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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220706BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20220706BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/00 991
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016071120
(22)【出願日】2016-03-31
(65)【公開番号】P2017182588
(43)【公開日】2017-10-05
【審査請求日】2018-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 広隆
(72)【発明者】
【氏名】関 淳也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一文
(72)【発明者】
【氏名】長田 勇輝
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】鈴木 充
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-165555(JP,A)
【文献】特開2007-233770(JP,A)
【文献】特開2012-192878(JP,A)
【文献】特開2010-73026(JP,A)
【文献】特開2015-146142(JP,A)
【文献】特開平11-108684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周囲の環境を認識するとともに認識が可能な領域内においてリスク対象物を抽出する環境認識手段と、
予め準備された地図データを用いて自車両周囲の道路形状を示す画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段が生成した前記画像を表示する画像表示手段と
を備える表示装置であって、
前記画像生成手段は、前記画像において前記環境認識手段による認識が不可能である領域及び前記リスク対象物の推定進路を含むリスク可能性領域を、所定の色彩一色による塗潰し表示又は所定の色彩一色を用いたグラデーション表示に統一し、前記リスク可能性領域以外の領域を複数の色彩を用いて描画し、前記リスク可能性領域及び前記リスク可能性領域以外の領域を同一画面内で同時に表示すること
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記環境認識手段は、自車両に搭載されたセンサの出力に基づいて環境を認識すること
を特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記環境認識手段は、自車両に搭載されたセンサの出力、及び、自車両の近隣を走行しかつ自車両と通信可能な車車間通信装置を有する他車両に搭載されたセンサの出力に基づいて環境を認識すること
を特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記リスク対象物は他車両又は歩行者であり、
前記環境認識手段は、前記リスク対象物が交通法規を遵守した場合に進行が可能である領域を前記リスク対象物の推定進路として設定すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺の環境に関する情報を画像表示する表示装置に関し、特にリスクが存在し得る領域を直感的かつ容易に把握可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、自車両前方の状況を、例えばカメラ、レーザスキャナ、レーダ等の各種の周辺認識手段によって認識し、認識結果に基づいて車線形状や障害物等に関する情報を画像表示する表示装置が各種提案されている。
このような表示装置を用いると、乗員自らが目視により得られる以上の情報を得ることができ、乗員が運転者として運転する場合の運転支援としても、また、自動運転を行う車両において乗員が自動運転制御の妥当性を監視するためにも有用である。
【0003】
このような車両の周辺環境認識に関する従来技術として、例えば特許文献1には、ミリ波センサが物体を検出した場合に、自車両を制御して衝突回避を図る車両用衝突危険回避システムにおいて、可視光によって検出不可能な物体は危険度がより高いものとし、強くドライバに警告を与えることが記載されている。
