(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】鉄筋結束機
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20220706BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20220706BHJP
B21F 15/06 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B25B25/00 A
B21F15/06
(21)【出願番号】P 2018148918
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 匡輔
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110473(JP,A)
【文献】特開2018-111504(JP,A)
【文献】実開平06-078507(JP,U)
【文献】特開2018-091105(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101353088(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
B25B 25/00
B21F 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを有するリールと、
前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、
前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、
前記ホイールと前記ホイール保持部の間に介在する弾性体と、を備え
、
前記弾性体が、圧縮バネである
、鉄筋結束機。
【請求項2】
前記リールが、仕切り壁によって区画された開口を備えており、
前記ホイールが、前記開口に入り込んで、前記リールが回転する方向に前記仕切り壁と当接する係合突起を備えている、請求項1の鉄筋結束機。
【請求項3】
ワイヤを有するリールと、
前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、
前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、
前記ホイールと前記ホイール保持部の間に介在する弾性体と、を備え、
前記リールが、仕切り壁によって区画された開口を備えており、
前記ホイールが、前記開口に入り込んで、前記リールが回転する方向に前記仕切り壁と当接する係合突起を備えており、
前記係合突起は、前記リールの回転軸から径方向外側にずれた位置に配置されている、鉄筋結束機。
【請求項4】
ワイヤを有するリールと、
前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、
前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、
前記リールの回転軸に沿う方向において、前記ホイールと前記ホイール保持部の間に介在する弾性体と、を備える、鉄筋結束機。
【請求項5】
前記リールが、仕切り壁によって区画された開口を備えており、
前記ホイールが、前記開口に入り込んで、前記リールが回転する方向に前記仕切り壁と当接する係合突起を備えている、請求項4の鉄筋結束機。
【請求項6】
前記弾性体が、圧縮バネである、請求項
3から5のいずれか一項の鉄筋結束機。
【請求項7】
前記リールを前記ホイールに対して押圧する押圧機構をさらに備える、請求項1から
6の何れか一項の鉄筋結束機。
【請求項8】
前記ホイールの前記ホイール保持部に対する回転を検出する回転検出機構をさらに備える、請求項1から
7の何れか一項の鉄筋結束機。
【請求項9】
前記ホイールは、前記ホイール保持部に対して移動可能に構成されている
、請求項1から8の何れか一項の鉄筋結束機。
【請求項10】
ワイヤを有するリールと、
前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、
前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、を備えており、
前記ホイールは、前記ホイール保持部に対して移動可能に構成されており、
前記リールが、仕切り壁によって区画された開口を備えており、
前記ホイールが、前記開口に入り込んで、前記リールが回転する方向に前記仕切り壁と当接する係合突起を備えており、
前記係合突起は、前記リールの回転軸から径方向外側にずれた位置に配置されている、鉄筋結束機。
【請求項11】
前記ホイールが、前記ホイール保持部に対して、前記リールの回転軸に沿った方向に移動可能であり、前記リールの回転軸に直交する方向に移動不能である、請求項
