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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】フォトマスク及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/72 20120101AFI20220706BHJP
   G03F 1/26 20120101ALI20220706BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G03F1/72
G03F1/26
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018164526
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2019053288
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017174505
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】三好 将之
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 敬
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-333534(JP,A)
【文献】特開2002-351046(JP,A)
【文献】特開2016-071059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲み、かつ、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、
前記補助パターンの一部の領域の透過光量が、前記補助パターンの他の領域の透過光量よりも低く、
前記転写用パターンは、前記一部の領域を有する補助パターン、およびパターンの幅を拡張する拡張修正が施された前記主パターンを備える修正済転写用パターンと、正常な転写用パターンを含み、
前記修正済転写用パターンの前記主パターンの周縁の断面は、前記正常な転写用パターンとは異なることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項2】
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲み、かつ、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、
前記補助パターンの一部の領域の透過光量が、前記補助パターンの他の領域の透過光量よりも低く、
前記転写用パターンは、前記一部の領域を有する補助パターン、およびパターンの幅を拡張する拡張修正が施された前記主パターンを備える修正済転写用パターンと、正常な転写用パターンを含み、
前記修正済転写用パターンは、前記正常な転写用パターンに対して、前記主パターンの面積が大きいことを特徴とする、フォトマスク。
【請求項3】
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)を持つ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲み、かつ、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、
前記補助パターンの一部の領域の透過光量が、前記補助パターンの他の領域の透過光量よりも低く、
前記転写用パターンは、前記一部の領域を有する補助パターン、およびパターンの幅を拡張する拡張修正が施された前記主パターンを備える修正済転写用パターンと、正常な転写用パターンを含み、
前記修正済転写用パターンは、前記正常な転写用パターンに対して、前記主パターンの縦横比が異なることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項4】
前記遮光部は、前記半透光膜と前記遮光膜とがこの順に形成されているか、または、前記遮光膜と前記半透光膜がこの順に形成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスク。
【請求項6】
前記補助パターンの前記一部の領域は、前記多角形帯の面積の1/8を超える領域であることを特徴とする、請求項に記載のフォトマスク。
【請求項7】
前記補助パターンの前記一部の領域のODは3以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスク。
【請求項8】
前記補助パターンの前記一部の領域には、前記遮光膜、又は前記遮光膜とは材料あるいは組成が異なる遮光性の補充膜が形成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスク。
【請求項9】
前記補助パターンを透過する光によって、前記主パターンを透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を変化させることにより、焦点深度または露光余裕度を増加させることを特徴とする、請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスク。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1つに記載のフォトマスクを露光装置により露光し、被転写体上に前記転写用パターンを転写することを含む、表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに代表される、表示装置の製造に有利に用いられるフォトマスクの修正(リペア)方法、それによって得られるフォトマスク、及びフォトマスクの製造方法並びに表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、透明基板上に成膜された、半透光膜及び低透光膜をそれぞれパターニングすることによって形成された転写用パターンを備えるフォトマスクであって、前記半透光膜は、i線~g線の波長範囲にある代表波長の光を略180度シフトするとともに、前記代表波長に対する透過率T1(%)をもち、前記低透光膜は、前記代表波長の光に対して、前記半透光膜の透過率T1(%)より低い透過率T2(%)をもち、前記転写用パターンは、前記透明基板が露出する透光部からなる径W1(μm)の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置され、前記透明基板上に前記半透光膜が形成された半透光部からなる幅d(μm)の補助パターンと、前記転写用パターンのうち前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置され、前記透明基板上に少なくとも前記低透光膜が形成された低透光部とを有する、フォトマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-024264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置においては、より明るく、かつ省電力であるとともに、高精細、高速表示、広視野角といった表示性能の向上が望まれている。
【0005】
例えば、上記表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、「TFT」)で言えば、TFTを構成する複数のパターンのうち、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールが、確実に上層及び下層のパターンを接続させる作用をもたなければ正しい動作が保証されない。その一方、例えば液晶表示装置の開口率を極力大きくして、明るく、省電力の表示装置とするためには、コンタクトホールの径が十分に小さいことが求められるなど、表示装置の高密度化の要求に伴い、ホールパターンの径も微細化(例えば3μm未満)が望まれている。例えば、径が0.8μm以上2.5μm以下、更には、径が2.0μm以下のホールパターンが必要となり、具体的には0.8~1.8μmの径をもつパターンの形成も課題となる。
【0006】
ところで、表示装置に比べて、集積度が高く、パターンの微細化が顕著に進んだ半導体装置(LSI)製造用フォトマスクの分野では、高い解像性を得るために、露光装置には高い開口数NA(例えば0.2超)の光学系を適用し、露光光の短波長化がすすめられた経緯がある。その結果、この分野では、KrFやArFのエキシマレーザー(それぞれ、248nm、193nmの単一波長)が多用されるようになった。
【0007】
その一方、表示装置製造用のリソグラフィ分野では、解像性向上のために、上記のような手法が適用されることは、一般的ではなかった。例えばこの分野で用いられる露光装置がもつ光学系のNA(開口数)は、0.08~0.15程度である。また、露光光源もi線、h線、又はg線が多用され、主にこれらを含んだブロード波長域の光源を使用することで、大面積(例えば、一辺が300~2000mmの四角形)を照射するための光量を得て、生産効率やコストを重視する傾向が強い。
【0008】
ところが、表示装置の製造においても、上記のようにパターンの微細化要請が高くなっている。ここで、半導体装置製造用の技術を、表示装置の製造にそのまま適用することには、いくつかの問題がある。例えば、高NA(開口数)をもつ高解像度の露光装置への転換には、大きな投資が必要になり、表示装置の価格との整合性が得られない。また、露光波長の変更(ArFエキシマレーザーのような短波長を、単一波長で用いる)については、大面積をもつ表示装置に適用すれば、生産効率が低下するほか、やはり相当の投資を必要とする点で不都合である。つまり、従来にないパターンの微細化を追求する一方、既存のメリットであるコストや効率を失うことはできないという点が、表示装置製造用フォトマスクの問題点となっている。
