(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】光学フィルター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220706BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220706BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G02B5/22
C08L101/00
C08K3/16
(21)【出願番号】P 2020556308
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2019079530
(87)【国際公開番号】W WO2019196637
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】201810309621.6
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520392672
【氏名又は名称】致晶科技(北京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン, ハイヂォン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ, シャオシウ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525671(JP,A)
【文献】特開2018-002712(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107513166(CN,A)
【文献】特表2018-505542(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/00
C08K 3/00 - 3/40
G02B 5/00 - 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーベースのナノ複合材料
を含む光学フィルターであって、前記ポリマーベースのナノ複合材料の組成には、ポリマーマトリックスと半導体材料が含まれており、
前記ポリマーベースのナノ複合材料は、少なくとも一つの光透過波長帯域内の平均光線透過率が90%超えであり、少なくとも一つのカット波長帯域内の光線透過率が1%未満であり、
前記半導体材料は、非発光性再結合のペロブスカイト材料であ
り、
前記半導体材料は、化学一般式A
3
B
2
X
9
、ABX
3
、A
2
BX
6
から選ばれる少なくとも一種であり、
ここで、Aは、CH
3
NH
3
、CH(NH)NH
3
、Csから選ばれる少なくとも一種であり、
Bは、Ag、Sb、Bi、In、Al、Tiから選ばれる少なくとも一種であり、
Xは、ハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする
光学フィルター。
【請求項2】
前記ポリマーベースのナノ複合材料は、3000~200nmの範囲内の少なくとも一つの光透過波長帯域内の平均光線透過率が90%超えであり、3000~200nmの範囲内の少なくとも一つのカット波長帯域内の光線透過率が1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の
光学フィルター。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスのポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、醋酸セルロース、ポリスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、透明ABSプラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルカルバゾールから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項1に記載の
光学フィルター。
【請求項4】
前記半導体材料
の化学一般式
がA
3B
2X
9
であり、
ここで、Aは、CH
3NH
3
であり、
Bは、
Bi、In
から選ばれる少なくとも一種であり、
Xは、ハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種であり、
前記半導体材料の固形分が2重量%~50重量%であり、
前記半導体材料のサイズが2~100nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の
光学フィルター。
【請求項5】
前記ポリマーベースのナノ複合材料は、さらに添加剤成分を含み、
前記添加剤成分は、ポリパラフェニレンビニレン、ポリ3-ヘキシルチオフェン、[6,6]-フェニルC61酪酸メチル、ポリビニルカルバゾール、ペリレンイミド、ポリ[2-メトキシ-5-[(3,7-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレン]-1,2-ビニレン]、フラーレンから選ばれる少なくとも一種であり、
前記ポリマーベースのナノ複合材料において、前記添加剤成分の含有量が1重量%~20重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の
光学フィルター。
【請求項6】
