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特許7100545貸金庫装置の動作チェックシステムと、それを備える貸金庫装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】貸金庫装置の動作チェックシステムと、それを備える貸金庫装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20220706BHJP
   E05G 1/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
E05G1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018166387
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020037479
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000154288
【氏名又は名称】株式会社富士精工本社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】辰川 克利
(72)【発明者】
【氏名】藤田 環
(72)【発明者】
【氏名】井本 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】于 暁明
(72)【発明者】
【氏名】福井 友也
(72)【発明者】
【氏名】北川 大地
(72)【発明者】
【氏名】北出 英明
(72)【発明者】
【氏名】多島 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】西野 文博
(72)【発明者】
【氏名】周 徳信
(72)【発明者】
【氏名】滝口 徹
(72)【発明者】
【氏名】粟生山 伸也
(72)【発明者】
【氏名】楠 寛史
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-149204(JP,A)
【文献】特開2006-240866(JP,A)
【文献】特開平09-086611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
E05G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内函の入出庫動作時に貸金庫装置の動作を把握するコンピュータを備えてなり、該コンピュータは、貸金庫装置の電源投入または営業開始により金庫室内の移載機を水平移動方向の一端から他端にまで移動させるとともに、移載機の移載ユニットを最下段位置から最上段位置にまで垂直方向に移動させ、各方向の全ストロークについて水平移動用、垂直移動用の各駆動用のモータのトルクをチェックすることを特徴とする貸金庫装置の動作チェックシステム。
【請求項2】
前記コンピュータは、内函の入出庫動作に際し、移載機の水平移動、垂直移動の各動作について、水平移動距離、垂直移動距離に基づいて設定する制限時間と比較して動作時間をチェックすることを特徴とする請求項1記載の貸金庫装置の動作チェックシステム。
【請求項3】
前記コンピュータは、内函の入出庫動作に際し、移載機の移載ユニットから庫内コンベヤを経てブース側の庫外コンベヤに至る内函の搬出、庫外コンベヤから庫内コンベヤを経て移載ユニットに至る内函の搬入の各動作について動作時間をチェックすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の貸金庫装置の動作チェックシステム。
【請求項4】
前記コンピュータは、内函の入庫動作に際し、移載機の移載ユニットから収納棚に内函を移送して格納する動作について動作時間をチェックすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の貸金庫装置の動作チェックシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか記載の貸金庫装置の動作チェックシステムを備えることを特徴とする貸金庫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、適切なメンテナンス情報を提供してサービスの向上に資することができる貸金庫装置の動作チェックシステムと、それを備える貸金庫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顧客の要望に応じて貴重品などを安全に保管する全自動式の貸金庫設備が金融機関の店舗などに多く設置されている(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
従来の貸金庫設備は、顧客ごとに特定される多数の保管函(以下、内函という)を多列多段に収納する収納棚を金庫室内に設置し、スタッカクレーン式の移載機を介して指定の内函をブースに出庫して顧客に利用させ、用済み後の内函を収納棚の指定位置に戻し入れるようにして入庫することができる。なお、収納棚に沿って水平移動する移載機には、内函を収納棚の特定位置に出し入れするための移載ユニットが垂直移動可能に搭載されており、金庫室とブースとの間には、内函を水平搬送するために、金庫室側の庫内コンベヤ、ブース側の庫外コンベヤが配設されている。また、内函は、ブース側の庫外コンベヤまで搬出されると、リフタを介してテーブル上のスライド蓋付きの開口部に押し上げられ、顧客が内部を便利に利用することができる。
【0004】
なお、以下の説明において、移載機の水平移動、移載機上の移載ユニットの垂直移動の両者をまとめて、単に移載機の水平移動、垂直移動のように称することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-149204号公報