特許文献2には、自車両からは死角領域に入り認識できない領域の他車両の存在を、先行車両の挙動に基づいて推定する車両環境推定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-156793号公報
【文献】特開2010-267211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カメラやレーダ等のセンサ類を用いた環境認識技術が進化し、センサの検知範囲内においては、環境認識結果に基づく情報で安全を担保することが可能となっている。
しかし、環境認識結果に基づく全ての情報をユーザ(手動運転時におけるドライバ)に表示すると、ドライバの認識負荷が高まり、監視負担が重いものとなる。
これに対し、環境認識手段によって認識可能な領域と、認識不可能な領域とをユーザが認識することができれば、認識不可能な領域からリスク対象物が出現することを警戒したり、認識可能な領域において環境認識結果が妥当であるか判別することが容易となる。
本発明の課題は、リスクが存在し得る領域を直感的かつ容易に把握可能な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、自車両周囲の環境を認識するとともに認識が可能な領域内においてリスク対象物を抽出する環境認識手段と、予め準備された地図データを用いて自車両周囲の道路形状を示す画像を生成する画像生成手段と、前記画像生成手段が生成した前記画像を表示する画像表示手段とを備える表示装置であって、前記画像生成手段は、前記画像において前記環境認識手段による認識が不可能である領域及び前記リスク対象物の推定進路を含むリスク可能性領域を、所定の色彩一色による塗潰し表示又は所定の色彩一色を用いたグラデーション表示に統一し、前記リスク可能性領域以外の領域を複数の色彩を用いて描画し、前記リスク可能性領域及び前記リスク可能性領域以外の領域を同一画面内で同時に表示することを特徴とする表示装置である。
これによれば、環境認識手段による認識が不可能な領域及び前記リスク対象物の推定進路を他の領域とは異なる所定の色彩一色による塗潰し表示又は所定の色彩一色を用いたグラデーション表示に統一し、同一画面内で同時に表示することによって、環境認識手段によって安全が確認できない領域及び前記リスク対象物の推定進路をユーザが容易に認識することができる。
これによって、どの領域にリスクが生じることが懸念されるかを認識し、ユーザに適切な監視を行わせることができる。
また、環境認識手段によって認識が可能な領域内においても、安全であるか確定しない領域はリスク可能性領域の一部として、環境認識手段による認識を行えない領域と同様に表示することによって、ユーザにより適切に注意を喚起することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記環境認識手段は、自車両に搭載されたセンサの出力に基づいて環境を認識することを特徴とする請求項1に記載の表示装置である。
これによれば、自車両に搭載された構成要素のみで成立可能なスタンドアローンの構成とすることができ、構成の複雑化を防止するとともに信頼性の確保が容易となる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記環境認識手段は、自車両に搭載されたセンサの出力、及び、自車両の近隣を走行しかつ自車両と通信可能な車車間通信装置を有する他車両に搭載されたセンサの出力に基づいて環境を認識することを特徴とする請求項1に記載の表示装置である。
これによれば、車車間通信を介して他車両のセンサが検出した情報を利用することによって、環境認識手段による認識が可能な領域を拡大し、リスク可能性領域を縮小することができる。
【0011】
請求項に係る発明は、前記リスク対象物は他車両又は歩行者であり、前記環境認識手段は、前記リスク対象物が交通法規を遵守した場合に進行が可能である領域を前記リスク対象物の推定進路として設定することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の表示装置である。
