(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】装着型血液潅流デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
A61M1/36 163
A61M1/36 165
(21)【出願番号】P 2017515161
(86)(22)【出願日】2015-09-21
(86)【国際出願番号】 US2015051239
(87)【国際公開番号】W WO2016048901
(87)【国際公開日】2016-03-31
【審査請求日】2018-09-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-22
(32)【優先日】2014-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516315694
【氏名又は名称】エクスセラ メディカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エス.ウォード
(72)【発明者】
【氏名】キース アール.マックレア
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】内藤 真徳
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0012097(US,A1)
【文献】国際公開第2013/188073(WO,A1)
【文献】実開昭54-127493(JP,U)
【文献】特表2012-501708(JP,A)
【文献】特表2002-509518(JP,A)
【文献】特表2005-519744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36 163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毒素及び/又は病原体に感染した個体の血液から前記毒素及び/又は病原体を体外で除去するための、ポンプを伴わない携帯型及び/又は装着型デバイスであって、前記デバイスは
:
フィルターを有する、シングルニードル静脈ライン
チューブを伴う
血液バッグを備え、前記
フィルターは吸着媒体を備え、
かつ前記静脈ラインチューブに挿入されており、
前記吸着媒体は、前記毒素及び/又は病原体に対する結合親和性又は結合部位を持つ少なくとも一つの多糖類吸着剤を面上に有する高表面積の固体基板であり、血流が前記吸着媒体に接触すると、前記毒素及び/又は病原体が前記少なくとも一つの多糖類吸着剤上の結合部位に結合して血液から分離される、前記携帯型及び/又は装着型デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも一つの多糖類吸着剤が、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、シアル酸、マンノース配列を有する炭水化物、キトサン及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の携帯型及び/又は装着型デバイス。
【請求項3】
前記固体基板が複数の硬質ポリマービーズを備える、請求項1に記載の携帯型及び/又は装着型デバイス。
【請求項4】
前記固体基板が、一つ又は複数の中空ファイバーを備える、請求項1に記載の携帯型及び/又は装着型デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが装着型である、請求項
1に記載の携帯型及び/又は装着型デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の前記デバイス及び取扱説明書を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年2月17日に出願された米国特許仮出願第62/117108号明細書、2014年9月22日に出願された米国特許仮出願第62/053706号明細書の利益を主張するものであり、該仮出願は、参照により本明細書に全体として全ての目的に対し組み込まれる。
【0002】
薬剤耐性生物、治療不可能なウイルスの大流行そして既知及び未知の生物兵器の喫緊の脅威に対し、国内での使用及び軍事利用に対する新たな対策が必要とされている。新たな抗体及びワクチンの開発については、さかんに研究がおこなわれているが、広域スペクトラムの体外療法等のその他の可能性のある対応策については、あまり注力されていない。
【背景技術】
【0003】
非常に広域のスペクトラムの病原体及び毒素を安全に除去可能なデバイスを多種多様の脅威に対して使用可能である。さらに有利な点として、迅速なパフォーマンス、副作用及び関連する毒性のリスクの低減が挙げられる。しかしながら、体外技術の潜在的な不利は、デバイスの携帯性、大規模な保存、及び大惨事が起きた場合に展開及び対応する多大な訓練の必要性である。薬剤にこうした制限は影響を与えないであろうが、創薬および承認のプロセスは非常に遅く、製薬産業は薬剤が利用できない場合の重大な大流行に迅速に単に対応不可能である。
【0004】
当該技術分野において、毒素及び病原体暴露又は感染した患者の血液からそれらを除去可能な自給式装着型体外デバイスのニーズがある。本発明のデバイス及び方法はこのニーズを満たし、さらなる利点を提供する。
【発明の概要】
【0005】