前記光学フィルターは、ロングパス光学フィルター又はデュアルバンドパス光学フィルターであり、
前記ロングパス光学フィルターのカット波長帯域は、3000nm~250nmの範囲内にあり、
前記デュアルバンドパス光学フィルターのカット波長帯域は、3000nm~250nmの範囲から選ばれる任意の二つの互いに重ならない波長帯域を含み、
前記ロングパス光学フィルター及びデュアルバンドパス光学フィルターの光透過波長帯域内の光線透過率の範囲が80%~92%である、ことを特徴とする請求項
1に記載の光学フィルター。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれかに記載の光学フィルターのうちの少なくとも一種を含む狭帯域光学フィルターであって、
前記狭帯域光学フィルターは、
光透過波長帯域が3000nm~250nmの範囲内にあり、光透過波長帯域内の光線透過率の範囲は、80%~92%である、ことを特徴とする狭帯域光学フィルター。
【請求項8】
前記狭帯域光学フィルターは、さらに、ショートパス光学フィルター及び染料をドープしたポリマーのうちの少なくとも一種を含む、ことを特徴とする請求項
7に記載の狭帯域光学フィルター。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一つに記載の
光学フィルター
の製造方法であって、前記光学フィルターの製造工程は、少なくとも、
a)ポリマーマトリックスと半導体材料の前駆体をそれぞれ有機溶媒に溶解させ、ポリマーゴム液と前駆体溶液を得る工程と、
b)前駆体溶液をポリマーゴム液に添加し、均一に混合し、混合液を得る工程と、
c)工程b)で得られる混合液を基材に塗布して、ウェットフィルムの厚みが50~1000μmとなるようにフィルムを形成する工程と、
d)ウェットフィルムを塗布した基材を乾燥処理した後、20~100℃で0.17~1時間熱処理し、前記光学フィルターを得る工程と、
を含む、ことを特徴とする光学フィルター
の製造方法。
【請求項10】
前記工程a)における前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、アセトンから選ばれる少なくとも一種であり、
工程a)における前記前駆体は、前駆体Iと前駆体IIを含み、前記前駆体Iは、ハロゲン化メチルアンモニウム、ハロゲン化ホルムアミジニウム、ハロゲン化セシウムから選ばれる少なくとも一種であり、前記前駆体IIは、ハロゲン化ビスマス、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化銀、ハロゲン化チタンから選ばれる少なくとも一種であり、前記前駆体Iと前駆体IIの混合モル比の範囲が1:2~3:1であり、
工程c)における前記基材は、ガラス板及びPETから選ばれるいずれか一種であり、
工程d)における前記熱処理は、アニーリング処理である、ことを特徴とする請求項
9に記載の光学フィルター
の製造方法。
【請求項11】
前記前駆体Iは、ハロゲン化メチルアンモニウムであり、前記前駆体IIは、ハロゲン化ビスマス、ハロゲン化インジウムから選ばれる少なくとも一種である、ことを特徴とする請求項10に記載の光学フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ポリマーベースのナノ複合材料及びそれに基づく光学フィルターに関するものであり、材料、光学フィルター分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルターは、光学フィルターの原理で吸収型光学フィルター及び干渉型光学フィルターに分けられる。吸収型光学フィルターは、利用物質の光の選択的な吸収によって光学フィルターとして機能する。吸収型ロングパス光学フィルターには、通常、有機染料分子がガラスに分散したものを使用している。このような光学フィルターは、スペクトル特性が安定しており、価格が安く、製法が簡単であるが、厚みが分厚くて、カットオフ勾配が小さく、ピーク透過率が低く、波長の連続的な調整が不可である、などの欠点がある。現段階の市販の光学フィルターは、主に干渉型光学フィルターである。このような光学フィルターは、真空蒸着法により交互に一定の厚みを有する、屈折率が変化する多層媒体フィルムを形成してなり、カットオフ勾配が大きく、長波長域の透過率が高く、波長を連続的に調整可能な光学フィルターを製造できるという利点があるが、光学フィルターの紫外光領域での透過率が低く、温度及び湿度からの影響を受け易いとともに、製造コストが高く、集積化しにくく、製品の不良率が非常に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の一つの側面によれば、ポリマーベースのナノ複合材料を提供しており、該ポリマーベースのナノ複合材料のフィルムは、広い波長帯域での吸光度がほぼ0であり、透過率が95%程度であり、かつ耐候性がよく、耐化学試薬性等の利点があり、優れた吸収型光学フィルターのマトリックス素材である。本発明の目的は、ガラス光学フィルターのフィルター特性が不良で厚みが分厚いという欠点を克服し、そして干渉型光学フィルターの紫外光領域での透過率が低く、コストが高く、集積化しにくいという欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記ポリマーベースのナノ複合材料の組成には、ポリマーマトリックスと半導体材料が含まれる。
前記ポリマーベースのナノ複合材料は、少なくとも一つの光透過波長帯域内の平均光線透過率が90%超えであり、少なくとも一つのカット波長帯域内の光線透過率が1%未満で
