(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 37/26 20060101AFI20220706BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220706BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20220706BHJP
【FI】
B32B37/26
B32B27/00 L
C09J7/00
(21)【出願番号】P 2018160708
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】中島 純一
(72)【発明者】
【氏名】高松 威夫
(72)【発明者】
【氏名】内藤 純也
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098297(JP,A)
【文献】特開2018-12237(JP,A)
【文献】特開2017-144610(JP,A)
【文献】特開2015-199339(JP,A)
【文献】特開2016-157551(JP,A)
【文献】特開昭62-001538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/50
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離剤層を一方の面側に有する剥離シートの前記剥離剤層側の面と、一方の面が露出する基材層の他方の面とを粘着剤層を介して接着する接着工程、及び前記剥離シートの他方の面を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程、を備え
、
前記被覆層形成工程において、前記被覆層となる組成物からなるシートを前記剥離シートの前記他方の面に接着剤層を介して接着して前記被覆層を形成する
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記接着工程及び前記被覆層形成工程の後に、前記基材層の前記一方の面側に印刷層を設ける印刷工程を更に備える
ことを特徴とする請求項
1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
剥離剤層を一方の面側に有する剥離シートと、
一方の面が露出する基材層と、
前記剥離シートの前記剥離剤層側の面と前記基材層の他方の面とを接着する粘着剤層と、
前記剥離シートの他方の面を被覆する被覆層と、
前記剥離シートの他方の面に付着するとともに前記被覆層によって少なくとも一部が被覆され
、前記剥離剤層の剥離剤と同じ材料からなる付着物と、
を備える
ことを特徴とする積層体。
【請求項4】
前記基材層の前記一方の面側に印刷層を更に備える
ことを特徴とする請求項
3に記載の積層体。
【請求項5】
ロール状に巻かれている
ことを特徴とする請求項
3または4に記載の積層体。
【請求項6】
前記剥離シートの前記他方の面と前記被覆層の前記剥離シート側の面とを接着する接着剤層を更に備える
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法及び積層体に関し、具体的には、印刷適正を有する積層体の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷適正を有する積層体が知られており、例えば、下記特許文献1には、印刷適正を有し、任意の対象物に貼付させ得る積層体が記載されている。下記特許文献1に記載の積層体では、支持体と、粘着剤層と、剥離シートとがこの順で積層されている。この積層体では、支持体の粘着剤層側と反対側の面が露出し、当該面が印刷適正を有している。このような積層体では、剥離シートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と対象物とを接触させることで、支持体を対象物に貼付させることができる。また、下記特許文献1には、剥離シートの一方の面にシリコーン等の剥離剤を含む剥離剤層を設け、この剥離剤層が粘着剤層に接触するように、支持体と、粘着剤層と、剥離シートとがこの順で積層されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような積層体は、例えば、支持体に粘着剤層を積層し、剥離シートの剥離剤層を粘着剤層に接着させることによって製造され、芯材等に巻き取られる。このように積層体が芯材等に巻き取られると、積層体の一方の面が当該積層体の他方の面に接触する。つまり、剥離シートの剥離剤層側と反対側の面と、支持体の粘着剤層側と反対側の面とが接触する。ところで、剥離剤層が設けられた剥離シートは、ロール状に巻かれた状態で納入される場合がある。この場合、剥離剤層は剥離シートの剥離剤層と反対側の面に接触するため、剥離剤層の剥離剤の一部が剥離シートの剥離剤層と反対側の面に付着することがある。