(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2022062325
(22)【出願日】2022-04-04
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500550980
【氏名又は名称】株式会社中京メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】市川 一夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 則彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 裕人
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特許第5798671(JP,B2)
【文献】特開2020-005979(JP,A)
【文献】特開2014-14646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部と、
前記レンズ部から延び出して眼球の部位に支持される複数の支持部とを備え、
前記支持部は、加熱により溶けることで形成される玉を形成する位置の目安となる目印を有
し、
前記目印は、前記支持部の延設方向に沿った複数の位置に設けられ、
前記支持部は前記レンズ部の2箇所から一対のループ状に延設され、
一対の前記支持部は、前記レンズ部を正面方向から見て、前記レンズ部の中心に関して点対称な形状を有し、
前記レンズ部を正面方向から見たときの前記レンズ部と一対の前記支持部との幅が最大となる方向を長径方向とし、前記レンズ部の中心を通る前記長径方向に延びた仮想直線を長径線としたとき、
複数の前記目印は、前記長径線上に位置する目印と、前記長径線よりも前記支持部の先端側に位置する目印と、前記長径線よりも前記支持部の基端側に位置する目印とを含む、
眼内レンズ。
【請求項2】
前記レンズ部は、角膜の乱視軸方向に一致させることを想定したトーリック方向が定められたトーリックレンズであり、
前記レンズ部の中心を通る前記トーリック方向に延びた線をトーリック軸線として、
前記長径線と前記トーリック軸線とが同じ方向を向いている請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項3】
複数の前記目印は互いに異なる色で示され
、
一方の前記支持部における複数の前記目印の色の組み合わせと、他方の前記支持部における複数の前記目印の色の組み合わせは同じである請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記支持部は、先端側に、逆方向へ戻るように折り返される折り返し部を有し、
前記目印は、前記折り返し部よりも前記支持部の基端側に位置する請求項1~3のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
前記目印は、前記玉を形成するための加熱を開始する位置を示す目印と、加熱を終了する位置を示す目印とを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
レンズ部と、
前記レンズ部から延び出して眼球の部位に支持される複数の支持部とを備え、
前記支持部は、加熱により溶けることで形成される玉を形成する位置の目安となる目印を有し、
前記目印は、前記支持部の延設方向に沿った複数の位置に設けられ、
前記支持部は前記レンズ部の2箇所から一対のループ状に延設され、
一対の前記支持部は、前記レンズ部を正面方向から見て、前記レンズ部の中心に関して点対称な形状を有し、
前記レンズ部は、角膜の乱視軸方向に一致させることを想定したトーリック方向が定められたトーリックレンズであり、
前記レンズ部の中心を通る前記トーリック方向に延びた線をトーリック軸線として、
複数の前記目印は、前記トーリック軸線上に位置する目印と、前記トーリック軸線よりも前記支持部の先端側に位置する目印と、前記トーリック軸線よりも前記支持部の基端側に位置する目印とを含む、
眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レンズ部と、レンズ部から延び出して眼球の部位に支持される複数の支持部とを備えた眼内レンズが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、支持部が強膜内等に固定される眼内レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼内レンズを眼内に固定する方法として、支持部の一部を加熱により溶かして玉を形成し、この玉を強膜等の部位に埋め込む方法がある。この玉により、支持部が前記部位から抜けてしまうのを防ぐことができる。
【0005】
ところが、玉を形成する位置や玉の大きさにばらつきがあると、レンズ部の眼内での位置(向きも含む)が狙いの位置からずれてしまう。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされ、支持部を加熱して玉を形成する場合にその玉の位置や大きさがばらつくのを抑制できる眼内レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の眼内レンズは、
レンズ部と、
前記レンズ部から延び出して眼球の部位に支持される複数の支持部とを備え、
前記支持部は、加熱により溶けることで形成される玉を形成する位置の目安となる目印を有する。
【0008】