これによれば、リスク対象物が交通法規を遵守しない(例えば、赤信号無視など)場合を考慮することにより、リスク可能性領域が過度に多くなり、現実的に発生する可能性がきわめて低いリスクに対する監視が煩雑となり、かえってユーザの負担が増大することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、リスクが存在し得る領域を直感的かつ容易に把握可能な表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した表示装置の実施例が設けられる車両の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】実施例の車両において車両周囲を認識するセンサ類の配置を示す模式図である。
図3】実施例の表示装置の動作を示すフローチャートである。
図4】実施例の表示装置における画面表示の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、リスクが存在し得る領域を直感的かつ容易に把握可能な表示装置を提供する課題を、車両に搭載されたセンサを用いる直接環境認識手段による認識が不可能な領域、及び、他車両等が自車両の進路に進入し得る領域を、リスク可能性領域を示す同系色によって表示することによって解決した。
【実施例
【0015】
以下、本発明を適用した表示装置の実施例について説明する。
図1は、本発明を適用した表示装置の実施例が設けられる車両の構成を模式的に示すブロック図である。
実施例の表示装置は、例えば、自動運転機能を有する乗用車等の自動車である車両1に設けられ、ユーザ(例えば手動運転時のドライバ)等のユーザ等に対して、自車両周辺の道路形状(車線形状)や、他車両、歩行者、建造物等の障害物に関する情報等を画像表示するものである。
ユーザは、表示装置が提示する情報に基づいて、自車両前方の車線形状や障害物を監視するとともに、自動運転制御の実行時においては、自動運転制御の妥当性を検証することができる。
【0016】
図1に示すように、車両1は、エンジン制御ユニット10、トランスミッション制御ユニット20、挙動制御ユニット30、電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット40、自動運転制御ユニット50、環境認識ユニット60、ステレオカメラ制御ユニット70、レーザスキャナ制御ユニット80、後側方レーダ制御ユニット90、ナビゲーション装置100、路車間通信装置110、車車間通信装置120、画像生成ユニット200、ディスプレイ210等を備えている。
上述した各ユニットは、例えば、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するユニットとして構成される。これらの各ユニットは、例えばCAN通信システム等の車載LANシステムを介して相互に通信が可能となっている。
【0017】
エンジン制御ユニット10は、車両1の走行用動力源であるエンジン及びその補機類を統括的に制御するものである。
エンジンとして、例えば、4ストロークガソリンエンジンが用いられる。
エンジン制御ユニット(ECU)10は、エンジンのスロットルバルブ開度、燃料噴射量及び噴射時期、点火時期等を制御することによって、エンジンの出力トルクを制御することが可能である。
車両1がドライバの運転操作に応じて運転される状態においては、エンジン制御ユニット10は、アクセルペダルの操作量等に基いて設定されるドライバ要求トルクに、エンジンの実際のトルクが近づくようエンジンの出力を制御する。
また、車両1が自動運転を行う場合には、エンジン制御ユニット10は、自動運転制御ユニット50からの指令に応じてエンジンの出力を制御する。
【0018】
トランスミッション制御ユニット(TCU)20は、エンジンの回転出力を変速するとともに、車両の前進、後退を切り替える図示しない変速機及び補機類を統括的に制御するものである。
車両1が自動運転を行う場合には、トランスミッション制御ユニット20は、自動運転制御ユニット50からの指令に応じて、前後進等のレンジ切替や変速比の設定を行う。
変速機として、例えば、チェーン式、ベルト式、トロイダル式等のCVTや、複数のプラネタリギヤセットを有するステップAT、DCT、AMT等の各種自動変速機を用いることができる。
変速機は、バリエータ等の変速機構部のほか、例えばトルクコンバータ、乾式クラッチ、湿式クラッチ等の発進デバイスや、前進走行レンジと後退走行レンジとを切替える前後進切替機構等を有して構成されている。
【0019】
トランスミッション制御ユニット20には、前後進切替アクチュエータ21、レンジ検出センサ22等が接続されている。