【0009】
一方、特許文献1には、透光部からなる主パターンと、その近傍に配置された、位相シフト部からなる補助パターンと、それら以外の領域に形成された低透光部をもつフォトマスクが記載されている。このフォトマスクは、主パターンと補助パターンの双方を透過する露光光の相互干渉を制御して、透過光の空間像を大幅に改善することができる。そして、表示パネル基板などの被転写体上に、安定して微細な孤立ホールパターンを形成する際などに有利に用いることができる。
【0010】
特許文献1に記載のように、主パターンに対して、被転写体上に直接解像しない、適切な設計の補助パターンを配置することは、主パターンの転写性を向上させる際に有効である。但し、補助パターンは、精緻に設計された微細パターンであり、その位置に欠陥が生じた場合の対処が課題になる。
【0011】
一般に、フォトマスクの製造過程において、パターン欠陥の発生をゼロとすることは極めて困難である。例えば、不要な膜の残留や、異物(パーティクル)の混入などによる余剰欠陥(黒欠陥ともいう)、又は、必要な膜の欠落による欠落欠陥(白欠陥ともいう)の発生が生じることは、現実的には避けられない。こうした場合を想定し、これを検査にて検出し、修正装置によって、修正(リペア)する工程が設けられる。修正の手法は、白欠陥に対しては、修正膜を堆積させ、黒欠陥に対しては、余剰部分をエネルギー線の照射によって除去し、必要に応じて修正膜を堆積させることが一般的である。主に、FIB(focused Ion Beam)装置、又は、レーザCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって、白欠陥、及び、黒欠陥を修正することが可能である。
【0012】
例えばレーザCVD装置において、フォトマスクに生じた欠陥に対し、修正膜の形成を行なう場合を例として説明する。まず、検査装置によって欠陥を検出し、修正を行なう対象部分を決定する。修正膜を形成する対象は、フォトマスクが有する転写用パターンの、遮光膜や半透光膜(以下、それぞれ正常な遮光膜、正常な半透光膜ともいう)に生じた白欠陥、或いは、黒欠陥を除去したことで形成された白欠陥などである。この修正対象に対して、レーザCVD法により、局所的な修正膜(CVD膜ともいわれる)を形成する。
【0013】
このとき、フォトマスク表面には、修正膜の原料となる原料ガスを供給して、原料ガス雰囲気を形成する。修正膜の原料としては、金属カルボニルが好ましく使用される。具体的には、クロムカルボニル(Cr(CO))、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、タングステンカルボニル(W(CO))などが例示される。フォトマスクの修正膜としては、耐薬性の高いクロムカルボニルが好ましく用いられる。
【0014】
修正膜の原料にクロムカルボニルを用いた場合は、たとえば、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO))を加熱して昇華させ、これをキャリアガス(Arガス等)とともにフォトマスクの修正対象部分に導く。この原料ガス雰囲気中にレーザ光を照射して、レーザの熱/光エネルギー反応により、原料ガスが分解し、基板上に生成物が堆積することから、クロムを主材料とする修正膜が形成される。
【0015】
ところで、本発明者らの検討によると、上記手法を用いたとしても、パターンの形状や寸法、或いはその機能種類によっては、上記のような修正が一律に行えないという課題が生じた。
【0016】
例えば、遮光膜に生じた欠陥にCVD膜を形成する場合には、十分な遮光性をもつ修正膜(以下、補充膜ともいう)を形成する。一方、適切な材料を用いたCVD膜は、その膜厚の調整により、ある範囲で所望の光透過率を得ることもできる。しかしながら、微細な寸法で、正確な位置に、所望の透過率(すなわち所望の膜厚)で均一な修正膜を堆積させることは必ずしも容易でない。また、半透光膜に生じた欠陥を修正する場合、所定の光透過率とするための膜厚の修正膜を形成したとき、同時に、所望の位相特性(露光光に含まれる波長に対する位相シフト量)を得ることは更に難しい。故に、位相シフト部をもつフォトマスクの修正には困難が伴う。
【0017】
すなわち、位相シフト部を有するフォトマスク、或いは、精細な(例えば解像限界以下の寸法をもつ)パターンを有するフォトマスクに対する修正は、難度が高いために生産効率を下げる原因になりやすく、また、修正の過程で、寸法や光学物性が目標値とは異なる、新たな欠陥を生じてしまう場合も珍しくない。
【0018】
こうした状況下、上記特許文献1記載のフォトマスクに例示されるような精細なパターンに欠陥が生じた場合であっても、適切な欠陥修正を施す方法を見出すべく、本発明者らは鋭意検討した。
【0019】
そこで本発明は、転写用パターンに生じた欠陥に対して、安定した条件で、効率よく修正し、欠陥によって損なわれた該パターンの光学機能を回復し、転写性能を良好にする方法及びそれによる修正フォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
透明基板上に形成された転写用パターンを備えるフォトマスクの修正方法であって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、露光光の代表波長の光に対する透過率T(%)を有するとともに前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲み、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する位相差が略180度であり、
前記補助パターンに白欠陥が生じたとき、前記白欠陥部分に、前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜を形成する、補充膜修正を行なうことを特徴とする、フォトマスクの修正方法である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記白欠陥の面積が、前記補助パターンの面積の1/8以下であることを特徴とする、上記第1の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記補充膜修正は、前記白欠陥が生じることにより低下した、前記転写用パターンの光学性能を、少なくとも一部回復させるものであることを特徴とする、上記第1又は第2の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記光学性能は、前記転写用パターンの透過光が被転写体上に形成する光強度分布における、ピーク高さ、焦点深度、及び露光余裕度の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、上記第3の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記補助パターンは、前記透明基板上に、前記代表波長の光に対する透過率T(%)を有するとともに、前記代表波長の光を略180度シフトする位相特性をもつ半透光膜が形成されてなることを特徴とする、上記第1又は第2の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
透明基板上に形成された転写用パターンを備えるフォトマスクの修正方法であって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、露光光の代表波長の光に対する透過率T(%)を有するとともに、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲み、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する位相差が略180度であり、
前記補助パターンに、黒欠陥が生じたとき、前記主パターンの幅を拡張する、拡張修正を行なうことを特徴とする、フォトマスクの修正方法である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記拡張修正は、前記黒欠陥が生じることにより低下した、前記転写用パターンの光学性能を、少なくとも一部回復させるものであることを特徴とする、上記第6の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記光学性能は、前記転写用パターンの透過光が被転写体上に形成する光強度分布の、ピーク高さ、焦点深度、及び露光余裕度の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、上記第7の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
前記黒欠陥の面積は、前記補助パターンの面積の1/8を超えることを特徴とする、上記第6~第8のいずれか一つの態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
前記補助パターンは、前記透明基板上に、前記代表波長の光に対する透過率T(%)を有するとともに、前記代表波長の光を略180度シフトする位相特性をもつ半透光膜が形成されてなることを特徴とする、上記第6~第9の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
前記黒欠陥は、前記補助パターンに生じた白欠陥部分に、遮光性の補充膜を形成したことによって生じる黒欠陥であることを特徴とする、上記第6~第10の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
前記拡張修正によって増加する主パターンの面積は、前記黒欠陥によって失われた補助パターンの面積S1の5%以下であることを特徴とする、上記第6~第11の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