これによれば、支持部に設けられる目印を目安にして玉を形成できるので、玉を形成する位置や玉の大きさがばらつくのを抑制できる。なお、本開示の「玉」とは、球状、フランジ状、突起形状など支持部側方に出っ張る(言い換えれば、はみ出る)形状を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図1のA部の拡大図であり、支持部の先端側を抜き出した図である。
【
図4】眼内レンズが眼内に固定(装着)された状態を示す図である。
【
図5】角膜及び強膜を正面方向から見た模式図であり、眼内レンズの支持部の先端側を強膜の外側に出す位置(換言すれば、支持部に形成される玉の、強膜での固定位置)を、角膜乱視軸線上に設定する例を示す図である。
【
図6】角膜及び強膜を正面方向から見た模式図であり、眼内レンズの支持部の先端側を強膜の外側に出す位置を、角膜乱視軸線よりも反時計周りの方向にずれた位置に設定する例を示す図である。
【
図7】角膜及び強膜を正面方向から見た模式図であり、眼内レンズの支持部の先端側を強膜の外側に出す位置を、角膜乱視軸線よりも時計周りの方向にずれた位置に設定する例を示す図である。
【
図8】眼内レンズの支持部の先端側を一旦強膜の外側に出した状態を正面方向から見た図である。
【
図9】支持部の、強膜の外側に出された露出部分(
図8のB部)を抜き出した図であり、対象目盛線よりも先端側に位置する部位を切断する様子を示す図である。
【
図10】
図9の切断に続く処置を説明する図であり、支持部先端を加熱して玉を形成する様子を示す図である。
【
図11】眼内レンズを眼内に装着した状態を正面方向から見た図であり、支持部先端に形成した玉が角膜乱視軸線上に固定された例を示す図である。
【
図12】眼内レンズを眼内に装着した状態を正面方向から見た図であり、支持部先端に形成した玉が角膜乱視軸線よりも反時計周りの方向にずれた位置に固定された例を示す図である。
【
図13】眼内レンズを眼内に装着した状態を正面方向から見た図であり、支持部先端に形成した玉が角膜乱視軸線よりも時計周りの方向にずれた位置に固定された例を示す図である。
【
図14】変形例1に係る支持部の先端側を抜き出した図である。
【
図15】変形例2に係る眼内レンズの正面図である。
【
図17】変形例3に係る支持部の先端側を抜き出した図である。
【
図18】変形例4に係る支持部の先端側を抜き出した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1、
図2に本実施形態の眼内レンズ1(Intraocular Lens:IOL)を示す。
図1は眼内レンズ1の正面図、
図2は側面図である(なお側面、正面などの方向に関する記載は、眼内レンズを眼内に固定した患者の顔(あるいは眼)における方向(側面、正面など)を指すとする)。
【0011】
眼内レンズ1は、例えば白内障を治療するとともに角膜乱視を軽減するためのトーリック眼内レンズである。眼内レンズ1は主要な構成として、レンズ部2と2つの支持部3とを備える。眼内レンズ1は、レンズ部2と支持部3とが異なる材料で形成された3ピース型の眼内レンズとして構成されている。なお、眼内レンズには、3ピース型の眼内レンズの他に、レンズ部と支持部とが同一の材料で一体で成型された1ピース型の眼内レンズもある。
【0012】
レンズ2部は、例えば円盤状に形成されている。レンズ部2は例えば白内障により白濁した水晶体を患者の眼から摘出(全摘出、あるいは部分摘出)した後に、眼の後房(あるいは眼後房、つまり虹彩より後ろの領域)に配置して、摘出された水晶体のレンズ機能を代行する。また、レンズ部2は、例えば角膜乱視を軽減する機能を有したトーリックレンズとして構成される。具体的には、レンズ部2の光学面は、レンズ部2の光軸L0(
図2参照)に直角な平面上の第1方向(強主経線方向)と、その第1方向とは異なる第2方向(弱主経線方向)とにおいて屈折力が異なるトーリック面に形成される。レンズ部2には、眼内に配置されたときに角膜の乱視軸方向(強主経線方向又は弱主経線方向)に一致させることを想定したトーリック方向(
図1の軸線L1の方向)が定められている。トーリック方向は上記第1方向又は第2方向である。
図1の正面方向からみて、レンズ部2の中心Oを通るトーリック方向に延びた線L1をレンズ部2のトーリック軸線とする。なお、中心Oはレンズ部2の光軸L0(
図2参照)上の点である。トーリック軸線L1は光軸L0(レンズ部2の中心軸)に直交する方向に延びている。
【0013】
図1に示すように、レンズ部2の前面には、トーリック方向の目安となる目印21が形成されている。目印21は例えばくぼみ(ディンプル)としてよい。目印21は、例えばトーリック軸線L1上に2つ設けられる。2つの目印21は中心Oを間に挟んで互いに反対側に設けられる。また、2つの目印21は中心Oから等距離となる位置に設けられてよい。さらに、目印21はレンズ部2の外周縁に近い位置に設けられてよい。
【0014】
レンズ部2はアクリルやシリコン等の樹脂材料で形成される。また、レンズ部2は、棒状に丸めてインジェクタ等を用いて眼内に挿入できるように、可撓性(言い換えれば弾性又は柔軟性)を有した材料で形成される。
【0015】
支持部3はレンズ部2を後房内に支持する部位である。支持部3は、レンズ部2の外周縁から線状に延び出すように設けられる。具体的には、支持部3は、レンズ部2の外周縁の2箇所から、1対のループ状(換言すれば弧形状又は脚形状又は触覚(haptic)形状)に延設されて、光軸L0(
図2参照)に関して線対称な形状を有する。換言すれば、2つの支持部3は、
図1の正面方向から見て、レンズ部2の中心Oに関して点対称な形状を有する。前記ループ形状は例えば、光軸L0に関する径方向外方に延びつつ、(特に先端側は)周方向にも延びる曲線形状である。
