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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】掴線器、および、線材切分工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/04 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
H02G1/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565621
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047129
(87)【国際公開番号】W WO2020144976
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2019003918
(32)【優先日】2019-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 智春
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088256(JP,A)
【文献】特開2002-262421(JP,A)
【文献】実開昭58-176516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材に接触する第1接触面を有する第1部材と、
前記線材に接触する第2接触面を有する第2部材と、
前記第1部材に対して、第1軸まわりに回動可能に連結され、かつ、前記第2部材に対して、第2軸まわりに回動可能に連結される揺動部材と、
前記第1接触面と前記第2接触面との間の線材受容空間に前記線材を案内するガイド部材と
を具備し、
前記ガイド部材は、
前記線材受容空間の側部の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖部と、
前記線材を前記線材受容空間に向けて案内するガイド部と
を有し、
前記ガイド部が前記線材によって押圧されると、前記閉鎖部は、前記線材受容空間から離れる方向に移動する
掴線器。
【請求項2】
前記ガイド部材は、
前記閉鎖部を有する第1板部と、
前記ガイド部を有する第2板部と
を有し、
前記第1板部と前記第2板部とは、屈曲部を介して連結されている
請求項1に記載の掴線器。
【請求項3】
線材に接触する第1接触面を有する第1部材と、
前記線材に接触する第2接触面を有する第2部材と、
前記第1部材に対して、第1軸まわりに回動可能に連結され、かつ、前記第2部材に対して、第2軸まわりに回動可能に連結される揺動部材と、
前記第1接触面と前記第2接触面との間の線材受容空間に前記線材を案内するガイド部材と
を具備し、
前記ガイド部材は、
前記線材受容空間の側部の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖部と、
前記線材を前記線材受容空間に向けて案内するガイド部と
を有し、
前記閉鎖部の位置は、前記線材が前記線材受容空間に挿入されることを許容する第1位置と、前記線材が前記線材受容空間から外れるのを防止する第2位置との間で位置変更可能であり、
前記閉鎖部は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢されてい
線器。
【請求項4】
前記ガイド部材は、
前記閉鎖部を有する第1板部と、
前記ガイド部を有する第2板部と
を有し、
前記第1板部と前記第2板部とは、屈曲部を介して連結されている
請求項に記載の掴線器。
【請求項5】
前記閉鎖部の位置は、前記線材が前記線材受容空間に挿入されることを許容する第1位置と、前記線材が前記線材受容空間から外れるのを防止する第2位置との間で位置変更可能であり、
前記閉鎖部は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢されている
請求項1または2に記載の掴線器。
【請求項6】
線材に接触する第1接触面を有する第1部材と、
前記線材に接触する第2接触面を有する第2部材と、
前記第1部材に対して、第1軸まわりに回動可能に連結され、かつ、前記第2部材に対して、第2軸まわりに回動可能に連結される揺動部材と、
前記第1接触面と前記第2接触面との間の線材受容空間に前記線材を案内するガイド部材と
を具備し、
前記ガイド部材は、
前記線材受容空間の側部の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖部と、
前記線材を前記線材受容空間に向けて案内するガイド部と
を有し、
前記閉鎖部のうち前記線材受容空間に面する面には、凸部が設けられてい
線器。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記線材に接触することにより前記線材を案内するガイド面を備え、
前記ガイド面は、前記第1軸に垂直な面に対して傾斜した傾斜面である
請求項1乃至のいずれか一項に記載の掴線器。
【請求項8】
前記ガイド部材には、前記線材受容空間の外部から前記線材受容空間の内部を視認可能にするスリットまたは貫通孔が形成されているか、あるいは、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材に対して隙間を開けて配置された第2ガイド部材を有する
請求項1乃至のいずれか一項に記載の掴線器。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の掴線器と、
前記掴線器に連結された伸縮可能な棒部材と、
前記棒部材に連結された第2掴線器と
を具備する
線材切分工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掴線器、および、線材切分工具に関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線等の線材を把持する掴線器が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、架線切分け工具が開示されている。特許文献1に記載の架線切分け工具では、一方の掴線器が架線に引っ掛けられた後、他方の掴線器が遠隔操作棒を用いて押し上げられる。より具体的には、他方の掴線器の外れ止めのリング部に遠隔操作棒のフックが引っ掛けられた状態で、他方の掴線器が遠隔操作棒を用いて押し上げられる。
【0004】
