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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】多段圧延機
(51)【国際特許分類】
   B21B 13/14 20060101AFI20220706BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20220706BHJP
   B21B 31/18 20060101ALI20220706BHJP
   B21B 37/32 20060101ALI20220706BHJP
   B21B 37/38 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B21B13/14 L
B21B13/14 F
B21B13/14 A
B21B27/10 A
B21B31/18 A
B21B37/32 A
B21B37/38 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021512171
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2020015023
(87)【国際公開番号】W WO2020204070
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019072179
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592042727
【氏名又は名称】日本センヂミア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】乗鞍 隆
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/008030(WO,A1)
【文献】特開2006-315084(JP,A)
【文献】特開昭62-144803(JP,A)
【文献】特表2006-505413(JP,A)
【文献】特開2013-123742(JP,A)
【文献】特開2001-232402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00- 3/02
B21B 13/00-13/22
B21B 27/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段圧延機であって、
金属帯板を圧延する1対の作業ロールと、
前記作業ロールを支持する1対の中間ロールと、
前記中間ロールを支持する1対の補強ロールと、
前記作業ロールの入側および/又は出側に設けられ、操作側および駆動側にて前記作業ロールを支持する第1支持ロール群又は支持ベアリングと、
前記金属帯板の板幅方向中央部に配置されたクーラントスプレーヘッダーおよび/又はコブルガードと、を備え、
前記中間ロールは、上下点対称の方向に先細り状のロール肩が設けられているとともに、前記中間ロールをロール軸方向にシフトさせるシフト装置を有しており、
前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリング、前記中間ロールの軸受のうち少なくともいずれをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで前記作業ロールと前記中間ロールとのうち少なくともいずれか一方のパス方向のオフセット位置を変える
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項2】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリングをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで前記作業ロールのパス方向のオフセット位置を変える
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項3】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記中間ロールの軸受をパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで前記中間ロールのパス方向のオフセット位置を変える
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項4】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリングは、前記中間ロール用のチョックに搖動可能に連結されたアームに回転可能に設置されており、
前記アームのパス方向位置を、パス方向位置調整可能なサイドブロックにより調整する ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項5】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリング、前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリングを保持する第1中間ロールチョック、および前記第1中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム、を備える第1クラスターアームと、
前記作業ロールの入側および出側の板幅方向全長にて前記作業ロールを支持する第2支持ロール群、前記第2支持ロール群を保持する第2中間ロールチョック、前記第2中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム、を備える第2クラスターアームと、
が選択的に交換可能である
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項6】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記金属帯板の入側あるいは出側が、前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリング、前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリングを保持する第3中間ロールチョック、および前記第3中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアームを備えており、
前記金属帯板の出側あるいは入側が、前記作業ロールの板幅方向全長にて前記作業ロールを支持する第2支持ロール群、前記第2支持ロール群を保持する前記第3中間ロールチョック、前記第3中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアームを備えている
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項7】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記作業ロールおよび前記中間ロールと、前記作業ロールより大径である1対の大径作業ロールと、が選択的に交換可能である
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項8】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記作業ロールは上下点対称の方向に先細り状のロール肩が設けられており、
前記作業ロールをロール軸方向にシフトさせるシフト装置を更に備えた
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項9】
請求項1に記載の多段圧延機において、
前記作業ロールの撓み量、又は水平力を検出する検出器を更に備え、
前記検出器の検出結果に基づいて前記作業ロール、あるいは前記中間ロールのパス方向のオフセット量を変える
ことを特徴とする多段圧延機。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の多段圧延機を少なくとも1スタンド以上備えた
ことを特徴とするタンデム圧延機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯板を圧延するための多段圧延機に係り、特に硬質材に関して高い生産性や高い製品品質の帯板を得るのに好適な多段圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
側部支持6段圧延機に多区画作業ロール冷却スプレーを組み込む新規な側部支持構造体を設ける一例として、特許文献1には、6段圧延機は、中間ロールに対するオフセットを有する作動ロールを有することで、動作中に作動ロールを支持ロールと係合させるように作用する正味の水平力が生じることになり、作動ロールの水平支持は実質的に支持ロールによって専らもたらされる、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-315084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の硬質材圧延用の小径作業ロールを用いた6段圧延機では、中間ロール駆動による駆動接線力が小径作業ロールに掛かる。
【0005】
この小径作業ロールの撓み防止のために、図1および図2に示されるように、小径作業ロールの入側および出側の板幅方向全長にて入出側対称に作業ロールオフセット量0で小径作業ロールを支持する支持ロールや支持ベアリングが配置されている構造を有していた。
【0006】
