐出口数と同数の滴を形成するのでもよい。本明細書では、吐出口から吐出され、吐出口から分断される前の液体材料と、吐出口から吐出された後に分断され、塗布対象物に着弾する前の液滴を合わせて「液塊」と呼称する場合がある。
【0049】
ノズル50は、ノズル50の二つの吐出口(62、62)が、塗布線の伸びる方向、すなわち移動方向(符号114)に対して直角な方向に並ぶよう吐出装置1に取り付ける。そして、上記のようにノズル50を取り付けた吐出装置1を、符号114で示す方向に移動させながら連続的に吐出動作させると、吐出口(62、62)から吐出された液滴(112、112)が、次々と塗布対象物102上に付着し、結合して塗布線を形成する。説明の便宜上、結合した塗布線の任意の位置の断面115を斜線を付して図示する。
本実施形態では、二つの吐出口(62、62)が所望とする線幅Wに対応する距離に配置されているので、塗布対象物102上に形成された塗布線の幅Wは、そのままで所望とする線幅Wとなる。また、一つの液滴として吐出していたものを二つに分散して1滴分の量は小さくしつつ、所望とする線幅Wを形成しているので、高さHを抑えることができる。本実施形態の塗布装置100によれば、例えば、アスペクト比(高さH/幅W)が0.8より小さい(好ましくは0.6より小さい、より好ましくは0.5より小さい)塗布線を形成することが可能である。粘度が約4000[mPa・s]の液体材料を用いて塗布線を形成したところ、幅が0.5[μm]以下、高さが0.2[μm]以下である(すなわち、アスペクト比が0.4である)ことが確認された。このようなアスペクト比の塗布線は、例えば、液晶パネルの外周部またはその付近に設けられる遮光部の形成に好適である。
形成した塗布線の幅および高さは、公知の測定方法(例えば、レーザー変位計、撮像画像を用いた画像処理、ダイヤルゲージによる測定)により測定することが可能である。
【0050】
《第2実施形態》
第2実施形態は、開口面積の異なる2つの吐出口(62、162)を有するノズル150を備える吐出装置に関する。第2実施形態の吐出装置は、ノズル150以外は第1実施形態の吐出装置1と同様であるので、以下では第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号付し、説明を省略する場合がある。
【0051】
2つのガラス基板(板状体)を貼り合わせる液晶パネルでは、貼り合わせ後の縁部に段差が生じることがある。また、設計上設けられた段差部に線状塗布を行うことが必要な場合もある。こういった段差部に、線状塗布を行おうとする場合、第1実施形態のノズル50では、段差を跨がるような塗布線が綺麗に形成できない場合があることが判明した。より詳細には、段差の上段に塗布された液滴と下段に塗布された液滴とが結合しない場合がある。このような問題は、複数回重ねて線状塗布を行うことにより解消することができるが、重ね塗布に要する時間が増え、生産性が低下するという問題がある。また、重ね塗布をした場合、幅が広く高さが低い塗布形状を実現できなくなるという問題がある。
【0052】
本実施形態では、第1の開口面積を有する吐出口62および第1の開口面積と比べ大きい第2の開口面積を有する吐出口162を設けることで、段差部(205、206)を跨がり、かつ、幅が広く高さが低い線状塗布を一度の走査で実現することを可能とした。詳細には、段が低い側の基板(202、204)に対向する吐出口162の径を、段が高い側の基板(201、203)に対向する吐出口62の径よりも大きくすることで、段が低い側の基板(202、204)への吐出量を相対的に多くして、段が低い側の基板(202、204)上に塗布された液滴と、段が高い側の基板(201、203)上に塗布された液滴とを結合させる。こうすることで、同一線上を複数回重ねて塗布しなくとも、一度の走査で、段差部(205、206)を跨がるような線状塗布を行うことが可能となる。また、縁部に対して幅が広く高さが低い塗布形状を実現することができる。
【0053】
本実施形態のノズル150を
