(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】レーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/34 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
G01S7/34
(21)【出願番号】P 2018152673
(22)【出願日】2018-08-14
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】田村 英樹
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-107147(JP,A)
【文献】特開昭61-077775(JP,A)
【文献】特開昭60-205382(JP,A)
【文献】特開2012-108075(JP,A)
【文献】特開2007-155728(JP,A)
【文献】特開平07-055925(JP,A)
【文献】米国特許第7541971(US,B1)
【文献】特開2019-052937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、
前記レーダ受信強度減衰部が出力した前記レーダ装置の受信強度において、ドップラ処理に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度を抑圧し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を計測し、測角処理に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を計測するドップラ・測角処理部と、
を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置。
【請求項2】
前記ドップラ・測角処理部は、前記ドップラ処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度の抑圧を補正し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を補正し、前記測角処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を補正する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ目標検出装置。
【請求項3】
地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、
前記レーダ受信強度減衰部が出力した前記レーダ装置の受信強度において、距離及び方位に沿った平滑化処理に基づいて、小型の目標からのレーダ反射強度を抑圧し、測角処理に基づいて、大型の目標の存在方向を計測する平滑化・測角処理部と、
を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置。
【請求項4】
前記平滑化・測角処理部は、前記測角処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、大型の目標の存在方向を補正する
ことを特徴とする、請求項3に記載のレーダ目標検出装置。
【請求項5】
地面及び/又は海面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度に関するレーダ高度情報を取得するレーダ高度情報取得部、をさらに備え、
前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が地面及び/又は海面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が地面及び/又は海面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のレーダ目標検出装置。
【請求項6】
地面及び/又は海面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度と、前記レーダ装置から反射物体までの距離と前記レーダ装置の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する減衰量テーブル格納部、をさらに備え、
前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報及び前記減衰量テーブルに基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくする
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のレーダ目標検出装置。
【請求項7】
地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、
前記レーダ受信強度減衰ステップで出力した前記レーダ装置の受信強度において、ドップラ処理に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度を抑圧し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を計測し、測角処理に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を計測するドップラ・測角処理ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラム。
【請求項8】
地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、
前記レーダ受信強度減衰ステップで出力した前記レーダ装置の受信強度において、距離及び方位に沿った平滑化処理に基づいて、小型の目標からのレーダ反射強度を抑圧し、測角処理に基づいて、大型の目標の存在方向を計測する平滑化・測角処理ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラッタによる信号を除去し目標による信号を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッタによる信号を除去し目標による信号を抽出する技術が従来から存在する(例えば、特許文献1等を参照。)。ここで、レーダ装置からの距離が近いほど、背景反射による受信強度が高くなり、そこで、レーダ装置からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。すると、背景反射による受信強度が除去され、さらに、クラッタによる受信強度が除去され、よって、目標による受信強度が抽出される。
【0003】
従来技術の受信強度の減衰方法を
図1に示す。
図1の上段に示したように、全体の受信強度の減衰前では、クラッタ及び目標による受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標による受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標がレーダ表示装置に表示される。
図1の中段に示したように、レーダ装置からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
