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特許7100445筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/14 20060101AFI20220706BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20220706BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220706BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
B60R16/02 610A
H05K5/03 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017230431
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019103214
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雄基
(72)【発明者】
【氏名】角谷 友
(72)【発明者】
【氏名】下川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】下村 浩介
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】倉田 翔
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶恭
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-31661(JP,A)
【文献】実開昭63-187380(JP,U)
【文献】特開2016-25803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された筐体本体と、
前記開口部を塞ぐ蓋部材と、
前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、
前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、
前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記回動軸線から離れるにしたがって、前記一方に対するオフセット量が徐々に大きくなる傾斜平面として形成され、前記蓋部材の回動に伴って、前記一方及び前記テーパ面が形成された係止部全体を面的に案内しながら前記係止位置側に落とし込み、
前記側壁部係止機構は、前記筐体本体と前記蓋部材とを係止するための係止機構であって前記回動基端係止機構及び前記側壁部係止機構以外の他の係止機構と比較して、前記蓋部材が形成する回動軌跡の最も先端側に位置することを特徴とする、
筐体。
【請求項2】
前記テーパ面は、前記一方が前記係止位置にある状態で、前記蓋部材の回動軌跡に沿った方向に対して、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の他方と隙間をあけて対向する、
請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記テーパ面は、前記蓋部材の回動に伴って前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の他方と当接し前記一方を前記係止位置に案内する、
請求項1又は請求項2に記載の筐体。
【請求項4】
電子部品と、
内部に前記電子部品を収容する筐体とを備え、
前記筐体は、
開口部が形成された筐体本体と、
前記開口部を塞ぐ蓋部材と、
前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、
前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、
前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記回動軸線から離れるにしたがって、前記一方に対するオフセット量が徐々に大きくなる傾斜平面として形成され、前記蓋部材の回動に伴って、前記一方及び前記テーパ面が形成された係止部全体を面的に案内しながら前記係止位置側に落とし込み、
前記側壁部係止機構は、前記筐体本体と前記蓋部材とを係止するための係止機構であって前記回動基端係止機構及び前記側壁部係止機構以外の他の係止機構と比較して、前記蓋部材が形成する回動軌跡の最も先端側に位置することを特徴とする、
電気接続箱。
【請求項5】
導電性を有する配索材と、
前記配索材に電気的に接続される電気接続箱とを備え、
前記電気接続箱は、
前記配索材に電気的に接続される電子部品と、
内部に前記電子部品を収容する筐体とを備え、
前記筐体は、
開口部が形成された筐体本体と、
前記開口部を塞ぐ蓋部材と、
前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、
前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、
前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記回動軸線から離れるにしたがって、前記一方に対するオフセット量が徐々に大きくなる傾斜平面として形成され、前記蓋部材の回動に伴って、前記一方及び前記テーパ面が形成された係止部全体を面的に案内しながら前記係止位置側に落とし込み、
