(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/18 20060101AFI20220706BHJP
B61D 17/12 20060101ALI20220706BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20220706BHJP
B61D 29/00 20060101ALI20220706BHJP
B61D 49/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B61D17/18
B61D17/12
B61D17/00 C
B61D29/00
B61D49/00 A
(21)【出願番号】P 2018127574
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】中村 征広
(72)【発明者】
【氏名】松岡 克弥
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-095145(JP,A)
【文献】特開2015-093562(JP,A)
【文献】特開2016-074378(JP,A)
【文献】特開2014-080191(JP,A)
【文献】実開平04-003867(JP,U)
【文献】特開2005-076407(JP,A)
【文献】特開2017-145934(JP,A)
【文献】実開昭47-030842(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0022691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/18
B61D 17/12
B61D 17/00
B61D 29/00
B61D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の屋根構体に天井パネルを取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造において、
前記屋根構体は、第1吊り溝が設けられていること、
前記天井パネルは、第1パネル部と第2パネル部に分割されていること、
前記第1パネル部は、所定のピッチで形成された第1取付穴を有し、前記第2パネル部は、所定のピッチで形成された第2取付穴を有すること、
前記第1吊り溝に移動可能に保持される第1締結部材と、
前記第1締結部材により前記屋根構体に取り付けられる板状の遮蔽部材であって、第2吊り溝と第3吊り溝が前記第1吊り溝と同一方向に設けられた前記遮蔽部材と、
前記第2吊り溝に移動可能に保持され、前記第1取付穴に挿通されて締結されることにより前記第1パネル部を前記遮蔽部材に取り付ける第2締結部材と、
前記第3吊り溝に移動可能に保持され、前記第2取付穴に挿通されて締結されることにより前記第2パネル部を前記遮蔽部材に取り付ける第3締結部材と、を有すること、
前記第1パネル部と前記第2パネル部との間の隙間が前記遮蔽部材により遮蔽されていること、
を特徴とする鉄道車両用天井パネル取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、
前記第1吊り溝と前記第2吊り溝と前記第3吊り溝は、鉄道車両前後方向に沿って設けられていること、
前記第1パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、
前記第2パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、
を特徴とする鉄道車両用天井パネル取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、
前記第1吊り溝に移動可能に保持される第4締結部材を有すること、
前記第1パネル部と前記第2パネル部の間に配置される照明器具を有すること、
前記第4締結部材が前記遮蔽部材に挿通されて前記照明器具に締結されていること、
を特徴とする鉄道車両用天井パネル取付構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、
前記第1パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、
前記第1取付穴は、前記第1パネル部の端部に開口する挿入溝と、前記挿入溝に対して直交方向に形成されて前記挿入溝に連通する長溝とを有すること、
を特徴とする鉄道車両用天井パネル取付構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載する鉄道車両用天井パネル取付構造を備えることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の屋根構体に天井パネルを取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の屋根構体に天井パネルを取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造には、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるものがある。
【0003】
特許文献1には、内装吊溝部材が鉄道車両の前後方向に沿って屋根構体に取りつけられ、内装吊溝部材に形成された吊り溝と天井パネルに設けられた丸穴に取付ねじを挿通してナットに締結することにより、天井パネルを屋根構体に取りつけることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ダブルスキンタイプの屋根構体の内側に吊り溝を設け、貫通穴を形成された受け金を天井パネルに固定し、吊り溝に挿入した取付ねじを受け金の貫通穴に挿通してナットに締結することにより、天井パネルを屋根構体に取り付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-093562号公報