9または10の鉄筋結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、鉄筋結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋結束機が開示されている。この鉄筋結束機は、ワイヤを有するリールと、前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、リールがホイールに押し付けられることでリールとホイールが係合して、リールとホイールを一体的に回転させる。このような構成では、何らかの原因によってリールがホイールに過度に押し付けられると、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大してしまう。この際に、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかってしまうことがある。本明細書では、リールとホイールが一体的に回転する鉄筋結束機において、リールをスムーズに回転可能な技術を提供する。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、鉄筋結束機を開示する。前記鉄筋結束機は、ワイヤを有するリールと、前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、前記ホイールと前記ホイール保持部の間に介在する弾性体と、を備えていてもよい。
【0006】
上記の構成によれば、何らかの原因によってリールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、弾性体によってリールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0007】
本明細書は、別の鉄筋結束機も開示する。前記鉄筋結束機は、ワイヤを有するリールと、前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、を備えていてもよい。前記ホイールは、前記ホイール保持部に対して移動可能に構成されていてもよい。
【0008】
上記の構成によれば、何らかの原因によってリールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、ホイールがホイール保持部に対して移動することで、リールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る鉄筋結束機2を左上後方から見た斜視図である。
【
図2】実施例に係る鉄筋結束機2を右上後方から見た斜視図である。
【
図3】実施例に係る鉄筋結束機2の結束機本体4の内部構造を右上後方から見た斜視図である。
【
図4】実施例に係る鉄筋結束機2の結束機本体4の内部構造を左上前方から見た斜視図である。
【
図5】実施例に係る鉄筋結束機2のリール収容室20を左上後方から見た斜視図である。
【
図6】実施例に係る鉄筋結束機2の収容機構36の断面図である。
【
図7】実施例に係る鉄筋結束機2のワイヤリールWR、回転台60および磁気センサ66を右上後方から見た斜視図である。
【
図8】実施例に係る鉄筋結束機2のワイヤリールWRを右上後方から見た斜視図である。
【
図9】実施例に係る鉄筋結束機2の回転台60を左上後方から見た斜視図である。
【
図10】実施例に係る鉄筋結束機2において、回転台60の係合突起60cがワイヤリールWRの仕切り壁WRdに乗り上げた状態での、ワイヤリールWRおよび回転台60の断面図である。
【
図11】実施例に係る鉄筋結束機2において、回転台60の係合突起60cがワイヤリールWRの開口WReに入り込んだ状態での、ワイヤリールWRおよび回転台60の断面図である。
【
図12】比較例の鉄筋結束機102において、回転台60の係合突起60cがワイヤリールWRの仕切り壁WRdに乗り上げた状態での、ワイヤリールWRおよび回転台60の断面図である。
【
図13】変形例に係る鉄筋結束機2のワイヤリールWR、回転台60および光学センサ90を右上後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機は、ワイヤを有するリールと、前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、前記ホイールと前記ホイール保持部の間に介在する弾性体と、を備えていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、何らかの原因によってリールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、弾性体によってリールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0012】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記リールは、仕切り壁によって区画された開口を備えていてもよい。前記ホイールは、前記開口に入り込んで、前記リールが回転する方向に前記仕切り壁と当接する係合突起を備えていてもよい。
【0013】
上記のように、リールが回転する方向にリールの仕切り壁とホイールの係合突起が当接する構成では、確実にリールとホイールを一体的に回転させることができる。しかしながら、このような構成とした場合、リールをホイールに取り付ける際に、係合突起が開口に入り込まずに、係合突起が仕切り壁に乗り上げてしまう事がある。係合突起が仕切り壁に乗り上げてしまうと、係合突起が開口に入り込む場合に比べて、リールがホイールに過度に押し付けられることになる。上記の構成によれば、ホイールとホイール保持部の間に弾性体が介在しているので、係合突起が仕切り壁に乗り上げてしまった場合でも、弾性体によってリールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記弾性体は、圧縮バネであってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、リールがホイールに過度に押し付けられる場合に、リールやホイールに過剰な押圧力が作用することを効果的に抑制することができる。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記鉄筋結束機は、前記リールを前記ホイールに対して押圧する押圧機構をさらに備えていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、押圧機構によってリールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、ホイールとホイール保持部の間に介在する弾性体によって、リールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記鉄筋結束機は、前記ホイールの前記ホイール保持部に対する回転を検出する回転検出機構をさらに備えていてもよい。