一つの実施形態において、本発明は、毒素及び/又は病原体に感染した個体の血液から前記毒素及び/又は病原体を体外で除去する携帯型及び/又は装着型デバイスを提供する。前記携帯型及び/又は装着型デバイスはカートリッジを備え、前記カートリッジは吸着媒体を備え、前記吸着媒体は、前記毒素及び/又は病原体に対する結合親和性又は結合部位を持つ少なくとも一つの多糖類吸着剤を面上に有する高表面積の固体基板であり、血流が前記吸着媒体に接触すると、前記毒素及び/又は病原体が前記少なくとも一つの多糖類吸着剤上の結合部位に結合して血液から分離される。いくつかの実施形態では、前記デバイスは、ロータリーポンプ等のポンプを含む。他の態様では、前記携帯型及び/又は装着型デバイスは電源及び必要に応じて電子制御モジュールを含む。いくつかの態様では、前記電源は取外し可能である。前記電子制御モジュールは、取外し可能とすることができる。
【0006】
その他の実施形態では、本発明は、携帯型及び/又は装着型体外血液潅流デバイスであって、第一のエンドプレート及び第二のエンドプレートを有する、吸着媒体を備えるカートリッジ、血液を前記デバイスへ流入させるための血液流入口、及び血液を前記デバイスから流出させるための血液流出口を備え、前記血液は前記第一のエンドプレートから前記吸着媒体へと流れて前記血液流出口から流出する、前記デバイスを提供する。
【0007】
さらに他の実施形態では、本発明は、毒素及び/又は病原体に感染した個体の血液中の前記毒素及び/又は病原体を生体外で低減する方法を提供する。前記体外方法は、a) 吸着媒体を備える携帯型及び/又は装着型デバイスへ前記個体から血液を流し、前記吸着媒体及び前記血液中の毒素及び/又は病原体が接着複合体を形成すること、b) 前記接着複合体から前記血液を分離して前記毒素及び/又は病原体が低減した血液を生成すること、及びc) 前記毒素及び/又は病原体が低減した血液を前記個体へ注入又は還流することを含む。
【0008】
いくつかの態様では、前記血液は、全血、血清及び血漿から成る群から選択される。好ましい態様では、前記血液は全血である。いくつかの態様では、前記吸着体は、少なくとも一つの多糖類吸着剤を有する高表面積の固体基板である。いくつかの例では、前記少なくとも一つの多糖類吸着剤は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、シアル酸、マンノース配列を有する炭水化物、キトサン及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。前記固体基板は、複数の硬質ポリマービーズを含むことができる。前記硬質ポリマービーズは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン又はエチレン及び他のモノマーの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレン及びポリイソブチレから成る群から選択できる。もしくは、前記固体基板は、一つ又は複数の中空ファイバーを含むことができる。いくつかの態様では、前記方法で使用される前記デバイスは、ポンプも備える。
【0009】
いくつかの態様では、前記携帯型及び/又は装着型デバイスは血液バッグである。
【0010】
いくつかの態様では、本明細書に記載の前記方法を実施することにより、前記血液中の前記毒素又は病原体が約10%~約100%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又は約100%低減する。いくつかの態様では、前記血液の前記病原体が、約10%~約100%、例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又は約100%低減する。
【0011】
いくつかの態様では、前記毒素が、ボツリヌス菌毒素、トウゴマ由来のリシン毒素、ウェルシュ菌のイプシロン毒素、志賀毒素及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。いくつかの態様では、前記病原体が、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、チャパレウイルス、Lugoウイルス、デング熱ウイルス、Garisウイルス、イレシャウイルス、リフトバレー熱ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、黄熱病ウイルス、ソウルウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、スカンジナビア流行性腎症ウイルス、ハンタウイルス、天然痘ウイルス、炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。他の態様では、前記病原体が、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、デング熱ウイルス、天然痘ウイルス、炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌及びそれらの組み合わせである。
【0012】
いくつかの態様では、前記少なくとも一つの多糖類吸着剤が、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、シアル酸、マンノース配列を有する炭水化物、キトサン及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。前記固体基板は、複数の硬質ポリマービーズを含むことができる。前記硬質ポリマービーズは、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン又はエチレン及び他のモノマーの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレン及びポリイソブチレから成る群から選択できる。もしくは、前記固体基板は、一つ又は複数の中空又は固体ファイバーを含むことができる。
【0013】
