(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】有機繊維用接着剤組成物、有機繊維の処理方法、有機繊維、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20220706BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220706BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220706BHJP
D06M 13/11 20060101ALI20220706BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20220706BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20220706BHJP
D06M 15/693 20060101ALI20220706BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220706BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220706BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220706BHJP
D06M 101/34 20060101ALN20220706BHJP
D06M 101/36 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J163/00
D06M13/11
D06M13/395
D06M15/41
D06M15/693
B60C9/22 A
B60C9/00 A
D06M101:32
D06M101:34
D06M101:36
(21)【出願番号】P 2018069803
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 益任
(72)【発明者】
【氏名】紀田 擁軍
(72)【発明者】
【氏名】栗原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】繆 冬
(72)【発明者】
【氏名】岡部 昇
(72)【発明者】
【氏名】前川 奈津希
(72)【発明者】
【氏名】永野 豊浩
(72)【発明者】
【氏名】伏木 將人
(72)【発明者】
【氏名】細見 哲也
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-053469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 11/06
C09J 163/00
D06M 13/11
D06M 13/395
D06M 15/41
D06M 15/693
B60C 9/22
B60C 9/00
D06M 101/32
D06M 101/34
D06M 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ソルビトールポリグリシジルエーテルであって塩素含有量が9.6質量%以下であるエポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含み、
上記ブロックドイソシアネートの含有量が、上記エポキシ化合物100質量部に対して、200質量部以上400質量部以下である、有機繊維用接着剤組成物
であって、該有機繊維用接着剤組成物で処理した有機繊維を、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理するための、有機繊維用接着剤組成物。
【請求項2】
前記有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の有機繊維用接着剤組成物。
【請求項3】
全固形分濃度が0.9質量%以上8.1質量%以下である、請求項1又は2に記載の有機繊維用接着剤組成物。
【請求項4】
以下(1)及び(2)の工程を含む、有機繊維の処理方法。
(1)第一処理剤として請求項1に記載の有機繊維用接着剤組成物で有機繊維を処理する工程;及び
(2)第一処理剤で処理した有機繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理する工程。
【請求項5】
前記有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の有機繊維の処理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の有機繊維用接着剤組成物で処理された有機繊維。
【請求項7】
請求項6に記載の有機繊維を含むジョイントレスバンド、カーカスプライ、チェーファー、及びフィラーよりなる群から選択される少なくとも1以上の部材を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維用接着剤組成物、有機繊維の処理方法、有機繊維、及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維やナイロン繊維等の各種繊維は、タイヤの補強材として従来から広く使用されており、要求性能、各種部材等に適合するよう使い分けがなされている。例えば、ポリエステル繊維は、優れた力学特性(例えば、弾性率が高い)と優れた寸法安定性を有する。しかし、その一方で、ナイロン繊維に比べタイヤの材料であるゴムとの接着性、特にゴム配合物中に埋め込まれた状態で長時間高温に曝露された場合の接着力低下が著しいという欠点を持つ。
【0003】
特許文献1では、ポリエステル繊維を、キャリアーを含む処理液、ブロックドイソシアネート水溶液、エポキシ樹脂の分散液、およびレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)接着剤を用いて処理することによって、耐熱接着性が改善すると提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、ポリエステル繊維をポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびエチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合してなる接着処理剤で処理することによって、高温下における接着劣化が少なくなると提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-212875号公報