前記側壁部係止機構は、前記筐体本体と前記蓋部材とを係止するための係止機構であって前記回動基端係止機構及び前記側壁部係止機構以外の他の係止機構と比較して、前記蓋部材が形成する回動軌跡の最も先端側に位置することを特徴とする、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるワイヤハーネスに適用される従来の電気接続箱の筐体として、例えば、特許文献1には、ケース本体と、カバーとを備えたケースが開示されている。ケース本体は、周壁と、該周壁の縁に囲まれた開口部とを有する。カバーは、開口部を覆うようにケース本体に取り付けられる。このケースは、カバーの一端側に突起が設けられ、カバーの他端側にロック部が設けられる。また、ケースは、ケース本体の一端側に突起挿通孔を有する突起係合部が設けられ、ケース本体の他端側にロック部が係止するロック受け部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-143877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のケースは、突起がロック受け部側から突起挿通孔に通され、突起を中心にカバーが回動されることによりロック部がロック受け部に係止されてカバーがケース本体に取り付けられるものである。この場合に、ケースは、例えば、各部の組み付け性向上の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、組み付け性を向上することができる筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る筐体は、開口部が形成された筐体本体と、前記開口部を塞ぐ蓋部材と、前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記筐体では、前記テーパ面は、前記一方が前記係止位置にある状態で、前記蓋部材の回動軌跡に沿った方向に対して、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の他方と隙間をあけて対向するものとすることができる。
【0008】
また、上記筐体では、前記テーパ面は、前記蓋部材の回動に伴って前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の他方と当接し前記一方を前記係止位置に案内するものとすることができる。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、電子部品と、内部に前記電子部品を収容する筐体とを備え、前記筐体は、開口部が形成された筐体本体と、前記開口部を塞ぐ蓋部材と、前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、導電性を有する配索材と、前記配索材に電気的に接続される電気接続箱とを備え、前記電気接続箱は、前記配索材に電気的に接続される電子部品と、内部に前記電子部品を収容する筐体とを備え、前記筐体は、開口部が形成された筐体本体と、前記開口部を塞ぐ蓋部材と、前記筐体本体に対して、前記蓋部材を、軸線方向に沿った回動軸線を回動中心として回動可能に係止する回動基端係止機構と、前記回動基端係止機構によって前記筐体本体と前記蓋部材とが係止された状態で、前記筐体本体において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する本体側壁部に対して、前記蓋部材において前記軸線方向と交差する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を、回動不能に係止する側壁部係止機構とを備え、前記側壁部係止機構は、前記本体側壁部側に設けられる本体係止面、前記蓋部材側壁部側に設けられる蓋部材係止面、及び、前記本体係止面又は前記蓋部材係止面の一方の前記回動軸線側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成され、前記蓋部材の回動に伴って当該一方を前記軸線方向に沿って前記本体係止面と前記蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させるテーパ面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネスは、回動基端係止機構によって筐体本体と蓋部材とが係止された状態で、側壁部係止機構によって蓋部材側壁部が本体側壁部に対して回動不能に係止される。この構成により、筐体は、蓋部材を筐体本体に組み付けることができる。この場合、筐体は、まず、回動基端係止機構によって筐体本体と蓋部材とが回動可能に係止される。そして、筐体は、筐体本体に対する蓋部材の回動に伴って、側壁部係止機構を構成するテーパ面が本体係止面又は蓋部材係止面の一方を、本体係止面と蓋部材係止面とが相互に係止される係止位置に移動させる。この結果、筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネスは、組み付け性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る電気接続箱の概略構成を表す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る電気接続箱の概略構成を表す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る電気接続箱の概略構成を表す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る電気接続箱の概略構成を表す斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る電気接続箱の側壁部係止機構を含む部分断面図である。
図6図6は、実施形態に係る電気接続箱のカバー側係止部の正面図である。
図7図7は、比較例に係る電気接続箱の側壁部係止機構における動作を連続的に表した模式図である。
図8図8は、実施形態に係る電気接続箱の側壁部係止機構における動作を連続的に表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
なお、以下で説明する図1図2図3図4は、配索材を二点鎖線で省略して図示している。同様に、図3図4は、電子部品の一部を二点鎖線で省略して図示している。図1図2図5は、フレームとアッパカバーとが回動不能に組み付けられた状態を表している。一方、図3図4は、フレームとアッパカバーとが回動可能に組み付けられた状態を表している。また、以下の説明では、互いに交差する3つの方向を便宜的にそれぞれ「第1方向X」、「第2方向Y」、及び、「第3方向Z」という。ここでは、第1方向Xと第2方向Yと第3方向Zとは、相互に直交する。第1方向Xは、典型的には、フレーム、ロアカバー、及び、アッパカバーの積層方向に相当する。第2方向Yは、典型的には、フレームに対するアッパカバーの回動中心となる回動軸線に沿った軸線方向に相当する。典型的には、電気接続箱が車両に搭載され当該車両が水平面に位置する状態で、第1方向X、第2方向Yは、水平方向に沿い、第3方向Zは、鉛直方向に沿う。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられ、電気接続箱が車両に搭載された状態での方向として説明する。
【0015】
[実施形態]
