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特許7100517車両用前照灯の制御装置、車両用前照灯の制御方法、車両用前照灯システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】車両用前照灯の制御装置、車両用前照灯の制御方法、車両用前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/12 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
B60Q1/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018133185
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011539
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古郡 裕大
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-002316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御装置であって、
車両の曲進の際に、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、
車両用前照灯の制御装置。
【請求項2】
前記第1前照灯は、前記車両の右側に配置され、前記第2前照灯は、前記車両の左側に配置されており、
前記曲進の方向が左方向の場合には前記第2方向を前記第1方向よりも前記車両の前後方向とのなす角度が小さくなるように設定し、前記曲進の方向が右方向の場合には前記第2方向を前記第1方向よりも前記車両の前後方向とのなす角度が大きくなるように設定する、
請求項1に記載の車両用前照灯の制御装置。
【請求項3】
前記第1前照灯は、前記車両の左側に配置され、前記第2前照灯は、前記車両の右側に配置されており、
前記曲進の方向が右方向の場合には前記第2方向を前記第1方向よりも前記車両の前後方向とのなす角度が小さくなるように設定し、前記曲進の方向が左方向の場合には前記第2方向を前記第1方向よりも前記車両の前後方向とのなす角度が大きくなるように設定する、
請求項1に記載の車両用前照灯の制御装置。
【請求項4】
前記第1方向及び前記第2方向は、それぞれ前記曲進の度合いに応じて可変に設定される、
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用前照灯の制御装置。
【請求項5】
一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御装置であって、
前記車両の曲進の際に、前記一対の前照灯の各々による光照射方向を当該曲進の方向に対応した方向へ設定する設定部と、
前記設定部により設定される前記光照射方向にて前記一対の前照灯の各々による光照射が行われるようにする制御信号を当該一対の前照灯へ供給する信号供給部と、
を含み、
前記設定部は、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、
車両用前照灯の制御装置。
【請求項6】
一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御方法であって、
車両の曲進の際に、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当
該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、
車両用前照灯の制御方法。
【請求項7】
請求項1~の何れかの制御装置と、当該制御装置によって制御される一対の前照灯を含む、車両用前照灯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯の制御技術に関し、特に車両の進行方向に応じて光照射方向を可変に設定する制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両がカーブ路などを曲進中である場合に、その進行方向に対応して前照灯による光照射方向を可変に設定することにより、車両の進行方向の視認性を向上させる技術が知られている。例えば、特許第2633169号公報(特許文献1)には、曲路走行時の回転角速度と車速を検出し、これらの回転角速度と車速に基づき、灯光手段の照射角度の目標位置を求め、その目標位置に合致するように灯光手段の照射角度の現在位置を制御する車輌用コーナリングランプシステムが記載されている。
【0003】