【文献】特開2008-169504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれもナイロン繊維に比べ十分な耐熱接着性を有しているとは言えない。このような事情のもと、本発明は、高温にさらされても、有機繊維とゴム組成物とが高い接着力を保つことができる、耐熱接着性に優れた有機繊維用接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、(a)ソルビトールポリグリシジルエーテルであって塩素含有量が9.6質量%以下であるエポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む有機繊維用接着剤組成物に関する。
【0008】
前記有機繊維用接着剤組成物において、前記有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0009】
本発明の第二は、以下(1)及び(2)の工程を含む、有機繊維の処理方法に関する。
(1)第一処理剤として請求項1に記載の有機繊維用接着剤組成物で有機繊維を処理する工程;及び
(2)第一処理剤で処理した有機繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理する工程
【0010】
前記有機繊維の処理方法において、前記有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0011】
本発明の第三は、前記有機繊維用接着剤組成物で処理された有機繊維に関する。
【0012】
本発明の第四は、前記有機繊維含むジョイントレスバンド、カーカスプライ、チェーファー、及びフィラーよりなる群から選択される少なくとも1以上の部材を有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温にさらされても、有機繊維とゴム組成物とが高い接着力を保つことができる、耐熱接着性に優れた有機繊維用接着剤組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】ジョイントレスバンドの実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。本発明の有機繊維用接着剤組成物は、(a)ソルビトールポリグリシジルエーテルであって塩素含有量が9.6質量%以下であるエポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む。
【0016】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、分子内にエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物として、ソルビトールポリグリシジルエーテルを用いる。ソルビトールポリグリシジルエーテルとしては、ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、又はこれらの混合物を用いることができ、ソルビトールモノグリシジルエーテルが含まれていてもよい。ソルビトールポリグリシジルエーテルは、1分子中に多数のエポキシ基を有しており高い架橋構造を形成することができるため、本開示の有機繊維用接着剤組成物は接着性に優れる。
【0017】
エポキシ化合物は、塩素含有量が9.6質量%以下であり、9.5質量%以下が好ましく、9.4質量%以下がより好ましく、9.3質量%以下がさらに好ましい。下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、1質量%以上であってよい。
【0018】
エポキシ化合物中の塩素含有量がより少ないことにより、エポキシ化合物中のエポキシ基の純度が高まり、エポキシ化合物のイソシアネートとの反応性が高まる。そのため、より優れた耐熱接着性を得ることができる。
【0019】
また、エポキシ化合物中のエポキシ基の純度が高まることにより、有機繊維用接着剤組成物が低粘度化するので、有機繊維への浸透性が高まる。そのため、有機繊維をゴム組成物と接着しようとする場合に、そのゴム組成物に含まれ、高温下で接着力低下を引き起こす一因であるアミン化合物と有機繊維との接触を減らすことができ、有機繊維の劣化を抑制できる。その結果、より優れた耐熱接着性を得ることができる。
【0020】
エポキシ化合物における塩素含有量は、JIS K 7243-3に記載の方法等により求めることができる。
【0021】
エポキシ化合物の塩素含有量は、エポキシ化合物を合成する際に使用するエピクロルヒドリンの量を削減すること等により低減することができる。
【0022】
(ブロックドイソシアネート)
ブロックドイソシアネートは、イソシアネート化合物とブロック剤との反応により生成し、ブロック剤由来の基により一時的に不活性化されている化合物であり、所定温度で加熱するとそのブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基を生成する。
【0023】
イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するものを用いることができる。2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、及びこれらの異性体、アルキル置換体、ハロゲン化物、ベンゼン環への水素添加物等が使用できる。さらに、3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネート類、4個のイソシアネート基を有するテトライソシアネート類、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を使用することもできる。これらのイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種以上併用することができる。
【0024】
これらの中でも特に、工業的に入手しやすく、得られる処理後の有機繊維用接着剤組成物の耐熱接着性が良好なものとなるため、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