図1図2図3図4に示す本実施形態に係る電気接続箱1は、自動車等の車両に搭載され、ワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wに電気的に接続される電気接続箱1とを備える。配索材Wは、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。ワイヤハーネスWHは、複数の配索材Wを束ねて集約すると共に、束ねられた配索材Wの端末に設けられたコネクタ等を介して電気接続箱1が電気的に接続される。ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、グロメット、プロテクタ、外装材、固定具等を含んで構成されてもよい。
【0016】
電気接続箱1は、コネクタ、ヒューズ、リレー、コンデンサ、分岐部、電子制御ユニット等の電装品を集約して内部に収容するものである。電気接続箱1は、例えば、車両のエンジンルームや車両室内に設置される。電気接続箱1は、配索材W等を介して、バッテリ等の電源と、車両内に搭載される各種電子機器との間に接続されている。電気接続箱1は、電源から供給された電力を車両内の各種電子機器に分配する。電気接続箱1は、ジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックスなどとも呼ばれる場合があるが、本実施形態ではこれらを総称して電気接続箱と呼ぶ。
【0017】
具体的には、電気接続箱1は、電子部品2と、内部に電子部品2を収容する筐体3とを備える。電子部品2は、筐体3の内部に収容され、種々の機能を発揮する素子である。電子部品2は、配索材Wが電気的に接続されるものである。電子部品2は、例えば、コンデンサ、リレー、抵抗、トランジスタ、ヒューズ、コネクタ、IPS(Intelligent Power Switch)、マイコンを含む電子制御ユニット等である。筐体3は、中空状の内部に電子部品2等を含む各部を収容する。電気接続箱1は、電子部品2が筐体3内に収容され、当該電子部品2に配索材Wが電気的に接続される。以下、各図を参照して筐体3の構成について詳細に説明する。
【0018】
具体的には、筐体3は、内部に形成される収容空間部34に電子部品2を収容するものである。筐体3は、筐体本体としてのフレーム31、底部材としてのロアカバー32、及び、蓋部材としてのアッパカバー33とを備える。筐体3は、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33が分割された3層分割構造となっている。フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33は、絶縁性を有する合成樹脂によって形成される。筐体3は、所定の積層方向(ここでは一例として第1方向X)に沿ってフレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33が積層され相互に組み付けられる。この構成により、筐体3は、複数の部材として、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33が組み合わさって全体として中空箱状に形成される。筐体3は、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33によって区画される内部の空間部が収容空間部34を構成する。
【0019】
フレーム31は、収容空間部34を形成する主たる部材である。フレーム31は、壁部31aによって中空状に形成される。壁部31aは、収容空間部34を形成する壁体である。壁部31aは、多角形筒状(略矩形筒状)に形成され、第1方向Xの両側に開口している。フレーム31は、壁部31aによって、第1方向Xに対向する2面に開口部31b、31cを有する筒枠状に形成される。言い換えれば、壁部31aは、フレーム31において、開口部31b、31cを形成する壁体である。フレーム31は、第1方向Xの一方側に開口部31bが形成され、第1方向Xの他方側に開口部31cが形成される。
【0020】
ロアカバー32は、フレーム31の第1方向Xの一方側の開口部31bを塞ぐ皿状(トレイ状)の部材である。ロアカバー32は、壁部32aと、板状部32bとによって中空状に形成される。壁部32aは、収容空間部34を形成する壁体である。壁部32aは、多角形筒状(略矩形筒状)に形成される。板状部32bは、壁部32aの第1方向Xの一方側(開口部31bと対向する側とは反対側)を塞ぐ底体である。そして、壁部32aは、第1方向Xの他方側(開口部31bと対向する側)に開口している。ロアカバー32は、壁部32a、及び、板状部32bによって、第1方向Xの一方側が閉塞し、第1方向Xの他方側に開口部32cを有する筒枠状に形成される。言い換えれば、壁部32aは、ロアカバー32において、開口部32cを形成する壁体である。
【0021】
アッパカバー33は、フレーム31の第1方向Xの他方側の開口部31cを塞ぐ蓋状(カバー状)の部材である。アッパカバー33は、壁部33aと、板状部33bとによって中空状に形成される。壁部33aは、収容空間部34を形成する壁体である。壁部33aは、多角形筒状(略矩形筒状)に形成され、第1方向Xの一方側(開口部31cと対向する側)に開口している。板状部33bは、壁部33aの第1方向Xの他方側(開口部31cと対向する側とは反対側)を塞ぐ天井体である。アッパカバー33は、壁部33a、及び、板状部33bによって、第1方向Xの一方側に開口部33cを有し、第1方向Xの他方側が閉塞した筒枠状に形成される。言い換えれば、壁部33aは、アッパカバー33において、開口部33cを形成する壁体である。
【0022】
筐体3は、フレーム31の第1方向Xの一方側の開口部31bとロアカバー32の開口部32cとが対向し、フレーム31の第1方向Xの他方側の開口部31cとアッパカバー33の開口部33cとが対向するように位置する。筐体3は、この位置関係で、ロアカバー32がフレーム31の第1方向Xの一方側に組み付けられ、アッパカバー33がフレーム31の第1方向Xの他方側に組み付けられる。筐体3は、種々の形式の係止機構35を備え、フレーム31に対して、当該係止機構35を介して、アッパカバー33、ロアカバー32が係止される。この構成により、筐体3は、全体として、第2方向Yが長辺方向となる略直方体状に形成される。そして、筐体3は、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33の内部に収容空間部34が区画される。
【0023】