このように剥離剤層と反対側の面に剥離剤が付着している剥離シートを用いて積層体が製造され、上記のようにこの積層体が芯材等に巻き取られると、剥離シートの剥離剤が付着している面が支持体の粘着剤層側と反対側の面に接触する。このため、支持体における粘着剤層側と反対側の面に剥離剤の一部が付着する場合があり、この付着する剥離剤によって支持体における粘着剤層側と反対側の面における濡れ性等が変化する場合がある。このため、支持体における粘着剤層側と反対側の面に印刷をすると、色ムラやインクのハジキ等が発生する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、印刷性能の低下を抑制し得る積層体の製造方法及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の達成のため、本発明の積層体の製造方法は、剥離剤層を一方の面側に有する剥離シートの前記剥離剤層側の面と、一方の面が露出する基材層の他方の面とを粘着剤層を介して接着する接着工程、及び前記剥離シートの他方の面を被覆する被覆層を形成する被覆層形成工程、を備えることを特徴とする。
【0007】
この積層体の製造方法では、上記のように、剥離シートの他方の面を被覆する被覆層を形成する。このため、例えば、上記のように剥離剤層を有する剥離シートがロール状に巻かれて、剥離シートの剥離剤層側と反対側の面に剥離剤の一部が付着していても、付着物としての剥離剤の少なくとも一部は被覆層によって被覆される。このため、上記のように、積層体が芯材等に巻き取られたり、重ね合わされたりして、積層体の一方の面と他方の面とが接触しても、被覆層が非形成とされる場合と比べて、積層体の一方の面である基材層における露出する面に付着する剥離剤の量を低減できる。このため、この積層体の製造方法では、被覆層が非形成とされる場合と比べて、基材層における露出する面の濡れ性の低下が抑制され、この面に印刷をする際の色ムラやインクのハジキ等が発生することを抑制し得る。従って、この積層体の製造方法によれば、印刷性能の低下を抑制し得る積層体を製造し得る。なお、接着工程と被覆層形成工程との順序は特に限定されない。
【0008】
前記被覆層形成工程において、前記被覆層となる組成物を前記剥離シートの前記他方の面に塗工して前記被覆層を形成することとしても良く、或いは、前記被覆層となる組成物からなるシートを前記剥離シートの前記他方の面に接着して前記被覆層を形成することとしても良い。
【0009】
この積層体の製造方法は、前記接着工程及び前記被覆層形成工程の後に、前記基材層の前記一方の面側に印刷層を設ける印刷工程を更に備えることとしても良い。
【0010】
また、本発明の積層体は、剥離剤層を一方の面側に有する剥離シートと、一方の面が露出する基材層と、前記剥離シートの前記剥離剤層側の面と前記基材層の他方の面とを接着する粘着剤層と、前記剥離シートの他方の面を被覆する被覆層と、前記剥離シートの他方の面に付着するとともに前記被覆層によって少なくとも一部が被覆される付着物と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記付着物は、前記剥離剤層の剥離剤と同じ材料からなることとしても良い。
【0012】
上記積層体は、前記基材層の前記一方の面側に印刷層を更に備えることとしても良い。
【0013】
上記積層体は、ロール状に巻かれていることとしても良い。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、印刷性能の低下を抑制し得る積層体の製造方法及び積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層体の厚さ方向断面の一部を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る積層体の第1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る積層体の第1の製造方法を実施する製造装置を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る積層体の第2の製造方法を実施する製造装置を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の変形例に係る積層体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の変形例に係る積層体の厚さ方向断面の一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る積層体を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、以下に示す図のそれぞれにおいて、理解のし易さのため、各構成要素は大きさを誇張して示される場合がある。また、以下に示す図のそれぞれにおいて、同様の構成のものについては参照符号が一つだけ付され、繰り返しとなる参照符号は省略されている場合がある。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る積層体の厚さ方向断面の一部を概略的に示す図である。本実施形態の積層体10は可撓性を有し、