【0025】
ブロック剤としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール等のフェノール系;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等を挙げることができる。なかでも、比較的低温で迅速にイソシアネート化合物から乖離するため、ラクタム系、フェノール系、オキシム系ブロック剤が好ましい。
【0026】
本開示の有機繊維用接着剤組成物におけるブロックドイソシアネートの含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下が好ましく、200質量部以上400質量部以下がより好ましい。この範囲とすることにより、有機繊維とゴム組成物とのより優れた耐熱接着性が得られる。50質量部未満であると、架橋不足となり、接着力や耐熱性の低下の原因となることがあり、500質量部を超えると、繊維が硬くなり過ぎたり、耐疲労性が低下することがあるため好ましくない。ブロックドイソシアネートの含有量は、有機繊維を接着しようとするゴム組成物の種類に応じて適宜調整することができる。
【0027】
(任意成分)
本開示の有機繊維用接着剤組成物には、本発明の目的、効果を妨げない範囲内において、必要に応じて以下の任意成分が含まれていても良い。例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテルと共重合可能な樹脂、ブロックドイソシアネート以外の硬化剤、有機増粘剤、酸化防止剤、光安定剤、接着性向上剤、補強剤、軟化剤、着色剤、レベリング剤、難燃剤、及び帯電防止剤等が挙げられる。
【0028】
ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物として、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、及びブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、及びダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル;トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン;並びに3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等が挙げられる。
【0029】
[有機繊維]
本開示の有機繊維用接着剤組成物は、各種有機繊維の処理に用いることができる。本開示の有機繊維用接着剤組成物で処理された有機繊維は、高温にさらされてもゴム組成物との高い接着力を保つことができ、耐熱接着性に優れる。
【0030】
各種有機繊維としては、タイヤ;各種のホース類;並びにタイミングベルト、コンベアベルト及びVベルト等の回転を伝達するためのベルト類等の補強材として通常使用される繊維が挙げられる。その繊維の種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;ビニロン繊維;アラミド繊維;及びポリウレタン繊維等が挙げられる。
【0031】
これらの有機繊維のうち、当該有機繊維及びゴム組成物を接着してなる材料、例えばタイヤ等に用いた場合でも、その材料は使用時の荷重や衝撃に対する耐性に優れるため、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアラミド繊維からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0032】
これらの有機繊維の形態は特に限定されず、例えば、フィラメント糸、コ-ド、織物、及び織布等が挙げられる。コードは、1本以上のフィラメント糸を撚り合わせることにより形成されてよい。
【0033】
ポリエステル繊維からなるコード(ポリエステルコード)としては、例えば、i)1100デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本または3本合わせて(言い換えれば、1100/2デシテックス、又は1100/3デシテックス)、10~60回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度4.30%)や、ii)1670デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス)、20~50回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重66Nをかけた際の中間伸度4.30%)が使用され得る。なお、中間伸度とは、JIS L1017の「一定荷重時伸び率」の試験方法に準拠して求めることができる。
【0034】
ナイロン繊維からなるコード(ナイロンコード)としては、例えば、i)940デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、940/2デシテックス)、31~48回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度8.80%)や、ii)1400デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1400/2デシテックス)30~51回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重66Nをかけた際の中間伸度8.80%)が使用され得る。
【0035】
レーヨン繊維からなるコード(レーヨンコード)としては、例えば、1840デシテックスのマルチフィラメントを、それぞれ2本合わせて(言い換えれば、1840/2デシテックス)、20~50回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度4.80%)が使用され得る。
【0036】
アラミド繊維からなるコード(アラミドコード)としては、例えば、1670デシテックスの芳香族ポリアミドマルチフィラメント(デュポン社製ケブラー)を、それぞれ2本または3本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス、又は1670/3デシテックス)、30~78回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度0.7~1.5%)が使用され得る。