収容空間部34は、内部に電子部品2を収容する空間である。収容空間部34は、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33によって区画され、当該フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33によって囲われた空間である。すなわち、収容空間部34は、第1方向Xの一方側がロアカバー32の板状部32bによって区画され、第1方向Xの他方側がアッパカバー33の板状部33bによって区画される。また、収容空間部34は、第2方向Y、及び、第3方向Zに対して、フレーム31の壁部31a、ロアカバー32の壁部32a、及び、アッパカバー33の壁部33aによって区画される。電気接続箱1は、例えば、この収容空間部34内にブロック36(図4参照)が設けられる。ブロック36は、種々の形式の係止機構を介して、フレーム31に対して着脱可能に組み付けられる。ブロック36は、フレーム31等と同様に絶縁性を有する合成樹脂によって形成される。ブロック36は、複数に分割されていてもよい。ブロック36は、多数のキャビティが形成される。電子部品2は、各キャビティに組み付けられる。また、ブロック36は、導電性の金属材料によって構成された回路体が組み付けられている。回路体は、各キャビティに組み付けられた各電子部品2を電気的に接続し電気回路の一部を構成するものであり、例えば、バスバ等である。ブロック36は、配索材Wが接続される。配索材Wは、例えば、フレーム31の壁部31aとロアカバー32の壁部32aとの合わせ面等に形成された挿通口37(図3図4参照)を介して収容空間部34内に配索される。ブロック36は、各キャビティに対して、当該配索材Wの端末に設けられた端子等が第1方向Xの一方側から差し込まれ嵌合される。また、ブロック36は、各キャビティに対して、第1方向Xの他方側から電子部品2が差し込まれ嵌合される。この構成により、各電子部品2と各配索材Wとは、ブロック36に組み付けられ搭載された状態でバスバ等の回路体を介して相互に電気的に接続され、要求される電気回路を構成する。
【0024】
ところで、本実施形態の電気接続箱1は、一例として、フレーム31の開口部31b、31cが水平方向(第1方向X)を向くような位置関係で、車両室内のインストルメントパネルの下方等に設けられる。そして、電気接続箱1は、例えば、車両室内の座席側から開口部31cを開閉可能なように、当該開口部31c、及び、アッパカバー33が水平方向(第1方向X)の当該座席側を向く位置関係で設けられる。そして、本実施形態の筐体3は、フレーム31の開口部31cに対してアッパカバー33を回動させながら組み付けることができる構成となっている。
【0025】
本実施形態の筐体3は、上記のようにフレーム31とアッパカバー33とを係止するための係止機構35として、回動基端係止機構4と、側壁部係止機構5と、回動先端係止機構6と、補助係止機構7とを備える。この構成により、筐体3は、回動基端係止機構4によって、アッパカバー33がフレーム31に対して回動可能に係止される構成となっている。そして、筐体3は、回動基端係止機構4によってアッパカバー33とフレーム31とが回動可能に係止された状態で、側壁部係止機構5、回動先端係止機構6、補助係止機構7によってフレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止する。この構成により、筐体3は、アッパカバー33をフレーム31に組み付けることができる。
【0026】
具体的には、回動基端係止機構4は、フレーム31に対して、軸線方向に沿った回動軸線C(図1図3参照)を回動中心として、アッパカバー33を回動可能に係止するものである。ここでは、回動軸線Cの軸線方向は、第2方向Yに相当する。回動基端係止機構4は、筐体3の第2方向Yに沿った一方の壁面、言い換えれば、筐体3の第3方向Zの一方の壁面に2つ設けられる。ここでは、各回動基端係止機構4は、フレーム31の第1側壁部31d(図1図3参照)とアッパカバー33の第1側壁部33d(図1図3参照)とを回動可能に係止する。ここで、第1側壁部31dは、壁部31aのうち第2方向Yに沿った一方の側壁、言い換えれば、壁部31aのうち第3方向Zの一方の側壁を構成する部分である。第1側壁部33dは、壁部33aのうち第2方向Yに沿った一方の側壁、言い換えれば、壁部33aのうち第3方向Zの一方の側壁を構成する部分である。第1側壁部31d、第1側壁部33dは、それぞれ第2方向Yに沿って延在すると共に種々の凹凸形状が付されている。各回動基端係止機構4は、それぞれフレーム側係止部41とカバー側係止部42とを有する。
【0027】
各フレーム側係止部41は、フレーム31の第1側壁部31dから第3方向Zに沿って外側(収容空間部34とは反対側)に爪状に突出した係止爪部として形成される。各フレーム側係止部41は、第1側壁部31dの第1方向Xのアッパカバー33側の縁、すなわち、開口部31c側の縁に沿って間をあけて並んで設けられる。
【0028】
各カバー側係止部42は、それぞれアッパカバー33の第1側壁部33dに設けられ、それぞれに対応する位置のフレーム側係止部41に係止可能なものである。各カバー側係止部42は、それぞれロックアーム43を構成する。各ロックアーム43は、第1側壁部33dの第1方向Xのフレーム31側の縁、すなわち、開口部33c側の縁に沿って間をあけて並んで設けられる。各ロックアーム43は、第1側壁部33dから第1方向Xのフレーム31側に向けて第1方向Xに沿って延在して形成される。各ロックアーム43は、それぞれ、カバー側係止部42、一対のアーム部44、45を含んで構成される。カバー側係止部42は、フレーム側係止部41と係止可能な軸部状に形成される。カバー側係止部42は、第2方向Yに沿って延在する。カバー側係止部42は、フレーム31に対してアッパカバー33を回動可能に係止した状態でアッパカバー33の回動軸部を構成する。各アーム部44、45は、それぞれ、第1方向Xの開口部33c側の縁を基端部として、先端部が第1方向Xのフレーム31側に向けて突出するようにして第1方向Xに沿って延在して形成される。アーム部44とアーム部45とは、第2方向Yに沿って間隔をあけて対向し、第1方向Xに沿って互いに平行に延在する。アーム部44とアーム部45とは、互いの先端部の間にカバー側係止部42を支持する。アーム部44とアーム部45とは、一方の端部が第1側壁部33dと接続されて基端部を構成し、他方の端部が先端部を構成しカバー側係止部42の両端部を片持ち状に支持する。アーム部44とアーム部45とは、当該一対のアーム部44、45の間にフレーム側係止部41が入り込むことができるように、その間隔がフレーム側係止部41の第2方向Yの長さより大きく取られている。
【0029】
