(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】フルフレームセンサを有するカメラの最高撮像品質のコンパクトカメラレンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/02 20060101AFI20220706BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220706BHJP
G02B 15/10 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G02B13/02
G02B13/18
G02B15/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017241459
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】10 2016 125 402.9
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504318164
【氏名又は名称】カール・ツアイス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・プレトリウス
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173299(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026070(WO,A1)
【文献】特開2013-61547(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047112(WO,A1)
【文献】特開平4-55808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282583(US,A1)
【文献】特開平9-61708(JP,A)
【文献】特開2017-211489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側に繋がる第1の複合レンズ(10)、前記第1の複合レンズ(10)に続く第2の複合レンズ(20)、センサ側で終わり、前記第2の複合レンズ(20)に続く第3の複合レンズ(30)、及び前記第1の複合レンズ(10)と前記第2の複合レンズ(20)との間に配置される開口絞り(40)を有するフルフレームカメラのカメラレンズ(1)であって、
前記第1の複合レンズ(10)は
光を収束させる凸屈折
力有し、
前記第2の複合レンズ(20)は、光軸(50)に沿って移動可能に配置される少なくとも2つのレンズ要素を備え、
前記第3の複合レンズ(30)は、前記光軸(50)の長軸方向において固定して配置される少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)を有し、前記非球面レンズ要素は少なくとも25mmの直径を有
し、
前記第2の複合レンズ(20)は、前記光軸(50)に沿って配置される1つの物体側部分複合レンズ(21)及び1つの画像側部分複合レンズ(22)を含み、前記物体側部分複合レンズ(21)及び前記画像側部分複合レンズ(22)は、別様に変位可能であり、前記物体側部分複合レンズ(21)は凹屈折力を有し、前記画像側部分複合レンズ(22)は凸屈折力を有する、カメラレンズ(1)。
【請求項2】
前記第3の複合レンズ(30)の前記非球面レンズ要素(31)は、少なくとも光学的使用領域において変曲点を有さない、請求項1に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項3】
前記第2の複合レンズ(20)は、凸屈折
力を有する、請求項1又は2に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項4】
前記物体側部分複合レンズ(21)及び前記画像側部分複合レンズ(22)は、より短い物体距離(51)で合焦する場合、同じ方向に移動するよう変位可能なように配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項5】
前記画像側部分複合レンズ(22)の合焦移動は、前記物体側部分複合レンズ(21)の合焦移動の2倍~3倍である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項6】
前記第2の複合レンズ(20)は、少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項7】
前記第2の複合レンズ(20)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)は、少なくとも前記光学的使用領域において変曲点を有さない、請求項6に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項8】
前記画像側部分複合レンズ(21)は、前記第2の複合レンズの変曲点を有さない前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)を含む、請求項7に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項9】
前記第2の複合レンズの前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)は、前記非球面レンズ要素(23)の非球面に沿って60°以下の傾斜角を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項10】
前記第2の複合レンズの前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)は、ブランクプレスに適する低遷移温度のガラスから形成される、請求項6~9のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項11】
前記第2の複合レンズの前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)は、周縁に向かうにつれて光学屈折力が大きくなる少なくとも1つの非球面を備える、請求項6~10のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項12】
フィールド周縁でのビームの屈折力は、前記フィールド中心でのビームの屈折力の少なくとも5倍である、請求項11に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(23)は、双非球面レンズ要素である、請求項6~12のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項14】
前記第1の複合レンズ(10)の前記凸屈折力は、全体レンズ屈折力の少なくとも0.8倍である、請求項1~13のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項15】
前記第1の複数の複合レンズ(10)は、前記光軸(50)に沿って1つの物体側部分複合レンズ(11)及び1つの画像側部分複合レンズ(12)を含み、前記物体側部分複合レンズ(11)は凹屈折力を有し、前記画像側部分複合レンズ(12)は凸屈折力を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項16】
前記第1の複合レンズ(10)は、前記光軸(50)に沿って移動不可能なように配置される、請求項1~15のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項17】