図1の例では、支持部3は、レンズ部2から距離が離れるにしたがって次第にレンズ部2の周方向における反時計周りの方向に変位する。また、
図2に示すように、支持部3の側方から見た形状は例えば、レンズ部2と略同一平面内に収まる形状でとすればよい。あるいは、側方から見て支持部3を、レンズ部2の外周縁から眼内の前方あるいは後方に向かって斜め方向に延びるように形成してもよい。
【0016】
支持部3は、その先端側に屈曲部32(
図3参照)を有する。支持部3の、屈曲部32よりも先端側の部分30は、屈曲部32から折り返されて、レンズ部2からの延設方向の逆方向に延びる折り返し部として形成されている。折り返し部30の先端31(
図3参照)は、支持部3の延設方向に対する逆方向を向いている。折り返し部30の折り返し方向は、
図1の例では内側(レンズ部2の中心Oに近い側)に折り返されているが、外側に折り返された形状でもよく、それ以外の方向、つまり支持部3(あるいはレンズ部2)が含まれる平面と交差する方向に折り返された形状でもよい。
【0017】
支持部3は弾性を有し、例えば自然な状態(つまり他から力が作用しない状態)では
図1に示されたように折り返し部30とそれ以外とが離間した状態となるとしてもよい。この場合、折り返し部30を折り畳む(すなわち折り返し部30を、それ以外の支持部3と一直線状に重なるようにする)と、折り返し部30とそれ以外とが離間した
図1の状態に戻るように弾性復元力が働くとする。
【0018】
ここで、
図1の正面方向から見て、自然な状態(つまり外力が作用しない状態)で眼内レンズ1の幅(レンズ部2と一対の支持部3(ただし、支持部3の折り返し部30は除く)とを合わせた幅)が最大となる方向を長径方向とする。また、レンズ部2の中心Oを通る、長径方向に延びた仮想直線L2を長径線とする。また、支持部3と長径線L2との交点33を長径規定点33とする。長径規定点33は、支持部3の延設方向に沿った位置のうち、レンズ部2の中心Oから最も距離が離れた位置に設定される。また、長径規定点33は、例えば支持部3の先端(折り返し部30、屈曲部32)よりも支持部3の基端35側の位置であって、基端35よりも先端(折り返し部30、屈曲部32)に近い位置に設定される。また、一対の支持部3の長径規定点33間の幅d0(
図1参照)を長径とする。なお、支持部3の基端35は、レンズ部2に接続される支持部3の端部である。
【0019】
例えば、
図1の正面方向から見て、長径線L2がトーリック軸線L1と一致するように(長径線L2とトーリック軸線L1とが同じ方向を向くように)、レンズ部2と一対の支持部3との位置関係が定められてよい。この場合、トーリック軸線L1を規定するレンズ部2の目印21は長径線L2上に位置する。ただし、これに限定されず、長径線L2がトーリック軸線L1と異なる方向を向くように、レンズ部2と一対の支持部3との位置関係が定められてもよい。
【0020】
図3に示すように、支持部3は目印34を有する。この目印34は、支持部3を眼球の強膜等の部位に支持させるために、その部位からの抜け止めのための玉36(
図4参照)を形成する位置の目安にするための印である。より具体的には、目印34は、玉36を形成する位置を示す印であり、言い換えれば、玉36を形成するために、支持部3の先端側を加熱して基端35(
図1参照)側に縮ませていく際のその加熱を終了する位置を示す印である。
【0021】
図3の例では、目印34は、支持部3の延設方向に交差する方向に延びた目盛線として形成されている。目印34(目盛線)は、さまざまな眼球の大きさ(角膜径)に対応できるように、1つの支持部3当たりに複数(
図3の例では3つ)形成されてよい。複数の目盛線34は、例えば、支持部3の延設方向に沿って0.5mm等の等間隔で形成されてよい。隣り合う目盛34間の間隔は例えば0.4mm以上1mm以下としてよい。または、複数の目盛線34は、レンズ部2の中心Oの回りに所定角度(例えば3~10°)ごとに形成されてもよい。また、目盛線34は、支持部3の、折り返し部30(屈曲部32)よりも基端35(
図1参照)側の部分に形成される。さらに、目盛線34は、基端35よりも先端30(折り返し部)に近い位置に設けられる。
【0022】
より具体的には、複数の目盛線34は、トーリック軸線L1を基準(中心)に形成されてよい。すなわち、目盛線34は、トーリック軸線L1上に位置する第1の目盛線341と、第1の目盛線341(トーリック軸線L1)よりも先端側(折り返し部30側)に位置する第2の目盛線342と、第1の目盛線341(トーリック軸線L1)よりも基端35(
図1参照)側に位置する第3の目盛線343とを有する。
図3では、長径線L2がトーリック軸線L1に一致するので、第1の目盛線341は長径線L2上の位置33(上記長径規定点)に設けられる。第2の目盛線342は長径規定点33よりも支持部3の先端側(折り返し部30側)の位置に設けられる。第3の目盛線343は長径規定点33よりも支持部3の基端35側の位置に設けられる。
【0023】
なお、
図3の例では、トーリック軸線L1又は長径線L2よりも先端側(折り返し部30側)に位置する目盛線342が1本の例を示しているが、支持部3の延設方向に沿って目盛線342が例えば等間隔に複数本設けられてもよい。同様に、トーリック軸線L1又は長径線L2よりも基端側に位置する目盛線343が、支持部3の延設方向に沿って例えば等間隔に複数本設けられてもよい。
【0024】
目盛線34(第1~第3の目盛線341~343)は一対の支持部3のそれぞれに設けられる。一方の支持部3に設けられる目盛線34の本数及び位置と、他方の支持部3に設けられる目盛線34の本数及び位置とは互いに同じである。具体的には、一方の支持部3に設けられる目盛線34と、他方の支持部3に設けられる目盛線34とは光軸L0(
