(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】薬剤管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20220706BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20220706BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G16H20/10
G06K19/06 037
G06K7/10 428
(21)【出願番号】P 2020148033
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2021-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:2019年11月29日 展示会名:2019年医療の質・安全学会学術集会 開催場所:国立京都国際会館(京都府京都市左京区)
(73)【特許権者】
【識別番号】520339183
【氏名又は名称】株式会社セントギア
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賀朗
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093413(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0205441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06K 19/06
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収納するトレイを載置するための載置台と、
前記トレイを収納可能に構成され前記載置台の下方に配置され得るよう構成されたトレイ収納用カートと、
前記載置台の上に載置された前記トレイを撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づき、使用された薬剤を特定する使用薬剤特定部と
を備え、
前記トレイは、収納される薬剤ごとに仕切られる複数の分割室を備え、
前記分割室の各々は、収納される薬剤を特定し前記撮像部により撮像可能な位置に取り付けられた識別コードを含
み、
前記識別コードは、前記分割室に薬剤が配置されると、その薬剤により隠蔽される一方、薬剤が前記分割室から取り出されると、前記撮像部により撮像可能な状態となるように前記分割室の各々に取り付けられ、
前記使用薬剤特定部は、薬剤が取り出されることで撮像可能な状態とされた前記識別コードの画像に基づき、使用された薬剤を特定する
ことを特徴とする薬剤管理システム。
【請求項2】
前記使用薬剤特定部は、表示部において、使用された薬剤に係る前記分割室の位置に、所定のマークを表示させる、請求項1に記載の薬剤管理システム。
【請求項3】
前記撮像部は、前記載置台の主平面に垂直な方向から前記載置台に載置された前記トレイを撮像可能に配置される、請求項1に記載の薬剤管理システム。
【請求項4】
前記撮像部とは別に、前記トレイを撮像可能に構成された、手持ち型の撮像部を更に備える、請求項1に記載の薬剤管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などの医療機関において治療や手術を行う場合、治療や手術の現場において使用される様々な薬剤をミスなく且つ遅滞なく供給し、使用後は補充することが求められている。また、治療や手術を担当する医師や看護士も、使用した薬剤の種類や個数を正確に記録し、報告することが求められる。加えて、使用した薬剤の管理は、病院経営の観点からも重要である。
【0003】
しかし、治療や手術において、薬剤の取り違え、収納場所の間違いなどにより、薬剤の使用の有無の適切な管理、及び治療・手術現場への薬剤の補充が適切に行われないことが起こり得る。このような問題を解決するための技術として、例えば特許文献1に記載のような薬剤管理システムが提案されている。しかし、特許文献1のシステムを含め、従来のシステムは、オペレータ(医師、看護士、その他)の入力に依存して薬剤の管理を行うシステムである。このため、治療や手術の現場での薬剤の使用の有無を、オペレータの入力に依存することなく適切に管理することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オペレータの入力作業に依存することなく、薬剤の使用の有無を適切に管理することを可能にする薬剤管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る薬剤管理システムは、薬剤を収納するトレイを載置するための載置台と、前記トレイを収納可能に構成され前記載置台の下方に配置され得るよう構成されたトレイ収納用カートと、前記載置台の上に載置された前記トレイを撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像に基づき、使用された薬剤を特定する使用薬剤特定部とを備える。前記トレイは、収納される薬剤ごとに仕切られた複数の分割室を備え、前記分割室の各々は、収納される薬剤を特定し前記撮像部により撮像可能な位置に取り付けられた識別コードを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オペレータの入力作業に依存することなく、薬剤の使用の有無を適切に管理することを可能にする薬剤管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