前記拡張修正は、正方形の主パターンの4辺のうち少なくともひとつの辺を、遮光部側に後退させて行うことを特徴とする、上記第6~第12の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第14の態様)
本発明の第14の態様は、
前記拡張修正は、遮光膜のエッジ部分をレーザーザッピング又はイオンビームエッチングによって除去して行なわれることを特徴とする、上記第6~第13の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第15の態様)
本発明の第15の態様は、
前記補助パターンは、前記主パターンの近傍に配置され、前記補助パターンを透過する光によって、前記主パターンを透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を変化させることにより、焦点深度を増加させることを特徴とする、上記第1~第14の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第16の態様)
本発明の第16の態様は、
前記転写用パターンは、下記の式(1)を満たすことを特徴とする、上記第1~第15の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
0.8≦W1≦4.0 ・・・・・・・・・・・・・・(1)
(第17の態様)
本発明の第17の態様は、
前記転写用パターンは、下記の式(2)を満たすことを特徴とする、上記第1~第16の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
0.5≦√(T/100)×d≦1.5 ・・・・(2)
(第18の態様)
本発明の第18の態様は、
前記転写用パターンは、前記主パターンの中心と、前記補助パターンの幅方向の中心との距離をP(μm)とするとき、下記の式(3)を満たすことを特徴とする、上記第1~第17の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
1.0<P≦5.0 ・・・・・・・・・・・・・・・(3)
(第19の態様)
本発明の第19の態様は、
前記補助パターンの形状は、前記主パターンの重心を中心とする多角形帯であることを特徴とする、上記第1~第18の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第20の態様)
本発明の第20の態様は、
前記転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するものであることを特徴とする、上記第1~19の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第21の態様)
本発明の第21の態様は、
前記ホールパターンは、孤立ホールパターンであることを特徴とする、上記第20の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第22の態様)
本発明の第22の態様は、
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、かつ、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、
前記多角形帯の領域内に、前記遮光膜とは異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成されていることを特徴とする、フォトマスクである。
(第23の態様)
本発明の第23の態様は、
前記補充膜は、前記多角形帯の面積の1/8以下の領域に形成されていることを特徴とする、上記第22の態様に記載のフォトマスクである。
(第24の態様)
本発明の第24の態様は、
前記補助パターンの透過光は、前記主パターンの透過光に対して、前記代表波長の光に対する位相差が略180度であることを特徴とする、上記第22又は第23の態様に記載のフォトマスクである。
(第25の態様)
本発明の第25の態様は、
前記多角形帯において、前記補充膜は、レーザCVD膜であることを特徴とする、上記第22~第24の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第26の態様)
本発明の第26の態様は、
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンと、
前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部とを含み、
前記遮光部は、前記透明基板上に少なくとも遮光膜が形成されてなり、
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、かつ、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、
前記多角形帯の領域内に、前記遮光膜、又は前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成され、
前記主パターンの周縁の少なくとも一部に、前記遮光膜を所定幅除去したレーザーザッピング断面又はイオンビームエッチング断面をもつことを特徴とする、フォトマスクである。
(第27の態様)
本発明の第27の態様は、
前記主パターンは、長方形であり、その4辺のうち少なくとも1辺に、前記レーザーザッピング断面又はイオンビームエッチング断面を有することを特徴とする、上記第26の態様に記載のフォトマスクである。
(第28の態様)
本発明の第28の態様は、
前記主パターンは、正方形であり、その4辺のうち少なくとも2辺に、前記レーザーザッピング断面又はイオンビームエッチング断面を有することを特徴とする、上記第26の態様に記載のフォトマスクである。
(第29の態様)
本発明の第29の態様は、
前記補助パターンは、前記主パターンの近傍に配置され、前記補助パターンを透過する光によって、前記主パターンを透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を変化させることにより、焦点深度を増加させることを特徴とする、上記第22~第28の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第30の態様)
本発明の第30の態様は、
前記転写用パターンは、下記の式(1)を満たすことを特徴とする、上記第22~第29の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
0.8≦W1≦4.0 ・・・・・・・・・・・・・・(1)
(第31の態様)
本発明の第31の態様は、
前記転写用パターンは、下記の式(2)を満たすことを特徴とする、上記第22~第29の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
0.5≦√(T/100)×d≦1.5 ・・・・(2)
(第32の態様)
本発明の第32の態様は、
前記転写用パターンは、主パターンの中心と、前記補助パターンの幅方向の中心との距離をP(μm)とするとき、下記の式(3)を満たすことを特徴とする、上記第22~第29の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
1.0<P≦5.0 ・・・・・・・・・・・・・・・(3)
(第33の態様)
本発明の第33の態様は、
前記転写用パターンは、表示装置製造用パターンであることを特徴とする、上記第22~第29の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第34の態様)
本発明の第34の態様は、
上記第1~第21の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法を含む、フォトマスクの製造方法である。
(第35の態様)
本発明の第35の態様は、
上記第22~第33の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光を前記転写用パターンに照射して、被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法である。
(第36の態様)
本発明の第36の態様は、
上記第34の態様に記載の製造方法によるフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光を前記転写用パターンに照射して、被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主パターンと補助パターンを有する精細な転写用パターンに生じた欠陥に対し、該転写用パターンによる光学性能を回復すべく、効率的に修正を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1(a)】図1(a)は本発明の修正方法を適用する一態様としてのフォトマスク(参考例1)であって主パターンと、主パターンの近傍に配置された補助パターンとを含む転写用パターンをもつフォトマスク(フォトマスクI)の平面模式図である。
図1(b)】図1(b)は図1(a)のA-A位置の断面模式図である。
図1(c)】図1(c)は、半透光膜を形成せずに、透明基板に掘り込みを形成した補助パターンをもつ、変形例のフォトマスクの場合における、(a)のA-A位置の断面模式図である。
図1(d)】図1(d)は、参考例2のフォトマスクのパターンを示す平面模式図である。
図1(e)】図1(e)は、参考例1及び2に係る各転写用パターンの性能評価を示す図である。
図2図2(a)はフォトマスクIの平面模式図であり、図2(b)は、図2(a)における一点鎖線部分において、ジャストフォーカス時、及び、25μm及び50μmデフォーカスした時の、光強度分布曲線である。