上記のように構成される各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とは、アッパカバー33がフレーム31の開口部31cの全体を塞ぐように位置した状態で、各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とが係止可能な位置関係となるように形成される。そして、各回動基端係止機構4は、各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とが係止されることで、第2方向Yに沿った回動軸線Cを回動中心として、フレーム31に対してアッパカバー33を回動可能に係止することができる。言い換えれば、各回動基端係止機構4は、各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とが係止されることで、フレーム31に対するアッパカバー33の回動中心となる回動軸線Cを形成する。
【0030】
側壁部係止機構5は、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止された状態でフレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止するものである。側壁部係止機構5は、筐体3の第3方向Zに沿った一方の壁面、言い換えれば、筐体3の第2方向Yの一方の壁面に1つ設けられる。ここでは、側壁部係止機構5は、フレーム31とアッパカバー33とを係止する他の係止機構35、すなわち、回動先端係止機構6、及び、補助係止機構7と比較して、回動軸線Cから最も離れた位置に設けられる。言い換えれば、側壁部係止機構5は、フレーム31とアッパカバー33とを係止する係止機構35のうち、アッパカバー33が形成する回動軌跡の最も先端側に位置する。より詳細には、側壁部係止機構5は、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止された状態でフレーム31の第2側壁部31eに対して、アッパカバー33の第2側壁部33eを回動不能に係止する。ここで、第2側壁部31eは、壁部31aのうち第3方向Zに沿った一方の側壁、言い換えれば、壁部31aのうち第2方向Yの一方の側壁を構成する部分である。第2側壁部31eは、フレーム31において第2方向Y(軸線方向)と直交(交差)する方向に沿って延在する本体側壁部を構成する。第2側壁部33eは、壁部33aのうち第3方向Zに沿った一方の側壁、言い換えれば、壁部33aのうち第2方向Yの一方の側壁を構成する部分である。第2側壁部33eは、アッパカバー33において第2方向Y(軸線方向)と直交(交差)する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を構成する。第2側壁部31e、第2側壁部33eは、図1図2に示す状態において、それぞれ第3方向Zに沿って延在すると共に種々の凹凸形状が付されている。側壁部係止機構5は、フレーム側係止部51とカバー側係止部52とを有する。なお、以下の側壁部係止機構5の説明では、適宜図5も参照する。
【0031】
フレーム側係止部51は、フレーム31の第2側壁部31eに形成された筒状受け部53の内壁面53a(図5参照)に形成される。ここで、筒状受け部53は、第2側壁部31eから第2方向Yの外側(収容空間部34とは反対側)に突出して矩形筒状に形成される。筒状受け部53は、第1方向Xの両側が開口している。フレーム側係止部51は、当該筒状受け部53の内壁面53aに形成される。内壁面53aは、筒状受け部53において、第2方向Yに沿って第2側壁部31eと対向する壁面である。フレーム側係止部51は、内壁面53aの第1方向Xの開口部31c側の縁から第2方向Yに沿って第2側壁部31e側に爪状に突出した係止爪部として形成される。フレーム側係止部51は、第3方向Zに沿って直線状に延在する。フレーム側係止部51は、係止面51aを有し、第1方向Xのアッパカバー33側とは反対側の面が当該係止面51a(図5参照)を構成する。係止面51aは、側壁部係止機構5において、第2側壁部31e側に設けられる本体係止面を構成する面である。係止面51aは、後述するカバー側係止部52の係止面52aと係止される面である。係止面51aは、第3方向Zに沿って直線状に延在する。
【0032】
カバー側係止部52は、アッパカバー33の第2側壁部33eに形成されたアーム部54の外壁面54aに形成される。ここで、アーム部54は、図1図2図5に示す状態において、第2側壁部33eの第1方向Xのフレーム31側とは反対側の縁、すなわち、板状部33b側の縁から第2方向Yの外側(収容空間部34とは反対側)に突出してアーム状に形成される。アーム部54は、第1方向Xの板状部33b側の縁を基端部として、先端部が第1方向Xのフレーム31側に向けて突出するようにして第1方向Xに沿って延在して形成される。アーム部54は、第1方向Xの板状部33b側の端部が第2側壁部33eと接続されて基端部を構成し、当該基端部が第2側壁部33eに片持ち状に支持される。アーム部54は、第1方向Xのフレーム31側の端部が先端部を構成し、当該先端部が自由端をなす。アーム部54は、基端部が片持ち状に支持され先端部が自由端をなすことで、第2方向Yに対して相対的に高い可撓性を有して形成され当該第2方向Yに沿って弾性変形可能な構成とされる。つまり、アーム部54は、当該第2方向Yに沿って撓み可能である。カバー側係止部52は、当該アーム部54の外壁面54aに形成される。外壁面54aは、アーム部54において、第2方向Yに沿って第2側壁部33eと対向する面とは反対側の壁面である。カバー側係止部52は、外壁面54aの第1方向Xのフレーム31側の縁、すなわち、板状部33b側とは反対側の縁から第2方向Yに沿って第2側壁部33e側とは反対側に爪状に突出した係止爪部として形成される。カバー側係止部52は、図1図2図5に示す状態において、第3方向Zに沿って直線状に延在する。カバー側係止部52は、係止面52aを有し、第1方向Xのフレーム31側とは反対側の面、すなわち、板状部33b側の面が当該係止面52a(図5参照)を構成する。係止面52aは、側壁部係止機構5において、第2側壁部33e側に設けられる蓋部材係止面を構成する面である。係止面52aは、上述したフレーム側係止部51の係止面51aと係止される面である。係止面52aは、図1図2図5に示す状態において、第3方向Zに沿って直線状に延在する。
【0033】