図1に示すように、基材層1と、剥離シート2と、粘着剤層5と、被覆層7と、を備える。以下、積層体10が備えるこれらの構成要素についてより詳細に説明する。
【0018】
基材層1は、積層体10の使用時に観察者側となる面F1が外部に露出し、この面F1に印刷を行うことができる層である。基材層1として、シート状の部材、例えば、再帰反射シート、樹脂フィルム、紙、紙の両面または一方の面が樹脂で被覆された積層体等が挙げられる。基材層1を構成する樹脂フィルムは、多層構造の樹脂フィルムであっても良く、単層構造の樹脂フィルムであっても良い。
【0019】
剥離シート2は、基材層1を基準として、当該基材層1の面F1側とは反対側に設けられ、可撓性を有するシート状の部材である。本実施形態では、剥離シート2は、剥離基材層3と、剥離基材層3における基材層1側に設けられる剥離剤層4とを有する。剥離基材層3として、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルム、紙の両面または一方の面が樹脂で被覆された積層体等が挙げられる。剥離剤層4は、剥離剤を含む層であり、この剥離剤の一部が外部に露出している。剥離剤層4に含まれる剥離剤として、例えばシリコーン、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、剥離シート2は、一方の面側に剥離剤層4を有していれば良く、剥離基材層3及び剥離剤層4以外の層を有していても良い。例えば、剥離シート2は、剥離基材層3における剥離剤層4側とは反対側に印刷層を有していても良い。また、剥離シート2は、剥離剤層4のみから構成されても良い。
【0020】
被覆層7は、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する層である。このため、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に付着する付着物6の少なくとも一部はこの被覆層7によって覆われる。つまり、剥離シート2の面F2には被覆層7が積層され、この被覆層7は剥離シート2の面F2に付着する付着物6の少なくとも一部を被覆している。本実施形態では、被覆層7は、付着物6の全体を被覆している。
【0021】
このような被覆層7を構成する材料として、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類が単独で用いられても良く、複数種類が混合して用いられても良い。また、付着物6として、例えば、積層体10を製造する際等に剥離シート2の剥離剤層4の一部が当該剥離剤層4から剥離した物等が挙げられ、付着物6は、例えば、剥離剤層4の剥離剤と同じ材料からなる。
【0022】
粘着剤層5は、基材層1と剥離シート2との間に設けられ、基材層1と剥離シート2とを接着する層である。具体的には、粘着剤層5は、剥離シート2の剥離剤層4側の面と基材層1の面F1と反対側の面とを接着する。
【0023】
粘着剤層5を構成する材料として、例えば、感圧粘着剤、感熱型粘着剤、架橋型粘着剤などから適宜選択することができる。感圧粘着剤として、例えば、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレートなどのアクリル酸エステルをアクリル酸、酢酸ビニルなどと共重合して得られるポリアクリル酸エステル感圧粘着剤、シリコーン系樹脂感圧粘着剤、ゴム系感圧粘着剤等が挙げられる。感熱型粘着剤として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。粘着剤層5に優れた耐候性及び粘着性を備えさせる観点からは、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
このようにして、被覆層7が積層されている剥離シート2は、粘着剤層5を介して基材層1に接着されている。積層体10が使用されるときには、剥離シート2は粘着剤層5から剥離され、外部に露出される粘着剤層5が被着体に貼り付けられる。一方、積層体10の使用前において、粘着剤層5の基材層1側と反対側は剥離シート2によって覆われるため、粘着剤層5にゴミ等が付着したり、粘着剤層5が意図しない場所に付着したりすることが抑制される。このような積層体10の一方の面は基材層1の印刷を行うことができる面F1であり、この積層体10の他方の面は被覆層7の剥離シート2側と反対側の面F3である。
【0025】
(第1の製造方法)
次に、積層体10の第1の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係る積層体の第1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態の積層体10の第1の製造方法は、準備工程P1、接着工程P2、被覆層形成工程P3を備える。また、