図1の下段に示したように、全体の受信強度の減衰後では、クラッタ及び目標による受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置に表示されず、目標による受信強度は表示閾値より大きく、目標はレーダ表示装置に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の前方及び後方での受信強度の減衰方法を
図2に示す。
図2の第1段に示したように、レーダシステムが搭載された飛行体Fが、前方方向に角度θ
Fだけ傾斜すると、後方側の送受信ビームBBの指向方向は、地面及び/又は海面Lから離れるが、前方側の送受信ビームBFの指向方向は、地面及び/又は海面Lに向く。
【0006】
図2の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。後方では、クラッタ及び飛行体FBによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び飛行体FBによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び飛行体FBがレーダ表示装置に表示される。前方では、クラッタ及び飛行体FFによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び飛行体FFによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び飛行体FFがレーダ表示装置に表示される。ここで、飛行体Fが前方方向に角度θ
Fだけ傾斜しているため、前方での背景反射及びクラッタによる受信強度は、後方での背景反射及びクラッタによる受信強度より高い。
【0007】
図2の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。前方及び後方でも、レーダシステムからの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0008】
図2の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。後方では、クラッタ及び飛行体FBによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置に表示されず、飛行体FBによる受信強度は表示閾値より大きく、飛行体FBはレーダ表示装置に表示される。前方では、クラッタ及び飛行体FFによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、飛行体FFによる受信強度は表示閾値より大きく、飛行体FFはレーダ表示装置に表示され、クラッタによる受信強度も表示閾値より大きく、クラッタもレーダ表示装置に表示される。これは、飛行体Fが前方方向に角度θ
Fだけ傾斜しているが、全体の受信強度の減衰量が前方及び後方でも同様であるためである。そこで、飛行体Fの傾斜に応答して、アンテナの指向方向を水平にすることが考えられる。しかし、アンテナの駆動機構が必要となり、レーダシステムの装置構成が複雑になる。そして、飛行体Fの傾斜速度と比べて、アンテナの駆動速度が遅いときには、レーダ表示装置の表示画面が見にくくなる。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする一方、送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、全体の受信強度の減衰量を小さくすることとした。そして、送受信ビームの指向方向の傾斜角度に応じて、ドップラ・測角処理結果を補正することとした。
【0011】
具体的には、本開示は、地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、前記レーダ受信強度減衰部が出力した前記レーダ装置の受信強度において、ドップラ処理に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度を抑圧し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を計測し、測角処理に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を計測するドップラ・測角処理部と、を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0012】
また、本開示は、地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、前記レーダ受信強度減衰ステップで出力した前記レーダ装置の受信強度において、ドップラ処理に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度を抑圧し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を計測し、測角処理に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を計測するドップラ・測角処理ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラムである。
【0013】
これらの構成によれば、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。そして、背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、ドップラ・測角処理を実行することができる。
【0014】
また、本開示は、前記ドップラ・測角処理部は、前記ドップラ処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度の抑圧を補正し、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を補正し、前記測角処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を補正することを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0015】
この構成によれば、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置の傾斜がないかのように、ドップラ・測角処理結果を補正することができる。
【0016】
具体的には、本開示は、地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、前記レーダ受信強度減衰部が出力した前記レーダ装置の受信強度において、距離及び方位に沿った平滑化処理に基づいて、小型の目標からのレーダ反射強度を抑圧し、測角処理に基づいて、大型の目標の存在方向を計測する平滑化・測角処理部と、を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0017】
また、本開示は、地面及び/又は海面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、前記レーダ受信強度減衰ステップで出力した前記レーダ装置の受信強度において、距離及び方位に沿った平滑化処理に基づいて、小型の目標からのレーダ反射強度を抑圧し、測角処理に基づいて、大型の目標の存在方向を計測する平滑化・測角処理ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラムである。
【0018】