前後進切替アクチュエータ21は、前後進切替機構に油圧を供給する油路を切り替える前後進切替バルブを駆動し、車両の前後進を切替えるものである。
前後進切替アクチュエータ21は、例えば、ソレノイド等の電動アクチュエータである。
レンジ検出センサ22は、変速機において現在選択されているレンジが前進用のものであるか、後退用のものであるかを判別するセンサ(スイッチ)である。
【0020】
挙動制御ユニット30は、左右前後輪にそれぞれ設けられた液圧式サービスブレーキのホイルシリンダ液圧を個別に制御することによって、アンダーステアやオーバステア等の車両挙動を抑制する挙動制御や、制動時のホイルロックを回復させるアンチロックブレーキ制御を行うものである。
挙動制御ユニット30には、ハイドロリックコントロールユニット(HCU)31、車速センサ32等が接続されている。
【0021】
HCU31は、液圧式サービスブレーキの作動流体であるブレーキフルードを加圧する電動ポンプ、及び、各車輪のホイルシリンダに供給される液圧を個別に調節するバルブ等を有する。
車両1が自動運転を行う場合には、HCU31は、自動運転制御ユニット50からの制動指令に応じて、各車輪のホイルシリンダに制動力を発生させる。
車速センサ32は、各車輪のハブ部に設けられ、車輪の回転速度に比例する周波数の車速パルス信号を発生するものである。
車速パルス信号の周波数を検出し、所定の演算処理を施すことによって、車両の走行速度(車速)を算出することが可能である。
【0022】
電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット40は、ドライバによる操舵操作を電動モータによってアシストする電動パワーステアリング装置、及び、その補機類を統括的に制御するものである。
EPS制御ユニット40には、モータ41、舵角センサ42等が接続されている。
【0023】
モータ41は、車両の操舵系にアシスト力を付与してドライバによる操舵操作をアシストし、あるいは、自動運転時に舵角を変更する電動アクチュエータである。
車両1が自動運転を行う場合には、モータ41は、自動運転制御ユニット50からの操舵指令に応じて、操舵系の舵角が所定の目標舵角に近づくように操舵系にトルクを付与して転舵を行わせる。
舵角センサ42は、車両の操舵系における現在の舵角を検出するものである。
舵角センサ42は、例えば、ステアリングシャフトの角度位置を検出する位置エンコーダを備えている。
【0024】
自動運転制御ユニット50は、自動運転モードが選択されている場合に、上述したエンジン制御ユニット10、トランスミッション制御ユニット20、挙動制御ユニット30、EPS制御ユニット40等に制御指令を出力し、車両を自動的に走行させる自動運転制御を実行するものである。
【0025】
自動運転制御ユニット50は、自動運転モードが選択された時に、環境認識ユニット60から提供される自車両周辺の状況に関する情報、及び、図示しないドライバからの指令等に応じて、自車両が進行すべき目標走行軌跡を設定し、車両の加速(発進)、減速(停止)、前後進切替、転舵などを自動的に行い、予め設定された目的地まで車両を自動的に走行させる自動運転を実行する。
また、自動運転モードは、ユーザが手動運転を希望する場合、あるいは、自動運転の続行が困難である場合等に、ユーザからの所定の解除操作に応じて中止され、ドライバによる手動運転を行う手動運転モードへの復帰が可能となっている。
自動運転制御ユニットは、環境認識ユニット60から自車両周囲の環境に関する情報を取得し、他車両等のリスク対象物を回避可能な目標走行ラインを設定するとともに、自車両1の実際の走行ラインが目標走行ラインに沿うように車両の走行制御を行う。
【0026】
自動運転制御ユニット50には、入出力装置51が接続されている。
入出力装置51は、自動運転制御ユニット50からユーザへの警報や各種メッセージ等の情報を出力するとともに、ユーザからの各種操作の入力を受け付けるものである。
入出力装置51は、例えば、LCD等の画像表示装置、スピーカ等の音声出力装置、タッチパネル等の操作入力装置等を有して構成されている。
【0027】
環境認識ユニット60は、自車両周囲の情報を認識するものである。
環境認識ユニット60は、ステレオカメラ制御ユニット70、レーザスキャナ制御ユニット80、後側方レーダ制御ユニット90、ナビゲーション装置100、路車間通信装置110、車車間通信装置120等からそれぞれ提供される情報に基づいて、自車両周辺の駐車車両、走行車両、建築物、地形、歩行者、サイクリスト等の障害物や、自車両が走行する道路の車線形状等を認識するものである。
