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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】視機能検査および光学特性算出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/06 20060101AFI20220706BHJP
   A61B 3/032 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
A61B3/06 ZDM
A61B3/032
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018110369
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019209047
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507359328
【氏名又は名称】株式会社ビジュアル・テクノロジー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】金谷 末子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 典明
(72)【発明者】
【氏名】西本 泰三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】松村 祥子
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012334(WO,A1)
【文献】特開2008-284264(JP,A)
【文献】特開2004-167230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行する視機能検査手段と、
前記視機能検査手段による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段と
を有し、
前記視機能検査手段は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する
ことを特徴とする視機能検査システム。
【請求項2】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行する視機能検査手段と、
前記視機能検査手段による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段と
を有し、
前記視機能検査手段は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示する
ことを特徴とする視機能検査システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の視機能検査システムにおいて。
前記視標を表示する表示手段をさらに有することを特徴とする視機能検査システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項に記載の視機能検査システムにおいて、
前記分析手段により求められた前記境界を表示する表示手段をさらに有することを特徴とする視機能検査システム。
【請求項5】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行することにより得られる視機能検査の結果を受け付ける受付手段と、
前記視機能検査の結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段と
を有し、
前記視機能検査は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節して実行される
ことを特徴とする視機能検査システム。
【請求項6】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行することにより得られる視機能検査の結果を受け付ける受付手段と、
前記視機能検査の結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段と
を有し、
前記視機能検査は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示して実行される
ことを特徴とする視機能検査システム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の視機能検査システムによる検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する算出手段を有することを特徴とする光学特性算出システム。
【請求項8】
請求項7に記載の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を選択することを特徴とする光学部材の選択方法。
【請求項9】
請求項7に記載の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造することを特徴とする光学部材の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造することを特徴とする表示部材の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造することを特徴とする照明装置の製造方法。
【請求項12】
表示部と、
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を、前記表示部を介して順次提示し、被験者に対する視機能検査を実行する検査部と、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析部と
を有し、
前記検査部は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を、前記表示部を介して前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する
ことを特徴とする視機能検査装置。
【請求項13】
表示部と、
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を、前記表示部を介して順次提示し、被験者に対する視機能検査を実行する検査部と、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析部と
を有し、
前記検査部は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を、前記表示部を介して前記被験者に順次提示する
ことを特徴とする視機能検査装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の視機能検査装置による検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する算出部を有することを特徴とする光学特性算出装置。
【請求項15】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め
前記視機能検査では、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する
ことを特徴とする視機能検査方法。
【請求項16】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め
前記視機能検査では、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示する
ことを特徴とする視機能検査方法。
【請求項17】
請求項15又は請求項16に記載の視機能検査方法による検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出することを特徴とする光学特性の算出方法。
【請求項18】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め
前記視機能検査では、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節す
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項19】
複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、
前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め
前記視機能検査では、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示す
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項18又は請求項19に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視機能検査システム、光学特性算出システム、光学部材の選択方法、光学部材の製造方法、表示部材の製造方法、照明装置の製造方法、視機能検査装置、光学特性算出装置、視機能検査方法、光学特性の算出方法、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
メガネレンズ等の光学部材は、分光透過率や色の3刺激値であるXYZの値等の光学特性を有している。このような光学特性に関する客観的な定量評価に基づき、個人の視機能にあった光学特性を算出する技術や、所望の光学特性を有した光学部材を選択する技術は、まだ開発されていない。例えば、従来の検眼装置やシステムを利用して、被験者が多様な光学部材を1つ1つ試用することにより、光学特性を評価する方法が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】あたらしい眼科 24(9),2007,1179-1186、不二門他
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の視機能検査を利用して光学特性の評価する方法は、視機能検査を行った光環境下では有効な光学特性を有した光学部材を選択できるが、異なった光環境下では有効な光学部材を選択できない場合がある。また、従来の方法は、被験者が多様な光学部材を1つ1つ試用して光学特性を評価するため手間と時間とがかかる。
【0005】
本発明は、検査時を含む多様な光環境を考慮した視機能検査を実現できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視機能検査システムの一態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行する視機能検査手段と、前記視機能検査手段による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段とを有し、前記視機能検査手段は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する。
