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特許7100374コイルセグメント加工方法、コイルセグメント加工装置及びコイルセグメントの接続構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】コイルセグメント加工方法、コイルセグメント加工装置及びコイルセグメントの接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20220706BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220706BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
H02K15/04 F
H02K3/04 E
H02K3/50 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019552422
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018041873
(87)【国際公開番号】W WO2019093515
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2017218645
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145736
【氏名又は名称】株式会社小田原エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕治
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 伸郎
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-039001(JP,A)
【文献】特開2015-027258(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 15/08
H02K 3/04
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントを加工するコイルセグメント加工方法であって、
各コイルセグメントの前記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が前記コアの径方向に複数の層を形成するように前記スロットに挿入された前記複数のコイルセグメントに対し、
それぞれ前記複数の層のいずれかと対応し、該対応する層のセグメント端部を収容する収容部を備えるツイスト治具が前記複数の層の総数よりも少ない数同心円状に配置されたツイスト治具ユニットを複数用いて、
前記複数のツイスト治具ユニットのうち一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、該ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容した状態で、該各ツイスト治具を回転させることによる、該収容されたセグメント端部のツイスト加工を、前記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれについて順次行うことにより、
全ての前記層のセグメント端部をツイストし、
前記ツイスト治具のうち、所定の層と対応する第1ツイスト治具を用いた前記ツイスト加工は、前記所定の層における複数のセグメント端部のうち特定のセグメント端部の前記径方向の位置を、該特定のセグメント端部が前記第1ツイスト治具のいずれの前記収容部にも収容されないように、前記所定の層の他のセグメント端部と異なる位置にずらした状態で行うことを特徴とするコイルセグメント加工方法。
【請求項2】
前記第1ツイスト治具を用いた前記ツイスト加工の前に、前記特定のセグメント端部を、押し退け部材により選択的に、前記第1ツイスト治具を用いた前記ツイスト加工の際に少なくとも前記第1ツイスト治具と干渉しない位置へ押し退けることを特徴とする請求項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項3】
前記特定のセグメント端部を、前記押し退け部材と異なるずらし部材により前記径方向へ移動させてから、前記押し退け部材による押し退けを行うことを特徴とする請求項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項4】
前記第1ツイスト治具の収容部に前記セグメント端部を収容するよりも前に、該第1ツイスト治具を含むツイスト治具ユニットでツイスト加工される各層のセグメント端部と、他の各層のセグメント端部との間の、前記径方向の間隔を拡げる工程を含み、
該拡げる工程で前記セグメント端部に干渉して前記セグメント端部を移動させる部材を、前記ずらし部材として用いることを特徴とする請求項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項5】
前記所定の層が、前記複数の層のうち、前記径方向における最も外側の層及び/又は最も内側の層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項6】
前記複数の層のうち前記径方向における最も内側の層に、該最も内側の層の他のセグメント端部よりも前記コア端面からの突出長さが大きい第1長尺セグメント端部が存在し、前記複数の層のうち前記径方向における最も外側の層に、該最も外側の層の他のセグメント端部よりも前記コア端面からの突出長さが大きい第2長尺セグメント端部が存在し、
前記最も内側の層の前記ツイスト加工は、前記最も内側の層と対応する第1ツイスト治具を用いて、前記第1長尺セグメント端部と前記最も内側の層における他のセグメント端部とを共に同じ向きにツイストするように行い、
前記最も外側の層の前記ツイスト加工は、前記第2長尺セグメント端部の前記径方向の位置を、前記最も外側の層の他のセグメント端部と異なる位置にずらした後、前記最も外側の層と対応する第2ツイスト治具を用いて、前記最も外側の層における前記他のセグメント端部を前記最も内側の層のセグメント端部と逆向きにツイストし、その後、前記第2ツイスト治具と異なる第3ツイスト治具を用いて前記第2長尺セグメント端部を前記最も内側の層のセグメント端部と同じ向きにツイストして、前記第2長尺セグメント端部を前記第1長尺セグメント端部にほぼ対向させるように行うことを特徴とする請求項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項7】
前記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれに関し、該ツイスト治具ユニットに含まれる前記ツイスト治具の収容部に前記セグメント端部を収容するよりも前に、該ツイスト治具ユニットでツイスト加工される各層のセグメント端部と、他の各層のセグメント端部との間の、前記径方向の間隔を拡げる工程を含むことを特徴とする請求項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項8】
前記複数のツイスト治具ユニットが、移動可能に支持されたユニットホルダにそれぞれ保持され、
前記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれについての前記ツイスト加工を行う時に、前記ユニットホルダを移動させて、前記複数のツイスト治具ユニットのうち選択された一のツイスト治具ユニットと、該選択された一のツイスト治具ユニットにおける各ツイスト治具を回転させる回転駆動機構とを連結することにより、前記ツイスト加工に用いる前記ツイスト治具ユニットを交換することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のコイルセグメント加工方法。
【請求項9】
ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各前記コイルセグメントの前記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が前記コアの径方向に複数の層を形成するように前記スロットに挿入された複数のコイルセグメントを加工するコイルセグメント加工装置であって、
前記複数の層のうち前記径方向で隣り合う層であって前記複数の層の総数よりも少ない数の層の各々に対応する、それぞれ対応する層のセグメント端部を収容する収容部を備えるツイスト治具が同心円状に配置されたツイスト治具ユニットを複数と、
前記複数のツイスト治具ユニットの中から任意に選択された一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、該各ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容するように、前記一のツイスト治具ユニット及び/又は前記コイルセグメントが挿入されている前記コアを移動させる駆動機構と、
前記複数のツイスト治具ユニットから任意に選択されたツイスト治具ユニットに連結可能であって、該連結されたツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具を、それぞれ前記径方向に隣接するツイスト治具と異なる向きに回転させる回転駆動機構と、
前記駆動機構により前記複数の層のうち所定の層のセグメント端部を該所定の層と対応する第1ツイスト治具の収容部に収容する場合でも、前記所定の層の複数のセグメント端部のうち特定のセグメント端部が前記第1ツイスト治具のいずれの収容部にも収容されないように、前記特定のセグメント端部を選択的に前記第1ツイスト治具に干渉しない位置へ押し退ける押し退け部材とを備えることを特徴とするコイルセグメント加工装置。
【請求項10】
請求項9に記載のコイルセグメント加工装置であって、