【0019】
上記のような回転検出機構を用いて、リールの回転を検出しようとする場合、リールとホイールを確実に一体的に回転させる必要がある。しかしながら、リールとホイールが確実に一体的に回転するように、リールをホイールに対して強く押し付ける構成とすると、リールがホイールに過度に押し付けられるおそれがある。上記の構成によれば、リールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、ホイールとホイール保持部の間に介在する弾性体によって、リールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機は、ワイヤを有するリールと、前記リールを保持し、前記リールと一体的に回転可能なホイールと、前記ホイールを回転可能に保持するホイール保持部と、を備えていてもよい。前記ホイールは、前記ホイール保持部に対して移動可能に構成されていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、何らかの原因によってリールがホイールに過度に押し付けられる場合でも、ホイールがホイール保持部に対して移動することで、リールやホイールに過剰な押圧力が作用することが抑制される。リールやホイールを回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ホイールは、前記ホイール保持部に対して、前記リールの回転軸に沿った方向に移動可能であってもよく、前記リールの回転軸に直交する方向に移動不能であってもよい。
【0023】
ホイールをホイール保持部に対して移動した時に、それによってホイールの回転軸がリールの回転軸からずれてしまうと、リールとホイールを一体的に回転させる際の抵抗が増大し、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかってしまう。上記の構成によれば、ホイールをホイール保持部に対して移動した場合でも、それによってホイールの回転軸がリールの回転軸からずれてしまうことがないので、リールとホイールを一体的に回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、リールからワイヤを引き出すアクチュエータに過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0024】
(実施例)
実施例に係る鉄筋結束機2について図面を参照して説明する。
図1に示す鉄筋結束機2は、複数の鉄筋RをワイヤWによって結束するための電動工具である。
【0025】
図1、
図2に示すように、鉄筋結束機2は、結束機本体4と、結束機本体4の下部に設けられており、ユーザが把持可能なグリップ6と、グリップ6の下部に設けられたバッテリ取り付け部8を備えている。バッテリ取り付け部8の下部には、バッテリBが着脱可能である。バッテリBは、バッテリ取り付け部8に対してスライドさせることで着脱可能な、スライド式のバッテリである。バッテリBは、例えば、図示しない充電器によって充電可能な、リチウムイオンバッテリである。バッテリBがバッテリ取り付け部8に取り付けられると、鉄筋結束機2には、バッテリBから電力が供給される。
【0026】
鉄筋結束機2は、ハウジング12を備えている。ハウジング12は、左ハウジング14と、右ハウジング16と、側面カバーハウジング18を備えている。
図1に示すように、左ハウジング14には、結束機本体4の左半分の外形形状と、グリップ6の左半分の外形形状と、バッテリ取り付け部8の左半分の外形形状が、一体的に形成されている。
図2に示すように、右ハウジング16には、結束機本体4の右半分の外形形状の一部と、グリップ6の右半分の外形形状と、バッテリ取り付け部8の右半分の外形形状が、一体的に形成されている。左ハウジング14は右ハウジング16に対して、複数のねじによって固定されている。側面カバーハウジング18には、結束機本体4の右半分の外形形状の一部が形成されている。側面カバーハウジング18は、右ハウジング16に対して複数のねじによって固定されている。
【0027】
結束機本体4の後方には、ワイヤWが巻回されたワイヤリールWR(
図3等参照)を収容するリール収容室20が形成されている。リール収容室20は、リールカバー22によって、上方を覆われている。リールカバー22は、左右に設けられた円環状の取り付け部22a、22bを介して結束機本体4に回動可能に保持されている。リールカバー20は、左右方向を回動軸として結束機本体4に対して回動することで、リール収容室20を開閉する。
【0028】
グリップ6の前方上部には、ユーザが引き操作可能なトリガ28と、トリガ28の後方に配置されており、トリガ28の引き操作を許可する状態と禁止する状態の間で切換可能なトリガロック30が設けられている。
【0029】
図3、