また上述の特許文献1では、作業ロールの入側や出側に支持パッドを設ける構造が提示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1を始めとした従来技術では、板幅方向全長支持のための支持ベアリングや支持パッドが設けられていることによってスペースがない、との問題があった。このため、ミル入側の作業ロール冷却や板形状修正用のクーラントゾーン流量制御のためのクーラントスプレーヘッダーや、ミル出側の水切りのためのコブルガードの設置が困難である、との問題があった。
【0008】
また圧延トルクが大きくなった場合に、中間ロール駆動による駆動接線力が大きくなる。このため、作業ロールへ掛かる水平力が増加し、結果として支持ロール群の中の特に支持ベアリングの寿命が短くなる、という問題があった。
【0009】
また、上述した特許文献1に記載の技術では、作業ロール入側、又は出側に固定の支持パッドを設ける構造のため、圧延中の板切れ時等で作業ロールが回転している状態で固定の支持パットに瞬間的に大きな荷重が掛かる場合がある。このため、その場合に支持パッドに大きな摩耗が発生する懸念があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、上述の課題を解決すべく、硬質材を効率的に圧延可能であるとともに、高い製品品質の帯板を得るのに好適な多段圧延機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、多段圧延機であって、金属帯板を圧延する1対の作業ロールと、前記作業ロールを支持する1対の中間ロールと、前記中間ロールを支持する1対の補強ロールと、前記作業ロールの入側および/又は出側に設けられ、操作側および駆動側にて前記作業ロールを支持する第1支持ロール群又は支持ベアリングと、前記金属帯板の板幅方向中央部に配置されたクーラントスプレーヘッダーおよび/又はコブルガードと、を備え、前記中間ロールは、上下点対称の方向に先細り状のロール肩が設けられているとともに、前記中間ロールをロール軸方向にシフトさせるシフト装置を有しており、前記第1支持ロール群又は前記支持ベアリング、前記中間ロールの軸受のうち少なくともいずれをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで前記作業ロールと前記中間ロールとのうち少なくともいずれか一方のパス方向のオフセット位置を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬質材を効率的に圧延可能であるとともに、高い製品品質の帯板を得ることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の6段圧延機の詳細を説明する図である。
図2図1のA-A’矢視断面図である。
図3】本発明の第1実施例に係る6段圧延機の正面図である。
図4図3のB-B’矢視断面図である。
図5図3のC-C’矢視断面図である。
図6図4のD-D’矢視断面図である。
図7図3のE-E’矢視断面図である。
図8】第1実施例における作業ロールのオフセットの様子を説明する図である。
図9】第1実施例における作業ロールのオフセット時の作業ロールに作用する各力の釣り合いを説明する図である。
図10】第1実施例における作業ロールのたわみの様子を説明する図である。
図11】本発明の第2実施例に係る6段圧延機の正面図である。
図12】第2実施例における中間ロールのオフセットの様子を説明する図である。
図13】第2実施例における中間ロールのオフセット時の作業ロールに作用する各力の釣り合いを説明する図である。
図14】本発明の第3実施例に係る6段圧延機の詳細を説明する図である。
図15図14のF-F’矢視断面図である。
図16】本発明の第4実施例に係る6段圧延機の正面図である。
図17図16のG-G’矢視断面図である。
図18図16のH-H’矢視断面図である。
図19】本発明の第6実施例に係る切り替えられた4段圧延機の詳細説明図である。
図20】本発明の第7実施例に係る6段圧延機の説明図である。
図21】第7実施例に係る6段圧延機におけるエッジドロップ制御の詳細を説明する図である。
図22図21のI-I’矢視断面図である。
図23】本発明の第8実施例に係る6段圧延機の詳細を説明する図である。
図24】第8実施例に係る他の6段圧延機の詳細を説明する図である。
図25】本発明の第9実施例のタンデム圧延機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の圧延機の実施例を、図面を用いて説明する。
【0015】
<第1実施例>
本発明の圧延機の第1実施例について図3乃至図10を用いて説明する。図3は本実施例に係る6段圧延機の正面図、図4図3のB-B’矢視断面図、図5図3のC-C’矢視断面図、図6図4のD-D’矢視断面図、図7図3のE-E’矢視断面図である。図8は本実施例における作業ロールのオフセットの様子を説明する図、図9は本実施例における作業ロールのオフセット時の作業ロールに作用する各力の釣り合いを説明する図、図10は本実施例における作業ロールのたわみの様子を説明する図である。
【0016】
本実施例の多段圧延機100は帯板1を圧延する6段圧延機である。図3において、多段圧延機100は、作業ロール2a,2b、中間ロール3a,3b、補強ロール5a,5bを備えている。
【0017】
更には、これら作業ロール2a,2b、中間ロール3a,3b、補強ロール5a,5bに加えて、図3乃至図7に示すように、中間ロール軸受4a,4b,4c,4d,4e,4f、補強ロール軸受箱6a,6b,6c,6d、パスライン調整装置7a,7b、圧下油圧シリンダー8a,8b、ミルハウジング9a,9b、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h、アーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h、軸12a,12b,12c,12d、コブルガード13a,13b,13c,13d、油圧シリンダー14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h、サイドブロック15a,15b,15c,15d、出側テーパウェッジ16a,16b,16c,16d、入側テーパウェッジ16e,16f,16g,16h、テーパウェッジ17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17h、油圧シリンダー18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18h、クーラントスプレーヘッダー19a,19b、スラストベアリング20a,20b、軸21a,21b、ブラケット22a,22b、油圧シリンダー23a,23b,23c,23d、ベンディングシリンダー24a,24b,24c,24d、軸33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h、シフトシリンダー41a,41b,41c,41d等を備えている。
【0018】
なお、図3等において符号に括弧されているものは、手前に存在する同じ構造により図示が困難なものについて示しており、例えば図3において油圧シリンダー14bは油圧シリンダー14aにより図示できない位置に存在していることを表している。他の括弧つき符号についても同様である。
【0019】
図3等で示しているように、上下1対の作業ロール2a,2bは被圧延材である帯板1を圧延する。
【0020】
この上下1対の作業ロール2a,2bは、各々が上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持されている。更に、この上下1対の中間ロール3a,3bは、各々が上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持されている。
【0021】
図7等に示すように、このうち、中間ロール3aのロールネック部には、図示の都合上省略されたベアリングを介して中間ロール軸受4a,4b,4eが取り付けられている。また、中間ロール3bのロールネック部には、図示の都合上省略されたベアリングを介して中間ロール軸受4c,4d,4fが取り付けられている。
【0022】
これら中間ロール軸受4a,4b,4c,4dには、図7に示すように、ロールベンディングを付与するベンディングシリンダー24a,24b,24c,24dがそれぞれ備え付けられている。これにて中間ロール3a,3bにロールベンディングを付与する。
【0023】
また、上下1対の中間ロール3a,3bは、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩3c,3dをそれぞれ有している。
【0024】
更に、中間ロール3aは、駆動側の中間ロール軸受4eを介して、図7に示すようなシフトシリンダー41a,41bにより、ロール軸方向にシフト可能に構成されている。また、中間ロール3bは、駆動側の中間ロール軸受4fを介して、図7に示すようなシフトシリンダー41c,41dにより、ロール軸方向にシフト可能に構成されている。
【0025】
鉛直方向上側の補強ロール5aは、図示の都合上省略されたベアリングおよび補強ロール軸受箱6a,6bに支持されている。また、これら補強ロール軸受箱6a,6bは、パスライン調整装置7a,7bを介してハウジング9a,9bに支持されている。
【0026】
これらのパスライン調整装置7a,7bは、ウォームジャッキ又はテーパウェッジおよび段付ロッカープレート等で構成されており、好適にはパスライン調整装置7a,7bの内部にロードセルを内蔵させて圧延荷重を計測することが望ましい。
【0027】
また、鉛直方向下側の補強ロール5bは、図示の都合上省略されたベアリングおよび補強ロール軸受箱6c,6dに支持されている。また、これら補強ロール軸受箱6c,6dは、圧下油圧シリンダー8a,8bを介してハウジング9a,9bに支持されている。
【0028】