また、環境認識ユニット60は、後述する画像生成ユニット200、ディスプレイ210等と協働して、本発明の表示装置を構成する。
【0028】
ステレオカメラ制御ユニット70は、車両の周囲に複数組設けられるステレオカメラ71を制御するとともに、ステレオカメラ71から伝達される画像を画像処理するものである。
個々のステレオカメラ71は、例えば、レンズ等の撮像用光学系、CMOS等の固体撮像素子、駆動回路、及び、信号処理装置等からなるカメラユニットを、並列に例えば一対配列して構成されている。
ステレオカメラ制御ユニット70は、公知のステレオ画像処理技術を利用した画像処理結果に基づいて、ステレオカメラ71によって撮像された被写体の形状及び自車両に対する相対位置を認識する。
ステレオカメラ制御ユニット70は、例えば、自車両前方の車線両端部の白線を検出し、車線形状を認識することが可能である。
レーザスキャナ制御ユニット80は、レーザスキャナ81を制御するとともに、レーザスキャナ81の出力に基づいて車両周囲の車両や障害物等の各種物体を3D点群データとして認識するものである。
【0029】
後側方レーダ制御ユニット90は、車両の左右側部にそれぞれ設けられる後側方レーダ91を制御するとともに、後側方レーダ91の出力に基づいて自車両後側方に存在する物体を検出するものである。
後側方レーダ91は、例えば、自車両の後側方から接近する他車両を検知可能となっている。
後側方レーダ91として、例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダ等のレーダが用いられる。
【0030】
図2は、実施例の車両において車両周囲を認識するセンサ類の配置を示す模式図である。
ステレオカメラ71は、車両1の前部、後部、左右側部にそれぞれ設けられている。
レーザスキャナ81は、車両1の周囲に実質的に死角が生じないよう分布して複数設けられている
後側方レーダ91は、例えば、車両1の車体左右側部に配置され、検知範囲を車両後方側かつ車幅方向外側に向けて配置されている。
【0031】
ナビゲーション装置100は、例えばGPS受信機等の自車両位置測位手段、予め準備された地図データを蓄積したデータ蓄積手段、自車両の前後方向の方位を検出するジャイロセンサ等を有する。
地図データは、道路、交差点、インターチェンジ等の道路情報を車線レベルで有する。
道路情報は、3次元の車線形状データのほか、各車線(レーン)の右左折可否や、一時停止位置、制限速度等の走行上の制約となる情報も含む。
ナビゲーション装置100は、インストルメントパネルに組み込まれたディスプレイ101を有する。
ディスプレイ101は、ナビゲーション装置100がドライバに対して出力する各種情報が表示される画像表示装置である。
ディスプレイ101は、タッチパネルを有して構成され、ドライバからの各種操作入力が行われる入力部としても機能する。
【0032】
路車間通信装置110は、所定の規格に準拠する通信システムによって、図示しない地上局と通信し、渋滞情報、交通信号機点灯状態、道路工事、事故現場、車線規制、天候、路面状況などに関する情報を取得するものである。
【0033】
車車間通信装置120は、所定の規格に準拠する通信システムによって、図示しない他車両と通信し、他車両の位置、方位角、加速度、速度等の車両状態に関する情報や、車種、車両サイズ等の車両属性に関する情報を取得するものである。
【0034】
上述した各種の環境認識手段において、車両1自体に搭載されたセンサによって環境認識を行うステレオカメラ71、レーザスキャナ81、後側方レーダ91等の車両に搭載されたセンサによって直接車線形状や障害物等の検知を行うものが、本発明にいう環境認識手段(直接環境認識手段)である。
【0035】
画像生成ユニット200は、環境認識ユニット60から伝達される環境認識結果に基づいて、ディスプレイ210により表示される自車両周辺の環境に関する情報を含む画像(環境画像)を生成するものである。
【0036】
ディスプレイ210は、車両の乗員と対向して配置された画像表示装置である。
ディスプレイ210は、例えば、インストルメントパネル等の内装部材に組み込まれたLCDを有する。
【0037】
次に、実施例の表示装置における画像表示時の動作、及び、表示画面の例について説明する。
図3は、実施例の表示装置の動作を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0038】
<ステップS01:地図データ取得>