図2参照)に関して線対称となる位置に形成されている。言い換えれば、一方の支持部3に設けられる目盛線34と、他方の支持部3に設けられる目盛線34とは、
図1の正面方向から見て、中心Oに関して点対称となる位置に形成されている。さらに言い換えれば、一方の支持部3に設けられる目盛線34の、支持部3に先端31又は基端35からの位置と、他方の支持部3に設けられる目盛線34の先端31又は基端35からの位置とは等しい。
【0025】
より具体的には、第1の目盛線341は、一対の支持部3のそれぞれに設けられる。一方の支持部3に設けられる第1の目盛線341と、他方の支持部3に設けられる第1の目盛線341とは、それら目盛線341間の中点がレンズ部2の中心Oとなるように設けられる。同様に、一方の支持部3に設けられる第2の目盛線342と、他方の支持部3に設けられる第2の目盛線342とは、それら目盛線342間の中点がレンズ部2の中心Oとなるように設けられる。同様に、一方の支持部3に設けられる第3の目盛線343と、他方の支持部3に設けられる第3の目盛線343とは、それら目盛線343間の中点がレンズ部2の中心Oとなるように設けられる。
【0026】
目盛線34は例えば印刷により支持部3とは異なる色に着色されている。また、複数の目盛線34(第1~第3の目盛線341~343)は互いに異なる色で示されてもよいし、同色で示されてもよい。第1~第3の目盛線341~343が互いに異なる色で示される場合、一方の支持部3における目盛線341~343の色の組み合わせと、他方の支持部3における目盛線341~343の色の組み合わせは同じとしてよい。すなわち、一対の第1の目盛線341の色は互いに同色とし、一対の第2の目盛線342の色は互いに同色とし、一対の第3の目盛線343の色は互いに同色としてよい。
【0027】
支持部3は、棒状に丸めてインジェクタ等を用いて眼内に挿入できるように、可撓性(言い換えれば弾性又は柔軟性)を有した材料で形成される。具体的には、支持部3は、加熱されることで溶けて(熱変形して)、熱変形部としての玉36(
図4参照)が形成可能な材料で形成され、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の樹脂材料で形成される。また、支持部3はレンズ部2とは異なる材料で形成されてよい。この場合、レンズ部2と支持部3とは別体で形成された後に接着剤等で接合されてよい。
【0028】
眼内レンズ1は、
図4に示すように、例えば白内障により白濁した水晶体を全摘出あるいは部分摘出した後の眼内の後房(眼後房)に、強膜内固定の手法で(縫着なしで)固定される。なお、
図4は水晶体を全摘出した場合を示している。
眼内レンズ1が眼内に固定された状態(
図4の状態)では、虹彩102の後ろの位置にレンズ部2が配置される。また、一対の支持部3の先端に形成された玉36(熱変形部)が、強膜101の内部に埋め込まれた状態となる。この玉36は、上記複数の目盛線34のうち、角膜100の径に応じたいずれかの目盛線34の位置に形成される。
【0029】
次に、眼内レンズ1を眼内に固定する手順の一例を説明する。眼内レンズ1を固定する前提として、角膜100の径及び角膜100の乱視軸方向を予め測定しておく。また、水晶体が全摘出又は部分摘出されているものとする。先ず、眼内レンズ1を、例えば角膜100の輪部100a(換言すれば縁部又は外周部)(
図4参照)に形成された切開創から、棒状に丸めた状態で注射器型のインジェクタ(眼内レンズ挿入器)により、眼内に挿入する。このとき、眼内レンズ1を、虹彩102よりも後方の領域(つまり後房)に挿入する。
【0030】
次に、眼内レンズ1の支持部3の先端側の一部(折り返し部30を含む)を強膜101の外側に出す。支持部3の一部を強膜101のどの位置に出すかは例えば
図5~
図7のように決定する。なお、
図5~
図7においては、角膜100をハッチングで示している。また、
図5~
図7では、角膜100、強膜101以外の眼球部位(虹彩等)の図示を省略している。
【0031】
図5に示すように、正面方向から見たときの、角膜100の径d1と、角膜輪部100aから強膜101上の位置104までの予め定められた距離d2(例えば1mm)を2倍した値(=2d2)とを加算した値(=d1+2d2)を求める。なお、位置104は、支持部3の先端側の一部を強膜101の外側に出す位置であるとともに、玉36(
図4参照)を強膜101に固定する位置でもある。そして、上記加算値(=d1+2d2)が眼内レンズ1の支持部3に外力が作用していない状態での上記長径d0(
図1参照)と同等の場合には、
図5に示すように一方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104aと、他方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104bとを、角膜100の乱視軸と同方向に延びた線L3(以下、角膜乱視軸線という場合がある)上における、角膜輪部100aから予め定められた距離d2(例えば1mm)の位置に設定する。このとき、一方の位置104aと他方の位置104bとの位置関係は角膜100の中心C(
図5参照)に関して点対称となる位置関係、言い換えれば中心Cから等距離となる位置関係である。
【0032】
一方、上記加算値(=d1+2d2)が眼内レンズ1の長径d0よりも大きい場合には、