図3は、本実施形態に係る積層体の第1の製造方法を実施する製造装置を概略的に示す図である。
【0027】
(準備工程P1)
本工程は、基材層1を構成するシート状の部材及び剥離剤層4を有する剥離シート2を準備する工程である。具体的には、基材層1を構成するシート状の部材が巻かれてなるシートロール101と、剥離シート2が巻かれてなるシートロール102とを用意する。本製造方法のシートロール101では、基材層1の面F1となる面が他方の面よりも内側に位置するように基材層1を構成するシート状の部材が巻かれている。また、本製造方法のシートロール102では、剥離剤層4が剥離基材層3よりも内側に位置するように剥離シート2が巻かれている。
【0028】
(接着工程P2)
本工程は、剥離シート2の剥離剤層4側の面と、基材層1の面F1と反対側の面とを粘着剤層5を介して接着する工程である。剥離シート2がシートロール102から巻き出される。シートロール102から巻き出されたこの剥離シート2は、ローラー111,112に架けられることによってテンションを加えられながら第1塗工装置120の下まで搬送される。第1塗工装置120の下まで搬送されたこの剥離シート2の剥離剤層4側の面には、第1塗工装置120によって粘着剤層5となる樹脂組成物が塗工される。すなわち、剥離シート2の剥離剤層4側の面に粘着剤層5となる樹脂組成物が塗工され、剥離シート2の剥離剤層4側の面に粘着剤層5が積層される。なお、粘着剤層5となる樹脂組成物を剥離シート2の剥離剤層4側の面に塗工する方法は特に限定されない。第1塗工装置120による塗工方法として、例えば、コンマコート、リップコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0029】
基材層1を構成するシート状の部材がシートロール101から巻き出され、このシート状の部材である基材層1と上記のように粘着剤層5が積層された剥離シート2とが重ね合わされる。具体的には、基材層1の面F1と反対側の面が粘着剤層5に接触するように、粘着剤層5が積層された剥離シート2と基材層1とが重ね合わされる。また、押圧ロール113によって基材層1が剥離シート2側に押圧されることによって、剥離シート2の剥離剤層4側の面と基材層1の面F1と反対側の面とが粘着剤層5を介して接着され、中間積層体10Aが形成される。なお、剥離シート2と基材層1とを粘着剤層5を介して接着させる際、剥離シート2が基材層1側に押圧されても良く、基材層1の剥離シート2側への押圧と剥離シート2の基材層1側への押圧との両方が行われても良い。また、剥離シート2の剥離剤層4側の面に塗工された粘着剤層5となる樹脂組成物が硬い場合、剥離シート2の剥離剤層4側の面や基材層1の面F1と反対側の面に凹凸がある場合などでは、基材層1と剥離シート2とが重ね合わされる前に塗工された樹脂組成物を加熱する工程があっても良い。
【0030】
(被覆層形成工程P3)
本工程は、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7を形成する工程である。基材層1と剥離シート2とが粘着剤層5を介して互いに接着された中間積層体10Aは、第2塗工装置130の上まで搬送される。第2塗工装置130の上まで搬送されたこの中間積層体10Aにおける剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2には、第2塗工装置130によって被覆層7となる樹脂組成物が塗工される。すなわち、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に被覆層7となる樹脂組成物が塗工され、剥離シート2のこの面F2に被覆層7が積層され、この被覆層7は剥離シート2のこの面F2を被覆する。このようにして、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7が形成される。なお、被覆層7となる樹脂組成物を剥離シート2の面F2に塗工する方法は特に限定されない。第2塗工装置130による塗工方法として、例えば、上記第1塗工装置120による塗工方法と同様に、コンマコート、リップコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0031】
本製造方法では、上記のように、剥離シート2はシートロール102から巻き出される。シートロール102では、剥離シート2の剥離剤層4は、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に接触する。このため、剥離剤層4を構成する物質の一部、例えば剥離剤の一部が剥離して剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に付着することがある。つまり、剥離剤等の剥離剤層4を構成する物質と同じ物質からなる物が付着することがある。上記のように、第2塗工装置130によって被覆層7となる樹脂組成物が剥離シート2の面F2に塗工されてこの面F2に被覆層7が積層されることで、この面F2に付着する付着物6の少なくとも一部は被覆層7によって被覆される。