ところで、上記のような配光制御を行う際に、例えば自車両の左側にガードレールなどの障害物が存在すると、車両が向かう先である前方のカーブ路に対して効果的に光照射を行えない場合がある。さらに、障害物が高い反射率を有している場合には、その障害物に対して比較的近距離から光照射が行われてしまうことで、車両の運転者等に反射光によるグレアを与えてしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2633169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、車両の進行方向に応じて光照射方向をより適切に設定し得る技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様は、(a)一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御装置であって、(b)車両の曲進の際に、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、車両用前照灯の制御装置である。
[2]本発明に係る一態様は、(a)一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御装置であって、(b)前記車両の曲進の際に、前記一対の前照灯の各々による光照射方向を当該曲進の方向に対応した方向へ設定する設定部と、(c)前記設定部により設定される前記光照射方向にて前記一対の前照灯の各々による光照射が行われるようにする制御信号を当該一対の前照灯へ供給する信号供給部と、を含み、(d)前記設定部は、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、車両用前照灯の制御装置である。
[3]本発明に係る一態様は、(a)一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定する車両用前照灯の制御方法であって、(b)車両の曲進の際に、前記一対の前照灯のうちの1つである第1前照灯の光照射方向を当該曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、前記一対の前照灯のうちの他の1つである第2前照灯の光照射方向を、前記第2前照灯の配置されている側の前記車両の側方に特定の対象物が存在する場合において前記曲進の方向に対応した方向であって前記第1方向と異なる第2方向へ設定する、車両用前照灯の制御方法である。
[4]本発明に係る一態様は、上記した制御装置と、当該制御装置によって制御される一対の前照灯を含む、車両用前照灯システムである。
【0007】
上記各構成によれば、車両の進行方向に応じて光照射方向を可変に設定する際における光照射方向をより適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。
図2図2は、光源部のスイブル動作について説明するための模式図である。
図3図3は、照射方向設定部による光照射方向の設定方法および照射方向補正部による光照射方向の補正方法を説明するための図である。
図4図4は、車両用前照灯システムの制御装置における処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、車両用前照灯システムによる配光制御の様子を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の車両用前照灯システムの構成を示す図である。図示の車両用前照灯システムは、車両の前方に配置される一対の前照灯の各々による光照射方向を可変に設定して光照射を行うものであり、撮像装置10、舵角センサ13、制御装置14、一対の前照灯15L、15Rを含んで構成されている。
【0010】
本実施形態の車両用前照灯システムは、後述の図3に示すように、車両100の曲進の際に、一対の前照灯15L、15Rのうちの1つである右側前照灯(第1前照灯)15Rの光照射方向a1を曲進の方向に対応した第1方向へ設定するとともに、他の1つである左側前照灯(第2前照灯)15Lの光照射方向a2を曲進の方向に対応した方向であって第1方向と異なる第2方向へ設定する、という特徴を有する。なお、以下の説明では、車両の通行帯が左側通行を原則とされている場合を想定する。
【0011】
撮像装置10は、カメラ11と画像処理部12を備えている。カメラ11は、車両の所定位置(例えば車室内のフロントガラス上部)に設置されており、車両の前方を撮影する。画像処理部12は、カメラ11によって撮影された画像(映像)に対して所定の画像処理を行うことにより、自車両の前方に存在する対象体を検出する。ここでいう「対象体」とは、例えば、前方車両、歩行者、自転車搭乗者、障害物、路面上の白線等の路面標示などが該当する。このうち、障害物には路肩に設置されるガードレールが含まれる。本実施形態ではこのガードレールが「特定の対象物」に対応する。
【0012】
舵角センサ13は、車両のハンドル操作に基づく操舵角を検出する。ここで検出される操舵角は、ハンドル操作によるステアリング軸の操作角でもよいし、実際にタイヤに生じる切れ角の角度でもよい。この舵角センサ13は、車両の進行方向を検出する検出部として用いられる。