【文献】特開2000-108899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両には、以下の問題があった。近年、鉄道車両は、居住性を向上させるために、客室の意匠に工夫が施されている。天井パネルは、例えば、通路上方に配置される中央天井パネル部と、中央パネルの車幅方向両側に配置される第1側天井パネル部と第2側天井パネル部に分割される。そして、第1灯具は、第1側天井パネル部と中央天井パネル部との間に配置され、第1照明カバーで覆われる。また、第2灯具は、中央天井パネル部と第2側天井パネル部との間に配置され、第2照明カバーで覆われる。第1照明カバーと第2照明カバーは、第1側天井パネル部と中央天井パネル部と第2側天井パネル部との間にそれぞれ隙間を設けるように配設され、第1灯具と第2灯具から当該隙間を通じて照射される光が、第1側天井パネル部と中央天井パネル部と第2側天井パネル部に反射して、客室を間接的に照らす。
【0007】
第1側天井パネル部と中央天井パネル部と第2側天井パネル部の取り付けに、特許文献1及び特許文献2に記載の天井パネル取付構造を適用した場合、パネル部毎に吊り溝を屋根構体に設け、各吊り溝に挿入された取付ねじをパネル部に形成された丸穴にそれぞれ位置合わせして挿入し、締結すれば、各パネル部を屋根構体に固定することができる。しかし、第1側天井パネル部と中央天井パネル部との間と、中央天井パネル部と第2側天井パネル部との間には、第1灯具と第2灯具を設置するための隙間が形成されており、その隙間から、外部騒音が客室に漏れる問題があった。特に、外部騒音は、鉄道車両がトンネル内を走行する際に大きくなり、乗客の快適性を損なう恐れがある。しかも、上記のような間接照明の場合には、第1側天井パネル部と中央天井パネル部との間と、中央天井パネル部と第2側天井パネル部との間を通過した外部騒音が、各パネル部と第1及び第2照明カバーとの間の隙間から客室にそのまま漏れてしまっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、分割された天井パネルを屋根構体に取り付ける場合でも、パネル取付性と遮音性を向上させることができる鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)鉄道車両の屋根構体に天井パネルを取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造において、前記屋根構体は、第1吊り溝が設けられていること、前記天井パネルは、第1パネル部と第2パネル部に分割されていること、前記第1パネル部は、所定のピッチで形成された第1取付穴を有し、前記第2パネル部は、所定のピッチで形成された第2取付穴を有すること、前記第1吊り溝に移動可能に保持される第1締結部材と、前記第1締結部材により前記屋根構体に取り付けられる板状の遮蔽部材であって、第2吊り溝と第3吊り溝が前記第1吊り溝と同一方向に設けられた前記遮蔽部材と、前記第2吊り溝に移動可能に保持され、前記第1取付穴に挿通されて締結されることにより前記第1パネル部を前記遮蔽部材に取り付ける第2締結部材と、前記第3吊り溝に移動可能に保持され、前記第2取付穴に挿通されて締結されることにより前記第2パネル部を前記遮蔽部材に取り付ける第3締結部材と、を有すること、前記第1パネル部と前記第2パネル部との間の隙間が前記遮蔽部材により遮蔽されていること、を特徴とする。
【0010】
上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造では、第1パネル部と第2パネル部が遮蔽部材を介して屋根構体に取り付けられる。遮蔽部材は、第1締結部材を介して屋根構体の第1吊り溝に取り付けられるため、屋根構体に対する取付位置を自由に調整できる。しかも、第1パネル部は、第2締結部材を介して遮蔽部材の第2吊り溝に取り付けられ、第2パネル部は、第3締結部材を介して遮蔽部材の第3吊り溝に取り付けられるため、第1パネル部と第2パネル部の取付位置を遮蔽部材に対してそれぞれ自由に調整できる。このように、第1パネル部と第2パネル部は、遮蔽部材を介して屋根構体に取り付けられても、屋根構体に対する取付位置を自由に調整することができ、取付性を向上させることができる。また、板状の遮蔽部材が、第1パネル部と第2パネル部との間に形成される隙間を遮蔽するので、外部騒音が客室に漏れない。よって、上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、分割された天井パネルを屋根構体に取り付ける場合でも、パネル取付性と遮音性を向上させることができる。
【0011】
(2)(1)に記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、前記第1吊り溝と前記第2吊り溝と前記第3吊り溝は、鉄道車両前後方向に沿って設けられていること、前記第1パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、前記第2パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、を特徴とする。
【0012】