前記回転駆動機構と前記駆動機構を制御して、前記一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、該各ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容した状態で該各ツイスト治具を回転させて該収容したセグメント端部をツイスト加工する制御部を備えることを特徴とするコイルセグメント加工装置。
【請求項11】
前記所定の層は、前記複数の層のうち、前記径方向で最も外側の層及び/又は最も内側の層であることを特徴とする請求項9又は10に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項12】
前記複数のツイスト治具ユニットをそれぞれ保持し、移動可能に支持されたユニットホルダを有し、該ユニットホルダの移動によって、前記複数のツイスト治具ユニットから選択された一のツイスト治具ユニットが前記回転駆動機構に連結されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項13】
前記回転駆動機構と前記複数のツイスト治具ユニットのうち一方に凹部が、該一方と連結される前記回転駆動機構又は前記複数のツイスト治具ユニットに、前記凹部に嵌合する凸部が設けられ、
前記ユニットホルダの移動に伴う前記凹部と前記凸部との嵌合により、前記回転駆動機構から、前記回転駆動機構と連結されたツイスト治具ユニットへ回転駆動力が伝達されることを特徴とする請求項12に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項14】
前記複数のツイスト治具ユニットのうち少なくとも一つのツイスト治具ユニットにおいて、該ツイスト治具ユニットが備える1つのツイスト治具の軸が、該ツイスト治具ユニットが備える他のツイスト治具の軸を貫通していることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項15】
1つのツイスト治具ユニットでツイスト加工される層数毎に、前記径方向の層間を拡げる層間拡げ機構を有していることを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項16】
前記層間拡げ機構が、前記各スロットに対応して放射状に配置され、前記径方向に一体的に移動可能であって、対応するスロットに挿入されているセグメント端部に干渉して該セグメント端部を移動させる、複数の捌き部材を有していることを特徴とする請求項15に記載のコイルセグメント加工装置。
【請求項17】
ステータ及び/又はロータのコアと、
前記コアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各前記コイルセグメントの前記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が前記コアの径方向に複数の層を形成するように前記スロットに挿入された複数のコイルセグメントとを備え、
各前記コイルセグメントにおいて、前記スロットに挿入されている2つのスロット挿入部とそれらを接続する渡り部とが略U字形状をなしており、
前記複数の層のうち第1の層及び第2の層にある前記セグメント端部がそれぞれ、前記コアの周方向にツイストされた第1セグメント端部と、前記コアの周方向にツイストされておらず前記コアの軸心方向に延びる第2セグメント端部とを含み、前記径方向にほぼ対向する前記第1の層の第2セグメント端部と前記第2の層の第2セグメント端部とが導体で接続されている、コイルセグメントの接続構造。
【請求項18】
ステータ及び/又はロータのコアと、
前記コアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各前記コイルセグメントの前記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が前記コアの径方向に複数の層を形成するように前記スロットに挿入された複数のコイルセグメントとを備え、
各前記コイルセグメントにおいて、前記スロットに挿入されている2つのスロット挿入部とそれらを接続する渡り部とが略U字形状をなしており、
前記セグメント端部が、短尺セグメント端部と、同じ層の短尺セグメント端部よりも前記コアの端面からの突出長さが大きい長尺セグメント端部とを含み、
前記複数の層のうち第1の層にある第1長尺セグメント端部が、前記コアの周方向に、前記第1の層にある短尺セグメント端部と同じ向きにツイストされており、
前記複数の層のうち前記第1の層と異なる第2の層にある第2長尺セグメント端部が、前記コアの周方向に、前記第1長尺セグメント端部と同じ向きで前記第2の層にある短尺セグメント端部と逆向きにツイストされ、前記径方向から見て前記第2の層にある短尺セグメント端部の一部と交差しており、
前記第1長尺セグメント端部と、前記第2長尺セグメント端部とが、互いに前記径方向にほぼ対向する位置にあって導体で接続されている、コイルセグメントの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機(回転電気機械)におけるステータやロータのコア端面から突出したコイルセグメントの端部を捻って曲げるコイルセグメント加工方法、該コイルセグメント加工方法を実施するためのコイルセグメント加工装置、及びコイルセグメントの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機におけるステータやロータのコイルとして、このステータ又はロータの周方向に沿って配列された複数のスロットに、直線状の所定長さの線材をU字形状に加工してなる複数のコイルセグメント(以下、単に「セグメント」ともいう)をそれぞれ挿入し、これらセグメントの自由端側(挿入方向先端側。以下、「セグメント端部」という)をツイスト加工して溶接等により互いに電気的に接合したいわゆるセグメント型コイルが知られている。複数のセグメント端部のうち、何本かは電源線として接続される。なお、この種のコイルセグメントはヘアピンとも称されている。
【0003】
セグメント型コイルにおけるセグメント端部のツイスト加工としては、例えば特許文献1の図5及び図6に記載されているように、セグメント端部を挿入する孔又は溝を有する円筒状(円環状)の捻り治具(ツイスト治具)を複数同心円状に配置し、これらの治具をそれぞれ所定の方向に回転させることにより、複数の層のセグメント端部を同時にツイストするものが知られている。
特許文献1では、固定子鉄心のスロットに4つのセグメントを収容した4層(4レイヤー)構成が例示されており、これに対応してツイスト治具は4つのツイスト治具が同心円状に配置された構成となっている。
【0004】
特許文献1の装置は、中心側から径方向外側に向かって、1層目と3層目のツイスト治具を一方向に同期回転させ、2層目と4層目のツイスト治具を上記一方向とは逆向きに同期回転させる構成となっている。即ち、径方向に隣り合う層のツイスト治具を互いに異なる向きに回転させてツイストするようになっており、全ての層(ここでは4層)のセグメント端部を同時にツイストする構成となっている。
この種のツイスト加工では、ワーク(ステータ又はロータ)をツイスト治具側へ直進移動させながら、即ち、セグメント端部をツイスト治具へ挿入して押圧しながらツイスト治具を回転させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-259613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、複数のセグメント層が同心円状に広がるコイル構成では、周方向におけるセグメントの配置数は各層で同じであるため、径方向内側の層と外側の層とでは周方向のセグメント間の間隔が異なる。そして、隣り合う層のツイスト後のセグメント端部を電気的に接合するためには、径方向外側に行くほどコア端面からのセグメント端部の突出量(長さ)を大きくしなければならない。このセグメント端部の長さの変化に対応して各ツイスト治具の挿入孔又は挿入溝の深さが設定されている。
【0007】
上記のように、コア端面からのセグメント端部の突出量は内径側と外径側とで異なっているため、ツイストするときのワークの直進移動量とツイスト治具の回転角度との関係特性(以下、「ツイスト特性」という)はセグメント端部の長さによって必然的に異なる。
しかしながら、複数の層のセグメント端部を同時にツイストする特許文献1に記載の方式では、径方向に離れたツイスト治具、換言すればツイスト特性が異なるセグメント端部を同期回転させるため、ツイスト特性が偏った状態でツイストが行われることになる。
【0008】
即ち、内径側のセグメント端部におけるツイスト特性を基準にツイスト治具の回転量を設定すると外径側のセグメント端部の回転量が不足してツイスト精度が低下する。逆に、外径側のセグメント端部におけるツイスト特性を基準にツイスト治具の回転量を設定すると内径側のセグメント端部の回転量が過剰となってツイスト精度が低下する。
その結果、全体的にはツイスト精度が低くなっていた。ツイスト精度の低下は、溶接等によるセグメント端部の接合精度や電源線用のセグメント端部の接続(結線)等にも影響を及ぼし、ひいてはモータ等の回転電機の品質低下を招来する。
【0009】
また、複数の層のセグメント端部を同時にツイストする特許文献1に記載の方式では、径方向で隣り合う層を逆向きにツイストするため、ツイスト後には、異なる層にある電源線用のセグメントの間の距離が離れる(遠くなる)ことを避けられなかった。このため、周方向に延びる長い導体を用いて複数の電源線用のセグメントを電気的に接続するための複雑な電源線の接続構造が不可欠であった。電源線の接続構造が複雑になることは信頼性の低下に繋がる。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントの、コア端面から突出して複数の層を形成するセグメント端部を、精度よくツイスト加工できるようにすることを目的とする。合わせて、信頼性の高い回転電機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、従来の問題が、セグメント端部の突出長さが最も短い内径側の層からセグメント端部の突出長さが最も長い外径側の層までを一度にツイスト加工することに起因することに鑑み、ツイスト加工を複数回に分けて行い、結果的に全部の層に亘って良好なツイスト精度を得ることとした。
