(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】レンズ光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/14 20060101AFI20220706BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G02B13/14
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2018152725
(22)【出願日】2018-08-14
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100082821
【氏名又は名称】村社 厚夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】布施 慎吾
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-330014(JP,A)
【文献】特開2014-026184(JP,A)
【文献】特開2014-059561(JP,A)
【文献】特開2001-281536(JP,A)
【文献】特開2016-014759(JP,A)
【文献】特開昭59-071014(JP,A)
【文献】特開昭53-107824(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長Nが780nmより長く、波長N±50nmの波長範囲以内でのみに使用されるレンズ光学系において、
前記レンズ光学系は、波長N±50nmの波長範囲以内のみを透過するバンドパスフィルターを有し、負の屈折力を有する面を少なくとも1面以上有し、両凸形状の空気レンズを少なくとも1つ有し、さらに最も物体側に物体側凸面を有するレンズLfを有し、以下の条件式を満足していることを特徴とするレンズ光学系。
-2.00<fn/f<-0.45 ・・・・(1)
0.10<Y/f<0.60 ・・・・(2)
-0.15<(Crpf+Crpr)/(Crpf-Crpr)< 0.65
・・・・(4)
0.65<CrLf/f ・・・・(5)
0.10<1/tan(|Amin|)<1.35 ・・・・(9)
但し、但し、
fn:前記レンズ光学系のすべての面の中で最も負の屈折力の大きい面の波長Nnmに
おける
媒質の焦点距離
f :前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
Y :前記レンズ光学系の波長Nnmにおける最大像高
Crpf:前記両凸形状の空気レンズの物体側面の曲率半径
Crpr:前記両凸形状の空気レンズの像側面の曲率半径
CrLf:前記レンズLfの物体側凸面の曲率半径
Amin:前記レンズ光学系に含まれるすべてのレンズ面におけるレンズ面の接線と光
軸のなす角度の最小値
【請求項2】
前記レンズ光学系は、少なくとも1枚の樹脂レンズLpを有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ光学系。
【請求項3】
前記樹脂レンズLpが、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項2に記載のレンズ光学系。
1.5<|fLp|/f<2000.0 ・・・・(3)
但し、
fLp:前記樹脂レンズLpのうち最も屈折力が大きいものの波長Nnmにおける焦点距
離
【請求項4】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレンズ光学系。
0.50<1/tan(|Bmax|)<4.00 ・・・ (6)
但し、
Bmax:前記レンズ光学系に含まれるすべてのレンズ面におけるレンズ面の法線と入射 光線のなす角度の最大値
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレンズ光学系。
1.90<1/tan(|Cmax|)<20.00 ・・・(7)
但し、
Cmax:前記バンドパスフィルターと前記バンドパスフィルターに入射する光線のなす 角度の最大値
【請求項6】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレンズ光学系。
-0.09< tan(D)<0.27 ・・・・(8)
但し、
D:前記レンズ光学系の最も像側の面から射出され像面に入射する波長Nnmにおける最 軸外光線の主光線と光軸と平行な線がなすメリジオナル断面上の角度
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のレンズ光学系の像側に、前記レンズ光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長の光線に用いられ、特定の波長の光線に対して高性能なレンズ光学系及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ強化、安全性強化等の実現のため、センシング技術の高度化が求められている。そのため、特定の波長範囲の光線によって対象物である人や物体が存在する領域を広範囲にわたって走査を行う。投光の対象物による反射光や外乱光の拡散光をレンズ光学系によって検知し、対象物の検出を高精度に行うことが要望されている。
【0003】
従来の特定波長光を使用するレンズ光学系に関する上述した要望に関し、3枚のレンズから構成されたレンズ群と、近赤外域の特定波長帯域の光線を透過させる干渉フィルターとを物体側から像側に向かってこの順番で有し、前記レンズ群は、正のパワーを持つ物体側に凸の第1メニスカスレンズ、正のパワーを持つ像側に凸の凸レンズを物体側から像側に向かってこの順番に備えた赤外線用レンズユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、従来の前記レンズユニットにおいては、レンズが3枚以下という少ない枚数で広角レンズを構成しているが、Fnoも暗く、また撮像素子への入射角も大きいため、撮像素子への入射光量が十分ではないという問題がある。特に、本技術分野においては、特定波長帯域の光線を投射し、対象物によるその反射光を撮像素子によって検出するため、僅かな反射光も逃さず受光することが望ましく、該撮像素子の入射光量不足は重要な解決すべき課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の目的)
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、対象物による反射光もしくは散乱光を効率よく撮像素子に入力させるレンズ光学系及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、
波長Nが780nmより長く、波長N±50nmの波長範囲以内でのみに使用されるレンズ光学系において、
前記レンズ光学系は、波長N±50nmの波長範囲以内のみを透過するバンドパスフィルターを有し、負の屈折力を有する面を少なくとも1面以上有し、両凸形状の空気レンズを少なくとも1つ有し、さらに最も物体側に物体側凸面を有するレンズLfを有し、以下の条件式を満足していることを特徴とするレンズ光学系。
-2.00<fn/f<-0.45 ・・・・・(1)
0.10<Y/f<0.60 ・・・・・(2)