本発明の視機能検査システムの別の態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行する視機能検査手段と、前記視機能検査手段による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段とを有し、前記視機能検査手段は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示する。
【0009】
また、前記視標を表示する表示手段をさらに有してもよい。
【0010】
また、前記分析手段により求められた前記境界を表示する表示手段をさらに有してもよい。
【0011】
本発明の視機能検査システムの別の態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行することにより得られる視機能検査の結果を受け付ける受付手段と、前記視機能検査の結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段とを有し、前記視機能検査は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節して実行される
本発明の視機能検査システムの別の態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行することにより得られる視機能検査の結果を受け付ける受付手段と、前記視機能検査の結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析手段とを有し、前記視機能検査は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示して実行される。
【0012】
本発明の光学特性算出システムの一態様は、本発明の視機能検査システムによる検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する算出手段を有する。
【0013】
本発明の光学部材の選択方法の一態様は、本発明の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を選択する。
【0014】
本発明の光学部材の製造方法の一態様は、本発明の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造する。
【0015】
本発明の表示部材の製造方法の一態様は、本発明の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造する。
【0016】
本発明の照明装置の製造方法の一態様は、本発明の光学特性算出システムにより算出した前記光学特性に基づいて、光学部材を製造する。
【0017】
本発明の視機能検査装置の一態様は、表示部と、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を、前記表示部を介して順次提示し、被験者に対する視機能検査を実行する検査部と、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析部とを有し、前記検査部は、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を、前記表示部を介して前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する。
本発明の視機能検査装置の別の態様は、表示部と、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を、前記表示部を介して順次提示し、被験者に対する視機能検査を実行する検査部と、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求める分析部とを有し、前記検査部は、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を、前記表示部を介して前記被験者に順次提示する。
【0018】
本発明の光学特性算出装置の一態様は、本発明の視機能検査装置による検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する算出部を有する。
【0019】
本発明の視機能検査方法の一態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め、前記視機能検査では、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する。
本発明の視機能検査方法の別の態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め、
前記視機能検査では、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示する。
【0020】
本発明の光学特性の算出方法の一態様は、本発明の視機能検査方法による検査結果に基づいて、前記被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する。
【0021】
本発明のプログラムの一態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め、前記視機能検査では、前記複数の注目部分の色刺激の刺激値が互いに異なり、前記複数の注目部分の輝度が同一の前記視標を前記被験者に順次提示し、提示した前記複数の注目部分の各々が前記被験者にとって同じ明るさとなるように、前記複数の注目部分の各々の輝度を調節する処理をコンピュータに実行させる。
本発明のプログラムの別の態様は、複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示し、前記被験者に対する視機能検査を実行し、前記視機能検査による検査結果に基づいて、前記注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と前記注目部分および前記背景部分を含む視標の輝度平均値との相関を示す座標系において、前記色刺激の刺激値毎に、前記被験者が視認性を有する領域と前記視認性を有しない領域との境界を求め、前記視機能検査では、前記色刺激の刺激値毎に前記複数の注目部分の輝度が互いに異なる前記視標を前記被験者に順次提示する処理をコンピュータに実行させる。
【0022】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一態様は、本発明のプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検査時を含む多様な光環境を考慮した視機能検査を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】視機能検査システムの一実施形態を示す図である。
図2】不快グレアの視認性検査における基準検査に用いる視標の一例を示す図である。
図3】減能グレアの視認性検査に用いる視標の一例を示す図である。
図4図1に示した視機能検査システムにおける検査処理の一例を示す図である。
図5図2に示した視標における注目部分の輝度の変化の一例を示す図である。
図6】不快グレア検査のカラーフィルタ効果における視標の表示の一例を示す図である。
図7図3に示した視標においてサイズが異なるランドルト環の一例を示す図である。
図8図3に示した視標におけるランドルト環の輝度の変化の一例を示す図である。
図9図3に示した視標におけるグレア部分の輝度が一定の場合にランドルト環の輝度の変化の一例を示す図である。
図10図9に示した視標に対して輝度を50%低減した視標の一例を示す図である。
図11】カラーフィルタ効果の検査に用いる視標の一例を示す図である。
図12図4に示したステップS11およびステップS12の不快グレアの検査の結果に基づくCA図の一例を示す図である。
図13図4に示したステップS14およびステップS15の結果に基づくCA図の一例を示す図である。
図14図13に示したCA図にNDフィルタ効果の検査結果を追加した一例を示す図である。
図15図14に示したCA図にカラーフィルタ効果の検査結果を追加した一例を示す図である。
図16図4に示したステップS12のカラーフィルタ効果の検査において、Bの刺激値を50%とした黄色の視標を表示した場合のモニタの分光分布の一例を示す図である。
図17】被験者が視認したい光環境における分光分布の一例を示す図である。
図18図16および図17に示した分光分布を重畳させた場合の一例を示す図である。
図19図1に示した光学特性算出部が算出した分光透過率の一例を示す図である。
図20図1に示した視機能検査システムにおける光学部材の選択処理の一例を示す図である。
図21図1に示した視機能検査システムにおける光学部材の製造処理の一例を示す図である。
図22図1に示した視機能検査システムにおける表示部材の製造処理の一例を示す図である。
図23図1に示した視機能検査システムにおける照明装置の製造処理の一例を示す図である。
図24図4に示した処理を分担して実行する視機能検査システムと光学特性算出システムとの一例を示す図である。
図25】視機能検査システムの別の実施形態を示す図である。
図26図25に示した視機能検査システムにおける検査処理の一例を示す図である。
図27】カラーフィルタ効果の検査に用いる2つの注目部分を有する視標が表示されたモニタの画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0026】
図1は、視機能検査システムの一実施形態を示す。図1に示した視機能検査システムSYSは、コンピュータ11と入力デバイス18とモニタ19とを有する。なお、視機能検査システムSYSは、コンピュータ11と入力デバイス18とモニタ19との各部が一体として製造され視機能検査装置して動作してもよい。
【0027】
コンピュータ11は、コンピュータ装置であり、データ読込部12、記憶装置13、CPU14、メモリ15、入出力I/F(Interface)16およびバス17を有する。データ読込部12、記憶装置13、CPU14、メモリ15および入出力I/F16は、バス17を介して相互に接続される。コンピュータ11は、入出力I/F16を介して、キーボード、ポインティングデバイス等の入力デバイス18と、LCD(Liquid Crystal Display)等のモニタ19とにそれぞれ接続される。
【0028】
なお、モニタ19は、例えば、検査対象の被験者が着席した位置から、例えば1m程度の距離で、被験者が着席した際の視線(例えば、地上1.2m)程度の高さに設置される。また、モニタ19の画面の明るさ(輝度)は、例えば最大輝度が300cd/m2程度である場合、最大輝度の50%以下に設定されてもよい。
【0029】
また、モニタ19は、LCD等の表示装置としたが、分光分布が既知または計測可能であればどのようなものであってもよい。例えば、モニタ19は、RGBの三原色以外の光源(例えば、Yellow)を有する表示装置でもよく、バックライト方式の表示装置や、自発光型の表示装置、投影型の表示装置等でもよい。
【0030】