特許文献1に記載の架線切分け工具では、他方の掴線器を押し上げるに際して、他方の掴線器の外れ止めのリング部に係合した遠隔操作棒と、他方の掴線器が取り付けられる架線とが互いに交差することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-67007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、線材に掴線器を取り付けることが容易な掴線器、および、線材切分工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す、掴線器、および、線材切分工具に関する。
【0008】
(1)線材に接触する第1接触面を有する第1部材と、
前記線材に接触する第2接触面を有する第2部材と、
前記第1部材に対して、第1軸まわりに回動可能に連結され、かつ、前記第2部材に対して、第2軸まわりに回動可能に連結される揺動部材と、
前記第1接触面と前記第2接触面との間の線材受容空間に前記線材を案内するガイド部材と
を具備し、
前記ガイド部材は、
前記線材受容空間の側部の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖部と、
前記線材を前記線材受容空間に向けて案内するガイド部と
を有する
掴線器。
(2)前記ガイド部材は、
前記閉鎖部を有する第1板部と、
前記ガイド部を有する第2板部と
を有し、
前記第1板部と前記第2板部とは、屈曲部を介して連結されている
上記(1)に記載の掴線器。
(3)前記ガイド部が前記線材によって押圧されると、前記閉鎖部は、前記線材受容空間から離れる方向に移動する
上記(1)または(2)に記載の掴線器。
(4)前記閉鎖部の位置は、前記線材が前記線材受容空間に挿入されることを許容する第1位置と、前記線材が前記線材受容空間から外れるのを防止する第2位置との間で位置変更可能であり、
前記閉鎖部は、前記第1位置から前記第2位置に向かう方向に付勢されている
上記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の掴線器。
(5)前記閉鎖部のうち前記線材受容空間に面する面には、凸部が設けられている
上記(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の掴線器。
(6)前記ガイド部は、前記線材に接触することにより前記線材を案内するガイド面を備え、
前記ガイド面は、前記第1軸に垂直な面に対して傾斜した傾斜面である
上記(1)乃至(5)のいずれか一つに記載の掴線器。
(7)前記ガイド部材には、前記線材受容空間の外部から前記線材受容空間の内部を視認可能にするスリットまたは貫通孔が形成されているか、あるいは、
前記ガイド部材は、第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材に対して隙間を開けて配置された第2ガイド部材を有する
上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の掴線器。
(8)上記(1)乃至(7)のいずれか一つに記載の掴線器と、
前記掴線器に連結された伸縮可能な棒部材と、
前記棒部材に連結された第2掴線器と
を具備する
線材切分工具。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、線材に掴線器を取り付けることが容易な掴線器、および、線材切分工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態における掴線器を模式的に示す概略2面図である。
図2図2は、ガイド部の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図3図3は、レバー部材の一例を模式的に示す概略正面図である。
図4図4は、第1の実施形態の変形例における掴線器を模式的に示す概略正面図である。
図5図5は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略2面図である。
図6図6は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略側面図である。
図7図7は、ガイド部材の一例を模式的に示す概略正面図である。
図8図8は、ガイド部材の他の一例を模式的に示す概略正面図である。
図9図9は、ガイド部材の更に他の一例を模式的に示す概略正面図である。
図10図10は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略2面図である。
図11図11は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略2面図である。
図12図12は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略2面図である。
図13図13は、第2の実施形態における掴線器を模式的に示す概略側面図である。
図14図14は、第3の実施形態における線材切分工具を模式的に示す概略正面図である。
図15図15は、線材支持具の一例を模式的に示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施形態における掴線器1、および、線材切分工具100について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0012】
(方向の定義)
本明細書において、掴線器によって把持される線材の延在方向、換言すれば、掴線器の線材受容空間の延在方向を、「第1方向」と定義する。なお、掴線器がレバー部材(レバー部材40)を備える場合には、掴線器によって把持される線材の延在方向であって、レバー部材が牽引される方向を「第1方向」と定義し、第1方向とは反対の方向を第2方向と定義する。また、本明細書において、掴線器の第1方向側が、「後方」と呼ばれ、掴線器の第2方向側が、「前方」と呼ばれる場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至図4を参照して、第1の実施形態における掴線器1Aについて説明する。図1は、第1の実施形態における掴線器1Aを模式的に示す概略2面図である。図1の右側には、概略正面図が記載され、図1の左側には、概略側面図が記載されている。なお、図1の左側の図(概略側面図)において、図面の複雑化を避けるため、ロック部材50等の記載が省略されている。図2は、ガイド部GAの一例を模式的に示す概略斜視図である。図3は、レバー部材40の一例を模式的に示す概略正面図である。図4は、第1の実施形態の変形例における掴線器1Aを模式的に示す概略正面図である。
【0014】
第1の実施形態における掴線器1Aは、第1部材11と、第2部材12と、揺動部材20と、第1係合部30とを備える。
【0015】