本明細書ではまた、前記記載の携帯型及び/又は装着型デバイス及び取扱説明書を備えるキットキットが提供される。いくつかの態様では、前記キットは滅菌生理食塩水を含む。前記キットは、ヘパリン等の抗凝固剤又は抗ウイルス薬、抗細菌薬、抗毒素薬等の医薬上効果的な治療薬も含むことができる。
【0014】
上記及び他の態様、目的及び実施形態は以下の詳細な説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、デュアルルーメンカテーテル付きの一体型Seraph(登録商標)ポンプデバイスの好ましい実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、個別の動脈(供給)及び静脈(還流)血液アクセスを有する一体型Seraph(登録商標)ポンプデバイスの好ましい実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図3は、外部ポンプのない装着型Seraph(登録商標)ポンプデバイスの好ましい実施形態の概略図を示す。前記血流は、動脈圧及び静脈圧の差圧によるものである。
【
図4】
図4は、個別の動脈血及び静脈血アクセスを有する一体型Seraph(登録商標)ポンプデバイスの好ましい実施形態の概略図を示す。前記デバイスは、リモート電源及び電子制御装置を有する。
【
図5】
図5は、デュアルルーメンカテーテル付きの一体型Seraph(登録商標)ポンプデバイスの好ましい実施形態の概略図を示す。前記デバイスは、リモート電源及び電子制御装置を有する。
【
図6】
図6は、ろ過カートリッジを含む前記病原体及び毒素吸着媒体の好ましい実施形態の概略図を示す。前記カートリッジは、円筒形610、起伏形状620又はレンガ形状630である。
【
図7】
図7A及び7Bは、ハードウェア又は器具類のない本発明のデバイス及び治療を図示する。
図7Aは、フィルターを介した血液採取を図示する。
図7Bは、本発明のフィルターを介した精製された血液の自己血輸血を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は一つには、毒素及び/又は病原体に感染した又は汚染された血液からそれらを除去するための携帯型及び/又は装着型体外デバイス及び方法に関する。前記方法は、前記対象者の血液から分離可能な前記毒素及び/又は病原体に結合する吸着媒体の使用を含む。前記毒素及び/又は病原体を含まない血液を連続的に又は断続的に前記対象者へ再注入可能である。
I.定義
【0017】
下記用語は特に記載のない限り本明細書に記載の意味を有する。
【0018】
用語「体外療法」は、体外で実施される医療行為を意味する。いくつかの例では、体外療法には、血液等の体液を個体から採取し、酸素、血液抗凝固剤、麻酔薬等の望ましい物質を前記体液を個体に戻す前に添加する方法が含まれるが、それに限定されるものではない。他の例では、体外療法は、天然の毒素又は毒物等の望ましくない物質を身体又は体液から除去することを含む。
【0019】
用語「吸着媒体」は、その面上に細胞、生物、ウイルス、毒素、病原体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、化学分子、小分子、生物学的分子又はそれらの断片が接着できる材料を意味する。
【0020】
用語「接着複合体」は、少なくとも2分子の複合体を意味し、第一の分子は基板面に付着(例えば、連結、結合又は固定化)し、第二の分子は前記第一の分子に付着している。
【0021】
用語「高表面積」は、体積比に対し大きな比表面積を有する特性を意味する。
【0022】
用語「吸着剤」は、固体基板に化学的化合物、生物学的分子、又はそれらに付着(例えば、連結、結合又は固定化)する材料を意味する。いくつかの例では、前記吸着剤は、前記固体基板そのものである。一つの実施形態では、吸着剤は多糖類が結合したポリマー樹脂である。
【0023】
用語「硬質ポリマービーズ」は、ポリマー樹脂製のビーズ、粒子、ペレット、球体、粒子、微小カプセル、球体、微小球体、ナノ球体、微小ビーズ、ナノビーズ、微小粒子、ナノ粒子等を意味する。
【0024】
用語「炭水化物」は、炭素、水素及び酸素原子を含む分子を意味し、通常経験式Cx(H2O)yで表され、式中x及びyは異なる数値である。炭水化物の例として、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類が挙げられる。
【0025】
用語「多糖類」は、グリコシド結合により結合した単糖類ユニットの分子を意味し、通常経験式Cx(H2O)yで表され、式中xは200~約3000である。
【0026】
用語「親水性面」は、平坦な面の場合に90°以下の水接触角を有する面を意味する。
【0027】
細菌との関連で、用語「ヘパラン硫酸に対する低親和性」とは、ヘパラン硫酸に対する細菌の低結合親和性を意味する。いくつかの態様では、ヘパラン硫酸に対する結合親和性は、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)等の標準アッセイを用いて測定する。他の態様では、細菌等の前記病原体に発現される、想定されるヘパラン硫酸結合タンパク質の分析等の予測的分析によって、前記結合親和性を測定する。用語「ヘパラン硫酸に対する親和性を持たない」とは、ヘパラン硫酸に対する結合親和性を持たない又は検出可能な親和性よりも低いことを意味する。いくつかの例では、ヘパラン硫酸に対する結合親和性を持たないとは、ヘパラン硫酸に対し予測される結合親和性を持たないことも含まれる。
II.実施形態の詳細な説明
【0028】