前記第3の複合レンズ(30)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)は、前記非球面レンズ要素(31)の非球面に沿って60°以下の傾斜角を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項18】
前記第3の複合レンズ(30)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)は、ブランクプレスに適する低遷移温度のガラスから形成される、請求項1~17のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項19】
前記第3の複合レンズ(30)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)は、前記周縁に向かうにつれて光学屈折力が大きくなる少なくとも1つの非球面を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項20】
前記フィールド周縁でのビームの前記屈折力は、前記フィールド中心でのビームの屈折力の少なくとも5倍である、請求項19に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項21】
前記第3の複合レンズ(30)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)は、ビーム方向において最後のレンズ要素(31)として配置される、請求項1~20のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項22】
前記第3の複合レンズ(30)の前記少なくとも1つの非球面レンズ要素(31)は、双非球面レンズ要素(31)である、請求項1~21のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項23】
前記第3の複合レンズ(30)は、前記双非球面レンズ要素(31)からなる、請求項21に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項24】
前記カメラレンズ(1)の入射瞳は前記第1のレンズ要素に近く、前記第1のレンズ要素への前記入射瞳の近接性は、要件:
x/L≦0.2
により与えられ、式中、
xは、前記第1のレンズ要素の頂点から前記入射瞳の中心までの距離を表し、Lは前記レンズの構造長を表す、請求項1~23のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)。
【請求項25】
前に接続された光学アタッチメントを有する、請求項1~24のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)の使用。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載のカメラレンズ(1)を備えるスチルカメラ又はフィルムカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトであり、最高撮像品質を有し、フルフレームセンサを有するカメラと併用されるように構成されるカメラレンズに関する。本発明は、スチルカメラ又はフィルムカメラに更に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、表面積24mm×36mmで5,000万ピクセルのピクセル密度及びその結果として辺長当たり約0.4μmのピクセルサイズを有する写真カメラ及びフィルムカメラの進歩し続ける改良は、上流に接続されるカメラレンズに関する増え続ける要件に繋がる。カメラレンズ及びカメラからなるシステムの画質を決めるのに使用される光学伝達関数は現在、もはや主にセンサの変調伝達関数に依存せず、カメラレンズの変調伝達関数により多く依存している。変調伝達関数は、ここでは、異なる中間距離及び異なる線幅を有する線対の各コントラストを示す。カメラレンズは往々にして、1mm当たり80線対での変調伝達関数のコントラスト値に従って評価される。1mm当たり80線対において、少なくとも50%の波長独立コントラストが達成される変調伝達関数及び1mm当たり80線対において、ビームが80%にトリミングされた場合、少なくとも70%のコントラストが達成されるカメラレンズが、極めて高い画質を有するレンズと呼ばれる。この画質は通常、通常のカメラレンズによっては、通常のカメラレンズが典型的に大きくて重い場合であっても達成されない。
【0003】
画質に加えて、レンズサイズも光学設計の改良において重要な役割を果たす。特に軽量且つコンパクトなカメラレンズは通常、イメージサークル直径の1.5倍以下の構造長を有する。
【0004】
近代のカメラレンズは現在、通常、100ms以下の合焦時間を有する高速内部合焦を有する。そのようなカメラレンズは、大きな物体距離範囲を更に有する。中心からの最小物体距離は通常、ここでは、レンズ焦点距離の10倍以下である。ここでは、通常、高画質を近接設定範囲に維持することも求められる。近代のカメラレンズにおいて、非常に短い合焦時間に適合されたアクチュエータモジュールの使用を可能にするためには、移動すべきレンズ要素の質量は、好ましくは、合計で最大20g~30gになるはずである。より大きな質量のレンズ要素を移動させる場合、その結果として、加速力は典型的なアクチュエータモジュールを押し切り得る。
【0005】
スチルカメラ又はフィルムカメラの近代センサのセットアップは、フィールド縁部でのピクセルの望ましくない陰影が生じないように、センサへの主光線の入射角が30°以下であることを必要とする。センサへの主光線の入射角は、好ましくは、26°以下である。
【0006】
光学アタッチメントと一緒に使用されるカメラレンズは、画質が、有意な劣化なしで物体距離範囲全体にわたり画質が完全なままであるという小さくない需要に準拠すべきである。
【0007】
上述した条件の幾つかは、スマートフォンカメラのレンズ設計により既に満たされている。例として、(特許文献1)には、構造長に関する上記基準及び画像センサへの入射角に関する基準を満たすモバイルフォンカメラ光学ユニットの極めてコンパクトな構築を記載している。既知のモバイルフォンカメラレンズでは、開口絞りが往々にして、第1のレンズ要素それ自体の周囲のエンクロージャにより与えられるため、入射瞳の位置についての基準も満たされる。この場合、入射瞳は、開口絞り、ひいては定数に等しい。
【0008】
(特許文献1)、(特許文献2)、及び(特許文献3)はそれぞれ、モバイルフォンカメラの異なるレンズ設計を開示している。各カメラレンズのレンズ要素の開示される構成は、光学的使用表面の領域に変曲点を有する非球面レンズ要素を含む。変曲点を有する非球面レンズ要素は、非球面レンズ要素を通過するビームの異なる領域で屈折力の符号を変える。例えば、変曲点を有する非球面レンズ要素は、光軸に沿ったビームの発散効果及び周縁に沿ったビームの集光効果を有することができる。変曲点を有するそのような非球面レンズ要素の使用は、大半のモバイルフォンカメラレンズで典型的である。
【0009】
変曲点を有する非球面レンズ要素を有するカメラレンズの光学設計は、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、及び(特許文献14)に開示されている。
【0010】
(特許文献15)には、カラーフィルムカメラのカメラレンズが開示されている。カメラレンズは、複数の可動式レンズ要素構成要素及び少なくとも1つの静止レンズ要素構成要素群を備える。構成要素のうちの少なくとも2つは、非球面を有する。可動式構成要素は個々のレンズ要素からなり、レンズ要素のうちの少なくとも1つのレンズ要素は非球面を有し、一方、位置固定されるレンズ要素構成要素群は、少なくとも1つの非球面を有することができる。
【0011】