第1部材11は、線材W(より具体的には線材Wの上側面)に接触する第1接触面11aを有する。第1接触面11aの第1方向DR1に垂直な断面形状は、例えば、上側に向かって凹んだ曲線形状である。第1部材11は、1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。
【0016】
第2部材12は、線材W(より具体的には線材Wの下側面)に接触する第2接触面12aを有する。第2接触面12aの第1方向DR1に垂直な断面形状は、例えば、下側に向かって凹んだ曲線形状である。第2部材12は、1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。
【0017】
第1接触面11aおよび第2接触面12aが線材Wに接触することによって、第1部材11および第2部材12は、線材Wを把持する。なお、第1部材11および第2部材12によって把持される線材Wは、例えば、電線(より具体的には、架設電線)である。
【0018】
揺動部材20は、第1部材11に対して、第1軸AX1まわりに回動可能に連結されている。より具体的には、掴線器1Aは、揺動部材20と第1部材11とを回動可能に連結する第1ピン部材P1を備え、当該第1ピン部材P1が第1軸AX1に沿って配置されている。
【0019】
また、揺動部材20は、第2部材12に対して、第2軸AX2まわりに回動可能に連結されている。より具体的には、掴線器1Aは、揺動部材20と第2部材12とを回動可能に連結する第2ピン部材P2を備え、当該第2ピン部材P2が第2軸AX2に沿って配置されている。
【0020】
揺動部材20が、第1軸AX1まわりを回動すると、揺動部材20に連結された第2部材12が第1部材11に対して相対移動し、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の距離が変化する。また、第2接触面12aが線材Wに接触すると、第2部材12は、第2軸AX2まわりを、揺動部材20に対して回動する。こうして、第2接触面12aが第1接触面11aに対して平行となり、第1接触面11aおよび第2接触面12aに接触する線材Wにバランスよく把持力が作用する。なお、揺動部材20は、1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。図1に記載の例では、揺動部材20は、板状の部材である。また、揺動部材20は、正面視、略三角形形状を有し、当該三角形の各頂点部分に、上述の第1軸AX1、上述の第2軸AX2、および、後述の第3軸AX3がそれぞれ配置されている。ただし、揺動部材20の形状および構造は、図1に記載の例に限定されない。
【0021】
第1係合部30は、掴線器持ち上げ工具(換言すれば、掴線器1Aを上方に持ち上げるための遠隔操作工具)の先端部に係合可能な部分である。図1に記載の例では、第1係合部30は、貫通孔部30hである。
【0022】
図1に記載の例では、第1係合部30が、第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されている。より具体的には、第1接触面11aが第2接触面12aの上方に位置するように第1部材11および第2部材12の姿勢が維持された状態(換言すれば、掴線器1Aが掴線器持ち上げ工具によって持ち上げられた状態)において、第1係合部30が、第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されている。
【0023】
第1係合部30が、第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されている場合、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の線材受容空間SPに線材Wが挿入されるまでの工程(換言すれば、掴線器1Aを線材Wに取り付ける工程)において、掴線器持ち上げ工具が線材Wと交差しない。より具体的には、掴線器1Aを線材Wに取り付ける工程において、掴線器持ち上げ工具のうちの第1係合部30と係合する部分が、常に、線材Wの下方に位置している。よって、線材Wと掴線器持ち上げ工具とが干渉せず、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業を円滑に行うことができる。
【0024】
続いて、第1の実施形態の掴線器1Aにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0025】
(第1部材11)
第1部材11は、第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも上方に位置する上側部分111と、第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に位置する下側部分112と、第1接触面11aの高さと第2接触面12aの高さとの間の高さに位置する中間部分113とを有していてもよい。
【0026】
図1に記載の例では、第1係合部30は、第1部材11のうちの下側部分112に配置されている。このため、掴線器1Aを線材Wに取り付ける工程において、線材Wと掴線器持ち上げ工具とが干渉せず、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業を円滑に行うことができる。
【0027】
また、第1係合部30が、第1部材11(より具体的には、第1部材11の下側部分112)に設けられている場合には、掴線器1Aを線材Wに取り付ける工程において、第1係合部30と第1部材11(より具体的には、第1接触面11a)との間の位置関係が変化しない。より具体的には、第1部材11が線材Wに接触することにより、第1係合部30が第1部材11に対して揺動運動することはない。よって、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業を円滑に実行することができる。これに対し、例えば、第1係合部30が、揺動部材20に配置されている場合には、第1部材11が線材Wに接触することにより、第1係合部が揺動部材20と共に、第1部材11に対して揺動する。当該揺動によって、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業が阻害される可能性がある。
【0028】
(レバー部材40)
第1の実施形態における掴線器1Aは、揺動部材20に対して、第3軸AX3まわりに回動可能に連結されるレバー部材40を備えていてもよい。また、掴線器1Aは、揺動部材20とレバー部材40とを回動可能に連結する第3ピン部材P3を備えていてもよい。当該第3ピン部材P3は、第3軸AX3に沿って配置される。
【0029】