一つの態様において、前記装着型血液潅流デバイスは、少なくとも一つの血圧低下最小値に最適化された吸着媒体を有し、動脈圧を吸着ベッド全体の全血の移動に利用し、再度静脈血供給となる。いくつかの態様において、血液ポンプを前記吸着デバイスに直列に設置し、外圧を加えて前記吸着媒体全体に/又は介して血流を増加する。前記ポンプは、必要に応じて前記体外カートリッジと一体化することでサイズ及び重量を低減してもよい。前記カートリッジと一体化した遠心分離ポンプ等のポンプとして、限定されるものではないが、Flow Forward Medical社のArteriovenous Fistula Eligibility (AFE) SystemTM又はHeartWare(登録商標)のCirculite(登録商標) Synergy Pocket Circulatory Assist Device (CAD)が挙げられる。静静脈血アクセスと使用する場合、流入血流を静脈虚脱を防ぐために確立された方法でコントロール可能である。
【0029】
必要に応じて電源及びコンピューター制御装置を、前記デバイスのポンプモジュールに内蔵する。他の態様では、別途装着型電力供給装置を用い、後続のデバイスに接続する場合は必要に応じて再利用する。処分の際は、バッテリー又は電源及びコンピューターモジュールを、処分又は焼却に先立って前記一体化デバイスから取り外す。一体化型ロータリーポンプのカートリッジとして、デュアルルーメンニードル又はカテーテルにより、前記血液を供給及び還流する。シングルルーメンカテーテルを動脈血供給及び静脈血還流、又は静脈血供給及び静脈血還流に使用する。
【0030】
いくつかの態様では、前記血液ラインは、前記吸着媒体を含む前記カートリッジにあらかじめ装着しておく。前記デバイスのホールドアップ容量は最小化可能であり、一定量の滅菌生理食塩水を、回路プライミング及び脱気のために前記一体化デバイスに含めることができる。追加的な安全特性として、限定されるものではないが、静脈血還流ラインバブルトラップ、圧力センサー、及びスクリーンフィルターが挙げられる。全身性の抗凝固コントロールを追加可能であり、ベンチュリ管による液体注入によってコントロールすることも可能である。
【0031】
その他の実施形態では、本発明は、携帯型及び/又は装着型体外血液潅流デバイスであって、第一のエンドプレート及び第二のエンドプレートを有する、吸着媒体を備えるカートリッジ、血液を前記デバイスへ流入させるための血液流入口、及び血液を前記デバイスから流出させるための血液流出口を備え、前記血液は前記第一のエンドプレートから前記吸着媒体を流れて前記血液流出口から流出する、前記デバイスを提供する。
【0032】
図1を参照し、体外血液潅流デバイス100の実施形態を説明する。前記デバイス100は、デュアルルーメンカテーテル又はニードル140、病原体及び毒素吸着媒体110(例えば、Seraph(登録商標) Microbind(登録商標) Affinity Blood Filter、ExThera Medical社、カリフォルニア州バークレー)、前記媒体の上端及び下端に多孔質エンドプレート130及び135、任意の遠心分離ポンプ120と流体連結した二つの血液口150及び160を備える。遠心分離ポンプを収納する前記ユニットは、さらに前記デバイスを制御するバッテリー及び電子機器を含むことができる。流入口150及び流出口160は、血流路に流体連結している。典型的には、前記血液は前記デバイスへ流入し、汚染された血液は汚染が低減または除去された状態で、前記デバイスから流出する。
【0033】
図2を参照すると、動脈血-静脈血アクセス及び病原体/毒素吸着媒体210を有する一体型体外血液潅流デバイス200の実施形態が図示されている。前記デバイス200は、前記デバイスに血液が流入するための動脈カテーテル240及び前記毒素及び/又は病原体を含まない血液が前記デバイスから流出するための静脈カテーテル250を含む。前記血液は、前記デバイスへ流入する際、遠心分離ポンプ220内を移動し、前記カートリッジの病原体/毒素吸着媒体210に接触する前に多孔質エンドプレート235を通過する。前記血液はその後ポンプにより第二の多孔質エンドプレート230を通過し、静脈カテーテル250を介して流出し前記対象者へ還流する。必要時、前記デバイスを、例えば臨床又は病院設定以外の分野で使用可能であることが考えられる。
【0034】
図3に外部ポンプのない装着型体外血液潅流デバイス300の実施形態を示す。前記デバイス300を介する血流は、動脈圧及び静脈圧の差圧により流れる。前記血液は、動脈カテーテル340を介して前記デバイスに流入し、デバイス下部を通過し、その後多孔質エンドプレート330を介して吸着媒体310に接触する。前記精製された血液は、第二の多孔質エンドプレート320を流れた後静脈カテーテル350を介して前記カートリッジから流出し、対象者に再度流入する。いくつかの態様では、こういったデバイスはポンプ、電源又は電子制御装置を持たない。
【0035】
次に
図4は、デュアルルーメンカテーテル450及びリモート電源及び電子機器430を有する装着型、体外血液潅流デバイス400の実施形態を提供する。前記デバイスは、デュアルルーメンカテーテル又はニードル450、遠心分離ポンプ420、吸着媒体410、外部バッテリーパック及び電子機器430を含む。前記感染した又は汚染された血液は、前記カテーテル端及び流入口450を介して前記デバイス400に流入する。前記血液は、リモートバッテリー及び電子機器430に制御及び駆動される前記遠心分離ポンプを通過する。前記血液は、多孔質エンドプレート445を流れて前記吸着媒体410に接触する。前記吸着媒体は、前記血液から毒素及び病原体を除去する。前記処理された血液はその後第二の多孔質エンドプレート440及び流出口470を通過する。前記血液は、前記カートリッジから流出し前記血液ラインを流れ、デュアルルーメンカテーテル又はニードル450を介して前記対象者に再度流入する。バッテリーパック及び電子機器モジュール430を前記カートリッジ及びポンプデバイスから外し、未使用のカートリッジ及びポンプデバイスに組み立て可能である。