作業ロール2a,2bに話を戻すと、図4等に示すように、操作側の軸端でスラストベアリング20aに、駆動側の軸端でスラストベアリング20bに支持されている。これらスラストベアリング20a,20bは、それぞれ、軸21a,21bを介してブラケット22a,22bに回転可能に取り付けられている。
【0029】
また、ブラケット22a,22bは、それぞれ油圧シリンダー23a,23b、あるいは油圧シリンダー23c,23dにより支持されている。
【0030】
このため、油圧シリンダー23a,23cの引き、および油圧シリンダー23b,23dの押しにより、スラストベアリング20a,20bをパス方向出側にその中心を合わせるように移動させることができ、これによりスラストベアリング20a,20bの中心を作業ロール2a,2bのパス方向出側にオフセットさせることができる。
【0031】
また、油圧シリンダー23a,23cの押し、および油圧シリンダー23b,23dの引きにより、スラストベアリング20a,20bをパス方向入側にその中心を合わせるように移動させることができ、これによりスラストベアリング20a,20bの中心を作業ロール2a,2bのパス方向入側にオフセットさせることができる。
【0032】
なお、作業ロール2a,2bのパス方向のオフセット量が小さい場合、このスラストベアリング20a,20bをパス方向にその中心を合わせるように移動する必要はない。
【0033】
本実施例の多段圧延機100では、上述の作業ロール2aは、図5等に示すように、水平方向出側では、操作側に設置された支持ベアリング10aおよび駆動側に設置された支持ベアリング10bに回転可能に支持されている。水平方向入側では、操作側に設置された支持ベアリング10eおよび駆動側に設置された支持ベアリング10fに回転可能に支持されている。
【0034】
また、作業ロール2bは、水平方向出側では、操作側に設置された支持ベアリング10cおよび駆動側に設置された支持ベアリング10dに回転可能に支持されている。水平方向入側では、操作側に設置された支持ベアリング10gおよび駆動側に設置された支持ベアリング10hに回転可能に支持されている。
【0035】
またこれら支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hは、それぞれ軸33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33hを介して、それぞれアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hに回転可能に支持されている。
【0036】
これらのアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hのうち、アーム11a,11bはそれぞれ軸12aを介して中間ロール軸受4a,4bに搖動可能なように取り付けられている。また、アーム11e,11fはそれぞれ軸12cを介して中間ロール軸受4a,4bに搖動可能なように取り付けられている。アーム11c,11dはそれぞれ軸12bを介して中間ロール軸受4c,4dに搖動可能なように取り付けられている。アーム11g,11hはそれぞれ軸12dを介して中間ロール軸受4c,4dに搖動可能なように取り付けられている。
【0037】
これら中間ロール軸受4a,4b,4c,4dが、中間ロール3a,3b用のチョックに相当する。
【0038】
また、アーム11a,11bはサイドブロック15aでパス方向に支持されており、サイドブロック15aは出側テーパウェッジ16a,16bおよびテーパウェッジ17a,17bを介してハウジング9aに支持されている。
【0039】
アーム11c,11dはサイドブロック15cでパス方向に支持されている。サイドブロック15cは出側テーパウェッジ16c,16dおよびテーパウェッジ17c,17dを介して、ハウジング9bに支持されている。
【0040】
アーム11e,11fはサイドブロック15bでパス方向に支持されており、更にサイドブロック15bは入側テーパウェッジ16e,16fおよびテーパウェッジ17e,17fを介してハウジング9aに支持されている。
【0041】
アーム11g,11hはサイドブロック15dでパス方向に支持されており、サイドブロック15dは、入側テーパウェッジ16g,16hおよびテーパウェッジ17g,17hを介して、ハウジング9bに支持されている。
【0042】
テーパウェッジ16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16hは、それぞれ油圧シリンダー18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18hにて抜き差しされることでテーパウェッジ17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17h側への挿入厚さを変えることができる。
【0043】
例えば、入側テーパウェッジ16e,16f,16g,16hを押し込むとその厚みが厚くなり、その分だけサイドブロック15b,15dは出側に移動し、アーム11e,11f,11g,11hおよび軸33e,33f,33g,33hおよび支持ベアリング10e,10f,10g,10hを介して、作業ロール2a,2bは出側にオフセットδだけ移動する。
【0044】
これと同時に、出側テーパウェッジ16a,16b,16c,16dを抜くとその厚みが薄くなり、その分だけサイドブロック15a,15cは出側に移動し、アーム11a,11b,11c,11dおよび軸33a,33b,33c,33dを介して支持ベアリング10a,10b,10c,10dも出側にδだけ移動し、作業ロール2a,2bを支持する。
【0045】
逆に出側テーパウェッジ16a,16b,16c,16dを押し込むとその厚みが厚くなり、その分だけサイドブロック15a,15cは入側に移動し、アーム11a,11b,11c,11dおよび軸33a,33b,33c,33dおよび支持ベアリング10a,10b,10c,10dを介して、作業ロール2a,2bは入側に所望のオフセット量だけ移動する。
【0046】
これと同時に、入側テーパウェッジ16e,16f,16g,16hを抜くとその厚みが薄くなり、その分だけサイドブロック15b,15dは入側に移動し、アーム11e,11f,11g,11hおよび軸33e,33f,33g,33hを介して支持ベアリング10e,10f,10g,10hも入側に所望のオフセット量だけ移動し、作業ロール2a,2bを支持する。
【0047】
なお、本実施例ではテーパウェッジ16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16hを油圧シリンダー18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18hにより出し入れする方式を示したが、油圧シリンダー18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18hの替わりにモータ駆動のウォームジャッキ方式を用いることができる。
【0048】
図3に戻り、作業ロール2a,2bは、その帯板1の板幅方向中央部分の入側にコブルガード13b,13dが設けられている。また、そのコブルガード13b,13dにはクーラントスプレーヘッダー19a,19bが設けられている。
【0049】
このクーラントスプレーヘッダー19a,19bは、作業ロール2a,2bの冷却や潤滑を行う。更にこのクーラントスプレーヘッダー19a,19bは、板幅方向に複数のゾーンを設けることでそのゾーン毎にクーラントの流量を可変としたり、オン、オフするようにしたりすることができる。これにより高精度な板形状制御が可能となる。
【0050】
例えば、板幅方向で局部的に板が張っている(伸びていない)場合、クーラントスプレーヘッダー19a,19bのその板幅方向の同じ位置のゾーンのクーラントの流量を減らすか、オフとすることにより、作業ロール2a,2bのその分の冷却が抑えられて、熱膨張が大きくなり、その分だけその部分の径が大きくなる。その結果として、板形状がその部分のみ張っている状態から伸びる方向となり、平坦な形状となる。
【0051】
コブルガード13b,13dは、ミルハウジング9a,9bに固定された油圧シリンダー14e,14gにて、中間ロール3a,3bのロール交換時にリトラクト可能となっている。
【0052】
本実施例は、クーラントスプレーヘッダー19a,19bが入側のみの設置の例を示したが、出側のみの設置でも、入側および出側のいずれ側にも設置することができる。また、このクーラントスプレーヘッダー19aの板形状制御のための板幅方向への複数のゾーンの適用は、上側のみで有効であるが、これを下側にも設ければその効果はより大きくなる。
【0053】
また作業ロール2a,2bの帯板1の板幅方向中央部分の出側には、ミル出側での板切れ時の板破断片のロール巻き込み防止や水切り目的で、コブルガード13a,13cを設けてクーラントの板への落下防止を図る。
【0054】
なお、本実施例では、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h、軸33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h、アーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hは、軸12a,12b,12c,12dを介して中間ロール軸受4a,4b,4c,4dに搖動可能なように取り付けられている例を示した。
【0055】
しかし、これらの支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h、軸33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h、アーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hが、軸12a,12b,12c,12dを介してサイドブロック15a,15b,15c,15dに搖動可能なように取り付けられたものとすることができる。