上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、第1パネル部と第2パネル部が、鉄道車両前後方向に並べられて配置される。遮蔽部材は、第2吊り溝と第3吊り溝が、屋根構体の第1吊り溝と同様に、鉄道車両前後方向に沿って形成されている。そのため、第1パネル部と第2パネル部は、鉄道車両前後方向に詰めて配置する場合に、第2吊り溝と第3吊り溝に沿って第2締結部材と第3締結部材を第1取付穴と第2取付穴の位置に合わせて自由に移動させて締結される。よって、上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、第1パネル部と第2パネル部をそれぞれ鉄道車両前後方向に並べて配置する場合でも、取付位置を自由に調整することができ、パネル取付性を向上させることができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、前記第1吊り溝に移動可能に保持される第4締結部材を有すること、前記第1パネル部と前記第2パネル部の間に配置される照明器具を有すること、前記第4締結部材が前記遮蔽部材に挿通されて前記照明器具に締結されていること、を特徴とする。
【0014】
上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造では、第4締結部材を遮蔽部材から照明器具に挿通して締結することにより、遮蔽部材の真下の位置で照明器具を屋根構体に取り付けるので、遮音性を損なうことなく、照明器具を天井パネルに設置することができる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)の何れか1つに記載する鉄道車両用天井パネル取付構造において、前記第1パネル部は、鉄道車両前後方向に並べて配置されること、前記第1取付穴は、前記第1パネル部の端部に開口する挿入溝と、前記挿入溝に対して直交方向に形成されて前記挿入溝に連通する長溝とを有すること、を特徴とする。
【0016】
上記構成を有する鉄道車両用天井パネル取付構造では、例えば、第2締結部材の位置に欠損部分などがある場合には、その欠損部分を避けるように第2締結部材の位置を第1取付穴の長溝の範囲内でずらしてから、第2締結部材を締結する。よって、上記構成の鉄道車両用天井パネル構造によれば、第1取付穴に第2締結部材をそれぞれ挿入して締結しやすく、また、第2締結部材の締結位置を長溝の範囲で自由に調整できるので、第1パネル部の種別が増えることを抑制しつつ、第1パネル部のパネル取付性を向上させることができる。
【0017】
(5)(1)乃至(4)の何れか1つに記載する鉄道車両用天井パネル取付構造を備えることを特徴とする鉄道車両である。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明によれば、分割された天井パネルを屋根構体に取り付ける場合でも、パネル取付性と遮音性を向上させることができる鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両の断面図である。
【
図3】
図2のB部拡大図であって、遮蔽部材及び照明器具の取付部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る鉄道車両用天井パネル取付構造及び鉄道車両について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両1の断面図である。
図2は、
図1のA部拡大図である。
図3は、
図2のB部拡大図である。
図4は、第2遮蔽部材5の取付部の拡大図である。
図5は、天井パネル3の平面図である。
図6は、
図5のC部拡大図である。
図7は、中央天井パネル部31の平面図である。
図8は、取付穴312の拡大図である。尚、
図2、
図3、
図4は、図面を見やすくするためにハッチングを省略している。
【0021】
図1に示すように、鉄道車両1は、構体2に天井パネル3が取り付けられている。構体2は、屋根構体21と、一対の側構体22,23と、床構体24を備える。屋根構体21と一対の側構体22,23と床構体24は、ダブルスキン構造をなし、中空押出成形により形成されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、屋根構体21と一対の側構体22,23には、中空押出成形時に、艤装品を取り付けるための構体側吊り溝211,212,221,231が、鉄道車両前後方向X(図中手前奥方向、以下「前後方向X」ともいう)に沿ってそれぞれ一体成形されている。
【0023】
図1に示すように、天井パネル3は、車幅方向Y(図中左右方向)に分割されている。すなわち、天井パネル3は、車幅方向Yの中央に配置される中央天井パネル部31と、中央天井パネル部31の車幅方向Yの一端側(図中左側、側構体22側)に配置される第1側天井パネル部32と、中央天井パネル部31の車幅方向Yの他端側(図中右側、側構体23側)に配置される第2側天井パネル部33を備える。
【0024】
図1及び
図2に示すように、中央天井パネル部31は、車幅方向Yに切ったときの断面形状が中央部分を床側に緩やかに突出させる形状をなし、車幅方向Yの両端に位置する端部が、それぞれ、第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付けられている。第1側天井パネル部32は、L字形状をなし、一端(図中右端の端部)が第1遮蔽部材4を介して屋根構体21に取り付けられ、他端(図中左端の端部)が側構体22の構体側吊り溝221に取り付けられている。第2側天井パネル部33は、L字形状をなし、一端(図中左端の端部)が第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付けられ、他端(図中右端の端部)が側構体23の構体側吊り溝231に取り付けられている。第1照明器具6と第2照明器具7は、第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5の真下にそれぞれ配置されている。