【0012】
即ち、本発明のコイルセグメント加工方法は、ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントを加工するコイルセグメントの加工方法であって、各コイルセグメントの上記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が上記コアの径方向に複数の層を形成するように上記スロットに挿入された上記複数のコイルセグメントに対し、それぞれ上記複数の層のいずれかと対応し、該対応する層のセグメント端部を収容する収容部を備えるツイスト治具が上記複数の層の総数よりも少ない数同心円状に配置されたツイスト治具ユニットを複数用いて、上記複数のツイスト治具ユニットのうち一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、該ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容した状態で、該各ツイスト治具を回転させることによる、該収容されたセグメント端部のツイスト加工を、上記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれについて順次行うことにより、全ての上記層のセグメント端部をツイストし、上記ツイスト治具のうち、所定の層と対応する第1ツイスト治具を用いた上記ツイスト加工は、上記所定の層における複数のセグメント端部のうち特定のセグメント端部の上記径方向の位置を、該特定のセグメント端部が上記第1ツイスト治具のいずれの上記収容部にも収容されないように、上記所定の層の他のセグメント端部と異なる位置にずらした状態で行うものである。
【0014】
このようなコイルセグメント加工方法において、記第1ツイスト治具を用いた上記ツイスト加工の前に、上記特定のセグメント端部を、押し退け部材により選択的に、上記第1ツイスト治具を用いた上記ツイスト加工の際に少なくとも上記第1ツイスト治具と干渉しない位置へ押し退けるようにしてもよい。
【0015】
上記特定のセグメント端部を、上記押し退け部材と異なるずらし部材により上記径方向へ移動させてから、上記押し退け部材による押し退けを行うようにしてもよい。
【0016】
コイルセグメント加工方法が、上記第1ツイスト治具の収容部に上記セグメント端部を収容するよりも前に、該第1ツイスト治具を含むツイスト治具ユニットでツイスト加工される各層のセグメント端部と、他の各層のセグメント端部との間の、上記径方向の間隔を拡げる工程を含み、該拡げる工程で上記セグメント端部に干渉して上記セグメント端部を移動させる部材を、上記ずらし部材として用いてもよい。
【0017】
上記所定の層を、上記複数の層のうち、上記径方向における最も外側の層及び/又は最も内側の層としてもよい。
【0018】
上記複数の層のうち上記径方向における最も内側の層に、該最も内側の層の他のセグメント端部よりも上記コア端面からの突出長さが大きい第1長尺セグメント端部が存在し、上記複数の層のうち上記径方向における最も外側の層に、該最も外側の層の他のセグメント端部よりも上記コア端面からの突出長さが大きい第2長尺セグメント端部が存在し、上記最も内側の層の上記ツイスト加工は、上記最も内側の層と対応する第1ツイスト治具を用いて、上記第1長尺セグメント端部と上記最も内側の層における他のセグメント端部とを共に同じ向きにツイストするように行い、上記最も外側の層の上記ツイスト加工は、上記第2長尺セグメント端部の上記径方向の位置を、上記最も外側の層の他のセグメント端部と異なる位置にずらした後、上記最も外側の層と対応する第2ツイスト治具を用いて、上記最も外側の層における上記他のセグメント端部を上記最も内側の層のセグメント端部と逆向きにツイストし、その後、上記第2ツイスト治具と異なる第3ツイスト治具を用いて上記第2長尺セグメント端部を上記最も内側の層のセグメント端部と同じ向きにツイストして、上記第2長尺セグメント端部を上記第1長尺セグメント端部にほぼ対向させるように行うようにしてもよい。
【0019】
上記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれに関し、該ツイスト治具ユニットに含まれる上記ツイスト治具の収容部に上記セグメント端部を収容するよりも前に、該ツイスト治具ユニットでツイスト加工される各層のセグメント端部と、他の各層のセグメント端部との間の、上記径方向の間隔を拡げる工程を含むようにしてもよい。
【0020】
上記複数のツイスト治具ユニットが、移動可能に支持されたユニットホルダにそれぞれ保持され、上記複数のツイスト治具ユニットのそれぞれについての上記ツイスト加工を行う時に、上記ユニットホルダを移動させて、上記複数のツイスト治具ユニットのうち選択された一のツイスト治具ユニットと、該選択された一のツイスト治具ユニットにおける各ツイスト治具を回転させる回転駆動機構とを連結することにより、上記ツイスト加工に用いる上記ツイスト治具ユニットを交換するようにしてもよい。
【0021】
また、本発明のコイルセグメント加工装置は、ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各上記コイルセグメントの上記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が上記コアの径方向に複数の層を形成するように上記スロットに挿入された複数のコイルセグメントを加工するコイルセグメント加工装置であって、上記複数の層のうち上記径方向で隣り合う層であって上記複数の層の総数よりも少ない数の層の各々に対応する、それぞれ対応する層のセグメント端部を収容する収容部を備えるツイスト治具が同心円状に配置されたツイスト治具ユニットを複数と、上記複数のツイスト治具ユニットの中から任意に選択された一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、該各ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容するように、上記一のツイスト治具ユニット及び/又は上記コイルセグメントが挿入されている上記コアを移動させる駆動機構と、上記複数のツイスト治具ユニットから任意に選択されたツイスト治具ユニットに連結可能であって、該連結されたツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具を、それぞれ上記径方向に隣接するツイスト治具と異なる向きに回転させる回転駆動機構と、上記駆動機構により上記複数の層のうち所定の層のセグメント端部を該所定の層と対応する第1ツイスト治具の収容部に収容する場合でも、上記所定の層の複数のセグメント端部のうち特定のセグメント端部が上記第1ツイスト治具のいずれの収容部にも収容されないように、上記特定のセグメント端部を選択的に上記第1ツイスト治具に干渉しない位置へ押し退ける押し退け部材とを備える。
【0022】
このようなコイルセグメント加工装置が、上記回転駆動機構と上記駆動機構を制御して、上記一のツイスト治具ユニットが備える各ツイスト治具の収容部に、その各ツイスト治具と対応する層のセグメント端部を収容した状態でその各ツイスト治具を回転させてその収容したセグメント端部をツイスト加工する制御部を備えていてもよい。
【0023】
上記所定の層が、上記複数の層のうち、上記径方向で最も外側の層及び/又は最も内側の層であってもよい。
【0024】
上記複数のツイスト治具ユニットをそれぞれ保持し、移動可能に支持されたユニットホルダを有し、該ユニットホルダの移動によって、上記複数のツイスト治具ユニットから選択された一のツイスト治具ユニットが上記回転駆動機構に連結されるようにしてもよい。
【0025】
上記回転駆動機構と上記複数のツイスト治具ユニットのうち一方に凹部が、該一方と連結される上記回転駆動機構又は上記複数のツイスト治具ユニットに、上記凹部に嵌合する凸部が設けられ、上記ユニットホルダの移動に伴う上記凹部と上記凸部との嵌合により、上記回転駆動機構から、上記回転駆動機構と連結されたツイスト治具ユニットへ回転駆動力が伝達されるようにしてもよい。
【0026】
上記複数のツイスト治具ユニットのうち少なくとも一つのツイスト治具ユニットにおいて、該ツイスト治具ユニットが備える1つのツイスト治具の軸が、該ツイスト治具ユニットが備える他のツイスト治具の軸を貫通していてもよい。
【0027】
1つのツイスト治具ユニットでツイスト加工される層数毎に、上記径方向の層間を拡げる層間拡げ機構を有していてもよい。
【0028】
上記層間拡げ機構が、上記各スロットに対応して放射状に配置され、上記径方向に一体的に移動可能であって、対応するスロットに挿入されているセグメント端部に干渉して該セグメント端部を移動させる、複数の捌き部材を有していてもよい。
【0029】
また、本発明のコイルセグメントの接続構造は、ステータ及び/又はロータのコアと、上記コアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各上記コイルセグメントの上記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が上記コアの径方向に複数の層を形成するように上記スロットに挿入された複数のコイルセグメントとを備え、各上記コイルセグメントにおいて、上記スロットに挿入されている2つのスロット挿入部とそれらを接続する渡り部とが略U字形状をなしており、上記複数の層のうち第1の層及び第2の層にある上記セグメント端部がそれぞれ、上記コアの周方向にツイストされた第1セグメント端部と、前記コアの周方向にツイストされておらず上記コアの軸心方向に延びる第2セグメント端部とを含み、上記径方向にほぼ対向する上記第1の層の第2セグメント端部と上記第2の層の第2セグメント端部とが導体で接続されているものである。