【0056】
また、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hを直接油圧シリンダーやウォームジャッキにて支持させる構造とすることができる。
【0057】
更に、クーラントスプレーヘッダー19a,19bが取り付けられているコブルガード13b,13dやコブルガード13a,13cは、ミルハウジング9a,9bに固定された油圧シリンダー14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hにてリトラクト可能となっている場合について説明したが、これらのクーラントスプレーヘッダー19a,19bが取り付けられているコブルガード13b,13dやコブルガード13a,13cは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4dにマウントさせることができる。また、クーラントスプレーヘッダー19a,19bは、サイドブロック15b,15dに内蔵させても良い。
【0058】
ここで作業ロール2a,2bのオフセット位置の設定方法について図8乃至図10を用いて説明する。
【0059】
まず、中間ロール3a,3bを駆動する方式の場合、図8および図9に示すように、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhは、以下に示される(1)式にて表される。
【0060】
Fwh=Ft-Q・tan(θiw)-(Tf-Tb)/2 ……(1)
ここで、Qは圧延荷重を示し、ロードセルにて測定可能な量、又は圧下油圧シリンダー8a,8bの圧力から算出する。Tf,Tbは、それぞれ出側張力、入側張力を示す。本値は、図示の都合上省略した張力計等で測定される。
【0061】
作業ロール2a,2bのオフセット量を図8および図9に示すようにδとすると、(1)式中のθiwは、下記に示される(2)式で求められる。
【0062】
Sin(θiw)=δ/((Di+Dw)/2)) ……(2)
ここで(2)式中、Dw,Diは、それぞれ作業ロール2a,2bの直径,中間ロール3a,3bの直径を示す。
【0063】
また(1)式中、駆動接線力Ftは、下記に示される(3)式で求められる。
【0064】
Ft=(Ti/2)/(Di/2) ……(3)
ここで(3)式中、Tiは中間ロール3a,3bの上下駆動トルクの合計値を示す。
【0065】
すなわち、これら(1)-(3)式から、作業ロールオフセット量δを変えることにより、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhを小さくすることができることが分かる。
【0066】
従って、図10に示すように、その作業ロール水平力Fwhを作業ロール2a,2b長さLにて割った線圧qを小さくすることができる。また、線圧qが小さいことにより作業ロール2a,2bの撓みξを抑えることができ、結果として板形状不良を低減させることができる。
【0067】
そのために、作業ロールオフセット量δは、その作業ロール撓みξが0近傍値又は許容値となる一定値とする。
【0068】
ここで作業ロール撓みξは、梁の単純支持の式より次の(4)式で示される。
【0069】
ξ=(5・q・L)/(384・E・I) ……(4)
ここで(4)式中、Eは作業ロール2a,2bの縦弾性係数を示し、Iは作業ロール2a,2bの断面2次モーメントを示す。
【0070】
上述の本実施例では、作業ロール2a,2bの径の範囲は、D(作業ロール径)/B(板幅)=0.08~0.16の小径が特に好適である。ただしこの作業ロール径に限定されるものではない。
【0071】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0072】
上述した本発明の第1実施例の多段圧延機100は、帯板1を圧延する1対の作業ロール2a,2bと、作業ロール2a,2bを支持する1対の中間ロール3a,3bと、中間ロール3a,3bを支持する1対の補強ロール5a,5bと、作業ロール2a,2bの入側および出側に設けられ、操作側および駆動側にて作業ロール2a,2bを支持する支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hと、帯板1の板幅方向中央部に配置されたクーラントスプレーヘッダー19a,19bおよびコブルガード13a,13b,13c,13dと、を備え、中間ロール3a,3bは、上下点対称の方向に先細り状のロール肩3c,3dが設けられ、中間ロール3a,3bをロール軸方向にシフトさせるシフトシリンダー41a,41b,41c,41dを有しており、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで作業ロール2a,2bのパス方向のオフセット位置を変える。
【0073】
これによって、帯板1の板幅方向中央のスペースに、ミル入側の作業ロール冷却のためや板形状修正用のクーラントゾーン流量制御のためのクーラントスプレーヘッダー19a,19b、ミル出側の水切りのためのコブルガード13a,13b,13c,13dが設置可能となった。このため、例えばクーラントスプレーヘッダー19a,19bにて作業ロール2a,2bの入側を有効にロール冷却可能となり、高速での圧延が可能となる。また、コブルガード13a,13b,13c,13dが設置可能となり、ミル出側の水切りができることから、この点からも高速圧延が可能となる。また、クーラントゾーン流量制御が可能となり、良好な板形状が得られる。
【0074】
また、作業ロール2a,2bの板幅方向全長で支持していないことから作業ロールの撓みの増加が起こり、その結果として板形状不良が生じる憾みがあるが、この板形状不良を低減するために、作業ロール2a,2bの入側、あるいは出側のオフセット量を変えていることで、作業ロール2a,2bに掛かる水平力を低減させ、作業ロール2a,2bの撓みを抑え、板形状不良を低減させることができる。
【0075】
更に、作業ロール2a,2bの板幅方向全長ではなく、操作側および駆動側のみにて、固定パッドでなく回転可能な支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hにて支持するようにしたため、ベアリングマークの懸念がなく、表面品質の優れた板を得ることができるとともに、支持ベアリングの寿命を長くすることが可能となる。また、圧延中の板切れ時等で大きな摩耗が生ずる懸念のある固定パッドの使用が不要である、との効果が得られる。
【0076】
このような本実施例の多段圧延機100は、特に硬質材の圧延に好適で、高い生産性や高い製品品質の帯板を得るのに非常に好適な圧延機となっている。
【0077】
また、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れするため、帯板1の圧延の条件に応じて作業ロール2a,2bを確実、かつ簡易にオフセットさせて、撓みを抑制することができる。
【0078】
更に、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hは、中間ロール3a,3b用のチョックに搖動可能に連結されたアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hに回転可能に設置されており、アーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hのパス方向位置を、パス方向位置調整可能なサイドブロック15a,15b,15c,15dにより調整することで、作業ロール2a,2bのオフセット量を高い精度で調整することができる。
【0079】
なお、本実施例では、操作側および駆動側にて作業ロール2a,2bを支持する構造部材として支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hを用いる場合について説明したが、替わりに、後述する図14図16等に示すような支持ロール25a,25b,25c,25dのうち、板幅方向全長ではなく操作側および駆動側にて作業ロール2a,2bを支持するように変更した構造とした支持ロールを含めた第1支持ロール群を用いることができる。
【0080】
また、作業ロール2a,2bの入側と出側の操作側および駆動側がいずれも支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hにより支持される場合について説明したが、入側と出側とのいずれか一方を操作側および駆動側にて作業ロール2a,2bを支持する支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hとし、もう一方を操作側および駆動側にて作業ロール2a,2bを支持する支持ロールからなる第1支持ロール群を用いることができる。
【0081】
<第2実施例>
本発明の第2実施例の圧延機について図11乃至図13を用いて説明する。図11は本実施例に係る6段圧延機の正面図、図12は本実施例の6段圧延機における中間ロールのオフセットの様子を説明する図、図13は本実施例の6段圧延機における中間ロールのオフセット時の作業ロールに作用する各力の釣り合いを説明する図である。
【0082】
なお、本実施例においては、第1実施例と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0083】
本発明の第2実施例は、第1実施例の多段圧延機100に加えて、中間ロール3a,3bをパス方向にオフセットさせる構造を持っている。その構造は特に限定されないが、中間ロール3a,3bの中間ロール軸受4a,4b,4c,4dをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることが可能であればよい。