【0025】
図5に示すように、天井パネル3は、中央天井パネル部31A~31Jと、第1側天井パネル部32A~32Hと、第2側天井パネル部33A~33Hを、それぞれ、前後方向Xに並べて配置することにより、構成されている。中央天井パネル部31A~31Jと第1側天井パネル部32A~32Hの間は、第1遮蔽部材4A~4Jにより遮蔽されている。また、中央天井パネル部31A~31Jと第2側天井パネル部33A~33Hとの間は、第2遮蔽部材5A~5Jにより遮蔽されている。第1照明器具6A~6Jと第2照明器具7A~7Jは、第1遮蔽部材4A~4Jと第2遮蔽部材5A~5Jの客室側(床側)に配置されている。
【0026】
尚、
図5では、同一形状の部材を区別するために符号にアルファベットの添え字を付けているが、他の説明及び図面において特に区別する必要がない場合には、添え字を適宜省略する。また、第1側天井パネル部32A~32Hと第1遮蔽部材4A~4Jと第1照明器具6A~6Jは、第2側天井パネル部33A~33Hと第2遮蔽部材5A~5Jと第2照明器具7A~7Jと同様に構成されているので、以下では、第2側天井パネル部33A~33Hと第2遮蔽部材5A~5Jと第2照明器具7A~7Jを中心に説明する。尚、中央天井パネル部31は、第1パネル部の一例であり、第2側天井パネル部33は、第2パネル部の一例であり、第2遮蔽部材5は、遮蔽部材の一例である。第2照明器具7は、照明器具の一例である。
【0027】
中央天井パネル部31と、第2側天井パネル部33と、第2遮蔽部材5は、前後方向Xの長さL1,L2,L3が異なっている。中央天井パネル部31は、見栄え良く配置できるように、長さL1を設定される。これに対して、第2側天井パネル部33は、窓の位置に応じて長さL2を設定され、長さL2が長さL1より長い。第2遮蔽部材5は、第2照明器具7の取付位置に応じて長さL3が設定され、長さL3が長さL1より長い。中央天井パネル部31と、第2側天井パネル部33と、第2遮蔽部材5は、それぞれ取付位置が4箇所設けられ、長さL1,L2,L3の違いにより、前後方向Xの取付位置のピッチが異なっている。第2照明器具7は、前後方向Xの長さL4が第2遮蔽部材5の長さL3と同じである。
【0028】
図3及び
図4に示す第2遮蔽部材5は、金属を押出成形したものであり、車幅方向Yの両端部を床側(図中下側)に屈曲させた細長い板形状をなす。第2遮蔽部材5は、車幅方向Yの中央付近が屋根構体21に取り付けられ、車幅方向Yの両端部に中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33がそれぞれ取り付けられている。
【0029】
第2遮蔽部材5は、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33との間に形成される隙間S1を遮蔽できるように、車幅方向Yの横幅が中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33との設置間隔より大きくされている。
【0030】
図3に示すように、第2遮蔽部材5は、車幅方向Yの中央付近に貫通穴53が形成され、構体側吊り溝212に保持される第1取付ねじ55を貫通穴53に挿通して第2照明器具7側の第1ナット65に締結することにより、第2照明器具7を屋根構体21に取り付けている。第1取付ねじ55と第1ナット65は、第4締結部材の一例である。
【0031】
また、
図4に示すように、第2遮蔽部材5は、車幅方向Yの中央付近に取付穴54が貫通穴53より小さく形成され、構体側吊り溝212に保持される第4取付ねじ58を取付穴54に挿通して第4ナット68に締結することにより、屋根構体21に取り付けられている。第4取付ねじ58は、第2遮蔽部材5のみを取り付けるので、第1取付ねじ55より短い。構体側吊り溝212は、第1吊り溝の一例である。第4取付ねじ58と第4ナット68は、第1締結部材の一例である。
【0032】
図6に示すように、第2遮蔽部材5は、貫通穴53が前後方向Xの3箇所に均等なピッチP4で形成され、取付穴54が前後方向Xの4箇所にピッチP4と異なるピッチP3x,P3yで形成されている。
【0033】
第2遮蔽部材5は、車幅方向Yの一端(中央天井パネル部31側、図中左側)に第1パネル用吊り溝51が設けられている。また、第2遮蔽部材5は、車幅方向Yの他端(第2側天井パネル部33側、図中右側)に第2パネル用吊り溝52が設けられている。第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52は、前後方向Xに沿って設けられ、屋根構体21の構体側吊り溝212に対して平行である。第2取付ねじ56は、第1パネル用吊り溝51に頭部が挿入され、第1パネル用吊り溝51に移動可能に保持されている。第3取付ねじ57は、第2パネル用吊り溝52に頭部が挿入され、第2パネル用吊り溝52に移動可能に保持されている。第1パネル用吊り溝51は、第2吊り溝の一例であり、第2パネル用吊り溝52は、第3吊り溝の一例である。
【0034】
図7に示すように、中央天井パネル部31は、略四角形状のパネル本体311を備える。パネル本体311は、車幅方向Y(図中左右方向)の両端部が屋根構体21側に屈曲されることにより、一対の起立部313が設けられている。パネル本体311は、裏面側(屋根構体21側に位置する面側)に複数の枠部材317が車幅方向Yと平行に配置され、起立部313の裏側に補強部材316がビスなどで固定されることにより、補強されている。
【0035】