これらの構成によれば、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。そして、背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、平滑化・測角処理を実行することができる。
【0019】
また、本開示は、前記平滑化・測角処理部は、前記測角処理において、前記レーダ傾斜情報に基づいて、大型の目標の存在方向を補正することを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0020】
この構成によれば、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置の傾斜がないかのように、測角処理結果を補正することができる。
【0021】
また、本開示は、地面及び/又は海面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度に関するレーダ高度情報を取得するレーダ高度情報取得部、をさらに備え、前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が地面及び/又は海面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が地面及び/又は海面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにすることを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0022】
この構成によれば、レーダ装置が地面及び/又は海面から任意の高度にあっても、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。
【0023】
また、本開示は、地面及び/又は海面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度と、前記レーダ装置から反射物体までの距離と前記レーダ装置の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する減衰量テーブル格納部、をさらに備え、前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報及び前記減衰量テーブルに基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくすることを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0024】
この構成によれば、レーダ装置の運用前に減衰量テーブルを予め格納することにより、レーダ装置の傾斜時に全体の受信強度の減衰量を即時に設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本開示は、レーダ装置が地面及び/又は海面に対して傾斜したとしても、レーダ装置の傾斜に応答してアンテナの指向方向を駆動する機構を必要とすることなく、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来技術の受信強度の減衰方法を示す図である。
【
図2】従来技術の前方及び後方での受信強度の減衰方法を示す図である。
【
図3】第1実施形態のレーダシステムの構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態の減衰量テーブルの内容を示す図である。
【
図5】第1実施形態のクラッタ除去の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の前方及び後方での受信強度の減衰方法を示す図である。
【
図7】第1実施形態の前方及び後方での受信強度の減衰方法を示す図である。
【
図8】第2実施形態のレーダシステムの構成を示す図である。
【
図9】第2実施形態の減衰量テーブルの内容を示す図である。
【
図10】第2実施形態のクラッタ除去の手順を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態の低高度及び高高度での受信強度の減衰方法を示す図である。
【
図12】本開示のドップラ・測角処理部の構成を示す図である。
【
図13】本開示のドップラ・測角処理の手順を示すフローチャートである。
【
図14】本開示のドップラ・測角処理の手順を示す図である。
【
図15】本開示の傾斜角度に基づくドップラ補正の内容を示す図である。
【
図16】本開示の傾斜角度に基づく測角補正の内容を示す図である。
【
図17】本開示の平滑化・測角処理部の構成を示す図である。
【
図18】本開示の平滑化・測角処理の手順を示すフローチャートである。
【
図19】本開示の平滑化・測角処理の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0028】
(第1実施形態のクラッタ除去)
第1実施形態のレーダシステムの構成を
図3に示す。レーダシステムRは、レーダ送受信装置1、レーダ目標検出装置2、レーダ表示装置3及び傾斜・方位角検出装置4から構成される。レーダ送受信装置1は、波形生成部11、レーダ送信部12、サーキュレータ13、アンテナ14-1、14-2、モータ駆動部15、回転軸モータ16、方位角回転軸17、レーダ減衰部18-1、18-2及びレーダ受信部19-1、19-2から構成される。レーダ目標検出装置2は、傾斜・方位角情報取得部21、減衰量テーブル格納部22、受信強度減衰部23、ドップラ・測角処理部24及び平滑化・測角処理部25から構成される。レーダ目標検出装置2は、
図5、13、18で後述するレーダ目標検出プログラムをコンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0029】
レーダ送信部12は、波形生成部11、サーキュレータ13及びアンテナ14-1を使用し、目標及びクラッタへの照射信号を送信する。レーダ受信部19-1、19-2は、それぞれ、アンテナ14-1、14-2を使用し、目標及びクラッタからの反射信号を受信する。レーダ減衰部18-1、18-2は、それぞれ、レーダ送受信装置1からの距離が近い反射物体によるレーダ送受信装置1の受信強度ほど大きく減衰させる。受信系統を2系統も備えているのは、位相モノパルス等による測角処理を行うためである。
【0030】
方位角回転軸17は、アンテナ14-1、14-2を方位角方向に回転させる駆動機構である。回転軸モータ16は、方位角回転軸17を回転させるモータである。モータ駆動部15は、回転軸モータ16を駆動する制御部である。レーダ送受信装置1は、方位角回転軸17及び回転軸モータ16を備えているが、後述する理由から、ロール軸及びピッチ軸並びにロール軸モータ及びピッチ軸モータを備えなくてもよい。
【0031】
ドップラ・測角処理部24は、
図12~16で後述するドップラ・測角処理を実行する。平滑化・測角処理部25は、
図17~19で後述する平滑化・測角処理を実行する。
【0032】
傾斜・方位角検出装置4は、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度に関する傾斜情報と、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の方位角方向に関する方位角情報と、を生成する。傾斜・方位角検出装置4として、ロール方向及びピッチ方向の傾斜角度を検出するジャイロ装置と、方位角方向を検出する方位角回転軸17のセンサ装置と、の組み合わせなどが挙げられる。