【0013】
なお、撮像装置10や舵角センサ13に相当するものが他の用途(例えば、ハンドルアシスト機能、自動ブレーキ機能等)に関する装置のために車両に備わっている場合には、その出力を用いることにより撮像装置10等を省略することもできる。
【0014】
制御装置14は、例えばCPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムを用い、このコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現される。この制御装置14は、機能ブロックとしての照射方向設定部20、照射方向補正部21および制御信号生成部22を有する。
【0015】
照射方向設定部20は、舵角センサ13の出力に基づいて、車両の曲進する際に、左側前照灯15Lおよび右側前照灯15Rの各々による光照射方向を車両の曲進の方向に対応した方向へ設定する。例えば、右カーブ路へ差し掛かった場合など、車両が右方向へ曲がりながら進んでいる場合には、照射方向設定部20は、左側前照灯15Lおよび右側前照灯15Rの各々による光照射方向を右方向(車両前後方向を基準)へ向けるように設定する。同様に、左カーブ路へ差し掛かった場合など、車両が左方向へ曲がりながら進んでいる場合には、照射方向設定部20は、左側前照灯15Lおよび右側前照灯15Rの各々による光照射方向を左方向(車両前後方向を基準)へ向けるように設定する。
【0016】
照射方向補正部21は、照射方向設定部20により設定される光照射方向のうち、左側前照灯15Lによる光照射方向を補正する。具体的には、照射方向補正部21は、右側前照灯15Rの光照射方向を第1方向とすると、左側前照灯15Lの光照射方向を車両の曲進の方向に対応した方向であって第1方向と異なる方向である第2方向へ補正する。補正内容の詳細については後述する。
【0017】
制御信号生成部22は、照射方向設定部20により設定された右側前照灯15Rの光照射方向および照射方向設定部20により設定されて照射方向補正部21により補正された左側前照灯15Lの光照射方向に対応して光照射が行われるようにするための制御信号を生成し、右側前照灯15Rおよび左側前照灯15Lのそれぞれに供給する。
【0018】
なお、照射方向設定部20と照射方向補正部21が「設定部」に対応し、制御信号生成部22が「信号供給部」に対応する。
【0019】
左側前照灯15L、右側前照灯15Rは、それぞれ、光源部30と駆動部31を含んで構成されている。
【0020】
光源部30は、光を放出するものであり、例えば発光素子、ハロゲンランプ、高輝度放電ランプ(HIDランプ)などの発光源と、その発光源に対して駆動電力を与える駆動回路などを含んで構成されている。
【0021】
駆動部31は、光源部30の姿勢を変化させるためのアクチュエータである。本実施形態では、駆動部31は、少なくとも光源部30を車両の左右方向においてスイブルさせる。これにより、光源部30から光の光軸(主進行方向)を車両の左右方向において可変に設定することができる。
【0022】
図2は、光源部のスイブル動作について説明するための模式図である。なお、図中のX方向は車両の左右方向に対応し、Y方向は車両の前後方向に対応するものとする。図示のように、左側前照灯15L(または右側前照灯15R)の光源部30は、駆動部31によって駆動されることにより、左右に回動させることができる。それにより、光源部30から放射される光の主進行方向である光軸aを可変に設定することができる。図示のように、光軸aは、車両の直進時にはY方向と平行に設定され、車両の右方向への曲進時にはY方向から時計回りに回転した方向に設定され、車両の左方向への曲進時にはY方向から反時計回りに回転した方向に設定される。
【0023】
図3は、照射方向設定部による光照射方向の設定方法および照射方向補正部による光照射方向の補正方法を説明するための図である。図3では、自車両100を俯瞰した様子が模式的な平面図によって示されている。図3(A)は、車両が左方向への曲進する場合の光照射方向を示しており、図3(B)は、車両が右方向への曲進する場合の光照射方向を示している。
【0024】
図示の車両100の進行方向bは、舵角センサ13の出力に基づいて判断できる。この進行方向bが左方向である場合、右側前照灯15Rの光照射方向a1、左側前照灯15Lの光照射方向a2は、いずれも進行方向bに対応する方向、すなわち自車両100を基準として斜め左方向(Y方向から左へ傾けた方向)に設定される。また、進行方向bが右方向である場合、右側前照灯15Rの光照射方向a1、左側前照灯15Lの光照射方向a2は、いずれも進行方向bに対応する方向、すなわち自車両100を基準として斜め右方向(Y方向から右へ傾けた方向)に設定される。
【0025】