図4に示すように、結束機本体4は、主に、制御基板34と、収容機構36と、送り機構38と、ブレーキ機構40と、案内機構42と、切断機構44と、捩り機構46を備えている。制御基板34は、結束機本体4の下部に配置されている。
【0030】
収容機構36は、結束機本体4の後部に配置されている。収容機構36は、リール収容室20に収容されたワイヤリールWRを、着脱可能に保持する。ワイヤリールWRは、リール収容室20において、収容機構36により回転可能に支持される。
【0031】
送り機構38は、結束機本体4の前後方向の中央近傍の上部に配置されている。送り機構38は、送りモータ72の駆動によって送りローラ74を回転させて、収容機構36のワイヤリールWRからワイヤWを引き出し、結束機本体4の前方の案内機構42へと送り出す。送りモータ72の動作は、制御基板34によって制御される。
【0032】
案内機構42は、結束機本体4の前部に配置されている。案内機構42は、送り機構38から送られたワイヤWを、複数の鉄筋Rの周囲に円環状に案内する(
図1参照)。
【0033】
ブレーキ機構40は、結束機本体4の前後方向の中央近傍に配置されている。ブレーキ機構40は、送り機構38がワイヤWの送り出しを停止するタイミングに合わせて、ワイヤリールWRの回転を停止する。ワイヤリールWRには、所定の角度間隔で切り欠きWRaが形成されており、ブレーキ機構40は、ソレノイド76の駆動によってブレーキ部材78を切り欠きWRaに係合させることで、ワイヤリールWRの回転を停止する。ソレノイド76の動作は、制御基板34によって制御される。
【0034】
切断機構44は、結束機本体4の前部に配置されている。切断機構44は、ワイヤWを複数の鉄筋Rの周囲に巻回した状態で、捩り機構46に連動して回動するカッタ(図示せず)によって、ワイヤWを切断する。
【0035】
捩り機構46は、結束機本体4の前部から前後方向の中間部にかけて配置されている。捩り機構46は、捩りモータ80の回転に連動して進退および回転するフック82を備えている。捩り機構46は、複数の鉄筋Rの周囲に巻回されたワイヤWをフック82によって把持して捩ることで、複数の鉄筋RをワイヤWで結束する。捩りモータ80の動作は、制御基板34によって制御される。
【0036】
図1に示すように、ユーザが、複数の鉄筋Rに鉄筋結束機2をセットして、トリガ28を引き操作すると、鉄筋結束機2は、送り機構38、ブレーキ機構40および案内機構42によって、ワイヤWを複数の鉄筋Rの周囲に巻回するとともに、切断機構44および捩り機構46によって、ワイヤWを切断して、複数の鉄筋Rに巻回されたワイヤWを捩る、一連の動作を実行する。
【0037】
以下では、収容機構36について詳細に説明する。
図5、
図6に示すように、収容機構36は、リール収容室20の左側に設けられた左支持機構48と、リール収容室20の右側に設けられた右支持機構50を備えている。
【0038】
図6に示すように、左支持機構48は、ベース部材52と、カム部材54と、シャフト部材56と、圧縮バネ58を備えている。ベース部材52は、左ハウジング14に対して複数のねじによって固定されている。カム部材54は、ベース部材52を貫通するように配置されており、左右方向にスライド可能にベース部材52に保持されている。カム部材54は、リール収容室20の外側に突出する円筒状のカバー保持部54aを備えている。カバー保持部54aは、リールカバー22の取り付け部22aを保持する。なお、リールカバー22の取り付け部22bは、側面カバーハウジング18に形成された円筒状のカバー保持部18aに摺動可能に保持されている。
図5に示すように、カバー保持部54aの外周面には、カム突起54bが形成されている。カバー保持部54aのカム突起54bに対応して、リールカバー22の取り付け部22aの内周面には、図示しないカム突起が形成されている。
図6に示すように、シャフト部材56は、リール収容室20の内側に突出する円筒状のリール保持部56aを備えている。シャフト部材56は、カム部材54に対して複数のねじによって固定されている。このため、シャフト部材56は、カム部材54と一体となって、ベース部材52に対して左右方向にスライド可能である。また、シャフト部材56は、ベース部材52に保持された圧縮バネ58によって、右方向へ(すなわち、リール収容室20の内側へ)付勢されている。通常時は、圧縮バネ58の付勢力によって、カム部材54とシャフト部材56はベース部材52に対して右側に(すなわちリール収容室20の内側に)移動している。この状態では、リール保持部56aがワイヤリールWRのシャフト受け溝WRbに入り込むとともに、カム部材54のカム突起54bが取り付け部22aのカム突起をリールカバー22が閉じる方向に押圧して、リールカバー22が閉じられている。この際に、リール保持部56aはシャフト受け溝WRbに対して摺動可能に当接するため、ワイヤリールWRはリール保持部56aに対して回転可能に保持される。この状態では、ワイヤリールWRはリール保持部56aによって、右方向に(すなわちリール収容室20の内側に)押圧されている。この状態から、ユーザが圧縮バネ58の付勢力に抗してリールカバー22を開くと、リールカバー22の回動に伴って、リールカバー22の取り付け部22aのカム突起がカバー保持部54aのカム突起54bを左方向へ(すなわち、リール収容室20の外側へ)押圧する。これによって、カム部材54とシャフト部材56はベース部材52に対して左側に(すなわちリール収容室20の外側に)移動し、リール保持部56aはワイヤリールWRのシャフト受け溝WRbから抜け出る。この状態で、ユーザは、ワイヤリールWRをリール収容室20から出し入れすることができる。
【0039】