図1に示されるように、レバー部材40が第1方向DR1に引っ張られると、レバー部材40に接続された揺動部材20は、第1軸AX1まわりを揺動する。当該揺動部材20の揺動に伴い、第2部材12の第2接触面12aが第1部材の第1接触面11aに近づく方向に移動し、その結果、線材Wが、第1部材11および第2部材12によって把持される。なお、図1に記載の例では、レバー部材40の第2端部40b(揺動部材20に連結された第1端部とは反対側の端部)は、自由端部である。当該自由端部は、例えば、後述の伸縮可能な棒部材70に連結される。図1に示されるように、レバー部材40の第2端部40bには、上下方向に沿って、2つ以上の貫通孔40hが形成されていてもよい。この場合、棒部材70に対して第2端部40bを連結する位置を上下方向に切り替えることが可能となる。
【0030】
(ガイド部GA)
掴線器1A(より具体的には、第1部材11)は、レバー部材40の移動をガイドするガイド部GAを有していてもよい。
【0031】
図1に記載の例では、ガイド部GAは、第1部材11の後方側部分(第1方向DR1側の部分)に設けられている。図1に記載の例では、ガイド部GAは、第1接触面11aの後端(または第2接触面12aの後端)よりも下方かつ後方に突出するように延在している。
【0032】
図2に記載の例では、ガイド部GAは、レバー部材40をガイドするガイド壁Gwを備える。ガイド壁Gwは、例えば、レバー部材40の中間部分43(図1を参照。)が挿通される貫通孔Ghを規定する壁である。ガイド部GAは、レバー部材40の位置を規制することにより、レバー部材40が横方向(図1の紙面に垂直な方向)に過剰に位置ずれすることを抑制し、その結果、レバー部材40と揺動部材20との間の連結部分に過剰な荷重が作用することを抑制する。
【0033】
図1に記載の例では、第1係合部30が、レバー部材40の移動をガイドするガイド部GAに配置されている。より具体的には、第1係合部30は、ガイド部GAのうち、レバー部材40の下方に位置するガイド部下端部(換言すれば、第1部材11の下端部112b)に配置されている。
【0034】
第1係合部30が、レバー部材40の移動をガイドするガイド部GAに配置されている場合には、第1係合部30が、第1接触面11a、第2接触面12a、および、揺動部材20から十分に離れた位置に配置されることとなる。このため、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業を行う作業者の視界が、第1係合部30に係合した掴線器持ち上げ工具によって妨げられることが抑制される。
【0035】
(レバー部材40の係合部42)
レバー部材40は、ガイド部GA(より具体的には、下端部112b)に係合可能な係合部42を有していてもよい。図3に記載の例では、係合部42は、レバー部材40の下面40sに設けられている。また、図3に記載の例では、係合部42は、レバー部材40の下面40sに設けられた凹部40dである。
【0036】
レバー部材40が、ガイド部GAに係合可能な係合部42を備える場合、レバー部材40とガイド部GAとの間の相対位置を維持することが可能である。
【0037】
掴線器1Aを掴線器持ち上げ工具によって持ち上げる際に、レバー部材40が第1部材11に対して相対移動すると、揺動部材20が揺動する。その結果、第1部材11の第1接触面11aと第2部材12の第2接触面12aとの間の間隔が変化する。第1接触面11aと第2接触面12aとの間の間隔が変化すると、第1接触面11aと第2接触面12aとによって規定される線材受容空間SP内に線材Wを挿入する作業が阻害される可能性がある。
【0038】
これに対し、レバー部材40が、ガイド部GAに係合可能な係合部42を備える場合、掴線器1Aを掴線器持ち上げ工具によって持ち上げる際に、レバー部材40が第1部材11に対して相対移動しない。よって、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の間隔が一定間隔に維持され、第1接触面11aと第2接触面12aとによって規定される線材受容空間SP内に線材Wを挿入する作業を円滑に実行することができる。
【0039】
なお、図1に記載の例では、係合部42と、ガイド部GA(より具体的には、下端部112b)との間の係合は、レバー部材40に作用する重力によって維持される。換言すれば、レバー部材40に作用する重力に抗して、レバー部材40を持ち上げれば、係合部42とガイド部GAとの間の係合を解除することが可能である。
【0040】
(第1係合部30の配置)
図1に記載の例では、第1係合部30が、第1部材11の後方側部分(より具体的には、レバー部材40の移動をガイドするガイド部GA)に配置されている。代替的に、図4に示されるように、第1係合部30が、第1部材11の前方側部分11f(より具体的には、第2方向DR2側の端部)に配置されていてもよい。なお、第1係合部30が、第1接触面11aの前端(または第2接触面12aの前端)よりも下方かつ前方に突出するように配置されている場合には、掴線器1Aを線材Wに取り付ける作業を行う作業者の視界が、第1係合部30に係合した掴線器持ち上げ工具によって妨げられることが抑制される。
【0041】
(第1係合部30の形状または構造)
図1または図4に記載の例では、第1係合部30は、貫通孔部30hである。また、貫通孔部30hの中心軸AXは、第1軸AX1と平行である。代替的に、貫通孔部30hの中心軸AXは、第1方向DR1と平行であってもよい。なお、第1係合部30が貫通孔部30hである場合、当該孔部の内径は、例えば、13mm以上45mm以下である。
【0042】
図1または図4に記載の例では、第1係合部30は、第1部材11とは別体の第1係合部材3によって構成されている。代替的に、第1係合部30は、第1部材11に一体的に形成されていてもよい。換言すれば、第1部材11に孔開け加工等を施すことにより、第1係合部30が形成されてもよい。なお、第1係合部材3は、突出部32(例えば、肩部)を有していてもよい。図1に記載の例では、突出部32は、貫通孔30hの中心軸AXよりも上方(より具体的には、貫通孔30hの上端よりも上方)に配置されている。ある種の掴線器持ち上げ工具(例えば、SHOTGUN STICK(HASTINGS社製)、SHOTGUN STICK(AB CHANCE社製))が第1係合部30と係合した状態で、当該掴み線器持ち上げ工具の一部分が突出部32に接触すると、第1係合部材3(および掴線器1A)が、掴線器持ち上げ工具に対して揺動することが抑制される。よって、第1係合部材3に突出部32が設けられている場合には、線材Wに向けて掴線器1Aをアプローチする作業が容易となる。図1に記載の例では、突出部32は、貫通孔30hの中心軸AXをとおる鉛直面Paから離れる方向に向けて突出している。また、突出部32は、第1の突出部32aと、第2の突出部32bを含み、第1の突出部32aの突出方向は、第2の突出部32bの突出方向と反対の方向である。