【
図6】薬剤トレイ40の使用形態の一例を説明する。
【
図7】薬剤トレイ40の使用形態の別の例を説明する。
【
図8】薬剤管理カート10の使用形態の一例を説明する。
【
図9】ハンドヘルドコンピュータ60の使用形態の一例を説明する。
【
図10】薬剤管理システム1の動作を説明するフローチャートである。
【
図11】薬剤管理システム1の画面表示の一例を説明する。
【
図12】薬剤管理システム1の機能ブロック図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
【
図14】第3の実施の形態に係る薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
【
図15】第4の実施の形態に係る薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0010】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1~
図4を参照して、第1の実施の形態に係る薬剤管理システム1を説明する。
図1は、この薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。この薬剤管理システム1は、薬剤管理カート10、10Aと、コンピュータ20、20Aと、トレイカート30と、薬剤トレイ40と、サーバコンピュータ50と、ハンドヘルドコンピュータ60、60Aを備えて構成される。
【0012】
薬剤管理カート10は、例えば薬剤が使用される現場である手術室に配置される。すなわち、薬剤管理カート10は、手術室において手術台5等の近傍に配置され、薬剤の管理(未使用の薬剤、使用済の薬剤の特定)を司る。なお、この薬剤管理カート10と同様の薬剤管理カート10Aは、手術室とは別の部屋(例えば中央管理室)に載置され、コンピュータ20Aに接続される。薬剤管理カート10及び10Aは、コンピュータ20、20A、サーバコンピュータ50等と共に薬剤管理システムを構成する。なお、サーバコンピュータ50は、
図1に示すように中央管理室に載置されていてもよいし、中央管理室とは別の部屋、例えば特別なサーバルーム等に載置されていてもよい。
【0013】
図2の拡大斜視図にも示される通り、薬剤管理カート10は、一例として、脚部11と、載置台12と、支柱13と、カメラ14と、モニタ15、16と、照明装置17とを備える。脚部11は、薬剤管理カート10の土台であり、好適には底面に車輪を有して、床面を滑動可能に構成され得る。載置台12は、脚部11から延びる支柱13に固定され、その上面には、薬剤トレイ40を載置可能に構成される。
【0014】
薬剤トレイ40は、トレイカート30に収納され、例えば手術等に必要な薬剤を搭載した状態で中央管理室から手術室へと搬送され、その後、トレイカート30から取り出されて載置台12上に移動される。トレイカート30は、載置台12の直下の位置に移動可能に構成されており、これにより、医師や看護士は、大きな負担無く薬剤トレイ40を載置台12上に移動させることができる。
【0015】
支柱13は、脚部11から、載置台12の上面(主平面)に対し略垂直に延びるように構成されている。支柱13は、カメラ14を載置台12の上面の上方、例えば70cm~80cm上方に固定可能に構成される。
図1では、カメラ14は一台のみであるが、複数台のカメラが1の薬剤管理カート10に設けられてもよい。また、図示は省略するが、カメラ14の俯角を調整可能とする俯角調整機構が設けられてもよい。また、カメラ14は、XY駆動機構(図示せず)に搭載され、XY方向に移動可能に構成されてもよい。また、カメラ14が移動可能とされる代わりに、載置台12がXY方向に移動可能に構成されてもよい。それにより、薬剤トレイ40の全景が1台のカメラで撮像できない場合においても、薬剤トレイ40とカメラ14の位置関係を適宜変えることで、一台のカメラにより1つの薬剤トレイ40を撮像することが可能になる。
【0016】
モニタ15、16は、支柱13から延びるアームにより保持され、カメラ14で撮像された画像、その解析結果、その他ユーザに提示する情報を画像として表示する。
図1では、2つのモニタ15、16が設けられているが、モニタの数は2つに限定されるものではない。照明装置17は、載置台12を照明する照明光を発する光源である。
【0017】
薬剤管理カート10は、コンピュータ20に接続される。コンピュータ20は、薬剤管理カート10から取得したデータに関するデータ処理を実行し、処理後のデータを中央管理室に載置されるサーバコンピュータ50に転送する。
【0018】
トレイカート30は、薬剤を収納する薬剤トレイ40を、複数段に亘って収納可能なカートである。このトレイカート30に収納された薬剤トレイ40が、トレイカート30から取り出され、載置台12の上面に載置されることにより、薬剤トレイ40がカメラ14により撮像される。この撮像情報が、後述するように薬剤の管理のために用いられる。