図3図3(a)はフォトマスクIがもつ8角形帯の補助パターンの一部に白欠陥が生じた場合を示す平面模式図であり、図3(b)は、図3(a)における一点鎖線部分において、ジャストフォーカス時、及び、25μm及び50μmデフォーカスした時の、光強度分布曲線である。図3(c)はフォトマスクIがもつ8角形帯の補助パターンの一部に黒欠陥が生じた場合を示す平面模式図であり、図3(d)は、図3(c)における一点鎖線部分において、ジャストフォーカス時、及び、25μm及び50μmデフォーカスした時の、光強度分布曲線である。
図4図4は、フォトマスクIが有する八角形帯の補助パターンを中心角区分A~Hに均等に区分した様子を示す平面模式図である。
図5図5(a)は、参考例1、参考例2のパターンとともに、実施例1の転写性能(DOF,EL)をシミュレーションにより算出した結果である。図5(b)は参考例1の正常なフォトマスクIの平面模式図、図5(c)は参考例2のバイナリマスクの平面模式図、図5(d)は欠陥の生じた補助パターンの1区画が遮光部になってしまった場合を想定した実施例1の平面模式図である。
図6図6(a)は、フォトマスクIの補助パターンに白欠陥が生じたところを示す平面模式図であり、図6(b)は、この白欠陥に、遮光性の補充膜を形成する修正を行う様子を示す平面模式図である。
図7図7は、フォトマスクの補助パターンの2区分(中心角区分2/8)に黒欠陥が生じた例を示す平面模式図であって、図7(a)(両サイド、実施例2~4)は、主パターンの重心位置を変更せず、破線が示す元々の主パターンの輪郭に対し、互いに対向する2辺を、同じ寸法ずつ遮光部側に後退させ、主パターンのサイズを拡張した様子を示す平面模式図であり、図7(b)(4辺、実施例5~7)は、主パターンの重心位置を変更せず、破線が示す元々の主パターンの輪郭に対し、4辺を、同じ寸法ずつ遮光部側に後退させて、主パターンのサイズを拡張した様子を示す平面模式図であり、図7(c)(重心移動、実施例8~10)は、破線が示す元々の主パターンの輪郭に対し、主パターンの1辺を、遮光部側に後退させた主パターンのサイズを拡張した様子を示す平面模式図である。
図8図8は、図7(a)~(c)に示すように修正を施したフォトマスクIについて、DOF,ELをシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図9図9は、フォトマスクIにおいて4区分(中心角区分4/8)の補助パターンが欠損して黒欠陥となった場合を示す平面模式図である。
図10図10は、図9に示すフォトマスクIに対し、図7(a)~(c)(実施例2~10)と同様の方法で主パターンの面積を拡張し、DOF,ELをシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図11図11は、フォトマスクIにおいて5区分(中心角区分5/8)の補助パターンが欠損して黒欠陥となった場合を示す平面模式図である。
図12図12は、図11に示すフォトマスクIに対し、図7(a)~(c)(実施例2~10)と同様の方法で主パターンの面積を拡張し、DOF,ELをシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図13図13は、補助パターンと主パターンとの組み合わせのバリエーションを例示する平面模式図である。
図14図14は、フォトマスクIの製造方法の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本形態では、透光部からなる径W1(μm)の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置された、露光装置が解像しない幅d(μm)をもつ補助パターンとを有するフォトマスクに生じた欠陥を修正する方法について、以下に説明する。
【0024】
[欠陥修正対象のフォトマスクについて]
図1(a)及び(b)には、本発明の修正方法を適用する一態様としてのフォトマスク(以下、フォトマスクI)を例示する。なお、符号は初出のもののみに付し、以降は省略する。
【0025】
このフォトマスクは、透明基板10上に、遮光膜12及び半透光膜11がそれぞれパターニングされて形成された、透光部4、遮光部3、位相シフト部5を有する転写用パターンを備えている。
【0026】
尚、本願でいう「転写用パターン」とは、フォトマスクを用いて得ようとするデバイスに基づいて設計されたパターンであり、後述の修正を施す対象とするもの、或いは、修正を施した修正済転写用パターンを、いずれも、その文脈に応じて呼ぶものとする。
【0027】
図1(a)に示すフォトマスクIは、主パターン1と、主パターンの近傍に配置された補助パターン2とを含む。補助パターンは、フォトマスクIを露光する露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ。
【0028】
フォトマスクIにおいて、主パターンと補助パターンとは、互いの透過光の位相差が略180度となるように構成することが好ましい。具体的には、主パターンは、透明基板が露出した透光部からなり、補助パターンは、透過光の位相を略180度シフトする位相シフト部とすることができる。例えば、補助パターンは、図1(b)に示すように、透明基板上に、透過光の位相を略180度シフトする半透光膜(いわゆる位相シフト膜)が形成されたものとすることができる。
又は、図1(c)の変形例に示すように、補助パターンは、透明基板の表面に対して所定寸法の掘り込み20を形成されたものとし、主パターンと補助パターンとが上記の位相差をもつように構成することもできる。以下、補助パターンの構成については、図1(b)に示すもの、すなわち、透明基板上に、透過光の位相を略180度シフトする半透光膜(位相シフト膜)が形成された場合を、以下、例として主に説明する。以下、このような位相シフト部のことを半透光部ともいう。
【0029】
主パターン及び補助パターン以外の領域は、透明基板上に、少なくとも遮光膜が形成された、遮光部となっている。
【0030】
図1(b)では、遮光部は、半透光膜と遮光膜とが、透明基板上に積層しているが、遮光膜単層であってもよく、又は、半透光膜との積層順序が逆でもよい。
【0031】
フォトマスクIの主パターンは、被転写体(表示装置のパネルなど)にホールパターンを形成することができ、主パターンの径(W1)は、4μm以下であるときに効果が顕著である。高画質の表示装置を実現するために必要な、このようなサイズの微細なホールパターンの転写が、既存のバイナリマスクでは困難であったが、フォトマスクIは、光の干渉作用を制御し、利用する設計によって、優れた転写条件を実現するものである。
【0032】
ここで位相シフト部からなる補助パターンは、透光部の近傍であって、透光部との間に遮光部を介した位置に配置される。そして、補助パターンを透過した光によって、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布に変化を与える。例えば、光強度分布曲線のピークを高める効用、転写像の焦点深度(Depth of Focus,DOF)を増加させる効用、及び露光余裕度(Exposure Latitude,EL、許容される露光量の誤差)を増加させる効用の、少なくともひとつがある。
【0033】
多くの公知の位相シフトマスクにおいては、位相シフト部と透光部とが隣接する境界において、逆位相の透過光を干渉させてコントラストの向上等の効果を得るのに対し、フォトマスクIは、位相シフト部と透光部の間に遮光部を介在させて離間させ、双方の透過光の光強度分布における外縁側(振幅の正負が反転する)の干渉を用い、上記のメリットを得るものである。
【0034】
フォトマスクIを露光することにより、上記主パターンに対応して、被転写体上に、径W2(μm)(但しW1≧W2)をもつ微細な主パターン(ホールパターン)が形成できる。
【0035】
具体的には、W1(μm)を、下記式(1)
0.8≦W1≦4.0 ・・・(1)
の関係となるようにすると本発明の効果がより有利に得られる。これは、径が0.8μm未満になると、被転写体上での解像が困難になること、及び、径が4.0μmを超えると、既存のフォトマスクによって比較的解像性が得やすく、フォトマスクIの作用効果は顕著でない。
【0036】
このとき被転写体上に形成される主パターン(ホールパターン)の径W2(μm)は、
0.6≦W2≦3.0
とすることができる。
【0037】
また、主パターンの径W1が、3.0(μm)以下であるとき、本発明の効果がより顕著に得られる。好ましくは、主パターンの径W1(μm)を、
1.0≦W1≦3.0
とすることができる。尚、径W1と径W2との関係を、W1=W2とすることもできるが、好ましくは、W1>W2とする。すなわち、β(μm)をバイアス値とするとき、
β=W1-W2>0(μm)
であるとき、
0.2≦β≦1.0
より好ましくは、
0.2≦β≦0.8
とすることができる。フォトマスクIをこのように設計するとき、被転写体上における、レジストパターン残膜厚の損失を低減するなどの、有利な効果が得られる。
【0038】
上記において、主パターンの径W1は、円の直径、又はそれに近似される数値を意味する。例えば、主パターンの形状が正多角形であるときは、主パターンの径W1は、内接円の直径とする。主パターンの形状が、図1(a)に示すように正方形であれば、主パターンの径W1は一辺の長さである。転写された主パターンの径W2においても、円の直径又はそれに近似される数値とする点で同様である。
【0039】
もちろん、より微細化したパターンを形成しようとするとき、W1が2.5(μm)以下、又は2.0(μm)以下とすることも可能であり、更には、W1を1.5(μm)以下として本発明を適用することもできる。
【0040】
このような転写用パターンをもつフォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長に対して、主パターンと補助パターンとの位相差φ1が、略180度である。このため、補助パターンに用いる半透光膜は、上記光をφ1度シフトする位相シフト特性をもち、φ1は略180度とする。
【0041】