【0032】
上記のように、中間積層体10Aにおける剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2側に被覆層7が形成されることで、当該中間積層体10Aが積層体10となる。このようにして得られた積層体10は、ローラー114,115に架けられることによってテンションを加えられながら巻き取りロール116によって巻き取られ、積層体ロール160が得られる。積層体10がロール状に巻かれたこの積層体ロール160では、積層体10の一方の面である基材層1の印刷を行うことができる面F1が、積層体10の他方の面である被覆層7の剥離シート2側と反対側の面F3に接している。なお、積層体10は、巻き取りロール116に巻き取られることなく、所定の大きさに裁断されても良く、このように裁断された複数の積層体10は、例えば、積み重ねてまとめられる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の積層体10の第1塗工装置120は、接着工程P2、及び被覆層形成工程P3を備える。接着工程P2は、剥離剤層4を一方の面側に有する剥離シート2の剥離剤層4側の面と、一方の面F1が露出する基材層1の他方の面とを粘着剤層5を介して接着する工程である。被覆層形成工程P3は、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7を形成する工程である。この製造方法では、上記のように、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7を形成する。このため、例えば、上記のように剥離剤層4を有する剥離シート2がロール状に巻かれて、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に剥離剤の一部が付着していても、付着物6としての剥離剤の少なくとも一部は被覆層7によって被覆される。このため、上記のように、積層体10が巻き取りロール116に巻き取られたり、重ね合わされたりして、積層体10の一方の面と他方の面とが接触しても、被覆層7が非形成とされる場合と比べて、積層体10の一方の面である基材層1における露出する面F1に付着する剥離剤の量を低減できる。このため、この第1の製造方法では、被覆層7が非形成とされる場合と比べて、基材層1の露出する面F1の濡れ性の低下が抑制され、この面F1に印刷をする際の色ムラやインクのハジキ等が発生することを抑制し得る。従って、本実施形態の積層体10の第1の製造方法によれば、印刷性能の低下を抑制し得る積層体10を製造し得る。
【0034】
(第2の製造方法)
次に、積層体10の第2の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、第1の製造方法と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0035】
積層体10の第2の製造方法は、被覆層形成工程P3が接着工程P2の前に行われる点で、上記第1の製造方法と異なる。
【0036】
図4は、本発明の実施形態に係る積層体の第2の製造方法を実施する製造装置を概略的に示す図である。
図4に示すように、この製造装置100は、第2塗工装置130が第1塗工装置120よりもシートロール102側に配置される点で、上記第1の製造方法を実施する製造装置100と主に異なる。
【0037】
このような製造装置100によって実施される積層体10の第2の製造方法では、シートロール102から剥離シート2が巻き出される。シートロール102から巻き出されたこの剥離シート2は、ローラー117,118に架けられることによってテンションを加えられながら第2塗工装置130の上まで搬送される。第2塗工装置130の上まで搬送されたこの剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2には、第2塗工装置130によって被覆層7となる樹脂組成物が塗工され、剥離シート2のこの面F2に被覆層7が積層され、この被覆層7は剥離シート2のこの面F2を被覆する。このようにして、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7が形成され、この被覆層7は剥離シート2の面F2に付着する付着物6の少なくとも一部を被覆する。つまり、本製造方法では、被覆層形成工程P3が接着工程P2の前に行われる。この被覆層7が積層された剥離シート2に粘着剤層5が積層され、粘着剤層5が積層された剥離シート2と基材層1とが重ね合わされる。剥離シート2の剥離剤層4側の面と基材層1の面F1と反対側の面とが粘着剤層5を介して接着されて、積層体10が得られる。このようにして得られた積層体10は、上記第1の製造方法と同様に、巻き取りロール116によって巻き取られ、積層体ロール160が得られる。このような本製造方法は、上記第1の製造方法と同様に、印刷性能の低下を抑制し得る積層体10を製造し得る。