2つの可動式複合レンズを有するズームレンズは、(特許文献16)に開示されている。3つの複合レンズと、移動可能に配置される内部両凸レンズ要素とを有するカメラレンズは、(特許文献17)に開示されている。
【0012】
しかし、モバイルフォンカメラレンズの全ての既知のセットアップでは、画質は、イメージサークル直径がフルフレームに対応するように光学設計がスケーリングされる場合、変調伝達関数において1mm当たり80線対で求められる50%を超えるコントラストに近づかない。特に、既知のように、あらゆる固着要素の回避に起因して、モバイルフォンカメラレンズでは、色収差の補正は全体的に不十分である。さらに、レンズ全体の変位による合焦のみが、モバイルフォンカメラレンズにおいて提供される。それでもなお、画質は既に、レンズ焦点距離の20倍~30倍において急降下する。加えて、結果として、近接設定での画質に関する高要件を満たすことができないことは更に顕著になる。
【0013】
フルフレームセンサに変曲点を有する非球面レンズ要素の製造は、製造業者に大きな問題を課す。そのような非球面は、ブランクプレスにより数mm(通常、8mm未満)の非常に小さな直径の場合、費用効率的に製造することが可能であり得るが、フルフレームセンサを有するカメラで必要とされるはるかに大きなレンズ直径(通常、少なくとも25mm~30mm)の場合、費用効率的に製造することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2015/0198790 A1号明細書
【文献】米国特許第8,369,029 B2号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2004 060 786 A1号明細書
【文献】米国特許第9,310,590 B1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0011399 A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0212389 A1号明細書
【文献】米国特許第8,964,307 B2号明細書
【文献】米国特許第8,373,932 B2号明細書
【文献】米国特許第9,116,328 B2号明細書
【文献】米国特許第9,025,258 B2号明細書
【文献】米国特許第9,036,276 B2号明細書
【文献】米国特許第9,217,843 B2号明細書
【文献】米国特許第9,235,030 B2号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0177492 A1号明細書
【文献】米国特許第4,416,518号明細書
【文献】米国特許第5,986,821号明細書
【文献】米国特許第4,456,345号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、コンパクトであり、最高画質を提供するフルフレームセンサを有するスチルカメラ又はフィルムカメラの有利なカメラレンズを提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、有利なスチルカメラ又はフィルムカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の目的は、請求項1に記載のカメラレンズにより達成される。第2の目的は、請求項28に記載のスチルカメラ又はフィルムカメラにより達成される。従属クレームは、本発明の有利な構成を含む。
【0018】
本発明は、物体側に繋がる第1の複合レンズ、第1の複合レンズに続く第2の複合レンズ、センサ側で終わり、第2の複合レンズに続く第3の複合レンズ、及び第1の複合レンズと第2の複合レンズとの間に配置される開口絞りを有するフルフレームカメラのカメラレンズを開示する。ここでは、第1の複合レンズは凸屈折力を有する。第2の複合レンズは、同様に凸屈折力を有することができ、光軸に沿って移動可能に配置される少なくとも2つのレンズ要素を備える。第3の複合レンズは、光軸の長軸方向において固定して配置され、好ましくは、少なくとも光学使用領域に変曲点を有さない、少なくとも25mmの直径を有する少なくとも1つの非球面レンズ要素を有する。非球面レンズ要素は、ここでは、レンズ表面の少なくとも1つの光学的使用領域に非球面設計を有するレンズ要素と見なされる。しかし、特に、光学的使用領域を超えて延び、レンズ表面全体を構成する非球面設計を有するレンズ表面も可能である。
【0019】
本発明によるカメラレンズは、フルフレームセンサであってもさえも十分な画質を有する、すなわち、1mm当たり80線対で50%を超えるコントラストが達成される多色変調伝達関数を有するカメラレンズの提供を可能にする。多色変調伝達関数は、ここでは、異なる波長での変調伝達関数にわたる加重平均である。加えて、特に非球面レンズ要素が変曲点を有さない場合、専ら、非球面レンズ要素から又はブランクプレスにより製造可能な非球面レンズ要素から本発明によるレンズを生成することが可能であり、これは費用効率的な製造を提供する。さらに、光学ユニットの入射瞳の位置に関連する特定の要件を満たすことができ、その結果として、最高画質を有するコンパクトカメラレンズの境界条件を、フルフレームセンサを有するカメラで満たすことが可能である。
【0020】
第2の複合レンズは、光軸に沿って少なくとも1つの物体側部分複合レンズ及び少なくとも1つの画像側部分複合レンズを備えることができる。物体側部分複合レンズは凹屈折力を有し、画像側部分複合レンズは凸屈折力を有する。
【0021】
加えて、物体側部分複合レンズ及び画像側部分複合レンズは、光軸に沿って別様に変位可能であることができる。特に、物体側部分複合レンズ及び画像側部分複合レンズは、より短い物体距離で合焦する場合、同じ方向に移動するよう変位可能なように配置することができる。一般に、両複合レンズは、より短い物体距離で合焦する場合、同じ方向(物体側に向かう)に移動する。変更された物体距離で合焦する場合、光軸に沿った物体側部分複合レンズ及び画像側部分複合レンズの変位経路は、異なり得る。特に、画像側部分複合レンズの合焦移動は、物体側部分複合レンズの合焦移動の2倍~3倍であることができる。
【0022】
本発明によるカメラレンズの構成によれば、第2の複合レンズ、特に幾つかの複合レンズの画像側部分複合レンズは、少なくとも光学的使用領域で非球面であり、特に少なくとも光学使用領域で変曲点を有さないことができる少なくとも1つのレンズ要素を備える。非球面レンズ要素は、少なくとも光学的使用領域において変曲点を有さない場合、1つのみの凸すなわち正屈折力又は凹すなわち負屈折力を有する。変曲点を有さない非球面レンズ要素を通過するビームの異なる領域で屈折力の符号を変えることは、非球面の少なくとも光学的使用領域に変曲点を有さない非球面レンズ要素では生じない。特に、変曲点を有さない第2の複合レンズの非球面レンズ要素は、変曲点を有さず、光学的使用領域外、特に各表面全体にわたりで非球面であるように、変曲点を有さない第3の複合レンズの非球面レンズ要素のように構成することができる。
【0023】
本発明によるカメラレンズの一構成によれば、第2の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、双非球面レンズ要素、すなわち、両面で非球面形状の表面を有するレンズである。双非球面レンズ要素は、単純な非球面レンズ要素と比較して、特に球面レンズ要素と比較してより多くの自由度を有する。したがって、通常、複数のレンズ要素にわたり分布する補正を単一のレンズ要素により実行することができる。したがって、単純な非球面レンズ要素又は第2の複合レンズでの非球面レンズ要素と比較して、双非球面レンズ要素の使用は、第2の複合レンズの質量の顕著に低い質量に繋がり、ひいては、通常、100ms以下の合焦時間での高速内部合焦に繋がる。第2の複合レンズの移動すべきレンズ要素の質量は、好ましくは、最大でも30gであり、特に好ましくは最大でも20gである。そうして生じる関連する加速力により、短い合焦時間での市販のアクチュエータモジュールの使用を可能にする。