図7に示す。第1実施形態のノズル50と異なる点は、先端部の内部に、中心軸線63に沿って延びる二つの吐出流路(61、161)のうち、一方の吐出流路161の内径を他方の吐出流路61の内径より大きく構成したことである。二つの吐出流路(61、161)は、いずれも同径の円柱状であるが、この形状に限定されない点は第一実施形態と同様である。吐出口62と吐出口162の開口面積の比率は限定されるものではないが、例えば、吐出口162の開口面積を吐出口62の開口面積の1.4~16倍とすることが開示される。
【0054】
図7のノズル150を用いて塗布を実行すると、
図8に示すような段差部(205、206)を跨がる形状に液体材料を塗布することができる。
図8において、ノズル150は、紙面に垂直な方向に沿って移動しながら液体材料を吐出して線状塗布を行う。
図8に示すように、本実施形態のノズル150は、段が低い側の基板に対向する吐出口162の径を、段が高い側の基板に対向する吐出口の径62よりも大きくし、段が低い側の基板(202、204)への吐出量を相対的に多くしたので、段が低い側の基板(201、203)に塗布された液体材料と段が高い側の基板(202、204)に塗布された液体材料を一度の走査で、段差を跨いで結合することができる。また、結合により形成された塗布線は、縁部に対して幅が広く高さが低い塗布形状である。具体的には、上段の上面を水平方向に延ばした線(L1、L2)における液滴の幅(W1、W2)に対する高さ(H1、H2)が低い塗布線を形成することができる。
以上に説明した本実施形態のノズル150を用いれば、段差部にも、段差が無い場合の塗布と同様の塗布形状を実現することができる。本実施形態でも、例えば、アスペクト比(高さH1/幅W1または高さH2/幅W2)が0.8より小さい(好ましくは0.6より小さい、より好ましくは0.5より小さい)塗布線を形成することが可能である。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、段差部の下段に塗布する吐出口を段差部の上段に塗布する吐出口と比べて低い位置に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:吐出装置、2:ベース部材、3:凹部、4:上面、5:下面、6:プランジャロッド挿通孔、7:揺動機構、8:第1支持部材、9:第2支持部材、10:第1接続部材、11:第2接続部材、12:第1アクチュエータ、13:第2アクチュエータ、14:アーム、15:固定具、16:アームロッド、17:押圧部、18:プランジャロッド、19:ロッド部、20:上端部、21:下端部、22:弾性体、23:ガイド、24:シール部材、25:接液部材、26:液室、27:供給流路、28:筒部、29:段部、30:ノズル固定具、31:供給口、32:貯留容器、33:アダプタチューブ、34:カバー、50:ノズル、51:胴部、52:傾斜部、53:先端部、54:上部内側面、55:テーパ面、56:内底面、57:上端面、58:下端面、59:内部空間、60:(ノズルの)上端開口、61:吐出流路、62:吐出口、63:中心軸線、64:溝部、65:吐出流路の厚さ、66:加圧空間、67:テーパ面角度、68:流入口、69:プランジャロッドがテーパ面と接触する箇所、70:ノズル平面部(平行)、71:ノズル平面部(直角)、72:(ノズル取付部の)平面部、100:塗布装置、101:ステージ、102:塗布対象物(ワーク)、103:X方向駆動装置、104:Y方向駆動装置、105:Z方向駆動装置、106:X移動方向、107:Y移動方向、108:Z移動方向、109:制御装置、110:架台、111:カバー、112:液滴、113:液体材料、114:吐出装置の移動方向、115:塗布線の断面、150:ノズル、161:吐出流路、162:吐出口、168:流入口、201:段差上段を構成する基板、202:段差下段を構成する基板、203:段差上段を構成する基板、204:段差下段を構成する基板、205:段差部(積層時)、206:段差部(縦置き時)、H,H1,H2:塗布線高さ、W,W1,W2:塗布線幅