データ読込部12は、例えば、コンピュータ11が実行する視機能検査プログラム等のプログラムを外部から読み込む場合に用いられる。例えば、データ読込部12は、着脱可能な記憶媒体からデータを取得する光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等の読込デバイスである。あるいは、データ読込部12は、公知の通信規格に準拠して外部の装置と通信を行うUSB(Universal Serial Bus)インターフェース、LANモジュール、無線LANモジュール等の通信デバイスでもよい。
【0031】
記憶装置13は、例えば、ハードディスク装置や不揮発性の半導体メモリ等である。記憶装置13には、視機能検査プログラムや、プログラムの実行に必要となる各種のデータが記録される。
【0032】
なお、視機能検査プログラムは、例えば、光ディスク等に記録して頒布することができる。また、視機能検査プログラムは、USBメモリ等の可搬型記憶媒体に記録して頒布されてもよい。あるいは、視機能検査システムSYSは、視機能検査プログラムを、データ読込部12を介して、ネットワークを通じてダウンロードし、記憶装置13に格納してもよい。
【0033】
CPU14は、プロセッサであり、記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することにより、コンピュータ11の各部を制御する。CPU14は、例えば、記憶装置13に視機能検査プログラムを実行することで、視標決定部21、検査結果記憶部22、分析部23および光学特性算出部24として機能する。なお、視標決定部21、検査結果記憶部22、分析部23および光学特性算出部24は、専用の回路により実現されてもよい。視標決定部21、検査結果記憶部22、分析部23および光学特性算出部24の動作については、図4から図19で説明する。
【0034】
メモリ15は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等であり、視機能検査プログラムでの各種演算結果を一時的に記憶する。
【0035】
入出力I/F16は、入出力インターフェースであり、入力デバイス18からの各種入力を受け付けるとともに、モニタ19に対して表示用のデータを出力する。
【0036】
ここで、視機能検査とは、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査である。視機能の補正には、視認性を向上させることを目的とした補正に限らず、視認性の低下を伴う補正や、視機能を変化させる補正、視機能を最適化する補正等が含まれる。視機能検査では、例えば、図1に示したモニタ19に視標を順次表示し、被験者による視標の視認性(例えば、視標が見える/見えない、眩しさを感じる/感じない等)を検査する。このときの光環境は、例えば、モニタ19の見易さを考慮し、室内において、暗幕等により外光を遮断し、室内照明を点灯した環境とする。
【0037】
なお、視機能検査は、不快グレアを想定した視認性検査と、減能グレアを想定した視認性検査を含む。不快グレアとは、注目する部分と隣接する部分との輝度差が著しい場合や、眼に入射する光量が急激に増加する場合等に感じる不快な状態を示す。また、減能グレアとは、眼組織において生じる散乱光により、網膜像のコントラストが低下し、視力低下をきたす状態を示す。減能グレアおよび不快グレアの検査については、図2から図10で説明する。
【0038】
図2は、不快グレアの視認性検査における基準検査に用いる視標の一例を示す。図2に示した視標は、円状の注目部分Aとその背景部分とを有する。図2に示した視標を用いた視認性検査では、被験者は、視標から一定の距離離れた位置から見て、注目部分Aについての眩しさを判定する。
【0039】
図3は、減能グレアの視認性検査に用いる視標の一例を示す。図3に示した視標は、注目部分であるランドルト環Bとその背景部分とを有する。図3に示した視標は、ランドルト環Bの外側に妨害光としてリング状のグレア部分Cを有する。ランドルト環Bは、視力の判定に用いられるが、上下左右に限定されずいずれかの方向が1箇所欠けたリング状である。図3に示した視標を用いた視認性検査では、被験者は、視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を判定する。
【0040】
図4は、図1に示した視機能検査システムSYSにおける検査処理の一例を示す。図4に示した処理は、CPU14が記憶装置13に記憶された視機能検査プログラムを実行することにより実現される。すなわち、図4に示した処理は、視機能検査方法およびプログラムの一実施形態である。
【0041】
なお、図4に示した処理では、視機能検査システムSYSは、視機能検査を実行するとともに、視機能検査の結果に基づいて、被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を得るための算出処理も実行する。光学部材とは、機械・器具の一部を成し、光の現象および性質に関連したもの(例えば、光学レンズ、光学フィルタ等)である。
【0042】
また、眩しさ(明るさ)を知覚する被験者の視機能は、例えば、ウェーバー・フェヒナーの法則に基づいて輝度の対数値に比例する。すなわち、低輝度の場合、輝度の変化量と比べて輝度の対数値の変化量が大きいため、被験者は、色毎に輝度の変化に気付き易い。一方、輝度が大きい高輝度の場合、輝度の変化量と比べて輝度の対数値の変化量が小さいため、被験者は、色の違いに拘わらず輝度の変化に気付き難くなる。そこで、図4に示した処理では、モニタ19に表示する視標の輝度は、被験者が色毎に視標の輝度の変化が感知できる範囲とする。
【0043】
視機能検査システムSYSは、例えば、検査者による入力デバイス18の操作に基づいて、視機能検査の実行指示を受けた場合、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査を実行する。なお、不快グレアの検査の所要時間は、例えば、3分程度である。
【0044】
ステップS11では、視標決定部21は、CPU14の制御指示に基づいて、図2に示した円状の注目部分Aを含む視標を用い、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を実行する。例えば、視標決定部21は、図2に示した円状の注目部分Aを含む視標を、注目部分Aの輝度を所定の時間間隔で順次変化させてモニタ19に表示する。なお、所定の時間間隔は、変化前の視標の刺激が、変化後の視標がモニタ19に表示された時に、被験者の視機能に影響を与えない時間とする。
【0045】
図5は、図2に示した視標における注目部分Aの輝度の変化の一例を示す。図5に示すように、視標決定部21は、例えば、一定背景に提示された円状の注目部分Aの輝度を、40%、60%、80%、100%としたA-0、B-0、C-0、D-0の順に変化させる。視標決定部21は、視標から一定の距離離れた位置から、注目部分Aの輝度がA-0、B-0、C-0、D-0の視標のうち、被験者に対して「眩しい(明るい)と感じた」視標を判定させる。なお、被験者が感じる眩しさ(明るさ)は、不快グレアによるものであり、視機能検査において輝度が一定の背景部分と、円状の注目部分Aとの輝度差が著しい状態を示す。
【0046】
視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、被験者が眩しいと感じた視標の判定結果を取得する。なお、例えば、検査者が、「どちらの視標が眩しい(明るい)ですか」等を被験者に対して問いかけ、被験者からの口頭による判定結果の聞き取った上で、視標決定部21は、検査者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者の判定結果を取得してもよい。また、視標決定部21は、音声認識の技術を利用して、被験者の声に基づき判定結果を取得してもよいし、被験者自身が判定結果を入力してもよい。
【0047】
そして、CPU14は、被験者により眩しい(明るい)と判定された注目部分Aの輝度よりも一段暗い輝度の視標を、検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0048】
なお、視標決定部21は、例えば、A-0、B-0、C-0、D-0の輝度が異なる4つの注目部分Aを同時にモニタ19に表示し、被験者に対して明るい順に順位付けさせてもよい。また、A-0、B-0、C-0、D-0の輝度は、40%、60%、80%、100%以外のでもよい。
【0049】
ステップS12では、視標決定部21は、モニタ19の分光特性を変えて、被験者に対してカラーフィルタ効果の検査を実行する。例えば、視標決定部21は、被験者が色毎に視標の輝度の変化が感知できる範囲である所定の輝度X(cd/m2)で、2つの注目部分A1、A2を有し、注目部分A1、A2の色刺激の刺激値が異なる視標をモニタ19に順次表示し、カラーフィルタ効果の検査を実行する。視標決定部21は、図6に示すように、Rの色刺激値を50%とした青色の注目部分A1と、Gの色刺激値を50%とした赤色の注目部分A2とを有する視標をモニタ19に表示する。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、表示した視標の注目部分A1、A2のうち、被験者が「明るい(眩しい)と感じた」注目部分の1回目の判定を取得する。
【0050】
図6は、不快グレア検査のカラーフィルタ効果における視標の表示の一例を示す。なお、図6では、注目部分A1、A2は横に並べられたが、縦に並べられてもよいし、斜めに並べられてもよい。また、注目部分A1、A2の大きさは同じであるが、異なってもよい。また、色刺激の刺激値は、RGBを用いたが、XYZやL*a*b*等のパラメータを用いてもよい。また、注目部分A1、A2の形状は円形としたが、視機能検査の目的に応じて四角形やガボール視標等の形状でもよい。
【0051】
次に、視標決定部21は、例えば、Rの色刺激値を50%とした青色の注目部分A1と、Bの色刺激値を50%とした黄色の注目部分A2とを有する視標をモニタ19に表示する。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、表示した視標の注目部分A1、A2のうち、被験者が「明るい(眩しい)と感じた」注目部分の2回目の判定を取得する。そして、視標決定部21は、取得した判定結果に基づいて、明るく(眩しく)感じた色の順位付けする。例えば、被験者が、青色の注目部分A1と赤色の注目部分A2との比較において赤色の注目部分A2が明るいと1回目で判定し、青色の注目部分A1と黄色の注目部分A2との比較において青色の注目部分A1が明るいと2回目で判定した場合、視標決定部21は、被験者において同じ輝度でも赤、青、黄の順に明るさ(眩しさ)を感じると順位付けする。
【0052】
なお、視標決定部21は、Gの色刺激値を50%とした赤色の注目部分A1と、Bの色刺激値を50%とした黄色の注目部分A2とを有する視標をモニタ19に表示し、表示した注目部分A1、A2のうち明るいと感じる注目部分を被験者に判定させてもよい。あるいは、視標決定部21は、赤、青、黄の3つの注目部分を有する視標をモニタ19に表示し、3つの注目部分のうち明るいと感じる注目部分を被験者に順位付けさせてもよい。
【0053】