【0037】
ポリエステル繊維及びナイロン繊維からなるコード(ポリエステル-ナイロンハイブリッドコード)としては、例えば、1440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント及び1440デシテックスのナイロンマルチフィラメントを2本合わせて(言い換えれば、1440-P/1400-Nデシテックス)、30~38回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度4.40%、一定荷重66Nをかけた際の中間伸度6.30%)が使用され得る。
【0038】
アラミド繊維及びナイロン繊維からなるコード(アラミド-ナイロンハイブリッドコード)としては、例えば、1100デシテックスのアラミドマルチフィラメント及び940デシテックスのナイロンマルチフィラメントを2本合わせて(言い換えれば、1100-K/940-Nデシテックス)、42回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対方向に同数の上撚をかけたもの(一定荷重44Nをかけた際の中間伸度3.60%)が使用され得る。
【0039】
[処理方法]
本発明の有機繊維の処理方法は、以下(1)及び(2)の工程を含む。
(1)第一処理剤として前記有機繊維用接着剤組成物で有機繊維を処理する工程;及び(2)第一処理剤で処理した有機繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理する工程。
【0040】
(1)第一処理剤として前記有機繊維用接着剤組成物で有機繊維を処理する工程について詳述する。
【0041】
第一処理剤は、前記有機繊維用接着剤組成物であり、有機繊維用接着剤組成物で有機繊維を処理するとは、有機繊維用接着剤組成物に含まれる各種成分を有機繊維に付着させるために行われる処理及びその後の加熱処理を含むものである。
【0042】
付着方法としては、例えば、ローラーを使った塗布、ノズルからの噴霧、浴液(有機繊維用接着剤組成物)への浸漬等任意の方法を用いることができる。均一に付着させ、かつ余分な接着剤を除去する観点から、浸漬による付着が好ましい。
【0043】
また、有機繊維への付着量を調整するために、圧接ローラーによる絞り、スクレイパー等によるかき落とし、空気吹き付けによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段をさらに採用してもよい。特に、浸漬の後、さらに圧接ローラーによる絞り工程を行うことが好ましい。
【0044】
加熱方法としては、例えば、有機繊維用接着剤組成物が付着した有機繊維を100℃以上250℃以下で1分以上5分以下乾燥処理した後、さらに、150℃以上250℃以下で1分以上5分以下で熱処理を行う方法が挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件としては、180℃以上240℃以下で1分以上2分以下であることが好ましい。特に、乾燥処理後の熱処理において、温度が低すぎると、ゴム組成物に対する接着力が不十分となることがあり、高すぎると有機繊維が劣化し、強度低下の原因となることがあるためである。
【0045】
有機繊維用接着剤組成物の有機繊維への付着量は、0.2質量%以上1.8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。0.2質量%未満であると、付着量が不足し、十分な接着力が得られなくなることがあり、1.8質量%を超えると、繊維が硬くなり、屈曲疲労強度等が低くなることがあるためである。ここで、付着量の単位[質量%]は、有機繊維の質量を100として得られる組成物中の固形分の質量である。
【0046】
有機繊維用接着剤組成物の全固形分濃度は、十分な接着力を得つつも、得られる繊維が硬くなり過ぎないようにするため、0.9質量%以上8.1質量%以下が好ましく、2.3質量%以上6.5質量%以下がより好ましい。
【0047】
(2)第一処理剤で処理した有機繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理する工程について詳述する。
【0048】
第二処理剤は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む組成物である。
【0049】
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物、及びゴムラテックスを混合熟成することにより調製することができる。
【0050】
レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物は、レゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーとを、塩酸や硫酸等の酸性触媒、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、またはアンモニア存在下、水中で反応させて縮合させることにより得られる。
【0051】
初期縮合物としてはレゾルシンモノマーとホルムアルデヒドモノマーのモル比は、1:0.1~1:8が好ましく、1:0.5~1:5がより好ましく、1:1~1:4がさらに好ましい。
【0052】
ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体ラテックス等を用いることができる。レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)において、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物とゴムラテックスの比率は、固形分量比で、1:1~1:15が好ましく、1:3~1:12がより好ましい。
【0053】
これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。特に、天然ゴムやSBR(スチレンブタジエンゴム)に対して高い接着力が得られるため、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体ラテックスが好ましい。