【0019】
トレイカート30は、
図3に示すように、前面が開放された筐体31と、筐体31の前面から後方(奥行き方向)に延び高さ方向に複数段に亘って形成される摺動材32を備える。薬剤トレイ40は、例えば筐体と、筐体から横方向に突出するフリンジ部Fを有しており、このフリンジ部Fが摺動材32の上側に入り込むようにトレイカート30に挿入される。これにより、複数の薬剤トレイ40が、複数段に亘ってトレイカート30に収納され得る。
【0020】
ハンドヘルドコンピュータ60、60Aは、その内部にカメラ14とは別の図示しないカメラを備えていて、オペレータ(医師、助手、看護士、薬剤師、病院職員等)により保持され、薬剤トレイ40を撮像可能に構成される。
【0021】
薬剤トレイ40は、
図4に示すように、薬剤を収納するための分割室41を複数有して、薬剤トレイ40は複数の分割室41に仕切られる。分割室41は、使用される薬剤毎に分割されており、個々の分割室41は、異なる種類の薬剤毎に設けられる。同一の薬剤に対しても、1個ずつ異なる分割室41が設けられてよい。なお、分割室41は、薬剤トレイ40の本体部(筐体)から物理的に独立し、本体部から取出し可能に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。様々な薬剤が異なる大きさや形状を有していることに鑑み、分割室41も、様々な形状、サイズのものが用意される。
【0022】
また、分割室41の底面には、薬剤の種類を特定するための識別コードを含む識別ラベル42が付加されている。識別ラベル42に含まれる識別コードは、例えば所謂一次元バーコード、二次元バーコード(QRコード(登録商標))の他、図示のようなカラーコード(カメレオンコード(登録商標))であってもよい。識別ラベル42は、カラーコードの他、薬剤の名称などの情報を付加的に含んでいてもよい(
図5参照)。
【0023】
分割室41には、それぞれその底面に付加される識別ラベル42に対応する薬剤が、例えば中央管理室にいる職員の手により配置される。
図6は、各種薬剤が対応する分割室41に配置された状態を示している。分割室41に薬剤が配置されると、その薬剤により識別ラベル42は隠蔽され、上方からは確認できなくなる。このように識別ラベル42が薬剤により隠蔽された状態は、その薬剤が未だ使用されず、薬剤トレイ40の中に残っていることを示す。
【0024】
なお、薬剤の中には、例えば点滴液袋、全身麻酔・鎮静用剤のように、数百ml以上の容量、サイズを有し、その重量も大きな薬剤も存在する。そのような大型の薬剤については、
図7に示すような大型の分割室41Aが配置される。図示は省略するが、分割室41Aの底面にも、上述と同様の識別ラベル42が付加されている。
【0025】
この薬剤管理システム1の使用態様に関し、
図8~
図11を参照して説明する。
図8及び
図9は、本システムの使用態様を図示した概略図であり、
図10は、本システムの動作を説明するフローチャートである。また、
図11は、本システムの動作時においてコンピュータのディスプレイ(表示部)に表示される画面表示の一例である。
【0026】
この薬剤管理システム1において治療や手術が行われる場合、中央管理室(
図1)の職員は、その治療に必要な薬剤を薬剤トレイ40に載置し、トレイカート30に収納した上で、そのトレイカート30を手術室まで搬送する。搬送されたトレイカート30は、手術室にいる医師又は看護士により受領され、治療や手術が開始される。
【0027】
治療や手術を行う場合、医師又は看護士は、
図8に示すように、使用する薬剤が載置された薬剤トレイ40を、載置台12の上に移動させ(
図10のステップS11)、適宜薬剤を使用して治療や手術を開始する(ステップS12)。薬剤が使用のため薬剤トレイ40から取り出されると、その取り出された薬剤に対応する識別ラベル42がカメラ14等により撮像可能とされる。なお、薬剤トレイ40は、治療又は手術の間、載置台12とは別の位置に載置されていてもよく、また、トレイカート30に入れたままとし、必要に応じ薬剤のみを取り出すようにしてもよい。薬剤トレイ40が別の位置に載置される場合、又は、薬剤トレイ40がトレイカート30に入れたままとされる場合、薬剤トレイ40は、治療又は手術の終了後に載置台12に移動させられる。
【0028】
例えば治療又は手術が終了したタイミングにおいて、カメラ14又はハンドヘルドコンピュータ60は、薬剤トレイ40を上方から撮像し、薬剤トレイ40の画像を取得する(ステップS13)。薬剤トレイ40の中には、
図7に示すような大型の薬剤(例えば点滴液袋、全身麻酔・鎮静用剤など)を収納した薬剤トレイ40も存在する。このような薬剤トレイ40は重量が大きく、載置台12の上に移動させることは作業者にとって負担となる。そのため、このような薬剤トレイ40は、カメラ14で撮像する代わりに、ハンドヘルドコンピュータ60により撮像することができる。
【0029】
図9に示すように、薬剤トレイ40にハンドヘルドコンピュータ60を接近させ、内蔵のカメラにより薬剤トレイ40の上面を撮像することができる。この場合、薬剤トレイ40を載置台12の上に移動させることなく、使用した薬剤の確認を行うことができる。