【0033】
傾斜・方位角情報取得部21は、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度に関する傾斜情報と、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の方位角方向に関する方位角情報と、を取得する。減衰量テーブル格納部22は、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度と、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離とレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する。
【0034】
受信強度減衰部23は、傾斜情報及び減衰量テーブルに基づいて、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を設定したうえで、レーダ減衰部18-1、18-2を制御する。具体的には、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向くほど、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を大きくする。その一方で、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れるほど、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を小さくする。
【0035】
まず、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する段階について説明する。第1実施形態の減衰量テーブルの内容を
図4に示す。原則として、レーダ送受信装置1からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0036】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に平行であり、送受信ビームの傾斜角度がθ2=0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ2=0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA2に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR2に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)dに設定する。ここで、指数dは、レーダ方程式を考慮して4程度であってもよく、地面及び/又は海面での面内反射を考慮して2程度であってもよい。
【0037】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ1<0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ1<0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA1に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR1に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δに設定する。ここで、減衰量A1は、減衰量A2より大きく、最大距離R1は、最大距離R2より長く、指数d-δは、指数dより小さい。
【0038】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面から離れており、送受信ビームの傾斜角度がθ3>0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ3>0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA3に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR3に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d+δに設定する。ここで、減衰量A3は、減衰量A2より小さく、最大距離R3は、最大距離R2より短く、指数d+δは、指数dより大きい。
【0039】
次に、レーダ送受信装置1の傾斜時に、全体の受信強度の減衰量を即時に設定する段階について説明する。第1実施形態のクラッタ除去の手順を
図5に示す。第1実施形態の前方及び後方での受信強度の減衰方法を
図6及び
図7に示す。
【0040】
図6の第1段に示したように、レーダシステムが搭載された飛行体Fが、前方方向に角度θ
Fだけ傾斜すると、後方側の送受信ビームBBの指向方向は、地面及び/又は海面Lから離れるが、前方側の送受信ビームBFの指向方向は、地面及び/又は海面Lに向く。
【0041】
図6の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。後方では、クラッタ及び飛行体FBによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び飛行体FBによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び飛行体FBがレーダ表示装置3に表示される。前方では、クラッタ及び飛行体FFによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び飛行体FFによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び飛行体FFがレーダ表示装置3に表示される。ここで、飛行体Fが前方方向に角度θ
Fだけ傾斜しているため、前方での背景反射及びクラッタによる受信強度は、後方での背景反射及びクラッタによる受信強度より高い。
【0042】
図6の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。傾斜・方位角情報取得部21は、傾斜角度θ
Fに関する傾斜情報を取得する(ステップS1)。受信強度減衰部23は、
図4に示した減衰量テーブルを参照し(ステップS2)、傾斜情報及び減衰量テーブルに基づいて、全体の受信強度の減衰量を設定する(ステップS3)。
【0043】
後方では、送受信ビームBBの傾斜角度が+θ
Fである。よって、
図4に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ
3(=+θ
F)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA
B(=A
3)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR
B(=R
3)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d+δに設定される。
【0044】
前方では、送受信ビームBFの傾斜角度が-θ
Fである。よって、
図4に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ
1(=-θ
F)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA
F(=A