-0.15<(Crpf+Crpr)/(Crpf-Crpr)< 0.65
・・・・・(4)
0.65<CrLf/f ・・・・・(5)
0.10<1/tan(|Amin|)<1.35 ・・・・(9)
但し、
fn:前記レンズ光学系のすべての面の中で最も負の屈折力の大きい面の波長Nnmに
おける媒質の焦点距離
f :前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
Y :前記レンズ光学系の波長Nnmにおける最大像高
Crpf:前記両凸形状の空気レンズの物体側面の曲率半径
Crpr:前記両凸形状の空気レンズの像側面の曲率半径
CrLf:前記レンズLfの物体側凸面の曲率半径
Amin:前記レンズ光学系に含まれるすべてのレンズ面におけるレンズ面の接線と光
軸のなす角度の最小値
である。
【0008】
第2発明は、
第1発明のレンズ光学系と、前記レンズ光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備えたことを特徴とする撮像装置
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物による反射光もしくは散乱光を効率よく撮像素子に入力させるレンズ光学系及び撮像装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明の第1実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。
【
図5】本発明の第1実施例のレンズ光学系の縦収差図である。
【
図6】本発明の第2実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。
【
図7】本発明の第2実施例のレンズ光学系の縦収差図である。
【
図8】本発明の第3実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。
【
図9】本発明の第3実施例のレンズ光学系の縦収差図である。
【
図10】本発明の第4実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。
【
図11】本発明の第4実施例のレンズ光学系の縦収差図である。
【
図12】本発明の実施例の撮像装置の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のレンズ光学系及び撮像装置の実施形態について説明する。ただし、以下に説明するものは当該レンズ光学系及び撮像装置の一態様であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
【0012】
第1実施形態のレンズ光学系は、
波長N±50nmの波長範囲以内でのみに使用されるレンズ光学系において、前記レンズ光学系は波長N±50nmの波長範囲以内のみを透過するバンドパスフィルターを有し、前記レンズ光学系は負の屈折力を有する面が少なくとも1面以上有し、以下の条件式を満足していることを特徴とするレンズ光学系。
-2.00 < fn/f < -0.45 ・・・・・(1)
0.10 < Y/f < 0.60 ・・・・・(2)
但し、
fn : 前記レンズ光学系のすべての面の中で最も負の屈折力の大きい面の波長Nnmに
おける焦点距離
f : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
Y : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける最大像高
である。
【0013】
第1実施形態のレンズ光学系は、波長N±50nmの波長範囲以内でのみに使用されるレンズ光学系において、前記レンズ光学系は波長N±50nmの波長範囲のみを透過するバンドパスフィルターを有することを特徴とする。バンドパスフィルターを有することにより、特定の波長領域のみ収差補正すればよく、少ないレンズ枚数でレンズ光学系を構成することが可能となり、高性能化と低コスト化が達成できる。
ちなみに、バンドパスフィルターは基板の表面上に多層膜を形成してなる干渉フィルターであり、特定の波長帯域の光線の透過率を高く、それ以外の波長帯域の透過率を低くする作用を有する。
バンドパスフィルターを配置する光軸方向の位置はどこでも構わない。しかしながら、干渉フィルターは、入射光線角が0°から離れるに従って透過スペクトルが短波長側にシフトするため、バンドパスフィルターへの光線入射角が大きくない位置にバンドパスフィルターを配置することが好ましい。また、バンドパスフィルターの基盤の曲率は問わない。しかし、バンドパスフィルターには光線が色々異なった角度で入射し、かつ基盤が球面の場合には入射位置によって光線入射角が変化するため、基盤は平行平板であることが好ましい。
【0014】
第1実施形態のレンズ光学系は、負の屈折力を有する面が少なくとも1面以上有することを特徴とする。特定の狭い波長領域のみに使用される光学系の場合、色収差補正の必要性がないため、すべて正の屈折力を有するレンズのみで構成しても、高性能なレンズ光学系を構成することができる。しかし、像面性をよりよくするためにはペッツバール和を補正する必要があり、そのため少なくとも1面以上の負の屈折力を有する面があることが好ましい。
【0015】
第1実施形態のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
-2.00 < fn/f < -0.45 ・・・・・(1)
但し、
fn : 前記レンズ光学系のすべての面の中で最も負の屈折力の大きい面の波長Nnmに
おける焦点距離
f : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
【0016】
上記条件式(1)は、前記負の屈折力を有する面の焦点距離を規定するための式である。
条件式(1)を満足することにより前記負の屈折力を有する面の焦点距離が適切な範囲となり、多くのレンズ枚数を必要としないレンズ構成で像面性の補正が可能となる。
条件式(1)の下限を割ると、負の屈折力が弱くなり過ぎて、像面性の補正が困難となり好ましくない。
また条件式(1)の上限を超えると、負の屈折力が強くなり過ぎて像面性が過大に倒れるため、性能の点で好ましくない。また像面性を補正しようとすると少ないレンズ枚数で構成することが困難となり、低コスト化の点で好ましくない。
【0017】
なお、条件式(1)の下限は-1.80であるとより好ましく、-1.60であると更に好ましく、-1.50であると更に好ましく、-1.40であると更に好ましく、-1.30であると更に好ましく、-1.20であると更に好ましい。
また、条件式(1)の上限は-0.50であると好ましく、-0.55であると更に好ましく、-0.60であると更に好ましく、-0.65であると更に好ましく、-0.70であると更に好ましい。
【0018】
第1実施形態のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.10 < Y/f < 0.60 ・・・・・(2)
但し、
Y : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける最大像高
f : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