図6に示すように、角膜乱視軸線L3を、角膜中心Cに対する周方向における、支持部3のレンズ部2からの延設方向に対応した方向(反時計周りの方向)に、予め定められた角度θ1又は加算値(=d1+2d2)と長径d0とのずれ量に応じた角度θ1だけ回転させた線L4を設定する。そして、一方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104aと、他方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104bとを、その線L4上における、角膜輪部100aから予め定められた距離d2(例えば1mm)の位置に設定する。このとき、一方の位置104aと他方の位置104bとの位置関係は角膜中心Cに関して点対称となる位置関係、言い換えれば中心Cから等距離となる位置関係である。
【0033】
一方、上記加算値(=d1+2d2)が眼内レンズ1の長径d0よりも小さい場合には、
図7に示すように、角膜乱視軸線L3を、角膜中心Cに対する周方向における、支持部3のレンズ部2からの延設方向の逆方向に対応した方向(時計周りの方向)に、予め定められた角度θ2又は加算値(=d1+2d2)と長径d0とのずれ量に応じた角度θ2だけ回転させた線L5を設定する。そして、一方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104aと、他方の支持部3の先端側を強膜101の外側に出す位置104bとを、その線L5上における、角膜輪部100aから予め定められた距離d2(例えば1mm)の位置に設定する。このとき、一方の位置104aと他方の位置104bとの位置関係は角膜中心Cに関して点対称となる位置関係、言い換えれば中心Cから等距離となる位置関係である。
【0034】
位置104を決めた後、針を用いて、その位置104に、後房に導通する穴をあける。そして、その穴から、棒状の器具を後房に挿入して、支持部3の先端側(例えば折り返し部30)をその器具に引っ掛けさせる。その後、その器具を、挿入した穴から引き抜くことで、支持部3の折り返し部30を含む先端側の一部を虹彩102(
図4参照)の後ろを通して位置104から外側に出す。一方の支持部3の先端側は一方の位置104aから強膜101の外側に出し、他方の支持部3の先端側は他方の位置104bから強膜101の外側に出す(
図8参照)。
図8では、角膜100をハッチングで示し、眼内レンズ1のうち眼内に位置する部分を破線で示し、眼外に出ている部分を実線で示している。また、
図8では、角膜100、強膜101以外の眼球部位(虹彩等)の図示を省略している。
【0035】
支持部3の、強膜101の外側に出た部分に目盛線34が表されているものとする。ここで、支持部3に表された複数の目盛線34(第1~第3の目盛線341~343)のうち今回の対象となる目盛線340(
図9参照)を対象目盛線とする。
図5のように、角膜乱視軸線L3上に、支持部3の引出位置104を設定した場合には、上記第1の目盛線341を対象目盛線340とする。
図6のように、角膜乱視軸線L3よりも反時計周りの位置に引出位置104を設定した場合には、上記第2の目盛線342を対象目盛線340とする。
図7のように、角膜乱視軸線L3よりも時計周りの位置に引出位置104を設定した場合には、上記第3の目盛線343を対象目盛線340とする。また、一方の支持部3において設定する対象目盛線340と、他方の支持部3において設定する対象目盛線340との位置関係は、レンズ部2の中心Oに関して点対称となる位置関係であり、換言すれば、中心Oから等距離となる位置関係である。すなわち、例えば、一方の支持部3における対象目盛線340が第1の目盛線341の場合には、他方の支持部3における対象目盛線340も第1の目盛線341である。
【0036】
次に、各支持部3ごとに、例えば以下に示す手順で、対象目盛線340の位置に玉36(
図4参照)を形成する。具体的には、
図9に示すように、支持部3の、強膜101の外側に出された部分(以下、露出部分という場合がある)のうち、対象目盛線340付近の部位37であって、対象目盛線340よりもレンズ部2に近い側に位置する部位37(例えば、露出部分の近位端)を鑷子等の器具200で把持する。そして、部位37を器具200で把持しながら、支持部3の露出部分のうち、対象目盛線340よりも先端側に位置する部位38をはさみ201で切断する。切断部位38は、例えば折り返し部30よりも対象目盛線340側の位置に設定してよい。
【0037】
なお、一方の支持部3において玉36が形成されるのを待って、他方の支持部3での玉36の形成(上述の部位38の切断と、後述の加熱)を行ってよい。
【0038】
次に、
図10に示すように、部位37を器具200で把持しながら、加熱器具202(医療用焼灼器具(アキュテンプ)など)を用いて、先端側を切断した後の露出部分の先端38から加熱により溶かしていく。露出部分は、溶けるに伴い、先端に玉を形成しつつ、徐々に縮んでいく。また、縮んでいくに伴い、徐々に玉が大きくなる。そして、露出部分が対象目盛線340の位置まで縮んだときに、加熱を終了する。これにより、対象目盛線340の位置に玉36が形成される。
【0039】
一方の支持部3の先端に玉36を形成した後、他方の支持部3に対して
図9、
図10に示す処置(先端側の切断及び加熱)を行うことで、他方の支持部3の先端(対象目盛線340の位置)にも玉36を形成する。
【0040】
その後、各支持部3の玉36を、支持部3の露出部分が出た位置104(
図5~
図7参照)から強膜101の内部に押し込む。これにより、玉36が位置104において強膜101で固定される。なお、玉36は、強膜101の表面に露出させた状態で設けられてもよい。
【0041】
図11~
図13は、眼内レンズ1が眼内に装着された状態を正面方向から見た図である。なお、
図11~
図13では、角膜100をハッチングで示している。また、眼内レンズ1は眼内に位置しているので破線で示している。玉36は露出しているように図示しているが、実際は強膜101の内部に埋め込まれている。また、
図11~