【0030】
また、本発明の別のコイルセグメントの接続構造は、ステータ及び/又はロータのコアと、上記コアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントであって各上記コイルセグメントの上記コアの端面から突出した端部であるセグメント端部が上記コアの径方向に複数の層を形成するように上記スロットに挿入された複数のコイルセグメントとを備え、各上記コイルセグメントにおいて、上記スロットに挿入されている2つのスロット挿入部とそれらを接続する渡り部とが略U字形状をなしており、上記セグメント端部が、短尺セグメント端部と、同じ層の短尺セグメント端部よりも上記コアの端面からの突出長さが大きい長尺セグメント端部とを含み、上記複数の層のうち第1の層にある第1長尺セグメント端部が、上記コアの周方向に、上記第1の層にある短尺セグメント端部と同じ向きにツイストされており、上記複数の層のうち上記第1の層と異なる第2の層にある第2長尺セグメント端部が、上記コアの周方向に、上記第1長尺セグメント端部と同じ向きで上記第2の層にある短尺セグメント端部と逆向きにツイストされて、上記径方向から見て上記第2の層にある短尺セグメント端部の一部と交差しおり、上記第1長尺セグメント端部と、上記第2長尺セグメント端部とが、互いに上記径方向にほぼ対向する位置にあって導体で接続されているものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ステータ又はロータのコアのスロットに挿入された複数のコイルセグメントの、コア端面から突出して複数の層を形成するセグメント端部を、精度よくツイスト加工できるようにすることができる。合わせて、信頼性の高い回転電機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の第1の実施形態におけるコイルツイスト装置によるツイスト加工の手順例を示す図で、(a)、(c)、(e)は各手順で使用するツイスト治具ユニットの平面図、(b)、(d)、(f)はこれらに対応した断面図である。
図2】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置のツイスト治具を示す分解斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態におけるコイルツイスト装置にセットされたワークの要部を示す斜視図で、ツイスト加工前の状態を示す図である。
図4】第1の実施形態におけるワークのコイルセグメントの高さが径方向で異なることを説明するための模式図である。
図5】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置で図3に示したワークの内側の2層をツイストした状態を示す斜視図である。
図6】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置の概要正面図である。
図7】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置の概要側面図である。
図8】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置の概要平面図である。
図9】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置の回転駆動機構とツイスト治具ユニットとの嵌合に関する構成を示す要部斜視図である。
図10】第1の実施形態におけるコイルツイスト装置に備えられた層間拡げ部材の要部斜視図である。
図11A図10で示した層間拡げ部材による捌き動作を示す図で、捌き部材を位置合わせした状態を示す図である。
図11B図11Aの続きの、捌き部材を径方向外側に移動させて第1、2層と第3、4層との間を押し拡げた状態を示す図である。
図11C図11Bの続きの、捌き部材を径方向外側に移動させて第3、4層と第5、6層との間を押し拡げた状態を示す図である。
図12】第1実施形態におけるコイルツイスト装置の制御部の構成を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る電源線の接続構造の一例を示す斜視図である。
図14】第2の実施形態で用いるツイスト治具と押し退け部材を示す図で、セグメント端部を挿入する前の状態を示す概要断面図である。
図15】第2の実施形態で用いるツイスト治具と押し退け部材を示す図で、セグメント端部を挿入した状態を示す概要断面図である。
図16】第2の実施形態のツイスト加工後の状態を示すコア外側からの要部斜視図である。
図17】第2の実施形態のツイスト加工後の状態を示すコア内側からの要部斜視図である。
図18】第2の実施形態の変形例に係る電源線の接続構造を示す斜視図である。
図19】第2の実施形態の変形例におけるツイスト加工後の状態を示すコア内側からの要部斜視図である。
図20】第2の実施形態の変形例におけるツイスト加工後の状態を示すコア外側からの要部斜視図である。
図21】第2の実施形態におけるずらし部材の他例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。まず、図1図11Cに基づいて第1の実施形態を説明する。
【0034】
コイルセグメント加工装置の一実施形態である、後述するコイルツイスト装置によるツイスト加工の対象の一例は、図3に示すように、ステータ(以下、「ワーク」ともいう)72のスロット72bに絶縁紙79を介して挿入されたU字形状のコイルセグメントのうち、コア72aの端面から突出した部分、即ちセグメント端部12p群である(セグメント端部の個体を特定しない場合には「12p」の符号を用いる)。
【0035】
ここで用いる各コイルセグメントは、スロット72bに挿入するための2つの直線状のスロット挿入部をクランク状に折れ曲がった渡り部で接続したU字形状である。図3の状態では、その各スロット挿入部はそれぞれ異なるスロット72bに挿入されており、各スロット挿入部のうちコア72aの端面から突出した端部であるセグメント端部12pが、コア72aの径方向に複数の層(ここでは6層)を形成している。この「層」のことを、以下「セグメント層」とも呼ぶ。1つのコイルセグメントが備える2つのセグメント端部12pがそれぞれ異なるセグメント層に属する場合もある。
【0036】
図3において、12p1は最も内側の層のセグメント端部を、12p6は最も外側の層のセグメント端部を示している。この例ではコイルセグメントの層が6層の例を示しているが、本発明はこれに限定されない。本実施形態のコイルセグメント加工方法では、内側の層から順にコア72aの径方向に隣り合う2層ずつをそれぞれ別個のツイスト治具ユニットでツイスト加工し、6層の場合全体として合計3回のツイスト加工を行うものである。
即ち、複数の層全体に亘ってツイスト治具ユニットを交換しながら複数回のツイスト加工を行い、全ての層のセグメント端部をツイストするものである。
【0037】
上述のように、複数のセグメント層(ここでは6層)が同心円状に広がるコイル構成では、周方向におけるセグメントの配置数は各層で同じであるため、径方向内側の層と外側の層とでは周方向のセグメント間の間隔が異なる。
このため、異なる層でのセグメント端部間のツイスト後の接合を可能とするためには、径方向の外側に行く程、コア端面からのセグメント端部の突出量(高さ)を大きくしなければならない。
【0038】
図4に示すように、最も内側のセグメント層12L1とこれに隣り合うセグメント層12L2の高さの差はhであるが、最も内側のセグメント層12L1と最も外側のセグメント層12L6との高さの差はHで例えばhの約5倍程度となる。なお、以下の説明において、セグメント層12Lnを、「第n層」とも呼ぶ。
セグメント層12L1~12L6に対してツイスト加工を行う場合、セグメント層12L1、12L3、12L5を同じ向きに同期回転し、セグメント層12L2、12L4、12L6を上記とは逆向きに同期回転させて全ての層を同時にツイストすることも考えられる。
【0039】
このようなツイスト加工は、ワークをツイスト治具に向かって上昇させながらツイスト治具を回転させることにより行うことができるが、上述のように、ツイスト特性はセグメント端部の突出量の違いによって異なるため、この方式では、全層において良好なツイスト精度は得られない。
なお、図4では各層のセグメント端部を一部の範囲でしか表示していない。また、分かり易くするために層間の幅を大きくしている。各セグメント端部12p1~12p6の上端部(白抜き部分)は絶縁被膜を剥離した剥離部を示している。各コイルセグメントのうちこの剥離部以外は、絶縁被膜に覆われている。絶縁が可能であれば、被膜以外の部材を用いてもよい。
【0040】
図4に示すように、コアの径方向で隣り合う層間におけるセグメント端部の高さの差hは極めて小さく、これらの層を同時にツイストしても高さの違いによるツイスト精度への影響は殆どないと言える。
本発明はこの点に着目し、セグメント端部間の高さの相違による影響が極めて少ないツイスト加工を複数回に分けて全ての層に亘って行うこととし、ある程度の手間は掛かっても結果的にツイスト精度の向上、ひいては製造したコイルを含むモータの出力向上を図っている。
【0041】
本実施形態では、コアの径方向で隣り合う2つの層を1組として3回のツイスト加工を行う。従って、最初に最も内側のセグメント層12L1とこれに隣り合うセグメント層12L2のツイスト加工を、同時に且つコアの径方向で隣り合う層と逆向きとなるように行う。
このツイスト加工後の状態を図5に示す。次に後述するようにツイスト治具ユニットを径(D1~D6)が異なる別個のツイスト治具ユニットに交換してセグメント層12L3とこれに隣り合うセグメント層12L4のツイスト加工を同時に且つコアの径方向で隣り合う層と逆向きとなるように行う。次に、同様にツイスト治具ユニットを径が異なる別個のツイスト治具ユニットに交換してセグメント層12L5とこれに隣り合うセグメント層12L6のツイスト加工を同時に且つコアの径方向で隣り合う層と逆向きとなるように行う。