【0019】
上記条件式(2)は、レンズ光学系最大像高と焦点距離の比を規定する式である。
条件式(2)を満足することでレンズ光学系の画角が適切な範囲となり、多くのレンズ枚数を必要としないレンズ構成で高性能化が可能となる。
条件式(2)の下限を割ると、最大画角が狭くなり過ぎるため広い範囲を撮影することが困難となり好ましくない。
また条件式(2)の上限を超えると、最大画角が広くなるため少ないレンズ枚数で構成しながら高性能化することが困難となり、低コスト化の点で好ましくない。
【0020】
なお、条件式(2)の下限は0.12であるとより好ましく、0.14であると更に好ましく、0.16であると更に好ましく、0.20であると更に好ましい。また、条件式(2)の上限は0.55であると好ましく、0.50であると更に好ましく、0.45であると更に好ましく、0.40であると更に好ましく、0.35であると更に好ましい。
【0021】
第1実施形態の撮像光学系は、このレンズ構成に限定されない。いずれのレンズ枚数、及び、レンズ配置においても、本実施形態を適用することによって、これらの効果を得ることが可能である。また、低コスト化及び小型化の観点から、より好ましくは、7枚以下のレンズで構成されることが好ましい。レンズの形状に関しては、最物体側面が凸面であることが好ましい。レンズ枚数や形状は、求められる焦点距離、大きさ、Fナンバーや像高によって適宜変更することが可能である。
【0022】
第2実施形態のレンズ光学系は、少なくとも1枚の樹脂レンズLpを有することを特徴とする。
樹脂レンズを用いることにより軽量化と低コスト化が達成できる。
また、前記樹脂レンズLpには非球面を有することが好ましい。樹脂レンズLpに非球面を用いることで低コスト化を実現しながら収差補正が効果的に達成できるため、高性能化も同時に達成される。なお、前記樹脂レンズLpに非球面を使用する場合、近軸的な屈折力を弱める形状の非球面であることが収差補正上好ましい。
【0023】
第3実施形態のレンズ光学系は、前記樹脂レンズLpが、以下の条件式を満足することを特徴とする。
1.5 < |fLp|/f < 2000.0 ・・・・・(3)
但し、
fLp: 前記樹脂レンズLpの波長Nnmにおける焦点距離
f : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
(樹脂レンズLpが複数ある場合は、最も屈折力が大きいものをfLpとする)
【0024】
上記条件式(3)は、前記樹脂レンズLpの波長Nnmにおける焦点距離を規定するための式である。樹脂レンズの場合、温度変化に対する光学特性の変化が大きいため、前記樹脂レンズLpはあまり大きな屈折力を有さない方が良い。
【0025】
条件式(3)を満足することにより、温度変化に対する光学特性の変化を小さくしながら、少ないレンズ枚数で光学性能の向上を図ることができる。
条件式(3)の下限を割ると、前記樹脂レンズLpの屈折力が大きくなり過ぎて、温度変化に対する光学特性の変化が大きくなるため好ましくない。
また条件式(3)の上限を超えると、前記樹脂レンズLpの屈折力が小さ過ぎるため、収差補正の効果が薄くなり、少ないレンズ枚数で構成できなくなるため、コストの点で好ましくない。
【0026】
なお、条件式(3)の下限は1.7であるとより好ましく、1.9であると更に好ましく、2.1であると更に好ましく、2.4であると更に好ましく、2.8であると更に好ましい。また、条件式(3)の上限は1000.0であると好ましく、500.0であると更に好ましく、200.0であると更に好ましく、100.0であると更に好ましく、50.0であると更に好ましく、20.0であると更に好ましく、10.0であると更に好ましく、8.0であると更に好ましい。
【0027】
なお、前記樹脂レンズは、正レンズと負レンズをそれぞれ1枚ずつ配置することが好ましい。正の屈折力と負の屈折力を有する樹脂レンズが各々1枚ずつ配置することにより、樹脂レンズの温度変化による光学特性変化の打ち消し合いが起き、光学特性変化を小さくすることができるため、好ましい。
【0028】
第4実施形態のレンズ光学系は、前記レンズ光学系は両凸形状の空気レンズを少なくとも1つ有し、以下の条件式を満足することを特徴としている。
-0.70 < (Crpf+Crpr)/(Crpf-Crpr) < 0.70
・・・・・(4)
但し、
Crpf: 前記両凸形状の空気レンズの物体側面の曲率半径
Crpr: 前記両凸形状の空気レンズの像側面の曲率半径
【0029】
上記条件式(4)は、前記両凸形状の空気レンズの形状を規定するための式である。ここで、空気レンズとは、空気間隔を隔て隣接して配置される物体側の面と像側の面で構成される空気間隔のことである。
【0030】
条件式(4)を満足することにより多くのレンズ枚数を必要としないレンズ構成で球面収差と像面性が補正された大口径のレンズ光学系を構成することができる。
条件式(4)の範囲を超えると、前記空気レンズの形状が平凸形状に近づいていくため、球面収差と像面性の補正が両立しなくなり、高性能化の点で好ましくない。
【0031】
なお、条件式(4)の下限は-0.65であるとより好ましく、-0.50であると更に好ましく、-0.35であると更に好ましく、-0.15であると更に好ましく、-0.05であると更に好ましい。また、条件式(4)の上限は0.65であると好ましく、0.60であると更に好ましく、0.50であると更に好ましく、0.45であると更に好ましく、0.40であると更に好ましい。
【0032】
第5実施態様のレンズ光学系は、最も物体側に物体側凸面を有するレンズLfを有し、以下の条件式を満足することを特徴としている。
0.35 < CrLf/f ・・・・・(5)
但し、
CrLf: 前記レンズLfの物体側凸面の曲率半径
f : 前記レンズ光学系の波長Nnmにおける焦点距離
【0033】
上記条件式(5)は、前記物体側凸面を有するレンズLfの物体側凸面の曲率半径を規定するための式である。条件式(5)が正の値を取ることから、最も物体側の面は物体側に凸の形状であることを規定する。
条件式(5)を満足することで前記物体側凸面の曲率半径が適切な範囲となり、多くのレンズ枚数を必要としないレンズ構成で、歪曲収差の補正が可能となる。
条件式(5)の下限を割ると、物体側凸面の曲率半径が小さくなり過ぎ、歪曲収差の補正が困難となり好ましくない。
また条件式(5)の上限は物体側面が凸の形状であればよく、規定されるものではない。
【0034】
なお、条件式(5)の下限は0.25であるとより好ましく、0.35であると更に好ましく、0.50であると更に好ましく、0.65であると更に好ましく、0.80であると更に好ましい。
また、条件式(5)の上限は規定されるものではない。しかし、曲率半径が大きくなり過ぎると最も物体側の面とカバーガラスや撮像面、平行平板のバンドパスフィルター等との面間反射によりゴーストが発生するという問題が発生する。そのため、条件式(5)の上限値は、5000.00であると好ましく、1000.00であると更に好ましく、200.00であると更に好ましく、20.00であると更に好ましく、10.00であると更に好ましく、5.00であると更に好ましく、3.00であると更に好ましく、1.60であると更に好ましく、1.45であると更に好ましい。
【0035】
