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特許7100447高破断点引張ひずみを有する透明ポリアミド成形組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】高破断点引張ひずみを有する透明ポリアミド成形組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20220706BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20220706BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
C08L77/06
C08G69/26
B29K77:00
【請求項の数】 26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017240273
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2018095880
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】16204566.0
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100170944
【弁理士】
【氏名又は名称】岩澤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴィーデマン
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ヘーヴェル
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-021420(JP,A)
【文献】特表2009-528399(JP,A)
【文献】特開2016-020490(JP,A)
【文献】米国特許第04207411(US,A)
【文献】特開昭63-061040(JP,A)
【文献】特開2008-144170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/06
C08G 69/26
B29K 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分からなるポリアミド成形組成物:
(A)50~100質量%の、下記から構成される少なくとも1種の透明ポリアミド:
(a1)55~77mol%の、5~10個の炭素原子を有する非環式脂肪族ジアミン;
(a2)23~45mol%の、6~36個の炭素原子を有する脂環式ジアミン;
((a1)と(a2)の割合は、使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になる);
(a3)40~80mol%の芳香族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物;
(a4)20~60mol%の、8~16個の炭素原子を有する非環式脂肪族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物;
((a3)と(a4)の割合は、使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる);
前記透明ポリアミド(A)がラクタムおよび対応するアミノカルボン酸を含まない;
(B)0~50質量%の添加剤;
(成分(A)と(B)の全体は100質量%になる)。
【請求項2】
出発材料(a1)が、6~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ジアミン、または6~8個の炭素原子を有する直鎖ジアミンであることを特徴とする、請求項1記載のポリアミド成形組成物。
【請求項3】
出発材料(a1)が、1,6-ヘキサメチレンジアミンおよび/または2-メチル-1,5-ペンタンジアミンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項4】
出発材料(a2)が、12~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項5】
出発材料(a2)が、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(PACP)、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン(MACP)、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、2,2-ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)プロパン(EACP)、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)プロパン(TMACP)またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項6】
出発材料(a2)が、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】
(a1)の割合が58~75mol%の範囲にあり且つ/または
(a2)の割合が25~42mol%の範囲にある
((a1)と(a2)の割合は使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になる)
ことを特徴とし、且つ/または
(a3)の割合が40~78mol%の範囲にあり且つ/または
(a4)の割合が22~60mol%の範囲にある
((a3)と(a4)の割合は使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる)
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】
(a1)の割合が60~72mol%の範囲にあり且つ/または
(a2)の割合が28~40mol%の範囲にある
((a1)と(a2)の割合は使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になる)
ことを特徴とし、且つ/または
(a3)の割合が60~75mol%の範囲にあり且つ/または
(a4)の割合が25~40mol%の範囲に
ある
((a3)と(a4)の割合は使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる)
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項9】
出発材料(a3)が、
テレフタル酸(TPA)、
1,5-ナフタレンジカルボン酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸を含めるナフタレンジカルボン酸(NDA)、
イソフタル酸(IPA)、
ジフェン酸(ビフェニル-2,2'-ジカルボン酸)、ジフェニル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニル-3,3'-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸およびジフェニルスルホン4,4'-ジカルボン酸を含めるビフェニルジカルボン酸、