次に、視標決定部21は、例えば、1回目の判定と同様に、青色の注目部分A1と、赤色の注目部分A2とを有する所定の輝度Xの視標をモニタ19に表示する。視標決定部21は、明るく感じた色の順位付けに基づいて、注目部分A1または注目部分A2の輝度を順次減少または増加させ、被験者に対して2つの注目部分A1、A2の明るさが同じになったか否かを判定させる。そして、視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、2つの注目部分A1、A2の明るさが同じになったとの判定を受けた場合、判定を受けた時の輝度の減少量α(注目部分の輝度X-α)または増加量β(注目部分の輝度X+β)を取得する。
【0054】
なお、1回目の判定と2回目の判定において、モニタ19に表示される2つの注目部分A1、A2は、青が共通することから、視標決定部21は、青色の注目部分A1の輝度を所定の輝度Xに固定して、赤色の注目部分A2の輝度を減少または増加させる。また、視標決定部21は、赤色の注目部分A2の輝度を、所定値毎に減少または増加させてもよく、連続的に減少または増加させてもよい。あるいは、視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、赤色の注目部分A2の輝度を減少または増加させてもよい。
【0055】
また、視標決定部21は、図6に示すように、注目部分A1、A2を互いに離してモニタ19に表示したが、接触させて表示してもよい。この場合、注目部分A1、A2が互いに接触して表示されることで、注目部分A1と注目部分A2との間の輝度が同じになったか否かの判定が、被験者にとって容易になる。そして、モニタ19は、互いに接触して注目部分A1、A2を含む視標を表示するにあたり、注目部分A1、A2を分ける境界線を表示してもよく、表示しなくてもよい。また、モニタ19は、3つ以上の複数の注目部分を有する視標を表示する場合も同様である。
【0056】
次に、視標決定部21は、2回目の判定と同様に、青色の注目部分A1と、黄色の注目部分A2とを有する所定の輝度Xの視標をモニタ19に表示する。視標決定部21は、明るく感じた色の順位付けに基づいて、黄色の注目部分A2の輝度を順次減少または増加させ、被験者に対して2つの注目部分A1、A2の明るさが同じになったか否かを判定させる。そして、視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、2つの注目部分A1、A2の明るさが同じになったとの判定を受けた場合、判定を受けた時の黄色の注目部分A2における輝度の減少量α(注目部分の輝度X-α)または増加量β(注目部分の輝度X+β)を取得する。そして、CPU14は、被験者において同じ明るさと感じる赤、青、黄それぞれの注目部分の輝度を、検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0057】
このように、視標決定部21は、注目部分の明るさ(眩しさ)を色に基づいて順位付けし、各色の注目部分の明るさが互いに同じになるように、各色の注目部分の輝度を調整することで、従来と比べて、被験者に提示する注目部分の数を低減でき、検査の時間を短縮できる。また、同じ輝度で色が異なる2つの注目部分を有する視標がモニタ19に表示されることで、被験者は、2つの注目部分を比較して明るい(眩しい)と感じる注目部分を判定でき、視標決定部21は、従来と比べて精度良く不快グレアを検査できる。
【0058】
視機能検査システムSYSは、ステップS12の処理の後、所望により、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査を実行する。なお、減能グレアの検査の所要時間は、10分程度である。
【0059】
ステップS13では、視標決定部21は、減能グレアの検査のうち、被験者が図3に示した視標のランドルト環Bの欠けた方向を容易に認識できるランドルト環Bのサイズを決定する。そこで、視標決定部21は、サイズが異なるランドルト環Bを有する視標を順次モニタ19に表示する。
【0060】
図7は、図3に示した視標においてサイズが異なるランドルト環Bの一例を示す。視標決定部21は、図7に示すように、一定背景に提示されたランドルト環Bの大きさを、a-S、b-S、c-S、d-Sの順に順次変化させて、モニタ19に表示する。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、欠けた方向を容易に認識できるランドルト環Bのサイズを決定する。
【0061】
ステップS14では、視標決定部21は、ステップS13で決定されたサイズのランドルト環Bの視標を用いて、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を実行する。例えば、視標決定部21は、ランドルト環Bの明るさを明るい状態から暗い状態に順次変化させてモニタ19に表示する。
【0062】
図8は、図3に示した視標におけるランドルト環Bの輝度の変化の一例を示す。視標決定部21は、図8に示すように、一定背景に提示される視標のランドルト環Bの輝度を、例えば100%、80%、60%、40%としたa-01、b-01、c-01、d-01の順に明るい状態から暗い状態に変化させ、決定したサイズのランドルト環Bを有する視標を順次モニタ19に表示する。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を基準検査の結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0063】
なお、CPU14は、例えば、「視認できない」と判定したランドルト環Bの明るさと、「視認できる」と判定したランドルト環Bの明るさとの境界を示す閾値付近で、単純・変形上下法を用いてコントラストを変化させてもよい。そして、CPU14は、刺激値の折り返し平均値を算出し、算出した平均値を用いて輝度コントラスト値および輝度平均値を決定してもよい。
【0064】
ステップS15では、視標決定部21は、リング状のグレア部分Cをランドルト環Bの外側に追加した視標を用いて、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を被験者に対して実行する。すなわち、グレア部分Cが追加されることで、眼内において生じる散乱光により、網膜像のコントラストが低下し、視認性の低下(減能グレア)が発生する。このため、視標決定部21は、被験者における減能グレアを検査できる。例えば、視標決定部21は、グレア部分Cの輝度を一定に設定し、ランドルト環Bの輝度を明るい状態から暗い状態に順次変化させてモニタ19に表示する。
【0065】
図9は、図3に示した視標におけるグレア部分Cの輝度が一定の場合にランドルト環Bの輝度の変化の一例を示す。視標決定部21は、図9に示すように、一定背景に提示された一定の輝度のグレア部分Cに対して、ランドルト環Bの輝度をa-02、b-02、c-02、d-02の順に明るい状態から暗い状態に変化させる。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を基準検査の結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0066】
ステップS16では、視標決定部21は、光量を少なくしたND(Neutral Density)フィルタ効果の検査を実行する。NDフィルタ効果の検査では、ステップS15における基準検査と比較することにより、被験者の視機能に対する光量の影響に関する情報を取得できる。NDフィルタ効果の一例として、サングラスによる遮光効果がある。なお、サングラスとは、眩しさを軽減するために、全ての波長の光の輝度を一様に低減できるレンズを有する眼鏡を示す。
【0067】
視標決定部21は、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、図10に示すように、輝度を50%低減した各視標(a-N1、b-N1、c-N1、d-N1)を順次モニタ19に表示する。なお、視標決定部21は、輝度を50%低減したが、複数の段階で変化させて検査してもよい。
【0068】
図10は、図9に示した視標に対して輝度を50%低減した視標の一例を示す。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0069】
ステップS17では、視標決定部21は、モニタ19の分光特性を変えてカラーフィルタ効果の検査を実行する。カラーフィルタ効果の検査では、ステップS15における基準検査と比較することにより、被験者の視機能に対する光量の影響をあらわす第1の影響と、色刺激の刺激値の組み合わせの影響をあらわす第2の影響とに関する情報を取得できる。カラーフィルタ効果の一例として、カラーレンズを有する眼鏡による効果がある。なお、カラーレンズとは、特定の波長の光をカットする分光透過率の眼鏡用の光学レンズを示す。
【0070】
視標決定部21は、例えば、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、図11に示すように、Rの色刺激値を50%とした青色の各視標(a-C1、b-C1、c-C1、d-C1)を順次モニタ19に表示する。次に、視標決定部21は、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、Gの色刺激値を50%とした赤色の各視標(a-C2、b-C2、c-C2、d-C2)を順次モニタ19に表示する。そして、視標決定部21は、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、Bの色刺激値を50%とした黄色の各視標(a-C3、b-C3、c-C3、d-C3)を順次モニタ19に表示する。なお、視標決定部21は、赤、青、黄以外の色刺激の刺激値の組み合わせの視標をモニタ19に表示してもよい。
【0071】
図11は、カラーフィルタ効果の検査に用いる視標の一例を示す。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを色毎に判定させる。CPU14は、各色において「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0072】
なお、ステップS13からステップS17の処理では、視標決定部21は、輝度コントラスト値が大きい状態から小さい状態の順序で視標をモニタ19に表示してもよく、輝度コントラスト値が小さい状態から大きい状態の順序で視標をモニタ19に表示してもよい。また、ステップS13からステップS17の処理では、視標決定部21は、輝度コントラスト値を固定し、図5に示したA-0、図10に示したA-N1、図11に示したA-C1、A-C2、A-C3の順に視標を順次モニタ19に表示してもよい。この場合、輝度コントラスト値が固定の状態で、ステップS13からステップS17の処理が実行される。さらに、視標決定部21は、輝度コントラスト値と、輝度平均値と、視標の色刺激の刺激値との組み合わせをランダムに変更した視標を順次モニタ19に表示してもよい。
【0073】
ステップS18では、分析部23は、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査の結果と、CA図と、所望によりステップS13からステップS17の減能グレアの検査の結果とを用いて、色刺激の刺激値毎に、被験者が視認性を有する領域と視認性を有しない領域との境界を求める。