第6実施形態のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.50 < 1/tan(|Bmax|) < 4.00 ・・・・・(6)
但し、
Bmax : 前記レンズ光学系に含まれるすべてのレンズ面におけるレンズ面の法線と入
射光線のなす角度の最大値
【0036】
上記条件式(6)は、光線入射角Bを規定する式である。ここで光線入射角Bは、
図1に示すように、光線B2のメリジオナル断面におけるレンズ面の法線B1に対する角度である。該光線入射角Bは絶対値で表され、すべて正の値を取る。なお、レンズ面が非球面の場合、法線は近軸曲率からではなく非球面形状から算出される。
【0037】
条件式(6)を満足することでレンズ面の法線に対する光線入射角が適切な範囲となり、反射率が低くかつ多くのレンズ枚数を必要としないレンズ構成が可能となる。
条件式(6)の下限を割ると、すなわちレンズ面の法線に対する最大光線入射角が大きくなると、大きな収差が発生し好ましくない。
また条件式(6)の上限を超えると、すなわちレンズ面の法線に対する最大光線入射角が小さくなると、収差補正効果が小さくなり過ぎ、少ないレンズ枚数でレンズ光学系を構成することが困難となり、低コスト化の点で好ましくない。
【0038】
なお、条件式(6)の下限は0.55であるとより好ましく、0.60であると更に好ましく、0.65であると更に好ましく、0.70であると更に好ましい。また、条件式(6)の上限は3.00であると好ましく、2.60であると更に好ましく、2.10であると更に好ましく、1.80であると更に好ましい。
【0039】
第7実施態様のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
1.90 < 1/tan(|Cmax|) < 20.00 ・・・・・(7)
但し、
Cmax : 前記バンドパスフィルターと前記バンドパスフィルターに入射する光線のな
す角度の最大値
【0040】
上記条件式(7)は、前記バンドパスフィルター面Fの法線F1に対する光線入射角Cを規定する式である。ここで光線入射角Cは、
図2Aに示すように、
図1の光線入射角Bと同様に定義され、角度は絶対値で表され、すべて正の値を取る。
【0041】
干渉フィルターは、入射光線角が0°から離れるに従って透過スペクトルが短波長側にシフトする。従って、条件式(7)を満足することにより、バンドパスフィルター面の法線に対する光線入射角が適切な範囲となり、透過スペクトルの波長シフトを抑制することができる。
【0042】
条件式(7)の下限を割ると、すなわち前記バンドパスフィルターに入射する光線の最大入射角が大きくなると、透過スペクトルが短波長側にシフトし、使用波長の透過率が下がり好ましくない。
また条件式(7)の上限を超えると、すなわち前記バンドパスフィルターに入射する光線の最大入射角が小さくなり過ぎ、主光線及び上下光線がすべてテレセントリックな光路配置となることを意味し、少ないレンズ枚数で構成することが困難となり、低コスト化の点で好ましくない。
【0043】
なお、条件式(7)の下限は2.55であるとより好ましく、2.60であると更に好ましく、2.65であると更に好ましく、2.70であると更に好ましく、2.77であると更に好ましい。また、条件式(7)の上限は15.00であると好ましく、12.00であると更に好ましく、8.00であると更に好ましく、7.00であると更に好ましい。
なお、Fnoが1.4より明るい光学系の場合に、最も像面側にバンドパスフィルターを配置すると、光線入射角Cは約20度となるため、Fnoが1.4より明るい光学系は、最も像面側にバンドパスフィルターを配置しないことが好ましい。
また最大画角が20度を超えるような広角レンズは、最も物体側にバンドパスフィルターを配置しないことが好ましい。
【0044】
第8実施態様のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴する。
-0.09 < tan(D) < 0.27 ・・・・・(8)
但し、
D : 前記レンズ光学系の最も像側の面から射出され像面に入射する波長Nnmにおける
最軸外光線の主光線と光軸と平行な線がなすメリジオナル断面上の角度
【0045】
上記条件式(8)は、前記レンズ光学系における最軸外光線が像面に入射する角度を規定する式である。ここで、主光線とは波長Nnmにおける前記最軸外の光線のうち絞りの中心を通過する光線のことである。また、前記主光線と光軸と平行な線がなすメリジオナル断面上における光線入射角は、
図2Bに示す方向をプラスとする。なお、
図2Bにおいて、IMGは像面を表す。
【0046】
条件式(8)の上限を超えると、すなわち像面に入射する光線の角度が大きくなり過ぎ、撮像素子のオンチップレンズ開口率における蹴られが生じ、周辺光量落ちが顕著となり、好ましくない。
また条件式(8)の下限を割ると、すなわち像面に入射する角度が小さくなるため、最終レンズの直径の小型化が困難となり、好ましくない。
【0047】
なお、条件式(8)の下限は-0.05であるとより好ましく、-0.02であると更に好ましく、-0.01であると更に好ましく、0.00であると更に好ましい。また、条件式(8)の上限は0.25であると好ましく、0.22であると更に好ましく、0.18であると更に好ましく、0.15であると更に好ましく、0.12であると更に好ましく、0.08であると更に好ましい。
【0048】
第9実施態様のレンズ光学系は、波長Nが780nmより長いことを特徴とする。人間の目が感じることのできる波長は、400nmから750nmなので、特定の波長を投光し、その散乱光を受光するためには、人間の目が感じることのできない波長を使用することが好ましい。
【0049】
なお、波長Nは800nmより長いことがより好ましく、830nmより長いことが更に好ましく、850nmより長いことが更に好ましい。
【0050】
第10実施態様のレンズ光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.10 < 1/tan(|Amin|) < 1.35 ・・・・・(9)
但し、
Amin : 前記レンズ光学系に含まれるすべてのレンズ面におけるレンズ面の接線と光
軸のなす角度の最小値
【0051】
上記条件式(9)は、レンズ面に対する接線角を規定する式である。ここで接線角Aは、
図3に示すように、角度は絶対値で表され、すべて正の値を取る。よって接線角が小さくなるほど面の傾きが強くなることを意味する。
条件式(9)を満足することにより反射防止コートの層厚誤差が小さくなると共に適切な屈折力を有することとなり、レンズ枚数の削減につながる。またレンズを樹脂で成型する場合に面の成型性が保たれる。
【0052】
条件式(9)の下限を割ると、すなわち面の傾きが平面に近付いていくことになり、屈折力が弱くレンズ全長が大型化するとともに、収差補正のために多くのレンズが必要となり、小型化と低コスト化が困難となるため好ましくない。
また条件式(9)の上限を超えると、すなわち面の傾きが強くなっていくこととなり、反射防止コーティングを蒸着する際にレンズ中心部とレンズ周辺部で膜の厚みが異なってしまう。そのためレンズの中心部と周辺部で反射率特性が変化してしまい、透過率を高めることが困難となり好ましくない。また、樹脂レンズの場合、金型との離型性が悪くなることから、面の成型性が悪くなり、高性能化を図るうえで好ましくない。
【0053】