環境認識ユニット60は、ナビゲーション装置100から、自車両1が走行している地点近傍の道路形状、車線形状、地形、建築物等に関する情報を含む地図データを取得する。
その後、ステップS02に進む。
【0039】
<ステップS02:目標走行ライン情報取得>
環境認識ユニット60は、自動運転制御ユニット50から、自車両1の予定走行経路である目標走行ラインに関する情報を取得する。
その後、ステップS03に進む。
【0040】
<ステップS03:車両周囲環境認識>
環境認識ユニット60は、自車両1の周囲の環境を認識する。
環境認識ユニット60は、例えば、車線形状及び地形や、他車両、歩行者、建築物などの各種物体を検出する。
これらの物体に関する情報は、例えば、その種類、自車両からの相対位置、大きさ、形状、さらに、移動している場合は自車両に対する相対速度等を含む。
その後、ステップS04に進む。
【0041】
<ステップS04:環境認識不可領域判定>
環境認識ユニット60は、ステレオカメラ71、レーザスキャナ81等のセンサ類による環境認識が不可能な領域(環境認識不可領域)を判定する。
環境認識不可領域として、各センサの検出限界距離以遠の領域、及び、建築物や他車両等の遮蔽物により遮蔽され、死角となっている領域が含まれる。
その後、ステップS05に進む。
【0042】
<ステップS05:リスク対象物抽出>
環境認識ユニット60は、ステップS03において検出された物体のうち、自車両との衝突リスクが想定されるものを抽出し、リスク対象物として設定する。
リスク対象物は、自車両1の目標走行ラインに隣接する物体や、自車両1の目標走行ラインに接近、進入する可能性のある移動体を含む。
その後、ステップS06に進む。
【0043】
<ステップS06:リスク対象物有無判定>
環境認識ユニット60がステップS05において少なくとも一つのリスク対象物を抽出した場合はステップS07に進む。
また、リスク対象物が抽出されなかった場合はステップS09に進む。
【0044】
<ステップS07:リスク対象物移動・移動可能性判断>
環境認識ユニット60は、ステップS05において抽出されたリスク対象物が、現在移動中である移動体、あるいは、現在停止しているが移動を開始する可能性がある物体であるか、移動しない物体であるかを判別する。
例えば、停止中の他車両は、移動を開始する可能性がある物体として認識される。
リスク対象物が移動体、あるいは、移動を開始する可能性がある物体である場合はステップS08に進み、その他の場合はステップS09に進む。
【0045】
<ステップS08:リスク対象物進路推定>
環境認識ユニット60は、リスク対象物が今後とり得る進路を推定する。
リスク対象物が移動体である場合は、現在の速度及び進行方向に基づいて、進路が推定される。
また、リスク対象物が移動を開始する可能性がある物体である場合は、リスク対象物が交通法規(信号機、標識、車線区分等)を遵守した場合にとり得る進路を推定進路とする。
例えば、赤信号や一時停止標識により停車している他車両は、今後前進する可能性を有する。また、ステレオカメラ71によってターンシグナルランプの点滅が検出された場合には、当該方向への右左折、車線変更などが予想される。
リスク対象物の進路推定を終了後、ステップS09に進む。
【0046】
<ステップS09:リスク可能性領域設定>
環境認識ユニット60は、ステップ04において判定された環境認識不可領域、及び、抽出されたリスク対象物推定進路を、衝突リスクの発生の可能性が存在するリスク可能性領域として設定する。
その後、ステップS10に進む。
【0047】
<ステップS10:表示画像データ生成>
画像生成ユニット200は、環境認識ユニット60から提供される情報に基づいて、ディスプレイ210に表示される表示画像の画像データを生成する。
表示画像については、後に詳細に説明する。
その後、ステップS11に進む。
【0048】
<ステップS11:表示画像出力>
画像生成ユニット210は、ステップS10において生成した画像データをディスプレイ210に伝達し、表示画像を表示させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0049】
以下、実施例の表示装置における表示画像について説明する。
図4は、実施例の表示装置における表示画像の一例を示す図である。
図4に示すように、表示画像は、自車両周辺の環境を、ディテール等を省略して簡素化し、コンピュータグラフィックスにより生成した俯瞰図として表示する。
この俯瞰図においては、自車両の上方かつ後方に設定された仮想視点からの視野を示している。
