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  • 特許-金属調シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】金属調シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/095 20060101AFI20220706BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B32B15/095
B32B15/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018146647
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020019261
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】米田 大介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208432(JP,A)
【文献】特開2014-195953(JP,A)
【文献】特開2013-59880(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含み、厚みが4μm以上30μm以下である第一プライマー層と、
前記第一プライマー層上に積層され、厚みが70Å以上150Å以下であるアルミニウム蒸着層と、
前記アルミニウム蒸着層の前記第一プライマー層側とは反対側に積層され、ウレタン樹脂を含む厚みが0.1μm以上5μm以下である第二プライマー層と、
を備え、
前記第一プライマー層の150℃における弾性率(E’)が1.0×10 a以上1.0×10 a以下であり、
前記第二プライマー層の150℃における弾性率(E’)が1.0×10 a以上1.0×10 a以下である
ことを特徴とする金属調シート。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂がアミン系モノマーを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の金属調シート。
【請求項3】
前記第一プライマー層が架橋剤を含む樹脂から成る
ことを特徴とする請求項1または2に記載の金属調シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調シートに関する。
【背景技術】
【0002】
文字や図形等を立体的に表示する看板や標識等において、意匠性や高級感を持たせるために、金属調の外観を持たせることがある。このような看板や標識等は、従来、樹脂板を熱成形にて所定の型に加工した後、金属めっき又は金属蒸着によって表面に金属膜を設けている。
【0003】
しかし、めっき加工は環境負荷が大きい。また、熱成形された樹脂版に金属蒸着を行う方法は前処理工程が多く、手間がかかる。そのため、下記特許文献1に記載の技術のように、粘着剤層が付された金属調シートを基板に貼り付けて積層体を作製した後に当該積層体に熱を加えて成形を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6051502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属調シートを基板に貼った後に金属調シートと基板とからなる積層体に熱を加えて成形する方法では、積層体が高温に加熱されながら成形されることになる。そのため、金属調シートは耐熱性と高温での成形性とが要求される。しかし、上記特許文献1に開示されているような従来の金属調シートは、150℃以上の高温では成形性が悪く、白化やクラックが生じる懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、耐熱成形性を有する金属調シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の金属調シートは、ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含み、厚みが4μm以上30μm以下である第一プライマー層と、前記第一プライマー層上に積層され、厚みが70Å以上150Å以下であるアルミニウム蒸着層と、前記アルミニウム蒸着層の前記第一プライマー層側とは反対側に積層され、ウレタン樹脂を含む厚みが0.1μm以上5μm以下である第二プライマー層と、を備え、前記第一プライマー層の150℃における弾性率が1.0×10 a以上1.0×10 a以下であり、前記第二プライマー層の150℃における弾性率が1.0×10 a以上1.0×10 a以下であることを特徴とする。
【0008】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味する。
【0009】
また、前記(メタ)アクリル樹脂がアミン系モノマーを含むことが好ましい。
【0010】
また、前記第一プライマー層が架橋剤を含む樹脂から成ることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱成形性を有する金属調シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る金属調シートの断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る金属調シートの断面を概略的に示す図である。本実施形態の金属調シート10は、保護層11、トップ層12、接着剤層13、第一プライマー層14、アルミニウム蒸着層15、第二プライマー層16、粘着剤層17、及び剥離層18を備える。