右側前照灯15Rの光照射方向a1は、例えば図示のように車両の前後方向(Y方向)を基準とした角度θによって定義される。角度θについては、例えば一定値にしてもよいし、操舵角が大きくなるほど角度も大きくなるようにして可変に設定してもよい。操舵角の大きさ(すなわち曲進の度合い)に応じて可変に設定する場合においては、操舵角と角度θとの関係を予め実験的ないし理論的に求め、それをデータテーブルとして図示しないメモリに記憶させておいたものを都度読み出して角度θを設定してもよいし、関係式を用いて都度演算によって求めて角度θを設定してもよい。さらに、図示しない車速センサによって検出される車速に応じて角度θを可変に設定してもよい。
【0026】
左側前照灯15Lの光照射方向a2は、例えば図示のように車両の前後方向(Y方向)を基準とした角度θによって定義される。本実施形態では、この角度θは、上記した右側前照灯15Rの角度θと同じ値に設定される。また、この角度θは、車両の左側に特定の対象物(本実施形態ではガードレール)が存在する場合には、照射方向補正部21によって補正される。補正方法は種々考えられるが、その一例を以下に説明する。
【0027】
本実施形態では、左方向への曲進時には、右側前照灯15Rの角度θに対して、0以上1未満の範囲内で設定される補正値(第1補正値)を乗算することにより、左側前照灯15Lの角度θが求められる。第1補正値は、例えば0.5に設定することができる。この場合、例えば右側前照灯15Rの角度θが10°であれば、左側前照灯15Lの角度θは5°に設定される。すなわち、角度θは角度θの50%の大きさに設定されることになる(図3(A)参照)。これにより、右側前照灯15Rの光照射方向(第1方向)a1と車両の前後方向とのなす角度である角度θよりも、左側前照灯15Lの光照射方向(第2方向)a2と車両の前後方向とのなす角度である角度θのほうが小さくなる。
【0028】
また、右方向への曲進時には、右側前照灯15Rの角度θに対して、1以上の範囲で設定される補正値(第2補正値)を乗算することにより、左側前照灯15Lの角度θが求められる。第2補正値は、例えば1.5に設定することができる。この場合、例えば右側前照灯15Rの角度θが10°であれば、左側前照灯15Lの角度θは15°に設定される。すなわち、角度θは角度θの150%の大きさに設定されることになる(図3(B)参照)。これにより、右側前照灯15Rの光照射方向(第1方向)a1と車両の前後方向とのなす角度である角度θよりも、左側前照灯15Lの光照射方向(第2方向)a2と車両の前後方向とのなす角度である角度θのほうが大きくなる。
【0029】
図4は、車両用前照灯システムの制御装置における処理手順を示すフローチャートである。なお、処理に矛盾や不整合などを生じない限りにおいて、処理手順を入れ替えることも可能であり、他の処理を追加することも可能であり、そのような態様も排除されない。
【0030】
制御装置14の照射方向設定部20は、舵角センサ13の出力に基づいて車両の進行方向を検出し(ステップS10)、当該進行方向および操舵角の大きさに基づいて、右側前照灯15Rの光照射方向(角度θ)および左側前照灯15Rの光照射方向(角度θ)を設定する(ステップS11)。ここでは、角度θと角度θは同じ値に設定される。
【0031】
次に、照射方向補正部21は、撮像装置10から画像処理結果を取得し(ステップS12)、その画像処理結果に基づいて、自車両の左側に特定の対象物(本実施形態ではガードレール)が存在するか否かを判定する(ステップS13)。
【0032】
特定の対象物が存在する場合には(ステップS13;YES)、照射方向補正部21は、舵角センサ13の出力に基づいて自車両が左側へ曲進中であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0033】
自車両が左側へ曲進中である場合に(ステップS14;YES)、照射方向補正部21は、補正値として上記した第1補正値を設定する(ステップS15)。他方、自車両が左側へ曲進中ではない場合、換言すれば右側へ曲進中である場合に(ステップS14;NO)、照射方向補正部21は、補正値として上記した第2補正値を設定する(ステップS16)。
【0034】
そして、照射方向補正部21は、設定した補正値を用いて、左側前照灯15Lの照射方向(角度θ)を補正する(ステップS17)。
【0035】
次に、制御信号生成部22は、照射方向設定部20により設定された右側前照灯15Rの光照射方向(角度θ)ならびに照射方向補正部21により補正された左側前照灯15Lの光照射方向(角度θ)に対応して光照射が行われるようにするための制御信号を生成し、右側前照灯15Rおよび左側前照灯15Lのそれぞれに出力する(ステップS18)。それにより、右側前照灯15Rおよび左側前照灯15Lのそれぞれの駆動部31によって光源部30のスイブル動作が制御され、設定された光照射方向へ光が照射される。
【0036】
なお、特定の対象物が存在しない場合には(ステップS13;NO)、制御信号生成部22は、ステップS11にて設定された右側前照灯15Rの光照射方向(角度θ)および左側前照灯15Rの光照射方向(角度θ)に対応して光照射が行われるようにするための制御信号を生成し、右側前照灯15Rおよび左側前照灯15Lのそれぞれに出力する(ステップS18)。この場合、角度θと角度θは同じ値に設定されているので、右側前照灯15Rの光照射方向と左側前照灯15Rの光照射方向は同じとなる。