【0024】
少なくとも1つの非球面レンズ要素は、好ましくは、1つの非球面に沿って又は双非球面レンズの場合、2つの非球面に沿って60°以下の傾斜角を有する。そのような非球面レンズ要素は、ブランクプレス(成形)のカスタム製造方法により製造することができる。したがって、少なくとも1つの非球面レンズ要素は、ブランクプレスに適する低遷移温度を有するガラスから形成することができる。したがって、「低Tgガラス」として既知のガラスを使用することが可能である。
【0025】
本発明によるカメラレンズの一構成によれば、第2の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、周縁に向かって強い進展性を有する光学屈折力を有する少なくとも1つの非球面を備える。ここで、フィールド周縁でのビームの屈折力は、フィールド中心でのビームの屈折力の少なくとも5倍、特に少なくとも10倍であることができる。この形態の少なくとも1つの非球面レンズ要素は主に、センサへの最も外側のビームの入射角が26°という制限値未満に保つという要件から生じる。したがって、この非球面は、従来の撮像誤差の補正にはあまり役に立たず、レンズの所望の射出瞳位置の生成には大いに役に立つ。
【0026】
本発明によるカメラレンズの更なる構成では、第1の複合レンズの凸屈折力Pvは、合計レンズ屈折力Ptotの少なくとも0.8倍(Pv≧0.8*Ptot)、好ましくは合計レンズ屈折力Ptotの少なくとも1.4倍(Pv≧1.4*Ptot)を有する。合計レンズ屈折力は、ここでは、レンズ焦点距離の逆数に等しい。
【0027】
開口絞りの前の強力複合凸レンズ及び開口絞りの後の全体的な複合凹レンズは、指定された焦点距離を維持しながら短い構造長に寄与する。
【0028】
本発明によるカメラレンズでは、第1の複合レンズは、光軸に沿った少なくとも1つの及び少なくとも1つの画像側部分複合レンズ物体側部分複合レンズを備えることができ、物体側部分複合レンズは凹屈折力すなわち負屈折力を有し、画像側部分複合レンズは凸屈折力すなわち正屈折力を有する。この構成の部分複合レンズは、第1のレンズ要素頂点から入射瞳の中心(物体側でカメラレンズに入るビームの重複の程度が最大であるビーム路内の位置)までの距離を有する分子及びカメラレンズの構造長を有する分母からなる商が小さくなるという結果を有する。分子を1に正規化する場合、商の値は0.2未満、好ましくは0.1未満である。これは、カメラレンズの入射瞳が第1のレンズ要素の近傍に配置されることを意味する。この場合、ビネットなしで全てのビームにレンズを透過させるために必要な直径は、入射瞳それ自体の直径、ひいては可能な値のうちの可能な限り最小の値に対応する。逆に、仮に入射瞳がシステム内に配置される場合、ビネットなしで全てのフィールドビームを透過させるために必要な第1のレンズ要素の直径はより大きい。仮に入射瞳が第1のレンズ要素から離れて配置される場合、光学アタッチメントはそれに対応して、より大きく且つより重くなる必要がある。したがって、前部レンズ要素の近傍にある入射瞳は、カメラレンズへのコンパクトな光学アタッチメント(広角光学系及び遠隔光学アタッチメント)が使用可能であるという結果を有する。
【0029】
本発明によるカメラレンズの一構成によれば、第1の複合レンズは、光軸に沿って移動不可能なように配置される。第1の複合レンズと第2の複合レンズとの間に配置される開口絞りは、移動不可能な第1の複合レンズにより物体側で撮像される。この画像は入射瞳を表し、入射瞳の位置は、異なる合焦設定で光軸に対して一定のままである。入射瞳の位置は、合焦中、一定のままであるため、そうして前部に接続される光学アタッチメントは、合焦設定に強く依存する誤差成分を生成しない。
【0030】
本発明によるカメラレンズの更なる構成によれば、第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、非球面レンズ要素の非球面に沿って60°以下の傾斜角を有する。ここで、傾斜角は、光軸に対する表面要素の表面接線の角度を指す。非球面への入射角を<60°に制限することにより、第2の複合レンズの非球面レンズ要素を参照して説明したように、ブランクプレスの一般的な製造方法を使用して、非球面レンズ要素を製造することができる。したがって、第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、特に、ブランクプレスに適する低遷移温度を有するガラスから形成することができる。したがって、「低Tgガラス」として既知のガラスを使用することが可能である。
【0031】
第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、周縁に向かって強い進展性を有する光学屈折力を有する少なくとも1つの非球面を更に備えることができる。ここで、第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素のフィールド周縁でのビームの屈折力は、フィールド中心でのビームの屈折力の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍であることができる。第2の複合レンズの非球面レンズ要素の場合と同様に、この携帯の少なくとも1つの非球面レンズ要素は主に、センサへの最も外側のビームの入射角を制限値26°未満に保つという要件から生じる。
【0032】
第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素をビーム方向に沿ったカメラレンズの画像側の最後のレンズ要素として配置することが更に可能である。統合カメラレンズを有するコンパクトカメラでは、この非球面レンズ要素は通常、センサの前に直接、固定して設置される。相互交換可能なレンズを使用する場合、前記非球面レンズ要素は、カメラレンズの構成要素のままである。
【0033】
本発明によるカメラレンズの構成によれば、第3の複合レンズの少なくとも1つの非球面レンズ要素は、双非球面レンズ要素であることができ、第3の複合レンズは、特に、専ら双非球面レンズ要素からなることができる。第3の複合レンズに1つのみのレンズ要素を使用することにより、カメラレンズの質量及び長さが低減される。
【0034】
本発明によるカメラレンズの一構成によれば、第1のレンズ要素での入射瞳の位置は、x/L≦0.2により与えられ、式中、xは、第1のレンズ要素の頂点から入射瞳の中心までの距離を表し、Lはカメラレンズの構造長を表す。商x/Lは、好ましくは、多くとも0.2であり、特に好ましくは多くとも0.1である。この構成は、特に、更に上記で既に説明したように、光学アタッチメントと一緒のカメラレンズの使用に関して有利である。
【0035】
本発明によるカメラレンズは、特に、光学アタッチメントと一緒に使用するように設計される。光学アタッチメントは、ここでは、広角光学又は遠隔光学アタッチメントである。光学アタッチメントと併せた使用可能性は、本発明によるカメラレンズの2つの特徴により保証される。第1に、内部合焦は、開口絞りの背後のレンズ要素移動により実行され、その理由は、その場合、入射瞳の位置が、合焦中、一定のままであり、したがって、光学アタッチメントが、合焦設定に強く依存する誤差成分を生成しないためである。第2に、主レンズの入射瞳は第1のレンズ要素のかなり近傍に配置される。その結果、光学アタッチメントの所要直径は、光学アタッチメントが撮像ビームを更にトリミングさせずに最小化することができる。追加のトリミングは、ビネットとも呼ばれる。追加のトリミングは、センサによりなお検出可能な周辺光線が、カメラレンズの前の追加の光学ユニットによりブロックされる場合、生じる。したがって、本発明は、前に接続される光学アタッチメントと一緒の本発明によるカメラレンズの使用にも関する。