【0043】
図1または図4に記載の例では、第1係合部材3には、第1係合部30として機能する貫通孔部30hに加え、第2貫通孔部31hが形成されている。第2貫通孔部31hは、第1係合部材3の軽量化に寄与する孔部である。なお、第2貫通孔部31hの孔形状は、貫通孔部30hの孔形状と異なる形状であることが好ましい。第2貫通孔部31hの孔形状が、貫通孔部30hの孔形状と異なる形状であることにより、作業者は、掴線器持ち上げ工具を係合させるべき孔部がどの孔部であるのかを容易に認識することができる。図1または図4に記載の例では、貫通孔部30hの孔形状が円形状であり、第2貫通孔部31hの孔形状が非円形形状である。
【0044】
(ロック部材50)
掴線器1Aは、ロック部材50を備えていてもよい。ロック部材50は、第1接触面11aと第2接触面12aとの間で線材Wが把持された状態を維持するための部材、換言すれば、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の距離を規定する部材である。
【0045】
図1に記載の例では、ロック部材50の第1部分51は、第1部材11に取り付けられ、ロック部材50の第2部分(図示は省略)は、揺動部材20に取り付けられている。そして、ロック部材50は、第1部材11に取り付けられる第1部分51、および、揺動部材20に取り付けられる第2部分に加え、操作部50a(例えば、操作環)と、ロック部材50の第1部分51とロック部材50の第2部分との間の間隔を調整するねじ棒50bとを具備する。なお、ロック部材50の第1部分51または第2部分の一方には、ねじ棒50bに螺合するねじが形成されている。また、ロック部材50の第1部分51または第2部分の他方には、ねじ棒50bに螺合するねじが形成されていない、換言すると、ねじ棒50bを挿通する貫通孔が形成されている。そして、操作部50a(例えば、操作環)を、遠隔操作工具を用いて回転させることにより、ねじ棒50bが回転する。ねじ棒50bが回転すると、ロック部材50の第1部分51または第2部分の一方がねじ棒5bに螺合していることから、ロック部材50の第1部分51とロック部材50の第2部分との間の間隔が小さくなり、揺動部材20が揺動する。揺動部材20が揺動することにより、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の距離が小さくなり、線材Wが第1接触面11aと第2接触面12aとの間で把持される。
【0046】
第1接触面11aと第2接触面12aとの間に、線材Wが配置された状態で、ロック部材50を操作することにより、第1接触面11aおよび第2接触面12aによる線材Wの把持状態が維持される。また、ロック部材50は、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の距離が大きくなる方向に揺動部材20が揺動することを制限する。このため、掴線器1Aが意図せずして、線材Wから脱落することが防止される。
【0047】
(第2の実施形態)
図5乃至図13を参照して、第2の実施形態における掴線器1Bについて説明する。図5は、第2の実施形態における掴線器1Bを模式的に示す概略2面図である。図5の右側には、概略正面図が記載され、図5の左側には、概略側面図が記載されている。なお、図5の左側の図(概略側面図)において、図面の複雑化を避けるため、ロック部材50等の記載が省略されている。図6は、第2の実施形態における掴線器1Bを模式的に示す概略側面図である。図7は、ガイド部材60の一例を模式的に示す概略正面図である。図8は、ガイド部材60の他の一例を模式的に示す概略正面図である。図9は、ガイド部材60の更に他の一例を模式的に示す概略正面図である。図10乃至図12は、第2の実施形態における掴線器1Bを模式的に示す概略2面図である。図10乃至図12の上側には概略平面図が記載され、図10乃至図12の下側には概略側面図が記載されている。図13は、第2の実施形態における掴線器1Bを模式的に示す概略側面図である。
【0048】
第2の実施形態における掴線器1Bは、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の線材受容空間SPに線材Wを案内するガイド部材60を備える。
【0049】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0050】
第2の実施形態における掴線器1Bは、第1部材11と、第2部材12と、揺動部材20と、ガイド部材60とを備える。掴線器1Bは、レバー部材40を備えていてもよい。
【0051】
第1部材11、第2部材12、揺動部材20、および、レバー部材40については、第1の実施形態において説明済みであるため、第1部材11、第2部材12、揺動部材20、および、レバー部材40についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0052】
ガイド部材60は、第1接触面11aと第2接触面12aとの間の線材受容空間SPに線材Wを案内する部材であり、閉鎖部61と、ガイド部62とを備える。
【0053】
閉鎖部61は、線材受容空間SPの側部の少なくとも一部を閉鎖する部分である。閉鎖部61は、線材受容空間SPに挿入された線材Wが、線材受容空間SPから外れるのを防止する。
【0054】
ガイド部62は、当該ガイド部62を押圧する線材Wを線材受容空間SPに向けて案内する部分である。
【0055】
掴線器1Bが、閉鎖部61とガイド部62とを備える場合には、第1接触面11aと第2接触面12aの間の線材受容空間SP内に線材Wを挿入する作業が容易となり、かつ、線材受容空間SPから線材Wが外れることが防止される。その結果、線材Wに掴線器1Bを取り付ける作業が容易となる。
【0056】
続いて、第2の実施形態の掴線器1Bにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0057】
(ガイド部材60の全体形状)
図6図7に記載の例では、ガイド部材60は、閉鎖部61を有する第1板部PL1と、ガイド部62を有する第2板部PL2とを有する。また、第1板部PL1と第2板部PL2とは、屈曲部BNを介して連結されている。第1板部PL1と第2板部PL2と屈曲部BNとは、1つの板材を曲げ加工することに形成されてもよい。
【0058】
図6図7に記載の例では、ガイド部62と閉鎖部61とは、一体に形成された1つの部品によって構成されている。この場合、ガイド部材60の製造コストが低減される。ただし、ガイド部62と閉鎖部61とが別体で、ガイド部62が閉鎖部61に取り付けられていても構わない。
【0059】