図6に示すように、右支持機構50は、回転台60と、内側ベアリング62と、外側ベアリング64と、磁気センサ66(
図3参照)と、圧縮バネ68を備えている。回転台60は、内側ベアリング62と外側ベアリング64を介して、右ハウジング16に回転可能に保持されている。また、回転台60は、内側ベアリング62と外側ベアリング64に対して、左右方向に摺動可能である。回転台60は、外側ベアリング64に保持された圧縮バネ68によって、左方向へ(すなわち、リール収容室20の内側へ)付勢されている。通常時は、圧縮バネ68の付勢力によって、回転台60は右ハウジング16に対して左側に(すなわちリール収容室20の内側に)移動している。
【0040】
回転台60は、リール収容室20の内側に突出する円筒状のリール保持部60aと、リール収容室20の内側面に沿って配置された円盤状の回転検出部60bと、リール収容室20の内側に突出する略三角平板形状の複数の係合突起60c(
図9参照)を備えている。
図8に示すように、ワイヤリールWRには、回転軸の近傍に形成されたシャフト受け溝WRcと、シャフト受け溝WRcよりも径方向外側に配置されており、仕切り壁WRdによって周方向に区切られた複数の開口WReが形成されている。リール保持部60aは、ワイヤリールWRのシャフト受け溝WRcに入り込んで、シャフト受け溝WRcに摺動可能に当接する。また、係合突起60cは、ワイヤリールWRの開口WReに入り込む。ワイヤリールWRが回転すると、リール保持部60aにシャフト受け溝WRcからの静摩擦力が作用するとともに、係合突起60cが仕切り壁WRdと周方向に当接することで、回転台60もワイヤリールWRと一体となって回転する。
図7に示すように、回転検出部60bには、所定の角度間隔で複数のマグネット60dが取り付けられている。磁気センサ66は、マグネット60dからの磁気を検出するホールIC66aを備えている。
図3に示すように、磁気センサ66は、右ハウジング16の外側に配置されている。磁気センサ66は、制御基板34と電気的に接続されている。ワイヤリールWRが回転すると、回転台60のマグネット60dがワイヤリールWRと一体となって回転し、ホールIC66aで検出される磁気が変動する。制御基板34は、磁気センサ66のホールIC66aが検出するマグネット60dからの磁気の変動から、ワイヤリールWRの回転を検出することができる。
【0041】
図10に示すように、ワイヤリールWRを収容機構36にセットする際に、係合突起60cの先端が、開口WReに入り込まずに、仕切り壁WRdに乗り上げてしまうことがある。この場合、圧縮バネ68が圧縮して回転台60が右方向に(すなわちリール収容室20の外側に)移動する。この状態では、リール保持部60aがシャフト受け溝WRcに当接しておらず、係合突起60cが開口WReに入り込んでおらず、係合突起60cの先端が仕切り壁WRdの先端に当接している。この際に、ワイヤリールWRは左支持機構48のシャフト部材56によって右支持機構50の回転台60に向けて押圧されているものの、圧縮バネ68が圧縮して回転台60が右方向に移動しているので、ワイヤリールWRや回転台60には大きな押圧力が作用しない。このため、送り機構38が送りモータ72の駆動によってワイヤリールWRからワイヤWを引き出す際に、ワイヤリールWRが回転台60に対して容易に回転しやすくなる。従って、送り機構38が送りモータ72の駆動によってワイヤリールWRからワイヤWを引き出すことで、
図11に示すように、係合突起60cが開口WReに入り込み、リール保持部60aがシャフト受け溝WRcに入り込んで、ワイヤリールWRが通常通りに保持された状態とすることが可能となる。
【0042】
図12は、比較例として、圧縮バネ68を備えておらず、回転台60が内側ベアリング62と外側ベアリング64に対して左右方向に摺動可能ではない(すなわち、回転台60が右ハウジング16に対して左右方向に移動可能ではない)、鉄筋結束機102を示している。鉄筋結束機102において、係合突起60cの先端が、開口WReに入り込まずに、仕切り壁WRdに乗り上げてしまった場合、ワイヤリールWRは左支持機構48のシャフト部材56によって右支持機構50の回転台60に向けて押圧されているので、ワイヤリールWRや回転台60に非常に大きな押圧力が作用する。この状態で、送り機構38が送りモータ72の駆動によってワイヤリールWRからワイヤWを引き出そうとしても、ワイヤリールWRは回転台60に対して容易に回転できず、回転台60は右ハウジング16に対して容易に回転できないため、送りモータ72に非常に大きな負荷がかかってしまう。これに対して、
図10、
図11に示す本実施例の鉄筋結束機2によれば、回転台60が右ハウジング16に対して左右方向に移動可能であり、回転台60と右ハウジング16の間に圧縮バネ68を備えているので、係合突起60cが仕切り壁WRdに乗り上げてしまった場合であっても、送りモータ72に大きな負荷がかかる事を抑制することができる。
【0043】
上記の実施例では、ワイヤリールWRの回転を検出するために、収容機構36が、回転台60に設けられた複数のマグネット60dと、右ハウジング16に設けられた磁気センサ66を備えている構成について説明した。これとは異なり、ワイヤリールWRに所定の角度間隔で複数のマグネットが直接取り付けられており、回転台60にはマグネット60dが取り付けられていない構成としてもよい。この場合でも、磁気センサ66によって検出されるワイヤリールWRのマグネットからの磁気の変動から、ワイヤリールWRの回転を検出することができる。なお、ワイヤリールWRの回転を検出する必要がない場合には、ワイヤリールWRや回転台60に複数のマグネットを設けなくてもよいし、右ハウジング16に磁気センサ66を設けなくてもよい。