【0015】
(保護層11)
保護層11は、金属調シート10が被着体に貼り付けられる際に金属調シート10の表面に傷が付くことを抑制するために設けられる。保護層11は、金属調シート10を所定の形状に成形する際には剥がされていてもよい。
【0016】
保護層11は、例えば、微粘着性を有するポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂によって構成される。
【0017】
保護層11の厚みは特に限定されないが、例えば50μm程度とされる。
【0018】
(トップ層12)
トップ層12は、金属調シート10の耐候性や成形性を向上させる等の目的で設けられる層であり、透明性の高い光透過性の層であっても、着色された光透過性の層であっても良い。
【0019】
トップ層12は、例えば、(メタ)アクリル樹脂や塩ビ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂によって構成される。トップ層12を着色された層とする場合、着色された(メタ)アクリル樹脂が押出成形されてなる樹脂シートをトップ層12とすることにより、色むらが少なく外観が良好なトップ層12とし得る。
【0020】
(接着剤層13)
接着剤層13は、トップ層12と第一プライマー層14とを接着する光透過性の層である。
【0021】
接着剤層13は、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂や(メタ)アクリル樹脂によって構成される。接着剤層13がポリエステル系ポリウレタン樹脂で構成されることによって、接着剤層13に延伸性及び耐熱性を付与し得る。また、接着剤層13を構成する樹脂は、イソシアネート系架橋剤等の架橋剤を含んでいてもよい。接着剤層13は、例えば、接着剤層13を構成する上記樹脂を酢酸エチル(EAc)等で希釈してグラビアコーター等でトップ層12に塗工されることによって形成される。
【0022】
接着剤層13の厚さは、例えば2μm以上4μm以下とされる。
【0023】
(第一プライマー層14)
第一プライマー層14はアルミニウム蒸着層15との密着性が良好な光透過性の層である。第一プライマー層14が設けられることによって、金属調シート10を熱成形する際にアルミニウム蒸着層15に白化やクラックが生じることを抑制し、金属調シート10の耐熱性を向上し得る。
【0024】
第一プライマー層14は、ウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含む官能基を有する樹脂から成る。第一プライマー層14がウレタン樹脂を含むことによって、第一プライマー層14に延伸性、耐熱性、耐候性を付与し得る。第一プライマー層14には、トルエン等の有機溶剤を用いて液状化された溶剤系ウレタン樹脂を用いることができる。また、第一プライマー層14が(メタ)アクリル樹脂を含むことによって、第一プライマー層14とアルミニウム蒸着層15との密着性を良好にし得る。第一プライマー層14とアルミニウム蒸着層15との密着性高める観点から、第一プライマー層14に含まれる(メタ)アクリル樹脂は、アミン系モノマーを含むことが好ましい。
【0025】
また、第一プライマー層14は、架橋剤を含む樹脂から成ることが好ましい。第一プライマー層14が架橋剤を含む樹脂から成ることによって、第一プライマー層14の耐熱性を向上し得る。
【0026】
第一プライマー層14の150℃における弾性率は、1.0×10 a以上1.0×10 a以下とされる。第一プライマー層14の150℃における弾性率が1.0×10 a以上とされることによって、第一プライマー層14の耐熱性が向上し得る。また、第一プライマー層14の150℃における弾性率が1.0×10 a以下とされることによって、第一プライマー層14の延伸性が向上し得る。
【0027】
また、第一プライマー層14の厚みは、4μm以上30μm以下とされる。第一プライマー層14の厚さが4μm以上とされることによって、第一プライマー層14の耐熱性を向上し得る。また、第一プライマー層14の厚さが30μm以下とされることによって、金属調シート10の成形後に第一プライマー層14に残留応力が生じることが抑制され、第一プライマー層14と他の層と剥離が抑制され得る。
【0028】
(アルミニウム蒸着層15)
アルミニウム蒸着層15は、第一プライマー層14上にアルミニウムを蒸着することによって形成される。金属調シート10がこのようなアルミニウム蒸着層15を備えることによって、金属調シート10に金属調の外観が付与される。また、金属調シート10は内照式の看板等にも用いることができ、その場合、金属調シート10は透光性を有する厚さに形成される。
【0029】
アルミニウム蒸着層15の厚さは、70Å以上150Å以下とされる。アルミニウム蒸着層15の厚さが70Å以上とされることによって、金属調シート10に良好な金属調の外観が付与され得る。また、アルミニウム蒸着層15の厚さが150Å以下とされることによって、金属調シート10を熱成形する際にアルミニウム蒸着層15が割れることを抑制し得る。すなわち、アルミニウム蒸着層15の厚さが150Å以下とされることによって、金属調シート10の耐熱成形性を良好にし得る。
【0030】