尚、ここで略180度とは、180度±15度の範囲内を意味する。半透光膜の位相シフト特性としては、好ましくは180±10度の範囲内であり、より好ましくは180±5度の範囲内である。
【0042】
フォトマスクIの露光には、i線、h線、又はg線を含む露光光を用いるときに効果が顕著であり、特にi線、h線、及びg線を含むブロード波長域の光を露光光として適用することが好ましい。この場合、代表波長としては、該ブロード波長域に含まれるいずれかの波長とし、例えばi線、h線、g線のいずれかとすることができる。例えばg線を代表波長として、本態様のフォトマスクを構成することができる。
【0043】
補助パターンを構成する位相シフト部のもつ光透過率Tは、以下のようにすることができる。
2≦T≦100
補助パターンが、図1(c)に示すように、透明基板の堀り込みによって形成される場合、この透過率は100%となる。一方、透明基板上に半透光膜を構成してなる補助パターンの場合、その半透光膜の光透過率T(%)は、
2≦T≦95
とすることができる。このような位相シフト部の光透過率は、後述の、転写用パターンの光学像の制御を可能とする。
好ましくは、
20≦T≦80
とする。より好ましくは、
30≦T≦70
更に好ましくは、
35≦T≦65
である。尚、透過率T(%)は、透明基板の透過率を基準としたときの、半透光膜における上記代表波長の透過率とする。この透過率は、後述のd(補助パターンの幅)の設定と協調して、補助パターンを透過した反転位相の光の光量を制御し、主パターンの透過光との干渉により、転写性を向上させる(例えばDOFを高める)作用に寄与するために、良好な範囲である。
【0044】
フォトマスクIにおいて、主パターン及び補助パターンが形成された以外の領域に配置された遮光部は、以下のような構成とすることができる。
【0045】
遮光部は、露光光(i線~g線の波長範囲にある代表波長の光)を実質的に透過しないものであり、光学濃度OD≧2(好ましくはOD≧3、より好ましくはOD>3)の遮光膜を、透明基板上に形成してなるものとすることができる。上記のとおり、遮光膜が他の膜と積層していてもよい。
【0046】
なお、フォトマスクIにおいては、主パターンと補助パターン以外の領域が、遮光部のみからなる構成をもつ。
【0047】
上記転写用パターンにおいて、補助パターンの幅をd(μm)とするとき、
0.5≦√(T/100)×d≦1.5 ・・・(2)
が成り立つときに、フォトマスクIの転写性に特に優れた効果が得られる。
また、主パターンの幅の中心と、補助パターンの幅方向の中心の距離を距離P(μm)とし、距離Pは、下記式(3)
1.0<P≦5.0 ・・・(3)
の関係が成り立つことが好ましい。
より好ましくは、距離Pは、
1.5<P≦4.5
更に好ましくは、
2.5<P≦4.5
とすることができる。このような距離Pを選択することにより、補助パターンの透過光と、主パターンの透過光との干渉が良好に相互作用を及ぼし、これによってDOFなどの優れた作用か得られる。
【0048】
補助パターンの幅d(μm)は、フォトマスクに適用する露光条件(使用する露光装置)において、解像限界以下の寸法である。一般的に、表示装置製造用の露光装置における解像限界は、3.0μm~2.5μm程度(i線~g線)であることを考慮し、具体的には、
d<3.0
であり、好ましくは、
d<2.5
より好ましくは、
d<2.0
である。
【0049】
また、補助パターンの透過光を良好に主パターンの透過光と干渉させるため、
d≧0.7
より好ましくは、
d≧0.8
とすることが好ましい。
また、d<W1であることが好ましい。
そして、このような場合に、フォトマスクIの転写性が良好であるとともに、後述の修正工程が好適に用いられる。
【0050】
また、より好ましくは、上記(2)の関係式は、下記の式(2)-1であり、更に好ましくは、下記の式(2)-2である。
0.7≦√(T/100)×d≦1.2 ・・・(2)-1
0.75≦√(T/100)×d≦1.0 ・・・(2)-2
すなわち、補助パターンを透過する反転位相の光量は、Tとdのバランスが上記を充足するときに、優れた効果を奏する。
【0051】
上述のとおり、図1(a)に示すフォトマスクIの主パターンは正方形であり、この形状が好ましいが、本発明を適用するフォトマスクはこれに限定されない。例えば、図13に例示されるように、フォトマスクの主パターンは、八角形や円を含む、回転対称な形状であることができる。そして回転対称の中心を、上記距離Pの基準となる中心とすることができる。
【0052】
また、図1に示すフォトマスクIの補助パターンの形状は、八角形帯であり、この形状は、ホールパターンを形成するための補助パターンとして、安定して製造可能である上に光学的効果も高い。但し、本発明を適用するフォトマスクはこれに限定されない。例えば補助パターンの形状は、主パターンの中心に対して、3回対称以上の回転対称の形状に一定の幅を与えたものであることが好ましく、図13(a)~(e)に例示する。主パターンのデザインと補助パターンのデザインとは、互いに図13(a)~(e)の異なるものを組み合わせても良い。
【0053】
例えば、補助パターンの外周が、正方形、正六角形、正八角形、正十角形、正十二角形、正十六角形等の正多角形(好ましくは正2n角形、ここでnは2以上の整数)又は円形である場合が例示される。好ましくは、nは4以上である。そして、補助パターンの形状としては、補助パターンの外周と内周とが平行であって、その幅(ここでは外周と内周の距離)が一定である形状をもつ正多角形又は円形の帯のような形状であることが好ましい。この帯状の形状を、多角形帯又は円形帯ともよぶ。
補助パターンの形状としては、このような主パターンの重心を中心とする、上記のような正多角形帯又は円形帯が、遮光部を介して主パターンの周囲を囲む形状であることが好ましい。このとき、主パターンの透過光と、補助パターンの透過光との光量のバランスを良好にすることができる。
【0054】
尚、本発明の効果を妨げない限り、主パターン、補助パターンに加えて、付加的に他のパターンを用いてもかまわない。
【0055】
次にフォトマスクIの製造方法の一例について、図14を参照して以下に説明する。
【0056】
図14(a)に示すように、フォトマスクブランク30を用意する。
【0057】
このフォトマスクブランク30は、ガラス等からなる透明基板10上に、半透光膜11と遮光膜12とがこの順に形成されており、更に第1フォトレジスト膜13が塗布されている。
【0058】
半透光膜は、上記の透過率と位相差を充足し、かつ、ウェットエッチング可能な材料からなることが望ましい。但し、ウェットエッチングに際して生じる、サイドエッチングの量が大きくなりすぎると、CD精度の劣化や、アンダーカットによる上層膜の破壊など不都合が生じるため、膜厚の範囲は、2000Å以下であることが好ましい。例えば、300~2000Åの範囲、より好ましくは、300~1800Åである。ここでCDとは、Critical Dimensionであり、本明細書ではパターン幅の意味で用いる。
【0059】
また、これらの条件を充足するためには、半透光膜材料は、露光光に含まれる代表波長(例えばh線)の屈折率が1.5~2.9であることが好ましい。より好ましくは、1.8~2.4である。
【0060】
更に、半透光膜は、ウェットエッチングによって形成されるパターン断面(被エッチング面)が、透明基板主表面に対して垂直に近いことが好ましい。
【0061】
半透光膜の材料は、クロム(Cr)を含有するもの、或いは遷移金属とSi(ケイ素)を含有するものが例示される。例えば、CrまたはCr化合物(好ましくは、CrO、CrC、CrN、CrONなど)、或いは、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)の少なくとも一つと、Siとを含む材料が挙げられ、又は、これらの材料の酸化物、窒化物、酸化窒化物、炭化物、又は酸化窒化炭化物を含む材料からなるものを用いることができる。更に具体的には、モリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)、モリブデンシリサイド酸化窒化物(MoSiON)、モリブデンシリサイド酸化物(MoSiO)、酸化窒化シリコン(SiON)、チタン酸化窒化物(TiON)等を挙げることができる。
半透光膜の成膜方法としては、スパッタ法等公知の方法を適用することができる。
【0062】
フォトマスクブランクの半透光膜上には、遮光膜が形成される。成膜方法としては、半透光膜の場合と同様に、スパッタ法等公知の手段が適用できる。
【0063】
遮光膜の材料は、Cr又はその化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物)であっても良く、又は、Mo、W、Ta、Tiを含む金属のシリサイド、又は、該シリサイドの上記化合物であっても良い。但し、フォトマスクブランクの遮光膜の材料は、半透光膜と同様にウェットエッチングが可能であり、かつ、半透光膜の材料に対してエッチング選択性をもつ材料が好ましい。すなわち、半透光膜のエッチング剤に対して遮光膜は耐性をもち、また、遮光膜のエッチング剤に対して、半透光膜は耐性をもつことが望ましい。
【0064】
フォトマスクブランクの遮光膜上には、更に第1フォトレジスト膜が塗布される。本態様のフォトマスクの描画工程には、好ましくはレーザ描画装置による描画が好適に利用されるので、それに適したフォトレジストとする。第1フォトレジスト膜はポジ型でもネガ型でも良いが、以下ではポジ型として説明する。
【0065】
次に、図14(b)に示すように、第1フォトレジスト膜に対して、描画装置を用い、転写用パターンに基づいた描画データによる描画を行う(第1描画)。そして、現像によって得られた第1レジストパターン13pをマスクとして、遮光膜をウェットエッチングする。これによって、遮光部となる領域が画定し、また遮光部によって囲まれた補助パターン(遮光膜パターン12p)の領域が画定する。
【0066】
次に、図14(c)に示すように、第1レジストパターンを剥離する。
【0067】
次に、図14(d)に示すように、形成された遮光膜パターンを含む全面に、第2フォトレジスト膜14を塗布する。