図8に示されるように、ガイド部材60には、線材受容空間SPの外部から線材受容空間SPの内部を視認可能にするスリットSLおよび/または貫通孔Hが形成されていてもよい。ガイド部材60がスリットSLまたは貫通孔Hを備える場合、線材Wが、線材受容空間SPの内部に適切に配置されているか否かを、作業者が容易に確認することができる。代替的に、図9に示されるように、ガイド部材60が、第1ガイド部材60-1と、第2ガイド部材60-2とを備え、当該第1ガイド部材60-1と第2ガイド部材60-2とが、隙間Gを開けて配置されていてもよい。この場合、作業者は、隙間Gを介して、線材Wが、線材受容空間SPの内部に適切に配置されているか否かを確認することができる。
【0060】
(閉鎖部61)
図10および図11に記載の例では、ガイド部材60は、ガイド部62が線材Wによって押圧されると、閉鎖部61が、線材受容空間SPから離れる方向に移動するように構成されている。なお、図10は、ガイド部62が線材Wによって押圧される前の状態を示し、図11は、ガイド部材60が線材Wによって押圧されている状態を示す。
【0061】
上記構成により、ガイド部62に接触した線材Wが、線材受容空間SP内に、円滑に案内される(図11の矢印Aを参照)。
【0062】
図11に記載の例では、閉鎖部61は、線材Wが線材受容空間SPに挿入されることを許容する第1位置にある。閉鎖部61が第1位置にあるとき、線材受容空間SPの内部と線材受容空間SPの外部との間の開口OPの幅(より具体的には、閉鎖部61の下端と第2部材12との間の最小距離)は、線材Wの直径よりも大きい。よって、線材Wは、当該開口OPを横切って、線材受容空間SP内に入ることができる。
【0063】
他方、図12に記載の例では、閉鎖部61は、線材Wが線材受容空間SPから外れるのを防止する第2位置にある。閉鎖部61が第2位置にあるとき、上述の開口OPの幅は、線材Wの直径よりも小さい。よって、線材Wが、開口OPを横切って、線材受容空間SPの内部から外部に向けて脱落することが防止される。
【0064】
図11および図12に記載の例では、閉鎖部61の位置は、線材Wが線材受容空間SPに挿入されることを許容する第1位置(図11を参照。)と、線材Wが線材受容空間SPから外れるのを防止する第2位置(図12を参照。)との間で位置変更可能である。よって、線材受容空間SP内に線材Wを挿入する作業が容易であるとともに、かつ、線材受容空間SPに挿入された線材Wが、線材受容空間SPから外れることが防止される。
【0065】
線材受容空間SPに挿入された線材Wが、線材受容空間SPから外れることを効果的に防止する観点から、閉鎖部61は、第1位置(図11を参照。)から第2位置(図12を参照。)に向かう方向に付勢されていることが好ましい。
【0066】
図11図12に記載の例では、掴線器1Bが、付勢部材68を備え、閉鎖部61が、当該付勢部材68によって、第1位置(図11を参照。)から第2位置(図12を参照。)に向かう方向に付勢されている。より具体的には、付勢部材68の一端部が、第1部材11に取り付けられたガイド部材支持部材69によって支持され、付勢部材68の他端部が、ガイド部材60の基端部に接触するように配置されている。そして、ガイド部材支持部材69と第1部材11との間に配置されたガイド部材60(より具体的には、ガイド部材60の基端部)が付勢部材68によって押圧されることにより、閉鎖部61が、第1位置から第2位置に向かう方向に付勢される。
【0067】
なお、閉鎖部61の位置を、第1位置と第2位置との間で円滑に位置変更可能にする観点から、ガイド部材60は、ガイド部材支持部材69の軸部69aに対して垂直な姿勢と、ガイド部材支持部材69の軸部69aに対して傾斜した姿勢(垂直な姿勢を除く)との間で、姿勢変更可能であることが好ましい。ガイド部材60が軸部69aに対して姿勢変更可能であることにより、閉鎖部61は、下方に向かうにつれて線材受容空間SPから離れる方向に傾斜することができる(図11を参照。)。当該傾斜により、開口OPの幅が拡大される。また、ガイド部材60が軸部69aに対して姿勢変更可能であることにより、閉鎖部61は、鉛直方向に平行となることができる(図12を参照。)。閉鎖部61が鉛直方向と平行になると、開口OPの幅が縮小される。
【0068】
なお、ガイド部材60が軸部69aに対して姿勢変更可能であるようにするために、ガイド部材60に形成された挿入孔60h(図7等を参照。)の内径は、当該挿入孔60hに挿入された軸部69aの外径よりも十分に大きいことが好ましい。また、ガイド部材60の基端部は、ガイド部材支持部材69の頭部69bと第1部材11との間に遊嵌されていることが好ましい。ガイド部材支持部材69の頭部69bと第1部材11との間の間隔が、ガイド部材60の基端部の厚さよりも大きいことにより、ガイド部材60の基端部は、軸部69aに対して傾斜することができる。
【0069】
図11に記載の例では、閉鎖部61を第1位置から第2位置に向かう方向に付勢する付勢部材68の数が2個であるが、当該付勢部材68の数は、1個または3個以上であってもよい。
【0070】
図11に記載の例では、ガイド部材60と、閉鎖部61を付勢する付勢部材68とが別体である。代替的に、ガイド部材60自体が、閉鎖部61を第1位置から第2位置に向かう方向に付勢してもよい。例えば、ガイド部材60が、板ばねである場合には、ガイド部材60自体が、閉鎖部61を第1位置から第2位置に向かう方向に付勢する。
【0071】
図13に示されるように、閉鎖部61のうち線材受容空間SPに面する面には、凸部610が設けられていてもよい。閉鎖部61に凸部610が設けられている場合には、当該凸部610に接触した線材Wは、線材受容空間SPの中心に向かう方向に案内される。この場合、線材Wは、ガイド部62に加えて、凸部610によっても案内されることとなり、線材Wが線材受容空間SPの中心に向けて案内され易くなる。
【0072】
(ガイド部62)
図6に記載の例では、ガイド部62は、閉鎖部61に連なる基端部62aと、先端部62bとを有する。ガイド部62の延在方向、換言すれば、基端部62aから先端部62bに向かう方向は、線材受容空間SPから離れる方向である。
【0073】
図6に記載の例では、ガイド部62は、線材Wに接触することにより前記線材を案内するガイド面62sを備える。また、ガイド面62sは、第1軸AX1に垂直な面に対して傾斜した傾斜面である。より具体的には、閉鎖部61が第1位置(図6を参照。)にあるとき、ガイド面62sは、上方に向かうにつれて線材受容空間SPに近づく方向に傾斜している。このため、線材Wがガイド面62sに接触すると、線材Wは、線材受容空間SPに向けて案内される。なお、ガイド面62sは、平面状の傾斜面であってもよいし、曲面状の傾斜面であってもよい。
【0074】