中央天井パネル部31は、車幅方向Yの両端部に、取付穴312が4箇所ずつ形成されている。取付穴312は、第1取付穴の一例である。取付穴312は、強度のある補強部材316に設けられている。取付穴312は、前後方向X(図中上下方向)にほぼ均等なピッチP1x,P1yで形成されている。中央天井パネル部31は、第2取付ねじ56が取付穴312にそれぞれ挿通されて第2ナット66に締結されることにより、第2遮蔽部材5に取り付けられている。第2取付ねじ56と第2ナット66は、第2締結部材の一例である。
【0036】
ここで、
図8に示すように、取付穴312は、それぞれ、挿入溝3121と長溝3122とをT字形状に設けたものである。挿入溝3121は、中央天井パネル部31の屋根構体21側(図中上側)に位置する縁部314から高さ方向Z(図中上下方向)に形成され、屋根構体21側に開口している。長溝3122は、前後方向X(図中左右方向)に沿って形成され、前後方向Xの中心位置に挿入溝3121が連通している。よって、中央天井パネル部31は、第2取付ねじ56が取付穴312に挿入された後、第2取付ねじ56に対して前後方向Xに移動させることができる。そして、長溝3122の両端部には、切欠部3123,3124が屋根構体21側に向かって凹むように形成され、第2取付ねじ56を中央天井パネル部31に対して位置決めできるようになっている。
【0037】
一方、
図3及び
図4に示すように、第2側天井パネル部33は、屋根構体21側に位置するパネル本体331の端部に、取付金336がビスなどで固定されている。取付金336は、第2側天井パネル部33の長さL2とほぼ同じ長さを有する断面L字形の金属板である。取付金336には、取付穴332が前後方向Xに4箇所形成されている。取付穴332は、第2取付穴の一例である。第2側天井パネル部33は、第2パネル用吊り溝52に保持された第3取付ねじ57を取付穴332にそれぞれ挿通して第3ナット67に締結することにより、第2遮蔽部材5に取り付けられている。第3取付ねじ57と第3ナット67は、第3締結部材の一例である。
【0038】
図3に示すように、第2照明器具7は、第2遮蔽部材5の長さL3と同じ長さL4を備えるパネル形状の照明カバー71を灯具72に取り付けたものである。第2照明器具7は、第2遮蔽部材5の貫通穴53と同じピッチで固定部73が設けられている。第2照明器具7は、貫通穴53に挿通された第1取付ねじ55をそれぞれ固定部73に挿通して第1ナット65に締結することにより、屋根構体21に取り付けられている。
【0039】
第2照明器具7は、鉄道車両前後方向Xに沿って、照明カバー71と中央天井パネル部31との間に隙間S2が形成されている。また、第2照明器具7は、照明カバー71と第2側天井パネル部33との間に隙間S3が形成されている。第2照明器具7は、灯具72の光が隙間S2,S3を介して中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33に照射され、その反射光により客室を照らすようになっている。
【0040】
続いて、天井パネル3の取付手順を説明する。
【0041】
先ず、作業者は、第2遮蔽部材5を持ち上げて、第2遮蔽部材5を屋根構体21に取り付ける。すなわち、作業者は、屋根構体21の構体側吊り溝212に保持される第1取付ねじ55と第4取付ねじ58を、第2遮蔽部材5の貫通穴53と取付穴54にそれぞれ挿通する。そして、第4取付ねじ58を第4ナット68に締結することにより、第2遮蔽部材5を屋根構体21に取り付ける。第1遮蔽部材4もこれと同様にして屋根構体21に取り付ける。尚、第1遮蔽部材4を取り付けてから第2遮蔽部材5を取り付けても良い。
【0042】
ここで、第1取付ねじ55と第4取付ねじ58は、構体側吊り溝212に移動可能に保持されている。そのため、例えば、第2遮蔽部材5Aの貫通穴53と取付穴54に第1取付ねじ55と第4取付ねじ58をそれぞれ挿通して第4取付ねじ58を第4ナット68に緩く締め込み、一方の妻側にスライドさせ、その次の第2遮蔽部材5Bを同様にしてスライドさせることにより、第2遮蔽部材5A,5Bを前後方向Xに簡単に並べて位置決めすることができる。上記のようにして第2遮蔽部材5A~5Jの仮取り付けが完了したら、第4取付ねじ58を第4ナット68にそれぞれ本締めする。これにより、第2遮蔽部材5Aを前後方向Xに並べた状態で屋根構体21に取り付けることができる。
【0043】
それから、作業者は、中央天井パネル部31を持ち上げて、中央天井パネル部31を第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付ける。すなわち、作業者は、第2遮蔽部材5の第1パネル用吊り溝51に保持されている第2取付ねじ56を中央天井パネル部31の取付穴312にそれぞれ挿通して第2ナット66に締結することにより、中央天井パネル部31の一端を第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付ける。中央天井パネル部31の他端も、これと同様にして、第1遮蔽部材4を介して屋根構体21に取り付ける。
【0044】
ここで、中央天井パネル部31の取付穴312は、それぞれ、T字形状をなす。そのため、作業者は、第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5に設けられた第1パネル用吊り溝51に保持される第2取付ねじ56を、中央天井パネル部31に設けられた取付穴312の挿入溝3121にそれぞれ挿入し、中央天井パネル部31を鉄道車両前後方向Xにスライドさせれば、中央天井パネル部31を第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に仮取り付けすることができる。つまり、中央天井パネル部31は、1個1個の丸穴に取付ねじを挿通しなくても、屋根構体21に仮取り付けすることができる。これと同様にして、次の中央天井パネル部31を屋根構体21に仮取り付けする。