また、俯瞰図には、自車両のほか、他車両、歩行者、自転車、建造物等の各種リスク対象物を示す図柄が、各リスク対象物の位置を示す箇所に重畳して表示されている。
【0050】
図4に示す例では、自車両1は、市街地内で片側一車線左側通行の道路を走行している。
自車両1の前方には、自車両が走行中の道路と、自車両1の車幅方向にほぼ沿った片側一車線左側通行の道路とが交差する交差点Jが存在する。
交差点Jは、自車両1から見て、手前側、奥側に自車両1の車幅方向に沿った横断歩道が設けられるとともに、左右に自車両1の進行方向に沿った横断歩道が設けられている。
自車両1は、図4に破線矢印で図示する目標走行ラインLのように、交差点Jを左折することを予定している。
【0051】
表示画像には、建築物であるビルB1乃至B4が表示されている。
ビルB1は、交差点Jの左手前側に配置されている。
ビルB2は、交差点Jの右手前側に配置されている。
ビルB3は、交差点Jの左奥側に配置されている。
ビルB4は、交差点Jの右奥側に配置されている。
各ビルB1乃至B4と、各道路の車道との間には、それぞれ歩道が形成されている。
【0052】
表示画像には、他車両V1、歩行者PE1、PE2が表示されている。
他車両V1は、交差点Jよりも奥側の対向車線を自車両1側へ走行しており、さらに、ステレオカメラ71によって右折方向へのターンシグナルランプ(不図示)の点滅が検出されている。
歩行者PE1は、ビルB1の近傍の歩道上におり、横断歩道を歩行してビルB2側の歩道へ移動しようとしている。
歩行者PE2は、ビルB4側からビルB2側へ横断歩道を歩行して移動中である。
サイクリストCYは、ビルB1側の歩道上を自車両1と同じ方向へ並走している。
【0053】
自車両1の右折先の道路上において、ビルB1、B2によって遮られる死角部分は、ステレオカメラ71等による環境認識が不可能な領域であることから、その路面上はリスク可能性領域R1、R2となっている。
このようなリスク可能性領域R1、R2には、例えば、他車両V2、V3、歩行者PE3などが存在し得る。
このような死角内のリスク対象物は、少なくとも自車両1の現在位置からは直接環境認識手段によって認識することはできないため、リスク可能性領域R1、R2は、安全であると確定判断することができない安全未確認状態となっている。
ただし、図4に示す例においては、自車両1の前方側の信号が進行を許可しているため、他車両V2、V3、歩行者PE3は、これらが交通法規を遵守している限りは信号待ち状態で停止していることから、自車両1の目標走行ラインLに干渉するリスクは比較的低い。
また、歩行者PE1も同様に信号待ち状態で停止しており、比較的リスクは低い。
歩行者PE2に関しては、横断歩道を歩行中であるが、自車両1の目標走行ラインLとは干渉しないため、安全であると認識される。
【0054】
これに対し、対向車である他車両V1は、自車両1の直前で右折を行い、他車両V1の推定進路と自車両1の目標走行ラインLが近接し、さらには交錯することが懸念される。
そこで、他車両V1が右折時に通過する推定進路に、リスク可能性領域R3が設定されている。
【0055】
また、自車両1と並走するサイクリストCYは、直進して交差点J内をビルB1側からビルB3側へ走行することが推定され得る。
この場合、自車両1の目標走行ラインLを横切ることになるため、サイクリストCYの前方にもリスク可能性領域R4が設定される。
【0056】
上述したリスク可能性領域R1乃至R4は、表示画像上において、他の領域とは異なった共通する表示態様で表示される。
例えば、リスク可能性領域R1乃至R4は、例えば所定の色彩一色(一例としてグレー等)を用いたグラデーション表示としたり、所定の色彩一色で塗りつぶした表示とすることができる。
これに対し、リスク可能性領域以外の領域は、複数の色彩を用いて描画する構成とすることによって、リスク可能性領域R1乃至R4と視覚的な差を設けて、一目瞭然に判別可能とすることができる。
【0057】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ステレオカメラ71、レーザスキャナ81等の車載センサによる認識が不可能な領域R1、R2を、他の領域とは異なる表示態様に統一して表示することによって、車載センサによって安全が確認できない領域をユーザが容易に認識することができる。
これによって、どの領域にリスクが生じることが懸念されるかを認識し、ユーザに適切な監視を行わせることができる。