あり、ただし、前記半導体材料は、非発光性再結合のペロブスカイト材料である。有効な透過領域は、ポリマーマトリックスの吸収限界まで延伸され得る。
【0005】
任意選択として、前記ポリマーベースのナノ複合材料は、3000~200nmの範囲内の少なくとも一つの光透過波長帯域内の平均光線透過率が90%超えであり、3000~
200nmの範囲内の少なくとも一つのカット波長帯域内の光線透過率が1%未満である。
【0006】
任意選択として、前記ポリマーマトリックスのポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、透明ABSプラスチック(ABS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ塩化ビニリデン(PVDc)、ポリ醋酸ビニル(PVAc)、醋酸セルロース(CA)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)から選ばれる少なくとも一種である。
【0007】
任意選択として、前記半導体材料は、化学一般式A3B2X9、ABX3、A2BX6から選ばれる少なくとも一種である。
ここで、Aは、CH3NH3、CH(NH)NH3、Csから選ばれる少なくとも一種であり、Bは、Sb、Bi、In、Al、Ag、Tiから選ばれる少なくとも一種であり、Xは、ハロゲン元素から選ばれる少なくとも一種である。
前記半導体材料の固形分が2重量%~50重量%である。
前記半導体材料のサイズが2~100nmである。
【0008】
任意選択として、前記ポリマーベースのナノ複合材料は、さらに添加剤成分を含む。
前記添加剤成分は、ポリパラフェニレンビニレン(MEH-PPV)、ポリ3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、[6,6]-フェニルC61酪酸メチル(PC61BM)、ポリビニルカルバゾール(PKV)、ペリレンイミド(BDI)、フラーレン、ポリ[2-メトキシ-5-[(3,7-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレン]-1,2-ビニレン](MDMO-PPV)から選ばれる少なくとも一種である。
前記ポリマーベースのナノ複合材料において、前記添加剤成分の含有量が1重量%~20重量%である。
【0009】
任意選択として、前記ポリマーベースのナノ複合材料の調製法は、ポリマーマトリックスと半導体材料の前駆体をそれぞれ有機溶媒に溶解させ、ポリマーゴム液と前駆体溶液を得る工程と、流延して乾燥させ、前記ポリマーベースのナノ複合材料を得る工程と、を含む。
【0010】
任意選択として、前記ポリマーベースのナノ複合材料の調製法は、ポリマーマトリックスと半導体材料の前駆体をそれぞれ有機溶媒に溶解させ、ポリマーゴム液と前駆体溶液を得て、添加剤成分を添加する工程と、流延して乾燥させ、前記ポリマーベースのナノ複合材料を得る工程と、を含む。
【0011】
任意選択として、ポリマーベースのナノ複合材料光学フィルターに染料等の吸光材料を添加することで、狭帯域での探測を実現できる。ポリマーベースの半導体ナノ複合材料光学フィルターと、相応するショートパス光学フィルター又はもう一層の染料/ポリマー複合フィルム光学フィルターとを組み合わせることによっても、狭帯域での探測を実現できる。前記染料は、MEH-PPV、P3HT、PC61BM、PVK、BDI、フラーレン、MDMO-PPV等であってもよい。
【0012】
本願の一つの具体的な実施様態において、ポリマーベースのナノ複合材料は、透明ポリマーマトリックス及び非発光性再結合の半導体材料から構成され、両方の具体的な存在形態は、
図1に示されるように、ポリマーマトリックスの結晶域とポリマーブロックとによって半導体ナノ粒子を隔離させるか、又はポリマーのブロックで直接に半導体ナノ粒子を隔離させ、ポリマーブロックで半導体粒子を包むことによって、水と酸素をバリアする作用を効果的に奏する。ただし、半導体の固形分(ドライフィルム全重量に占める半導体の重量)が2重量%~50重量%である。
【0013】
本願において、前記半導体材料の固形分とは、前記半導体のポリマーベースのナノ複合材料ドライフィルム全重量に占める重量百分率のことである。
【0014】
本願のもう一つの側面によれば、上記したいずれか一つのポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターを提供し、カットオフ勾配が大きく、ピーク透過率が高く(>90%)、カットオフ深さに優れているという利点を有し、透過波長及び透過光の強度が連続的に調製可能であり、インサイチュ調製により得ることができ、調製工程が簡単であり、設備に対する要求が低く、原料の価格が安価であり、生産コストが低く、安定性が良く、薄肉(20μm)であり、フレキシブル性が良く、デバイスの軽量化、小型化、フレキシブル加工の実現に有利であり、集積化に対応し易い。
【0015】
任意選択として、前記光学フィルターの製造工程は、少なくとも、
a)ポリマーマトリックスと半導体材料の前駆体をそれぞれ有機溶媒に溶解させ、ポリマーゴム液と前駆体溶液を得る工程と、
b)前駆体溶液をポリマーゴム液に添加し、均一に混合し、混合液を得る工程と、
c)工程b)で得られる混合液を基材に塗布して、ウェットフィルムの厚みが50~1000μmとなるようにフィルムを形成する工程と、
d)ウェットフィルムを塗布した基材を乾燥処理した後、20~100℃で0.17~1時間熱処理し、前記光学フィルターを得る工程と、を含む。
【0016】