図13では、角膜100、強膜101以外の眼球部位(虹彩等)の図示を省略している。
【0042】
図11の例では、角膜100の径d1と、角膜輪部100aと一方の玉36の固定位置との距離d2と、角膜輪部100aと他方の玉36の固定位置との距離d2との加算値(=d1+2d2)が、眼内に装着する前の眼内レンズ1の長径d0(
図1参照)と同等の場合を示している。玉36は、角膜100の乱視軸と同方向に延びた線L3(角膜乱視軸線)又はレンズ部2のトーリック軸線L1上の位置で固定される。また、玉36は支持部3における第1の目盛線341の位置に形成される。
【0043】
図12の例では、上記加算値(=d1+2d2)が長径d0よりも大きい場合を示している。玉36は、角膜乱視軸線L3又はレンズ部2のトーリック軸線L1に対して反時計周りの方向にずれた位置で固定される。また、玉36は支持部3における第2の目盛線342の位置に形成される。支持部3は、自然状態よりもレンズ部2から離れる方向に若干引っ張られた状態となる。
【0044】
図13の例では、上記加算値(=d1+2d2)が長径d0よりも小さい場合を示している。玉36は、角膜乱視軸線L3又はレンズ部2のトーリック軸線L1に対して時計周りの方向にずれた位置で固定される。また、玉36は支持部3における第3の目盛線343の位置に形成される。
【0045】
図11~
図13のいずれの場合も、正面方向から見て、レンズ部2のトーリック軸線L1が、角膜乱視軸線L3に合っている。トーリック軸線L1が、角膜乱視軸線L3に合っているかは、トーリック軸線L1を規定するレンズ部2の2つの目印21(
図1参照)が角膜乱視軸線L3上に位置しているかで判断できる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、一対の支持部3のそれぞれに、玉36を形成する位置の目安となる目印としての目盛線34を有するので、一対の支持部3の間で玉36を形成する位置及び玉36の大きさがばらついてしまうのを抑制できる。これによって、レンズ部2を眼内の狙いの位置に配置させやすくできる。具体的には、レンズ部2が眼内に傾いて配置されてしまうのを抑制でき、言い換えれば、レンズ部2の光軸L0が、眼内レンズ1を装着する前の眼球の光軸又は視軸の方向と異なる方向を向いてしまうのを抑制できる。
【0047】
また、玉36を形成する位置を制御できることで、レンズ部2のトーリック軸線L1を、角膜乱視軸線L3に合わせやすい。
【0048】
また、目盛線34は支持部3の延設方向に沿った複数の位置に設けられるので、角膜径に応じて玉36を形成する位置を変えることができる。具体的には、角膜径が大きいほど、複数の目盛線34のうちのより先端側に位置する目盛線34の位置に玉36を形成することで、角膜径の影響でレンズ部2が狙いの位置からずれてしまうのを抑制できる。
【0049】
目盛線34の個数は3つであるので、角膜径の大きさを大、中、小の3つに区分したときに、大、中、小のいずれの角膜径の眼球に対してもレンズ部2を狙いの位置に配置させることできる。
【0050】
また、複数の目盛線34が互いに異なる色で示されることで、今回使用する目盛線34(
図9、
図10の対象目盛線340)とそれ以外の目盛線34とを色で区別できる。これにより、玉36を形成する位置(対象目盛線340の位置)を容易に判断できる。
【0051】
さらに、複数の目盛線34は、レンズ部2のトーリック軸線L1を基準(中心)に形成されているので、支持部3上の玉36を形成する位置で、トーリック軸線L1の向きを制御しやすい。例えば、複数の目盛線34のうち第1の目盛線341の位置に玉36を形成する場合には、一方の支持部3での玉36と、他方の支持部3での玉36とを通る線の方向にトーリック軸線L1を向けやすい(
図11参照)。また、例えば、第2の目盛線342の位置に玉36を形成する場合には、玉36よりも時計周りの方向にずれた位置にトーリック軸線L1を配置させやすい(
図12参照)。また、例えば、第3の目盛線343の位置に玉36を形成する場合には、玉36よりも反時計周りの方向にずれた位置にトーリック軸線L1を配置させやすい(
図13参照)。
【0052】
また、複数の目盛線34は、眼内レンズ1の長径線L2を基準(中心)に形成されているので(
図3参照)、一方の支持部3に形成する玉36と、他方の支持部3に形成する玉36との間の距離を、外力が作用していない自然状態における眼内レンズ1の長径d0(
図1参照)に近い距離にすることができる。言い換えれば、眼内レンズ1を眼内に装着したときの支持部3の形状を自然状態に近いループ形状にできる。これにより、レンズ部2が狙いの位置からずれてしまうのを抑制できる。
【0053】
また、支持部3に外力が作用していない自然状態において、長径線L2とトーリック軸線L1とが同じ方向を向いているので、長径線L2を基準にして設けられた目盛線34の位置(玉36の位置)と、トーリック軸線L1の向きとの相関性を高くできる。
【0054】
また、支持部3の先端には折り返し部30が形成されているので、眼内レンズ1を眼内に装着する過程で、支持部3の先端側の一部(折り返し部30を含む)を強膜101から露出させて玉36を形成する際に、折り返し部30が強膜101の表面に引っ掛かることで、その露出部分が眼内に引き戻されてしまうのを抑制できる。
【0055】
また、角膜径に応じて、眼内周方向における玉36の固定位置104(
図5~
図7参照)を変えるので、眼内レンズ1を眼内に装着したときの支持部3の形状を自然状態に近いループ形状にできる。これにより、レンズ部2が狙いの位置からずれてしまうのを抑制できる。
【0056】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。以下、変形例を説明する