なお、従来の金属調シートでは、金属蒸着層を構成する金属はインジウムや錫といった蒸着後に海島構造を持つものに限定される場合が多いが、金属調シート10はアルミニウム蒸着層15を備える。アルミニウム蒸着層15はインジウムや錫からなる金属蒸着層に比べて割れやすいが、金属調シート10ではアルミニウム蒸着層15が第一プライマー層14と第二プライマー層16とに挟まれていることによって、金属調シート10の成形時にアルミニウム蒸着層15の割れが抑制される。そのため、金属調シート10は、成形後にも良好な金属調の外観を保持し得る。また、アルミニウム蒸着層15が備えられることによって、金属調シート10が内照式の看板等に用いられる際に、金属調シート10を透過する光の色目を良好にし得る。
【0031】
(第二プライマー層16)
第二プライマー層16は、アルミニウム蒸着層15の第一プライマー層14側とは反対側に積層される層である。第二プライマー層16が設けられることによって、金属調シート10を熱成形する際にアルミニウム蒸着層15に白化やクラックが生じることを抑制して金属調シート10の耐熱性を向上し得ると共に、アルミニウム蒸着層15及び第一プライマー層14を補強し得る。
【0032】
第二プライマー層16は、水系ウレタン樹脂を含む樹脂がアルミニウム蒸着層15上に塗工されることによって形成される。水系ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の水分散体であり、ウレタン樹脂及び水と必要に応じて含まれる他の成分とが水に溶解又は水散しているものである。第二プライマー層16に用いることができる水系ポリウレタン樹脂として、エステル結合、アクリル結合、エステル/アクリル結合、エーテル結合、エーテル/エステル結合、カーボネート結合等の骨格を有した水系ポリウレタン樹脂等が挙げられる。第二プライマー層16にこのようなウレタン樹脂が用いられることによって、第二プライマー層16の延伸性を良好とし得る。また、第二プライマー層16を構成する樹脂は、架橋剤や増粘剤を含んでもよい。
【0033】
また、第二プライマー層16は、150℃における弾性率が第一プライマー層14を構成する樹脂よりも高い樹脂によって、第一プライマー層14よりも薄く形成されることが好ましい。
【0034】
第二プライマー層16の150℃における弾性率は、1.0×10 a以上1.0×10 a以下とされる。第二プライマー層16の150℃における弾性率が1.0×10 a以上とされることにより、アルミニウム蒸着層15の耐熱性を向上し得る。また、第二プライマー層16の150℃における弾性率が1.0×10 a以下とされることにより、金属調シート10の成形時に第二プライマー層16の延伸性を良好とし得る。
【0035】
また、第二プライマー層16の厚さは、0.1μm以上5μm以下とされ、1μm以上2μm以下であることが好ましい。第二プライマー層16の厚さが0.1μm以上とされることによって、第二プライマー層16の耐熱性を良好とし得る。また、第二プライマー層16の厚さが5μm以下とされることによって、第二プライマー層16の延伸性を良好とし得る。
【0036】
(粘着剤層17)
粘着剤層17は、金属調シート10を基板等に貼り付けるために設けられる。また、粘着剤層17は、金属調シート10がアクリル板等の基板に貼り付けられて熱成形される際に当該基板のアウトガスによる変形が抑制されるように設計される。アウトガスによる変形を抑制するため、粘着剤層17は高温での接着性が良好であることが好ましい。このような粘着剤層17は、例えば(メタ)アクリル樹脂によって形成される。
【0037】
(剥離層18)
剥離層18は、金属調シート10の使用時までに粘着剤層17に異物が付着することを抑制するために設けられる。金属調シート10を基板等に貼り付ける際、剥離層18は剥離される。このような剥離層18は、例えば、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等によって構成される。
【0038】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第一プライマー層14、アルミニウム蒸着層15、第二プライマー層16以外の層は省略されてもよく、必要に応じて図示していない他の層が設けられても良い。例えば、金属調シート10は、意匠性向上等の観点から印刷層等を備えても良い。印刷層は、例えば樹脂、着色剤、溶剤等を含むインキをスクリーン印刷等の方法で印刷し、必要に応じて乾燥、硬化等の工程を経ることによって形成される。
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
厚さ75μmの押出成形されたアクリル樹脂からなるトップ層上に、ポリエステル系ウレタン樹脂とイソシアネート系架橋剤とを混合した接着剤を塗工して厚さ2μmの接着剤層を形成した。この接着剤層上に、第一プライマー層(P1層)を形成した。第一プライマー層は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(水添MDI系ウレタン、商品名:LU-4213、大日精化工業株式会社製、重量平均分子量(Mw):6万~7万)96質量%と、メタクリル酸メチル(MMA):メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEMA):メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEMA):アクリル酸(AA)=82.7:14:3:0.3の質量比で混合された(メタ)アクリル樹脂(ガラス転移温度(Tg):94.8℃、Mw:2万~10万)4質量%と、を混合した樹脂によって、厚さ10μmとなるように形成した。次に、第一プライマー層上にアルミニウムを蒸着して厚さ100Åのアルミニウム蒸着層(AL層)を形成した。次に、エーテル結合骨格を有した水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-550、株式会社ADEKA製)によって、アルミニウム蒸着層上に厚さ1.5μmの第二プライマー層(P2層)を形成した。さらに、アクリル酸ブチル(BA)/アクリル酸メチル(MA)/AA=49:50:1の質量比で混合された(メタ)アクリル樹脂(Tg=-21.9℃、Mw:60万~70万)によって、第二プライマー層上に厚さ35μmの粘着剤層を形成し、実施例1にかかる金属調シートを作製した。