【0036】
本発明は、本発明によるカメラレンズを有するスチル又はフィルムカメラに更に関する。本発明によるスチル又はフィルムカメラにより得られる利点は、上述した本発明によるカメラレンズの利点から導出することができる。
【0037】
本発明の更なる特徴、特性、及び利点は、添付図を参照して以下の例示的な実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】無限への合焦設定を有する第1の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1を示す。
【
図2】近接設定限度30cmへの合焦設定を有する第1の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1を示す。
【
図3】第1の例示的な実施形態のカメラレンズ1の画像高さに依存する変調伝達関数を示す。
【
図4】第1の例示的な実施形態のカメラレンズ1の球面収差、非点収差、及び歪みを示す。
【
図5】第1の例示的な実施形態のカメラレンズ1の横色収差図を示す。
【
図6】第1の例示的な実施形態のカメラレンズ1の横色収差図を示す。
【
図7】無限への合焦位置での第2の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1を示す。
【
図8】近接設定限度23cmへの合焦を有する第2の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1を示す。
【
図9】画像高さに依存する第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の変調伝達関数を示す。
【
図10】第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の球面収差、非点収差、及び歪みを示す。
【
図11】第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の横色収差図を示す。
【
図12】第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の横色収差図を示す。
【
図13】レンズ及び任意選択的なレンズアタッチメントを有するカメラの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
フルフレームセンサを有するカメラで最高画質を有するコンパクトカメラレンズ1の2つの例示的な実施形態について、図を参照して以下に説明する。
【0040】
本発明は、フルフレームセンサ102を有するカメラ100のカメラレンズ1を提供する。カメラレンズ1及び任意選択的な光学アタッチメント104を有するカメラ100は、
図13に概略的に示されている。任意選択的な光学アタッチメント104は、ここでは、広角光学アタッチメント又は遠隔光学アタッチメントであることができる。カメラレンズ1は、かなりコンパクトであり、最高画質を有する。フルフレームセンサと呼ばれるセンサは、イメージサークル直径43.2mmを有するセンサ102である。
【0041】
カメラレンズ1は3つの複合レンズ10、20、30を有し、そのうちの第1の複合レンズ10は、物体側に繋がり、1つ又は複数のレンズ要素を備え、凸屈折
力を有する。第1の複合レンズ10は、画像側で、第2の複合レンズ20に続く。第2の複合レンズ20は少なくとも2つのレンズ要素21、22を備え、レンズ要素21、22は、両方向矢印により
図13に示されるように、光軸50に沿って移動可能に配置される。第3の複合レンズ30が、画像側で第2の複合レンズ20に続き、センサ側で終わるカメラレンズ1の複合レンズを表す。第3の複合レンズ30は、少なくとも25mmの直径を有し、光軸50の長手方向に固定して配置される少なくとも1つの非球面レンズ要素31を備える。開口絞り40が、第1の複合レンズ10と第2の複合レンズ20との間に配置される。
【0042】
本発明によるカメラレンズ1の第1の具体的で例示的な実施形態を
図1に示す。
図1でのカメラレンズ1は、f値2.0及び焦点距離35mmを有する8つのレンズ要素を有する変形を有する。第1の例示的な実施形態のカメラレンズ1の構造長は、単に57mmであり、第1のレンズ要素から画像センサまで光軸50上のレンズ要素の頂点に沿って測定される。フルフレームセンサを有するカメラのカメラレンズ1についてここで測定される57mmは、フルフレームセンサ及び同様の画質を有するカメラのカメラレンズと比較して、極めてコンパクトである。第1の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1は、構造長がイメージサークル直径の1.5倍以下に制限されるという、導入部で言及した要件を満たす。イメージサークル直径は43.2mmであるため、特にコンパクトなカメラレンズ1は、構造長64.8mmを超えるべきではない。第1の例示的な実施形態の本発明によるカメラレンズ1は、構造長57.00mmを有する。
【0043】
図1に示されるカメラレンズ1は、8つのレンズ要素を有する。前記8つのレンズ要素は、3つの複合レンズ10、20、30に分けられる。第1の複合レンズ10は3つのレンズ要素を有し、一方、第2の複合レンズ20は4つのレンズ要素を有し、第3の複合レンズ30は、1つのみのレンズ要素を有する。開口絞り40が、第1の複合レンズ10と第2の複合レンズ20との間に配置される。第1の複合レンズ10及び第3の複合レンズ30の1つのレンズ要素は両方とも、光軸50に対して移動不可能に配置される。他方、第2の複合レンズ20は、光軸50に対して移動可能に配置される。
【0044】
第1の複合レンズ10は、3つのレンズ要素からなり、画像側部分複合レンズ12及び物体側部分複合レンズ11と呼ばれる2つの部分複合レンズに細分される。物体側部分複合レンズ11は、2つのレンズ要素、特に物体側両凹レンズ要素及び画像側両凸レンズ要素を備える。両レンズ要素は一緒に接着される。第1の複合レンズ10の物体側部分複合レンズ11の2つの接着されたレンズ要素は、凹すなわち負の合計屈折力を有する。
【0045】
第1の複合レンズ10の画像側部分複合レンズ12は、第1の例示的な実施形態では、1つのみの凸レンズを備える。前記1つの凸レンズは両凹レンズ要素であり、画像側曲率半径は、物体側曲率半径の数倍である。
【0046】
第1の複合レンズ10は、開口絞り40を物体側に撮像する。第1の複合レンズの屈折力は、ここでは、カメラレンズの合計屈折力の1.415倍である。第1の複合レンズ10が光軸50に対して移動不可能に配置されることに起因して、入射瞳と呼ばれる開口絞り40の物体側撮像は、位置及びサイズに関して光軸50に対して一定である。光学アタッチメントを使用する場合、それにより、物体距離に伴って変化する画像収差が回避される。仮に入射瞳の位置が変わる場合、光学アタッチメントの合焦設定依存画像収差は、この状況で発生し、入射瞳の位置により「誘導される撮像誤差」も参照され、その理由は、入射瞳の位置を変えることにより、画像に寄与するビーム路の経路が、光学アタッチメントに起因して変化するためである。可動式光学要素が光学アタッチメントに提供されていないため、前記画像収差の補償は不可能である。
【0047】
カメラレンズ1の入射瞳は、第1の複合レンズ10の物体側部分複合レンズ11の物体側両凹レンズ要素近傍の物体側に配置される。したがって、光学アタッチメントの所要直径は、撮像ビームが、ビネットと呼ばれる光学アタッチメントによる追加のトリミングを受けずに最小化することができる。
【0048】
この例示的な実施形態では、開口絞り40は光軸50に対して固定して配置され、その結果、開口絞り40により入射瞳の位置及びサイズのいずれの変更も生じない。
【0049】