【0030】
カメラ14又はハンドヘルドコンピュータ60により撮像された薬剤トレイ40の画像に写った識別ラベル42を分析することにより、使用された薬剤の種類や個数が特定され得る(ステップS14)。
図11に示すように、使用薬剤特定部22により識別ラベル42中のカラーチャートが抽出され、使用された薬剤が特定された場合には、その部分にマークMをディスプレイ上に表示することができる。特定された使用済みの薬剤に関する情報は、例えばサーバコンピュータ50等にデータ転送される(ステップS15)。なお、一部の識別ラベル42が、対応する薬剤が使用されたにも拘わらず認識されない場合がある。この場合、オペレータ(医師や看護士)は、ディスプレイの表示を確認して、薬剤が取り出され空となったが、マークMが表示されていない分割室41があるか否かを確認することができる。そのような誤認識があった場合には、カメラ14の位置を変えたり、照明を変えたりして、再度カメラ14により撮像を実行することが可能である。又は、コンピュータ20を操作して、そのような誤認識を訂正するよう、データを修正することも可能である。
【0031】
なお、手術室で薬剤が使用された後、その使用済みの薬剤を収納していた薬剤トレイ40を載置したトレイカート30や、治療や手術の終了後、例えば中央管理室に戻される。中央管理室の作業者は、手術室から戻ってきた薬剤トレイ40を、中央管理室に載置されている薬剤管理カート10Aの載置台12に載せ、手術室におけると同様に薬剤管理カート10Aのカメラ14又はハンドヘルドコンピュータ60Aを用いて薬剤トレイ40の撮像を行う。撮像された薬剤トレイ40の画像の中から、識別ラベル42の画像を抽出する。抽出された識別ラベル42、及びこれに対応する薬剤の情報は、サーバコンピュータ50に転送される。
【0032】
サーバコンピュータ50は、こうして、手術終了後の薬剤トレイ40の画像から抽出された識別ラベル42のデータを、手術室に載置された薬剤管理カート10、及び中央管理資質に載置された薬剤管理カート10Aの両方から取得する。そして、両者の情報を比較し、一致・不一致を判定する。不一致は、誤検出、医師又は看護士の作業ミス、中央管理室での管理ミスその他により生じ得る。医師、看護士、中央管理室の作業員等は、不一致が検出された場合に、再度確認作業を行うことができる。
【0033】
図12の機能ブロック図を参照して、コンピュータ20に格納される薬剤管理用コンピュータプログラムにより実現される薬剤管理システムを説明する。コンピュータ20は、カメラ14又はハンドヘルドコンピュータ60により撮像された薬剤トレイ40の画像処理部21で画像を取得して、所定の画像処理を実行する。具体的には、画像処理部21は、薬剤トレイ40の画像の中から、識別ラベル42の画像を抽出する。また、識別ラベルデータベース70は、識別ラベル42に含まれるカラーチャートと、対応する薬剤に関する情報とを関連付けて記憶する記憶部である。
【0034】
使用薬剤特定部22は、薬剤トレイ40の画像から抽出された識別ラベル42の画像と、識別ラベルデータベース70に記憶される識別ラベルとを対比して、使用された薬剤を特定する。使用された薬剤に関する種類、個数に関する情報が取得された場合、その情報はデータ送受信制御部23によりサーバコンピュータ50等に送信されると共に、表示制御部24によりディスプレイに表示され得る。
【0035】
以上説明したように、第1の実施の形態の薬剤管理システムによれば、薬剤トレイ40が、分割室41毎に識別ラベル42を備え、これをカメラ14等の撮像部で撮像することで、使用された薬剤の管理を行うことができる。載置台12上に治療や手術のために移動された薬剤トレイ40から、適宜薬剤が使用されれば、それにより識別ラベル42が撮像され、薬剤の使用の有無が特定される。従って、第1の実施の形態によれば、オペレータの入力作業に依存することなく、薬剤の使用の有無を適切に管理することを可能にする薬剤管理システムを提供することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
図13を参照して、第2の実施の形態に係る薬剤管理システム1を説明する。
図13は、この第2の実施の形態の薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
図13において、
図1と同一の構成要素に関しては、
図1と同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0037】
この第2の実施の形態の薬剤管理システム1は、手術室には薬剤管理カート10を備えず、中央管理室に載置される薬剤管理カート10Aのみを備えている。手術室には、トレイカート30から取り出された薬剤トレイ40を単に載置するためのカート10Bを備えている。カート10Bは、脚部11Bと、載置台12Bとを備える。医師は、載置台12B上に薬剤トレイ40を載置し、手術を実行することができる。
【0038】