アントラセン-1,5-ジカルボン酸、
p-テルフェニレン-4,4''-ジカルボン酸および
ピリジン-2,5-ジカルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択されるものを含む6~36個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項10】
出発材料(a3)が、テレフタル酸およびイソフタル酸およびこれらの混合物からなる群から選択される芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項11】
成分(a3)の芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸とイソフタル酸の混合物が使用されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項12】
成分(a3)の芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸とイソフタル酸の混合物が2:1~1:2のモル比で、または、1.5:1~1:1.5の比で、または、1:1の比で使用されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項13】
出発材料(a4)が、下記の群:デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸およびこれらの混合物から選択される直鎖脂肪族ジカルボン酸を含む10~14個の炭素原子を有する非環式の直鎖または分枝鎖脂肪族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項14】
出発材料(a4)ドデカン二酸のみであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項15】
成分(A)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、60~99.9質量%の範囲にあり、且つ/または
成分(B)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、0~50質量%の範囲にあり、
および/または、成分(B)が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、多くても10質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項16】
成分(A)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、80~99.5質量%の範囲にあり、且つ/または
成分(B)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき0.1~40質量%の範囲にあり、
および/または、成分(B)が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、多くても5質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項17】
成分(A)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、97.0~99.5質量%の範囲にあり、且つ/または
成分(B)の割合が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき0.5~20質量%の範囲にあり、
および/または、成分(B)が、 (A)と(B)でできている成形組成物に基づき、多くても3質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項18】
(a1)が1,6-ヘキサメチレンジアミンであるように選択され;
(a2)がMACM、PACMまたはこれらの混合物、またはMACMのみであるように選択され;
(a3)がテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの混合物であるように選択され;
(a4)がドデカン二酸であるように選択され
ることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項19】
(a1)が1,6-ヘキサメチレンジアミンであるように選択され;
(a2)がMACM、PACMまたはこれらの混合物、またはMACMのみであるように選択され;
(a3)がテレフタル酸、イソフタル酸の1.5:1~1:1.5または1:1の比の混合物であるように選択され;
(a4)がドデカン二酸であるように選択され
ることを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項20】
(a1)が1,6-ヘキサメチレンジアミンであるように選択され;
(a2)がMACM、PACMまたはこれらの混合物、またはMACMのみであるように選択され;
(a3)がテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの混合物であるように選択され;
(a4)がドデカン二酸であるように選択され、
成分の割合が下記の通りに選択され:(a1)60~75mol%の範囲で; (a2)25~40mol%の範囲で;(a3)60~75mol%の範囲で;(a4)25~40mol%の範囲で;
(a1)および(a2)の割合が、使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になり、(a3)および(a4)の割合が、使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項21】
成分(B)の添加剤が、(A)と異なるポリアミド;UV安定剤;熱安定剤;フリーラジカル捕捉剤、加工助剤;潤滑剤および離型助剤(金属ステアリン酸塩および金属モンタン酸塩を含める)(金属はマグネシウム、カルシウム、バリウムからなる群から選択されるものを含む)、鉱油および脂肪酸アミドを含む介在物防止剤;可塑剤;光学的性質に影響する機能性添加剤(屈折率に影響するものを含む);耐衝撃性改良剤;充填剤および/または充填剤の凝集体;蛍光増白剤;染料およびこれらの混合物(充填剤および/または凝集体はナノスケールであり得、且つ/または下記の群から選択される:ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、難燃剤、二酸化チタン、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムを含める鉱物)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物の製造方法であって、ポリマー成分(A)の製造が圧力容器内で270℃~330℃の圧力相、続いて260℃~320℃の減圧、続いて260℃~320℃での脱揮発、さらに、ポリアミド成形組成物のストランドの形での放出、冷却、ペレット化およびペレットの乾燥によって行われ、成分(A)および任意に(B)のペレットの形で配合し、250℃~350℃の溶融温度の押出機において成形してストランドを得、且つ適切なペレタイザーによって細断してペレットを得ることを特徴とする、前記方法。