(2)環境認識手段として自車両1に搭載されたステレオカメラ71、レーザスキャナ81等の車載センサを用いることにより、自車両に搭載された構成要素のみで成立可能なスタンドアローンの構成とすることができ、構成の複雑化を防止するとともに信頼性の確保が容易となる。
(3)リスク可能性領域R1乃至R4を所定の色彩一色による塗潰し表示又は所定の色彩一色を用いたグラデーション表示とすることによって、簡単な構成によって上述した効果を確実に得ることができる。
(4)抽出されたリスク対象物の推定進路をリスク可能性領域R3、R4とすることによって、車載センサによって認識が可能な領域内においても、安全であるか確定しない領域はリスク可能性領域R1~R4の一部として、認識を行えない領域と同様に表示することによって、ユーザにより適切に注意を喚起することができる。
(5)他車両V1やサイクリストCYが信号機の指示を遵守した場合に進入が可能な領域にリスク可能性領域R3,R4を設定することによって、リスク対象物が交通法規を遵守しない場合まで考慮することにより、リスク可能性領域が過度に多くなり、現実的に発生することが希であるリスクに対する監視が煩雑となり、かえってユーザの負担が増大することを防止できる。
【0058】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)表示装置の構成や、車両の構成は、上述した実施例に限定されず適宜変更することが可能である。また、実施例において車両は乗用車であるが、本発明は貨物車等の商用車、トラック、バス、自動二輪車、その他各種特殊車両などにも適用することが可能である。
(2)実施例において、車両はエンジンを走行用動力源とするものであったが、本発明はこれに限らず、電動モータや、エンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッドシステムを走行用動力源として用いることも可能である。
(3)自車両周辺の環境認識を行うセンサの種類や配置は、上述した実施例には限定されず、適宜変更することが可能である。例えば、実施例におけるセンサ類と併用あるいは代用して、ミリ波レーザ、レーザレーダ、単眼カメラ、超音波ソナー等の各種センサを用いることが可能である。
また、車両自体に搭載されているセンサ類などと併用あるいは代用して、路車間通信や車車間通信によって得た情報や、GPS等の測位手段及びナビゲーション装置等が有する地図データを用いて環境認識を行ってもよい。
(4)実施例においては、表示画像を俯瞰図(鳥瞰図)としているが、これに限らず、例えば平面図や、仮想ドライバ視点から見たドライバーズビューとすることも可能である。また、3D表示が可能なディスプレイを用いて、3D表示を行ってもよい。また、インストルメントパネルに設けたディスプレイによる表示に限らず、例えば、フロントガラスに像を投影するヘッドアップディスプレイによって表示してもよい。
(5)実施例においては、環境認識手段として自車両に搭載されたステレオカメラ、レーダスキャナ等のセンサを用いているが、これに限らず、例えば隣接して走行する他車両(典型的には先行車)に搭載されているセンサの出力を、車車間通信によって取得し、これに基づいて環境認識を行ってもよい。
(6)実施例の表示装置は、自動運転を行う車両に適用されるものであったが、本発明はこれに限らず、手動運転を行う車両の運転支援用としても有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両 10 エンジン制御ユニット
20 トランスミッション制御ユニット 21 前後進切替アクチュエータ
22 レンジ検出センサ 30 挙動制御ユニット
31 ハイドロリックコントロールユニット(HCU)
32 車速センサ
40 電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット
41 モータ 42 舵角センサ
50 自動運転制御ユニット 51 入出力装置
60 環境認識ユニット 70 カメラ制御ユニット
71 ステレオカメラ
80 レーザスキャナ制御ユニット
81 レーザスキャナ 90 後側方レーダ制御ユニット
91 後側方レーダ 100 ナビゲーション装置
101 ディスプレイ
110 路車間通信装置 120 車車間通信装置
200 画像生成ユニット 210 ディスプレイ
J 交差点 S 信号
V1~V3 他車両 PE1~PE3 歩行者
CY サイクリスト B1~B4 ビル
R1~R4 リスク可能性領域 L 目標走行ライン
図1
図2
図3
図4