【0084】
例えば、図11に示されるように、中間ロール3aは、図示の都合上省略されたベアリングおよび中間ロール軸受4a,4bを介して、出側のうち、操作側の油圧シリンダー32aおよび駆動側の油圧シリンダー32bの押し引き、および入側のうち、操作側の油圧シリンダー32cおよび駆動側の油圧シリンダー32dの引き押しにてパス方向にオフセット量αだけオフセットされる。
【0085】
また、図11に示されるように、中間ロール3bは、図示の都合上省略されたベアリングおよび中間ロール軸受4c,4dを介して、出側のうち、操作側の油圧シリンダー32eおよび駆動側の油圧シリンダー32fの押し引き、および入側のうち、操作側の油圧シリンダー32gおよび駆動側の油圧シリンダー32hの引き押しにてパス方向にオフセット量αだけオフセットされる。
【0086】
例えば、油圧シリンダー32a,32bにて中間ロール3aをパス方向入側方向に押すとともに油圧シリンダー32c,32dをその分だけパス方向入側方向に引くことで、中間ロール3aはパス方向入側にオフセット量αだけオフセットされ、そのオフセット量αが保持される。
【0087】
同様に、油圧シリンダー32e,32fにて中間ロール3bをパス方向入側方向に押すとともに油圧シリンダー32,32hをその分だけパス方向入側方向に引くことで、中間ロール3bはパス方向入側にオフセット量αだけオフセットされ、そのオフセット量αが保持される。
【0088】
逆に、油圧シリンダー32a,32bにて中間ロール3aをパス方向出側方向に引くとともに油圧シリンダー32c,32dをその分だけパス方向出側方向に押すことで、中間ロール3aはパス方向出側にオフセット量αだけオフセットされ、そのオフセット量αが保持される。
【0089】
同様に、油圧シリンダー32e,32fにて中間ロール3bをパス方向出側方向に引くとともに油圧シリンダー32,32hをその分だけパス方向出側方向に押すことで、中間ロール3bはパス方向出側にオフセット量αだけオフセットされ、そのオフセット量αが保持される。
【0090】
以下、本実施例の中間ロール3a,3bのオフセット位置の設定方法を図12および図13にて説明する。
【0091】
本実施例も、中間ロール3a,3bを駆動するため、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhは、上述の(1)式で表される。
【0092】
中間ロール3a,3bのオフセット量を図12および図13に示すようにαと示すと、(1)式中のθiwは、本実施例では下記に示される(4)式で求められる。
【0093】
Sin(θiw)=α/((Di+Dw)/2)) ……(4)
ここで(4)式中、Dw,Diは、それぞれ作業ロール2a,2bの直径,中間ロール3a,3bの直径を示す。
【0094】
また(1)式中、駆動接線力Ftは、本実施例においても上述の(3)式で求められる。
【0095】
すなわち、これら(1),(3),(4)式から、中間ロールオフセット量αを変えることにより、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhを小さくすることができることが分かる。
【0096】
従って、第1実施例と同様の効果が得られることが分かる。そのためには、中間ロールオフセット量αは、その作業ロール撓みξが0近傍値又は許容値となる一定値となる値とする。
【0097】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0098】
本発明の第2実施例の圧延機のように、中間ロール3a,3bの軸受をパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることによっても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0099】
なお、第1実施例では作業ロール2a,2bのみをオフセットさせ、第2実施例では中間ロール3a,3bのみをオフセットさせる場合について説明したが、本発明は、その原理上、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhを小さくすることができればよいものであり、そのために重要なのは作業ロール2a,2bと中間ロール3a,3bとの圧延方向の相対位置関係を調整することである。
【0100】
従って、作業ロール2a,2bと中間ロール3a,3bとのいずれも、作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhを小さくするようにオフセットさせることも可能である。
【0101】
<第3実施例>
本発明の第3実施例の圧延機について図14および図15を用いて説明する。図14は本実施例に係る6段圧延機の詳細を説明する図、図15図14のF-F’矢視断面図である。
【0102】
図14図15に示すように、本実施例の多段圧延機100Aでは、第1実施例の多段圧延機100と同様に、上下1対の作業ロール2a,2bや、各々が上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持されている。更に、この上下1対の中間ロール3a,3bは、各々が上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持されている。
【0103】
また、本実施例の多段圧延機100Aでも、中間ロール3aのロールネック部には、図示の都合上省略されたベアリングを介して中間ロール軸受4a,4b,4eが取り付けられている。また、中間ロール3bのロールネック部には、図示の都合上省略されたベアリングを介して中間ロール軸受4c,4d,4fが取り付けられている。
【0104】
これに対し、本実施例の多段圧延機100Aでは、中間ロール軸受4a,4bには、搖動可能なように、それぞれ軸29a,29cを介してアーム28a,28cが取り付けられている。
【0105】
また、アーム28aには軸27a,27bを介して支持ベアリング26a,26bが、アーム28cには軸27e,27fを介して支持ベアリング26e,26fが、それぞれ取り付けられている。
【0106】
同様に、中間ロール軸受4c,4dには、搖動可能なように、それぞれ軸29b,29dを介してアーム28b,28dが取り付けられている。
【0107】
また、アーム28bには軸27c,27dを介して支持ベアリング26c,26dが、アーム28dには軸27g,27hを介して支持ベアリング26g,26hが、それぞれ取り付けられている。
【0108】
その上で、本実施例の多段圧延機100Aでは、支持ベアリング26a,26bには支持ロール25aが、支持ベアリング26e,26fには支持ロール25cが取り付けられている。これら支持ロール25a,25cは、図15に示すように板幅方向全長にて作業ロール2aを支持する。
【0109】
同様に、支持ベアリング26c,26dには支持ロール25bが、支持ベアリング26g,26hには支持ロール25dが取り付けられている。これら支持ロール25b,25dも、図15に示すように、板幅方向全長にて作業ロール2bを支持する。
【0110】
これら支持ロール25a,25b,25c,25dが第2支持ロールに相当し、支持ロール25a,25b,25c,25dを支持する支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hが第2支持ロール群に相当する。また、第2中間ロールチョックについては中間ロール軸受4a,4b,4c,4dが相当する。これらの構造が第2クラスターアームに相当する。
【0111】
本実施例の多段圧延機100Aでは、この第2クラスターアームがハウジング9a,9bの操作側に抜出し可能である。
【0112】
第2クラスターアームが抜出された箇所には、上述の第1実施例で説明した、第1支持ロール群又は支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h、第1支持ロール群又は支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hを保持する第1中間ロールチョック、および第1中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hを備える第1クラスターアームが挿入可能となっている。
【0113】
すなわち、本実施例の多段圧延機100Aでは、帯板1の特性等に応じて、第1クラスターアームをハウジング9a,9bの操作側に抜出し、代わりに第2クラスターアームをハウジング9a,9b内に挿入する。また逆に第2クラスターアームをハウジング9a,9bの操作側に抜出し、代わりに第1クラスターアームをハウジング9a,9b内に挿入する。
【0114】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0115】
本発明の第3実施例の圧延機においても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0116】
また、第1クラスターアームと第2クラスターアームとが選択的に交換可能であることにより、従来の多段ミルとの切り替え可能となり、操業の柔軟性が増加する。例えば、第1クラスターアームを使用した場合はクーラントスプレーヘッダー19a,19bが使用できるため、作業ロール2a,2bの有効な冷却ができ、より高速の圧延が可能となる。また第2クラスターアームへの切り替えにて、より小径の作業ロール2a,2bが使用可能となるので、より硬質の圧延材の圧延が可能となる。
【0117】
<第4実施例>
本発明の第4実施例の圧延機について図16乃至図18を用いて説明する。図16は本実施例に係る6段圧延機の正面図、図17図16のG-G’矢視断面図、図18図16のH-H’矢視断面図である。
【0118】