1)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR
F(=R
1)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δに設定される。
【0045】
図6の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。ドップラ・測角処理部24及び/又は平滑化・測角処理部25は、それぞれの処理を実行する。
【0046】
後方では、クラッタ及び飛行体FBによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、飛行体FBによる受信強度は表示閾値より大きく、飛行体FBはレーダ表示装置3に表示される。前方でも、クラッタ及び飛行体FFによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、飛行体FFによる受信強度は表示閾値より大きく、飛行体FFはレーダ表示装置3に表示される。
【0047】
飛行体Fの傾斜角度θFは、刻々と変化する。そこで、クラッタ除去処理を続行するときには(ステップS4でNO)、ステップS1~S3を繰り返す。一方で、クラッタ除去処理を終了するときには(ステップS4でYES)、クラッタ除去プログラムを終了する。
【0048】
ここで、飛行体Fの傾斜角度θFの変化周波数は、アンテナ14-1、14-2の回転周波数(数Hz程度)と比較して小さいと考えられる。よって、アンテナ14-1、14-2の1回転周期において、ステップS1~S4を何回も実行する必要はない。
【0049】
アンテナ14-1、14-2の回転周期P1では、飛行体Fの傾斜角度θFが正の方向に小さく、全体の受信強度の減衰量を前方では後方より若干大きく設定する。アンテナ14-1、14-2の回転周期P2では、飛行体Fの傾斜角度θFが正の方向に大きく、全体の受信強度の減衰量を前方では後方より十分大きく設定する。アンテナ14-1、14-2の回転周期P3では、飛行体Fの傾斜角度θFが0であり、全体の受信強度の減衰量を前方と後方とで等しく設定する。アンテナ14-1、14-2の回転周期P4では、飛行体Fの傾斜角度θFが負の方向に大きく、全体の受信強度の減衰量を後方では前方より十分大きく設定する。アンテナ14-1、14-2の回転周期P5では、飛行体Fの傾斜角度θFが負の方向に小さく、全体の受信強度の減衰量を後方では前方より若干大きく設定する。
【0050】
第1実施形態では、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する。ここで、第1の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、クラッタ及び背景反射による受信強度の減衰程度がレーダ送受信装置1から見た全ての方向でほぼ同様になるように、全体の受信強度の減衰量をフィードバック制御してもよい。或いは、第2の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、地面及び/又は海面Lの状態(例えば、海面での波高、波長及び波速など)に応じて、全体の受信強度の減衰量を機械学習してもよい。
【0051】
(第2実施形態のクラッタ除去)
第2実施形態のレーダシステムの構成を
図8に示す。レーダシステムRは、傾斜・方位角検出装置4に代えて傾斜・高度・方位角検出装置4’を備える。レーダ目標検出装置2は、傾斜・方位角情報取得部21に代えて傾斜・高度・方位角情報取得部21’を備える。レーダ目標検出装置2は、
図10、13、18で後述するレーダ目標検出プログラムをコンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0052】
傾斜・高度・方位角検出装置4’は、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度に関する傾斜情報と、地面及び/又は海面からのレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の高度に関する高度情報と、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の方位角方向に関する方位角情報と、を生成する。傾斜・高度・方位角検出装置4’として、ロール方向及びピッチ方向の傾斜角度を検出するジャイロ装置と、レーダを用いた高度計測装置と、方位角方向を検出する方位角回転軸17のセンサ装置と、の組み合わせなどが挙げられる。
【0053】
傾斜・高度・方位角情報取得部21’は、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度に関する傾斜情報と、地面及び/又は海面からのレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の高度に関する高度情報と、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の方位角方向に関する方位角情報と、を取得する。実施形態2の減衰量テーブル格納部22は、実施形態1の減衰量テーブル格納部22に加えて、地面及び/又は海面に対するレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の傾斜角度と、地面及び/又は海面からのレーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の高度と、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離とレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する。
【0054】
実施形態2の受信強度減衰部23は、実施形態1の受信強度減衰部23に加えて、傾斜情報、高度情報及び減衰量テーブルに基づいて、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を設定したうえで、レーダ減衰部18-1、18-2を制御する。具体的には、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いていると判断したとする。そのときに、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の高度が地面及び/又は海面から低いほど、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離の増加に対するレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量の減少を速やかにする。その一方で、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1のアンテナ14-1、14-2の高度が地面及び/又は海面から高いほど、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離の増加に対するレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする。
【0055】
まず、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する段階について説明する。第2実施形態の減衰量テーブルの内容を