【0045】
このとき、中央天井パネル部31は、第2取付ねじ56が切欠部3123,3124の何れかに係合されることにより、第2取付ねじ56を介して第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5にスライド可能に仮取り付けされる。そのため、例えば、中央天井パネル部31Aを仮取り付けした後に、中央天井パネル部31Bを仮取り付けする場合には、中央天井パネル部31Bを第2取付ねじ56と一緒に第1パネル用吊り溝51に沿って中央天井パネル部31A側にスライドさせることにより、中央天井パネル部31A,31Bを簡単に並べて配置できる。尚、切欠部3123,3124は、屋根構体21側に凹んで形成されているため、第2取付ねじ56に係合しやすい。
【0046】
中央天井パネル部31A~31Jの仮取り付けが完了したら、作業者は、第2側天井パネル部33を持ち上げて、第2側天井パネル部33を屋根構体21と側構体23に取り付ける。すなわち、作業者は、第2遮蔽部材5の第2パネル用吊り溝52に保持されている第3取付ねじ57を第2側天井パネル部33の取付穴332にそれぞれ挿通して第3ナット67も緩く締結することにより、第2側天井パネル部33の一端を第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に仮取り付けする。また、作業者は、第2側天井パネル部33の他端を側構体23の構体側吊り溝231に仮取り付けする。これと同様にして、作業者は、第1側天井パネル部32を屋根構体21と側構体22に仮取り付けする。第1側天井パネル部32A~32Hと第2側天井パネル部33A~33Hは、それぞれ、前後方向Xに並べて配置される。
【0047】
尚、中央天井パネル部31と第1側天井パネル部32と第2側天井パネル部33の取付順序は、これと異なっても良い。
【0048】
ここで、
図5~
図7に示すように、中央天井パネル部31の鉄道車両前後方向Xの長さL1は、第1側天井パネル部32と第2側天井パネル部33の鉄道車両前後方向Xの長さL2と異なり、第1遮蔽部材4と第2遮蔽部材5と第1照明器具6と第2照明器具7の鉄道車両前後方向Xの長さL3,L4とも異なる。更に、取付位置のピッチP1x,P1y,P3x,P3y,P4が異なる。そのため、これらを前後方向Xに順番に詰めて設置して仮取り付けすると、取付位置にずれが生じる。
【0049】
しかし、第2遮蔽部材5は、屋根構体21の構体側吊り溝212に移動可能に保持される第4取付ねじ58を取付穴54にそれぞれ挿通されて、第4取付ねじ58が第4ナット68に締結されることにより、屋根構体21に取り付けられる。また、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33は、第2遮蔽部材5の第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52に移動可能に保持される第2取付ねじ56と第3取付ねじ57を取付穴312にそれぞれ挿通され、第2取付ねじ56と第3取付ねじ57が第2ナット66と第3ナット67にそれぞれ締結されることにより、第2遮蔽部材5に取り付けられる。よって、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33と第2遮蔽部材5は、長さL1,L2,L3や取付位置のピッチP1x,P1y,P3x,P3yが異なっても、第2取付ねじ56や第3取付ねじ57や第4取付ねじ58の位置を各吊り溝51,52,212に沿って任意に調節することができる。そのため、作業者は、パネル全体(中央天井パネル部31A~31J、第1側天井パネル部32A~32H、第2側天井パネル部33A~33H)が仮取り付けされた状態で、各パネル(中央天井パネル部31A~31J、第1側天井パネル部32A~32H、第2側天井パネル部33A~33H)を前後方向X(調整方向)に移動させ、パネル間の隙間を調整することができる。これにより、製造誤差が比較的大きい客室長のバラツキに対応することができる。各パネルの位置調整が完了したら、第2取付ねじ56と第3取付ねじ57をそれぞれ第2ナット66と第3ナット67に本締めする。
【0050】
尚、第1パネル用吊り溝51の一部に欠損部分があり、その欠損部分に第2取付ねじ56が配置されている場合には、その第2取付ねじ56の位置を長溝3122の範囲内で欠損部分を避けるようにずらしてから、当該第2取付ねじ56を第2ナット66に本締めする。よって、中央天井パネル部31A~31Jは、取付穴312のピッチP1x,P1yの制約を受けずに、第2取付ねじ56を第2ナット66に締結できる。
【0051】
その後、作業者は、第2照明器具7を持ち上げて、第2照明器具7を屋根構体21に取り付ける。すなわち、第1取付ねじ55は、先に取り付けられた第2遮蔽部材5の貫通穴53に挿入され、下向きに突出している。そこで、作業者は、第2照明器具7の固定部73に第1取付ねじ55をそれぞれ挿通して第1ナット65に締結することにより、第2照明器具7を屋根構体21に取り付ける。第1照明器具6もこれと同様にして屋根構体21に取り付ける。
【0052】