【0036】
図5を参照して、別個の動脈血及び静脈血アクセス550、560、リモート電源及び電子機器モジュール530を有する一体化吸着及びポンプデバイス500の実施形態を説明する。前記デバイスは、動脈カテーテル550、静脈カテーテル560、血液ライン、遠心分離ポンプ520、病原体及び毒素吸着媒体510、外部バッテリーパック及び電子機器530を含む。前記感染した又は汚染された血液は、前記動脈カテーテルを介して流入し、前記血液ラインを通過して前記デバイスに流入する。遠心分離ポンプ520は、前記血液を多孔質エンドプレート545を通過させ、吸着媒体510に接触させる。前記処理された血液は、第二の多孔質エンドプレート540を介して流出口から流出する。前記毒素及び/又は病原体を含まない血液は、静脈カテーテル560を介して前記対象者に再度流入する。前記吸着媒体及び前記ポンプを含む前記カートリッジは、前記吸着及びポンプデバイスから分離したバッテリーパック及び電子機器モジュール530によって制御される。バッテリーパック及び電子機器モジュール530は、前記デバイスの他のコンポーネントから取り外して、他のデバイスと共に使用可能である。
【0037】
図6では、
図1~
図5に記載の前記体外装着型血液潅流デバイスで使用される前記カートリッジのいくつかの実施形態を図示する。前記カートリッジは、血液及びいくつかの例ではポンプから毒素及び病原体を除去可能な前記吸着媒体を含む。いくつかの実施形態では、前記カートリッジは、円筒形状610を有する。他の実施形態では、前記カートリッジは、前記デバイスを足又は腕に装着しやすいよう、起伏形状620を有する。さらに他の態様では、前記カートリッジは、保存容量を最適化するようにレンガ様又は長方形の形状630を有する。
A. 吸着媒体
【0038】
小分子毒素用の前記吸着媒体は、活性炭又は血液相溶性にしたサイズ排除クロマトグラフィー樹脂等の微小多孔質媒体とすることができる。ウイルス、細菌、真菌類、又は寄生虫等の病原体吸着媒体は、好ましくは少なくとも一つのヘパリン等の親和性リガンド、ヘパラン硫酸、マンノース、デキストロース、その他の炭水化物、抗体、及びオプソニンン等のその他の付着因子でコーティングされている。その他の非ヘパリン親和性リガンドと共にヘパリンリガンドを含めることにより、前記デバイスの血液相溶性が飛躍的に改善し、前記広範囲のスペクトラム特性が有意に上昇する。
【0039】
前記吸着媒体は前記デバイスの用途によって選択される。例えば、特定の媒体を使用して対象とする病原体を除去する。病原体としては、限定はされないが、例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、チャパレウイルス、Lugoウイルス、デング熱ウイルス、Garisウイルス、イレシャウイルス、リフトバレー熱ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、黄熱病ウイルス、ソウルウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、スカンジナビア流行性腎症ウイルス、ハンタウイルス、及び天然痘ウイルス等のウイルス、炭疽菌、ペスト菌、及び野兎病菌等の細菌、又はボツリヌス菌毒素、トウゴマ由来のリシン毒素、ウェルシュ菌のイプシロン毒素、及び志賀毒素等の毒素が挙げられる。前記ディスポーザブル吸着ベッド又はカートリッジに含まれる前記吸着媒体に結合するいかなる病原体又は毒素も、本発明の前記デバイスにより除去可能である。
【0040】
様々な形状及び組成の材料を本発明の吸着媒体に使用可能である。すべての適切な吸着剤基板は、高表面積を有し、(主に)強制対流又は拡散輸送により吸着質に結合する前記吸着剤部位への吸着質の輸送を促進する。前記吸着媒体の生成に有用な基板には、非多孔質硬質ビーズ、粒子、又は充填網状発泡体、硬質モノリシックベッド(例えば焼結ビーズ又は粒子から形成される)、織布又は不織布充填カラム、糸又は固体もしくは中空メソ多孔質-又は微小多孔質モノフィラメントファイバー充填カラム、平坦膜又は緻密 膜で出来たらせん状カートリッジ、又は混合ビーズ/布製カートリッジ等の混合媒体を含む。いくつかの実施形態では、本発明に使用する適切な基板は、主にメソ多孔質又は微小多孔質の基板であるが、基本的には吸着部位生成前、生成中、又は生成後に前記面を処理する際に非多孔質となる基板である。
【0041】
一つの有用な基板は、前記固体ビーズ又は粒子の形状である。前記ビーズは、十分に硬質で、生じた流速や圧による変形や圧縮に耐える材料から作られる。いくつかの実施形態では、十分な基板剛性では、典型的な臨床における流速で水や生理食塩水を1時間流す間に前記吸着ベッド全体において有意な圧力低下が生じない。例えば、適切な基板剛性は、同程度の流速で、例えば生理食塩水を使用した場合、最初の(例えば、最初の1分間における流速の測定における)圧低下に対して、さらなる圧低下が<10-50%である。
【0042】
前記吸着剤基板ビーズは、基本的に溶出性の不純物を含まない、天然又は合成ポリマー又はガラス、セラミックス及び金属等の非高分子材料といった多くの異なる生体適合性材料で出来ていてもよい。いくつかのポリマーの例として、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン又はエチレン及び他のモノマーの共重合体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレン、及びポリイソブチレンが挙げられる。有用な基板の例として、非多孔質の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。その他の適切なビーズは、ポリスチレン、高密度及び低密度ポリエチレン、シリカ、ポリウレタン、及びキトサンのビーズである。