図16乃至図18に示すように、本実施例の多段圧延機100Bでも、第1実施例の多段圧延機100と同様に、上下1対の作業ロール2a,2bは、各々が上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持されている。更に、この上下1対の中間ロール3a,3bは、各々が上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持されている。
【0119】
本実施例の多段圧延機100Bでは、帯板1の出側は、上述の第1実施例の多段圧延機100と同様に、図16乃至図18に示すように、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hを保持する第3中間ロールチョック、および第3中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hを備えている。
【0120】
あるいは、支持ベアリング10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10hの替わりに第1支持ロール群を備えることができる。
【0121】
また、帯板1の出側には、その帯板1の板幅方向中央部分の出側にはコブルガード13a,13cを設けている。コブルガード13a,13cの役割は、上述の第1実施例と同じである。なお、出側の圧延後のロール表面にクーラントスプレイされるので、冷却、形状制御の効果が入側にクーラントスプレーヘッダーを設けるより大きい。
【0122】
これに対し、本実施例の多段圧延機100Bでは、上下一対の作業ロール2a,2bは、帯板1の入側にて、図17および図18に示すように、それぞれ支持ロール25a,25bにて板幅方向全長にて回転可能に支持されている。
【0123】
また、支持ロール25aは、支持ベアリング26a,26bにて回転可能に支持されている。更に、支持ベアリング26a,26bは、それぞれ軸27a,27bを介してアーム28aに回転可能に支持されている。
【0124】
同様に、支持ロール25bは、支持ベアリング26c,26dにて回転可能に支持されており、これら支持ベアリング26c,26dは、それぞれ軸27c,27dを介してアーム28bに回転可能に支持されている。
【0125】
アーム28aは、軸29aを介して中間ロール軸受4a,4bに搖動可能なように取り付けられているとともに、サイドブロック15bによりパス方向に支持されている。
【0126】
また、アーム28bは、軸29bを介して中間ロール軸受4c,4dに搖動可能なように取り付けられているとともに、サイドブロック15dによりパス方向に支持されている。
【0127】
サイドブロック15b,15dの支持構造は第1実施例の多段圧延機100と同じであり、テーパウェッジ16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16hの出し入れ方式の替わりにモータ駆動のウォームジャッキ方式を用いることができる。
【0128】
本実施例における第3中間ロールチョックは、中間ロール軸受4a,4b,4c,4dが相当する。
【0129】
本実施例の多段圧延機100Bにおいても、テーパウェッジ16e,16f,16g,16hは、油圧シリンダー18e,18f,18g,18hにて抜き差しされ、その厚みを変えることができる。
【0130】
例えば、入側テーパウェッジ16e,16f,16g,16hを押し込むとその厚みが厚くなり、その分だけサイドブロック15b,15dは出側に移動してアーム28a,28b、軸27a,27b,27c,27d、支持ベアリング26a,26b,26c,26dおよび支持ロール25a,25bを介して、作業ロール2a,2bは出側にオフセットδだけ移動する。
【0131】
同時に出側テーパウェッジ16a,16b,16c,16dを抜くとその厚みが薄くなり、その分だけサイドブロック15a,15cは出側に移動し、アーム11a,11b,11c,11dおよび軸33a,33b,33c,33dを介して支持ベアリング10a,10b,10c,10dも出側にδだけ移動して、作業ロール2a,2bを支持する。
【0132】
なお、本実施例の多段圧延機100Bの場合、作業ロール2a,2bの作業ロールオフセット量δがゼロでも、図8等に示される作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhは、入側方向のみにかかる。
【0133】
一方、その作業ロール2a,2bの入側は支持ロール25a,25bにて板幅方向全長にて支持されているので、作業ロール2a,2bのたわみは極少ない。従って、本実施例の場合は作業ロール2a、2bや中間ロール3a,3bのオフセット量δはゼロとすることができる。
【0134】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0135】
本発明の第4実施例の圧延機においても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0136】
また、帯板1の出側が、第1支持ロール群又は支持ベアリング、第1支持ロール群又は支持ベアリングを保持する第3中間ロールチョック、および第3中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hを備えており、帯板1の入側が、作業ロール2a,2bの板幅方向全長にて作業ロール2a,2bを支持する第2支持ロール群、第2支持ロール群を保持する第3中間ロールチョック、第3中間ロールチョックに搖動可能に連結されたアーム28a,28b,28c,28dを備えていることにより、出側のその中央のスペースには、ミル出側の水切りのためのコブルガードの設置が可能となる。
【0137】
なお、本実施例では、入側に支持ロール25a,25b、支持ベアリング26a,26b,26c,26dを配置する例を示したが、これらを出側にのみに設置して、入側に支持ベアリング10a等により支持する構造群を設置することができる。
【0138】
また、支持ロール25a,25b、支持ベアリング26a,26b,26c,26d、軸27a,27b,27c,27d、アーム28a,28bは、軸29a,29bを介して中間ロール軸受4a,4b,4c,4dに搖動可能なように取り付けられている例を示したが、これらの支持ロール25a,25b、支持ベアリング26a,26b,26c,26d、軸27a,27b,27c,27d、アーム28a,28bは、軸29a,29bを介してサイドブロック15b,15dに搖動可能なように取り付けることができる。
【0139】
更に、支持ロール25a,25b、支持ベアリング26a,26b,26c,26dを直接油圧シリンダーやウォームジャッキにて支持させる構造とすることができる。
【0140】
<第5実施例>
本発明の第5実施例の圧延機について上述した図14乃至図18を参照して説明する。
【0141】
本実施例の多段圧延機は、上下1対の作業ロール2a,2bは被圧延材である帯板1を圧延する。
【0142】
この上下1対の作業ロール2a,2bは、図14乃至図18に示すように、各々が上下1対の中間ロール3a,3bに接触支持されている。更に、この上下1対の中間ロール3a,3bは、図15図18に示すように、各々が上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持されている。
【0143】
また、本実施例の多段圧延機では、上下一対の作業ロール2a,2bは、その入側にて、それぞれ支持ロール25a,25bにて板幅方向全長にて回転可能に支持されている。また、それら支持ロール25a,25bは、支持ベアリング26a,26bあるいは支持ベアリング26c,26dにて回転可能に支持されている。
【0144】
作業ロール2a,2bは、その出側では、それぞれ支持ロール25c,25dにて板幅方向全長にて回転可能に支持されている。また、それら支持ロール25c,25dは、支持ベアリング26e,26fあるいは支持ベアリング26g,26hにて回転可能に支持されている。
【0145】
本実施例では、これら支持ロール25a,25b,25c,25dが作業ロール2a,2bの入側および/又は出側に設けられ、作業ロール2a,2bの入側および出側の板幅方向全長にて作業ロール2a,2bを支持する第3支持ロールに相当し、それら支持ロール25a,25b,25c,25dを支える支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hが第3支持ロール群に相当する。
【0146】
更に、支持ベアリング26a,26bはそれぞれ軸27a,27bを介してアーム28aに回転可能に支持され、支持ベアリング26c,26dはそれぞれ軸27c,27dを介してアーム28bに回転可能に支持され、支持ベアリング26e,26fはそれぞれ軸27e,27fを介してアーム28cに回転可能に支持され、支持ベアリング26g,26hはそれぞれ軸27g,27hを介してアーム28dに回転可能に支持されている。
【0147】
これらアーム28a,28b,28c,28dは、それぞれ軸29a,29b,29c,29dを介して中間ロール軸受4a,4b,4c,4d(中間ロール3a,3b用のチョック)に搖動可能なように取り付けられている。
【0148】
その上で、アーム28aはサイドブロック15bによりパス方向に支持され、アーム28bはサイドブロック15dによりパス方向に支持され、アーム28cはサイドブロック15aによりパス方向に支持され、アーム28dはサイドブロック15cによりパス方向に支持されている。
【0149】
これらサイドブロック15a,15b,15c,15dの支持構造は、第1実施例の多段圧延機100と同じであり、支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hをパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れすることで作業ロール2a,2bのパス方向のオフセット位置を変える。