【0068】
次に、図14(e)に示すように、第2フォトレジスト膜14に対し、第2描画を行い、現像によって形成された第2レジストパターン14pを形成する。この第2レジストパターンと、上記遮光膜パターンとをマスクとして、半透光膜のウェットエッチングを行う。このエッチング(現像)によって、透明基板が露出する透光部からなる、主パターンの領域が形成される。尚、第2レジストパターンは、補助パターンとなる領域を覆い、透光部からなる主パターンとなる領域に開口をもつものであるともに、該開口から、遮光膜のエッジが露出するよう、第2描画の描画データに対してサイジングを行っておくことが好ましい。このようにすることで、第1描画と第2描画との間に相互に生じるアライメントずれを吸収し、転写用パターンのCD精度の劣化を防止できるため、主パターン及び補助パターンの重心を精緻に一致させることができる。
【0069】
次に、図14(f)に示すように、第2レジストパターンを剥離して、図1(a)、(b)に示す本態様のフォトマスクIが完成する。
【0070】
このようなフォトマスクの製造の際にウェットエッチングを適用することができる。ウェットエッチングは等方エッチングの性質をもつため、半透光膜の膜厚を考慮すると、加工の容易性の観点からは、補助パターンの幅dは1μm以上、好ましくは1.2μm以上とすることが有用である。
【0071】
図1(a)、(b)に示す、本態様のフォトマスクIについて、光学シミュレーションにより、その転写性能を比較し、評価した。
【0072】
ここでは、被転写体上に、ホールパターンを形成するための転写用パターンとして、参考例1及び参考例2を用意し、露光条件を共通に設定したときに、どのような転写性能を示すかについて、光学シミュレーションを行った。
【0073】
(参考例1)
参考例1のフォトマスクは、図1(a)、(b)で説明した上記フォトマスクIと同様の構成をもつフォトマスクである。ここで透光部からなる主パターンは、一辺(径)(すなわちW1)が2.0(μm)の正方形とし、半透光部からなる補助パターンの幅dが1.3(μm)の八角形帯とし、主パターン中心と、補助パターンの幅中心との距離である距離Pは、3.25(μm)とした。
【0074】
補助パターンは、透明基板上に半透光膜が形成されてなる。この半透光膜の対g線透過率Tは、45(%)、位相シフト量は180度である。また、主パターン及び補助パターンを囲む遮光部は、実質的に露光光を透過しない遮光膜(好適にはOD>3)よりなる。
【0075】
(参考例2)
図1(d)に示すように、参考例2のフォトマスクは、透明基板上に形成した遮光膜パターンからなる、いわゆるバイナリマスクのパターンを有する。このフォトマスクは、透明基板が露出する透光部からなる正方形の主パターンが、遮光部(好適にはOD>3)に囲まれている。主パターンの径W1(正方形の一辺)は2.0(μm)である。
【0076】
参考例1及び2のフォトマスクのいずれについても、被転写体上に、径W2が1.5μmのホールパターンを形成するものとし、シミュレーションで適用した露光条件は、以下のとおりである。すなわち、露光光はi線、h線、g線を含むブロード波長域とし、強度比は、g:h:i=1:1:1とした。
【0077】
露光装置の光学系は、NAが0.1であり、コヒレンスファクタσが0.5である。被転写体上に形成される、レジストパターンの断面形状を把握するための、ポジ型フォトレジストの膜厚は、1.5μmとした。
【0078】
上記条件下、各転写用パターンの性能評価を図1(e)に示す。
【0079】
[フォトマスクの光学的評価]
例えば、径の小さい微細な透光パターンを転写するには、フォトマスク透過後の露光光が、被転写体上に形成する空間像による、透過光強度分布曲線のプロファイルが良くなければならない。具体的には、透過光強度分布のピークを形成する傾斜が鋭く、垂直に近い立ち上がり方をしていること、及び、ピークの光強度の絶対値が高いこと(周囲にサブピークが形成される場合には、その強度に対し相対的に、十分に高いこと)などが肝要である。
【0080】
より定量的に、フォトマスクを、光学的な性能から評価するとき、以下のような指標を用いることができる。
(1)焦点深度(Depths of Focus:DOF)
目標CDに対し、変動幅が所定範囲内(ここでは±15%の範囲内)となるための焦点深度の大きさ。DOFの数値が高ければ、被転写体(例えば表示装置用のパネル基板)の平坦度の影響を受けにくく、確実に微細なパターンが形成でき、そのCDばらつきが抑えられる。
(2)露光余裕度(EL:Exposure Latitude)
目標CDに対し、変動幅が所定範囲内(ここでは±15%の範囲内)となるための、露光光強度の余裕度。
以上をふまえ、シミュレーション対象の各サンプルの性能を評価すると、図1(e)に示すとおり、参考例1のフォトマスクは、焦点深度(DOF)が、参考例2に比べて非常に優れている点で、フォトマスクは被転写体のフラットネスなどの影響を受けにくい、パターンの安定した転写性を示す。
【0081】
また、参考例1のフォトマスクは、ELにおいても10.0(%)以上の優れた数値を示し、即ち、露光光量の変動に対して、安定した転写条件を可能とする。
更に、参考例1のフォトマスクのDose値(目標寸法のパターンを形成するための照射光量)が参考例2に対して相当に小さい。このことは、参考例1のフォトマスクの場合には、大面積の表示装置製造にあっても、露光時間が増大しない、又は短縮できるメリットを示している。
【0082】
[フォトマスクIに生じる欠陥について]
図2には、上記フォトマスクI(参考例1、図2(a))を露光したときに、被転写体上に形成される光学像(光強度分布曲線)を示す(図2(b))。図2(b)は、図2(a)における一点鎖線部分において、ジャストフォーカス時、及び、25μm及び50μmデフォーカスした時の、光強度分布曲線である。なお、図2(b)中ではこれらのデフォーカス量におけるμmの記載は省略しており、+はジャストフォーカスから近づける方向、-はジャストフォーカスから遠ざける方向を示す。主パターンに対応する中央のメインピークは十分に高く、急峻である。また、両サイドに生じたサブピークは、メインピークとの強度差が十分に大きいため、主パターンの転写に影響を与えず、また、デフォーカスによるCD変動の影響も小さい。
【0083】
一方、フォトマスクIが備える、八角形帯の補助パターンに、欠陥が生じた場合の光学像を、図3に示す。図3(a)は、フォトマスクIがもつ8角形帯の補助パターンの一部に白欠陥FWが生じた場合を示す。ここでは、図4に示すように、補助パターンを中心角によって分けた区分(以下、中心角区分ともいう)の1つ(ここでは八角形帯の補助パターンに対して8等分したうちの1区分、すなわち全体の1/8区分、図4参照)に白欠陥が生じた場合について、その転写性を検討した。図3(b)に示すとおり、光強度分布のメインピークの強度が、図2(b)より落ちているほか、サブピークとの強度の差が小さく、特に、デフォーカス時には、被転写体上のレジストに対して、サブピークによる影響(レジストパターンに対する損傷)が避けられない。従って、補助パターンに生じた白欠陥の影響は看過しがたい場合が生じる。このような現象は、補助パターンが八角形帯以外の多角形体や円帯であっても、同様に生じると考えられる。
【0084】
図3(c)は、フォトマスクIがもつ8角形帯の補助パターンの一部(上記と同様に1/8区分)に黒欠陥FBが生じた場合を示し、そのときの、光学像を図3(d)に示す。こうした黒欠陥は、例えば、製造工程において、半透光膜上の遮光膜が残留した場合などに生じ得る。但し、この黒欠陥であれば、光学像において、メインピークの強度が若干下がるが、転写性に大きな問題は生じないことが推測される。すなわち、補助パターンに生じる欠陥は、黒欠陥の場合も、白欠陥の場合も、被転写体上に形成される光強度分布のピークを下げる点で、光学性能を損なうものであるが、その程度においては、黒欠陥より白欠陥の方が、主パターンの転写性に大きな影響を与える。換言すれば、図3(d)に示す黒欠陥の場合の光強度分布のピークは、図3(c)に示す白欠陥の場合のそれと比較し、ピークが高く、山の傾斜も急峻である。この点も、八角形帯の補助パターンに限らず、主パターンの周囲を、遮光部を介して囲む補助パターンにつき、同様であると考えられる。
【0085】
上記知見のもと、フォトマスクIに生じた欠陥修正の方法を検討した。すなわち、欠陥によって低減された、転写用パターンの光学性能を、少なくとも部分的に回復する方法について検討した。
【0086】
尚、一般に、フォトマスクパターン上で、必要な膜が欠落し、その部分の透過光量が増大してしまう欠陥を白欠陥と呼び、余剰物が付着して、透過光量が減少してしまう場合を黒欠陥と呼ぶ。本願では、このような場合のほか、位相シフト部が透明基板の掘込によって形成される場合、掘込不足によって、十分な位相シフト効果が得られない場合についても、白欠陥とする。透過光の位相シフト効果が低減する点で、上記白欠陥と類似の作用が生じるためである。
【0087】
[欠陥修正法1]
以下、八角形帯の補助パターンのうちの1区分全体に黒欠陥が生じたフォトマスクI(図5(d))の転写性能(DOF,EL)をシミュレーションにより算出し、この結果を、参考例1の正常なフォトマスクI(図5(b))、及び、参考例2のバイナリマスク(図5(c))と比較した。結果を図5(a)に示す。
【0088】
図1において触れたとおり、バイナリマスクは、フォトマスクIの約1.5倍のDose(露光時の照射光量)によって、被転写体上に目標寸法(1.5μm)のホールパターンを形成することができた。しかしながら、正常なフォトマスクIに最適化したDose(ここでは、82.0mJ/cm)では、目標寸法の像を形成することができなかった。そこで、目標寸法の像を形成するために、主パターンの径を2.28μmまで拡大した。図5(a)に「註1」と表記されているのは、上述のように径の変更が行なわれたことを示す。