【0074】
なお、CA図は、例えば、特許第3963299号に開示されており、縦軸を輝度コントラスト値(Contrast)とし、横軸を輝度平均値(Average Luminance)とする視認性の二次元評価図であり、輝度コントラスト値と輝度平均値との相関を示す座標系である。
【0075】
また、輝度コントラスト値は、図2に示した視標の場合、注目部分Aの円状の部分と、背景部分との輝度のコントラストを示す値である。また、図3に示した視標の場合、輝度コントラスト値は、注目部分であるランドルト環Bと、グレア部分Cの内側の背景部分との輝度のコントラストを示す値である。また、輝度平均値は、注目部分および背景部分を含む視標の輝度平均値を示す値であり、対数輝度平均値を用いる。なお、輝度コントラスト値および輝度平均値は、他の方法で算出されてもよい。
【0076】
分析部23は、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査の結果と、所望によりステップS13からステップS17の減能グレアの検査との結果を用いて輝度コントラスト値および輝度平均値を算出する。例えば、分析部23は、各検査の結果として検査結果記憶部22に記憶した視標を読み出し、読み出した視標の輝度画像を生成する。そして、分析部23は、例えば、特許第3963299号に示された方法等を基づいて、生成した輝度画像に対しマトリックスを用いた畳み込み演算を実行し、輝度コントラスト値および輝度平均値を算出する。
【0077】
図12は、図4に示したステップS11およびステップS12の不快グレアの検査の結果に基づくCA図の一例を示す。点P1は、ステップS11の基準検査の結果を示す。すなわち、点P1は、図2に示した注目部分Aの輝度を順次明るくした場合、被験者が眩しさ(明るさ)を感じない境界を示す。そして、分析部23は、点P1を算出することで、CA図における境界線L1を求める。境界線L1は、点P1を通る所定の直線であり、2015年日本建築学会大会学術講演会梗概集(関東)40200等の手法を用いて求められる。そして、図12に示したCA図では、境界線L1の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線L1の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。
【0078】
点PR、PB、PYは、ステップS12におけるカラーフィルタ効果の検査の結果を示す。点PR、PB、PYの各々は、ステップS12のカラーフィルタ効果の検査において、被験者にとって同じ明るさと感じた時の赤、青、黄それぞれの視標の注目部分Aの輝度値X-α、X、X+βを用いて算出された点を示す(α、βは正の実数)。なお、点P1、PR、PB、PYは、図12に示すように、直線L01上に存在する。
【0079】
点PR、PB、PYの各々の位置がCA図上において算出されることで、境界線LR、LB、LYの各々は求まる。すなわち、分析部23は、点PR、PB、PYの各々を通るように境界線L1を平行移動することで、境界線LR、LB、LYの各々を求める。なお、境界線LR、LB、LYの各々を求めるにあたり、分析部23は、境界線L1の平行移動と合わせて、境界線L1の傾きや形状を全体的に、または部分的に補正してもよい。そして、境界線LR、LB、LYの各々の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線LR、LB、LYの各々の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。図12では、図2に示した注目部分Aを含む視標を用いたステップS11の基準検査を対照とすると、ステップS12のカラーフィルタ効果の検査結果は、被験者が視認性を有する領域が変化することを示し、矢印の方向に被験者の視認性が改善することを示す。
【0080】
図13は、図4に示したステップS14およびステップS15の結果に基づくCA図の一例を示す。点R1は、ステップS14の基準検査の結果、すなわち図3に示したランドルト環Bの輝度を順次暗くした場合、被験者が視標を視認できなくなる境界を示す。そして、分析部23は、点R1を算出することで、例えば2015年日本建築学会大会学術講演会梗概集(関東)40238等の手法を用い、CA図において境界線L4を求める。そして、図13に示したCA図では、境界線L4の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線L4の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。
【0081】
一方、点R2は、ステップS15の基準検査の結果、すなわち図3に示したグレア部分Cを追加しランドルト環Bの明るさを順次暗くした際に、被験者が視標を視認できなくなる境界を示す。なお、点R1および点R2は、図13に示すように、直線L02上に存在する。点R2の位置がCA図上において算出されることで、境界線L5は求まる。すなわち、分析部23は、点R2を通るように境界線L4を平行移動することで、境界線L5を求める。なお、境界線L5を求めるにあたり、分析部23は、境界線L4の平行移動と合わせて、境界線L4の傾きや形状を全体的に、または部分的に補正してもよい。そして、境界線L5の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線L5の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。図13では、ステップS14の基準検査を対照とすると、ステップS15の基準検査の結果は、被験者が視認性を有する領域が減少し、被験者の視認性が悪化することを示す。
【0082】
図14は、図13に示したCA図にNDフィルタ効果の検査結果を追加した一例を示す。図14に示した点R3は、ステップS16のNDフィルタ効果の検査の検査結果を示し、被験者が視標を視認できなくなる境界を示す。なお、点R3は、図14に示すように、点R1、R2とともに直線L02上に存在する。点R3の位置がCA図上において算出されることで、境界線L6は求まる。すなわち、分析部23は、点R3を通るように境界線L4を平行移動することで、境界線L6を求める。なお、境界線L6を求めるにあたり、分析部23は、境界線L4の平行移動と合わせて、境界線L4の傾きや形状を全体的に、または部分的に補正してもよい。そして、境界線L6の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線L6の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。図14では、ステップS15の基準検査を対照とすると、ステップS16のNDフィルタ効果の検査の結果は、NDフィルタ効果により被験者の視認性が変化し、矢印の方向に被験者の視認性が改善することを示す。
【0083】
図15は、図14に示したCA図にカラーフィルタ効果の検査結果を追加した一例を示す。点R4は、ステップS17のカラーフィルタ効果の検査の結果のうち、最も効果が高い、すなわち視認できるランドルト環Bの輝度が最も低い(暗い)検査結果を示し、被験者が視標を視認できなくなる境界を示す。なお、点R4は、図15に示すように、点R1-R3とともに直線L02上に存在する。点R4の位置がCA図上において算出されることで、境界線L7は求まる。すなわち、分析部23は、点R4を通るように境界線L4を平行移動することで、境界線L7を求める。なお、境界線L7を求めるにあたり、分析部23は、境界線L4の平行移動と合わせて、境界線L4の傾きや形状を全体的に、または、部分的に補正してもよい。そして、境界線L7の下方の領域は、被験者が視認性を有する領域であり、境界線L7の上方の領域は、被験者が視認性を有しない領域である。図15では、ステップS15の基準検査を対照とすると、ステップS17のカラーフィルタ効果の検査の結果は、カラーフィルタ効果により被験者の視認性が変化し、矢印の方向に被験者の視認性が改善することを示す。
【0084】
分析部23は、図12から図15に示したCA図を、入出力I/F16を介してモニタ19に表示してもよい。図12から図15に示したCA図がモニタ19に表示されることにより、視機能検査システムSYSは、検査者や被験者に対して視機能検査の結果を視覚的に提示できる。
【0085】
光学特性を算出する場合には、ステップS19において、光学特性算出部24は、被験者の視機能を補正するための光学部材として眼鏡用のレンズの光学特性を算出する。すなわち、図4に示した処理は、視機能検査システムSYSが、視機能検査の結果に基づいて光学特性を算出する光学特性算出装置として動作する場合を示す。なお、光学特性算出部24が算出する光学特性は、XYZまたはL*a*b*等の値である。例えば、XYZの値は、CIE(国際照明委員会)により定められた表色系の1つであり、光学特性算出部24は、光学レンズの光学特性を示す評価値としてXYZの値を算出する。
【0086】
また、光学特性算出部24は、光学部材として、光学レンズの光学特性を算出してもよく、ルーペ型の光学レンズの光学特性を算出してもよい。また、光学特性算出部24は、被験者の各々に合わせて光の波長をコントロールする光学部材や、照明および窓ガラス等から入射する光量を調整するカバーやフィルム等の光学特性を算出してもよい。また、光学特性算出部24は、床、壁、天井等の建材や塗料の光学特性を算出してもよい。
【0087】
光学特性算出部24は、ステップS11からステップS17の処理それぞれの検査結果を検査結果記憶部22から読み出し、光学特性の算出に用いる検査結果を選択する。なお、光学特性算出部24は、光学特性の算出に用いる検査結果をどのように選択してもよい。例えば、光学特性算出部24は、図12から図15に示したCA図を参照し、被験者が視認性を有する領域が最も大きいものを選択してもよい。あるいは、光学特性算出部24は、被験者の利用目的に応じて検査結果を選択してもよい。なお、光学特性算出部24は、ステップS12のカラーフィルタ効果の検査結果を選択した場合、最も効果が高い、すなわち眩しいと感じない輝度が最も高い(明るい)色(図12の場合は「黄」)の視標を選択する。
【0088】
そこで、光学特性算出部24は、ステップS12のカラーフィルタ効果の検査において、Bの刺激値を50%とした場合の黄色の視標を用いて光学特性を算出する。光学特性算出部24は、光学特性を算出するにあたり、選択した視標に相当する光源の分光分布として、視標を提示した際のモニタ19の分光分布により求める。なお、光学特性算出部24が求める光源の分光分布は、モニタ19に限定されず、電球や太陽等の光を発生する発光体の分光分布でもよく、発光体の光を反射する反射光の分光分布でもよい。
【0089】
図16は、図4に示したステップS12のカラーフィルタ効果の検査において、Bの刺激値を50%とした黄色の視標を表示した場合のモニタ19の分光分布の一例を示す。また、図17は、被験者が視認したい光環境における分光分布の一例を示す。また、図18は、図16および図17に示した分光分布を重畳させた場合の一例を示す。なお、図16から図18の各々では、横軸は光の波長を示し、縦軸は各波長における分光放射輝度または分光放射照度を示す。また、図16に示したモニタ19の分光分布は、「分光分布LA」とも称され、被験者が視認したい光環境における分光分布は、「分光分布LB」とも称される。