【0037】
ステップS18の処理後は、上記したステップS10へ戻ってそれ以降の処理が実行される。
【0038】
図5は、車両用前照灯システムによる配光制御の様子を示す模式的な平面図である。図5では、自車両100を俯瞰した様子が示されており、図5(A)が左方向への曲進時に対応し、図5(B)が右方向への曲進時に対応している。図5(A)に示すように、曲進の方向が左方向であって自車両100の左側にガードレール110が存在する場合には、右側前照灯15Rによる照射光101Rの光照射方向よりも左側前照灯15Lによる照射光101Lの光照射方向がより内側へ向くように各々の光照射方向が設定される。また、図5(B)に示すように、曲進の方向が右方向であって自車両100の左側にガードレール110が存在する場合においても、右側前照灯15Rによる照射光101Rの光照射方向よりも左側前照灯15Lによる照射光101Lの光照射方向がより内側へ向くように各々の光照射方向が設定される。これらにより、自車両100の向かう先の路面に対してより効果的に光照射を行うことができる。また、照射光101Lがガードレール110に照射されることによる反射光を抑制することができるので、運転者等へ与えるグレアを低減することができる。
【0039】
以上のような実施形態によれば、車両の進行方向に応じて光照射方向を可変に設定する際における光照射方向をより適切に設定することができる。
【0040】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態は車両の通行帯が左側通行を原則とされている場合を想定していたが、通行帯が右側通行を原則とされている場合についても同様にして配光制御を行うことができる。具体的には、上記した実施形態における左右の関係を入れ替えればよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、車両の左側(通行帯に応じた側)に特定の対象物が存在する場合に左右の前照灯による光照射方向を異なる方向にしていたが、特定の対象物の有無に関わらず同様の制御を行ってもよい。この場合、当該制御を行うか否かをボタン操作等によって運転者が選択できるようにしてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、操舵角(曲進の度合い)について特に閾値を設けずに操舵角に応じて光照射方向を設定していたが、閾値を設けておき、その閾値を超えた場合だけ光照射方向を可変に設定してもよい。それにより、車両の直進時のふらつき等による頻繁な光照射方向の変化を抑制することができる。
【0043】
また、上記した実施形態では、車両の曲進の度合いを表すパラメータの一例として操舵角を用いていたが、これ以外のパラメータを用いてもよい。例えば、加速度センサ等を用いて検出されるヨーレート(車両鉛直軸まわりの回転角速度)に基づいて車両の曲進の度合いを求めることもできる。
【0044】
また、上記した実施形態では画像認識処理によって車両の左側に存在する対象物を検出していたが、検出方法はこれに限定されない。例えば、ミリ波レーダ、LiDAR(light detection and ranging)などの手段によって対象物を検出してもよい。また、カーナビゲーションシステム等から得られる地図データに対象物(ガードレール等)の有無を示すデータが含まれている場合には、そのデータを用いて対象物を検出してもよい。その場合、GPSセンサ等によって検出される自車両の位置と地図データを照合して、対象物の有無を判断することができる。
【0045】
また、特定の対象物と自車両との距離に応じて、上記した補正値を可変に設定してもよい。具体的には、第1補正値については距離が小さいほど小さく設定され、第2補正値については距離が小さいほど大きく設定される。特定の対象物と自車両との距離については、画像認識処理によって求めてもよいし、ミリ波レーダやLiDARによって求めてもよいし、距離センサを別途設けてその出力に基づいて求めてもよい。
【0046】
また、上記した実施形態では、各前照灯の光源部を機械的にスイブルさせることによって光照射方向を可変に設定していたが、光照射方向の設定方法はこれに限定されない。例えば、一方向ないし二方向に配列された複数の発光素子(LED等)を有する光源部を用いて、発光させる対象とする発光素子を適宜変更することによって光照射方向を可変に設定することもできる。
【符号の説明】
【0047】
10:撮像装置、11:カメラ、12:画像処理部、13:舵角センサ、14:制御装置、15L:左側前照灯、15R:右側前照灯、20:照射方向設定部、21:照射方向補正部、22:制御信号生成部、30:光源部、31:駆動部、100:自車両、101L、101R:照射光、110:ガードレール
図1
図2
図3
図4
図5