図5に記載の例では、掴線器1Bは、ガイド部材60に加え、第1の実施形態において説明された第1係合部30を備える。代替的に、掴線器1Bは、第1係合部30を備えていなくてもよい。
【0075】
(第3の実施形態)
図14および図15を参照して、第3の実施形態における線材切分工具100について説明する。図14は、第3の実施形態における線材切分工具100を模式的に示す概略正面図である。図15は、線材支持具90の一例を模式的に示す概略側面図である。
【0076】
第3の実施形態における線材切分工具100は、掴線器1と、第2掴線器2と、伸縮可能な棒部材70とを備える。
【0077】
第3の実施形態における線材切分工具100の掴線器1として、第1の実施形態における掴線器1Aが採用されてもよく、第2の実施形態における掴線器1Bが採用されてもよい。
【0078】
掴線器1は、線材Wの第1部分を把持する器具である。掴線器1については、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、掴線器1についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0079】
第3の実施形態における線材切分工具100の第2掴線器2として、第1の実施形態における掴線器1Aが採用されてもよく、第2の実施形態における掴線器1Bが採用されてもよく、その他の掴線器が採用されてもよい。
【0080】
第2掴線器2は、上述の線材Wのうち第1部分とは異なる第2部分を把持する器具である。図14に記載の例では、第2掴線器2は、第1部材11と、第2部材12と、揺動部材20と、レバー部材40とを備える。第2掴線器2は、第2係合部80、および/または、ガイド部材60を備えていてもよい。
【0081】
第1部材11と、第2部材12と、揺動部材20と、レバー部材40、ガイド部材60については、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、これらの構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0082】
第2係合部80は、掴線器持ち上げ工具(換言すれば、第2掴線器2を上方に持ち上げるための遠隔操作工具)の先端部に係合可能な部分である。図14に記載の例では、第2係合部80は、貫通孔部80hである。第2係合部80は、第1係合部30と同様の構成である。よって、第2係合部80についての繰り返しとなる説明は省略する。なお、第1の実施形態における第1係合部30に関する説明において、「第1係合部材3」、「第1係合部30」、「貫通孔部30h」、「第2貫通孔部31h」を、それぞれ、「第2係合部材8」、「第2係合部80」、「貫通孔部80h」、「第2貫通孔部81h」に読み替えれば、第2係合部80についての説明となる。
【0083】
図14に記載の例では、伸縮可能な棒部材70は、掴線器1(より具体的には、掴線器1のレバー部材40の第2端部40b)に連結されている。また、伸縮可能な棒部材70は、第2掴線器2(より具体的には、第2掴線器2のレバー部材40の第2端部40b)に連結されている。
【0084】
伸縮可能な棒部材70は、掴線器1と第2掴線器2との間の距離を変化させるための部材である。図14に記載の例では、棒部材70の第1端部70aが、掴線器1に連結され、棒部材70の第2端部70bが、第2掴線器2に連結されている。
【0085】
掴線器1が線材Wの第1部分を把持し、かつ、第2掴線器2が線材Wの第2部分を把持した状態で、棒部材70を棒部材の長手方向軸L1に沿う方向に収縮させると、掴線器1と第2掴線器2との間の距離が縮小される。その結果、線材Wのうち、掴線器1と第2掴線器2との間に位置する部分が弛緩される。
【0086】
棒部材70は、外側部材71と、内側部材72と、操作部73とを含む。操作部73は、内側部材72の外側部材71に対する相対移動を操作するための部分である。操作部73は、棒部材70に接続されており、第4軸AX4まわりに回転可能である。操作部73は、遠隔操作部材の遠位端が係合する係合部730を備える。
【0087】
遠隔操作部材を用いて、伸縮可能な棒部材70を収縮させるためのメカニズムの一例について説明する。一例として、(A)操作部73には、操作部とともに第4軸AX4まわりを回転する第1傘歯車が設けられ、(B)外側部材71には、第1傘歯車と荷重伝達可能に接続された第2傘歯車が配置され、(C)第2傘歯車は、外ねじが外周に配置されたねじ棒とともに、棒部材70の長手方向軸L1まわりを回転し、(D)内側部材72が、当該ねじ棒に螺合されている場合を想定する。この場合、遠隔操作部材によって、操作部73を第4軸AX4まわりに回転させると、第1傘歯車が第4軸AX4まわりを回転し、第2傘歯車が棒部材70の長手方向軸L1まわりを回転する。第2傘歯車が長手方向軸L1まわりを回転すると、ねじ棒が長手方向軸L1まわりを回転する。ねじ棒が長手方向軸L1まわりを回転すると、ねじ棒に螺合する内側部材72が、外側部材71に引き込まれる方向に移動する。こうして、棒部材70が収縮する。
【0088】
なお、第3の実施形態において、棒部材70を収縮させるためのメカニズムは、上述のメカニズムに限定されない。
【0089】
棒部材70を収縮させることにより、掴線器1と第2掴線器2との間に位置する線材W(線材Wの一部分)が弛緩された後、線材の切断作業、および、線材の振り分け作業が実行される。第1に、線材Wの弛緩部分が任意の切断工具によって切断される。その結果、線材Wに、第1切断端部と、第2切断端部とが形成される。次に、第1切断端部と第2切断端部とが振り分けられる(例えば、上下方向に振り分ける)。以上の工程(より具体的には、掴線器1が線材Wの第1部分を把持し、第2掴線器2が線材Wの第2部分を把持した状態で棒部材70を収縮させる工程、棒部材70の収縮によって形成された線材Wの弛緩部分を切断工具によって切断する工程、および、切断により形成された第1切断端部と第2切断端部とを振り分ける工程)により、線材の切り分け作業が完了する。
【0090】
第1切断端部と第2切断端部とを、振り分ける作業を効率的に行う観点から、線材切分工具100は、少なくとも1つの線材支持具90を備えていてもよい。
【0091】
線材支持具90は、掴線器1と第2掴線器2との間の領域において、線材Wを支持する部材である。図14に記載の例において、線材切分工具100は、第1の線材支持具90aと第2の線材支持具90bとを含む。図14に記載の例では、第1の線材支持具90aおよび第2の線材支持具90bは、棒部材70に取り付けられている。
【0092】