【0054】
なお、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物は、レゾルシンモノマー、ホルムアルデヒドモノマー、微量の分子量調整剤(例えば、塩化カルシウム等)、溶剤(例えば、MEK:メチルエチルケトン等)等を含むことができる。
【0055】
第一処理剤で処理した有機繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理するとは、第二処理剤を第一処理剤で処理した有機繊維に付着させるために行われる処理であり、第一処理剤で有機繊維を処理する際と同様の手段及び条件で行い得る。第二処理剤で処理する場合においても、付着方法としては、均一に付着させ、かつ余分な接着剤を除去する観点から、浸漬による付着が好ましい。
【0056】
また、有機繊維への付着量を調整するために、圧接ローラーによる絞り、スクレイパー等によるかき落とし、空気吹き付けによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段をさらに採用してもよい。特に、浸漬の後、さらに圧接ローラーによる絞り工程を行うことが好ましい。
【0057】
第二処理剤の有機繊維への付着量は、1.0質量%以上3.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましい。1.0質量%未満であると、付着量が少なく、接着力不足となることがあり、3.0質量%を超えると、繊維が硬くなり、屈曲疲労強度等が低くなることがあるためである。なお、第二処理剤の有機繊維への付着量[質量%]は、有機繊維の質量を100として得られる第二処理剤中の固形分の質量を示す。
【0058】
第二処理剤の全固形分濃度は、十分な接着力を得つつも、得られる繊維が硬くなり過ぎないようにするため、0.9質量%以上29質量%以下が好ましく、14質量%以上23質量%以下がより好ましい。
【0059】
第二処理剤には、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物とゴムラテックスの他に、加硫調整剤、亜鉛華、酸化防止剤、消泡剤等を添加してもよい。
【0060】
[用途]
本開示の有機繊維用接着剤組成物で処理された有機繊維は、タイヤ、各種のホース類、又は回転を伝達するためのベルト類等に用いることができる。具体的には、例えば、タイヤ、各種のホース類、又は回転を伝達するためのベルト類の内部に備えること、より具体的には、例えば、有機繊維を複数合せて撚ったもの(1本以上のフィラメント糸を撚り合わせたものであってもよい)をこれらの内部に配置すること、短繊維にして内部に分散させる等によりこれらの補強材として用いることができる。
【0061】
本開示の有機繊維用接着剤組成物で処理された有機繊維は、高温にさらされてもゴム組成物との高い接着力を保つことができ、耐熱接着性に優れるため、長時間高温に曝露される環境で使用されるタイヤに好ましく用いることができる。特にタイヤのジョイントレスバンド、カーカスプライ、チェーファー、及びフィラーよりなる群から選択される少なくとも1以上の部材に好ましく用いることができる。
【0062】
ジョイントレスバンドは、後述のとおり、車両の走行時のタイヤ回転に伴う遠心力によってブレーカー(ベルトとも言う)がカーカスから浮き上がるのを抑制するために、ブレーカーのタイヤ半径方向外側に設けられる部材である。なお、ブレーカーとは、タイヤのトレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材である。
【0063】
カーカスプライまたはカーカスとは、タイヤのトレッドの内部で、かつインナーライナーの半径方向外側に配される部材である。ここで、特に、1枚または2枚以上のカーカスプライにより構成されるものをカーカスという。なお、インナーライナーとは、タイヤ内腔面をなすように形成される部材であり、この部材により、空気透過量を低減して、タイヤ内圧を保持することができる。
【0064】
チェーファーとは、タイヤのビード部に位置してホイールのリムに当接し、リムとの摩擦からタイヤ内部のカーカスプライまたはカーカスを保護する部材である。
【0065】
フィラーとは、タイヤのビード部に配され、ビード部の剛性を高める部材である。
【0066】
本開示の有機繊維を用いたタイヤの実施形態の一例を図面を参照しつつ詳述する。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の回転軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0067】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のチェーファー7、一対のビード8、インナーライナー9、カーカス10、ベルト12、一対のフィラー13、及びジョイントレスバンド14を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0068】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面16を形成する。トレッド4には、溝18が刻まれている。この溝18により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、耐摩耗性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0069】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。
【0070】
それぞれのチェーファー7は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリム(ホイールの一部であり、タイヤが組み合わされている部分である。図示しない。)に組み込まれると、チェーファー7はリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。
【0071】
チェーファー7に用いられる有機繊維の形態はコードである。チェーファー7は、コードを有機繊維用接着剤組成物で処理しゴム組成物と接着させることにより構成される。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;及びアラミド繊維が例示される。