この例示的な実施形態では、第2の複合レンズ20は、既に述べたように、4つのレンズ要素を有する。そして、前記第2の複合レンズ20は、2つの部分複合レンズ、特に物体側部分複合レンズ21及び画像側部分複合レンズ22に分けることができる。物体側部分複合レンズ21は2つのレンズ要素を備える。2つのレンズ要素のうちの物体側レンズ要素は、両凹レンズ要素であり、一方、2つのレンズ要素のうちの画像側レンズ要素は、メニスカスレンズ要素としても知られる凹-凸レンズ要素である。本第1の例示的な実施形態では、凹-凸レンズ要素は、正メニスカスレンズ要素である。正メニスカスレンズ要素のより小さな曲率半径を有する面は、物体に面する。両凹レンズ要素及び正メニスカスレンズ要素は一緒に接着される。2つの接着されたレンズ要素の合計屈折力は、負又は凹である。
【0050】
第2の複合レンズ20の画像側部分複合レンズ22も、2つのレンズ要素を備える。部分複合レンズ22のうちの物体側レンズ要素は、両凸レンズ要素であり、そのうちの曲率が強いほうは、物体の方向に面する。前記部分複合レンズ22のうちの画像側レンズ要素は、ここでも、正メニスカスレンズ要素である。画像側部分複合レンズ22の両レンズ要素は、間に比較的大きな距離を有し、一緒に接着されない。合焦中、2つのレンズ要素間の距離は一定に保たれる。画像側部分複合レンズの合計屈折力は、正又は凸である。
【0051】
第3の複合レンズ30は、第1の例示的な実施形態では、1つのみのレンズ要素を備える。前記1つの凹-凸レンズ要素は特別な負メニスカスレンズ要素である。負メニスカスレンズ要素は更に、凸面に平坦エリアを有し、その平坦凸面はセンサに面する。この例示的な実施形態では、1つのメニスカスレンズ要素は、レンズが相互交換可能レンズではない限り、センサの前に固定して設置することができる。このメニスカスレンズ要素は、センサ2において望まれる射出瞳位置を設定するように機能する。
【0052】
第2及び第3の複合レンズ、すなわち、開口絞り後の全てのレンズ要素の合計屈折力は、カメラレンズの合計屈折力の-1.055倍である。
【0053】
第1の例示的な実施形態では、2つの双非球面レンズ要素23、31が使用される。双非球面レンズ要素23は、第2の複合レンズ20の画像側部分複合レンズ22に使用される。この複合レンズ22の画像側レンズ要素23は、上述した正メニスカスレンズ要素23の携帯の双非球面レンズ要素23である。更なる双非球面レンズ要素31が第3の複合レンズ30に使用される。この1つのレンズ要素31は、負メニスカスレンズ要素31の形態の双非球面レンズ要素31である。
【0054】
本例示的な実施形態での2つの非球面レンズ要素23、31は、非球面AF13、AF14、AF15、及びAF16において、表面の少なくとも光学的使用領域に変曲点を有さず、特に表面全体に変曲点を有さない形状を有する。非球面の入射角は、各表面のどこでも60°未満である。したがって、非球面レンズ要素23、31は、ブランクプレスのカスタム製造方法により製造することができる。前記ブランクプレスは「成形」と呼ばれることもある。さらに、非球面レンズ要素23、31は、ブランクプレスに適する低遷移温度を有するガラスから形成される。「低Tgガラス」は、ここでは、前記非球面レンズ要素23、31に使用される。
【0055】
さらに、非球面レンズ要素23、31の表面AF13及びAF16はそれぞれ、周縁に向けて強い進展性を有する光学屈折力を有する。フィールド周縁での光学ビームについて非球面レンズ要素23、31の周縁に向けて強い進展性を有する各非球面の屈折力は、フィールドの中心でのビームの少なくとも5倍、好ましくは10倍である。
【0056】
図2は、第1の例示的な実施形態と同じカメラレンズ1を示す。
図1では、カメラレンズ1は無限に合焦しており、一方、
図2のカメラレンズ1は30cmという近接設定限度に設定されている。近接設定限度は、物体とセンサとの間の距離として与えられる。第1の複合レンズ10、第3の複合レンズ30、及び開口絞り40が、光軸50に対して移動不可能に配置されるということに起因して、第2の複合レンズ20に関してのみ、カメラレンズ1において相違を見ることができる。第2の複合レンズ20の物体側部分複合レンズ21及び画像側部分複合レンズ22は両方とも、物体の方向に移動された。しかし、2つの部分複合レンズ21、22の各変位路は異なる。本例示的な実施形態では、画像側部分複合レンズ22の変位路は、物体側部分複合レンズ21の変位路よりも大きい。カメラレンズ1を近接設定限度30cmに合焦する場合、両部分複合レンズ21、22は、無限に合焦する場合よりも一緒により近い。
【0057】
第2の複合レンズ20の物体側部分複合レンズ21及び画像側部分複合レンズ22の構成は、高速合焦を可能にする。この場合、100ms未満の合焦時間が達成される。したがって、カメラレンズ1は、大きな物体距離範囲にわたり高速内部合焦を有する。加えて、高画質が近接設定範囲で保持される。本例示的な実施形態で移動されるべきレンズ要素の質量は、最大重量20g~30gを有する。
【0058】
加えて、
図1及び
図2は、カメラレンズ1とセンサ2との間の2つのフィルタ60を示す。前記フィルタ60は、カメラレンズ1の部分ではなく、レンズの設計での厚さ及び屈折率に関して考慮される。
【0059】
図3は、画像高さにわたる変調伝達関数(MTF)をプロットした図を示す。
図3のこの図は、パラメータ「1mm当たりの線対数」に依存する変調伝達関数の3つの曲線対を示す。パラメータ「1mm当たりの線対数」は、各曲線対の特定の値で一定に維持される。第1の曲線対は、1mm当たり20線対の場合の変調伝達関数をプロットし、第2の曲線対は、1mm当たり40線対の場合の変調伝達関数をプロットし、一方、第3の曲線対は、1mm当たり80線対の場合の変調伝達関数をプロットする。個々の各曲線対は2つの更なる曲線からなる。2つの曲線のうちの第1の曲線は、入射光のサジタル成分を示し、一方、第2の曲線は入射光の接線成分を示す。
【0060】
MTF曲線は、1mm当たり80線対において、ひいてはより低い全ての空間周波数において、画像高さ12mmまで(垂直フレームエッジ)又は18mm(水平フレームエッジ)まで、各事例で、通常少なくとも50%の高コントラストが存在し、これが、最も外側の画像隅(画像高さ>18mm)に向かってのみ低下することを示す。接線成分のみが、約5mm画像高さ~10mm画像高さの領域内でわずかに低下する値を有する。そのようなコントラストの低下は、18mmを超える画像高さは、センサ表面の極めて小さな部分のみ、特に最も外側の画像の隅のみを表すため、実際には許容可能である。
【0061】
1mm当たり20線対を有する曲線対は、0mm~約16mmの画像高さ領域で約90%のコントラストを有する。入射光のサジタル成分及び接線成分の違いはごく僅かである。
【0062】
サジタル成分及び接線成分のいくらかより大きな隔たりが、1mm当たり40線対を有する曲線対で見出すことができる。ここで、サジタル成分は80%をわずかに超えるコントラストを有し、接線成分は80%をわずかに下回るコントラストを有する。これは特に、0mm~11mmの画像高さに該当する。両成分は、11mm~16mm画像高さで同様のコントラストを有する。ここで、曲線は80%線に非常に近い。
【0063】
画像高さ0mm~10mmの領域での1mm当たりの80線対での曲線対の場合でのコントラスト差は、その他の曲線対と比較して最大であるが、11mmと16mmの画像高さ間のサジタル成分及び接線成分のコントラストは略同一である。両曲線はここでは、約55%のコントラストを有する。
【0064】
その結果、カメラレンズ1は、画質が、開口絞り40でのフルレンズ開口2.0で極めて高レベルであるという導入部で述べた要件を満たす。カメラレンズ1又は開口絞り40を4.0に絞る場合、コントラストは更に増大し、その結果、その場合、カメラレンズ1は略回折制限で撮像する。
【0065】
図4は、典型的な画像収差表現を示す。球面収差が、