任意選択として、前記工程a)における前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(EtAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロホルム、アセトンから選ばれる少なくとも一種である。
工程a)における前記前駆体は、前駆体Iと前駆体IIを含み、前記前駆体Iは、ハロゲン化メチルアンモニウム、ハロゲン化ホルムアミジニウム、ハロゲン化セシウムから選ばれる少なくとも一種であり、前記前駆体IIは、ハロゲン化ビスマス、ハロゲン化インジウム、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化銀、ハロゲン化チタンから選ばれる少なくとも一種であり、前記前駆体Iと前駆体IIの混合モル比の範囲が1:2~3:1である。
工程c)における前記基材は、ガラス板及びPETから選ばれるいずれか一種である。
工程d)における前記熱処理は、アニーリング処理である。
【0017】
任意選択として、前記光学フィルターは、ロングパス光学フィルター又はデュアルバンドパス光学フィルターである。
前記ロングパス光学フィルターのカット波長帯域は、3000nm~250nmの範囲内にある。
前記デュアルバンドパス光学フィルターのカット波長帯域は、3000nm~250nmの範囲から選ばれる任意の二つの互いに重ならない波長帯域を含む。
前記ロングパス光学フィルター及びデュアルバンドパス光学フィルターの光透過波長帯域
内の光線透過率の範囲が80%~92%である。
【0018】
本願において、ポリマーベースのナノ複合材料は、
図2に示されているように、インサイチュ調製で得られるものである。
【0019】
本願において、半導体材料は、そのバンドギャップに対応する波長より波長が大きい光を吸収できる。ある半導体材料、特にペロブスカイト材料は、吸収係数が大きく、吸収端が急峻であるという特徴を有するものである。半導体材料の固形分の調整、半導体材料のサイズや膜厚、種類の制御によって、透過波長の連続的な制御を実現でき、そして、サイズを適宜制御すれば、モノバンドパス又はデュアルバンドパスをも高い透過率で実現できる。その粒子のサイズを対応する励起子のボーア半径程度に制御すると、半導体材料には、比較的に強い励起子の吸収が存在することとなり、デュアルバンドパスを実現できる。
【0020】
本願において、前記ポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、吸収型光学フィルターに属し、その目的は、今までの吸収型光学フィルターに存在するカットオフ勾配が小さく、ピーク透過率が低く、波長の連続的な調整が不可能であり、膜厚が分厚いという欠点を克服することである。また、今までの市販の干渉型光学フィルターと比べて、本発明が提供する半導体/ポリマー複合フィルム光学フィルターによれば、光学フィルターが温度及び湿度による影響を受けやすく、生産コストが高く、集積化が困難であり、製品の不良率が高いという欠点が克服された。
【0021】
本願のもう一つの側面によれば、狭帯域光学フィルターであって、前記狭帯域光学フィルターは、上記したいずれか一つのポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターのうちの少なくとも一種を含み、前記狭帯域光学フィルターは、カット波長帯域が300
0nm~250nmの範囲内にあり、光透過波長帯域内の光線透過率の範囲は、80%~92%である、ことを特徴とする狭帯域光学フィルターを提供する。
【0022】
任意選択として、前記狭帯域光学フィルターは、さらに、ショートパス光学フィルター及び染料をドープしたポリマーのうちの少なくとも一種を含む。
【0023】
本願において、前記染料をドープしたポリマーにおいて、染料は、MEH-PPV、P3HT、PC61BM、PVK、BDI、フラーレン、MDMO-PPVから選ばれる少なくとも一種であり、ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ醋酸ビニル、醋酸セルロース、ポリスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、透明ABSプラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルカルバゾールから選ばれる少なくとも一種である。本願において、染料のポリマー中のドープ量は、1重量%~20重量%であってもよい。
【0024】
任意的に、前記狭帯域光学フィルターでは、上記ポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターを採用しており、前記ポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターと、ショートパス光学フィルター又は染料分子添加剤に添加した染料分子とを組み合わせることによって、狭帯域フィルターを実現できる。
【0025】
本願において、ショートパス光学フィルター及び前記染料添加剤のうちの少なくとも一種と、上記したいずれか一つの光学フィルターとを組み合わせることで得られた狭帯域光学フィルターによって、単一色又は二色の狭帯域フィルターを実現できる。
【0026】
本願が与える有益な効果は、以下の効果を含む。
1)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料のフィルムは、非常に広い波長帯域で吸光度がほぼ0であり、透過率が95%程度であり、かつ、優れた耐候性、耐化学試薬性などの利点を有し、優れた吸収型光学フィルターマトリックス素材である。