【0057】
(変形例1)
上記実施形態では、複数の目印(目盛線)がトーリック軸線又は長径線を基準(中心)に等間隔に設けられる例を示したが、トーリック軸線又は長径線とは無関係な位置に目印が形成されてもよい。すなわちトーリック軸線又は長径線と支持部との交点に目印は形成されてなくてもよい。
【0058】
図14は、この変形例1に係る支持部3の先端側を示している。支持部3の先端側には、玉を形成する位置の目安となる目印としての複数の目盛線300を有する。一対の支持部3の間で、目盛線300の本数及び位置(支持部3の先端又は基端からの位置)は互いに同じである。目盛線300は、トーリック軸線又は長径線とは無関係な位置に形成されており、換言すれば、トーリック軸線又は長径線と支持部3との交点の位置には形成されていない。
図14の例では、一方の支持部3での目盛線300と、他方の支持部3での目盛線300との距離を支持部間目印距離として、目盛線300は、支持部間目印距離が互いに異なる複数(
図14の例では3つ)の目盛線301~303を有する。
【0059】
支持部3に外力が作用していない自然状態において、複数の支持部間目印距離を小さい順に並べたときに例えば等差数列の関係となるように、各目盛線301~303の位置が定められてよい。すなわち、一方の支持部3での第1の目盛線301と他方の支持部3での第1の目盛線301との距離を第1の支持部間目印距離とする。一方の支持部3での第2の目盛線302と他方の支持部3での第2の目盛線302との距離を第2の支持部間目印距離とする。一方の支持部3での第3の目盛線303と他方の支持部3での第3の目盛線303との距離を第3の支持部間目印距離とする。このとき、第1の支持部間目印距離、第2の支持部間目印距離、及び第3の支持部間目印距離が等差数列の関係であってよい。例えば、第1の支持部間目印距離が13mm、第2の支持部間目印距離が14mm、第3の支持部間目印距離が15mmであれば、等差数列の関係となる。
【0060】
角膜径が大きい程、支持部間目印距離が大きい目盛線300を今回の対象目盛線として選択し、その対象目盛線の位置に玉を形成すればよい。すなわち、角膜径を小、中、大の3つに区分したときに、角膜径が小さい場合には、第1の支持部間目印距離を定める第1の目盛線301の位置に玉を形成する。角膜径が中程度の場合には、第2の支持部間目印距離を定める第2の目盛線302の位置に玉を形成する。角膜径が大きい場合には、第3の支持部間目印距離を定める第3の目盛線303の位置に玉を形成する。
【0061】
なお、上記等差数列の関係に代えて、複数の目盛線301~303は、
図3の目盛線341~343と同様に、等間隔(例えば0.5mm間隔)に設けられてもよい。
【0062】
このように、
図14の変形例によっても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
(変形例2)
上記実施形態では、支持部の先端に折り返し部が形成された例を示したが、折り返し部が形成されていない眼内レンズに本開示を適用してもよい。
図15はこの変形例2に係る眼内レンズ4の正面図を示し、
図16は
図15の眼内レンズ4の支持部5の先端側(
図15のC部)を抜き出した図である。なお、
図15において、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付している。
【0064】
眼内レンズ4は、レンズ部2と一対の支持部5とを備える。レンズ部2は
図1のレンズ部2と同じである。支持部5は、先端に折り返し部が形成されていない点で
図1の支持部3と異なり、それ以外は支持部3と同様である。
【0065】
図16に示すように、支持部5の先端側には、玉を形成する位置の目安となる目印としての複数の目盛線52を有する。目盛線52は、支持部5の基端よりも先端51に近い位置に設けられる。複数の目盛線52は、
図3の目盛線34と同様に、トーリック軸線又は長径線を基準にして設けられてもよいし、
図14の目盛線300と同様に、等差数列の関係となる複数の支持部間目印距離を定めるように設けられてもよい。
【0066】
図15、
図16の変形例によっても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
(変形例3)
図17は変形例3に係る支持部の先端側を抜き出した図を示している。
図17において上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付している。支持部3の先端側には、玉を形成する位置の目安となる目印としての目盛線310が設けられる。目盛線310は、
図3の目盛線34と同様に、トーリック軸線又は長径線を基準にして設けられてもよいし、
図14の目盛線300と同様に、等差数列の関係となる複数の支持部間目印距離を定めるように設けられてもよい。
【0068】
また、支持部3の先端側には、玉を形成するために加熱を開始する位置の目安となる目印(目盛線)320を有する。目印320は、例えば、加熱の終了位置(玉を形成する位置)を示す目盛線310とは別に設けられてよい。また、目印320は、目盛線310よりも支持部3の先端(折り返し部30)に近い位置に設けられる。
図17の例では、目印320は、折り返し部30の屈曲部32と、目盛線310の間の位置に設けられる。また、目印320は、一対の支持部3のそれぞれに設けられる。一方の支持部3に設けられる目印320の支持部3における位置と、他方の支持部3に設けられる目印320の支持部3における位置とは互いに同じとしてよい。
【0069】
玉の形成は以下のように行えばよい。すなわち、眼内レンズを眼内に挿入した後、支持部3の先端側を一旦眼球(強膜)の外側に出す。その後、目印320の位置で支持部3を切断する。その後、切断後の支持部3の先端(目印320の位置)から加熱を開始し、目盛線310の位置で加熱を終了する。