以上説明したように、本形態は、鉄道車両の屋根構体21に天井パネル3を取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造において、屋根構体21は、構体側吊り溝212が設けられていること、天井パネル3は、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33に分割されていること、中央天井パネル部31は、所定のピッチで形成された取付穴312を有し、第2側天井パネル部33は、所定のピッチで形成された取付穴332を有すること、構体側吊り溝212に移動可能に保持される第4取付ねじ58と、第4取付ねじ58により屋根構体21に取り付けられる板状の第2遮蔽部材5であって、第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52が構体側吊り溝212と同一方向に設けられた第2遮蔽部材5と、第1パネル用吊り溝51に移動可能に保持され、取付穴312に挿通されて第2ナット66に締結されることにより中央天井パネル部31を第2遮蔽部材5に取り付ける第2取付ねじ56と、第2パネル用吊り溝52に移動可能に保持され、取付穴332に挿通されて第3ナット67に締結されることにより第2側天井パネル部33を第2遮蔽部材5に取り付ける第3取付ねじ57と、を有すること、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33との間の隙間S1が第2遮蔽部材5により遮蔽されていること、を特徴とする。
【0053】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造では、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33が第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付けられる。第2遮蔽部材5は、第4取付ねじ58を介して屋根構体21の構体側吊り溝212に取り付けられるため、屋根構体21に対する取付位置を自由に調整できる。しかも、中央天井パネル部31は、第2取付ねじ56を介して第2遮蔽部材5の第1パネル用吊り溝51に取り付けられ、第2側天井パネル部33は、第3取付ねじ57を介して第2遮蔽部材5の第2パネル用吊り溝52に取り付けられるため、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33の取付位置を第2遮蔽部材5に対してそれぞれ自由に調整できる。このように、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33は、第2遮蔽部材5を介して屋根構体21に取り付けられても、屋根構体21に対する取付位置を自由に調整することができ、取付性を向上させることができる。また、板状の第2遮蔽部材5が、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33との間に形成される隙間S1を遮蔽するので、外部騒音が客室に漏れない。よって、本形態の鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、分割された天井パネル3を屋根構体21に取り付ける場合でも、パネル取付性と遮音性を向上させることができる。
【0054】
また、本形態は、構体側吊り溝212と第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52は、鉄道車両前後方向Xに沿って設けられていること、中央天井パネル部31は、鉄道車両前後方向Xに並べて配置されること、第2側天井パネル部33は、鉄道車両前後方向Xに並べて配置されること、を特徴とする。
【0055】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33が、鉄道車両前後方向Xに並べられて配置される。第2遮蔽部材5は、第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52が、屋根構体21の構体側吊り溝212と同様に、前後方向Xに沿って形成されている。そのため、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33は、前後方向Xに詰めて配置する場合に、第1パネル用吊り溝51と第2パネル用吊り溝52に沿って第2取付ねじ56と第3取付ねじ57を取付穴312,332の位置に合わせて自由に移動させ、第2取付ねじ56と第3取付ねじ57を第2ナット66と第3ナット67にそれぞれ締結させることができる。よって、本形態の鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33をそれぞれ前後方向Xに並べて配置する場合でも、取付位置を自由に調整することができ、パネル取付性を向上させることができる。
【0056】
また、本形態は、構体側吊り溝212に移動可能に保持される第1取付ねじ55を有すること、中央天井パネル部31と第2側天井パネル部33の間に配置される第2照明器具7を有すること、第1取付ねじ55が第2遮蔽部材5に挿通されて第2照明器具7側の第1ナット65に締結されていること、を特徴とする。
【0057】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造では、第1取付ねじ55を第2遮蔽部材5に挿通して第2照明器具7側の第1ナット65に締結することにより、第2遮蔽部材5の真下の位置で第2照明器具7を屋根構体21に取り付けるので、遮音性を損なうことなく、第2照明器具7を天井パネル3に設置することができる。
【0058】
上記鉄道車両用天井パネル取付構造を備える鉄道車両1は、遮音性が高いので、乗客が客室で快適に過ごすことができる。また、天井パネル3の取付性が向上するので、鉄道車両1の組立作業にかかる時間を短縮できる。
【0059】