2)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、カットオフ勾配が大きく、ピーク透過率が高く(>90%)、カットオフ深さに優れているという利点を有する。
3)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、モノバンドパス又はデュアルバンドパスを高透過率で実現でき、透過波長及び透過光の強度を連続的に調整可能であることを実現できる。
4)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、インサイチュ調製により得ることができ、調製プロセスが簡単であり、設備に対する要求が低く、原料の価格が安価であり、生産コストが低い。
5)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、安定性が良く、薄肉(20μm)であり、フレキシブル性が良く、デバイスの軽量化、小型化、フレキシブル加工の実現に有利であり、集積化に対応し易い。
6)本願が提供するポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターは、適宜なショートパス光学フィルター又は染料をドープしたポリマーフィルムと組み合わせると、単一色又は二色の狭帯域フィルターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本願の一つの実施様態におけるポリマーベースのナノ複合材料光学フィルター中の物質の具体的な存在形態の概略構成図である。
【
図2】本願の一つの実施様態におけるポリマーベースのナノ複合材料光学フィルターの調製フローを示すものである。
【
図3】本願実施例2における、サンプル1
#のMA
3Bi
2Br
9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC1
#の透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図4】本願実施例3における、サンプル6
#のMA
3In
2Cl
9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図5】本願の一つの実施様態におけるポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターと市販のショートパス光学フィルターとの組み合わせの概略構成図である。
【
図6】本願の一つの実施様態におけるポリマーベースのナノ複合材料に基づく光学フィルターとポリマーベースの染料複合材料光学フィルターとの組み合わせの概略構成図である。
【
図7】本願実施例4における、サンプル1
#のMA
3Bi
2Br
9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターと市販の450nmショートパス型モノバンドパス光学フィルターとを組み合わせて得られる狭帯域光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図8】本願実施例6における、サンプル6
#のMA
3In
2Cl
9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターと市販の300nmショートパス型モノバンドパス光学フィルターとを組み合わせて得られる狭帯域光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図9】本願実施例7における、サンプル6
#のMA
3In
2Cl
9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターと市販の375nmショートパス型モノバンドパス光学フィルターとを組み合わせて得られる狭帯域光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図10】本願実施例8における、サンプルMA
3In
2Cl
9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターとP3HT/ポリマー光学フィルターとを組み合わせて得られる狭帯域光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図11】本願実施例10における、固形分を制御することで得られる透過波長及び強度が連続的に調整可能な一連のMA
3Bi
2Br
9/ポリマー光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を示す図面である。
【
図12】本願実施例11における、膜厚を制御することで得られる透過波長及び強度が連続的に調整可能な一連のMA
3Bi
2Br
9/ポリマー光学フィルターを示すものである。
【
図13】本願における、Z3
#ロングパス光学フィルターと市販の干渉光学フィルターSEMROCK-FF01-276/SP-25光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を対比する図面である。
【
図14】本願における、C1
#狭帯域モノバンドパス光学フィルターと市販のガラス光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を対比する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施例に結びついて本願を詳しく説明するが、本願はこれらの実施例に限られていない。