【0072】
それぞれのビード8は、サイドウォール6の軸方向内側に位置している。ビード8は、コア20と、このコア20から半径方向外向きに延びるエイペックス22とを有している。コア20はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス22は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス22は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0073】
インナーライナー9は、タイヤ内腔面をなすように形成される。インナーライナー9は、空気透過性を抑えた架橋ゴムにより形成される。
【0074】
カーカス10は、カーカスプライ10aとカーカスプライ10bとの2枚のプライにより構成される。カーカスプライ10a及びカーカスプライ10bは、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ10a及びカーカスプライ10bは、コア20の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。カーカスプライ10a及びカーカスプライ10bは、それぞれ周方向に並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカスプライ10a及びカーカスプライ10bはラジアル構造を有する。また、カーカス10は、2枚の他、1枚または3枚以上のカーカスプライから形成されてもよい。
【0075】
カーカスプライ10a及びカーカスプライ10bに用いられる有機繊維の形態はコードである。カーカスプライ10a及びカーカスプライ10bは、それぞれコードを有機繊維用接着剤組成物で処理しゴム組成物と接着させることにより構成される。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;及びアラミド繊維が例示される。
【0076】
ベルト12は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層24及び外側層26からなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層24の幅は外側層26の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層24及び外側層26のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層24のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層26のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードとしては、スチールコードの他、本開示の有機繊維が用いられてもよい。
【0077】
それぞれのフィラー13は、タイヤのビード部に配される。それぞれのフィラーは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。
【0078】
フィラー13に用いられる有機繊維の形態はコードである。フィラー13は、コードを有機繊維用接着剤組成物で処理しゴム組成物と接着させることにより構成される。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;及びアラミド繊維が例示される。
【0079】
ジョイントレスバンド14は、ベルト12の半径方向外側に位置している。軸方向において、ジョイントレスバンド14の幅はベルト12の幅よりも大きい。ジョイントレスバンド14は、ベルト12を補強する。
【0080】
図2には、ジョイントレスバンド14を構成するリボン28が示されている。このリボン28は、2本のコード30と、トッピングゴム32とを有している。リボン28は、コード30を有機繊維用接着剤組成物で処理しトッピングゴム32と接着させることにより構成される。このリボン28が周方向に螺旋状に巻かれることで、ジョイントレスバンド14が形成される。このジョイントレスバンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。それぞれのコード30は、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコード30の角度は、5°以下が好ましく、2°以下が特に好ましい。このコード30によりベルト12が拘束されるので、ベルト12のリフティングが抑制される。リボン28におけるコード30の数は、1本でもよく、3本以上でもよい。
【0081】
それぞれのコード30は、複数の有機繊維が撚られることで形成される。このコード30を含むタイヤは、耐熱性及び耐久性に優れる。コード30を形成する好ましい有機繊維として、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維;ナイロン繊維;レーヨン繊維;及びアラミド繊維等が例示される。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
実施例及び比較例における接着性の評価は、次の方法により行った。
<初期接着力>
処理された有機繊維を天然ゴムを主成分とする未架橋ゴム中に埋め込み、150℃,30分間プレス架橋し、次いで有機繊維をゴムブロックから100mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/cmで表示し接着性を評価した。
【0084】
天然ゴムを主成分とする未架橋ゴムの組成は、次のとおりである。
天然ゴムとしてTSR20(TSRはTechnically Specitied Rubberの略):60質量部
スチレンブタジエンゴムとしてSBR 1502:40質量部
補強剤として「シースト300」(東海カーボン株式会社製):50質量部
軟化剤として鉱物油:2質量部
老化防止剤として「ROBO RD」(大内新興化学工業株式会社製):1質量部
ステアリン酸:3質量部
酸化亜鉛:6質量部
粉末硫黄(鶴見化学工業株式会社製):4質量部
促進剤として「ノクセラーNS」(大内新興化学工業株式会社製:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド):1.0質量部
【0085】