【0150】
例えば、入側テーパウェッジ16e,16f,16g,16hを押し込むとその厚みが厚くなり、その分だけサイドブロック15b,15dは出側に移動し、アーム28a,28b、軸27a,27b,27c,27d、支持ベアリング26a,26b,26c,26dおよび支持ロール25a,25bを介して作業ロール2a,2bが出側にオフセットδだけ移動する。
【0151】
同時に、出側テーパウェッジ16a,16b,16c,16dを抜くとその厚みが薄くなり、その分だけサイドブロック15a,15cは出側に移動し、アーム28c,28dおよび軸27e,27f,27g,27h、支持ベアリング26e,26f,26g,26hを介して支持ロール25c,25dも出側にδだけ移動し、作業ロール2a,2bを支持する。
【0152】
なお、本実施例においても、テーパウェッジ16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16hの出し入れ方式を示したが、モータ駆動のウォームジャッキ方式を用いることができる。
【0153】
あるいは、第2実施例のように、中間ロール3a,3bの軸受(中間ロール軸受4a,4b,4c,4d)をパス方向に対して入側、あるいは出側に出し入れする構造を採用して中間ロール3a,3bのパス方向のオフセット位置を変えることができる。
【0154】
また、本実施例では、支持ロール25a,25b,25c,25d、支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h、軸27a,27b,27c,27d,27e,27f,27g,27h、アーム28a,28b,28c,28dは、軸29a,29b,29c,29dを介して中間ロール軸受4a,4b,4c,4dに搖動可能なように取り付けられている例を示したが、これらの支持ロール25a,25b,25c,25d、支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h、軸27a,27b,27c,27d,27e,27f,27g,27h、アーム28a,28b,28c,28dは、軸29a,29b,29c,29dを介してサイドブロック15a,15b,15c,15dに搖動可能なように取り付けらたものとすることができる。
【0155】
また支持ロール25a,25b,25c,25d、支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hを油圧シリンダーやウォームジャッキにて直接支持させる構造とすることができる。
【0156】
上述の本実施例では、作業ロール2a,2bの径の範囲は、D(作業ロール径)/B(板幅)=0.06~0.16の小径が特に好適である。ただしこの作業ロール径に限定されるものではない。
【0157】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0158】
本発明の第5実施例の多段圧延機においても、作業ロール2a,2bのオフセット量δを変えることにより、(1)式に示される作業ロール2a,2bにかかる作業ロール水平力Fwhを小さくすることができる。その結果、作業ロール2a,2bを支持ロール25a,25b,25c,25dを介して支持する支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hへの負荷荷重を軽減することができる。
【0159】
そのため、作業ロール2a,2bへ掛かる水平力を低減し、支持ロール群の中の特に支持ベアリング26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26hの寿命を長くできるとともに、そのサイズを小さくすることが可能となり、より小径の作業ロールの使用が可能となる。
【0160】
また、第3支持ロール群は、中間ロール3a,3b用のチョックに搖動可能に連結されたアーム28a,28b,28c,28dに回転可能に設置されており、アーム28a,28b,28c,28dのパス方向位置を、パス方向位置調整可能なサイドブロック15a,15b,15c,15dにより調整することにより、高い精度で作業ロールのオフセット量を調整することができる。
【0161】
<第6実施例>
本発明の第6実施例の圧延機について図19を用いて説明する。図19は本実施例に係る切り替えられた4段圧延機の詳細説明図である。
【0162】
本実施例の多段圧延機100Cは、図19に示すように、その一態様が4段圧延機であり、被圧延材である帯板1が上下1対の作業ロール30a,30bにて圧延される。
【0163】
この上下1対の作業ロール30a,30bは図3等で示した作業ロール2a,2bより大径であり、各々上下1対の補強ロール5a,5bに接触支持されている。
【0164】
また、上下1対の作業ロール30a,30bは、その操作側、駆動側にて図示の都合上省略されたベアリングを介して作業ロール軸受31a,31bに回転可能に取り付けられている。
【0165】
これら作業ロール軸受31a,31b付きの上下1対の作業ロール30a,30bは、それぞれハウジング9a,9bの操作側に抜出し可能であるとともに挿入可能となっている。
【0166】
また、本実施例の多段圧延機100Cでは、上述の第1実施例で説明した、図3乃至図7で示すような作業ロール2a,2bおよび中間ロール3a,3bを含む第1クラスターアームをハウジング9a,9b内から抜出し可能であるとともに、挿入可能となっている。
【0167】
従って、第1クラスターアームを用いる場合は6段ミルとして、作業ロール30a,30bを用いる場合は4段ミルとなり、切り替えが可能となっている。
【0168】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0169】
本発明の第6実施例の圧延機においても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0170】
また、作業ロール2a,2bおよび中間ロール3a,3bと、作業ロール2a,2bより大径である1対の大径作業ロール30a,30bと、が選択的に交換可能であることにより、例えば、硬質材の圧延においては硬質材の圧延に好適な6段ミルのより小径の作業ロール2a,2bを使用し、軟質材の圧延の場合には4段ミルに切り替えて軟質材の圧延に好適な大径の作業ロール30a,30bを使用することが可能となる。
【0171】
<第7実施例>
本発明の第7実施例の圧延機について図20乃至図22を用いて説明する。図20は本実施例に係る6段圧延機の説明図、図21は本実施例の6段圧延機におけるエッジドロップ制御の詳細を説明する図(図20のJ-J’矢視断面図)、図22図21のI-I’矢視断面図である。
【0172】
図20乃至図22に示すように、本実施例の多段圧延機100Dは、第1実施例の多段圧延機100のうち、上下1対の作業ロール2a,2bが、帯板1の板幅中心に対して上下点対称方向のロール胴端部位置に先細り状のロール肩2c,2dをそれぞれ有している。
【0173】
そのため、図21および図22に示すように、上下一対の作業ロール2a,2bは、操作側軸端でスラストベアリング34a,34bに、駆動側軸端でスラストベアリング34c,34dに支持されている。各々のスラストベアリング34a,34b,34c,34dは、それぞれ軸35a,35b,35c,35dを介してブラケット36a,36b,36c,36dに回転可能に取り付けられている。
【0174】
また、ブラケット36a,36b,36c,36dは、それぞれ作業ロール2a,2bをロール軸方向にシフトさせる油圧シリンダー37a,37b,37c,37dに取り付けられている。
【0175】
そのため、上作業ロール2aは、油圧シリンダー37aの押し、および油圧シリンダー37cの引きによりロール軸方向駆動側にシフトされる。又、上作業ロール2aは、油圧シリンダー37aの引き、および油圧シリンダー37cの押しにより、ロール軸方向操作側にシフトされる。
【0176】
同様に、下作業ロール2bは、油圧シリンダー37bの引き、および油圧シリンダー37dの押しによりロール軸方向操作側にシフトされる。又、下作業ロール2bは、油圧シリンダー37bの押し、および油圧シリンダー37dの引きにより、ロール軸方向駆動側にシフトされる。
【0177】
これにより、作業ロール2a,2bの先細り状のロール肩2c,2dを板端部付近にシフトさせることにより、エッジドロップと呼ばれる板端部の急激な板厚み減少を減少させることが可能となる。
【0178】
先細り状のロール肩2c,2dを持つ作業ロール2a,2bのシフトによるエッジドロップ低減方法について以下説明する。
【0179】
まず、作業ロール2a,2bには、上下点対称の方向に先細り状のロール肩2c,2dが設けられているが、このロール肩位置と板端までの距離を図21に示されるようにδwとする。
【0180】
また、多段圧延機100Dの出側には、操作側および駆動側の板端部付近の1点又は複数の点の板厚みを測定する板厚み計38を設ける。
【0181】
この操作側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みより薄ければ、上作業ロール2aをロール軸狭幅方向である駆動側にシフトさせる。すなわち、δwを大きくする方向に上作業ロール2aをシフトさせる。
【0182】
逆に、測定された板端部付近の板厚みが所定の板厚みより厚ければ、上作業ロール2aをロール軸広幅方向である駆動側にシフトさせる。すなわちδwを小さくする方向に上作業ロール2aをシフトさせる。
【0183】
また駆動側で測定された板端部付近の1点又は複数の点の板厚みが所定の板厚みと異なる場合、同様に所定の板厚みとなるよう下作業ロール2bをシフトさせる。
【0184】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0185】