【0029】
特に断りがない限り、本願の実施例中のポリマー、染料添加剤及び前駆体等の原料は、いずれも市販より購入されるものであり、ここで、前駆体は、いずれもAladdin社から購入され、染料は、いずれも西安p-oled社から購入され、ポリマーは、ドイツのBayer社から購入される。
【0030】
本願の実施例において、解析方法は、以下の通りである。
【0031】
日本リガクD/maxX線回折計、日立S-4800走査型電子顕微鏡を使用して、ポリマーベースのナノ複合材料のモルフォロジー及び構造に対して評価する。
【0032】
島津UV-3600紫外可視分光光度計を使用して、光学フィルターの光線透過率と波長変化との関係を解析する。
【0033】
以上の測定は、いずれも室温で行われる。
【0034】
実施例において、前記複合材料中の半導体材料のサイズが2~100nmの範囲内である。
【0035】
実施例1 ポリマーベースのナノ複合材料の調製
サンプルMA
3
Bi
2
Br
9
/ポリマー(PMMA)の調製
ポリマー(PMMA)をDMFに溶解させ、クリアで透明なポリマーゴム液を得、前駆体IのMABr(メチルアンモニウムブロミド)と前駆体IIのBiBr3をモル比で3:2の比率でDMFに溶解させて前駆体溶液を得、固形分が50重量%となるような添加量で前駆体溶液をポリマーゴム液に添加し、均一に混合し、流延して乾燥させることにより、サンプル1#のMA3Bi2Br9/ポリマーを得た。
【0036】
固形分がそれぞれ10重量%、20重量%、30重量%、40重量%であるように条件を振り、その他の条件をそのままにし、サンプル2#、3#、4#、5#のMA3Bi2Br9/ポリマーを得た。
【0037】
サンプルMA
3
In
2
Cl
9
/ポリマー(PVDc)の調製
サンプルMA3In2Cl9/ポリマーの調製過程とサンプルMA3Bi2Br9/ポリマーの調製過程とは類似するが、相違点は、ポリマーをPVDcに取り替え、前駆体IをMAClに取り替え、前駆体IIをInCl3に取り替え、固形分を3重量%に変更したということであり、これにより、サンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマーを得た。
【0038】
サンプルMA
3
In
2
Cl
9
/ポリマー(PMMA)の調製
サンプルMA3In2Cl9/ポリマー(PMMA)の調製過程とサンプルMA3In2Cl9/ポリマー(PVDc)の調製過程とは類似するが、相違点は、ポリマー(PVDc)をポリマー(PMMA)に取り替え、溶媒をTHFに取り替えたということであり、これにより、サンプル7#のMA3In2Cl9/ポリマーを得た。
【0039】
その他のサンプルも類似する調製過程で調製され、具体的なサンプル番号及び調製条件は、表1に示される通りである。
【0040】
【0041】
実施例2 サンプル1#のMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC1#~C5#の調製
ガラス板を基材とし、ガラス板の表面をきれいに清浄化し、溶解済みのサンプル1#のMA3Bi2Br9/ポリマー(PMMA)の混合液をガラス板に塗布し、コーティングブレードで厚み200μmのウェットフィルムとなる(対応するドライフィルムの厚みが約20μmである)ようにブレードコーティングし、ウェットフィルムを塗布したガラス板を真空乾燥ボックス中に置いて50℃で真空乾燥し、完全に乾燥した後に、80℃で30minアニーリングし、MA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC1#を得た。
【0042】
該光学フィルターの透過率の波長につれて変化する関係は、
図3に示されている。
図3より分かるように、該光学フィルターは、420nm超えの波長帯域で透過率>90%であり、
カット波長帯域内で光線透過率が1%未満であり、カットオフ勾配が大きい。該光学フィルターと市販のガラス光学フィルターの透過率と波長変化との関係を対比する図面は、
図14に示されている。
図14より分かるように、該光学フィルターの透過域での平均透過率は、91%であり、市販のガラス光学フィルター(85%)よりも高い。該光学フィルターの厚みが15μmであり、市販のガラス光学フィルターの厚み(3.2mm)よりも遥かに薄い。該光学フィルターは、カットオフ勾配が市販のガラス光学フィルターよりもやや優れている。
【0043】
上記方法におけるコーティングブレードによるウェットフィルムの厚みを50μmに変更した以外、その他の工程を同じとし、これによりMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC2#を得た。
【0044】
上記方法におけるコーティングブレードによるウェットフィルムの厚みを1000μmに変更した以外、その他の工程を同じとし、これによりMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC3#を得た。
【0045】
上記方法におけるアニーリングの条件を20℃で1時間のアニーリングに変更した以外、その他の工程を同じとし、これによりMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC4#を得た。
【0046】
上記方法におけるアニーリングの条件を100℃で0.17時間のアニーリングに変更した以外、その他の工程を同じとし、これによりMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターC5#を得た。