<耐熱接着力>
処理された有機繊維を天然ゴムを主成分とする未架橋ゴム中に埋め込み、170℃,90分間プレス架橋し、次いで有機繊維をゴムブロックから100mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/cmで表示し接着性を評価した。天然ゴムを主成分とする未架橋ゴムの組成は、上記初期接着力の評価と同じである。
【0086】
(実施例1)
エポキシ化合物として、ETC-N615(ソルビトールポリグリシジルエーテル、塩素含量:9.3質量%、エポキシ当量:163、ナガセケムテックス(株)製)11.8gを水920gに撹拌しながら加え、そこへブロックドイソシアネートとして、ε-カプロラクタムブロックジフェニルメタンジイソシアネート水分散体(54%濃度)72.1gを加え、第一処理剤としての有機繊維用接着剤組成物を調製した。
【0087】
ゴムラテックスとして、ニッポール2518FS(日本ゼオン株式会社製、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマー水乳化液、全固形分濃度40.5%)172g及びニッポールLX-112(日本ゼオン株式会社製、スチレン・ブタジエンコポリマー41%水乳化液、全固形分濃度40.5%)73gを水76gで希釈し、この希釈液の中にレゾルシン・ホルマリンとして、レゾルシン・ホルマリン初期縮合分散液270g(レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は、1:1.5、全固形分濃度6.5%)をゆっくりかきませながら加え、RFL液を調製した。得られたRFL液を水591gで希釈し、第二処理剤(全固形分濃度10%)とした。
【0088】
有機繊維としてポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))コード(コードの構成:1100/2(デシテックス)、コードの撚り数:26(回/10cm)、線径:0.54mm、エンズ:49本/5cm)を第一処理剤に浸漬した後、150℃で130秒間乾燥し、引き続き240℃で130秒間熱処理した。次いで、第二処理剤に浸漬した後、150℃で130秒間乾燥し、引き続き240℃で70秒間熱処理した。処理されたポリエステルコード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。なお、エンズとは、一定の巾の内にコードを平行に引き揃えて配列したときに配列方向に並んだコードの本数(打込数)をいい、単位[本/5cm]は、その一定の巾を5cmとした場合のコードの本数を示す単位である。
【0089】
(実施例2)
有機繊維としてポリエステル-ナイロンハイブリッドコード(コードの構成:1440-P/1400-N(デシテックス)、コードの撚り数:34(回/10cm)、線径:0.67mm、エンズ:49本/5cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機繊維を処理した。処理されたポリエステル-ナイロンハイブリッドコード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0090】
(実施例3)
有機繊維としてアラミドコード(コードの構成:1670/3(デシテックス)、コードの撚り数:40(回/10cm)、線径:0.85mm、エンズ:35本/5cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機繊維を処理した。処理されたアラミドコード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0091】
(実施例4)
有機繊維としてアラミド-ナイロンハイブリッドコード(コードの構成:1100-K/940-N(デシテックス)、コードの撚り数:42(回/10cm)、線径:0.55mm、エンズ:49本/5cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機繊維を処理した。処理されたアラミド-ナイロンハイブリッドコード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0092】
(実施例5)
有機繊維としてポリエステル(ポリエチレンナフタレート(PEN))コード(コードの構成:1100/3(デシテックス)、コードの撚り数:40(回/10cm)、線径:0.72mm、エンズ:49本/5cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機繊維を処理した。処理されたポリエチレンナフタレート(PEN)コード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0093】
(比較例1~5)
エポキシ化合物として、EX-614B(ソルビトールポリグリシジルエーテル、塩素含量:10.1質量%、エポキシ当量:173、ナガセケムテックス(株)製)を用いた以外は、それぞれ実施例1~5と同様にして、有機繊維を処理した。処理された有機繊維について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0094】
(比較例6)
有機繊維としてナイロンコード(コードの構成:940/2(デシテックス)、コードの撚り数:48(回/10cm)、線径:0.55mm、エンズ:49本/5cm)を第二処理剤に浸漬した後、150℃で130秒間乾燥し、240℃で70秒間熱処理した。処理されたナイロンコード(有機繊維)について、初期接着力及び耐熱接着力を測定した。結果は表1に示す。
【0095】
【0096】
比較例1に示すように、従来の有機繊維用接着剤組成物によって処理したポリエステルコードは、比較例6の第二処理剤のみで処理したナイロンコードと比較しても耐熱接着力が低い(比較例1:108N/cm、比較例6:116N/cm)。
【0097】
しかし、実施例1に示すように、本開示の有機繊維用接着剤組成物によって処理したポリエステルコードは、比較例6の第二処理剤のみで処理したナイロンコードよりも高い耐熱接着力を有する(実施例1:121N/cm、比較例6:116N/cm)。さらに、比較例2~5及び実施例2~5からも明らかなように、本開示の有機繊維用接着剤組成物によって処理した各種有機繊維の何れの場合においても同様に、耐熱接着力が大きく向上した。