【0044】
上記の実施例では、ワイヤリールWRの回転を検出するために、収容機構36が、回転台60に設けられた複数のマグネット60dと、右ハウジング16に設けられた磁気センサ66を備えている構成について説明した。これとは異なり、例えば
図13に示すように、ワイヤリールWRの回転を検出するために、収容機構36が、回転台60に設けられた複数の反射板60eと、右ハウジング16に設けられた光学センサ90を備える構成としてもよい。
図13に示す構成では、光学センサ90は、検出用のレーザをワイヤリールWRに向けて発光する発光部90aと、反射板60eで反射されたレーザを受光する受光部90bを備えている。光学センサ90の発光部90aと受光部90bは、それぞれ、制御基板34と電気的に接続されている。回転台60の回転検出部60bには、所定の角度間隔で複数の反射板60eが取り付けられている。光学センサ90は、右ハウジング16の外側に配置されている。右ハウジング16には、光学センサ90の発光部90aおよび受光部90bがワイヤリールWRに対して露出するように、図示しない貫通孔が形成されている。
図13に示す構成によれば、制御基板34は、光学センサ90の受光部90bが検出する光の変化から、ワイヤリールWRの回転を検出することができる。
【0045】
上記の実施例では、ワイヤリールWRが結束機本体4の後部で保持される構成について説明したが、ワイヤリールWRは、これ以外の位置で保持されていてもよい。例えば、ワイヤリールWRと、ワイヤリールWRを保持する収容機構36が、結束機本体4の下方であって、グリップ6の前方の位置、例えば案内機構42とバッテリ取り付け部8の間の位置に配置されていてもよく、送り機構38とブレーキ機構40が、収容機構36の上方に配置されていてもよい。
【0046】
上記の実施例では、鉄筋結束機2が1つのワイヤリールWRを使用する構成について説明したが、鉄筋結束機2は、2つ以上のワイヤリールWRを使用する構成としてもよい。例えば、鉄筋結束機2が、収容機構36と、送り機構38と、ブレーキ機構40を複数備えており、複数のワイヤリールWRを別個に保持して、それぞれのワイヤリールWRから案内機構42へワイヤWを送り出す構成としてもよい。
【0047】
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、ワイヤWを有するワイヤリールWR(リールの例)と、ワイヤリールWRを保持し、ワイヤリールWRと一体的に回転可能な回転台60(ホイールの例)と、回転台60を回転可能に保持する右ハウジング16(ホイール保持部の例)と、回転台60と右ハウジング16の間に介在する圧縮バネ68(弾性体の例)と、を備えている。
【0048】
上記の構成によれば、何らかの原因によってワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられる場合でも、圧縮バネ68によってワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、ワイヤリールWRや回転台60を回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出すアクチュエータである送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0049】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ワイヤリールWRは、仕切り壁WRdによって区画された開口WReを備えている。回転台60は、開口WReに入り込んで、ワイヤリールWRが回転する方向に仕切り壁WRdと当接する係合突起60cを備えている。
【0050】
上記のように、ワイヤリールWRが回転する方向にワイヤリールWRの仕切り壁WRdと回転台60の係合突起60cが当接する構成では、確実にワイヤリールWRと回転台60を一体的に回転させることができる。しかしながら、このような構成とした場合、ワイヤリールWRを回転台60に取り付ける際に、係合突起60cが開口WReに入り込まずに、係合突起60cが仕切り壁WRdに乗り上げてしまう事がある。係合突起60cが仕切り壁WRdに乗り上げてしまうと、係合突起60cが開口WReに入り込む場合に比べて、ワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられることになる。上記の構成によれば、回転台60と右ハウジング16の間に圧縮バネ68が介在しているので、係合突起60cが仕切り壁WRdに乗り上げてしまった場合でも、圧縮バネ68によってワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、ワイヤリールWRや回転台60を回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出す送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0051】
1つまたはそれ以上の実施形態において、回転台60と右ハウジング16の間に介在する弾性体は、圧縮バネ68である。
【0052】
上記の構成によれば、ワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられる場合に、ワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することを効果的に抑制することができる。