図4の左側の図に示されている。球面収差を説明するために、入射の高さは、背面焦点距離差又は焦点の関数として与えられる。この図では、球面収差は、可視光の様々な波長について表された。この場合、404.6561nm~656.2725nmの可視光範囲で充分である。
図4の左側の図での球面収差の良好は補正が当業者には分かる。より小さな波長の領域を除き、球面収差は極めて良好に補正された。
【0066】
非点収差は、
図4の中央の図に示されている。非点収差を低減するために、画像高さは、背面焦点距離差又は焦点の関数としてプロットされている。非点収差がより大きな波長の可視光で極めて良好に補正されたことが分かる。非点収差は、より小さな波長の可視光でのみより顕著である。可視光の使用される波長範囲は、左側の図と同一である。
【0067】
図4の右側の図は、画像高さにわたる歪みのプロファイルをプロットしている。この図で、歪みの良好な補正を見て取ることができる。歪みの波長依存変化は、倍率色収差CDMに対応し、これは多くの場合、「横色収差」と呼ばれる。したがって、見て取ることができるのは、0.5%(あらゆる波長で)という極めて低い歪みに加えて、レンズが極めて低いCDMのみを有することである。CDMが大きいほど、高コントラストエッジでの目障りな色縁により画像で目立つようになる。可視光の使用される波長範囲は、左側の図と同一である。
【0068】
典型的な横色収差図の関連図を
図5及び
図6に示す。
図5及び
図6の図は、入射光の接線成分及びサジタル成分を示す。ここで使用される波長は、404.6561nm~656.2725nmの範囲である。光学分野の当業者はここから、アパーチャ及びフィールドにわたる画像収差のプロファイルを読み取ることができる。
図5及び
図6は、色画像収差の特に良好な補正を示す。
【0069】
以下の表1は、レンズに関連する基本構造データを列挙する。レンズ要素AF2~AF20の表面は
図1及び
図2に示されている。
【0070】
【0071】
行は、上から下に、
図1又は
図2に対応するレンズ要素の表面番号を示す。列は、左から右に、表面タイプ(球面又は非球面)、表面曲率の頂点半径、続く表面からの距離(エアギャップ又はレンズ要素厚)、製造業者情報と共に使用される光学ガラスの商標名、及び光学的使用表面の半径を示す。
【0072】
光学ユニットの焦点距離は、無限に等しい物体距離において厳密に35.00mmである。他の物体距離への合焦中、表面AF7、AF10、及びAF14間のエアギャップは、表2に従って変化する(補間は、それに従って、明示的に記載される距離間で実行されるべきである)。以下の表中の表面0は、物体平面である。
【0073】
【0074】
4つの表3、表4、表5、表6は、頂点形態の定義式に従った非球面の係数を与える。ここで、表3は、第1の例示的な実施形態の表面AF13の非球面係数を示し、表4は、第1の例示的な実施形態の表面AF14の非球面係数を示し、表5は、第1の例示的な実施形態の表面AF15の非球面係数を示し、表6は、第1の例示的な実施形態の表面AF16の非球面係数を示す。
【0075】
頂点形態は、式:
【数1】
により記述され、式中、zはサグであり、Rはレンズ要素の頂点曲率半径であり、rは、
【数2】
である半径距離であり、kは円錐曲線であり、A、B、C、D、E、F、G、H、Jは、各次数の変形係数である。球面レンズでは、A=B=C=D=E=F=G=H=J=0であり、k=0である。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
図7は、本発明によるカメラレンズ1の第2の具体的で例示的な実施形態を示す。第2の例示的な実施形態は、同様にf値2.0及び焦点距離35mmを有する9つのレンズ要素を有する変形を示す。定義、名称、及び画像は、第1の例示的な実施形態と同様である。9つのレンズ要素を有する構造は、第1の例示的な実施形態の構造よりもわずかに大きな構造長60cmを有する。その結果、第2の例示的な実施形態も、構造長がイメージサークル直径の1.5倍以下に制限される、フルフレームセンサを有するカメラのコンパクトカメラレンズ1に関する、導入部に記載したような条件を満たす。第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1は、第1の例示的な実施形態とは異なる屈折
力分布を前部対物レンズ群において有する。これは、許容差により誘導される画質低下の低減を可能にすることができる。
【0081】
第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1は、9つのレンズ要素を備え、9つのレンズ要素は3つの複合レンズ10、20、30に分けられる。第2の例示的な実施形態での第1の複合レンズ10は、4つのレンズ要素を備える。前記複合レンズは、第1の例示的な実施形態と同様に、2つの部分複合レンズ11、12に分けられる。物体側部分複合レンズ11は、2つのレンズ要素を備える。2つのレンズ要素のうちの物体側レンズ要素は、両凹レンズ要素であり、一方、2つのレンズ要素のうちの画像側レンズ要素は、両凸レンズ要素である。両レンズ要素は、一緒に接着され、負屈折力、すなわち凹屈折力を有する。第1の複合レンズ10の画像側部分複合レンズ12も2つのレンズ要素を備える。2つのレンズ要素のうちの物体側レンズ要素は、両凹レンズ要素である。曲率半径が小さいほうの両凹レンズ要素の光学表面は、物体に面する。2つのレンズ要素のうちの画像側レンズ要素は、両凸レンズ要素である。画像側部分複合レンズ12の2つのレンズ要素は、一緒に接着されず、接着に必要な2つのレンズ要素の表面は、異なる曲率半径を有する。第1の複合レンズの屈折力は、カメラレンズの合計屈折力の0.896倍である。
【0082】
第1の例示的な実施形態と同様に、第2の例示的な実施形態での第2の複合レンズ20も4つのレンズ要素を有する。そして、前記4つのレンズ要素は、2つの部分複合レンズ21、22に分けられる。第2の例示的な実施形態での物体側部分複合レンズ21は、2つのレンズ要素を備える。2つのレンズ要素のうちの物体側レンズ要素は、両凹レンズ要素であり、一方、2つのレンズ要素のうちの画像側レンズ要素は、両凸レンズ要素である。両レンズ要素は、一緒に接着され、負すなわち凹の合計屈折力を有する。
【0083】
第2の複合レンズ20の画像側部分複合レンズ22も2つのレンズ要素を備える。2つのレンズ要素のうちの物体側レンズ要素は、凸レンズ要素であり、曲率半径が小さいほうの光学表面は、物体に面する。2つのレンズ要素のうちの画像側レンズ要素は、正メニスカスレンズ要素であり、その凹光学面は物体に面する。第2の複合レンズ20の画像側部分複合レンズ22の2つのレンズ要素は、有限距離を有する。カメラレンズ1が合焦中のレンズ要素の移動中、この距離は一定のままである。
【0084】
第3の複合レンズ30は、第1の例示的な実施形態と同様に、1つの負メニスカスレンズ要素を備える。負メニスカスレンズ要素の凹光学面は、物体に面する。この例示的な実施形態でも、1つのメニスカスレンズ要素は、レンズが相互交換可能レンズではない限り、センサ2の前に固定して設置することができる。このメニスカスレンズ要素は、センサ2において望まれる射出瞳位置を設定するように機能する。
【0085】
第2及び第3の複合レンズの合計屈折力は、カメラレンズの合計屈折力の-0.176倍である。
【0086】
第1の複合レンズ10のレンズ要素及び第3の複合レンズ30の1つのレンズ要素は、光軸50に対して移動不可能に配置される。さらに、開口絞り40は、第1の複合レンズ10と第2の複合レンズ20との間に配置される。この開口絞り40も光軸50に対して移動不可能に配置される。
【0087】
第1の例示的な実施形態と同様に、2つの双非球面レンズ23、31 BF15、BF16、BF17、BF18も第2の例示的な実施形態において使用される。双非球面レンズ要素23はここでは、第2の複合レンズ20の画像側部分複合レンズ22に使用され、他の双非球面レンズ要素31は第3の複合レンズ30に使用される。