【請求項23】
230℃~320℃の溶融温度における射出成形プロセスおよび/または射出圧縮成形プロセスによって、請求項1~21のいずれか1項記載のポリアミド成形組成物から得られうる成形物であって、モールドを40℃~130℃の温度に調節し、さらに任意によりキャビティの充填後の40℃~130℃の温度のモールドが熱い成形物に圧縮を加えてもよい、前記成形物。
【請求項24】
少なくとも85%、または少なくとも88%、または少なくとも90%の、ASTM D1003に従って測定した、CIE光源Cを使用してBykガードナー社からのヘイズ-ガードプラス測定装置によって、23℃の温度において、2×60×60mmの大きさのプラークまたは2×70mmの大きさのディスクについて定量した光の透過率を特徴とし且つ/または
請求項1~21のいずれか1項記載の透明ポリアミド成形組成物から製造した厚さ2mmのプラークの、高くても5%、または高くても3%、または高くても2%のASTM D1003に従って測定したヘイズを特徴とする、請求項23記載の成形物。
【請求項25】
23℃の温度において、タイプAl、170×20/10×4mmのISO引張試験片について50mm/分の引張試験速度でISO 527に従って測定した、少なくとも100%、または少なくとも120%、または少なくとも130%の破断点引張ひずみを特徴とし、
および/または23℃の温度において、タイプAl、170×20/10×4mmのISO引張試験片について1mm/分の引張試験速度によるISO 527に従って測定した、2000MPaを超える、または2100MPaを超える引張弾性率も特徴とする、請求項23または24記載の成形物。
【請求項26】
機械、自動車、家庭用装置、玩具、スポーツ品目もしくは携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、MP3プレーヤー、カメラ、光学装置もしくはこれらの組み合わせを含む携帯用の電気または電子装置のハウジング要素もしくはディスプレイ要素または構成要素であるか、もしくは眼鏡の枠、眼鏡レンズを含むレンズ、双眼鏡、油が直接接触する暖房方式のための視界窓、飲料水処理のためのフィルターカップ、哺乳瓶、炭酸用ボトル、陶器、気体もしくは液体のための流量メータ、時計ケーシング、腕時計ケーシング、自動車灯のためのランプハウジングもしくは反射器またはその要素であることを特徴とする、請求項2325のいずれか1項記載の成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一例としてハウジング構成要素として、家庭用部門、スポーツ設備部門または玩具部門において使用することができるタイプを有し、特定の機械的性質を有する透明ポリアミド成形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
透明熱可塑性材料は、多くの分野において、特にハウジング部門、光学機器部門およびディスプレイ部門において、さらに、家庭用装置部門、スポーツ設備部門およびゲーム装置部門において使用されている。ここでは、成形組成物が非常に広い様々な成形可能性を与えるために良好な加工特性を有することが重要であり、また、透明度が長期にわたる使用期間、時には集中的な日射または化学薬品への曝露の後にも保持されることも重要である。機械的性質、とりわけ破砕挙動が同様に重要である。
EP-A-0 885 930号には、むしろこれらの脆性透明ポリアミドと、6T/12または6T/6I/12タイプ(ブレンド)のより強靭なポリアミドを混合することによってTg>160℃を有する脂環式ジアミンをベースとする透明ポリアミドの耐衝撃性を改善するための可能性が記載されている。ここで場合によっては耐衝撃性が透明ポリアミドの剛性の過度の低下なしで改善されるにもかかわらず、破断時引張ひずみの付随する改善はまったくないか微々たるものに過ぎない。脂肪族ポリアミドまたはオレフィン耐衝撃性改良剤がブレンドに添加される場合には、引張弾性率が大幅に低下し、破断時引張ひずみもなお100%より著しく低いままである。
EP-A-1 930 373号は、動的負荷の下で機械的応力亀裂の形成に対してほとんど傾向を示さないポリアミド成形組成物でできている透明成形物に関する。ここで使用されるポリアミドは、ヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンの群から選択される少なくとも1種のジアミンからおよびイソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)および/またはドデカン二酸(DDA)の群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸から、またはラクタムまたはα,ω-アミノ酸と組み合わせた上述のジアミンおよびジカルボン酸から形成される。100%のジアミン1,6-ヘキサンジアミンまたは1,6-ヘキサンジアミン、MACMおよびPACMの混合物のいずれかをベースとする好ましい変形例は、その高い引張弾性率のために充分な剛性を有する生成物であるけれども、破断時引張ひずみは多くの用途にはあまりに低い。
【0003】
WO-A-2007/087896号には、過熱蒸気滅菌可能な透明成形物および押出品および同じ組成物の過熱蒸気滅菌可能で透明規格試験片(ISOテスト試験片)の製造に使用することができる透明ポリアミドが記載されており、規格テスト試験片が、破断時引張ひずみが降伏ひずみより低下することなく、目に見える損傷または変形も生じることなく、少なくとも100過熱蒸気滅菌サイクル(134℃/7分)に耐える。これらのポリアミドは、本質的に、ジアミンMACMおよびPACMおよびジカルボン酸IPAおよびTPA、および不可欠な成分としてラクタム-12をベースとし、これらは高い剛性を有するが、破断点引張ひずみが低い。
US-B-4207411号は、芳香族ジカルボン酸および少なくとも2種の異なるジアミン、長鎖脂肪族ジアミンおよび脂環式のジアミンだけに基づく透明なアモルファスポリアミドに関する。本質的に長鎖ジアミン5-メチル-1,9-ノナンジアミンを含む本発明の組成物を、短鎖ジアミン1,6-ヘキサンジアミンを使用した比較例と比較する。見出された結果は、長鎖ジアミンを有する組成物が著しくより延性あるということである;破断点引張ひずみは、1,6-ヘキサンジアミンを含むポリアミドより2~3倍だけ高い。
EP-A-1 826 229号には、PACMおよびテレフタル酸をベースとする透明なアモルファスポリアミドが記載され、脂環式ジアミン単位の割合が常にジアミン割合内の少なくとも50mol%である。
EP-A-0 041 130号には、脂環式ジアミン単位および芳香族ジカルボン酸単位をベースとする透明熱可塑性ポリアミドが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の説明
従って、本発明の目的は、良好な加工特性および良好な機械的性質を有し、特に、高透明度および低ヘイズとともに、高い引張弾性率と破断点引張ひずみの組み合わせを与える透明ポリアミド成形組成物を提供することである。本発明は、特に衝撃変形試験に関して改良された熱可塑性透明ポリアミド成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