【0053】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、ワイヤリールWRを回転台60に対して押圧する左支持機構48(押圧機構の例)をさらに備えている。
【0054】
上記の構成によれば、左支持機構48によってワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられる場合でも、回転台60と右ハウジング16の間に介在する圧縮バネ68によって、ワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、ワイヤリールWRや回転台60を回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出す送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0055】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、回転台60の右ハウジング16に対する回転を検出する回転検出機構(例えば、マグネット60dと磁気センサ66の組み合わせ、あるいは、反射板60eと光学センサ90の組み合わせ)をさらに備えている。
【0056】
上記のような回転検出機構を用いて、ワイヤリールWRの回転を検出しようとする場合、ワイヤリールWRと回転台60を確実に一体的に回転させる必要がある。しかしながら、ワイヤリールWRと回転台60が確実に一体的に回転するように、ワイヤリールWRを回転台60に対して強く押し付ける構成とすると、ワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられるおそれがある。上記の構成によれば、ワイヤリールWRが回転台60に過度に押し付けられる場合でも、回転台60と右ハウジング16の間に介在する圧縮バネ68によって、ワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することが抑制される。これによって、ワイヤリールWRや回転台60を回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出す送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0057】
1つまたはそれ以上の実施形態において、鉄筋結束機2は、ワイヤWを有するワイヤリールWR(リールの例)と、ワイヤリールWRを保持し、ワイヤリールWRと一体的に回転可能な回転台60(ホイールの例)と、回転台60を回転可能に保持する右ハウジング16(ホイール保持部の例)と、を備えている。回転台60は、右ハウジング16に対して移動可能に構成されている。
【0058】
上記の構成によれば、何らかの原因によってワイヤリールWRが回転台60に過剰に押し付けられる場合でも、回転台60が右ハウジング16に対して移動することで、ワイヤリールWRや回転台60に過剰な押圧力が作用することが抑制される。ワイヤリールWRや回転台60を回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出すアクチュエータである送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0059】
1つまたはそれ以上の実施形態において、回転台60は、右ハウジング16に対して、ワイヤリールWRの回転軸に沿った方向に移動可能であり、ワイヤリールWRの回転軸に直交する方向に移動不能である。
【0060】
回転台60を右ハウジング16に対して移動した時に、それによって回転台60の回転軸がワイヤリールWRの回転軸からずれてしまうと、ワイヤリールWRと回転台60を一体的に回転させる際の抵抗が増大し、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出す送りモータ72に過剰な負荷がかかってしまう。上記の構成によれば、回転台60を右ハウジング16に対して移動した場合でも、それによって回転台60の回転軸がワイヤリールWRの回転軸からずれてしまうことがないので、ワイヤリールWRと回転台60を一体的に回転させる際の抵抗が増大することを抑制することができる。また、ワイヤリールWRからワイヤWを引き出す送りモータ72に過剰な負荷がかかる事を抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0062】
2 :鉄筋結束機
4 :結束機本体
6 :グリップ
8 :バッテリ取り付け部
12 :ハウジング
14 :左ハウジング
16 :右ハウジング
18 :側面カバーハウジング
18a :カバー保持部
20 :リール収容室
22 :リールカバー
22a :取り付け部
22b :取り付け部
28 :トリガ
30 :トリガロック
34 :制御基板
36 :収容機構
38 :送り機構
40 :ブレーキ機構
42 :案内機構
44 :切断機構
46 :捩り機構
48 :左支持機構
50 :右支持機構
52 :ベース部材
54 :カム部材
54a :カバー保持部
54b :カム突起
56 :シャフト部材
56a :リール保持部
58 :圧縮バネ
60 :回転台
60a :リール保持部
60b :回転検出部
60c :係合突起
60d :マグネット
60e :反射板
62 :内側ベアリング
64 :外側ベアリング
66 :磁気センサ
66a :ホールIC
68 :圧縮バネ
72 :送りモータ
74 :送りローラ
76 :ソレノイド
78 :ブレーキ部材
80 :捩りモータ
82 :フック
90 :光学センサ
90a :発光部
90b :受光部
102 :鉄筋結束機