【0042】
図1を参照して上記3回のツイスト加工を具体的に説明する。図1の(a)、(b)に示すように、最初にツイスト治具ユニット28Aを用いてセグメント層12L1とこれに隣り合うセグメント層12L2を同時に且つ互いに逆向きにツイスト加工する。
ツイスト治具ユニット28Aは、最も内側のセグメント層12L1のセグメント端部12p1が挿入される、セグメント層12L1と対応した内側ツイスト治具50と、セグメント層12L2のセグメント端部12p2が挿入される、セグメント層12L2と対応した外側ツイスト治具51とを有している。
【0043】
内側ツイスト治具50は、図2に示すように、円筒形状であり、上面50aには後述するツイスト治具ユニット28Aの本体に内側ツイスト治具50を固定するための複数の取付用孔50bと、回転軸の挿通孔50cが形成されている。
内側ツイスト治具50の下端部の外周面には、セグメント層12L1の各セグメント端部12p1の挿入を受け入れる収容部としての挿入溝50dが周方向に等間隔にセグメント数と同数形成されている。
【0044】
外側ツイスト治具51は内側ツイスト治具50の外面に嵌合する円筒形状を有し、上端には外側ツイスト治具51をツイスト治具ユニット28Aの本体に固定するためのフランジ部51aが形成されている。フランジ部51aには周方向に等間隔に複数の取付用孔51bが形成されている。
外側ツイスト治具51の内周面には、セグメント層12L2の各セグメント端部12p2の挿入を受け入れる収容部としての挿入溝51cが周方向に等間隔にセグメント数と同数形成されている。
【0045】
内側ツイスト治具50の挿入溝50dに対するセグメント層12L1のセグメント端部12p1の挿入(収容)及び外側ツイスト治具51の挿入溝51cに対するセグメント層12L2のセグメント端部12p2の挿入(収容)は、ツイスト治具ユニット28A及び/又はワーク72を移動させることによる、ツイスト治具ユニット28Aとワーク72との間の相対的な接近移動により可能である。
本実施形態では、後述するリフト機構によりワーク72を上昇させ、上側で固定されたツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50及び外側ツイスト治具51に各セグメント端部12p1、12p2を挿入する方式を採用している。即ち、軽量構成側を移動させてエネルギーの省力化を図っている。
【0046】
ツイスト加工は、ワーク72を上昇させながら内側ツイスト治具50と外側ツイスト治具51を回転させながら行う。すなわち、ツイスト治具ユニット28Aは後述する回転駆動機構に接続されて回転駆動力を伝達され、図1の(a)に示すように、内側ツイスト治具50は例えば時計回り(矢印R1方向)に、外側ツイスト治具51は逆方向の反時計回り(矢印R2方向)に回転駆動される。このことにより、セグメント層12L1の各セグメント端部12p1とセグメント層12L2の各セグメント端部12p2がそれぞれ逆方向にツイストされる。
【0047】
セグメント層12L1とセグメント層12L2のセグメント端部のツイスト加工が完了すると、図1の(c)、(d)に示すように、セグメント層12L3とこれに径方向外側で隣接するセグメント層12L4のセグメント端部のツイスト加工をすべく、回転駆動機構に接続されていたツイスト治具ユニット28Aを、セグメント層12L3とセグメント層12L4の組に対応したツイスト治具ユニット28Bに交換し、上記と同様のツイスト加工を行う。
【0048】
ツイスト治具ユニット28Bは、ツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50よりも径の大きい内側ツイスト治具52と、ツイスト治具ユニット28Aの外側ツイスト治具51よりも径の大きい外側ツイスト治具53とを有している。
内側ツイスト治具52及び外側ツイスト治具53は、径が異なるだけで上記の内側ツイスト治具50及び外側ツイスト治具51と同様な構造である。セグメント層12L3のセグメント端部12p3が内側ツイスト治具52の挿入溝に挿入され、セグメント層12L4のセグメント端部12p4が外側ツイスト治具53の挿入溝に挿入される。
この状態で内側ツイスト治具52が時計回り(矢印R1方向)に回転駆動され、外側ツイスト治具53が反時計回り(矢印R2方向)に回転駆動される。このことによりセグメント層12L3のセグメント端部12p3とセグメント層12L4のセグメント端部12p4がそれぞれ逆方向にツイストされる。
【0049】
セグメント層12L3とセグメント層12L4のセグメント端部のツイスト加工が完了すると、図1の(e)、(f)に示すように、セグメント層12L5とセグメント層12L6のセグメント端部のツイスト加工をすべく、回転駆動機構に接続されていたツイスト治具ユニット28Bを、セグメント層12L5とセグメント層12L6の組に対応したツイスト治具ユニット28Cに交換し、上記と同様のツイスト加工を行う。
【0050】
ツイスト治具ユニット28Cは、ツイスト治具ユニット28Bの内側ツイスト治具52よりも径の大きい内側ツイスト治具54と、ツイスト治具ユニット28Bの外側ツイスト治具53よりも径の大きい外側ツイスト治具55とを有している。
内側ツイスト治具54及び外側ツイスト治具55も、径が異なるだけでツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50及び外側ツイスト治具51と同様な構造である。セグメント層12L5のセグメント端部12p5が内側ツイスト治具54の挿入溝に挿入され、最外のセグメント層12L6のセグメント端部12p6が外側ツイスト治具55の挿入溝に挿入される。
この状態で内側ツイスト治具54が時計回り方向(矢印R1方向)に回転駆動され、外側ツイスト治具55が反時計回り方向(矢印R2方向)に回転駆動される。このことによりセグメント層12L5のセグメント端部12p5とセグメント層12L6のセグメント端部12p6がそれぞれ逆方向にツイストされる。
【0051】
上記のように、本実施形態では、コアの径方向で隣り合う、層の総数よりも少ない数(ここでは2つ)のセグメント層のみを同時にツイスト加工するので、セグメント端部の高さの相違の影響をあまり受けずに、各回のツイスト加工でツイストするセグメント層に合った最適な条件で、全セグメント層のツイスト加工を行うことができる。セグメント層毎の好適な条件は、予め実験等により定めてコイルツイスト装置に設定しておけばよい。同時にツイスト加工する層数が少ないほど、セグメント端部の高さの相違の影響を小さくすることができる。
即ち、コイルによっては径方向に最も内側のセグメント層と最も外側のセグメント層との間のセグメント端部の高さの相違が極めて大きい場合もあるが、そのような場合でも良好なツイスト加工を行うことができる。このことは、換言すれば、セグメント端部の高さ調整が可能であることを意味する。
【0052】
図1の方式は、複数回のツイスト治具ユニットの交換が必要であるため、全層を同時にツイストする方式に比べて手間は要するが、ツイスト加工の精度、ひいては製造したコイルを含むモータ出力を向上させることができる。ツイスト精度への影響が少ない場合には、1つのツイスト治具ユニットが3つ以上のツイスト治具を備えた構成としてもよい。即ち、3層以上毎にツイスト治具ユニットを交換しながらツイスト加工を行うようにしてもよい。逆に、1つのツイスト治具ユニットが1つのみのツイスト治具を備えた構成でもよい。さらにツイスト治具ユニット毎に、備えるツイスト治具の数が異なっていてもよい。即ち、2層をツイスト加工した後に4層をツイスト加工するといった構成も採り得る。
【0053】
また、図1の方式は、全層を同時にツイストする方式に比べて、1つのツイスト治具ユニットにおけるツイスト治具の数を少なくしているので、各ツイスト治具の厚みを大きくすることができツイスト加工時の負荷に対する強度を向上させることもできる。
即ち、全層を同時にツイストする方式では軽量化及び駆動源の出力との関係から各ツイスト治具は薄肉とならざるを得ず、ツイスト治具の強度を十分確保できない懸念があるが、本発明ではこれを解消することができる。
【0054】
以下に、本実施形態のコイルツイスト装置におけるツイスト治具の回転駆動に関する構成等を詳細に説明する。
【0055】
まず、図6図9を参照して本実施形態のコイルツイスト装置15の構成の概要を説明する。図6は正面図、図7は側面図、図8は平面図である。
コイルツイスト装置15は、基台としての長方形状のベース16と、ベース16上の手前側の左右に配置され上下方向に延びる2本の支柱17と、ベース16の奥側に配置され上下方向に延びる垂直プレート18と、これらの支柱17及び垂直プレート18によってベース16の上方に水平に支持された天板19と、天板19上に配置された回転駆動機構20と、セグメント端部が上向きに突出した状態で載置されたワークを昇降させるリフト機構21と、複数種類のツイスト治具ユニットを備えたツイスト治具交換ユニット22と、ツイスト治具にワークのセグメント端部を挿入する前に、コイルセグメントの各層の間(ここでは2層毎の層間)を拡げてセグメント端部をツイスト治具に挿入され易くする層間拡げ部材23等を有している。
ベース16の四隅及び長手方向の中央部には、高さ調整用のボルトネジ43が設けられており、ベース16の上面の傾きを調整できるようになっている。
【0056】
回転駆動機構20は、図7に示すように、天板19の下面側に嵌合凸部24が突出するように天板19上に固定された同心2軸構成の駆動機構部25と、嵌合凸部24を備えた内側軸部材を回転させる第1の駆動源としての内側用サーボモータ26と、外側軸部材を回転させる第2の駆動源としての外側用サーボモータ27(図6参照)とを有している。
ツイスト治具交換ユニット22は、複数のツイスト治具ユニット28A、28B、28C及び28Dと、これらを一体に支持した長板形状のユニットホルダ29と、ユニットホルダ29を水平に円滑にスライドさせるリニアモーションガイド30とを有している。