透明度およびヘイズの概念は、本発明のために下記のように解釈しなければならない:ASTM D1003に従って光透過率として測定した、透明成形組成物から製造された厚さ2mmのプラークの透明度は、85%を超え、好ましくは88%を超え、特に好ましくは少なくとも90%であり、ヘイズは、高くても5%、好ましくは高くても3%、特に好ましくは高くても2%である。本発明の成形組成物の望ましい使用のために達成される値は、剛性値(1800MPaより大きい、好ましくは2000MPaより大きい引張弾性率および高靱性値(好ましくは23℃における耐衝撃性:破砕せず)である。さらに、良好な極限引張強さおよび高破断点引張ひずみも達成され、後者はほぼ100%であることが好ましい。さらに、本発明の成形組成物でできている成形物は、延性破壊を示す。破砕は、衝撃変形試験において生じない。従って、本発明の第1の態様は、下記の成分からなるポリアミド成形組成物に関する:
(A)50~100質量%の下記から構成される少なくとも1種の透明ポリアミド:
(a1)55~77mol%の、5~10個の炭素原子を有する非環式脂肪族ジアミン;
(a2)23~45mol%の、6~36個の炭素原子を有する脂環式ジアミン;
((a1)と(a2)の割合は、使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になる);
(a3)40~80mol%の芳香族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物;
(a4)20~60mol%の、8~16個の炭素原子を有する非環式脂肪族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物;
((a3)と(a4)の割合は、使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる);
(B)0~50質量%の添加剤;
(成分(A)と(B)の全体は100質量%になる)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
予想外に、この特定の特性の組み合わせが全4単位(a1)~(a4)、すなわちジアミンの場合には脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンの両方およびジカルボン酸の場合には少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸および比較的長い鎖長を有する脂肪族ジカルボン酸の同時存在によって特に与えられることがわかる。しかしながら、これは個々の単位が請求項に記載の割合で、種々のポリアミドの混合物の形よりもむしろコポリマーの形で使用する場合にのみ言えることである。この特定の組み合わせによって予想外に達成される実際の特定の効果は、特に良好な機械的性質、特に高い引張弾性率の存在であり、非常に高い破断点引張ひずみおよび優れた光学的性質(透明度、ヘイズ)による。さらに、予想外に、破砕が衝撃変形試験において生じないこと、従って、プラークから破片が壊されないことがわかる。
それ故、これらの透明ポリアミドの特定の特徴は、高い剛性および高い延性の2つの特性を予想外に組み合わせることができることである。ここでの高い剛性は少なくとも2000MPa、好ましくは2100MPaの引張弾性率と同等視され、延性は少なくとも100%、好ましくは少なくとも120%の破断点引張ひずみによって定義される。どちらの特性もISO 527(ISO 527-1:2012および527-2:2012)に従って定量される。同時に、これらのポリアミドは、透明度(>90%)およびヘイズ(<3%)について厳しい要求を満たしており、いずれの場合においても、70×2mmの大きさのディスクまたは60×60×2mmの大きさのプラークについてASTM D1003に従って定量した。本発明の成形組成物は、また、ほとんど黄変を示さず、特に製造後だけでなく、高温で貯蔵後も示さず、予想外にも、衝撃の方法において、例えば衝撃変形試験において応力に曝されたときに破砕の方へほとんど傾向を示さない。
【0007】
本発明のポリアミドは、少なくとも2つのジアミンと少なくとも2つのジカルボン酸との組み合わせをベースとし、ラクタムおよび/または対応するアミノカルボン酸を含まない。
第1の好適実施態様によれば、そのようなポリアミド成形組成物は、出発材料(a1)が6~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ジアミンであることを特徴とする。
出発材料(a1)が6~8個の炭素原子を有する直鎖のジアミンであることが好ましい。特に好ましくは、(a1)は、1,6-ヘキサメチレンジアミンおよび/または2-メチル-1,5-ペンタンジアミンからのみ形成される。
別の好適実施態様によれば、(a1)のようにジアミンではあるが(a1)と構造的に異なっている出発材料(a2)は、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミンである。特に、これは下記からなる群から選択されることが好ましい:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、イソホロンジアミン(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメタンアミン)、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、2,5-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,5-ジアミノノルボルナン、2,6-ジアミノノルボルナンまたはこれらの混合物。12~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミンとすることが特に好ましく、下記からなる群から選択されることが好ましい:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン(MACP)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン(PACP)、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、2,2-ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)プロパン(EACP)、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMACM)、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)プロパン(TMACP)。
【0008】