【0041】
なお、第一プライマー層の150℃における弾性率(E’)は2.2×10 aであり、第二プライマー層の150℃における弾性率(E’)は1.4×10 aであった。弾性率(E’)は次のように求めた。まず、弾性率を測定する層を構成する樹脂を基台上に塗工し、塗工された樹脂を乾燥させて、樹脂を基台から剥離することで、樹脂をシート状にした。次に、当該シート状の樹脂から10mm×20mmの大きさの試験片を切り出した。DMS6100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)にて、下記の条件で試験片の弾性率(E’)を求めた。表1から表5には、温度が150℃における弾性率(E’)を示している。
測定長さ :10mm
測定モード:引っ張り
温度条件 :25℃~200℃
昇温速度 :2℃/min
周波数 :1Hz
なお、本明細書において、表1から表5以外における弾性率の値も表1から表5における弾性率と同様の方法により測定した値である。
【0042】
(実施例2、実施例3、比較例1、比較例2)
実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2では、第一プライマー層を構成する樹脂の配合を変えることで第一プライマー層の150℃における弾性率(E’)を変化させた以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2の第一プライマー層を構成する樹脂の配合及び150℃における弾性率は、表1に示す通りである。なお、表1において、ウレタン樹脂と(メタ)アクリル樹脂の配合割合は、ウレタン樹脂と(メタ)アクリル樹脂との合計量に対する質量%で記載し、架橋剤の配合割合についてはウレタン樹脂と(メタ)アクリル樹脂との合計を100質量部としたときの部数で記載している。
【0043】
実施例2で第一プライマー層に用いたウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(商品名:NE-8811、大日精化工業株式会社製)である。
実施例3で第一プライマー層に用いた架橋剤は、イソシアネート系架橋剤(デスモジュール(登録商標)N3300、住友バイエルウレタン社製)である。
比較例1で第一プライマー層に用いたウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂(商品名:NE-8850、大日精化工業株式会社製)である。
比較例2で第一プライマー層に用いたウレタン樹脂は、上記の水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-550、株式会社ADEKA製)である。
【0044】
実施例2、実施例3、比較例1、比較例2の第一プライマー層及び第二プライマー層のそれぞれの150℃における弾性率(E’)は表1に示す通りであった。
【0045】
(実施例4、実施例5、比較例3、比較例4)
実施例4、実施例5、比較例3、比較例4では、第二プライマー層を構成する樹脂を表2に示すように変えることで第二プライマー層の150℃における弾性率を変化させた以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。
実施例4では、エーテル結合骨格を有した水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-541、株式会社ADEKA製)によって第二プライマー層を形成した。
実施例5では、エーテル結合骨格を有した水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-550、株式会社ADEKA製)100質量部とカルボジライト水性樹脂用架橋剤(商品名:V-02-L2、日清紡ケミカル株式会社製)10質量部とを混合して第二プライマー層を形成した。
比較例3では、カーボネート結合骨格を有した水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-386、株式会社ADEKA製)によって第二プライマー層を形成した。
比較例4では、エーテル結合骨格を有した水系ウレタン樹脂(商品名:HUX-550、株式会社ADEKA製)100質量部と架橋剤(メチル化メラミン樹脂、グレード:MW-22、日本カーバイド工業株式会社製)10質量部とを混合して第二プライマー層を形成した。
【0046】
実施例4、実施例5、比較例3、比較例4の第一プライマー層及び第二プライマー層のそれぞれの150℃における弾性率(E’)は表2に示す通りであった。
【0047】
(実施例6)