【0043】
これらビーズの製造方法は当該技術分野で公知である。例えば、適切なポリエチレンビーズ及び他のポリオレフィンンビーズは、上記合成過程で直接製造される。いくつかの例では、前記ビーズは必要なサイズや形状に加工される。その他のポリマーに、研磨、スプレードライ、選別又は他の加工を施し、望ましいサイズ分布及び形状のビーズを作成することが必要な場合もある。
【0044】
いくつかの態様では、本発明の前記吸着媒体は、前記細菌性病原体に結合可能な多糖類吸着剤を付着させる面を有する。いくつかの実施形態では、前記吸着媒体は、少なくとも一つの多糖類吸着剤を面上に有する高表面積の固体基板を含む。
【0045】
他の態様では、本発明の前記吸着媒体は、多糖類吸着剤なしの親水性の面(「露出面」)を持つ。いくつかの実施形態では、前記吸着媒体は、親水性カチオン面を持つ高表面積の固体基板を含む。他の実施形態では、前記吸着媒体は、親水性中性面を持つ高表面積の固体基板を含む。
【0046】
前記固体基板の材料には、限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリカ、ラテックス、ガラス、セルロース、架橋アガロース、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アルギン酸、シリコン、フルオロポリマー、及びその他の合成ポリマーが挙げられる。前記高表面積の固体基板は、複数の吸着剤のモノレイヤー、フィルター、膜、固体ファイバー、中空ファイバー、粒子、又はビーズからなることが可能である。任意に、前記固体基板は大きな表面積を持つ他の構造又は形状としてもよい。
【0047】
いくつかの例において、前記固体基板は複数の硬質ポリマービーズからなり、硬質ポリマービーズとして、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリカ、ラテックス、ガラス、セルロース、架橋アガロース、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アルギン酸、シリコン、フルオロポリマー、及び合成ポリマービーズが挙げられる。好ましくは、前記硬質ポリマービーズはポリエチレンビーズである。
【0048】
前記固体基板のサイズは、前記アッセイに使用する前記試験試料の体積又は他のパラメーターによって選択可能である。いくつかの実施形態では、前記複数の硬質ポリマービーズの各ビーズは、平均外径が約1μm~約1mm、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、45μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、又は1mmである。他の実施形態では、前記複数の硬質ポリマービーズの各ビーズは、平均直径が約10μm~約200μm、例えば、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、45μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μm、115μm、120μm、125μm、130μm、135μm、140μm、145μm、150μm、155μm、160μm、165μm、170μm、175μm、180μm、185μm、190μm、195μm、又は200μm以上である。
【0049】
いくつかの実施形態では、有用なビーズは、直径サイズが約100ミクロン(μm)っ~500μm、又は例えば、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、又は500μm以上の範囲である。前記ビーズの平均直径サイズは、約150μm~約450μm、例えば、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、又は450μmとすることができる。例えば、平均直径が300μmであるDSM Biomedical社製のポリエチレンビーズ(カリフォルニア州バークレー)が本発明に適している。
【0050】
ビーズは、化学的又は物理的手段によって焼結することにより多孔質モノリシック構造とすることが可能である。カートリッジ内でポリエチレンビーズを融点で熱し加圧することにより、焼結可能である。生じる間隙の孔径は、等サイズの非焼結ビーズの充填ベッドの間隙の孔径よりわずかに低減する。この孔径の低減は経験的に決定可能であり、所望の最終間隙孔径の決定に利用される。
【0051】
網状発泡体は開細胞を有し、例えば、ポリウレタン及びポリエチレン等から形成される。孔径の調整は、前記製造方法により調整することで可能である。概して、網状発泡体は、3~100孔/インチ(約2.54cm)とし、表面積を≧66cm2/cm3とすることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記基板は、例えば非多孔質膜等のバリア膜である。もしくは、微小多孔質膜は、基本的に、例えば、ポリマー等の非多孔質材料で孔を埋めてもよい。シート、固体、又は中空ファイバー状の前記膜をハウジング又は容器内に配置してもよい。
【0053】
前記吸着媒体を、カラム、カートリッジ、チューブ、遠心分離チューブ等の容器又は前記媒体に付着した前記細菌性病原体に影響することなく吸着媒体に結合した多糖類に捕捉されていない血液細胞を除去可能な任意の容器に入れることが可能である。
【0054】
前記基板は、典型的にはカラム等のハウジング又は容器に充填される。前記容器は、容器内で基板を保持し、前記基板の面を血液又は血清が流通可能に設計されている。前記基板は、前記基板の吸収剤面への前記吸着質の結合を最大化するように前記容器内に配置してもよい。前記ハウジング又は容器は、血液又は血清に対する表面積が広いマクロ多孔質面構造を有してもよい。