上記のように構成されるフレーム側係止部51とカバー側係止部52とは、アッパカバー33がフレーム31の開口部31cの全体を塞ぐように位置した状態で、フレーム側係止部51とカバー側係止部52とが係止可能な位置関係となるように形成される。そして、側壁部係止機構5は、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが係止された状態で、フレーム側係止部51の係止面51aとカバー側係止部52の係止面52aとが相互に噛み合って係止される。この構成により、側壁部係止機構5は、フレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止することができる。また、側壁部係止機構5は、例えば、カバー側係止部52が形成されたアーム部54の外壁面54aが押圧されることで、当該外壁面54aが撓んで係止面51aと係止面52aとの係合が解除される。この構成により、側壁部係止機構5は、フレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止した状態を解除することが可能となる。
【0034】
回動先端係止機構6は、側壁部係止機構5と同様に、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止された状態でフレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止するものである。回動先端係止機構6は、筐体3の第2方向Yに沿った他方の壁面、言い換えれば、筐体3の第3方向Zの他方の壁面に1つ設けられる。つまり、回動先端係止機構6は、筐体3において、回動基端係止機構4が設けられた壁面と第3方向Zに沿って対向する壁面に1つ設けられる。ここでは、回動先端係止機構6は、フレーム31の第3側壁部31f(図2図4参照)とアッパカバー33の第3側壁部33fとを回動不能に係止する。ここで、第3側壁部31fは、壁部31aのうち第2方向Yに沿った他方の側壁、言い換えれば、壁部31aのうち第3方向Zの他方の側壁を構成する部分である。つまり、第3側壁部31fは、壁部31aのうち第3方向Zに沿って第1側壁部31dと対向する部分である。第3側壁部33fは、壁部33aのうち第2方向Yに沿った他方の側壁、言い換えれば、壁部33aのうち第3方向Zの他方の側壁を構成する部分である。つまり、第3側壁部33fは、壁部33aのうち第3方向Zに沿って第1側壁部33dと対向する部分である。第3側壁部31f、第3側壁部33fは、それぞれ第2方向Yに沿って延在すると共に種々の凹凸形状が付されている。回動先端係止機構6は、フレーム側係止部61と、カバー側係止部62と、筒状受け部63と、アーム部64とを有する。ここでは、回動先端係止機構6は、側壁部係止機構5とほぼ同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。フレーム側係止部61は、側壁部係止機構5のフレーム側係止部51に相当する。カバー側係止部62は、側壁部係止機構5のカバー側係止部52に相当する。筒状受け部63は、側壁部係止機構5の筒状受け部53に相当する。アーム部64は、側壁部係止機構5のアーム部54に相当する。
【0035】
補助係止機構7は、側壁部係止機構5、回動先端係止機構6と同様に、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止された状態でフレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止するものである。補助係止機構7は、筐体3の第3方向Zに沿った他方の壁面、言い換えれば、筐体3の第2方向Yの他方の壁面に1つ設けられる。つまり、補助係止機構7は、筐体3において、側壁部係止機構5が設けられた壁面と第2方向Yに沿って対向する壁面に1つ設けられる。ここでは、補助係止機構7は、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止された状態でフレーム31の第4側壁部31gに対して、アッパカバー33の第4側壁部33gを回動不能に係止する。ここで、第4側壁部31gは、壁部31aのうち第3方向Zに沿った他方の側壁、言い換えれば、壁部31aのうち第2方向Yの他方の側壁を構成する部分である。つまり、第4側壁部31gは、壁部31aのうち第2方向Yに沿って第2側壁部31eと対向する部分である。第4側壁部31gは、フレーム31において第2方向Y(軸線方向)と直交(交差)する方向に沿って延在する本体側壁部を構成する。第4側壁部33gは、壁部33aのうち第3方向Zに沿った他方の側壁、言い換えれば、壁部33aのうち第2方向Yの他方の側壁を構成する部分である。つまり、第4側壁部33gは、壁部33aのうち第2方向Yに沿って第2側壁部33eと対向する部分である。第4側壁部33gは、アッパカバー33において第2方向Y(軸線方向)と直交(交差)する方向に沿って延在する蓋部材側壁部を構成する。第4側壁部31g、第4側壁部33gは、図1図2に示す状態において、それぞれ第3方向Zに沿って延在すると共に種々の凹凸形状が付されている。ここでは、補助係止機構7は、筐体3において補助的に設けられる係止機構35であるので、詳細な説明を省略する。
【0036】
上記のように構成される筐体3は、フレーム31に対してアッパカバー33を組み付ける際には、まず、フレーム31に対してアッパカバー33を傾斜させて各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とが係止される(図3図4等参照)。そして、筐体3は、各フレーム側係止部41と各カバー側係止部42とが係止され各回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とを係止させた状態で、回動軸線Cを回動中心として、アッパカバー33が開口部31c側に回動される。これにより、筐体3は、アッパカバー33がフレーム31の開口部31cの全体を塞ぐように位置する(図1図2等参照)。そして、筐体3は、アッパカバー33がフレーム31の開口部31cの全体を塞ぐように位置した状態で、フレーム側係止部51とカバー側係止部52とが相互に噛み合って相互に係止される。これにより、筐体3は、側壁部係止機構5によってフレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止することができる。同様に、筐体3は、回動先端係止機構6、及び、補助係止機構7によっても、フレーム31に対してアッパカバー33を回動不能に係止することができる。この結果、筐体3は、フレーム31に対してアッパカバー33を各回動基端係止機構4、側壁部係止機構5、回動先端係止機構6、及び、補助係止機構7によって係止し固定することができる。