図15に記載の例では、第1の線材支持具90aは、線材Wを受容する受容空間CPを有する。図15に記載の例では、第1の線材支持具90aが有する受容空間CPの数は2個であるが、第1の線材支持具90aが有する受容空間CPの数は1個または3個以上であってもよい。第1の線材支持具90aは、枠部材91と、枠部材91の開口部を開閉する開閉部材92とを有する。開閉部材92は、操作部93に連結されており、操作部93を操作することにより、開閉部材92を閉状態から開状態に切り替えることができる。開閉部材92が開状態であるとき、作業者は、遠隔操作工具を用いて、線材Wを、第1の線材支持具90aの受容空間CPに挿入することができる。また、開閉部材92が開状態であるとき、作業者は、遠隔操作工具を用いて、線材Wを、第1の線材支持具90aの受容空間CPから取り出すことができる。
【0093】
線材の第1切断端部と第2切断端部とを振り分けるに際しては、例えば、受容空間CP内に第1切断端部に連なる線材が配置された状態で、第1の線材支持具90aを、棒部材70の長手方向軸L1まわりに回転させればよい。代替的に、第1の受容空間CP1内に配置された線材を、遠隔操作工具を用いて、第2の受容空間CP2に移動させることにより、振り分け作業が実行されてもよい。
【0094】
図14に記載の例では、第2の線材支持具90bは、枠部材94と、枠部材94の開口部を開閉する開閉部材95とを有する。枠部材94は、上述の枠部材91と同様の構成であり、開閉部材95は、上述の開閉部材92と同様の構成である。よって、枠部材94と、開閉部材95についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0095】
図14に記載の例では、棒部材70の第1端部70aは、掴線器1のレバー部材40と揺動不能に連結され、棒部材70の第2端部70bは、第2掴線器2のレバー部材40と揺動不能に連結されている。この場合、第1係合部30を、掴線器持ち上げ工具に係合させ、第2係合部80を、第2掴線器持ち上げ工具に係合させた状態で、掴線器持ち上げ工具および第2掴線器持ち上げ工具を用いて、線材切分工具100を持ち上げることができる。
【0096】
図14に記載の例では、第1係合部30が、掴線器1の第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されており、第2係合部80が、第2掴線器2の第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されている。このため、掴線器持ち上げ工具および第2掴線器持ち上げ工具が線材Wと干渉することがなく、掴線器1および第2掴線器2を容易に線材Wに取り付けることができる。
【0097】
代替的に、あるいは、付加的に、第3の実施形態における線材切分工具100の掴線器1にガイド部材60が取り付けられていてもよい。ガイド部材60のガイド部62に接触した線材Wは、ガイド部62によって、線材受容空間SPに案内される。この場合、線材Wを線材受容空間SPに挿入する作業が容易である。また、ガイド部材60の閉鎖部61が、線材受容空間SP内に挿入された線材Wが、線材受容空間SPから外れることを防止する。よって、掴線器1を線材Wに取り付ける作業をより確実に実施することができる。
【0098】
代替的に、あるいは、付加的に、第3の実施形態における線材切分工具100の第2掴線器2にガイド部材60が取り付けられていてもよい。
【0099】
第3の実施形態において、掴線器1および第2掴線器2のうちの一方が、棒部材70に対して、揺動軸まわりに揺動可能に連結されていてもよい。
【0100】
例えば、掴線器1のレバー部材40が棒部材70の第1端部70aに揺動可能に連結されている場合を想定する。この場合、第1係合部30を、掴線器持ち上げ工具に係合させた状態で、掴線器持ち上げ工具を用いて、線材切分工具100を持ち上げることができる。第1係合部30は、掴線器1の第1接触面11aおよび第2接触面12aよりも下方に配置されている。このため、掴線器持ち上げ工具が線材Wと干渉することがなく、掴線器1を容易に線材Wに取り付けることができる。掴線器1が線材Wに取り付けられた後、第2掴線器2が遠隔操作工具を用いて持ち上げられる。当該持ち上げ動作により、棒部材70は、掴線器1に対して揺動軸まわりに回動しつつ、上方に持ち上げられる。その後、第2掴線器2が線材Wに取り付けられる。
【0101】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形または変更され得ることが明らかである。また、各実施形態で用いられる任意の構成要素を、他の実施形態に組み合わせることが可能であり、また、各実施形態において任意の構成要素を省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の掴線器または線材切分工具を用いると、線材に掴線器を容易に取り付けることが可能となる。したがって、掴線器または線材切分工具を線材に取り付ける作業を行う業者、および、掴線器または線材切分工具を製造する製造業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0103】
1、1A、1B…掴線器、2…第2掴線器、3…第1係合部材、8…第2係合部材、11…第1部材、11a…第1接触面、11f…前方側部分、12…第2部材、12a…第2接触面、20…揺動部材、30…第1係合部、30h…貫通孔部、31h…第2貫通孔部、32…突出部、32a…第1の突出部、32b…第2の突出部、40…レバー部材、40b…第2端部、40d…凹部、40h…貫通孔、40s…下面、42…係合部、43…中間部分、50…ロック部材、50a…操作部、50b…ねじ棒、51…第1部分、60…ガイド部材、60-1…第1ガイド部材、60-2…第2ガイド部材、60h…挿入孔、61…閉鎖部、62…ガイド部、62a…基端部、62b…先端部、62s…ガイド面、68…付勢部材、69…ガイド部材支持部材、69a…軸部、69b…頭部、70…棒部材、70a…第1端部、70b…第2端部、71…外側部材、72…内側部材、73…操作部、80…第2係合部、80h…貫通孔部、81h…第2貫通孔部、90…線材支持具、90a…第1の線材支持具、90b…第2の線材支持具、91…枠部材、92…開閉部材、93…操作部、94…枠部材、95…開閉部材、100…線材切分工具、111…上側部分、112…下側部分、112b…下端部、113…中間部分、610…凸部、730…係合部、AX1…第1軸、AX2…第2軸、AX3…第3軸、AX4…第4軸、BN…屈曲部、CP、CP1、CP2…受容空間、G…隙間、GA…ガイド部、Gh…貫通孔、Gw…ガイド壁、H…貫通孔、L1…長手方向軸、OP…開口、P1…第1ピン部材、P2…第2ピン部材、P3…第3ピン部材、PL1…第1板部、PL2…第2板部、SL…スリット、SP…線材受容空間、W…線材
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