【0047】
実施例3 サンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターの調製
ガラス板を基材とし、ガラス板の表面をきれいに清浄化し、溶解済みのサンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマー(PVDc)の混合液をガラス板に塗布し、コーティングブレードで厚みが200μmのウェットフィルムとなる(対応するドライフィルムの厚みが約20μmである)ようにブレードコーティングし、ウェットフィルムを塗布したガラス板を真空乾燥ボックス中に置いて60℃で真空乾燥し、完全に乾燥した後に、80℃で30minアニーリングし、MA3In2Cl9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターを得、6#とする。
【0048】
該光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係は、
図4に示されている。
図4から分かるように、該光学フィルターは、250~320nm及び345nm超えの範囲内で比較的に高い透過率を有し、ただし、250~320nmの範囲内のピーク透過率が約82%であり、345nm超えの範囲内の透過率がおおよそ>91%であり、
カット波長
帯域内で光線透過率が1%未満であり、カットオフ勾配が比較的に大きい。
【0049】
実施例4 MA3Bi2Br9/ポリマーに基づく狭帯域光学フィルターZ1#の調製
実施例2におけるMA3Bi2Br9/ポリマー(PMMA)に基づくロングパス光学フィルターと市販の450nmショートパス光学フィルターを組み合わせて中央波長が440nmの狭帯域光学フィルターを得た。具体的な工程は、以下の通りである。
【0050】
市販の450nmショートパス光学フィルターを基材として用い、市販の450nmショートパス光学フィルターの表面をきれいに清浄化し、溶解済みのサンプル1#のMA3Bi2Br9/ポリマーの混合液を市販の450nmショートパス光学フィルターに塗布する。コーティングブレードで厚みが200μmのウェットフィルムとなる(対応するドライフィルムの厚みが約20μm)ようにブレードコーティングする。ウェットフィルムを塗布した市販の450nmショートパス光学フィルターを真空乾燥ボックス中に置いて50℃で真空乾燥し、完全に乾燥した後に80℃で30minアニーリングし、組み合わせた狭帯域光学フィルターを得、Z1#とする。
【0051】
該狭帯域光学フィルターの構造は、
図5に示されており、透過率が波長につれて変化する関係は、
図7に示されており、該狭帯域光学フィルターは、ピーク透過率>84%であり、
カット波長帯域内で光線透過率が1%未満であり、半値幅(half bandwidth)が28nmである。
【0052】
実施例5 MA3Bi2Br9/ポリマーに基づく狭帯域光学フィルターZ2#の調製
実施例2におけるMA3Bi2Br9/ポリマー(PMMA)に基づくロングパス光学フィルターとMDMO-PPV/ポリマー光学フィルターとを組み合わせて狭帯域光学フィルターを得た。具体的な工程は、以下の通りである。
【0053】
MDMO-PPVを固形分が10%となるような比率でポリマー(PVDF)と混合してトルエンに溶解させ、クリアな染料/ポリマー混合液を得た。
【0054】
上記混合液を実施例2におけるMA3Bi2Br9/ポリマーに基づくロングパス光学フィルターに塗布し、コーティングブレードで厚みが200μmのウェットフィルムとなるようにブレードコーティングした。
【0055】
上記ウェットフィルムを真空乾燥ボックス中に置いて30℃で真空乾燥し、フィルムが完全に乾燥するまで乾燥し、組み合わせた狭帯域光学フィルターを得、Z2
#とする。該光学フィルターの構造は、
図6に示されている。
【0056】
実施例6 MA3In2Cl9/ポリマーに基づく狭帯域モノバンドパス光学フィルターZD1#
サンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマー(PVDc)に基づくデュアルバンドパス光学フィルターと市販の300nmショートパス光学フィルターを組み合わせることにより、狭帯域モノバンドパス光学フィルターを得、ZD1#とする。具体的な工程は、以下の通りである。
【0057】
実施例3において、基材を市販の300nmのショートパス光学フィルターに変更した以外、その他の工程をそのままとする。該光学フィルターの構造は、
図5に示されており、その透過率が波長につれて変化する関係は、
図8に示されており、
図8から分かるように、得られたモノバンドパス狭帯域光学フィルターは、ピーク透過率が82%であり、
カッ
ト波長帯域内で光線透過率が1%未満であり、半値幅が33nmである。
【0058】
実施例7 MA3In2Cl9/ポリマーに基づく狭帯域デュアルバンドパス光学フィルターZS1#
サンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマー(PVDc)に基づくデュアルバンドパス光学フィルターと市販の375nmショートパス光学フィルターを組み合わせることにより、狭帯域デュアルバンドパス光学フィルターを得、ZS1#とする。具体的な工程は、以下の通りである。
【0059】
実施例3において、基材を市販の375nmのショートパス光学フィルターに変更した以外、その他の工程をそのままとする。該光学フィルターの構造は、