なお、条件式(9)の下限は0.15であるとより好ましく、0.25であると更に好ましく、0.35であると更に好ましく、0.50であると更に好ましい。また、条件式(9)の上限は1.30であると好ましく、1.28であると更に好ましく、1.26であると更に好ましく、1.20であると更に好ましい。
【0054】
第11実施態様の撮像装置は、前記レンズ光学系の像側に前記レンズ光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備える。ここで、前記撮像素子は特にその構成が限定されるものではなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子が例示される。
【0055】
また、本発明の撮像装置は、前記撮像素子で撮影した画像データを電気的に加工してその形状を変化させる画像処理過程を有することがより好ましい。レンズを含む光学系の小型化をする場合、像形状のゆがみすなわち歪曲収差が問題となる。その際前記画像処理過程において像形状のゆがみを補正すべきデータを保持しておき、前記画像処理過程においてその補正すべきデータを補正処理することは、ゆがみのない像の形成とともにレンズ光学系の小型化が達成することができ、好ましい。
【0056】
さらに、本発明の撮像装置のレンズ光学系は、前記画像処理過程において形状を補正されるべきデータによる像面が歪曲している。該歪曲した像面を平面化する補正をすることにより、最も像側に配置されたレンズの負の屈折力を強くすることができ、最も像側のレンズの小型化が達成されるため好ましい。
【0057】
さらに、本発明の撮像装置において、前記画像処理過程によって補正すべきデータが倍率色収差を有する。前記画像処理過程によって倍率色収差すなわち色の歪曲収差を補正することは、光学収差補正の補正対象が減ることであり、レンズ枚数の削減につながり、レンズ光学系の小型化が達成されるため好ましい。
前記レンズ光学系の像側に前記光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子を備える。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子等も用いることができる。
【0058】
(第1実施例)
図4は、本件発明に係る第1実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。実施例1のレンズ光学系は、波長Nが905nmの光線を使用し、物体側から順に、両凸形状の第1レンズL1と、正の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状で両面に非球面を有する第2レンズL2と、負の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状の第3レンズL3と、正の屈折力を有し物体側凹のメニスカス形状の第4レンズL4と、正の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状の第5レンズL5と、負の屈折力を有し物体側凹のメニスカス形状の第6レンズL6とから構成されている。最も物体側のレンズL1の物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されている。開口絞りSは最も物体側のバンドパスフィルターBPFの像側に配置されている。
【0059】
バンドパスフィルターBPFは、波長Nが905nmの光線について、入射角0°における透過率1%以上の波長範囲が884nmから936nmであり、最大透過率の半分の透過率範囲、すなわち半値幅は890nmから927nmである。
第2レンズL2と第4レンズL4は、樹脂レンズである。
【0060】
すべてのレンズのレンズ面には、反射防止コートがなされている。第5レンズL5の物体側面には、波長N±100nmの波長範囲の中で最も反射率が小さくなる波長がN±50nmの範囲に存在する反射防止コーティングがなされている。
さらに、第5レンズL5の物体側面の前記反射防止コートの空気界面には、MgF2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で5層である。樹脂レンズである第2レンズL2と第4レンズL4の反射防止コートの空気界面には、SiO2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で3層である。
【0061】
また、実施例1のレンズ光学系において、バンドパスフィルターBPFを最も物体側に配置しているが、これに換えて平行平板が基盤であるバンドパスフィルターBPFを第4レンズL4と第5レンズL5の間に配置してもよく、その場合のCmaxは、24.953度である。
【0062】
図4において、IMGは結像面を示す。IMGは、具体的にはCCDセンサ、CMOSセンサ等の固体撮像素子の撮像面に一致する。また、結像面IMGの物体側には、カバーガラスCG等の実質的な屈折力を有さない平行平板を備える。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0063】
次に、第1実施例のレンズ光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1は、当該レンズ光学系の諸元表である。当該諸元表には、当該レンズ光学系の波長905nmにおける焦点距離「f」、Fナンバー「Fno.」、半画角「ω」、像高「Y」、光学全長「TL」を示す。
(表1)
f 30.658
Fno 1.095
ω 12.000
Y 6.492
TL 49.917
【0064】
表2は、第1実施例のレンズ光学系の面データである。表2において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」は波長が905nmの光線に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数、「H」は有効半径を示している。また、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを表し、「S」は開口絞りを表している。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、角度の単位は全て「°」である。また、曲率半径の「0」は平面を意味する。なお、表2における第1面及び第2面はバンドパスフィルターBPFであり、第15面及び第16面はカバーガラスCGの面データである。
(表2)
面番号 r d Nd νd H
1 0.0000 1.100 1.50892 64.20 14.153
2 STOP 0.0000 0.200 14.000
3 30.7024 7.000 1.97213 29.13 14.858
4 -808.7238 0.200 14.348
5 ASP 32.5340 5.908 1.63641 20.37 13.770
6 ASP 40.7623 0.880 12.975
7 114.1620 1.700 1.55932 56.04 12.234
8 14.3799 10.423 10.342
9 ASP -11.3293 4.904 1.63641 20.37 10.321
10 ASP -13.0587 0.200 11.932