リニアモーションガイド30は、天板19の下面に2列に固定された4つの支持ブロック31と、該支持ブロック31間に橋渡し状態に固定されたリニアガイド32と、ユニットホルダ29の上面に固定され、リニアガイド32内を摺動する2本のレール部材48とを有している。
【0057】
各ツイスト治具ユニット28A、28B、28C及び28Dの上面には、嵌合凸部24に嵌合する嵌合凹部33が形成されている。ユニットホルダ29をスライドさせて所定の位置で止めると、ツイスト治具ユニット28A、28B、28C及び28Dのうちのいずれかの嵌合凹部33が嵌合凸部24に嵌合し、所望のツイスト治具ユニットと対応する位置でユニットホルダ29を止めることにより、該ツイスト治具ユニットと回転駆動機構20とが連結され、該ツイスト治具ユニットを構成する各ツイスト治具に回転駆動機構20の回転が伝達可能となる。
各ツイスト治具ユニット28A、28B、28C及び28Dに対応してユニットホルダ29にはロックピン35の挿通孔34aを有する位置決め用プレート34が固定されている。
【0058】
装置正面の手前側には天板19に固定されたブラケット44にロックピン35が設けられており、ツイスト治具ユニット28A、28B、28C、28Dのうちのいずれかが所定位置に設定された場合、ロックピン35を該ツイスト治具に対応した位置決め用プレート34の挿通孔34aに挿通することにより、該所定位置に設定されたツイスト治具ユニットは、セグメント端部に対するツイスト加工が可能な位置でロックされる。
【0059】
図6に示すように、ユニットホルダ29の長手方向(図中左右方向)の両端にはユニットホルダ29をスライドさせるための取っ手45が取り付けられており、本実施形態におけるツイスト治具交換ユニット22は手で押してツイスト治具ユニットを交換する手動方式となっている。
図6はツイスト治具ユニット28Aがツイスト加工可能な所定位置にセットされた状態を示している。この状態から例えば左端のツイスト治具ユニット28Dに交換する場合、ツイスト治具ユニット28Dが図6でツイスト治具ユニット28Aがある位置に来るまでユニットホルダ29を図6の右側に移動させるため、この状態ではユニットホルダ29はコイルツイスト装置15の本体から図6の右側に突出することになる。
【0060】
ツイスト治具ユニットの交換は、重量物であるツイスト治具ユニット自体を取り外して入れ替えるものではなく、上記のようにロックピン35を外して複数のツイスト治具ユニット28A、28B、28C及び28Dを支持したユニットホルダ29を摺動抵抗の少ないリニアモーションガイド30を介してスライドさせ、回転駆動機構20の嵌合凸部24とツイスト治具側の嵌合凹部33とを嵌合させるだけの簡単で且つ労力の少ない操作で済むようになっている。
ユニットホルダ29を位置制御できるサーボモータ等の駆動源により所定量スライドさせ、ソレノイド等の手段でロックピンを挿入して位置決めする自動化構成としてもよい。
【0061】
回転駆動機構20における回転駆動力の同心2軸構造を介した伝達に関する構成を簡単に説明する。
回転駆動機構20においては、内側用サーボモータ26により上下方向に延びる内側回転軸(2軸の一方)が減速機構等を介して回転駆動され、外側用サーボモータ27により外側回転軸(2軸の他方)が減速機構等を介して回転駆動される。
内側回転軸と外側回転軸の下端には嵌合凸部24を構成する凸部がそれぞれ個別に形成されている。
【0062】
ツイスト治具ユニット28Aは、内側回転軸の回転が伝達される内筒と、外側回転軸の回転が伝達される外筒とを有し、内筒と外筒の上端には嵌合凹部33を構成する凹部がそれぞれ個別に形成されている。内筒は外筒の内部を貫通しており、内筒の下端にはツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50が取り付けられ、外筒の下端にはツイスト治具ユニット28Aの外側ツイスト治具51が取り付けられる。
従って、内側用サーボモータ26によって内側ツイスト治具50を内筒を軸としてある方向に回転させると共に、外側用サーボモータ27によって外側ツイスト治具51を外筒を軸として逆方向に回転させることができる。他のツイスト治具ユニット28B、28C、28Dについても同様である。
【0063】
図9を参照して、回転駆動機構20とツイスト治具ユニット28Aとの間の凹凸嵌合による連結に関する構成を説明する。
上記内側回転軸の下端には、直方体状の1つの内側嵌合凸部24aが内側回転軸と一体に形成され、上記外側回転軸の下端には、径方向で対向する位置に一対の外側嵌合凸部24bが外側回転軸と一体に形成されている。1つの内側嵌合凸部24aと2つの外側嵌合凸部24bとが一列に配列されることにより、回転駆動機構20側の嵌合凸部24が構成される。符号58aは内側回転軸の下端面を示している。
【0064】
ツイスト治具ユニット28Aの内筒62の上端には、内側嵌合凸部24aと対応する径方向の位置に、内側嵌合凸部24aに嵌合する1対の内側嵌合凹部62aが設けられている。
ツイスト治具ユニット28Aの外筒63の上面には、外側嵌合凸部24bと対応する径方向の位置に外側嵌合凸部24bに嵌合する1対の外側嵌合凹部63aが設けられている。
2つの内側嵌合凹部62aと2つの外側嵌合凹部63aとが一列に配列されることにより、ツイスト治具ユニット28A側の嵌合凹部33が構成される。他のツイスト治具ユニット28B、28C及び28Dについても同様である。
本実施形態では回転駆動機構側に嵌合凸部を、ツイスト治具ユニット側に嵌合凹部を設ける構成としたが、逆に、回転駆動機構側に嵌合凹部を、ツイスト治具ユニット側に嵌合凸部を設けてもよい。
【0065】
層間拡げ部材23は、図10及び図11A乃至図11Cに示すように、水平面内に放射状に配置された複数のロッド状の捌き部材74を備え、これらを同時にコアの径方向及び上下方向(軸方向)に移動させて、ツイスト工程の前にコイルセグメントの層間を2層ずつ毎押し拡げるための部材である。
コイルツイスト装置15の昇降テーブル36(図6参照)に初めに載置された時の、各コイルセグメントをスロット72bに挿入した直後の状態では、各層のセグメント端部は径方向で近接しており、そのままの状態でツイスト治具の挿入部にセグメント端部を挿入しようとすると、隣接するセグメント端部が邪魔をして挿入できない虞がある。この点に対処するために層間拡げ部材23が設けられている。
【0066】
図10に示すように、各捌き部材74は、これらを同時に径方向に移動させる駆動源への連結軸74aと、径方向の内側先端部に形成された凹部74bと、挿通孔74cとを備えている。
各捌き部材74は連結軸74aを介して不図示のカム部材に連結されており、該カム部材が駆動源により回転すると、複数の捌き部材74が径方向(X方向)に同時に移動するようになっている。また、各捌き部材74は後述の機構により一体に上下方向(Z方向;セグメント端部の長手方向)に移動可能となっている。
【0067】
図11A乃至図11Cを参照して層間拡げ部材23による捌き動作を説明する。この捌き動作においてはまず、図11Aに示すように、各捌き部材74の上下方向の高さと径方向の位置を調整して、挿通孔74cにセグメント層12L3のセグメント端部12p3、セグメント層12L4のセグメント端部12p4、セグメント層12L5のセグメント端部12p5及びセグメント層12L6のセグメント端部12p6が挿入された状態とする。
【0068】
次に、図11Bに示すように、各捌き部材74を径方向外側に移動させ、さらにそのまま下降させて、セグメント層12L1及びセグメント層12L2と、セグメント層12L3及びセグメント層12L4との間を押し拡げる。このとき、各捌き部材74は、下降に連れてセグメント層12L3のセグメント端部12p3に干渉し、セグメント端部12p3を径方向外側に移動させる。そして、セグメント端部12p3が、さらに外側のセグメント層のセグメント端部12p4~12p6を径方向外側に移動させる。
仮に各捌き部材74の底面(図で下側の面)がセグメント層12L1及びセグメント層12L2のセグメント端部の先端より下側まで下降したとしても、これらのセグメント層のセグメント端部は、凹部74bに収まるため、捌き部材74と干渉することはない。拡げ幅Wは、押し拡げた後の戻り(スプリングバック)を考慮してツイスト治具の挿入部(孔や溝等)に確実に挿入できる大きさである。
図11Cに示すように、第5層及び第6層についても上記と同様の動作で押し拡げることができる。
【0069】
層間拡げ部材23による層間隙間形成の動作は、以下に説明するリフト機構21でワークを上昇させてそのセグメント端部をツイスト治具に対向させた後に行われる。
層間拡げ部材23により捌き処理(層間隙間形成)を行うことにより、一のツイスト治具ユニットでツイスト処理を行う2層毎に層間がコアの径方向に離間し、各ツイスト治具ユニットへのセグメント端部の挿入が高精度となる。
これにより、径方向で各層のセグメント端部が密接している場合に比べ、ツイスト治具に対するセグメント端部の位置合わせの煩雑さや面倒さを低減し、ツイスト工程における作業能率の向上を図ることができ、ひいては回転電機の製造効率の向上に寄与することができる。
【0070】
図6及び図7に示すように、リフト機構21は、ワークを載置する昇降テーブル36と、該昇降テーブル36を昇降させる駆動源としてのサーボモータ37と、サーボモータ37の回転を昇降テーブル36の支持軸36aの上下移動に変換する駆動力変換部49と、垂直プレート18に設けられ、昇降テーブル36の昇降をガイドするリニアモーションガイド38とを有している。
リニアモーションガイド38は、垂直プレート18の前面側に互いに平行に固定され、上下方向に延びる2本のレール39と、該レール39上を摺動するスライダ40とを有している。昇降テーブル36はスライダ40に支持されている。
【0071】
図7における符号41で示す部材は、ワークを載せたパレットをリフト機構21の昇降テーブル36に載せるためのパレット搬送ガイドであり、図8に示すように、両側に複数のローラ42を有しており、ワークを載せたパレットを昇降テーブル36側(矢印T方向)へ円滑に移動できるようになっている。