手術の終了後は、ハンドヘルドコンピュータ60により順次薬剤を使用した薬剤トレイ40を撮像し、コンピュータ20を介して撮像情報をサーバコンピュータ50に送付することができる。これに代えて、手術室ではハンドヘルドコンピュータ60等による撮像は行わず、そのままトレイカート30を中央管理室に戻してもよい。中央管理室に手術終了後のトレイカート30が戻ると、中央管理室の作業者は、トレイカート30から薬剤トレイ40を順次取り出して薬剤管理カート10Aの載置台上に載置する。すると、薬剤管理カート10Aのカメラにより、薬剤トレイ40が撮像され、第1の実施の形態と同様の要領により、使用された薬剤が特定される。なお、手術室においてハンドヘルドコンピュータ60による撮像が行われる場合においては、薬剤管理カート10Aによる分析結果と、ハンドヘルドコンピュータ60による分析結果とを比較することも可能である。以上説明したように、この第2の実施の形態によれば、オペレータの入力作業に依存することなく、薬剤の使用の有無を適切に管理することを可能にする薬剤管理システムを提供することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
図14を参照して、第3の実施の形態に係る薬剤管理システム1を説明する。
図14は、この第3の実施の形態の薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
図14において、
図1と同一の構成要素に関しては、
図1と同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0040】
この第3の実施の形態の薬剤管理システム1は、トレイカート30に加え、追加のトレイカート30Aを備えている。この追加のトレイカート30Aは、特に大型で重量が大きい薬剤MDb(例えば点滴液袋、全身麻酔・鎮静用剤など)を主に格納する薬剤トレイ40Aを格納するためのカートである。
【0041】
トレイカート30に格納されている薬剤トレイ40に収納される薬剤は小型であるため、薬剤トレイ40の重量は小さい。このため、トレイカート30の薬剤トレイ40は、手術開始前、手術実行中又は手術終了後に薬剤管理カート10の載置台12に移動され、所定のタイミングにおいて、カメラ14により撮像され得る。一方、トレイカート30Aに格納されている薬剤トレイ40Aは、重量が大きいため、薬剤管理カート10の載置台12には移動されず、手術終了後のタイミングなどにおいて、ハンドヘルドコンピュータ60により撮像され得る。手術の終了後は、トレイカート30及び30Aは、いずれも中央管理室に戻される。薬剤トレイ40及び薬剤トレイ40Aは、薬剤管理カート10Aのカメラ14又はハンドヘルドコンピュータ60Aにより撮像される。
【0042】
[第4の実施の形態]
図15を参照して、第4の実施の形態に係る薬剤管理システム1を説明する。
図15は、この第4の実施の形態の薬剤管理システム1の全体構成を示す概略図である。
図15において、
図1と同一の構成要素に関しては、
図1と同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0043】
この第4の実施の形態の薬剤管理システム1は、追加で(緊急に)中央管理室から例えば職員NSにより手持ちで薬剤MDbが届けられる場合に対応したものである。職員NSは、追加で薬剤MDbを中央管理室から手術室に届ける場合、薬剤MDbとともに識別ラベルカード42Bを手術室に届ける。識別ラベルカード42Bは、
図5に示すような識別ラベルをカードにしたものである。第4の実施の形態は、このような識別ラベルカード42Bを備えている点で、前述の実施の形態と異なっている。
【0044】
一般に、手術等が行われる場合、その開始後において薬剤の不足が見つかり、追って薬剤が職員によって手術室に届けられることがある。第4の実施の形態は、このような場合に対処するために、識別ラベルカード42Bを備えている。
【0045】
職員NSは、不足の薬剤MDbを手術室に届ける場合、その薬剤MDbとともに識別ラベルカード42Bを持参し、薬剤MDbと識別ラベルカード42Bを対にして手術室の医師等に手渡す。手術室の医師、看護士、助手は、その薬剤MDbと共にその識別ラベルカード42Bを、薬剤トレイ40の空きスペースに搭載する。薬剤トレイ40に収納する代わりに、薬剤トレイ40とは別のトレイに薬剤MDbを載置してもよい。薬剤MDbは、識別ラベルカード42Bの上に配置し、使用前は薬剤MDbにより識別ラベルカード42Bが上から見た場合に見えないように配置するのが好ましい。搬送された薬剤MDbが使用される場合、その識別ラベルカード42Bは、カメラ14により撮像可能となり、薬剤MDbが使用されたことが検出され得る。
【0046】
[その他]
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…薬剤管理システム、 5…手術台、 10、10A…薬剤管理カート、 11…脚部、12…載置台、 13…支柱、 14…カメラ、 15,16…モニタ、 17…照明装置、 20…コンピュータ、 21…画像処理部、 22…使用薬剤特定部、 23…データ送受信制御部、 24…表示制御部、 30…トレイカート、 31…筐体、 32…摺動材、 40…薬剤トレイ、 41…分割室、 41A…分割室、 42…識別ラベル、 50…サーバコンピュータ、 60…ハンドヘルドコンピュータ、 70…識別ラベルデータベース、 F…フリンジ部、 M…マーク。