【0055】
カラム又は他のハウジング形状を、織布又は不織ヘパリン化布又は前記ヘパリンで充填可能とし、前記ハウジングを前記基板媒体で充填後に、ヘパラン硫酸又は任意の非ヘパリン吸着部位を、例えば共有結合、イオン結合又は他の化学的又は物理的結合により設けてもよい。不織ウェブ形成時のウィービング又はニッティング中に前記布のファイバーデニール及び密度を調整することによって、前記間隙孔径を調整可能である。有用な不織布は、フェルト、メルトブロー、又は静電的に紡いだウェブ形状としてもよく、前記ファイバーの交絡及び/又は交差するファイバーの接着もしくは結合によるランダムな配向性を有する。有用な織布はさらに規定された非ランダムな構造を有する。
【0056】
ファイバー又はファイバーから作られた糸をカラムに充填可能である。ポリエチレン及びその他のファイバーを、従来の血液透析カートリッジ又は血液酸素付加装置内への中空ファイバー膜設置と同じようにカートリッジに充填できるように、細い中空又は固体モノフィラメントファイバー又はマルチフィラメント糸に生成可能である。本発明では、元来多孔質の中空ファイバーを、前記外及び/又は内面へヘパリン又はその他の吸着剤を結合前、結合中、又は結合後に緻密又は非多孔質とすることができる。Royal DSM社製のDyneema Purity(登録商標)は、UHMWPE製の高強度固体ファイバーである。Dyneemaは、ヘパリン化してカートリッジへ充填し、サイトカイン及び病原体の除去用の高表面積担体として提供される。
【0057】
らせん状カートリッジは、隣接する面との接触を防ぐために任意のスペーサー材料と共に密に巻かれた薄膜又は膜を含む。前記膜は、ポリウレタン、ポリエチレン ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、PET、PBT等のポリマーから生成可能である。
【0058】
上述の通り、本発明の方法における使用において、体外血液ろ過のための個別のビーズ間のチャンネルや間隙スペースのサイズは、前記カートリッジの前記流入口及び流出口間での大きな圧低下を防ぐため、高流速環境での前記個体ビーズ間の血液細胞の安全な通過のため、及び前記血液中のサイトカイン又は病原体に対する前記多糖類吸着剤の吸着のための適切な間隙表面積を提供するために最適化される。例えば、300ミクロンの密に充填したベッドでは、ほぼ球体のビーズは、略内孔径が直径でおよそ68ミクロンである。
【0059】
吸着剤及び前記吸着剤の様々な作成方法は、米国特許第8663148号、米国特許出願第2009/0136586号明細書、第2010/0249689号明細書、第2011/0184377号明細書、及び第2012/0305482号明細書、2013年11月8日出願の米国仮出願第61/902070号明細書及び2014年4月24日出願の第61/984013号明細書に記載の通りである。これらの開示はいかなる目的においでも参照として全て本明細書に組み込まれる。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記デバイスの前記血液接触面を、血液相溶性を向上又は増加させるために修飾可能である。例えば、前記面を、任意のエンドポイント固定ヘパリン又は他の活性化面修飾因子で修飾可能である。
B.使用方法
【0061】
本明細書に記載の前記装着型デバイス及び方法により、個体における毒素及び/又は病原体レベルを低減可能である。前記方法は、個体から血液を得て、前記血液を吸着媒体を含むカートリッジに通し、通過させた血液を前記個体に再注入することを含むことができる。これらを使用する前記デバイス及び方法により、個体の感染した又は汚染された血液中の前記毒素及び/又は病原体を減らすことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記デバイスに血液を入れた後、抗凝固試薬を添加する。他の実施形態では、薬剤療法、例えば、前記通過した血液を前記個体へ戻す前に抗ウイルス療法を実施可能である。
【0063】
前記分野において、前記デバイスを非臨床設定等で使用可能である。例えば、前記デバイスをクリニックや病院外で個体が着用することも可能である。いくつかの実施形態では、臨床又は病院設定で前記デバイスを使用する。前記デバイスを補助療法等に使用し、抗ウイルス薬等の薬剤療法と併用可能である。
【0064】
前記デバイスを、ディスポーザブル又は単回使用として使用可能である。いくつかの例では、前記デバイスは、事前に取り付けられた血液ライン、動脈及び/又は静脈カテーテル、前記吸着媒体を含有するカートリッジ、及び必要に応じて統合ロータリーポンプ等のポンプを含む。外部電源(例えば、バッテリー)及び電子機器コンポーネントを、前記デバイスに取り付けられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の前記方法の実施に使用するキットは、装着型、体外デバイス及び、着脱可能な外部バッテリー及び電子機器を含む。前記キットは取扱説明書を含んでいてもよい。
III.実施例
【実施例】
【0065】
以下実施例により本発明を例示するが、本発明はそれらに限定されない。
【0066】
実施例1は、前記血液媒介性病原体に感染した又は感染の疑いのある患者の血液から病原体を除去可能な装着型な体外デバイスの使用を示す。
【0067】
前記デバイスは、