昇降テーブル36にもパレット搬送ガイド41のローラ42と高さが略一致する複数のローラが両側に設けられており、パレットをパレット搬送ガイド41から昇降テーブル36へ円滑に移動できるようになっている。
【0072】
コイルツイスト装置15によりコイルセグメントにこの発明のコイルセグメント加工方法の実施形態に係る加工を行う場合、不図示のコイル組立装置で組み立てられた、コイルセグメントをスロットに挿入されたワーク72を、コイルツイスト装置15の外部でパレットに載置された状態で台車に載せ、パレットと共にパレット搬送ガイド41に受け渡す。
ワーク72が所定位置に設定されると、サーボモータ37が回転し昇降テーブル36が上昇する。昇降テーブル36が所定位置に達すると、層間拡げ部材23による層間隙間形成動作が開始される。
【0073】
層間隙間形成動作が終了すると、昇降テーブル36が所定距離上昇し、図1(a)で示したように、最も内側のセグメント層12L1とこれに隣り合うセグメント層12L2のセグメント端部がツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50と外側ツイスト治具51の挿入溝に挿入され、上述のツイスト加工が実施される。
続いて隣り合うセグメント層12L3とセグメント層12L4、セグメント層12L5とセグメント層12L6の組がそれぞれツイスト加工される。ツイスト加工が終了すると、昇降テーブル36が下降し、加工済みのワークが取り出される。
【0074】
次に、図12に、以上のコイルツイスト装置15を制御する制御部の構成を示す。コイルツイスト装置15は、オペレータが各サーボモータ等のオンオフや駆動方向をスイッチ等により直接操作する構成でもよいが、加工手順を予めプログラムしておき、自動制御で上述の加工を行うことができるようにしてもよい。図12に示すのは、この自動制御のための制御部である。
【0075】
図12に示す制御部は、少なくとも、内側用サーボモータ26、外側用サーボモータ27、サーボモータ37、捌き部材74を駆動する捌き部材駆動源98等の、コイルツイスト装置15が備える各種駆動源の動作を制御する機能を備え、CPU91、不揮発メモリ92、RAM93、操作部I/F94、操作部95、駆動部I/F96、通信I/F97と、システムバス99を備える。
【0076】
CPU91は、RAM93をワークエリアとして、不揮発メモリ92に記憶されたプログラムを実行することにより、不揮発メモリ92に記憶されたパラメータ及び操作部95においてなされたオペレータの操作に従い各種駆動源の動作を制御するプロセッサである。
操作部95は、キー、ボタン、タッチパネル等、オペレータの操作を受け付けるユニットである。操作部I/F94は、操作部95においてなされた操作を示す信号をCPU91に供給する。
駆動部I/F96は、CPU91からの指示に従い各種駆動源に制御信号を供給するためのインタフェースである。
通信I/F97は、外部の装置と通信を行うためのインタフェースである。
【0077】
以上のCPU91が実行するプログラムには、上述した捌き処理やツイスト加工の手順を規定するプログラムも含まれる。不揮発メモリ92に記憶されるパラメータには、ツイスト治具ユニット毎の、セグメント端部をツイスト治具に挿入するためのワーク72(昇降テーブル36)の上昇量及び、ツイスト加工時のワーク72の上昇及び各ツイスト治具の回転の速度及び量(ツイスト特性)、捌き処理のための捌き部材74の移動量等がある。
【0078】
CPU91が、これらのプログラム及びパラメータに従って、駆動部I/F96に対し各種駆動源の動作を指示することにより、コイルツイスト装置15は、ここまでに説明してきような、ワーク72を上昇させながら内側ツイスト治具50と外側ツイスト治具51を回転させながら行うツイスト加工や、層間拡げ部材23(各捌き部材74)による捌き処理を自動的に行うことができる。同様な自動制御は、以下に説明する第2実施形態にも適用可能である。
【0079】
次に、図13図21を参照して第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、既にした構成上及び機能上の説明は適宜省略する。
【0080】
図13に示すように、本実施形態に係る回転電機におけるコイルセグメントの接続構造77Aは、コア72aの端面から突出したセグメント端部が、コア72aの周方向に捻り曲げられた(ツイストされた)接合用のセグメント端部12p1~12p6(第1セグメント端部)と、コア72aの軸心方向に延びる(ツイストされていない)電源線用のセグメント端部12p1s、12p6s(第2セグメント端部)とを含み、コア72aの径方向で対向する電源線用のセグメント端部12p1s、12p6s同士が導体としての端子78で接続されたものである。電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sは周方向の位置が全く同じでなく、周方向にずれて近接していてもよい。
【0081】
特定のセグメント端部としての電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sは、所定の層(ここでは、最も内側のセグメント層12L1と最も外側のセグメント層12L6)にのみ設けられる。
いずれの層においても、電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sは、同じ層にある接合用のセグメント端部12p1、12p6よりもコア端面からの突出長さが大きく、また一部の接合用のセグメント端部12p1、12p6と置き換わるように配置されている。
【0082】
本実施形態におけるツイスト加工は基本的に上述した第1の実施形態と同様であるが、最も内側のセグメント層12L1と最も外側のセグメント層12L6においては押し退け部材を用いたツイスト加工がなされる。
即ち、最も内側のセグメント層12L1では2つの電源線用のセグメント端部12p1sがツイスト治具の回転でツイストされずに残るようにツイスト加工が行われ、最も外側のセグメント層12L6では2つの電源線用のセグメント端部12p6sがツイスト治具の回転でツイストされずに残るようにツイスト加工が行われる。
【0083】
上記の、特定のセグメント端部をツイストしないで残すコイルツイスト方法を以下に説明する。
図14は、この方法で用いられる最も外側のセグメント層12L6及びその内側のセグメント層12L5に対応したツイスト治具ユニット28Cと、押し退け部材80とを示している。ツイスト治具ユニット28Cの内側ツイスト治具54には、セグメント層12L5の接合用のセグメント端部12p5が挿入(収容)される複数の挿入溝(収容部)54aが形成され、これらの挿入溝54aの径方向外側は外側ツイスト治具55の内側面で塞がれている。
外側ツイスト治具55には、セグメント層12L6の接合用のセグメント端部12p6が挿入される複数の挿入溝(収容部)55aが形成され、これらの挿入溝55aの径方向外側は外側リング55bで塞がれている。
【0084】
押し退け部材80は、最も外側のセグメント層12L6に存在する特定のセグメント端部である電源線用のセグメント端部12p6sを挿入する挿入溝81aを有する挿入フレーム81と、挿入フレーム81の挿入溝81aの径方向内側を塞ぐとともに、電源線用のセグメント端部12p6sを外側ツイスト治具55に干渉しない位置に押し退ける湾曲フレーム82とを有している。
【0085】
この実施形態においては、ワーク72をツイスト加工のためにコイルツイスト装置15の昇降テーブル36に配置する際、電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sがワーク72の周方向で特定の位置に来るように、位置合わせをする。そして、押し退け部材80は、外側リング55bの外周のうち、この位置合わせがされた状態で電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sが位置する範囲に設ければよい。多少余裕を持させ、周方向に広めの範囲に設けてもよい。図14及び図15では、図で左側がこの範囲に該当し、右側は該当していない。
【0086】
そして、電源線用のセグメント端部12p6sを図14に示すように若干外側にずらしつつワーク72を上昇させると、図15に示すように、電源線用のセグメント端部12p6sの先端部は湾曲フレーム82に案内されて挿入溝81aに入る。ワーク72をさらに上昇させると、電源線用のセグメント端部12p6sは湾曲フレーム82の形状に沿って押し曲げられ、外側ツイスト治具55に干渉しない位置に押し退けられて、外側ツイスト治具55による残りの接合用のセグメント端部12p6のツイストを阻害しないように保持される。湾曲フレーム82の先端及びセグメント端部12p6sが接する側面は、電源線用のセグメント端部12p6sが傷付かずに押し曲げられるように、滑らかな曲面とするとよい。
【0087】
図15の状態では、接合用のセグメント端部12p5、12p6はそれぞれ挿入溝54a、55aに挿入され、内側ツイスト治具54及び外側ツイスト治具55を回転させて第1実施形態の場合と同様にツイスト加工を行うことができる。
押し退け部材80は、ツイスト治具ユニット28Cとは別個にユニットホルダ29に固定されており、内側ツイスト治具54及び外側ツイスト治具55の回転時にも回転せずに電源線用のセグメント端部12p6sを保持する。押し退け部材80の固定箇所はユニットホルダ29に限定されず、他の固定フレームでもよい。
これにより、図16に示すように、セグメント層12L6においては接合用のセグメント端部12p6のみがツイストされ、電源線用のセグメント端部12p6sは、外側ツイスト治具55の挿入溝55aに挿入されないためツイストされずに残る。即ち、コア72aの軸心方向に延びたままとなる。
【0088】