【0088】
本例示的な実施形態での2つの非球面レンズ要素23、31は、非球面において、表面の少なくとも光学的使用領域に変曲点を有さず、特に表面全体に変曲点を有さない形状を有する。非球面の入射角は、各表面のどこでも60°未満である。したがって、非球面レンズ要素23、31は、ブランクプレスのカスタム製造方法により製造することができる。さらに、非球面レンズ要素23、31は、ブランクプレスに適する低遷移温度を有するガラスから形成される。「低Tgガラス」は、ここでは、前記非球面レンズ要素23、31に使用される。
【0089】
さらに、各事例での本例示的な実施形態での双非球面レンズ要素23、31は、表面BF15及びBF18を有し、これらの表面は、周縁に向かって強い進展性を有する光学屈折力を示す。フィールド周縁での光学ビームに使用される非球面レンズ要素23、31の周縁に向けての強い進展性を有する非球面の屈折力は、フィールド中心でのビームの5倍である。
【0090】
図8は、
図7と同様の第2の例示的な実施形態の同じカメラレンズ1を示す。
図7では、カメラレンズ1は無限に合焦されるが、一方、
図8のカメラレンズ1は30cmの焦点に設定される。
【0091】
図8では、第2の複合レンズ20のみが、
図7と比較して移動した。第1の例示的な実施形態と全く同じように、第2の複合レンズ20の2つの部分複合レンズ21、22の変位路は、大きさが異なる。画像側部分複合レンズ22の変位路は、物体側部分複合レンズ21の変位路よりも大きい。無限から23cmへの合焦中、両部分複合レンズ21、22は同じ方向に移動する。第1の例示的な実施形態と同様に、2つの部分複合レンズ21,22は、無限への合焦中よりも、カメラレンズ1の30cmへの合焦中、一緒により近くに配置される。
【0092】
加えて、
図7及び
図8は、カメラレンズ1とセンサ2との間の2つのフィルタ60を示す。しかし、前記フィルタ60はカメラレンズ1の部分ではない。
【0093】
図9は、第2の例示的な実施形態での画像高さにわたる変調伝達関数を示す。ここでも、この図は、異なる「1mm当たりの線対」数での3つの曲線対を示す。第1の曲線対は、1mm当たり20線対での変調伝達関数の依存性を示す。第2の曲線対は、1mm当たり40線対での変調伝達関数の依存性を示す。第3の曲線対は、1mm当たり80線対での変調伝達関数の依存性を示す。
図3と同様に、曲線対のうちの一方の曲線は、入力素は高のサジタル成分を示し、第2の曲線は入射光の接線成分を示す。画像高さの大きな個々の曲線での降下の顕著さは、第1の例示的な実施形態よりも第2の例示的な実施形態において低い。
【0094】
特に1mm当たり20線対での曲線対は、0mm~15mmの画像高さ領域で一定値90%を有する。ここでのサジタル成分及び接線成分は略同じ値を有する。
【0095】
1mm当たり40線対及び1mm当たり80線対を有する他の曲線対では、サジタル成分は常により高いコントラストを示す。サジタル成分及び接線成分間の値は大半は同様である。
【0096】
1mm当たり20線対を有する曲線対は、約90%のコントラストを示す。1mm当たり40線対を有する曲線対は、0mm~15mmの画像高さ領域で77%の平均コントラストを示す。1mm当たり80線対を有する曲線対は、0mm~16mmの画像高さ領域で少なくとも50%のコントラストを有する。
【0097】
その結果、カメラレンズ1は、画質が、開口絞り40でのフルレンズ開口2.0で極めて高レベルであるという導入部で述べた要件を満たす。
【0098】
図10の左側の図は、第2の例示的な実施形態でのカメラレンズ1での球面収差を示す。球面収差を説明するために、入射の高さは背面焦点距離差又は焦点の関数として与えられる。さらに、球面収差は、可視光の様々な波長に依存して示される。ここで、波長は404.6561nm~656.2725nmである。第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の球面収差は、可視光のより長い波長で極めて良好に補正される。
【0099】
第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の非点収差は、
図10の中央の図においてよく見ることができる。可視光の異なる波長では、非点収差が可視光のより大きな波長と比較して非常に良好に補正されたことが分かる。使用された波長の範囲は、左側の図と同一である。
【0100】
第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の歪みは、
図10の右側の図での画像高さにわたりプロットされる。第1の例示的な実施形態と比較してここで分かることは、この例示的な実施形態では、歪みがより低く、極めて良好に補正されることである。第1の例示的な実施形態と比較して、第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1は、歪みの補正において、可視光の波長にわずかにより多く依存する。使用される波長の範囲は、左側の図と同一である。
【0101】
図11及び
図12は、第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1の典型的な横色収差図を示す。
【0102】
表7は、第2の例示的な実施形態のカメラレンズ1に関する基本構築データを与える。表のセットアップは、第1の例示的な実施形態からの表のセットアップに対応する。レンズ要素BF2~BF22の表面が
図7及び
図8に示される。
【0103】
【0104】
光学ユニットの焦点距離は、無限に等しい物体距離において厳密に35.00mmである。他の物体距離への合焦中、表面BF9、BF12、及びBF16間のエアギャップは、表7に従って変化する(補間は、それに従って、明示的に記載される距離間で実行されるべきである)。以下の表8中の表面0は、物体平面である。
【0105】
【0106】
非球面の関連する係数が、頂点形態の定義式に従って表9、表10、表11、表12に与えられる。ここで、表9は、第2の例示的な実施形態の表面BF15の非球面係数を示し、表10は、第2の例示的な実施形態の表面BF16の非球面係数を示し、表11は、第2の例示的な実施形態の表面BF17の非球面係数を示し、表12は、第2の例示的な実施形態の表面BF18の非球面係数を示す。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
本発明について、説明を目的として例示的な実施形態に基づいて詳細に説明した。ここで、異なる例示的な実施形態の個々の特徴を互いに組み合わせることも可能であり、したがって、本発明は、特定の例示的な実施形態で開示された特徴の組合せに限定されるべきではない。加えて、例示的な実施形態から逸脱することが可能である。例えば、各事例で、少なくとも1つのレンズ要素が第1の複合レンズ及び第3の複合レンズに存在し、少なくとも2つのレンズ要素が第2の複合レンズに存在する限り、8未満又は9未満のレンズ要素が存在し得る。したがって、本発明は、例示的な実施形態に限定されることは意図されず、むしろ、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
1 カメラレンズ
2 センサ
10 第1の複合レンズ
20 第2の複合レンズ
30 第3の複合レンズ
40 開口絞り
50 光軸
60 フィルタ
11 第1の複合レンズの物体側部分複合レンズ
12 第1の複合レンズの画像側部分複合レンズ
21 第2の複合レンズの物体側部分複合レンズ
22 第2の複合レンズの画像側部分複合レンズ
23 第2の複合レンズの非球面レンズ要素
31 第3の複合レンズの非球面レンズ要素
AF2~AF20 第1の例示的な実施形態でのレンズ要素表面
BF2~BF22 第2の例示的な実施形態でのレンズ要素表面