11 19.0455 7.900 1.92859 32.32 11.916
12 88.7164 2.862 10.357
13 -50.7286 1.600 1.55932 56.04 9.484
14 -400.0008 4.101 8.823
15 0.0000 0.400 1.50892 64.17 6.838
16 0.0000 0.539 6.720
【0065】
表3は、各非球面の非球面係数である。当該非球面係数は、各非球面形状を下記式で定義したときの値である。
X(Y)=CY2/[1+{1-(1+Κ)・C2Y2}1/2]+A4・Y4+A6・Y6+A8・Y8+A10・Y10+A12・Y12
但し、表3において、「E-a」は「×10-a」を示す。また、上記式において、「X」は光軸方向の基準面からの変位量、「C」は面頂点での曲率、「Y」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「Κ」はコーニック係数、「An」はn次の非球面係数とする。
これらの表に関する事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
(表3)
5 6 9 10
Κ 1.2351 -6.2405 -1.9119 -0.8763
A4 -3.5693E-05 -5.4180E-05 -1.1207E-04 -7.0156E-06
A6 -1.8233E-07 -2.5994E-07 4.0654E-07 1.0549E-07
A8 7.7233E-10 2.2271E-09 -6.2718E-09 -2.4940E-09
A10 -3.4714E-12 -8.1079E-12 8.5243E-11 2.5602E-11
A12 7.3369E-15 1.3452E-14 -4.4259E-13 -9.6409E-14
【0066】
表4は、各レンズの波長905nmにおける焦点距離である。
(表4)
レンズ 面番号 焦点距離
L1 3-4 30.553
L2 5-6 197.965
L3 7-8 -29.595
L4 9-1 1307.890
L5 11-12 24.765
L6 13-14 -104.040
【0067】
図5は、第1実施例のレンズ光学系の縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。
球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、波長λ=905nmにおける球面収差を示す。
非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフォーカスをとり、実線が波長λ=905nmにおけるサジタル像面(ds)、点線が波長λ=905nmにおけるメリジオナル像面(dm)を示す。
歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%をとり、波長λ=905nmにおける歪曲収差を表す。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0068】
また、第1実施例のレンズ光学系の波長λ=905nmにおけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。但し、以下の値は、カバーガラス(Nd=1.50892)を含まない値であり、他の実施例に示すバックフォーカスも同様である。
fb= 4.9049(mm)
【0069】
第1実施例のレンズ光学系の条件式(1)~条件式(9)の値を表17に示す。
【0070】
(第2実施例)
図6は、第2実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。第2実施例のレンズ光学系は、物体側から順に、両凸形状の第1レンズL1と、正の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状で両面に非球面を有する第2レンズL2と、負の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状の第3レンズL3と、負の屈折力を有し物体側凹のメニスカス形状の第4レンズL4と、両凸形状の第5レンズL5とから構成されている。最も物体側のレンズL1の物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されている。開口絞りSは最も物体側のバンドパスフィルターBPFの像側に配置されている。
【0071】
バンドパスフィルターBPFは、波長Nが905nmの光線について、入射角0°における透過率1%以上の波長範囲が884nmから936nmであり、最大透過率の半分の透過率範囲、すなわち半値幅は890nmから927nmである。
第2レンズL2と第4レンズL4は、樹脂レンズである。
【0072】
すべてのレンズのレンズ面には、反射防止コートがなされている。第5レンズL5の物体側面には、波長N±100nmの波長範囲の中で最も反射率が小さくなる波長がN±50nmの範囲に存在する反射防止コーティングがなされている。
また、第5レンズL5の物体側面の前記反射防止コートの空気界面にはMgF2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で5層である。樹脂レンズである第2レンズL2及び第4レンズL4の反射防止コートの空気界面にはSiO2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で3層である。
【0073】
さらに、第2実施例のレンズ光学系において、最も物体側にバンドパスフィルターBPFを配置しているが、これに換えて第4レンズL4と第5レンズL5の間に平行平板が基盤であるバンドパスフィルターBPFを配置してもよく、その場合のCmaxは、23.412度である。
【0074】
次に、第2実施例のレンズ光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5は、第2実施例のレンズ光学系の諸元表である。
(表5)
f 30.869
Fno 1.200
ω 12.000
Y 6.561
TL 49.441
【0075】
表6は、第2実施例のレンズ光学系の面データである。なお、表6における第1面及び第2面はバンドパスフィルターBPFであり、第13面及び第14面はカバーガラスCGの面データである。
(表6)
面番号 r d Nd νd H
1 0.0000 1.100 1.50892 64.20 13.015
2 STOP 0.0000 0.200 12.862
3 30.4662 6.000 1.97213 29.13 13.584
4 -240.7561 0.100 13.238
5 ASP 38.3859 6.010 1.63641 20.37 12.735
6 ASP 95.0197 1.000 11.974
7 -73.0253 1.770 1.50892 64.20 11.588
8 12.3119 8.922 9.600
9 ASP -12.2585 4.550 1.63641 20.37 9.645
10 ASP -15.6370 0.200 11.678
11 33.2385 6.300 1.97213 29.13 13.585
12 -63.7223 12.207 13.384