【0090】
光学特性算出部24は、分光分布LBを分光分布LAに変換するための分光透過率を算出する。なお、分光透過率は、透過した光束の分光密度と入射した光束の分光密度比を示す。光学特性算出部24は、所定間隔の光の波長毎に、(分光分布LAの縦軸の数値)/(分光分布LBの縦軸の数値)を求め、分光透過率を算出する。なお、分光透過率を算出する光の波長の間隔は、等間隔でもよく、非等間隔でもよい。例えば、光学特性算出部24は、被験者が視認したい波長帯では、狭い波長の間隔で分光透過率を算出し、それ以外の波長帯では、広い波長の間隔で分光透過率を算出してもよい。
【0091】
図19は、図1に示した光学特性算出部24が算出した分光透過率の一例を示す。図19に示すように、光学特性算出部24は、分光透過率の上限値を1.00とし、算出した分光透過率が1.00を超える場合、1.00に置き換える。そして、光学特性算出部24は、図19に示した分光透過率からXYZの値を算出し、視機能検査システムSYSは、視機能検査の処理を終了する。
【0092】
なお、光学特性算出部24は、被験者の視機能を補正するための光学部材の分光透過率の波長依存特性を求めるにあたり、求める波長領域を、視標のR、G、B各光の主たる発光波長領域に対応した3つの波長領域から構成されるという前提を設定し、さらに、3つの波長領域における各透過率平均値を、視標のR、G、Bの各刺激値と同一の数値と定義する処理を実行してもよい。
【0093】
また、図4に示した処理は、例えば、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査を省略してもよく、減能グレアの検査を先に実行した後、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査を実行してもよい。また、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査と、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査とは、複数回繰り返し実行されてもよい。これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を正確に取得できる。また、不快グレアの検査は、ステップS11の基準検査を省略してもよい。
【0094】
また、例えば、減能グレアの検査では、ランドルト環Bとグレア部分Cとを含む視標を用いたが、グレア部分Cはリング状以外の形状や、円形または矩形等の複数の図形の組み合わせでもよい。例えば、視標決定部21は、「文字を読み易くする」、または「複雑な背景から注目するものを見つけ易くする」等の視認性検査の目的に応じて、グレア部分Cの形状を決定してもよい。この場合、検査結果記憶部22は、互いに異なる複数のグレア部分Cの形状を示す形状データを予め記憶することが好ましく、視標決定部21は、形状データを用いて、視認性検査の目的に応じてグレア部分Cの形状を決定することが好ましい。
【0095】
また、減能グレアの検査は、ランドルト環Bとともにグレア部分Cをモニタ19に表示する代わりに、白熱灯やLED(Light Emitting Diode)照明等の1つまたは2以上の複数の光源、または少なくとも1つの光源と光源の光を反射する1つまたは複数の反射体とを、グレア部分Cとして用いてもよい。例えば、1つまたは複数の光源がモニタ19に対して調整可能な位置に配置され、視標決定部21は、視認性検査の目的に応じて、グレア部分Cとして点灯させる光源、モニタ19に対する位置および輝度等を決定する。例えば、太陽光環境下や夜間ヘッドライト投光環境下の視認性を想定する場合は、高輝度出力が可能な光源を用いる。
【0096】
図1から図19に示した実施形態では、視機能検査システムSYSは、視標における複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示して、被験者に対し不快グレアの検査を実行する。また、視機能検査システムSYSは、注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と、注目部分および背景部分を含む視標の輝度平均値と、視標の色刺激の刺激値との少なくとも1つが異なる視標を被験者に順次提示して、被験者に対し減能グレアの検査を実行してもよい。視機能検査システムSYSは、検査結果に基づいて、輝度コントラスト値と輝度平均値との相関を示す座標系において、色刺激の刺激値の組み合わせ毎に、被験者が視認性を有する領域と視認性を有しない領域との境界を求める。これにより、視機能検査システムSYSは、求めた境界に基づいて、光学部材の光学特性と視認性との関係を推測でき、検査時を含む多様な光環境を考慮した視機能検査を実現できる。
【0097】
また、視機能検査システムSYSは、視標をモニタ19に表示するため、被験者は、複数の光学レンズを試用することなく、比較的短時間で、視機能検査を実行できる。
【0098】
また、視機能検査システムSYSは、不快グレアの検査において、同じ輝度で色が異なる複数の視標をモニタ19に表示し、被験者が複数の視標を比較して明るい(眩しい)と感じる視標を判定できるため、従来と比べて精度良く検査できる。
【0099】
なお、視機能検査システムSYSは、CA図を用いた分析において様々な可能性が考えられる。例えば、被験者が光学レンズ等の光学部材を使用する環境において支配的な光源の分光分布を求め、光学部材の光学特性の算出に用いることにより、使用環境における視認性をシミュレーションすることが可能である。また、光学レンズ等の光学部材の光学特性毎にCA図を作成することが可能であるため、使用に関する様々なシミュレーションも可能である。
【0100】
また、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能検査に基づいて、特性の異なる複数の光学部材から被験者の視機能を補正する光学部材を選択してもよい。
【0101】
図20は、図1に示した視機能検査システムSYSにおける光学部材の選択処理の一例を示す。なお、ステップS11からステップS19の処理は、図4に示した処理と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0102】
ステップS20では、CPU14は、ステップS19で算出された光学特性(例えば、XYZやL*a*b*等)に基づいて光学部材の選択が行われる。例えば、記憶装置13は、予め複数の光学部材の各々の光学特性(XYZやL*a*b*等)を有するテーブルを記憶することで、CPU14は、記憶されたテーブルを参照し、ステップS19で算出された光学特性に対応する、あるいは算出された光学特性に近い光学部材を選択する。
【0103】
これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を補正する光学部材を選択できる。
【0104】
また、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する光学部材を製造してもよい。
【0105】
図21は、図1に示した視機能検査システムSYSにおける光学部材の製造処理の一例を示す。なお、ステップS11からステップS19の処理は、図4に示した処理と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0106】
ステップS30では、CPU14は、ステップS19で算出された光学特性(例えば、XYZやL*a*b*等)に基づいて、あるいは算出された光学特性に近い光学部材の製造条件を決定する。
【0107】
ステップS31では、CPU14は、ステップS30で決定された製造条件に基づいた光学部材の製造指示を、光学部材を製造する装置に出力する。これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を補正する光学部材を製造できる。
【0108】
また、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する表示部材を製造してもよい。なお、表示部材とは、例えば、コンピュータの各種モニタ、スマートフォンやタブレット型端末等の携帯通信端末のモニタ、テレビのモニタ、拡大読書器(CCTV:Closed Circuit TV)のディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ等である。
【0109】
図22は、図1に示した視機能検査システムSYSにおける表示部材の製造処理の一例を示す。なお、ステップS11からステップS19の処理は、図4に示した処理と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0110】
ステップS40では、CPU14は、ステップS19で算出された光学特性(例えば、XYZやL*a*b*)に基づいて、あるいは算出された光学特性に近い表示部材の製造条件を決定する。
【0111】
ステップS41では、CPU14は、ステップS40で決定された製造条件に基づいた表示部材の製造指示を、表示部材を製造する装置に出力する。これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を補正する表示部材を製造できる。
【0112】
また、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する照明装置を製造してもよい。
【0113】
図23は、図1に示した視機能検査システムSYSにおける照明装置の製造処理の一例を示す。なお、ステップS11からステップS19の処理は、図4に示した処理と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0114】
ステップS50では、CPU14は、ステップS19で算出された光学特性(例えば、XYZやL*a*b*)に基づいて、あるいは算出された光学特性に近い照明装置の製造条件を決定する。
【0115】
ステップS51では、CPU14は、ステップS50で決定された製造条件に基づいた照明装置の製造指示を、照明装置を製造する装置に出力する。これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を補正する照明装置を製造できる。
【0116】
また、図20から図23に示した処理は、図4に示した処理と同様に、例えば、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査を省略してもよく、減能グレアの検査を先に実行した後、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査を実行してもよい。また、ステップS11およびステップS12の不快グレアの検査と、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査とは、複数回繰り返し実行されてもよい。これにより、視機能検査システムSYSは、被験者の視機能を正確に取得できる。また、不快グレアの検査は、ステップS11の基準検査を省略してもよい。