尚、図3(a)に示す白欠陥を有する転写用パターンにおいても、上記露光条件では、被転写体上に目標寸法の転写像を得ることができず、DOF、ELの値は算定されなかった。
【0089】
図5(a)に示すとおり、黒欠陥をもつ実施例1のDOF及びELは、正常パターンである参考例1を下回る。一方、この実施例1のDOF及びELは、参考例2(補助パターンをもたず、主パターンの拡大のみで目標寸法を得たもの)のバイナリマスクを上回ることから、残存する補助パターンによって転写性向上の効果が発揮されていることがわかる。
従って、欠陥修正方法としては、参考例2のバイナリマスクに対して、少なくともDOF及びELのいずれかを上回ることが指標となる。更に発明者の検討によると、最近の露光装置の性能向上により、ELは4%以上であれば、転写可能である一方、DOFは、表示装置製造用の大型基板のフラットネスなどの影響により、20μmを越えることが好ましい。この2つのパラメータは、いずれも大きい方が好ましいが、トレードオフになる場合には、DOFを優先することが現実的である場合が多い。そこで、DOFが20μmを上回り、かつELがなるべく大きい条件を得られるべく、欠陥修正方法を検討した。
【0090】
図6(a)には、フォトマスクIの補助パターンに白欠陥が生じたところを示す。この欠陥は、補助パターンの8区分のうちの1つの領域内に生じている。欠陥の発生領域は、中心角区分において、1/8以下であり、補助パターンとしての喪失面積も、補助パターンの1/8以下である。そこで、この白欠陥に、遮光性(たとえばOD≧3)の補充膜16を形成する修正(補充膜修正)を行なうことができる(図6(b))。補充膜は、白欠陥領域をカバーするものであり、かつ、上記1区分以内の領域である。また、補充膜の形成は、レーザCVDによるCVD膜とすることができる。従って、補充膜の組成は、上述の遮光膜とは組成が異なる。
一方、このように修正を行なうことで、上記実施例1を下回らない、転写性が得られることとなる。
すなわち、補助パターンに生じた白欠陥によって低減した、転写用パターンの光学性能は、この白欠陥部分に遮光性の補充膜を形成し、遮光部と同等の遮光性をもたせることによって、少なくとも部分的に回復することができる。ここで、光学性能の回復を示すものとしては、光強度曲線のピークの高さ、DOFの大きさ、ELの大きさが含まれる。また、所定寸法(目標CDの±15%の範囲)の転写像が、被転写体上に形成されない状態であったものが、形成される状態となる場合が含まれる。
尚、上記欠陥修正法1については、図1(b)に示すフォトマスクIに関して説明したが、図1(c)の変形例に示すフォトマスクについても、同様に行なうことができる。この場合、透明基板に掘り込み部分をもつべき補助パターンの、掘り込み不足によって生じた白欠陥に対し、上記の補充膜形成を施して修正を行なうことができる。
【0091】
[欠陥修正法2]
図7には、フォトマスクの補助パターンの2区分(中心角区分2/8)に黒欠陥が生じた例を示す。この黒欠陥は、発生した白欠陥に対して、補充膜を形成したために生じた黒欠陥であってもよい。
【0092】
但し、欠陥修正法1と異なり、補助パターンとしての喪失面積も中心角区分で2/8に達し、その影響はより大きいため、そのままでは、DOF20μmを満たせない懸念がある。正常なフォトマスクIは、補助パターンが形成する光強度分布に現れる一部の透過光が、主パターンの透過光による光強度を増加させる寄与を行なうことに対し、補助パターンがその面積の1/8を越えて欠損すると、上記光強度増加への寄与が十分に得られなくなるためと考えられる。
実際、発明者の検討によると、図7のように、2区分に黒欠陥が生じた場合には、上記と同じ露光条件では、目標寸法の転写像は形成できず、このため、DOFやELを算定することも不可能であった。
【0093】
そこで、実施例2~4では、中心角区分2/8の黒欠陥を生じたフォトマスクIに対し、補助パターンによる主パターンの光強度への寄与が失われたことを補うべく、主パターンのサイズを拡張する修正(拡張修正)を行なった。すなわち、欠陥を生じた補助パターンに修正を施すかわりに、主パターンを対象として、拡張修正を施した。これにより、所定の透過率、位相差を有する修正膜を形成することが不要となるようにした。
主パターンのサイズ拡張は、四角形(ここでは正方形)の主パターンの4辺のうち、少なくともひとつの辺を、遮光部側に後退させることによって行うことができる。
実施例2~4は、主パターンの重心位置を変更せず、破線で示す、正常な主パターンの輪郭(正方形)に対し、主パターンの互いに対向する2辺を、同じ寸法ずつ遮光部側に後退させ、主パターンのサイズを拡張した(図7(a)、図8の「両サイド」)。
また、実施例5~7では、主パターンの重心位置を変更せず、破線で示す、正常な主パターンの輪郭に対し、主パターンの4辺を、それぞれ同じ寸法ずつ遮光部側に後退させて、主パターンのサイズを拡張した(図7(b)、図8の「4辺」)。
また、実施例8~10は、破線で示す、正常な主パターンの輪郭に対し、主パターンの1辺を、遮光部側に後退させて主パターンのサイズを拡張した(図7(c)、図8の「重心移動」)。
実施例8~10では、主パターンの重心位置が、拡張辺側に移動することになる。
主パターンのサイズ拡張は、図示した態様以外の拡張方法でも構わない。例えば、正方形の主パターンのとなりあう2辺を、それぞれ遮光部側に後退させてもよい。主パターンのサイズの拡張は、レーザCVD装置を用いたレーザーザッピング、又はFIB装置を用いたイオンビームエッチングによって、主パターンの一辺に位置する遮光膜のエッジ部分を所定寸法分除去して行なうことができる。
【0094】
このように修正を施したフォトマスクIについて、DOF,ELをシミュレーションにより求めた。この結果を図8に示す。尚、補助パターンにおいて、欠損の生じた区分の位置により、光強度の空間像形状が変化することが想定されるが、ここでは、X方向、Y方向のDOF、及びELの値を求め、評価にあたってはX方向、Y方向のうち小さい方を、表中に記載した。
【0095】
図8によると、いずれの拡張方法を適用した場合にも、上記の露光条件下、拡張修正を施すことによって被転写体上に転写像(ホールパターン)が得られ、その際のDOF及びELが得られた。すなわち、拡張修正によって、欠陥発生によって失われた光学性能の回復が認められた。
更に、補助パターンの喪失面積に対して、一定の割合で主パターンの面積を拡張したときに、DOFの回復傾向が好ましく認められた。算定において、フォトマスクIの補助パターン1区分の面積は3.5μmである。
【0096】
図9には、中心角区分4/8の補助パターンが欠損した場合を示す。これに対しては、実施例2~10と同様の方法で、主パターンの面積を拡張した結果を図10の実施例11~19に示す。
【0097】
図11には、中心角区分5/8の補助パターンが欠損した場合を示す。これに対して、実施例2~10と同様の方法で、主パターンの面積を拡張したシミュレーション結果を図12の実施例20~28に示す。
【0098】
補助パターンの中心角区分2/8以上の補助パターンに欠損が生じて黒欠陥となると、目標寸法のホールパターンが被転写体上に形成されない状況下、上記のように拡張修正を行なうと、失われた光学性能を、少なくとも部分的に回復しうることが、上記により明らかになった。すなわち、補助パターンの喪失面積が、1/8を超えるときには、主パターンの拡張修正が、光学機能の回復に有効である。
尚、上記にて、補助パターンを構成する、複数の連続する中心角区分に黒欠陥が生じて、光学機能が損なわれた場合について説明した。一方、複数の中心角区分であって、不連続な位置にある部分に黒欠陥が生じることも想定される。そこで、不連続の様々な欠陥位置の場合についても、被転写体上に形成される光強度分布の変化と、それに対する、主パターンの拡張修正の効果について、光学シミュレーションを行なった。その結果、不連続な欠陥によっても、主パターンの透過光が形成する光強度分布を増加させる補助パターンの機能が一部失われる傾向は上記連続の場合と略同様であり、また、上記主パターンの拡張修正によって、低減した機能の回復が同様にみとめられた。
【0099】
主パターンの拡張修正の際の拡張方向は、四方でも2方向でも1方向でも、いずれでも良い。但し、主パターンの拡張修正は、主パターンの外縁のいずれかの部分が、残存する補助パターンに接触しない範囲で行なうことが好ましい。
また、発明者の検討によると、黒欠陥の発生により、被転写体上の光強度分布のピークが低下し、この低下傾向は、黒欠陥により失われた補助パターン面積に、実質的に比例する。ここで、主パターンの拡張修正を行なうことにより、低下したピーク位置は回復方向に向かう。但し、無欠陥の場合に得られるピーク高さ(レファレンス)を超えない範囲で、拡張修正を行なうことが好ましい。これによって、ELの顕著な低下が避けられる。
また、図8、10、12の結果から、喪失した補助パターンの面積S1に対する主パターンの拡張面積(増加面積)S2の比率(S2/S1)はゼロより大きく、5%以下であることが好ましく、特に、2.5%~5%とするとき、DOFとELの回復効果が共に認められる。以降、比率(S2/S1)は百分率(100×S2/S1)にて表記する。
【0100】
DOFに着目し、2~5区分の補助パターン欠損のそれぞれの実施例群の中で評価すると、S2/S1が4.3~4.6%の時に有利である。ELに着目し、上記各欠損の実施例群中で評価すると、S2/S1が2.5~4.1%のときが有利である。また、DOFとELのバランスを重視すると、上記各欠損の実施例群の中で評価し、S2/S1が3.4~4.1%の時に有利である。
【0101】
従って、S2/S1が、3.4~4.6%のとき、DOFを重視した好ましい転写性が得られるといえる。
【0102】
また、本発明の修正方法は、補助パターンの欠損が中心角区分で4/8以下であるときに、より有効に作用することがわかる。
【0103】
ここで、主パターンのサイズ拡張面積によって、DOFやELの回復がなされる一方、主パターンの拡張方法と、DOF、ELの回復には強い相関がみられなかった。すなわち、補助パターンの欠損面積に応じて、その領域の透過光の寄与(主パターンの透過光との光の干渉)が損なわれる一方、主パターンの拡張修正の面積に応じて、転写性能の回復が生じ、両者の面積には相関があると考えられる。