13 0.0000 0.500 1.50892 64.17 6.962
14 0.0000 0.582 6.815
【0076】
表7は、各非球面の非球面係数である。
(表7)
5 6 9 10
Κ 6.4527 55.5248 -1.2127 -0.6032
A4 -4.1920E-05 -7.1713E-05 -5.7922E-05 -1.3478E-05
A6 -2.2301E-07 -1.3274E-07 9.9430E-07 1.1139E-06
A8 7.1955E-10 1.2655E-09 1.7388E-09 -1.1537E-08
A10 -2.2983E-12 -7.2254E-12 -2.3641E-10 4.6508E-11
A12 -1.0660E-14 1.6334E-15 1.2423E-12 -8.8969E-14
【0077】
表8は、各レンズの波長905nmにおける焦点距離である。
(表8)
レンズ 面番号 焦点距離
L1 3-4 28.126
L2 5-6 97.187
L3 7-8 -20.558
L4 9-10 -187.190
L5 11-12 23.214
【0078】
図7は、第2実施例のレンズ光学系の縦収差図を示す。
また、当該レンズ光学系の波長λ=905nmにおけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。
fb= 13.1201(mm)
【0079】
第2実施例の各条件式(1)~条件式(9)の値を表17に示す。
【0080】
(第3実施例)
図8は、第3実施例3のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。第3実施例のレンズ光学系は、物体側から順に、両凸形状の第1レンズL1と、正の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状で両面に非球面を有する第2レンズL2と、負の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状の第3レンズL3と、負の屈折力を有し物体側凹のメニスカス形状の第4レンズL4と、両凸形状の第5レンズL5とから構成されている。最も物体側のレンズL1の物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されている。開口絞りSは最も物体側のバンドパスフィルターBPFの像側に配置されている。
【0081】
バンドパスフィルターBPFは、波長Nが905nmの光線について、入射角0°における透過率1%以上の波長範囲が884nmから936nmであり、最大透過率の半分の透過率範囲、すなわち半値幅は890nmから927nmである。
第2レンズL2と第4レンズL4は、樹脂レンズである。
【0082】
すべてのレンズのレンズ面には、反射防止コートがなされていて、第5レンズL5の物体側面には、波長N±100nmの波長範囲の中で最も反射率が小さくなる波長がN±50nmの範囲に存在する反射防止コーティングがなされている。
また、第5レンズL5の物体側面の前記反射防止コートの空気界面にはMgF2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で5層である。樹脂レンズである第2レンズL2と第4レンズL4の反射防止コートの空気界面にはSiO2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で3層である。
【0083】
さらに、最も物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されているが、これに換えて第4レンズL4及び第5レンズL5の間に平行平板が基盤であるバンドパスフィルターBPFを配置してもよく、その場合のCmaxは、22.434度である。
【0084】
次に、第3実施例のレンズ光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。
表9は、第3実施例のレンズ光学系の諸元表である。
(表9)
f 30.117
Fno 1.205
ω 12.000
Y 6.402
TL 49.634
【0085】
表10に当該レンズ光学系の面データを示す。なお、表10における第1面及び第2面はバンドパスフィルターBPFであり、第13面及び第14面はカバーガラスCGの面データである。
(表10)
面番号 r d Nd νd H
1 0.0000 1.100 1.50892 64.20 12.653
2 STOP 0.0000 0.200 12.500
3 32.9134 6.000 1.97213 29.13 13.123
4 -251.5358 0.010 12.794
5 ASP 42.4007 6.010 1.63641 20.37 12.484
6 ASP 72.4349 1.000 11.761
7 -83.8728 1.770 1.50892 64.20 11.408
8 18.9014 9.359 10.153
9 ASP -8.9611 4.550 1.63641 20.37 10.108
10 ASP -12.2658 0.200 11.264
11 27.2871 6.300 1.97213 29.13 12.772
12 -136.7202 12.207 12.363
13 0.0000 0.500 1.50892 64.17 6.726
14 0.0000 0.429 6.587
【0086】
表11は、各非球面の非球面係数である。
(表11)
5 6 9 10
Κ 8.9071 29.6816 -0.8880 -0.1389
A4 -4.7241E-05 -9.2351E-05 -7.0871E-05 4.0736E-05
A6 -1.5948E-07 -1.6631E-07 6.0194E-07 7.0414E-07
A8 2.8786E-10 1.3382E-09 1.4888E-08 1.6059E-09
A10 -2.9428E-12 -7.7403E-12 -3.0849E-11 2.2175E-11
A12 -3.4823E-15 3.1449E-14 -3.0183E-13 -8.5723E-14
【0087】
表12は、各レンズの波長905nmにおける焦点距離である。
(表12)
レンズ 面番号 焦点距離
L1 3-4 30.254
L2 5-6 149.080
L3 7-8 -30.135
L4 9-10 -112.507
L5 11-12 23.851
【0088】
図9は、第3実施例のレンズ光学系の縦収差図を示す。
また、当該レンズ光学系の波長λ=905nmにおけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。
fb= 12.9669(mm)
【0089】
第3実施例の各条件式(1)~条件式(9)の値を表17に示す。
【0090】
(第4実施例)
図10は、第4実施例のレンズ光学系のレンズ構成を示すレンズ断面図である。第2実施例のレンズ光学系は、物体側から順に、両凸形状の第1レンズL1と、正の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状で両面に非球面を有する第2レンズL2と、負の屈折力を有し物体側凸のメニスカス形状の第3レンズL3と、負の屈折力を有し物体側凹のメニスカス形状の第4レンズL4と、両凸形状の第5レンズL5とから構成されている。最も物体側のレンズL1の物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されている。開口絞りSは最も物体側のバンドパスフィルターBPFの像側に配置されている。