それ故、本出願に使用される名称PACMはISOネームビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンを意味し、これは4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンまたはジシカン(Dicykan)(CAS番号1761-71-3)として商業的に入手できる。名称MACMはISOネームビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンを意味し、これは3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンまたはLaromin C260(CAS番号6864-37-5)として商業的に入手できる。
出発材料(a2)が下記からなる群から選択される脂環式ジアミンであることが特に非常に好ましい:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)およびこれらの混合物。MACMの使用のみが特に好ましい。
ジアミンの割合が関係する限り、(a1)の割合は、58~75mol%の範囲、好ましくは60~72mol%の範囲、特に好ましくは63~72mol%の範囲にあることが好ましい。
(a2)の割合は、25~42mol%の範囲、好ましくは28~40mol%の範囲、特に好ましくは28~37mol%の範囲にあることが好ましい。
ここで(a1)と(a2)の割合は、当然常に、使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になる。
出発材料(a3)は、6~36個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。(a3)は、下記からなる群から選択されることが好ましい:テレフタル酸(TPA)、種々のナフタレンジカルボン酸(NDA)、特に1,5-ナフタレンジカルボン酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸(IPA)、種々のビフェニルジカルボン酸、例えばジフェン酸(ビフェニル-2,2'-ジカルボン酸)、ジフェニル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニル-3,3'-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン4,4'-ジカルボン酸、アントラセン-1,5-ジカルボン酸、p-テルフェニレン-4,4''-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸およびこれらの混合物。
【0009】
成分(a3)は、テレフタル酸、イソフタル酸およびこれらの混合物からなる群から選択されることが特に好ましい。
テレフタル酸とイソフタル酸の混合物が成分(a3)の芳香族ジカルボン酸として使用される場合、これらの2つの系は、成分(a3)の範囲内で、テレフタル酸:イソフタル酸、好ましくは2:1~1:2のモル比で、特に1.5:1~1:1.5の比で存在する。テレフタル酸とイソフタル酸の等モル混合物を使用することが特に非常に好ましい。
別の好適実施態様によれば、出発材料(a4)は、10~14個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖脂肪族ジカルボン酸またはそのようなジカルボン酸の混合物である。
(a4)が下記の群から選択される直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい:デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸およびこれらの混合物。
出発材料(a4)としてドデカン二酸のみの使用を示すことが特に好ましい。
ジカルボン酸の割合が関係する限り、(a3)の割合は、40~78mol%または50~77mol%の範囲、好ましくは60~75mol%の範囲にあることが特に好ましい。
(a4)の割合は、22~60mol%または23~50mol%の範囲、好ましくは25~40mol%の範囲にあることが好ましい。
(a3)と(a4)の割合は、常に、使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる。
理想的な特性を有する特に好ましいポリアミド成形組成物は、(A)の構造として、
(a1)は1,6-ヘキサメチレンジアミンであるように選択され;
(a2)はMACM、MACM、PACMまたはこれらの混合物、好ましくはMACMのみであるように選択され;
(a3)はテレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの混合物、好ましくは1.5:1~1:1.5の比での混合物、特に好ましくは等モル混合物であるように選択され;
(a4)はドデカン二酸であるように選択される
ことを特徴とする。
【0010】
ここでの成分の割合は、下記の通り選択されることが好ましい:(a1)60~75mol%の範囲で;(a2)25~40mol%の範囲で;(a3)60~75mol%の範囲で;(a4)25~40mol%の範囲で((a1)と(a2)の割合は、使用するジアミンの全体に基づき、合計100mol%になり、(a3)と(a4)の割合は、使用するジカルボン酸の全体に基づき、合計100mol%になる)。
ここで一般的に重要である点は、(A)に関連してラクタムまたはアミノ酸をベースとする単位が使用されないことである。それ故、(A)は、本質的にラクタムおよびアミノ酸単位を含まず(すなわち(A)の全組成物に基づき2質量%未満、好ましくは1質量パーセント未満)、好ましくは完全に含まない。
成形組成物における成分(A)の含有量は、好ましくは60~99.9質量%の範囲、特に好ましくは80~99.5質量%の範囲、特に好ましくは90.0~99.9質量%および97.0~99.5質量%の範囲にある。
さらに、20℃においてISO 307:2013-08に従って100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー溶液で定量される透明ポリアミド(A)の溶液粘度(ηrel)は、1.5と1.9の間、特に1.60と1.80の間、特に非常に好ましくは1.65と1.75の間であることが好ましい。
ポリアミド(A)のガラス転移温度は、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃または130℃、特に好ましくは少なくとも140℃であるが同時に好ましくは220℃以下または200℃以下であることが好ましい(ガラス転移温度は加熱速度20K/分でISO 11357-2:2013-05に従いDSCによって定量される)。
【0011】
透明なアモルファスポリアミド(A)の融解エンタルピーは、測定可能でなく、あまり小さい:多くても4J/g、好ましくは多くても2J/g(ペレットについてISO 11357-3:2013-04に従って示差走査熱量測定(DSC)を加熱速度20℃/分で定量した)。
本発明のポリアミド成形組成物は、添加剤(成分B)を成形組成物に基づき、0~50質量%、好ましくは0.1~40質量%、特に好ましくは0.5~20質量%の割合で、或いは多くても10質量%、好ましくは多くても5質量%、特に好ましくは多くても3質量%の好ましくはわずかな割合で含むことができる。