図9に示す。原則として、レーダ送受信装置1からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0056】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ
1<0であるとともに、アンテナ14-1、14-2の高度が地面及び/又は海面にほぼ等しいH
1であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ
1<0及びアンテナ14-1、14-2の高度H
1に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA
1に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR
1に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δに設定する。ここで、
図9の左欄に示した減衰量Aは、
図4の左欄に示した減衰量Aと同様である。
【0057】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ
1<0であるとともに、アンテナ14-1、14-2の高度が地面及び/又は海面から低いH
2であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ
1<0及びアンテナ14-1、14-2の高度H
2に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA
1’に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR
1’に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δLに設定する。ここで、減衰量A
1’は、減衰量A
1より小さく、最大距離R
1’は、最大距離R
1より長く、指数d-δLは、指数d-δより小さい。その理由については、
図11を用いて後述する。
【0058】
送受信ビームの指向方向が地面及び/又は海面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ
1<0であるとともに、アンテナ14-1、14-2の高度が地面及び/又は海面から高いH
3であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ
1<0及びアンテナ14-1、14-2の高度H
3に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA
1”に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR
1”に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δHに設定する。ここで、減衰量A
1”は、減衰量A
1’より小さく、最大距離R
1”は、最大距離R
1’より長く、指数d-δHは、指数d-δLより小さい。その理由については、
図11を用いて後述する。
【0059】
次に、レーダ送受信装置1の傾斜時に、全体の受信強度の減衰量を即時に設定する段階について説明する。第2実施形態のクラッタ除去の手順を
図10に示す。第2実施形態の低高度及び高高度での受信強度の減衰方法を
図11に示す。
【0060】
図11の第1段に示したように、レーダシステムが搭載された飛行体Fが、前方方向に角度θ
Fだけ傾斜すると、前方側の送受信ビームBDの指向方向は、地面及び/又は海面Lに向く。そして、レーダシステムが搭載された飛行体Fが、低高度H
L(高高度H
H)を飛行するときに、前方側の送受信ビームBDの指向性は、レーダシステムから水平方向に近距離(遠距離)で地面及び/又は海面Lに交差する。
【0061】
図11の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。低高度では、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標Tによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標Tがレーダ表示装置3に表示される。高高度でも、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標Tによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標Tがレーダ表示装置3に表示される。ここで、低高度での背景反射による受信信号は、高高度での背景反射による受信信号より、強度が高い。そして、低高度での地面及び/又は海面クラッタによる受信信号は、高高度での地面及び/又は海面クラッタによる受信信号より、強度が高いが距離が短い。
【0062】
図11の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。傾斜・高度・方位角情報取得部21’は、傾斜角度θ
Fに関する傾斜情報と、高度Hに関する高度情報と、を取得する(ステップS1’)。受信強度減衰部23は、
図9に示した減衰量テーブルを参照し(ステップS2)、傾斜情報、高度情報及び減衰量テーブルに基づいて、全体の受信強度の減衰量を設定する(ステップS3’)。
【0063】
低高度では、送受信ビームBDの傾斜角度が-θ
Fであり、アンテナ14-1、14-2の高度がH
Lである。よって、
図9に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ
1(=-θ
F)であり、アンテナ14-1、14-2の高度がH
2(=H
L)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA
L(=A
1’)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR
L(=R
1’)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δLに設定される。
【0064】
高高度では、送受信ビームBDの傾斜角度が-θ
Fであり、アンテナ14-1、14-2の高度がH
Hである。よって、
図9に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ
1(=-θ
F)であり、アンテナ14-1、14-2の高度がH
3(=H
H)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA
H(=A
1”)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR
H(=R
1”)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)
d-δHに設定される。
【0065】
図11の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。ドップラ・測角処理部24及び/又は平滑化・測角処理部25は、それぞれの処理を実行する。
【0066】
低高度では、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、目標Tによる受信強度は表示閾値より大きく、目標Tはレーダ表示装置3に表示される。高高度でも、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、目標Tによる受信強度は表示閾値より大きく、目標Tはレーダ表示装置3に表示される。