【0037】
そして、本実施形態の筐体3は、上記のように、アッパカバー33がフレーム31に対して回動軌跡を描きながら組み付けられ、係止される構成にあって、さらに、側壁部係止機構5が所定の形状に形成されることで、組み付け性の向上が図られている。
【0038】
具体的には、側壁部係止機構5は、図6に示すように、上記で説明したフレーム側係止部51の係止面51a、カバー側係止部52の係止面52aに加えて、さらに、テーパ面52bを有して構成される。
【0039】
テーパ面52bは、係止面51a又は係止面52aの一方の、回動軸線C側とは反対側に当該一方に対して傾斜を有して位置して当該一方と一体で形成される。本実施形態のテーパ面52bは、係止面52aの回動軸線C側とは反対側に係止面52aに対して傾斜を有して位置して当該係止面52aと一体で形成される。つまり、テーパ面52bは、カバー側係止部52に係止面52aと共に一体で形成される。テーパ面52bは、カバー側係止部52において、第1方向Xのフレーム31側とは反対側の面、すなわち、板状部33b側の面に、係止面52aと並んで形成される。テーパ面52bは、フレーム31とアッパカバー33とが回動不能に組み付けられた状態(図1図2図5に示す状態(以下、「回動不能状態」という場合がある。)において、第3方向Zに沿って係止面52aと隣接して形成される。テーパ面52bは、回動不能状態において、軸線方向(第2方向Y)に沿って視た軸線方向視(図6参照)にて、回動軸線Cから離れるにしたがって、係止面52aに対する第1方向Xへの落ち込み量(オフセット量)が徐々に大きくなる傾斜面として形成される。この構成により、テーパ面52bは、回動軸線Cを回動中心としたアッパカバー33の回動に伴って係止面52aを第2方向Yに沿って係止面51aと係止面52aとが相互に係止される係止位置(図5参照)に移動させるガイド面として機能する。係止面52aに対するテーパ面52bの傾斜角度は、アッパカバー33が形成する回動軌跡に応じて適宜調整されている。当該傾斜角度は、典型的には、アッパカバー33の回動に伴ってカバー側係止部52がフレーム側係止部51を乗り越えて係止面51aに係止される直前で、テーパ面52bによってカバー側係止部52全体が係止位置側に落とし込まれる角度に調整されている。
【0040】
以上で説明した筐体3、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネスWHは、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが係止された状態で、側壁部係止機構5によって第2側壁部33eが第2側壁部31eに対して回動不能に係止される。この構成により、筐体3は、アッパカバー33をフレーム31に組み付けることができる。この場合、筐体3は、まず、回動基端係止機構4によってフレーム31とアッパカバー33とが回動可能に係止される。そして、筐体3は、フレーム31に対するアッパカバー33の回動に伴って、側壁部係止機構5を構成するテーパ面52bが係止面51a又は係止面52aの一方、ここでは、係止面52aを、係止面51aと係止面52aとが相互に係止される係止位置に移動させる。この結果、筐体3、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネスWHは、組み付け性を向上することができる。
【0041】
例えば、図7に示す比較例に係る電気接続箱の側壁部係止機構5Aは、テーパ面52bを有していない構成となっている。この場合、側壁部係止機構5Aは、アッパカバー33の回動に伴ってカバー側係止部52がアーム部54を撓ませつつフレーム側係止部51を乗り越えようとする。このとき、側壁部係止機構5Aは、カバー側係止部52の係止面52aがフレーム側係止部51の係止面51aに対して傾斜した状態で回動され当該係止面52aの角部が最終的にフレーム側係止部51を完全に乗り越えたタイミングでカバー側係止部52が係止位置側に落とし込まれる。このため、側壁部係止機構5Aは、アッパカバー33の回動に伴ってカバー側係止部52全体がこじれながらフレーム側係止部51を乗り越え、カバー側係止部52の角部がフレーム側係止部51に擦れながら係止位置側に落とし込まれるようになる。この結果、側壁部係止機構5Aは、カバー側係止部52が係止位置側に落とし込まれる際の力が相対的に弱くなる傾向にある。これにより、側壁部係止機構5Aは、カバー側係止部52がフレーム側係止部51を乗り越えて係止位置に落とし込まれた感触が作業者に伝わり難い傾向にあり、組み付け作業におけるフィーリングが相対的に悪い傾向にある。
【0042】
これに対して、本実施形態の側壁部係止機構5は、アッパカバー33の回動に伴ってカバー側係止部52がアーム部54を撓ませつつフレーム側係止部51を乗り越えようとする。このとき、側壁部係止機構5は、図8に示すように、カバー側係止部52がフレーム側係止部51を乗り越えて係止面52aが係止面51aに係止される直前で、テーパ面52bによってカバー側係止部52全体が第2方向Yに沿って係止位置側に落とし込まれ案内される。このため、側壁部係止機構5は、アッパカバー33の回動に伴ってカバー側係止部52全体がテーパ面52bによって面的に案内されながら係止位置側に落とし込まれるので、当該カバー側係止部52を係止位置側に円滑に落とし込むことができる。この結果、側壁部係止機構5は、カバー側係止部52を係止位置側に落とし込む際の力を相対的に大きくすることができる。この結果、側壁部係止機構5は、カバー側係止部52がフレーム側係止部51を乗り越えて係止位置に落とし込まれた感触が作業者に伝わり易いようにすることができ、組み付け作業における作業フィーリングを向上させることができる。また、側壁部係止機構5は、例えば、カバー側係止部52がフレーム側係止部51を乗り越えた際にフレーム側係止部51がアーム部54と衝突することで発する打音(係止音)を相対的に大きくすることもできる。この点でも、側壁部係止機構5は、組み付け作業における作業フィーリングを向上させることができる。したがって、筐体3は、フレーム31に対して、アッパカバー33を、係止面51aと係止面52aとが係止状態となる位置まで確実に回動させることができ、この結果、フレーム31とアッパカバー33とを確実に組み付けることができる。
【0043】
その上で、側壁部係止機構5は、上記のようにテーパ面52bとは別に係止面52aが形成されており、当該係止面52aの部分で係止面51aとの係止保持力を適正に確保することができる。また、側壁部係止機構5は、テーパ面52bをカバー側係止部52の全体に設けるような場合と比較して、カバー側係止部52の強度を適正に確保することができる。