添加剤は、UV安定剤、熱安定剤、フリーラジカル捕捉剤、加工助剤、介在物防止剤(inclusion preventers)、潤滑剤、離型助剤(金属ステアリン酸塩および金属モンタン酸塩を含める)(金属はマグネシウム、カルシウム、バリウムである)、鉱油および脂肪酸アミド、可塑剤、光学的性質、特に屈折率に影響する機能性添加剤、耐衝撃性改良剤、充填剤および/または凝集体、蛍光増白剤、染料およびこれらの混合物(充填剤および/または凝集体は好ましくはナノスケールであり且つ/または下記の群から選択される:ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、難燃剤、二酸化チタン、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムを含める鉱物)を挙げることができる。それ故、成形組成物は、(成分(B)として)ナノスケール充填剤および/またはナノスケール機能材料、例えば層状鉱物または金属酸化物を含むことができ、これらは、屈折率または光学光沢剤または染料、例えばフォトクロミック色素を増加させる。
本発明のために、さらに、成形組成物は、当業者に良く知られる充填剤および/または凝集体、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、難燃剤、鉱物、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム、または一例として耐衝撃性改良剤は、例えば官能化ポリオレフィンを含むことができる。
【0012】
好ましい耐衝撃性改良剤は、酸変性エチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレングリコシジルアクリル酸コポリマーおよびメタクリレートブタジエンスチレンコポリマーから選択される群に由来する。
補強剤として使用することができる物質は、ガラス繊維および炭素繊維だけでなく、特に再生可能原料および50%を上回るバイオ内容物をベースとするものである。天然繊維、例えばセルロース繊維、麻繊維、アマ繊維、コットン繊維、ウール繊維または木材繊維を使用することが特に好ましい。
しかしながら、成分(B)の添加剤は、(A)と異なるポリマーであることができ、特にポリアミドが好ましい。ポリアミドが成分(B)の添加剤として使用される場合には、ここでの物質は脂肪族ポリアミドであることが好ましく、特に好ましくは下記のリストから選択される:PA46、PA410、PA56、PA510、PA6、PA66、PA68、PA69、PA610、PA1010、PA106、PA11およびPA12、さらにはこれらの混合物。しかしながら、(A)と異なるポリマーは成分(B)のために存在しないことが好ましい。
ポリマー成分(A)は、それ自体公知の圧力容器中で製造されることが好ましい。これは、一例として圧力相から250℃~320℃で開始する。これに続いて、一例として250℃~320℃で減圧する。脱揮発は、一例として260℃~320℃Cで実施する。次いで、ポリアミド成形組成物を、ストランドの形で放出し、水浴中で、例えば5℃~80℃に冷却し、ペレット化する。ペレットは、典型的には、80℃で12時間、好ましくは0.06%より少ないことが好ましい含水量まで乾燥する。乾燥手順の間、ペレットの同時循環によって、潤滑剤、染料、安定剤または他の添加剤のような添加剤は、焼結または他の方法によってペレットに適用することができる。
【0013】
ポリアミドは、一般的には、ジアミンおよびジカルボン酸を1:1の比で使用して製造されるが、モル質量調整の理由で過剰量のジアミンまたはジカルボン酸を含むこともでき、ここで、比が1:1.10~1.10:1の範囲外にないことが好ましい。単官能ジアミンおよびカルボン酸が調整のために使用することも可能である。一例として、20℃で100mlのm-クレゾール中の0.5gのポリマー溶液における、好ましくは1.40~2.40、より好ましくは1.5~1.9、特に好ましくは1.60~1.80の望ましい相対粘度(成分(A))を確定するために、0.01~2mol%の少しの過剰量のジアミンまたはジカルボン酸を使用することが可能である。安息香酸およびステアリン酸を含める、モノアミンまたはモノカルボン酸を、モノマーa1~a4の全体に基づき、0.01~2.0質量%、好ましくは0.05~0.5質量%で使用することにより調整を達成することが好ましい。適切な調整剤は、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリルアミンおよびこれらの混合物である。HALSタイプまたはtert-ブチルフェノールタイプの安定剤群を含むアミン群を有するかまたはカルボン酸群を有する調整剤、例えばトリアセトンジアミンまたはイソフタル酸-ジトリアセトンジアミン誘導体が特に好ましい。
【0014】
重縮合反応を加速するのに適切な触媒は、リン含有酸、例えばH3PO2、H3PO3、H3PO4、これらの塩、または有機誘導体であり、これらは処理の間、同時に変色を減じる。触媒の添加される量は、通常は0.001~0.5質量%の範囲、好ましくは0.005~0.1質量%の範囲にある。脱揮発の間、発泡を回避するのに適切な消泡剤は、シリコーンまたはシリコーン誘導体を0.01~1.0質量%の範囲、好ましくは10%エマルジョンの場合には0.01~0.10の範囲の量で含む水性エマルジョンである。特に、本発明のポリアミド(A)の製造の間、シリコーン含有消泡剤の使用を避けることが好ましく、消泡剤を使用しないことが特に非常に好ましい。
適切な熱安定剤またはUV安定剤は、重縮合前の混合物に0.01~0.5質量%の量で添加することができる。高融点の種類を使用することが好ましい。イルガノックス(Irganox)1098を使用することが特に好ましい。
本発明の透明成形組成物への添加剤の準備は、例としては安定剤、パラフィン油またはステアレートのような潤滑剤、染料、充填剤、エチレン-メタクリル酸グリシジル(好ましくは本発明の成形組成物の範囲にある屈折率を有する)または無水マレイン酸-グラフトポリエチレン、プロピレンに由来するターポリマーのような耐衝撃性改良剤、または透明に分散可能なナノ粒子またはガラスビーズまたはガラス繊維のような補強材料、または添加剤の混合物があり、250℃と350℃の間の溶融温度を使用する既知の混合プロセス、特に単軸押出機または多軸押出機における押出しによって達成することができる。
【0015】
それ故、本発明は、さらに、これらのポリアミド成形組成物の製造方法を提供し、上述の目的は、さらに、これらの特許請求の範囲に記載のポリアミド成形組成物の製造方法を経て達成される。ここでは、ポリマー成分(A)を圧力容器内で250℃~320℃の圧力相、続いて250℃~320℃の減圧、続いて260℃~320℃の脱揮発、さらに、ポリアミド成形組成物のストランド形態での放出、冷却、ペレット化およびペレットの乾燥よって製造し、成分(A)および任意に(B)のペレットの形で配合し、220℃~350℃の溶融温度の押出機において成形してストランドを得、且つ適切なペレタイザーによって細断してペレットを得ることが好ましい。
本発明の透明ポリアミド成形組成物でできている高透明度の成形物の適切な製造方法は、典型的には230℃~330℃の溶融温度による射出圧縮成形プロセスまたは射出成形プロセスであり、ここで、モールドを好ましくは40℃~130℃の温度、非常に好ましくは60~120℃に調整し、さらに任意によりキャビティの充填後に40℃~130℃の温度のモールドが高温成形物に圧縮を加えてもよい。本発明の透明ポリアミド成形組成物から製造される欠陥のない低応力表面の特に適切な製造方法(例としては眼鏡レンズまたは高規格ハウジングコンポーネントである)は、膨張射出圧縮成形プロセスであり、1~5mmの肉厚を有するキャビティが満たされ、次いでモールドキャビティが拡張されて充填が続くとともにより大きな肉厚を得る。