【0117】
また、視機能検査システムSYSは、医療機器や医療装置への応用も可能である。
【0118】
また、視機能検査システムSYSは、1つのシステム内で図4に示した処理を実行したが、各処理を分担して実行する複数のシステムに分割されてもよい。
【0119】
図24は、図4に示した処理を分担して実行する視機能検査システムと光学特性算出システムとの一例を示す。図24では、コンピュータ111と入力デバイス118とモニタ119とを有する視機能検査システムと、コンピュータ211と入力デバイス218とモニタ219とを有する光学特性算出システムとが、図4に示した処理を分担して実行する。そして、図24に示した視機能検査システムは、例えば、医療機関等に配置され視機能検査の処理を実行し、図24に示した光学特性算出システムは、分析専門の企業等に配置され分析や光学特性の算出の処理を実行する。
【0120】
図24に示したコンピュータ111は、データ読込部112、記憶装置113、CPU114、メモリ115、入出力I/F116、バス117および通信部101を有する。データ読込部112、記憶装置113、メモリ115、入出力I/F116およびバス117の各々は、図1に示したデータ読込部12、記憶装置13、メモリ15、入出力I/F16およびバス17と同様に動作である。図24に示したコンピュータ111の各部は、CPU114により制御される。通信部101は、コンピュータ111と外部の装置との間を有線または無線で通信するための送受信部である。CPU114は、記憶装置113に記憶された視機能検査プログラムを実行することで、視標決定部121および検査結果記憶部122として動作する。なお、視標決定部121および検査結果記憶部122は、図1に示した視標決定部21および検査結果記憶部22と同様に動作する。そして、コンピュータ111は、バス117および入出力I/F116を介して、視機能検査の結果をコンピュータ211に出力する。
【0121】
図24に示したコンピュータ211は、データ読込部212、記憶装置213、CPU214、メモリ215、入出力I/F216、バス217および通信部201を有する。データ読込部212、記憶装置213、メモリ215、入出力I/F216およびバス217の各々は、図1に示したデータ読込部12、記憶装置13、メモリ15、入出力I/F16およびバス17と同様に動作する。図24に示したコンピュータ211の各部は、CPU214により制御される。通信部201は、コンピュータ211と外部の装置との間を有線または無線で通信するための送受信部である。CPU214は、記憶装置213に記憶された光学特性算出プログラムを実行することで、分析部223および光学特性算出部224として動作する。なお、分析部223および光学特性算出部224は、図1に示した分析部23および光学特性算出部24と同様に動作する。そして、コンピュータ211は、コンピュータ111から受信した視機能検査の結果に基づいて、CA図を分析し、光学特性を算出する。
【0122】
なお、視標決定部121、検査結果記憶部122、分析部223および光学特性算出部224は、専用の回路によってハードウェア的に構成されていてもよい。
【0123】
図25は、視機能検査装置の別の実施形態の一例を示す。図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0124】
図25に示した視機能検査システムSYS1は、図1に示した視機能検査システムSYSと同様に、コンピュータ11と入力デバイス18とモニタ19とを有する。
【0125】
コンピュータ11は、コンピュータ装置であり、データ読込部12、記憶装置13、CPU14、メモリ15および入出力I/F16、バス17を有する。データ読込部12、記憶装置13、CPU14、メモリ15および入出力I/F16は、バス17を介して相互に接続される。コンピュータ11は、入出力I/F16を介して、キーボード、ポインティングデバイス等の入力デバイス18と、LCD等のモニタ19とがそれぞれ接続される。
【0126】
なお、モニタ19は、例えば、検査対象の被験者が着席した位置から、例えば1m程度の距離で、被験者が着席した際の視線(例えば、地上1.2m)程度の高さに設置される。また、モニタ19の画面の明るさ(輝度)は、例えば最大輝度が300cd/m2程度である場合、最大輝度の50%以下に設定されてもよい。
【0127】
CPU14は、プロセッサであり、記憶装置13に記憶されたプログラムを実行することにより、コンピュータ11の各部を制御する。CPU14は、例えば、記憶装置13に視機能検査プログラムを実行することで、視標決定部21a、検査結果記憶部22、分析部23および光学特性算出部24として機能する。なお、視標決定部21a、検査結果記憶部22、分析部23および光学特性算出部24は、専用の回路により実現されてもよい。視標決定部21aの動作については、図26から図27で説明する。
【0128】
図26は、図25に示した視機能検査システムSYS1における検査処理の一例を示す。図26に示したステップの処理のうち、図4に示したステップと同一または同様の処理を示すものについては、同一のステップ番号を付す。図26に示した処理は、CPU14が記憶装置13に記憶された視機能検査プログラムを実行することにより実現される。すなわち、図26に示した処理は、視機能検査方法およびプログラムの別の実施形態である。
【0129】
なお、図26に示した処理では、視機能検査システムSYS1は、図4に示した処理と同様に、視機能検査を実行するとともに、視機能検査の結果に基づいて、被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を得るための算出処理も実行する。
【0130】
また、眩しさ(明るさ)を知覚する被験者の視機能は、例えば、ウェーバー・フェヒナーの法則に基づいて輝度の対数値に比例する。すなわち、低輝度の場合、輝度の変化と比べて輝度の対数値の変化量が大きいため、被験者は、色毎の輝度の変化に気付き易い。一方、輝度が大きい高輝度の場合、輝度の変化と比べて輝度の対数値の変化量が小さいため、被験者は、色毎の輝度の変化に気付き難くなる。そこで、図26に示した処理では、モニタ19に表示する視標の輝度は、図4に示した処理の場合と比べて、被験者が色毎の輝度の変化に気付き難い高輝度の範囲とする。
【0131】
視機能検査システムSYS1は、例えば、検査者による入力デバイス18の操作に基づいて、視機能検査の実行指示を受けた場合、ステップS11およびステップS12aの不快グレアの検査を実行する。
【0132】
ステップS11では、視標決定部21aは、図1に示した視標決定部21と同様に、CPU14の制御指示に基づいて、図2に示した円状の注目部分Aを含む視標を用い、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を実行する。例えば、視標決定部21aは、図2に示した注目部分Aを含む視標を、注目部分Aの輝度を所定の時間間隔で順次変化させてモニタ19に表示する。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の入力操作に基づいて、被験者が眩しいと感じた視標の判定結果を取得する。そして、CPU14は、被験者により眩しい(明るい)と判定された注目部分Aの輝度よりも一段暗い輝度の視標を、検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0133】
ステップS12aでは、視標決定部21aは、カラーフィルタ効果の検査を実行する。カラーフィルタ効果の検査では、被験者の視機能に対する光量および色の影響に関する情報を取得することができる。
【0134】
視標決定部21aは、図27に示すように、注目部分を2つずつ含む視標(A-B、B-B、C-B)をモニタ19に順次表示する。視標(A-B、B-B、C-B)における注目部分A-0、B-0、C-0、D-0は、同じ色(Rの刺激値を50%とした青色)であり、各注目部分の輝度XA、XB、XC、XD(cd/m2)は、XA<XB<XC<XDである。
【0135】
図27は、カラーフィルタ効果の検査に用いる2つの注目部分を有する視標が表示されたモニタ19の画面の一例を示す。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、2つの注目部分のうち、いずれの注目部分が眩しい(明るい)かを判定させる。そして、CPU14は、青色の光において、2つの注目部分のうち、どちらの視標が眩しいか判別できないと判定した場合の、その提示した2つの注目部分の低い方の輝度を有した注目部分を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0136】
次に、視標決定部21aは、注目部分を2つずつ含む視標(A-R、B-R、C-R)をモニタ19に順次表示する。視標(A-R、B-R、C-R)における注目部分A-0、B-0、C-0、D-0は、同じ色(Gの刺激値を50%とした赤色)であり、各注目部分の輝度XA、XB、XC、XD(cd/m2)は、XA<XB<XC<XDである。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、2つの注目部分のうち、いずれの注目部分が眩しい(明るい)かを判定させる。そして、CPU14は、赤色の光において、2つの注目部分のうち、どちらの視標が眩しいか判別できないと判定した場合の、その提示した2つの注目部分の低い方の輝度を有した注目部分を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0137】
さらに、視標決定部21aは、注目部分を2つずつ含む視標(A-Y、B-Y、C-Y)をモニタ19に順次表示する。視標(A-Y、B-Y、C-Y)における注目部分A-0、B-0、C-0、D-0は、同じ色(Bの刺激値を50%とした黄色)であり、各注目部分の輝度XA、XB、XC、XD(cd/m2)は、XA<XB<XC<XDである。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、2つの注目部分のうち、いずれの注目部分が眩しい(明るい)かを判定させる。そして、CPU14は、黄色の光において、2つの注目部分のうち、どちらの視標が眩しいか判別できないと判定した場合の、その提示した2つの注目部分の低い方の輝度を有した注目部分を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0138】
これにより、同じ色で輝度が異なる2つの注目部分を含む視標がモニタ19に表示されることで、被験者は、2つの注目部分を比較して明るい(眩しい)と感じる境界を判定でき、視標決定部21は、従来と比べて精度良く不快グレアを検査できる。なお、視標決定部21aは、注目部分A-0、B-0、C-0、D-0に対して、色刺激の刺激値を変化させた注目部分を3つ以上の複数含む視標をモニタ19に順次表示してもよい。
【0139】
視機能検査システムSYS1は、ステップS12aの処理の後、所望によりステップS13からステップS17の減能グレアの検査を実行する。
【0140】