【0044】
この結果、筐体3は、フレーム31とアッパカバー33との組み付け作業フィーリングの向上による当該組み付け作業の確実性向上と、フレーム31とアッパカバー33との適正な係止保持力の確保とを両立することができる。したがって、筐体3、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネスWHは、上記のように、フレーム31とアッパカバー33との組み付け性を向上することができる。
【0045】
ここでは、テーパ面52bは、図8に示すように、係止面52aが係止面51aとの係止位置にある状態で、アッパカバー33の回動軌跡に沿った方向に対して、係止面51a又は係止面52aの他方、ここでは、係止面51aと隙間52cをあけて対向する。この結果、側壁部係止機構5は、適正な係止保持力を確保するための係止面52aに対して、組み付け作業フィーリングを向上するためのテーパ面52bを明確に区分けした構成とすることができる。したがって、筐体3、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネスWHは、組み付け作業の確実性向上と適正な係止保持力の確保とをより適正に両立することができる。
【0046】
さらに、テーパ面52bは、上述したように、アッパカバー33の回動に伴って係止面51a又は係止面52aの他方、ここでは、係止面51aと当接し係止面52aを係止位置に案内する。この結果、側壁部係止機構5は、テーパ面52bによって係止面52aを確実に係止面51aとの係止位置側に案内することができる。したがって、筐体3、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネスWHは、フレーム31とアッパカバー33との組み付け性をさらに向上することができる。
【0047】
なお、上述した本発明の実施形態に係る筐体、電気接続箱、及び、ワイヤハーネスは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
以上の説明では、第1方向X、第2方向Yは、水平方向に沿い、第3方向Zは、鉛直方向に沿うものとして説明したがこれに限らない。例えば、フレーム31とアッパカバー33とロアカバー32との積層方向は、車両に搭載された状態で、水平方向に沿った第1方向Xであるものとして説明したが、これに限らず、例えば、鉛直方向に沿っていてもよい。すなわち、以上の説明では、電気接続箱1は、フレーム31の開口部31b、31cが水平方向(第1方向X)を向くような位置関係で、車両室内のインストルメントパネルの下方等に設けられるものとして説明したがこれに限らない。また、電気接続箱1は、開口部31c、及び、アッパカバー33が水平方向(第1方向X)の座席側を向く位置関係で設けられるものとして説明したがこれに限らない。また、回動軸線Cの軸線方向は、第2方向Yに相当するものとして説明したがこれに限らない。また、以上で説明した筐体3は、フレーム31、ロアカバー32、及び、アッパカバー33が分割された3層分割構造となっているものとして説明したがこれに限らない。筐体3は、少なくとも筐体本体(フレーム31)と蓋部材(アッパカバー33)とを含んでいればよく、例えば、フレーム31とロアカバー32とが一体で形成されてもよい。
【0049】
以上の説明では、筐体3は、フレーム31とアッパカバー33とを係止するための係止機構35として、回動基端係止機構4と、側壁部係止機構5と、回動先端係止機構6と、補助係止機構7とを備えるものとして説明したがこれに限らない。筐体3は、回動基端係止機構4、及び、側壁部係止機構5を備えた上で、フレーム31とアッパカバー33とを係止するための係止保持力が十分であれば、回動先端係止機構6、補助係止機構7を備えなくてもよい。また、以上で説明した筐体3は、補助係止機構7に側壁部係止機構5と同様の構成を適用してもよい。
【0050】
以上の説明では、フレーム側係止部51、カバー側係止部52は、双方ともに爪状に突出した係止爪部として形成されるものとして説明したがこれに限らない。フレーム側係止部51、又は、カバー側係止部52の一方は、爪状に突出した係止爪部として形成され、フレーム側係止部51、又は、カバー側係止部52の他方は、当該係止爪部が嵌合可能な係止凹部として形成されてもよい。この場合、係止面51a、又は、係止面52aの一方は、係止凹部の端面によって構成されることとなる。
【0051】
以上の説明では、テーパ面52bは、フレーム31とアッパカバー33とが回動不能に組み付けられた状態(図1図2図5に示す状態)において、第3方向Zに沿って係止面52aと隣接して形成されるものとして説明したがこれに限らない。テーパ面52bは、係止面52aとの間に面取り部や曲面部等が介在していてもよい。
【0052】
以上の説明では、テーパ面52bは、係止面52aの回動軸線C側とは反対側に、当該係止面52aに対して傾斜を有して位置して当該係止面52aと一体で形成されるものとして説明したがこれに限らず係止面51a側に設けられていてもよい。この場合、テーパ面は、係止面51aの回動軸線C側とは反対側に、係止面51aに対して傾斜を有して位置して当該係止面51aと一体で形成される。そして、当該テーパ面は、回動軸線Cを回動中心としたアッパカバー33の回動に伴って係止面51aを第2方向Yに沿って係止面51aと係止面52aとが相互に係止される係止位置に移動させるガイド面として機能する。またこの場合、当該テーパ面は、係止面51aが係止面52aとの係止位置にある状態で、アッパカバー33の回動軌跡に沿った方向に対して、係止面51a又は係止面52aの他方、ここでは、係止面52aと隙間をあけて対向する。またこの場合、当該テーパ面は、アッパカバー33の回動に伴って係止面51a又は係止面52aの他方、ここでは、係止面52aと当接し係止面51aを係止位置に案内する。
【符号の説明】
【0053】
1 電気接続箱
2 電子部品
3 筐体
4 回動基端係止機構
5 側壁部係止機構
31 フレーム(筐体本体)
31b、31c 開口部
31e 第2側壁部(本体側壁部)
33 アッパカバー(蓋部材)
33e 第2側壁部(蓋部材側壁部)
51 フレーム側係止部
51a 係止面(本体係止面)
52 カバー側係止部
52a 係止面(蓋部材係止面)
52b テーパ面
52c 隙間
C 回動軸線
W 配索材
WH ワイヤハーネス
X 第1方向
Y 第2方向(軸線方向)
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8