【0016】
本発明の透明ポリアミド成形組成物から製造される単層または多層設計のフィルム、チューブおよび半製品に適切な製造方法は、250℃と350℃間の溶融温度を使用する単軸押出機または多軸押出機における押出プロセスであり、種々の層の適合性によって必要であれば適切なコポリマーまたはブレンドの形の適切な接着促進剤を使用することができる。
本発明のポリアミド組成物から構成される成形物は、慣用のプロセスによって、例えば超音波溶接、グローワイヤ溶接、摩擦溶接、スピン溶接または800nm~2000nmの範囲にある吸収によるレーザ活性色素の供給を通してレーザ溶接によって相互に結合することができる。
本発明の透明ポリアミド成形組成物でできている単層または多層設計の中空体および瓶に適切な製造方法は、射出ブロー成形プロセス、射出延伸ブロー成形プロセスおよび押出ブロー成形である。
本発明の成形組成物は、また、加工してフィルム、例えばフラットフィルム、インフレートフィルム、キャストフィルム、多層フィルムを得ることもできる。フィルムの更なる加工は、ラミネーション、インモールド装飾、引伸し、配向、印刷または浸染を経て達成することが好ましい。
成形物は、バルク染色または引き続き浸漬浴として既知であるものを使用することによって着色することができる。成形物は、ミリング、穴明け、研削、レーザ刻印、レーザ切断またはレーザ溶接に供してもよい。
【0017】
本発明の透明ポリアミド成形組成物から構成される成形物に適切な使用は、ハウジング要素またはディスプレイ要素または機械の構成要素、自動車、家庭用装置、玩具、スポーツ品目または特に携帯型電気または電子装置、例えば特に携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、GPS装置、MP3プレーヤー、カメラ、光学装置またはこれらの組み合わせであるか、または眼鏡の枠、眼鏡レンズまたは他のレンズ、双眼鏡、油が直接接触する暖房方式のための視界窓、飲料水処理のためのフィルターカップ、哺乳瓶、炭酸用ボトル、陶器、気体または液体のための流量計、時計ケーシング、腕時計ケーシング、ランプハウジングまたは自動車灯のための反射器またはこれらの要素、さらには装飾用パーツおよび玩具のパーツである。
それ故、さらに、本発明は、これらのポリアミド成形組成物でできている、好ましくは上述のプロセスによって製造される特許請求の範囲に記載の成形物に関する。言い換えると、上述の目的も、上述のポリアミド成形組成物から得られうるこれらの成形物によって達成され、好ましくは、好ましくは230℃~320℃である溶融温度での射出成形プロセス及び射出圧縮成形プロセスによって製造され、ここで、モールドは、好ましくは40℃~130℃である温度に調節され、任意により、好ましくは40℃~130℃、非常に好ましくは60~120℃である温度のモールドがキャビティに充填後に高温成形物に圧縮を加えてもよい。
【0018】
本発明の補強されていない成形組成物から製造された成形物は、1800~3500MPa、好ましくは2000~3000MPaの引張弾性率、特に好ましくは2100~2600MPaの引張弾性率を有する剛性特性を示す。シャルピー衝撃値を測定する試験片は、室温(23℃)、さらに-30℃でほとんどまたはまったく破砕しなかった。
この成形物は、CIE発光体Cを使用するBykガードナー(Gardner)社製のヘイズガードプラス測定機器によって、23℃の温度において、2×60×60mmの大きさのプラーク又は2×70mmの大きさのディスクにより定量した、ASTM D1003に従って測定される高光線透過率に特徴を有することが好ましく、光線透過率は少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%、特に好ましくは少なくとも90%である。
さらに、この成形物は、透明ポリアミド成形組成物から製造される厚さ2mmのプラークの高くても5%、好ましくは高くても3%、特に非常に好ましくは高くても2%のASTM D1003に従って測定される低いヘイズに特徴を有することが好ましい。
この成形物は、さらに、少なくとも100%、好ましくは少なくとも120%、特に好ましくは少なくとも130%の、23℃の温度においてタイプAl、170×20/10×4mmのISO引張試験片により50mm/分の引張試験速度でISO 527-1:20102; 527-2:2012に従って測定される、破断時引張ひずみに、好ましくは、23℃の温度において、タイプAl、170×20/10×4mmのISO引張試験片により1mm/分の引張試験速度でISO 527に従って測定される、2000MPaを超える、好ましくは2100MPaを超える引張弾性率とともに特徴を有することが好ましい。
従属クレームにより、更なる実施態様が示される。
【0019】
好適実施態様の説明
本発明の好適実施態様を本発明の実施例によって以下に記載するが、これらは単に説明として用いられ、限定するものとして解釈すべきでない。
成形組成物の製造:
実施例IE1、IE2およびCE7:ポリアミドIE1、IE2およびCE7は、供給容器および反応容器を備えた撹拌可能な圧力オートクレーブ内で製造した。下記の材料:
(a)本発明の実施例IE1には:17.518kgのビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、14.526kgの1,6-ヘキサンジアミン、10.123kgのテレフタル酸、10.123kgのイソフタル酸、17.209kgのドデカン二酸、30kgの脱イオン水および11gの次亜リン酸(50%溶液)、
(b)本発明の実施例IE2には:12.871kgのビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、18.594kgの1,6-ヘキサンジアミン、13.090kgのテレフタル酸、13.090kgのイソフタル酸、12.433kgのドデカン二酸、30kgの脱イオン水および8gの次亜リン酸(50%溶液)、
(c)比較例CE7には:23.045kgのビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、12.895kgの1,6-ヘキサンジアミン、29.065kgのイソフタル酸、10.073kgのドデカン二酸、30kgの脱イオン水および8gの次亜リン酸(50%溶液)、
を供給容器に供給し、いずれの場合においても、窒素によって不活性化した。系を生じた圧力下で撹拌しながら180~230℃に均一な溶液が得られるまで加熱した。この溶液を反応容器へ篩を通して移し、そこで、高くても30バールの圧力で270~310℃の反応温度に加熱し、これらの条件下で2~4時間撹拌した。次の減圧相において、圧力を1~2時間の間に大気圧にし、温度を270~300℃の範囲において維持した。本発明の実施例IE1には相対粘度1.73、本発明の実施例IE2には1.70および比較例CE7には1.53に達した後、ポリアミド成形組成物をストランドの形で放出し、水浴中で冷却し、ペレット化する。ペレットを80℃で12時間0.06%より低いことが好ましい含水量に乾燥する。