図1に示すとおり、デュアルルーメンカテーテル又はニードル140を介して患者の抹消動脈の一つに接続されている。前記ウイルス等の病原体を含む又は含むことが疑われる血液が流入口150から前記デバイスへ入り、吸着媒体110を含む前記カートリッジへ到達する。デバイスハウジングと一体化した遠心分離又はロータリーポンプ又は脈動ポンプ120により、前記血液が第一の多孔質エンドプレート135へ移動し、前記吸着媒体に接触する。前記ポンプはバッテリー120に駆動され、電子装置120に制御される。バッテリー及び電子機器は共に前記デバイスに収納されている。前記血液中の病原体は、前記媒体及び/又は前記媒体の前記固体基板の面に付着した一つ又はそれ以上の多糖類と結合することにより、前記吸着媒体面に固定される。前記血液の流速は、前記吸着媒体上の前記病原体の固定を最適化するように設定される。前記吸着媒体に結合していない前記血液の構成要素は、第二の多孔質エンドプレート130を通過し、流出口160を介して前記カートリッジから出ていく。血液ラインにより、病原体が低減した前記血液を、デュアルルーメンカテーテル又はニードル140を介して前記患者へ還流する。
【0068】
実施例2は、本発明の様々な実施形態を示す。
【0069】
いくつかの例では、体外親和性のための前記携帯型及び/又は装着型デバイスは、広範囲の血流感染の治療において病原体及び毒素を全血から迅速かつ安全に除去する吸着剤媒体を備える。血流感染として、薬剤耐性細菌、ウイルス及び寄生虫を表1に挙げる。前記媒体は、限定された範囲の吸着質を捕捉するための異なる結合部位を使用する他の透析様デバイスに共通する問題である、前記血液における凝固又は炎症反応を誘発しない。
【0070】
前記吸着剤媒体は、化学結合したヘパリンの固定面層に小型のポリエチレンビーズを備える。「エンドポイント固定ヘパリン」面は、血液相溶性が非常に高い。それにより、「抗トロンビンIII」に結合して循環する血液が凝固するのを防ぐ健康な血管の特性を模倣する。ヘパリンは、静脈及び動脈を形成する内皮細胞上に存在するヘパラン硫酸(HS)の特性を模倣し、HSを標的とする同一の病原体及び毒素が血流に侵入する際に結合する。これにより、前記血液から前記病因性病原体を、本発明におけるディスポーザブルカートリッジの面へと誘導する。治療の数時間後、前記デバイスにより、循環する病原体が抗感染薬により死滅する際に放出される前記毒性のある副生成物を生成せずに、循環する病原体の濃度が検出不可能なレベルへ低減される。
【表1】
【0071】
本発明の吸着媒体に結合することが確認された病原体及び毒素を表1に挙げる。本明細書に記載の前記方法及びデバイスは、デング熱及びマラリア(ロゼット形成赤血球細胞を含む)及び多数の他の病原体及び毒素に対して有効である。
【0072】
いくつかの例では、本発明のカートリッジを透析様療法に使用し、透析機器が継続的に前記患者から前記カートリッジへ血液を循環させ前記患者へ還流する。典型的治療時間は4時間であるが、流速及び前記血液中の病原体の開始時濃度による。この臨床ユニットは、透析装置カートリッジのサイズであり、約160グラムのヘパリン機能を有する吸着剤「媒体」を含む。しかしながら、最近の定量的結合試験によると、この吸着剤は最大600回に相当する結合力を示し、血流感染時に存在する全ての前記細菌、真菌、又はウイルスの除去に要する結合能力を超えている。
【0073】
いくつかの例では、本発明のデバイスにおける前記結合効率は一回の血液通過あたり70~99%である。これにより、迅速に血液中の病原体濃度を低下できる。MRSAによる菌血症では、例えば、前記血流濃度は、典型的には10~1000CFU/mLであり100CFU/mL以下であることが多い。ヘパリン機能を有する吸着媒体1グラムあたり、5リットルの血液中に100CFU/mL濃度で存在する全ての細菌に対し十分な結合力を有する。
【0074】
さらに、前記吸着媒体は凝固を防ぎ血流に対し非常に低い抵抗性を示すため、動作時に要する圧力差が非常に小さい。他の例では、患者を透析機器を使用せずに治療してもよい。
【0075】
透析機器の使用に対する低コストの選択肢があり、これらも本発明に含まれる。これらには下記選択肢が例として含まれる。
デュアルルーメンニードルによる静脈アクセスを要する、前記ユニットと一体化可能な小型再使用可能バッテリー作動ポンプ、本発明のフィルターを介した血流生成に血圧差を使用する動脈から静脈への血流(任意の昇圧剤使用に伴う)、及び前記血液チューブに挿入した吸着剤「フィルター」を有する標準血液バッグの使用によるシングルニードル静脈ラインを介した治療。(血液採取時の低流速は、より速い流速での再注入により相殺されるが、血圧低下に対して昇圧剤を使用可能である。)
【0076】
前記血液バッグが充填されると(≧10分)、血液バッグを患者の上方へ掲げ、第二の治療のための吸着剤「フィルター」を有する前記標準血液バッグを介して血液を戻す。血流の方向は性能を左右しないため、血液の単一ユニットは前記患者へ血液を戻す前に二つの経路を有し、これにより病原体及び毒素レベルを大幅に低減する。必要に応じて前記プロセスを数回繰り返すことも可能である。低コスト血液バッグ及びニードルセットの使用により、いかなるハードウェア又は器具類(四極又は二極でも可能)の必要性がなくなり、医療職によるモニタリングの必要性を大幅に低減する。
図7A及び
図7Bを参照。
【0077】
要約すると、デング熱、マラリア及び出血熱等の疾患の治療における本発明の療法を実施するコストを、従来の(オーバーサイズ)フィルターを小型化し、重力及び/又は血圧により前記デバイス内に血流を発生させることで、かなり低く抑えられる。
【0078】
本発明により、ヘパリン及びその他の原材料の大量購入及びより小さなフィルターの自動化された製造が非常に低いコストで可能になり、デング熱及びマラリアに感染した何百万もの人々に利益をもたらすことが可能となる。
【0079】
理解しやすさを目的として図や例示により本発明を詳細に説明したが、当業者が添付の請求項の範囲内で変更等を加えることは可能である。また、本明細書中に言及される特許文献および刊行物は、それぞれ個々の刊行物が個別に参照として組み入れられるよう示されるのと同程度に、本明細書において参照として組み入れられる。