ステップS13では、視標決定部21aは、減能グレアの検査のうち、被験者が図3に示した視標のランドルト環Bの欠けた方向を容易に認識できるランドルト環Bのサイズを決定する。このため、視標決定部21aは、図7に示すように、一定背景に提示されたランドルト環Bの大きさを、a-S、b-S、c-S、d-Sの順に順次変化させて、モニタ19に表示する。視標決定部21は、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、欠けた方向を容易に認識できるランドルト環Bのサイズを決定する。
【0141】
ステップS14では、視標決定部21aは、ステップS13で決定したサイズのランドルト環Bの視標を用いて、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を実行する。視標決定部21aは、図8に示すように、一定背景に提示される視標のランドルト環Bの明るさを、a-01、b-01、c-01、d-01の順に明るい状態から暗い状態に変化させ、決定したサイズのランドルト環Bを有する視標を順次モニタ19に表示する。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を基準検査の結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0142】
ステップS15では、視標決定部21aは、リング状のグレア部分Cをランドルト環Bの外側に追加した視標を用いて、被験者の視機能を補正する光学部材に関する情報を取得するための検査の基準となる基準検査を被験者に対して実行する。例えば、視標決定部21aは、図9に示すように、一定背景に提示された一定の輝度のグレア部分Cに対して、ランドルト環Bの輝度を、a-02、b-02、c-02、d-02の順に明るい状態から暗い状態に変化させる。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を基準検査の結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0143】
ステップS16では、視標決定部21aは、光量を少なくしたNDフィルタ効果の検査を実行する。視標決定部21aは、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、図10に示すように、輝度を50%低減した各視標(a-N1、b-N1、c-N1、d-N1)を順次モニタ19に表示する。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを判定させる。CPU14は、「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0144】
ステップS17では、視標決定部21aは、モニタ19の分光特性を変えてカラーフィルタ効果の検査を実行する。視標決定部21aは、例えば、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、図11に示すように、Rの色刺激値を50%とした青色の各視標(a-C1、b-C1、c-C1、d-C1)を順次モニタ19に表示する。次に、視標決定部21は、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、Gの色刺激値を50%とした赤色の各視標(a-C2、b-C2、c-C2、d-C2)を順次モニタ19に表示する。そして、視標決定部21は、図9に示した各視標(a-02、b-02、c-02、d-02)に対して、Bの色刺激値を50%とした黄色の各視標(a-C3、b-C3、c-C3、d-C3)を順次モニタ19に表示する。なお、視標決定部21は、赤、青、黄以外の色刺激の刺激値の組み合わせの視標をモニタ19に表示してもよい。視標決定部21aは、被験者による入力デバイス18の操作に基づいて、被験者が視標から一定の距離離れた位置から見て、ランドルト環Bの欠けた方向を認識できるか否かを色毎に判定させる。CPU14は、各色において「視認できない」と判定した視標よりもランドルト環Bの輝度が一段明るい視標を検査結果として検査結果記憶部22に記憶する。
【0145】
ステップS18では、分析部23は、ステップS11およびステップS12aの不快グレアの検査の結果と、CA図と、所望によりステップS13からステップS17の減能グレアの検査の結果とを用いて、色刺激の刺激値毎に、被験者が視認性を有する領域と視認性を有しない領域との境界を求める。
【0146】
ステップS19では、光学特性算出部24は、ステップS18で求められた境界に基づいて、被験者の視機能を補正するための光学部材の光学特性を算出する。そして、視機能検査システムSYS1は、検査処理を終了する。
【0147】
なお、図26に示した処理は、例えば、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査を省略してもよく、減能グレアの検査を先に実行した後、ステップS11およびステップS12aの不快グレアの検査を実行してもよい。また、ステップS11およびステップS12aの不快グレアの検査と、ステップS13からステップS17の減能グレアの検査とは、複数回繰り返し実行されてもよい。これにより、視機能検査システムSYS1は、被験者の視機能を正確に取得できる。また、不快グレアの検査は、ステップS11の基準検査を省略してもよい。
【0148】
また、視機能検査システムSYS1は、不快グレアの検査において、図26に示したステップS12aの処理とともに、図4に示したステップS12の処理を実行してもよい。これにより、視機能検査システムSYS1は、低輝度の光環境から高輝度の光環境における被験者の視機能を検査できる。
【0149】
また、減能グレアの検査では、ランドルト環Bとグレア部分Cとを含む視標を用いたが、グレア部分Cはリング状以外の形状や、円形または矩形等の複数の図形の組み合わせでもよい。
【0150】
また、視標決定部21aは、図2および図3に示すように、円状の注目部分Aやランドルト環Bを有する視標を用いたが、図形、文字や絵文字等の形状を有してもよく、ガボール視標や縞視標等でもよい。すなわち、視標決定部21aは、「文字を読み易くする」、または「複雑な背景から注目するものを見つけ易くする」等の視認性検査の目的に応じて、注目部分の形状を決定することが好ましい。例えば、視標決定部21aは、視認性検査の目的が「文字を読み易くする」の場合、ランドルト環、文字や絵文字、あるいはガボール視標や縞視標等の視標に決定する。また、視標決定部21aは、視認性検査の目的が「複雑な背景から注目するものを見つけ易くする」の場合、円視標、ガボール視標や縞視標等の視標に決定する。これらの場合、検査結果記憶部22は、互いに異なる複数の注目部分の形状を示す形状データを予め記憶することが好ましく、視標決定部21aは、形状データを用いて、視認性検査の目的に応じて注目部分の形状を決定することが好ましい。
【0151】
また、減能グレアの検査は、ランドルト環Bとともにグレア部分Cをモニタ19に表示する代わりに、白熱灯やLED照明等の1つまたは2以上の複数の光源、または少なくとも1つの光源と光源の光を反射する1つまたは複数の反射体とを、グレア部分Cとして用いてもよい。例えば、1つまたは複数の光源がモニタ19に対して調整可能な位置に配置され、視標決定部21aは、視認性検査の目的に応じて、グレア部分Cとして点灯させる光源、モニタ19に対する位置および輝度等を決定する。例えば、太陽光環境下や夜間ヘッドライト投光環境下の視認性を想定する場合は、高輝度出力が可能な光源を用いる。
【0152】
図25から図27に示した実施形態では、視機能検査システムSYS1は、視標における複数の注目部分の輝度または色刺激の刺激値が互いに異なる視標を被験者に順次提示して、被験者に対し不快グレアの検査を実行する。また、視機能検査システムSYS1は、注目部分の輝度と背景部分の輝度との輝度コントラスト値と、注目部分および背景部分を含む視標の輝度平均値と、視標の色刺激の刺激値との少なくとも1つが異なる視標を被験者に順次提示して、被験者に対し減能グレアの検査を実行してもよい。視機能検査システムSYS1は、検査結果に基づいて、輝度コントラスト値と輝度平均値との相関を示す座標系において、色刺激の刺激値の組み合わせ毎に、被験者が視認性を有する領域と視認性を有しない領域との境界を求める。これにより、視機能検査システムSYS1は、求めた境界に基づいて、光学部材の光学特性と視認性との関係を推測でき、検査時を含む多様な光環境を考慮した視機能検査を実現できる。
【0153】
また、視機能検査システムSYS1は、視標をモニタ19に表示するため、被験者は、複数の光学レンズを試用することなく、比較的短時間で、視機能検査を実行できる。
【0154】
また、視機能検査システムSYS1は、不快グレアの検査において、同じ色で輝度が異なる複数の視標をモニタ19に表示し、被験者が複数の視標を比較して明るい(眩しい)と感じる視標を判定できるため、従来と比べて精度良く検査できる。
【0155】
なお、視機能検査システムSYS1は、CA図を用いた分析において様々な可能性が考えられる。例えば、被験者が光学レンズ等の光学部材を使用する環境において支配的な光源の分光分布を求め、光学部材の光学特性の算出に用いることにより、使用環境における視認性をシミュレーションすることが可能である。また、光学レンズ等の光学部材の光学特性毎にCA図を作成することが可能であるため、使用に関する様々なシミュレーションも可能である。
【0156】
また、視機能検査システムSYS1は、図20に示した処理と同様の処理を実行することにより、被験者の視機能検査に基づいて、特性の異なる複数の光学部材から被験者の視機能を補正する光学部材を選択してもよい。また、視機能検査システムSYS1は、図21に示した処理と同様の処理を実行することにより、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する光学部材を製造してもよい。また、視機能検査システムSYS1は、図22に示した処理と同様の処理を実行することにより、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する表示部材を製造してもよい。また、視機能検査システムSYS1は、図23に示した処理と同様の処理を実行することにより、被験者の視機能検査に基づいて、被験者の視機能を補正する照明装置を製造してもよい。
【0157】
また、視機能検査システムSYS1は、医療機器や医療装置への応用も可能である。
【0158】
また、視機能検査システムSYS1は、1つのシステム内で図26に示した処理を実行したが、図24に示すように、各処理を分担して実行する複数のシステムに分割されてもよい。
【0159】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0160】
11,111,211…コンピュータ;14,114,214…CPU;19…モニタ、21,21a,121…視標決定部;22,122…検査結果記憶部;23,223…分析部;24,224…光学特性算出部;SYS,SYS1…視機能検査システム
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