【0020】
その他のCE実施例は、同じ全質量の出発材料を使用し、さらに30kgの脱イオン水を使用するが、下記表に示される出発材料割合を使用して、同じプロセスによって製造した。0.01質量%(水を含める出発材料の全質量に基づき)の次亜リン酸(50%溶液)を混合物に添加して、重縮合を加速させた。
本発明の透明ポリアミド成形組成物でできている高透明度成形物または試験片をアーバーグ(Arburg)420Cオーラウンダー(Allrounder)1000-250射出成形機において260℃~330℃の溶融温度で製造し、ここでのモールドは60~120℃の範囲にある温度に調節した。スクリュー回転速度は150~400rpmであった。
得られた材料および成形物は、表1および表2に挙げた構成および特性を有する。
【0021】
表1:
HMDA:1,6-ヘキサメチレンジアミン;MACM:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;PACM:ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;IPA:イソフタル酸;TPA:テレフタル酸;DDA:ドデカン二酸; LC12:ラウロラクタム;nf:破砕なし;EP'373:EP-A-1930373号における対応する実施例参照;nd:未定。
【0022】
表2:
HMDA:1,6-ヘキサメチレンジアミン;MACM:ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;PACM:ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;IPA:イソフタル酸;TPA:テレフタル酸;DDA:ドデカン二酸;LC12:ラウロラクタム;nf:破砕なし;EP'930:EP-A-885930号における比較例A(CE-A)参照; PA66:1,6-ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸でできているポリアミド66;nd:未定;EP'130:EP-A-0041130号におけるページ10、実施例2参照。
【0023】
方法:
ガラス転移温度(Tg)は、ISO 11357-1/2に従って定量した。示差走査熱量測定(DSC)は、加熱速度20K/分によって実施した。相対粘度(ηrel)は、20℃の0.5質量%のm-クレゾール溶液に基づきDIN EN ISO 307:2013-08に従って測定した。ペレットを試験片として用いる。引張弾性率、極限引張強さおよび破断点引張ひずみは、1mm/分(引張り弾性率)およびそれぞれ50mm/分(極限引張強さ、破断点引張ひずみ)の引張試験速度でISO 527に従ってISO引張試験片について定量した;規格:ISO/CD 3167、タイプAl、温度23℃で170×20/10×4mm。
シャルピー法による耐衝撃性およびノッチ付耐衝撃性は、ISO 179/keUに従ってISO試験片について測定した;規格:ISO/CD 3167、タイプB1、23℃の温度で80×10×4mm 。
光透過率(透明度)およびヘイズは、CIE光源Cを使用してBykガードナー(Gardner)社からのヘイズガードプラス(Haze-Gard Plus)測定装置によって、23℃の温度で、2×60×60mmの大きさのプラークまたは2×70mmの大きさのディスクについてASTM D1003に従って定量した。光透過率値は、入射光%で示される。
【0024】
貯蔵中の黄色指数の変化:
上記の通り製造したペレットを射出成形して、乾燥直後に60×60×2mmの大きさのプラークを得た(貯蔵前の試験片)。ASTM D1925に従う黄色指数は、これらのプラークについて定量した。このために、いずれの場合においても、5個のプラークを試験し、算術平均値を算出した。貯蔵の前のペレットから定量されるこの黄色指数を、初期値として使用した。これと一緒に、乾燥からのペレットをバッグに詰め、60℃で6週間乾燥炉内に貯蔵した。溶媒を使用せずに2-成分接着剤を使用して貼り合せた12/9/100μmの層の厚さを有するPET/アルミニウム/PEでできている35×53.5cmの大きさの材料をバッグに貯蔵した(供給業者: Vacopack H. Buchegger AG、スイス)。2kgのポリアミドペレットを計量してバッグに入れた。バッグ内の材料の上の残留空気をバッグから外に押出し、充填境界線の真上で気密であるようにバッグを融着した。貯蔵後、バッグを23℃に冷却し、開け、ポリアミドペレットを射出成形して60×60×2mmの大きさのプラークを得、これらのプラークの黄色指数(ASTM D1925)を測定した(最終値;5個のプラークについて測定値の算術平均)。表は、貯蔵前のペレット(初期値)および6週間貯蔵したペレット(最終値)でできているプラークの黄色指数から算出される黄色指数差(ΔYI)を示している。
【0025】
衝撃変形試験:引張試験と一緒に、弾道衝撃変形試験を実施することによって延性を評価した。試験は、スカイラークマシン(SKILARK Machine)社からのULTTM-(II)装置によって、60×60×2mmの大きさのプラークについて実施した。これのために、プラークを580±5mmの距離から90°の角度で鋼球の衝撃に供した。重さが1gで直径6.3mmの鋼球を、2バールの圧力でプラークの中心へ垂直に投入した。試験を5個のプラークについて実施し、試験後、プラークを下記の基準に対して評価した:亀裂せず、破砕せず(++);亀裂する、破砕せず(+);破砕せず、大きい亀裂(-);脆性破壊、分裂(--)。
【0026】
結果:
本発明のポリマー混合物でできている成形物は、良好な機械的および熱的な特性を有する。本発明の成形物は、良好な透明度(透過率)およびヘイズを示す。
特に比較例CE3およびCE7が示すように、一般的なタイプMACMI/6TおよびPACMI/612の従来技術による材料が引張弾性率の良好な値および良好な極限引張強さを与えることが可能であるにもかかわらず、これらは、良好な破断点引張ひずみを与えることが可能でなく、同時に衝撃変形試験において破砕に対する感受性が低いことも可能でない。ジアミン割合に基づき、脂環式ジアミンの割合が50%以上である場合には、破砕に対する感受性は過度になり、破砕はもはや延性でなく、それよりも脆性である。その一方で(CE4を参照されたい)、MACM12のみの使用は良好な破断点引張ひずみおよび衝撃変形試験において破砕に対して低い感受性を与えるにもかかわらず、弾性率は不充分である。ラクタム単位を使用する(CE2およびCE3、さらにCE6を参照されたい)場合には、引張弾性率、さらに、極限引張強さの良好な値が得られるにもかかわらず、破断点引張ひずみおよび衝撃変形試験における破砕に対する感受性の結果は、対照的に不充分なままである。成分(a4)が省略される場合には(それに関連してCE5aを参照されたい)、同じ結果が見られる:破断点引張ひずみおよび破砕に対する感受性は、不充分なままである。耐衝撃性改良剤(ここではポリアミド66)の添加(これに関連してCE5bを参照されたい)が破断点引張ひずみをある程度増加させることができるにもかかわらず、極限引張強さおよび引張弾性率はこの場合すぐに低減し、特に、光学値(透明度およびヘイズ)はこの場合も悪くなる。