【0067】
飛行体Fの傾斜角度θF及び高度Hは、刻々と変化する。そこで、クラッタ除去処理を続行するときには(ステップS4でNO)、ステップS1’~S3’を繰り返す。一方で、クラッタ除去処理を終了するときには(ステップS4でYES)、クラッタ除去プログラムを終了する。
【0068】
ここで、飛行体Fの傾斜角度θ
F及び高度Hの変化周波数は、アンテナ14-1、14-2の回転周波数(数Hz程度)と比較して小さいと考えられる。よって、アンテナ14-1、14-2の1回転周期において、
図7と同様にしてステップS1’~S4を何回も実行する必要はない。
【0069】
第2実施形態では、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する。ここで、第1の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、クラッタ及び背景反射による受信強度の減衰程度がレーダ送受信装置1から見た全ての方向でほぼ同様になるように、全体の受信強度の減衰量をフィードバック制御してもよい。或いは、第2の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、地面及び/又は海面Lの状態(例えば、海面での波高、波長及び波速など)に応じて、全体の受信強度の減衰量を機械学習してもよい。
【0070】
(本開示のドップラ・測角処理)
第1、2実施形態のレーダ目標検出装置2のドップラ・測角処理部24について説明する。本開示のドップラ・測角処理部の構成を
図12に示す。本開示のドップラ・測角処理の手順を
図13のフローチャート及び
図14の受信信号に示す。ドップラ・測角処理部24は、ドップラ処理部241-1、241-2、地面・海面除去部242-1、242-2、目標検出部243、測角処理部244及びレーダ表示出力部245から構成される。
【0071】
自機である飛行体F1の前方に、距離が近い順序で、建造物B(飛行体F1より高度が低い。)、他機である飛行体F2(飛行体F1より高度が高い。)、地形H(飛行体F1と高度がほぼ等しい。)及び雨域C(飛行体F1より高度が高い。)が存在するとする。
【0072】
ドップラ処理部241-1、241-2は、それぞれ、クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号を入力する。クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、飛行体F1の近傍のクラッタが抑圧されている。
【0073】
ドップラ処理部241-1、241-2は、それぞれ、クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号に基づいて、目標の移動速度を計測する。そして、地面・海面除去部242-1、242-2は、それぞれ、ドップラ処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度を抑圧する。さらに、ドップラ処理部241-1、241-2は、それぞれ、ドップラ処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を計測する(ステップS11)。ドップラ処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、固定目標である建造物B及び地形Hからの反射強度が抑圧されている。そして、移動目標である飛行体F2からの反射強度が維持されている。なお、移動目標ではあるが空間的に広がる目標でもある雨域Cは、検出対象の目標以外と判定されている。
【0074】
目標検出部243は、ドップラ処理後のアンテナ14-2の受信信号に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の距離を計測する。目標検出後のアンテナ14-2の受信信号では、移動目標である飛行体F2の距離が計測されている。測角処理部244は、ドップラ処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を計測する(ステップS12)。測角処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、移動目標である飛行体F2の仰角(飛行体F2の高度は飛行体F1の高度より高いため、飛行体F2の仰角は正である。)が計測されている。
【0075】
レーダ表示出力部245は、地面及び/又は海面に対して動く目標について、ドップラ処理部241-1、241-2から移動速度の情報を取得し、目標検出部243から距離の情報を取得し、測角処理部244から仰角の情報を取得し、傾斜・高度・方位角情報取得部21’から高度及び方位角の情報を取得し、レーダ表示装置3にこれらの情報を出力する(ステップS13)。そして、ドップラ・測角処理を続行するときには(ステップS14でNO)、ステップS11~S13を繰り返す。一方で、ドップラ・測角処理を終了するときには(ステップS14でYES)、ドップラ・測角処理プログラムを終了する。
【0076】
ここで、ドップラ処理部241-1、241-2は、レーダ傾斜情報に基づいて、目標の移動速度を補正する。そして、地面・海面除去部242-1、242-2は、レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面からのレーダ反射強度の抑圧を補正する。さらに、ドップラ処理部241-1、241-2は、レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の移動速度を補正する(ステップS11のただし書き)。
【0077】
本開示の傾斜角度に基づくドップラ補正の内容を
図15に示す。x、y方向を水平面内とし、z方向を鉛直方向とする。xyz座標の原点に、自機である飛行体F1が存在し、+y軸方向から仰角方向にθ
Fだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向する。+y軸上に、他機である飛行体F2が存在し、+y軸方向から水平面内でφ
Vだけずれた方向に、飛行体F1に対する飛行体F2の相対速度Vが向く。
【0078】
すると、飛行体F1に対する飛行体F2の相対速度Vのうち、飛行体F1から見た飛行体F2のドップラ速度は、VcosφV(ただし、飛行体F1から見て遠ざかる方向。)となるはずである。しかし、+y軸方向から仰角方向にθFだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向している。よって、飛行体F1から見た飛行体F2のドップラ速度VcosφVのうち、実際に計測される飛行体F2のドップラ速度は、VcosφVcosθF(ただし、飛行体F1から見て遠ざかる方向。)となってしまう。そこで、実際に計測される飛行体F2のドップラ速度VcosφVcosθFに基づいて、事後に補正された飛行体F2のドップラ速度として、VcosφVcosθF/cosθF=VcosφV(ただし、飛行体F1から見て遠ざかる方向。)を計測すればよい。
【0079】
そして、測角処理部244は、レーダ傾斜情報に基づいて、地面及び/又は海面に対して動く目標の存在方向を補正する(ステップS12のただし書き)。
【0080】
本開示の傾斜角度に基づく測角補正の内容を
図16に示す。x、y方向を水平面内とし、z方向を鉛直方向とする。xyz座標の原点に、自機である飛行体F1が存在し、+y軸方向から仰角方向にθ
Fだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向する。+y軸方向から仰角方向にθ
真値だけずれた方向に、他機である飛行体F2が存在する。
【0081】
すると、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角は、θ
真値となるはずである。しかし、+y軸方向から仰角方向にθ
Fだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向している。よって、実際に計測される飛行体F1から見た飛行体F2の仰角は、θ
計測=θ
真値-θ
Fとなってしまう。そこで、実際に計測される飛行体F1から見た飛行体F2の仰角θ
計測に基づいて、事後に補正された飛行体F1から見た飛行体F2の仰角として、θ
真値=θ
計測+θ
Fを計測すればよい。なお、
図15において、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角が0である場合を考えている。ただ、
図15と異なり、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角が0でない場合であっても、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角を計測したうえで(
図16を参照。)、飛行体F1から見た飛行体F2のドップラ速度を計測すればよい(
図15を参照。ただし、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角も考慮する。)。
【0082】
(本開示の平滑化・測角処理)
第1、2実施形態のレーダ目標検出装置2の平滑化・測角処理部25について説明する。本開示の平滑化・測角処理部の構成を
図17に示す。本開示の平滑化・測角処理の手順を
図18のフローチャート及び
図19の受信信号に示す。平滑化・測角処理部25は、平滑処理部251-1、251-2、目標検出部252、測角処理部253及びレーダ表示出力部254から構成される。
【0083】
自機である飛行体F1の前方に、距離が近い順序で、建造物B(飛行体F1より高度が低い。)、他機である飛行体F2(飛行体F1より高度が高い。)、地形H(飛行体F1と高度がほぼ等しい。)及び雨域C(飛行体F1より高度が高い。)が存在するとする。
【0084】
平滑化処理部251-1、251-2は、それぞれ、クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号を入力する。クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、飛行体F1の近傍のクラッタが抑圧されている。
【0085】
平滑化処理部251-1、251-2は、それぞれ、クラッタ除去後のアンテナ14-1、14-2の受信信号において、距離及び方位に沿った平滑化処理(所定の距離及び方位の範囲での平均処理)を実行する。そして、平滑化処理部251-1、251-2は、それぞれ、平滑化処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号において、小型の目標からのレーダ反射強度を抑圧する(ステップS21)。平滑化処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、小型目標である飛行体F2からの反射強度が抑圧されている。そして、大型目標である建造物B、地形H及び雨域Cからの反射強度が維持されている。
【0086】
目標検出部252は、平滑化処理後のアンテナ14-2の受信信号に基づいて、大型の目標の距離を計測する。目標検出後のアンテナ14-2の受信信号では、大型目標である建造物B、地形H及び雨域Cの距離が計測されている。測角処理部253は、平滑化処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号に基づいて、大型の目標の存在方向を計測する(ステップS22)。測角処理後のアンテナ14-1、14-2の受信信号では、大型の目標である建造物B、地形H及び雨域Cの仰角(建造物Bの高度は飛行体F1の高度より低いため、建造物Bの仰角は負である。地形Hの高度は飛行体F1の高度とほぼ等しいため、地形Hの仰角はほぼ0である。雨域Cの高度は飛行体F1の高度より高いため、雨域Cの仰角は正である。)が計測されている。
【0087】
レーダ表示出力部254は、大型の目標について、目標検出部252から距離の情報を取得し、測角処理部253から仰角の情報を取得し、傾斜・高度・方位角情報取得部21’から高度及び方位角の情報を取得し、レーダ表示装置3にこれらの情報を出力する(ステップS23)。そして、平滑化・測角処理を続行するときには(ステップS24でNO)、ステップS21~S23を繰り返す。一方で、平滑化・測角処理を終了するときには(ステップS24でYES)、平滑化・測角処理プログラムを終了する。
【0088】
ここで、測角処理部253は、レーダ傾斜情報に基づいて、大型の目標の存在方向を補正する(ステップS22のただし書き)。
【0089】
本開示の傾斜角度に基づく測角補正の内容を
図16に示す。x、y方向を水平面内とし、z方向を鉛直方向とする。xyz座標の原点に、自機である飛行体F1が存在し、+y軸方向から仰角方向にθ
Fだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向する。+y軸方向から仰角方向にθ
真値だけずれた方向に、他機である飛行体F2が存在する。
【0090】
すると、飛行体F1から見た飛行体F2の仰角は、θ真値となるはずである。しかし、+y軸方向から仰角方向にθFだけずれた方向に、飛行体F1の送受信ビームBFが指向している。よって、実際に計測される飛行体F1から見た飛行体F2の仰角は、θ計測=θ真値-θFとなってしまう。そこで、実際に計測される飛行体F1から見た飛行体F2の仰角θ計測に基づいて、事後に補正された飛行体F1から見た飛行体F2の仰角として、θ真値=θ計測+θFを計測すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示のレーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラムは、揺れの激しい飛行体及び船舶などに搭載されるレーダ装置に対して、特に有用に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
R:レーダシステム
F、FF、FB、F1、F2:飛行体
T:目標
B:建造物
H:地形
C:雨域
BF、BB、BD:送受信ビーム
L:地面及び/又は海面
1:レーダ送受信装置
2:レーダ目標検出装置
3:レーダ表示装置
4:傾斜・方位角検出装置
4’:傾斜・高度・方位角検出装置
11:波形生成部
12:レーダ送信部
13:サーキュレータ
14-1、14-2:アンテナ
15:モータ駆動部
16:回転軸モータ
17:方位角回転軸
18-1、18-2:レーダ減衰部
19-1、19-2:レーダ受信部
21:傾斜・方位角情報取得部
21’:傾斜・高度・方位角情報取得部
22:減衰量テーブル格納部
23:受信強度減衰部
24:ドップラ・測角処理部
25:平滑化・測角処理部
241-1、241-2:ドップラ処理部
242-1、242-2:地面・海面除去部
243:目標検出部
244:測角処理部
245:レーダ表示出力部
251-1、251-2:平滑化処理部
252:目標検出部
253:測角処理部
254:レーダ表示出力部