図5に示されており、その透過率が波長につれて変化する関係は、
図9に示されており、
図9から分かるように、得られた狭帯域デュアルバンドパス光学フィルターは、250~320nmの範囲内でピーク透過率が82%であり、
カット波長帯域内で光線透過率が1%未満であり、半値幅が45nmであり、345~388nmの範囲内でピーク透過率が86%であり、
カット
波長帯域内で光線透過率が1%未満であり、半値幅が20nmである。
【0060】
実施例8 MA3In2Cl9/ポリマーに基づく狭帯域モノバンドパス光学フィルターZ3#
サンプル6#のMA3In2Cl9/ポリマー(PVDc)に基づくデュアルバンドパス光学フィルターとP3HT/ポリマー光学フィルターを組み合わせることにより、狭帯域光学フィルターを得た。具体的な工程は、以下の通りである。
【0061】
染料P3HTを固形分が10重量%となるような比率でポリマーと混合しトルエンに溶解させ、クリアなP3HT/ポリマーゴム液を得た。上記ゴム液を実施例3に記載のMA3In2Cl9/ポリマーに基づくデュアルバンドパス光学フィルターに塗布し、コーティングブレードで厚みが200μmのウェットフィルムとなるようにブレードコーティングした。上記ウェットフィルムを真空乾燥ボックス中に置いて30℃でフィルムが完全に乾燥するまで真空乾燥し、狭帯域光学フィルターを得、Z3#光学フィルターとする。
【0062】
該光学フィルターの構造は、
図6に示されており、透過率が波長につれて変化する関係は、
図10に示されており、該光学フィルターは、250~315nmの範囲内でピーク透過率>82%であり、半値幅が43nmである。該光学フィルターと市販の干渉光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係を対比する図面は、
図13に示されている。
図13から分かるように、該光学フィルターの最大透過率が83%であり、市販の干渉光学フィルター(45%)より高い。該光学フィルターの厚みが12μmであり、市販のガラス光学フィルターの厚み(3.5mm)より遥かに薄い。
【0063】
実施例9 染料をポリマーベースのナノ複合材料フィルムへの添加剤とする狭帯域光学フィルターの調製
染料を複合フィルムの添加剤として狭帯域光学フィルターを調製する。
【0064】
上記実施例5及び実施例8において、MDMO-PPV、P3HTを均一に前駆体/ポリマーゴム液に分散すると、実施例5及び実施例8と効果が同様である狭帯域光学フィルターZ4#及びZ5#を得た。
【0065】
Z4#の調製法は、具体的に以下の通りである。MDMO-PPVを実施例2に記載の前駆体/ポリマーゴム液に均一に分散し、その後の工程を実施例2と完全に同じとし、MA3Bi2Br9/ポリマー狭帯域光学フィルターを得た。ここで、MA3Bi2Br9/ポリマー中のMDMO-PPVの含有量が1重量%である。
【0066】
Z5#の調製法は、具体的に以下の通りである。P3HTを実施例3に記載の前駆体/ポリマーゴム液に均一に分散し、その後の工程を実施例3と完全に同じとし、MA3In2Cl9/ポリマー狭帯域光学フィルターを得た。ここで、MA3Bi2Br9/ポリマー中のMDMO-PPVの含有量が20重量%である。
【0067】
P3HTを実施例3に記載の前駆体/ポリマーゴム液に均一に分散し、その後の工程を実施例3と完全に同じとし、MA3In2Cl9/ポリマー狭帯域光学フィルターZ6#を得た。ここで、MA3Bi2Br9/ポリマー中のMDMO-PPVの含有量が10重量%である。
【0068】
実施例10
ポリマーベースのナノ複合材料中の半導体材料の固形分を制御することによって、最大透過率及び透過波長を連続的に調整可能なことを実現できる。
【0069】
実施例2に記載の工程に従い、実施例1中のサンプル1
#~5
#のMA
3Bi
2Br
9/ポリマーから一連のMA
3Bi
2Br
9/ポリマー光学フィルターサンプルを調製し、その透過率が波長につれて変化する関係を測定した結果は、
図11に示されている。図面から分かるように、280~370nmの範囲内でピーク透過率が70%から1%未満まで調整されることとなっており、ロングパス波長帯域が400nmから425nmまで調整されることとなっている。
【0070】
実施例11
ポリマーベースのナノ複合材料フィルムの膜厚を制御することで、最大透過率及び透過波長を連続的に調整可能なことを実現できる。
【0071】
実施例1で得られたサンプル1#のMA3Bi2Br9/ポリマー(PMMA)をそれぞれ、ウェットフィルムの厚みがそれぞれ100μm、200μm、400μm、1000μmとなるようにガラス板基材に塗布し、真空乾燥ボックス中で50℃で真空乾燥し、完全に乾燥した後に、80℃で30minアニーリングし、一連のMA3Bi2Br9/ポリマー(PMMA)デュアルバンドパス光学フィルターを得た。
【0072】
これらの光学フィルターの透過率が波長につれて変化する関係について、
図12に示されるように、280~370nmの範囲内でピーク透過率が72%から1%未満まで調整されることとなっており、ロングパス波長帯域が405nmから425nmまで調整されることとなっている。
【0073】
以上は、本願発明の幾つかの実施例に過ぎず、本発明に如何なる制限を意図することはなく、好適な実施例は、以上のように示されているが、本願を制限するためのものではなく、本分野を熟知している当業者が本発明の技術方案の範囲から離脱することなく前記に示される技術的内容を利用して適度の変更や修飾をすることは、均等する実施様態に該当し、いずれも本技術方案の範囲内である。