実施例6では、実施例1と同様のウレタン樹脂100質量部に対して実施例3で用いた架橋剤と同様の架橋剤を3.0質量部混合して第一プライマー層を形成した以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。実施例6の第一プライマー層及び第二プライマー層のそれぞれの150℃における弾性率(E’)は表2に示す通りであった。
【0048】
(実施例7、実施例8、比較例5、比較例6)
実施例7、実施例8、比較例5、比較例6では、第一プライマー層の厚みを変化させた以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。実施例7、実施例8、比較例5、比較例6の金属調シートの第一プライマー層の厚みは表3に示す通りである。
【0049】
(実施例9、実施例10、比較例7、比較例8)
実施例9、実施例10、比較例7、比較例8では、アルミニウム蒸着層の厚みを変化させた以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。実施例7、実施例8、比較例5、比較例6の金属調シートのアルミニウム蒸着層の厚みは表4に示す通りである。
【0050】
(実施例11、実施例12、比較例9、比較例10)
実施例11、実施例12、比較例9、比較例10では、第二プライマー層の厚みを変化させた以外は実施例1と同様にして、金属調シートを作製した。実施例11、実施例12、比較例9、比較例10の金属調シートの第二プライマー層の厚みは表5に示す通りである。
【0051】
<評価方法>
以下に説明する方法で、上記実施例及び比較例の金属調シートを評価した。
【0052】
(密着性)
上記実施例、比較例の金属調シートに対してクロスカット試験を実施し、剥離の割合を確認した。クロスカット試験は、JIS-K-5600-5-6(1999)に準拠して行った。すなわち、作製した金属調シートの表面に、P2層側から縦、横各々1mm間隔でP1層に達する深さの切り込みをそれぞれの方向に11本づつ入れてクロスカットした。このためクロスカットの総数は100個である。次に、クロスカットした金属調シートの表面上に18mm幅のセロハンテープ(ニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)CT405AP)を貼り付けた後、金属調シートの表面に対して120゜の方向に剥離を行った。そして、クロスカットの総数100個に対する残存した比率を求めた。測定を3回行い、3回の測定の平均値により下記評価基準に従って評価した。その結果を以下の基準で評価し、評価結果を表1から表5に示す。
A:剥離なし
B:剥離5%以下
C:剥離5%以上
【0053】
(鏡面性)
上記実施例、比較例の金属調シートに対して鏡面性を評価した。鏡面性は、実施例及び比較例の金属調シートから切り出した試験片を乳白色のアクリル板に貼り付けた後、下記評価基準に沿って目視で評価した。その結果を表1から表5に示す。
A:鏡面性がある。(入射した光の輪郭が明確な状態で反射する。)
B:鏡面性がわずかに低い。(入射した光が反射するものの、ぼやけて見える。)
C:鏡面性が低い。(入射した光がわずかに反射するが、透過してしまう。)
【0054】
(延伸性)
実施例及び比較例の金属調シートから切り出した試験片を用意し、引張試験機にて温度150℃で試験片を150%延伸して5分間保持した。その結果を以下の基準で評価し、評価結果を表1から表5に示す。なお、一般的に金属調シートを成型する場合、延伸率が100%程度あれば十分に実用に耐え得る。このためB評価の150%に延伸した後保持中に破断する金属調シートであっても、100%程度の延伸であれば、破断が抑制される。一方、C評価の150%延伸前に破断する金属調シートは、仮に100%延伸する場合であっても、100%の延伸後に破断することが考えられ、実用的ではないと考えられる。
A:保持後も破断しない
B:保持中に破断
C:150%延伸前に破断
【0055】
(鏡面保持性)
実施例及び比較例の金属調シートから切り出した試験片をアクリル板に貼り付けて150℃の恒温槽(乾燥機)に入れ、10分間放置した。その後、試験片を取り出して試験片が室温に戻った後の試験片の外観を目視で確認した。その結果を以下の基準で評価し、評価結果を表1から表5に示す。なお、「白化」はアルミニウム蒸着層に由来するものである。
S:白化や蒸着割れが見られず、鏡面性が維持されている
A:わずかに白化が見られるが、鏡面性は維持している
B:白化があり、鏡面性が低下している
C:白化や蒸着割れがあり、鏡面性が消失している
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
上記4つの評価項目の全てにおいて、評価がAまたはBであれば、金属調シートとして実用に十分に耐え得る。表1から表5に示す通り、実施例に係る金属調シートは、いずれも150℃の熱を加えて評価した延伸性及び鏡面保持性の評価において良い結果が得られており、耐熱成形性が優れていた。以上の実施例の結果から、本発明の金属調シートによれば、耐熱成形性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上に説明したように、本発明によれば、耐熱成形性を有する金属調シートが提供され、文字や図形等を立体的に表示する看板や標識等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0063】
10・・・金属調シート
11・・・保護層
12・・・トップ層
13・・・接着剤層
14・・・第一プライマー層
15・・・アルミニウム蒸着層
16・・・第二プライマー層
17・・・粘着剤層
18・・・剥離層

図1