【0091】
バンドパスフィルターBPFは、波長Nが905nmの光線について、入射角0°における透過率1%以上の波長範囲が884nmから936nmであり、最大透過率の半分の透過率範囲、すなわち半値幅は890nmから927nmである。
第2レンズL2と第4レンズL4は、樹脂レンズである。
【0092】
すべてのレンズのレンズ面には反射防止コートがなされている。第5レンズL5の物体側面には、波長N±100nmの波長範囲の中で最も反射率が小さくなる波長がN±50nmの範囲に存在する反射防止コーティングがなされている。
また、第5レンズL5の物体側面の前記反射防止コートの空気界面にはMgF2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で5層である。樹脂レンズである第2レンズL2及び第4レンズL4の反射防止コートの空気界面にはSiO2を材料に含む層が設けられ、層数は全部で3層である。
【0093】
さらに、第4実施例のレンズ光学系において、最も物体側にバンドパスフィルターBPFが配置されているが、これに換えて第4レンズL4と第5レンズL5の間に平行平板が基盤であるバンドパスフィルターBPFを配置してもよく、その場合のCmaxは、19.448度である。
【0094】
次に、第4実施例のレンズ光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表13は、第4実施例のレンズ光学系の諸元表である。
(表13)
f 30.003
Fno 1.200
ω 10.000
Y 5.289
TL 49.624
【0095】
表14は、第4実施例のレンズ光学系の面データを示す。なお、表14における第1面及び第2面はバンドパスフィルターBPFであり、第13面及び第14面はカバーガラスCGの面データである。
(表14)
面番号 r d Nd νd H
1 0.0000 1.100 1.50892 64.20 12.627
2 STOP 0.0000 0.200 12.500
3 32.7400 6.000 1.97213 29.13 13.011
4 -234.0000 0.149 12.637
5 ASP 41.2130 6.010 1.63641 20.37 12.220
6 ASP 82.1802 1.000 11.434
7 -69.8000 1.770 1.50892 64.20 11.108
8 16.5500 9.126 9.676
9 ASP -8.8021 4.550 1.63641 20.37 9.644
10 ASP -11.4366 0.200 10.780
11 24.8000 6.300 1.97213 29.13 11.675
12 -800.0000 12.207 11.021
13 0.0000 0.500 1.50892 64.17 5.705
14 0.0000 0.542 5.568
【0096】
表15は、各非球面の非球面係数である。
(表15)
5 6 9 10
Κ 8.2203 37.8603 -0.9723 -0.1843
A4 -4.8824E-05 -9.0205E-05 -6.8785E-05 3.7490E-05
A6 -1.5712E-07 -1.3562E-07 5.2603E-07 9.9278E-07
A8 3.8830E-10 1.4792E-09 1.3172E-08 -1.3622E-09
A10 -2.8759E-12 -7.3932E-12 -4.6550E-11 1.0841E-11
A12 -5.8433E-15 2.1091E-14 -3.4978E-14 1.1639E-13
【0097】
表16は、各レンズの波長905nmにおける焦点距離である。
(表16)
レンズ 面番号 焦点距離
L1 3-4 29.876
L2 5-6 122.894
L3 7-8 -26.107
L4 9-10 -182.876
L5 11-12 24.838
【0098】
図11は、第4実施例のレンズ光学系の縦収差図を示す。
また、第4実施例のレンズ光学系の波長λ=905nmにおけるバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。
fb= 13.0803(mm)
【0099】
第4実施例のレンズ光学系の各条件式(1)~条件式(9)の値を表17に示す。
【0100】
第1実施例~第3実施例に加えて第4実施例の各条件式(1)~条件式(9)の値を表17に示す。
(表17)
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
条件式(1) fn/f -0.839 -0.784 -0.765 -0.754
条件式(2) Y/f 0.212 0.213 0.213 0.176
条件式(3) |fLp|/f 6.457 3.148 3.736 4.096
条件式(4) (Crpf+Crpr)/(Crpf-Crpr) 0.119 0.002 0.357 0.306
条件式(5) CrLf/f 1.001 0.987 1.093 1.091
条件式(6) 1/tan(|Bmax|) 0.837 0.730 0.754 1.222
条件式(7) 1/tan(|Cmax|) 4.706 4.706 4.706 5.671
条件式(8) tan(D) 0.005 -0.003 -0.004 0.003
条件式(9) 1/tan(|Amin|) 1.139 1.245 0.787 0.645
fn -25.710 -24.192 -23.042 -22.633
f 30.658 30.869 30.117 30.003
Y 6.492 6.561 6.402 5.289
fLp 197.965 97.187 -112.507 122.894
Crpf 14.380 12.312 18.901 16.550
Crpr -11.329 -12.258 -8.961 -8.802
CrLf 30.702 30.466 32.913 32.74
|Bmax| 50.067 53.886 52.970 39.288
|Cmax| 11.996 11.996 11.996 10.000
D 0.309 -0.200 -0.252 0.200
|Amin| 41.272 38.765 51.810 57.180
【0101】
(実施例の撮像装置)
実施例の撮像装置100は、
図12に示すように、本発明のレンズ光学系102と、撮影光学系102の結像面IMGに配置された固体撮像素子104とを有する。固体撮像素子104は、カバーガラスCGを有する。レンズ光学系102によって形成された結像は、固体撮像素子104を介して撮像信号に変換される。該撮像信号は、液晶モニタ(図示せず)に送られて画像表示される。
【符号の説明】
【0102】
BPF バンドパスフィルター
IMG 結像面
CG カバーガラス
S 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
102 レンズ光学系
104 固体撮像素子