本発明の第7実施例の圧延機においても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0186】
また、作業ロール2a,2bは上下点対称の方向に先細り状のロール肩2c,2dが設けられており、作業ロール2a,2bをロール軸方向にシフトさせる油圧シリンダー37a,37b,37c,37dを更に備えたことにより、板端部の急激な板厚み減少であるエッジドロップの低減が可能となり、エッジドロップの少ない高い製品品質の帯板を得ることができる。
【0187】
<第8実施例>
本発明の第8実施例の圧延機について図23および図24を用いて説明する。図23は本実施例に係る6段圧延機の詳細を説明する図、図24は本実施例に係る他の6段圧延機の詳細を説明する図である。
【0188】
図23に示す本実施例の多段圧延機100Eは、第1実施例の多段圧延機100に加えて、テーパウェッジ17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17hとハウジング9a,9bの間にロードセル39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39hが更に設置されている。
【0189】
これらロードセル39a,39b,39e,39fにて上作業ロール2aの入側や出側に掛かる水平力Fwhを測定する。またロードセル39c,39d,39g,39hにて下作業ロール2bの入側や出側に掛かる水平力Fwhを測定する。
【0190】
その上で、第1実施例と同様に、作業ロール2a,2bのパス方向のオフセット量δを、その上下一対の作業ロール2a,2bの入、出側に掛かる水平力Fwhが0近傍値又は許容値となる一定値となる値とする。これにより作業ロール撓みξを抑えることができ、結果として板形状不良を低減させることができる。
【0191】
あるいは、第2実施例と同様に、中間ロール3a,3bのパス方向のオフセット量αを、その上下一対の作業ロール2a,2bの入出側に掛かる水平力Fwhが0近傍値又は許容値となる一定値となる値とする。
【0192】
なお、上下一対の作業ロール2a,2bの入側および出側に掛かる水平力Fwhを直接測定する代わりに、上下一対の中間ロール3a,3bの上下駆動トルクを図示の都合上省略されたトルクメータにてその駆動トルクを測定し、式(1),(2),(3),(4)から上下一対の作業ロール2a,2bの入出側に掛かる水平力Fwhを算出することができる。
【0193】
更に、図24(C-C’矢視断面の他の実施例図)に示すように、本実施例の多段圧延機100Fのように、コブルガード13a,13b,13c,13dに、ギャップセンサー40a,40b,40c,40dをロール軸方向中央に設置して、上下一対の作業ロール2a,2bの水平方向ギャップを測定することにより、上下一対の作業ロール2a,2bの水平方向撓みξを検出することができる。
【0194】
その上で、作業ロール2a,2bのパス方向のオフセット量δ、又は中間ロール3a,3bのパス方向のオフセット量αを、その上下一対の作業ロール2a,2bの撓みξが、0近傍値又は許容値となる一定値となる値とする。この結果として板形状不良を低減させることができる。
【0195】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0196】
本発明の第8実施例の圧延機においても、前述した第1実施例の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0197】
また、作業ロール2a,2bの撓み量、又は水平力を検出するギャップセンサー40a,40b,40c,40d、またはロードセル39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39hを更に備え、それらの検出結果に基づいて作業ロール2a,2b、あるいは中間ロール3a,3bのパス方向のオフセット量を変えることにより、より高い精度で作業ロール2a,2bの水平方向撓みξを0近傍値又は許容値となる一定値となる値とすることができ、より高品質な帯板1を得ることができる。
【0198】
<第9実施例>
本発明の第9実施例の圧延機について図25を用いて説明する。図25は本実施例のタンデム圧延機の説明図である。
【0199】
図25に示すように、本実施例のタンデム圧延機1000は、第6実施例で説明したような4段圧延機200を第1スタンド、第2スタンド、第3スタンドに備えるとともに、実施例1で説明した多段圧延機100を第4スタンドに備えている。
【0200】
なお、タンデム圧延機のスタンド数は特に限定されず、2スタンド以上とすることができる。また、少なくとも1スタンドが実施例1で説明した多段圧延機、あるいは実施例2等で説明した多段圧延機であればよく、全てのスタンドが実施例1等の多段圧延機とすることも可能である。
【0201】
その他の構成・動作は前述した第1実施例の圧延機と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0202】
本発明の第9実施例のタンデム圧延機1000は、第1実施例乃至第8実施例に記載された多段圧延機100,100A,100B,100C,100D,100E,100Fや4段圧延機200を少なくとも1スタンド以上備えているため、前述した第1実施例等の圧延機とほぼ同様な効果が得られる。
【0203】
また、タンデム圧延機では、後段スタンドで高速圧延と良好な板形状、そしてミル出側の良好な水切りが求められる。このため、第1実施例等で説明したミル入側の作業ロール冷却や板形状修正用のクーラントゾーン制御用のクーラントスプレーヘッダー設置やミル出側のコブルガードを設置することで、この目的に対して非常に有効な対策となる。
【0204】
また第7実施例で説明したような作業ロールシフト圧延機をタンデムミルに適用する場合、全スタンドに適用すると、エッジドロップ低減効果が最も大きい。しかし第1スタンドや第2スタンドのみに適用しても、これらのスタンドでは板厚みが他のスタンドよりも大きく、その分作業ロールシフトのエッジドロップ低減効果も他のスタンドよりも大きいため、投資対効果が大きい。
【0205】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0206】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0207】
1…帯板(金属帯板)
2a,2b…作業ロール
2c,2d…ロール肩
3a,3b…中間ロール
3c,3d…ロール肩
4a,4b,4c,4d,4e,4f…中間ロール軸受(チョック、中間ロールチョック)
5a,5b…補強ロール
6a,6b,6c,6d…補強ロール軸受箱
7a,7b…パスライン調整装置
8a,8b…圧下油圧シリンダー
9a,9b…ミルハウジング
10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h…支持ベアリング
11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h…アーム
12a,12b,12c,12d…軸
13a,13b,13c,13d…コブルガード
14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h…油圧シリンダー
15a,15b,15c,15d…サイドブロック
16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g,16h…テーパウェッジ
17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g,17h…テーパウェッジ
18a,18b,18c,18d,18e,18f,18g,18h…油圧シリンダー
19a,19b…クーラントスプレーヘッダー
20a,20b…スラストベアリング
21a,21b…軸
22a,22b…ブラケット
23a,23b,23c,23d…油圧シリンダー
24a,24b,24c,24d…ベンディングシリンダー
25a,25b,25c,25d…支持ロール(第2支持ロール群)
26a,26b,26c,26d,26e,26f,26g,26h…支持ベアリング
27a,27b,27c,27d,27e,27f,27g,27h…軸
28a,28b,28c,28d…アーム
29a,29b,29c,29d…軸
30a,30b…大径作業ロール
31a,31b…作業ロール軸受
32a,32b,32c,32d,32e,32f,32g,32h…油圧シリンダー
33a,33b,33c,33d,33e,33f,33g,33h…軸
34a,34b,34c,34d…スラストベアリング
35a,35b,35c,35d…軸
36a,36b,36c,36d…ブラケット
37a,37b,37c,37d…油圧シリンダー(シフト装置)
38…板厚み計
39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39h…ロードセル(検出器)
40a,40b,40c,40d…ギャップセンサー(検出器)
41a,41b,41c,41d…シフトシリンダー(シフト装置)
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F…多段圧延機
200…4段圧延機
1000…タンデム圧延機
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図11
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図19
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図21
図22
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