また、本形態では、天井パネル3に設けられた複数の取付穴312に、鉄道車両1の屋根構体21に支持される第2取付ねじ56をそれぞれ挿通して第2ナット66に締結することにより、天井パネル3を屋根構体21に取り付ける鉄道車両用天井パネル取付構造において、複数の取付穴312が、それぞれ、天井パネル3(中央天井パネル部31)の端部に開口する挿入溝3121と、挿入溝3121に対して直交方向に形成されて挿入溝3121に連通する長溝3122とを有すること、を特徴とする。
【0060】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造では、中央天井パネル部31を持ち上げて、第2取付ねじ56を挿入溝3121にそれぞれ挿入し、中央天井パネル部31を長溝3122に沿ってスライドさせることにより、中央天井パネル部31の各取付穴312に第2取付ねじ56を挿入できる。その後、各第2取付ねじ56を第2ナット66に締結し、中央天井パネル部31を屋根構体21に取り付ける。このとき、例えば、第2取付ねじ56の位置に欠損部分などがある場合には、その欠損部分を避けるように第2取付ねじ56の位置を長溝3122の範囲内でずらしてから、第2取付ねじ56を第2ナット66に締結する。よって、本形態の鉄道車両用天井パネル構造によれば、複数の取付穴312に第2取付ねじ56をそれぞれ挿入して第2ナット66に締結しやすく、また、第2取付ねじ56を第2ナット66に締結する締結位置を長溝3122の範囲で自由に調整できるので、パネルの種別が増えることを抑制しつつ、パネル取付性を向上させることができる。
【0061】
また、本形態では、取付穴312は、長溝3122の両端部に、屋根構体21側に凹むように形成された切欠部3123,3124を有すること、を特徴とする。
【0062】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造では、長溝3122に挿入した第2取付ねじ56を切欠部3123,3124の何れかに係合させた後、中央天井パネル部31を第2取付ねじ56と一体的に移動させて位置決めできるので、中央天井パネル部31を屋根構体21に取り付けやすい。
【0063】
また、本形態では、天井パネル3が、前後方向Xに並べて配置した複数の中央天井パネル部31を有すること、第1パネル用吊り溝51が 前後方向Xに沿って設けられ、第2取付ねじ56を移動可能に保持していること、複数の中央天井パネル部31に取付穴312がそれぞれ設けられていること、長溝3122が前後方向Xに沿って設けられていること、を特徴とする。
【0064】
このような鉄道車両用天井パネル取付構造は、各中央天井パネル部31を前後方向Xにスライドさせながら、取付穴312の長溝3122に第2取付ねじ56をそれぞれ挿入し、更に、各中央天井パネル部31を第1パネル用吊り溝51に沿って移動させることにより前後方向Xに並べて配置する。よって、本形態の鉄道車両用天井パネル取付構造によれば、各中央天井パネル部31の取付穴312に沿って第2取付ねじ56を移動させることができる方向と複数の中央天井パネル部31の調整方向とが同じ(前後方向X)なので、各中央天井パネル部31を位置決め固定しやすく、パネル取付性を向上させることができる。
【0065】
上記鉄道車両用天井パネル取付構造を備える鉄道車両1は、パネルの種別を抑制しつつ、パネル取付性を向上させることができるので、鉄道車両1の組立作業にかかる時間を短縮できる。
【0066】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0067】
例えば、上記形態では、天井パネル3を車幅方向Yに3分割したが、天井パネル3は、車幅方向Yに2つ又は4つ以上に分割しても良い。
【0068】
例えば、中央天井パネル部31と第1側天井パネル部32と第2側天井パネル部33の前後方向Xの長さを同じにして、前後方向Xに並べて配置しても良い。この場合、各パネル部31,32,33の取付穴312,332のピッチを異ならせても良い。
【0069】
例えば、第1照明器具6と第2照明器具7は、照明カバー71とパネル部31,32,33との間に隙間を形成しないものであっても良い。
【0070】
例えば、照明カバー71と第2遮蔽部材5は、前後方向Xの長さが異なっても良い。ただし、照明カバー71と第2遮蔽部材5の長さを同じにすることにより、第2照明器具7と第2遮蔽部材5の取付位置を管理しやすくなる。
【0071】
例えば、第1取付ねじ55と貫通穴53との間の空隙部や、第4取付ねじ58と取付穴54との間の空隙部、第2取付ねじ56と取付穴312との間の空隙部や、第3取付ねじ57と取付穴332との間の空隙部など、天井パネル3の屋根構体21側の空間と客室側の空間を連通させる空隙部を防音材により塞ぎ、遮音性を高めてもよい。
【0072】
例えば、上記形態では、中央天井パネル部31の取付穴312を挿入溝3121と長溝3122を備えるT字形状としたが、第2側天井パネル部33の取付穴332をT字形状にしても良い。また、第2側天井パネル部33は、構体側吊り溝231に保持される締結部材を挿通される取付穴をT字形状にしても良い。
【0073】
第2遮蔽部材5の長さL3は、中央天井パネル部31の長さL1と同じ、又は、長さL1より短くても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 鉄道車両
3 天井パネル
5 第2遮蔽部材
7 第2照明器具
21 屋根構体
31 中央天井パネル部
33 第2側天井パネル部
51 第1パネル用吊り溝
52 第2パネル用吊り溝
55 第1取付ねじ
56 第2取付ねじ
57 第3取付ねじ
58 第4取付ねじ
71 照明カバー
72 灯具
212 構体側吊り溝
312 取付穴
332 取付穴
X 鉄道車両前後方向
S1 隙間