【0070】
これによれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られることに加えて、適切な位置から玉の形成を開始(加熱を開始)することができ、ひいては、玉の大きさを適切な大きさにできる(言い換えれば、玉の大きさのばらつきをより一層抑制できる)という効果が得られる。また、玉の形成を開始する位置(加熱を開始する位置)を一対の支持部3の間で同じ位置にできる。これにより、一対の支持部3の間で玉の大きさを同等にすることができる。
【0071】
なお、目印320は、
図15、
図16の支持部5(折り返し部が無い支持部)に設けられてもよい。
【0072】
(変形例4)
上記実施形態では、玉を形成する位置の目安となる複数の目印が、支持部の延設方向に沿って間隔をあけて設けられる例を示した。しかし、これに限定されず、
図18のように、支持部3の延設方向に幅を有した複数の目印330(
図18の例では3つの目印331~333)が、その延設方向に連続して(間隔をあけずに)設けられてもよい。目印330は、一対の支持部3のそれぞれにおいて互いに同じ数及び同じ位置に設けられる。
【0073】
複数の目印331~333は目視で区別可能に設けられ、具体的には例えば互いに異なる色に着色されている。上記実施形態と同様に、角膜径に応じて、複数の目印331~333のうちの1つが今回の対象目盛線として選択される。各目印331~333は、加熱の開始位置と終了位置の両方を示す。具体的には、例えば第1の目印331の、支持部3の先端に近い側の端部331aは、加熱を開始する位置(玉の形成を開始する位置)を示す。第1の目印331の、支持部3の基端に近い側の端部331bは、加熱を終了する位置(玉を形成する位置)を示す。同様に、第2の目印332又は第3の目印333の、支持部3の先端に近い側の端部は、加熱を開始する位置を示し、支持部3の基端に近い側の端部は加熱を終了する位置を示す。
【0074】
これによれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られることに加えて、適切な位置から玉の形成を開始(加熱を開始)することができ、ひいては、玉の大きさを適切な大きさにできる(言い換えれば、玉の大きさのばらつきをより一層抑制できる)という効果が得られる。また、玉の形成を開始する位置(加熱を開始する位置)を一対の支持部3の間で同じ位置にできる。これにより、一対の支持部3の間で玉の大きさを同等にすることができる。
【0075】
なお、目印330は、
図15、
図16の支持部5(折り返し部が無い支持部)に設けられてもよい。また、複数の目印331~333は、支持部3の延設方向に間隔をあけて設けられてもよい。
【0076】
(その他変形例)
また、上記実施形態では、トーリック眼内レンズに本開示を適用した例を示したが、角膜乱視を軽減する機能を有しない通常の眼内レンズに本開示を適用してもよい。この場合でも、複数の支持部の間で玉を形成する位置を揃えることができ、レンズ部が眼内で傾いて配置されてしまうのを抑制できる。また、有水晶体眼内レンズ(ICL、眼内コンタクトレンズ)に本開示を適用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、支持部の個数が2つの例を示したが、3つ以上でもよい。この場合でも、各支持部において、レンズ部の中心から等距離となる位置に、玉を形成する位置の目安となる目印を設けることで、複数の支持部の間で、玉を形成する位置を揃えることができ、レンズ部が眼内で傾いてしまうのを抑制できる。
【0078】
また、上記実施形態では、目印が1つの支持部当たりに3つ設けられた例を示したが、目印の個数は1つ又は2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0079】
また、目印は目視可能であればどのような態様でもよく、例えば目印となる位置で支持部の形状を変化させてもよい。具体的には例えば、目印として凹部又は凸部を形成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、正面方向から見て眼内レンズのトーリック軸線と長径線とが同じ方向に向いた例を説明したが、それらが異なる方向を向いてもよい。この場合、複数の目印は、トーリック軸線を基準に形成されてもよいし、長径線を基準に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1、4 眼内レンズ
2 レンズ部
3、5 支持部
34、341、342、343、300、301、302、303、52、310、330、331、332、333 目盛線(目印)
36 玉
100 角膜
101 強膜
【要約】
【課題】レンズ部から延び出す支持部の一部を加熱により溶かして玉を形成し、その玉を強膜等の部位に固定するように用いられる眼内レンズにおいて、レンズ部を眼内の狙いの位置に配置させやすくできる眼内レンズを提供する。
【解決手段】眼内レンズの支持部3の先端側には、支持部3の一部を加熱により溶かして玉を形成する位置の目安となる目印34が設けられる。目印34は、一対の支持部3のそれぞれに設けられる。目印34の、支持部3の先端又は基端からの位置は、一対の支持部3の間で互いに同じ位置である。支持部3の先端には例えば折り返し部30が設けられ、目印34はその折り返し部30よりも基端側に位置する。目印34は、さまざまな角膜径に対応できるように、支持部3の延設方向に沿った複数の位置に設けられる。複数の目印34は例えば互いに異なる色に着色される。
【選択図】
図3