【0038】
以上、本発明について、積層体10とその製造方法とが一例として説明されたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
例えば、上記第1の製造方法では、接着工程P2の後に被覆層形成工程P3が行われていた。また、上記第2の製造方法では、接着工程P2の前に被覆層形成工程P3が行われていた。しかし、接着工程P2と被覆層形成工程P3との順序は特に限定されるものではなく、被覆層形成工程P3は接着工程P2の最中に行われても良い。
【0040】
また、上記第1の製造方法及び第2の製造方法では、接着工程P2において粘着剤層5となる樹脂組成物が剥離シート2の剥離剤層4側の面に塗工される例を挙げて説明した。しかし、粘着剤層5となる樹脂組成物は、基材層1の面F1と反対側の面に塗工されても良い。
【0041】
また、本発明の積層体の製造方法は、上記実施形態で例示された層以外の層を設ける工程を更に備えていても良い。
図5は、このような本発明の変形例に係る積層体の製造方法の工程を示すフローチャートであり、
図6は、このような本発明の変形例に係る積層体の厚さ方向断面の一部を概略的に示す図である。なお、上記第1の製造方法と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0042】
図5に示すように、本変形例の積層体の製造方法は、接着工程P2及び被覆層形成工程P3の後に、更に印刷工程P4を備える点において、上記第1の製造方法と異なる。本変形例の印刷工程P4は、基材層1の印刷をすることができる面F1に印刷層を設ける工程である。具体的には、本変形例の印刷工程P4では、積層体ロール160から積層体10が巻き出され、不図示の印刷装置によって積層体10における基材層1の粘着剤層5側と反対側の面F1に印刷層が設けられる。印刷装置による印刷方法として、例えば、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷等が挙げられる。また、この印刷層を構成するインクは特に限定されるものではない。このようにして、
図6に示すように、基材層1の粘着剤層5側と反対側の面F1に印刷層8が設けられた積層体20が得られる。ここで、印刷層8が設けられる積層体10は、剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2を被覆する被覆層7を備えている。このため、被覆層7が非形成とされる場合と比べて、印刷層8を設ける際に、色ムラやインクのハジキ等が発生することが抑制され得る。なお、本変形例における印刷工程P4は、基材層1の面F1に印刷層を設ける工程とされた。しかし、印刷工程P4は、基材層1の印刷をすることができる面F1側に印刷層を設ける工程であれば良い。例えば、印刷工程P4は、基材層1のこの面F1側から基材層1にインクを染み込ませ、基材層1の内部におけるこの面F1側に印刷層を設ける工程とされも良い。この場合、基材層1の粘着剤層5側と反対側の面F1側に印刷層が設けられた積層体が得られる。
【0043】
また、上記第1の製造方法、第2の製造方法、及び変形例では、被覆層形成工程P3において被覆層7となる樹脂組成物を剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に塗工して被覆層7を形成していた。しかし、被覆層7となる樹脂組成物からなるシートを剥離シート2の剥離剤層4側と反対側の面F2に接着して被覆層7を形成しても良い。この場合、被覆層7となる樹脂組成物からなるシートは、例えば、接着剤層を介して剥離シート2の面F2に接着される。このような接着剤層を構成する材料として、例えば、上記積層体10における粘着剤層5を構成する材料と同様の材料を挙げることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、積層体10は可撓性を有していた。しかし、積層体10は可撓性を有していなくても良い。このような構成として、例えば、基材層1が可撓性を有していない部材とされる構成が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、印刷性能の低下を抑制し得る積層体の製造方法及び積層体が提供され、シール、ラベル、案内標識、広告看板等の分野においての利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・基材層
2・・・剥離シート
3・・・剥離基材層
4・・・剥離剤層
5・・・粘着剤層
6・・・付着物
7・・・被覆層
8・・・印刷層
10,20・・・積層体
100・・・製造装置
120・・・第1塗工装置
130・・・第2塗工装置
P1・・・準備工程
P2・・・接着工程
P3・・・被覆層形成工程
P4・・・印刷工程