特にW1が、露光装置の解像限界以下の場合(例えばW1≦3)、主パターンの形状より、光の透過面積によって、転写性能が制御される。
【0104】
従って、拡張修正後の主パターンの形状は、正方形であっても、長方形であっても良いが、拡張寸法によっては、主パターンが補助パターンと接触し、両者の間に適切な寸法の遮光部を維持することが困難になるので、正方形であることが好ましい。主パターンと補助パターンとの接触が生じにくい場合(例えば、拡張方向の補助パターンが欠損している場合)には、拡張修正後の主パターンの形状は長方形であっても構わない。
尚、上記欠陥修正法2の説明は、図1(b)に示すフォトマスクIに関して行なったが、図1(c)のフォトマスクについても、同様に適用することができる。この場合、透明基板に掘り込み部分をもつべき補助パターンに遮光膜や異物が存在してなる黒欠陥、又は、掘り込み不足によって生じた白欠陥に対し、遮光性の補充膜を形成したことによって生じる黒欠陥が発生した際、主パターンに上記の拡張修正を適用し、転写性能の回復をはかることができる。
【0105】
本発明は、以下の特徴をもつフォトマスクを含む。
【0106】
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、前記転写用パターンは、透光部からなる、径W1の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンとをもつ。主パターンはホールパターンであり、特に孤立ホールパターンであるときに、本発明の効果が顕著に得られる。
【0107】
また、前記転写用パターンは、前記主パターンと補助パターンを除いた領域を構成する、遮光部を含み、前記遮光部は、前記透明基板上に、少なくとも遮光膜が形成されてなる。
【0108】
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、前記多角形帯の面積の1/8以下の領域に、前記遮光膜、又は前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成されている。
又は、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、前記透明基板表面が所定深さに掘り込まれることにより、補助パターンの透過光が主パターンの透過光との間に、略180度の位相差をもつ位相シフト部をもち、前記多角形帯の面積の1/8以下の領域に、前記遮光膜、又は前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成されている。
【0109】
上記フォトマスクは、上記フォトマスクIに本発明の修正を施したフォトマスクを含み、その構成は平面視にて、図5(d)に示す実施例1のフォトマスク、又は図6(b)に示すフォトマスクに例示される。
【0110】
また、本発明は、以下の構成のフォトマスクを含む。
【0111】
透明基板上に転写用パターンが形成されたフォトマスクであって、前記転写用パターンは、透光部からなる、径W1の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置された、露光装置によって解像されない幅d(μm)をもつ補助パターンとをもつ。
【0112】
また、前記転写用パターンは、前記主パターンと前記補助パターンを除いた領域にあって、前記主パターン及び前記補助パターンを囲む、遮光部を含み、前記遮光部は、前記透明基板上に遮光膜が形成されてなる。
【0113】
前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、前記透明基板上に、露光光の代表波長の光を、略180度位相シフトする位相特性をもつとともに、前記代表波長の光に対する透過率T(%)をもつ半透光膜が形成されてなる位相シフト部からなり、前記多角形帯の領域内に、前記遮光膜、又は前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成され、かつ、前記主パターンの周縁の少なくとも一部に、前記遮光膜を所定幅除去したレーザーザッピング断面又はイオンビームエッチング断面をもつ。
又は、前記補助パターンは、前記主パターンの周囲を、前記遮光部を介して囲む多角形帯の領域内に配置され、前記透明基板表面が所定深さに掘り込まれることにより、補助パターンの透過光が主パターンの透過光との間に、略180度の位相差をもつ位相シフト部をもち、前記多角形帯の領域内に、前記遮光膜、又は前記遮光膜と異なる材料からなる遮光性の補充膜が形成され、かつ、前記主パターンの周縁の少なくとも一部に、前記遮光膜を所定幅除去したレーザーザッピング断面又はイオンビームエッチング断面をもつ。
【0114】
レーザーザッピング断面とは、レーザーザッピングによって、遮光膜又は補充膜の一部が除去された際に、そのエッジに形成される断面である。また、イオンビームエッチング断面とは、Focused Ion beanによって遮光膜又は補充膜の一部が除去された際に、そのエッジに形成される断面である。このようなパターンエッジは、正常パターンが有する、遮光膜のエッジ(ウェットエッチングにより形成されたエッジ)とは異なる断面状態を示す、修正装置により形成されたエッジである。
【0115】
上記フォトマスクは、上記フォトマスクIに本発明の修正を施したフォトマスクを含み、その構成は平面視にて、図7(a)~(c)に示すフォトマスクに例示される。
本発明のフォトマスクは、図1(b)に示すフォトマスクI、又は図1(c)に示す変形例のフォトマスクに修正を施した結果、拡張修正を施した転写用パターンと、正常な転写用パターンを共に有するものであることができる。このとき、修正を施した転写用パターンの主パターンと、正常な転写用パターンの主パターンとは形状(例えば径、縦横比)が異なり、前者の面積が後者のそれより大きいものとすることができる。
【0116】
また、本発明は、上述の修正方法を含む、フォトマスクの製造方法を含む。
【0117】
上述のフォトマスクIの製造方法において、形成された半透光部に欠陥が生じたときに、本発明の修正方法を適用することができる。その場合、例えば、図14(f)に示す、第2レジスト剥離工程のあと、欠陥検査工程、及び修正工程を設け、該修正工程において、本発明の修正方法を適用すれば良い。
【0118】
本発明は、上記した本発明のフォトマスクに、露光装置により露光して、被転写体上に、上記転写用パターンを転写する工程を含む、表示装置の製造方法を含む。
【0119】
本発明の表示装置の製造方法は、まず、上述の本態様のフォトマスクを用意する。次に、前記転写用パターンを露光し、被転写体上に、径W2が0.6~3.0μmのホールパターンを形成する。
【0120】
用いる露光機としては、等倍のプロジェクション露光を行う方式であって、以下のものが好ましい。すなわち、FPD用として使用される露光機であり、その構成は、光学系の開口数(NA)が0.08~0.15(コヒレンスファクタ(σ)が0.4~0.9)であり、i線、h線及びg線の少なくとも一つを露光光に含む光源をもつものである。但し、開口数NAが0.10~0.20となるような露光装置においても、本発明を適用して発明の効果を得ることがもちろん可能である。
【0121】
また、使用する露光装置の光源は、変形照明(ここでは、フォトマスクに対して垂直に入射する光成分を遮蔽した光源をいい、輪帯照明などの斜入射光源を含む)を使用しても良いが、非変形照明によって、発明の優れた効果が得られる。
【0122】
本発明を適用するフォトマスクの用途に特に制限は無い。本発明のフォトマスクは、液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置の製造の際に、好ましく用いることができる、透過型のフォトマスクとすることができる。
また、本明細書において表示装置とは、表示装置を構成するための表示装置用デバイスを含むものとする。
【0123】
透過光の位相が反転する補助パターンを用いた本発明のフォトマスクによれば、主パタ
ーンと補助パターンの双方を透過する露光光の相互干渉を制御し、透過光が形成する空間像のプロファイルを大幅に改善することができる。
【0124】
このような作用効果を有利に得られる用途として、液晶やEL装置に多用されるコンタクトホールなど、孤立したホールパターンの形成のために本発明のフォトマスクを用いることが有利である。パターンの種類としては、一定の規則性をもって多数のパターンが配列することにより、これらが相互に光学的な影響を及ぼしあう密集(Dense)パターンと、こうした規則的配列のパターンが周囲に存在しない孤立パターンとを区別して呼称することが多い。本発明のフォトマスクは、被転写体上に孤立パターンを形成しようとするとき特に好適に適用される。
【0125】
本発明の効果を損ねない範囲で、本発明を適用するフォトマスクには付加的な光学膜や機能膜を使用しても良い。例えば、遮光膜のもつ光透過率が、検査やフォトマスクの位置検知に支障を与える不都合を防ぐために、転写用パターン以外の領域に遮光膜が形成される構成としても良い。また、半透光膜や、遮光膜の表面に描画光や露光光の反射を低減させるための反射防止層を設けても良い。半透光膜の裏面に反射防止層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…主パターン
2…補助パターン
3…遮光部
4…透光部
5…位相シフト部(半透光部)
10…透明基板
11…半透光膜
12…遮光膜
12p…遮光膜パターン
13…第1フォトレジスト膜
13p…第1レジストパターン
14…第2フォトレジスト膜
14p…第2レジストパターン
16…補充膜
20…掘り込み
30…フォトマスクブランク
FW…白欠陥
FB…黒欠陥
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14