なお、電源線用のセグメント端部12p6sを外側にずらす処理は、図10に示した層間拡げ部材23をずらし部材として用いて行うことができる。電源線用のセグメント端部12p6sは、同じ層の接合用のセグメント端部12p6よりもコア端面からの突出長さが大きいので、図11A乃至図11Cの捌き動作と同様に、挿通孔74cに電源線用のセグメント端部12p6sのみが挿入されるように各捌き部材74の上下方向の高さと径方向の位置を調整し、その後各捌き部材74を径方向外側に移動させることにより、接合用のセグメント端部12p6に影響を与えずに、電源線用のセグメント端部12p6sを外側にずらすことができる。
【0089】
また、電源線用のセグメント端部12p6sと、同じ層の接合用のセグメント端部12p6とでツイスト前のコア端面からの突出長さが同じ場合でも、他の層の接合用のセグメント端部よりも突出長さが長ければ、電源線用のセグメント端部12p6sが配置される周方向の位置にのみ捌き部材74を設けた、ずらし処理専用の層間拡げ部材を用いれば、上記と同様、接合用のセグメント端部12p6に影響を与えずに、電源線用のセグメント端部12p6sのみを外側にずらすことができる。
【0090】
最も内側のセグメント層12L1についても、同様に接合用のセグメント端部12p1のみツイストし、電源線用のセグメント端部12p1sをツイストせずに残す、即ち、コア72aの軸心方向に延びたままとすることができる。
セグメント層12L1に関しては、セグメント層12L1、12L2に対応したツイスト治具ユニット28Aにおいて、内側ツイスト治具50の内周側に、押し退け部材80と同様な押し退け部材を設ければよい。そして、層間拡げ部材23をずらし部材として用いて、電源線用のセグメント端部12p1sを径方向内側に押圧してずらした上で、押し退け部材により電源線用のセグメント端部12p1sを内側ツイスト治具50に干渉しない位置に(径方向内側へ)押しのけることができる。
このことにより、図17に示すように、最も内側のセグメント層12L1における接合用のセグメント端部12p1のみがツイストされ、電源線用のセグメント端部12p1sはツイストされずに残る。
【0091】
このように、電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sをツイストせずに残すことにより、図13で示したようにコア72aの径方向で対向させることができ、最短距離で端子78により電気的に接続した電源線の接続構造を得ることができる。電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sは、周方向の位置が全く同じでなく、近接しているのみでもよい。
【0092】
電源線用のセグメント端部も接合用のセグメント端部と同様にツイスト加工すると、奇数番目の層の電源線用のセグメント端部と偶数番目の層の電源線用のセグメント端部とは逆向きにツイストされ、ツイスト加工後には周方向の位置が離れてしまうため長い導体を用いて接続する構成とならざるを得ない。しかし、本実施形態の方法・構成によれば、小面積の端子78で簡単に接続することができ、電源線の接続構造が極めて簡単なものとなる。この簡易構造により信頼性の向上にも寄与することができる。
【0093】
ただし、電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sをツイスト治具と干渉しないように押し退け部材80により図15のように径方向に拡げてしまうと、電源線用のセグメント端部は、最も内側のセグメント層12L1では径方向内側に突出し、最も外側のセグメント層12L6では径方向外側に突出することになる。最も内側のセグメント層12L1での内側への突出はコア72aの内径を狭めることになり、回転子の挿入作業が阻害される虞がある。
【0094】
この点に対処した例を図18図20を参照して説明する。図18に示すように、本実施形態に係る回転電機のコイルセグメントの接続構造77Bは、コア72aの端面から突出したセグメント端部が、コア72aの周方向に捻り曲げられた(ツイストされた)接合用のセグメント端部12p1~12p6(短尺セグメント端部)と、最も内側のセグメント層12L1(第1の層)において接合用のセグメント端部12p1と同一向きにツイストされた、接合用のセグメント端部12p1よりも突出長さの大きい2つの電源線用のセグメント端部(第1長尺セグメント端部)12p1s′と、最も外側のセグメント層12L6(第2の層)において接合用のセグメント端部12p6(短尺セグメント端部)とは逆向きにツイストされた、接合用のセグメント端部12p6よりも突出長さの大きい2つの電源線用のセグメント端部(第2長尺セグメント端部)12p6s′とを含む。
電源線用のセグメント端部12p1s′とこれと対向する電源線用のセグメント端部12p6s′は端子78で電気的に接続されている。各層の接合用のセグメント端部12p1~12p6は層毎に交互に逆向きにツイストされている。
【0095】
本実施形態におけるツイスト加工では、最も内側のセグメント層12L1について、接合用のセグメント端部12p1の挿入を受け入れる収容部(ここでは挿入溝)と、長さの大きい電源線用のセグメント端部12p1s′の挿入を受け入れる収容部とを備えた内側ツイスト治具(第1ツイスト治具)で、図19に示すように、接合用のセグメント端部12p1と電源線用のセグメント端部12p1s′とを同時に同じ向きにツイストする。このとき、電源線用のセグメント端部12p1s′を内側ツイスト治具に干渉しない位置に押しのけることはしない。従って、電源線用のセグメント端部12p1s′による内径側での突出は生じない。
【0096】
なお、各収容部の深さは、長さの大きい電源線用のセグメント端部12p1s′を収容することができるようになっていれば、全て同じでよい。あるいは、電源線用のセグメント端部12p1s′が周方向で特定の位置に来るようにワーク72を配置するのであれば、電源線用のセグメント端部12p1s′を収容する収容部が、接合用のセグメント端部12p1を収容する収容部よりも深くなっていてもよい。いずれにせよ、各セグメント端部のうち、収容部に挿入された部分は、ツイスト加工後も真っ直ぐな状態を保つ。
また、ここで説明した内側ツイスト治具は、ツイスト治具ユニット28Aの内側ツイスト治具50の代わりに用いることができる。
【0097】
一方、最も外側のセグメント層12L6について、図14及び図15で説明したような、押し退け部材80とツイスト治具ユニット28Cとを用いて、電源線用のセグメント端部12p6s′を外側ツイスト治具51(第2ツイスト治具)に干渉しない位置に押しのけた上で、先ず接合用のセグメント端部12p6のみをツイスト加工する。その後、図20に示すように、ツイストされずに残った電源線用のセグメント端部12p6s′のみを、別のツイスト治具(第3ツイスト治具)により、電源線用のセグメント端部12p1s′に対向するように接合用のセグメント端部12p6とは逆向きに(電源線用のセグメント端部12p1s′と同じ向きに)ツイスト加工する。
このようにすることにより、コア72aの内径を狭めることなく簡単な電源線の接続構造を形成できる。
【0098】
本実施形態ではツイストされずに残る電源線用のセグメント端部を押し退け部材80でツイスト治具に干渉しない位置に押しのける構成としたが、図21に示すように、第1の実施形態で説明した層間拡げ部材23を用いて電源線用のセグメント端部12p6s又は12p6s′をツイスト治具に干渉しない位置に押しのけるようにしてもよい。すなわち、層間拡げ部材23を押し退け部材として用いてもよい。最も内側のセグメント層12L1において電源線用のセグメント端部12p1s又は12p1s′を押し退ける場合、層間拡げ部材23でコアの中心側へ押圧すればよい。また、逆に、上述のずらし部材としては層間拡げ部材23以外のものを用いてもよい。
また、押し退け部材80の機能をツイスト治具自体が持つようにツイスト治具の形状を変更してもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では押し退け部材80を用いる場合に電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sの位置合わせをすることを説明した。しかし、これは必須ではない。電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sが、同じ層の接合用のセグメント端部12p1、12p6よりもコア端面からの突出長さが大きければ、その周方向の位置によらず、いずれかの捌き部材74により電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sをずらすことができる。そして、押し退け部材80を外側リング55bの外周の全周に設けておけば、周方向の位置によらず、ずらされた電源線用のセグメント端部12p1s、12p6sをツイスト治具に干渉しない位置に押しのけることができる。
また、上記実施形態ではワークとしてのステータについての実施例を説明したが、ロータについても同様に実施することができる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。上述した本発明の構成は、一部のみ取り出して実施することもできるし、以上の説明の中で述べた変形は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて適用可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0101】
12p1~12p6…接合用のセグメント端部、12p1s,12p6s…電源線用のセグメント端部、15…コイルツイスト装置、20…回転駆動機構、23…層間拡げ部材、24…嵌合凸部、28A~28D…ツイスト治具ユニット、29…ユニットホルダ、33…嵌合凹部、50~55…ツイスト治具、72…ステータ又はロータ(ワーク)、72a…コア、77A,77B…コイルセグメントの接続構造、80…押し退け部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21