【文献】特開2003-227271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術によるときは、貸金庫装置は、内函の入出庫動作に際して動作する一連の部材について、メンテナンスの要否に関する格別な情報提供手段がないため、適切なメンテナンスを実行して全体のサービスを良好に維持することが必ずしも容易でないという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、コンピュータを利用してメンテナンスの要否判断に有益な情報を提供し、適切なメンテナンスの実施、良好なサービスの維持向上に貢献することができる貸金庫装置の動作チェックシステムと、それを備える貸金庫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためのこの出願に係る第1発明(請求項1に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、内函の入出庫動作時に貸金庫装置の動作を把握するコンピュータを備えてなり、コンピュータは、貸金庫装置の電源投入または営業開始により、金庫室内の移載機を水平移動方向の一端から他端にまで移動させるとともに、移載機の移載ユニットを最下段位置から最上段位置にまで垂直方向に移動させ、各方向の全ストロークについて水平移動用、垂直移動用の各駆動用のモータのトルクをチェックすることをその要旨とする。
【0009】
なお、コンピュータは、内函の入出庫動作に際し、移載機の水平移動、垂直移動の各動作について、水平移動距離、垂直移動距離に基づいて設定する制限時間と比較して動作時間をチェックすることができる。
【0010】
また、コンピュータは、内函の入出庫動作に際し、移載機の移載ユニットから庫内コンベヤを経てブース側の庫外コンベヤに至る内函の搬出、庫外コンベヤから庫内コンベヤを経て移載ユニットに至る内函の搬入の各動作について動作時間をチェックしてもよく、内函の入庫動作に際し、移載機の移載ユニットから収納棚に内函を移送して格納する動作について動作時間をチェックしてもよい。
【0011】
第2発明(請求項5に係る発明をいう、以下同じ)の構成は、第1発明に係る貸金庫装置の動作チェックシステムを備えることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
かかる第1発明の構成によるときは、コンピュータは、たとえば貸金庫装置を制御する制御装置から、内函の入出庫時に作動する各部材の動作情報を入力することにより、または、各部材を直接制御して動作させることにより、各部の動作を把握することができる。一方、コンピュータは、移載機を水平移動方向の一端から他端にまで移動させ、また、移載機の移載ユニットを最下位から最上位にまで垂直方向に移動させ、それぞれの全ストロークについて各方向の駆動用のモータのトルクをチェックすることにより、駆動系の機械的な経時変化に関するデータを取得してメンテナンスの要否判断に資することができる。ただし、各モータのトルクは、たとえば、それぞれのモータ用のドライバなどの駆動回路から電気情報として取得することができる。
【0013】
コンピュータは、移載機の水平移動、垂直移動の各動作時間をチェックすることにより、各方向の駆動系の異常に加えて、たとえば移載機全体の捻り歪みのような複合的な要因に基づく機械的な異常も検知できる可能性がある。なお、内函の入出庫動作の際の移載機の水平移動距離、垂直移動距離は、内函の収納位置によって変動するから、それぞれの動作時間は、水平移動距離、垂直移動距離の関数として設定する制限時間と比較してチェックすることが好ましい。また、移載機の水平移動、垂直移動は、両者が同時に実行されてもよく、個別に実行されてもよい。
【0014】
コンピュータは、内函の搬出、搬入の各動作について動作時間をチェックすれば、これらの各動作に関与する各部材の各方向向けの動作の適否を示す情報を取得することができる。
【0015】
コンピュータは、内函の格納動作について動作時間をチェックすることにより、格納動作に関与する移載ユニットの各構成要素の動作の適否に関する情報を取得することが可能である。
【0016】
第2発明の構成によるときは、第1発明を備えることにより、第1発明の効果をそのまま実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】貸金庫装置の要部構成垂直断面図
図2】貸金庫装置の要部構成平面図
図3】移載ユニットの要部構成説明図(1)
図4】移載ユニットの要部構成説明図(2)
図5図1の要部拡大構成図
図6】貸金庫装置の電源系統図
図7】貸金庫装置の動作フローチャート(1)
図8】貸金庫装置の動作フローチャート(2)
図9】プログラムフローチャート(1)
図10】プログラムフローチャート(2)
図11図10の動作項目リスト
図12】監視項目リスト
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0019】
貸金庫装置は、金庫室Aに顧客用のブースB、Bを組み合わせてなる(図1図2)。ただし、ブースBの数は、2個に限らず、1個でもよく、3個以上でもよいので、以下、単一のブースBにのみ着目して説明する。
【0020】
金庫室Aには、一対の収納棚R、Rが対面するようにして配置されており、各収納棚Rには、柱R2 、R2 …によって支持する棚板R1 、R1 …を介し、顧客用の内函D、D…が多列多段に収納されている。また、収納棚R、Rの間には、移載機10が配設されている。移載機10は、下部の水平移動用のサーボモータ11を介し、収納棚R、Rに沿って往復水平移動することができる(図2の矢印K1 方向)。金庫室A内には、ブースBから遠い側の収納棚Rの前面に沿って図示しないラック、スライドレールが敷設され、サーボモータ11の軸端のピニオンがラックに噛合するとともに、移載機10の下面のスライダがスライドレールに摺動自在に組み合わされ、ブースBに近い側の収納棚Rに沿って移載機10の支持ローラ12、12が転動する。
【0021】
移載機10には、移載ユニット20が昇降可能に搭載されている。移載機10の上部の垂直移動用のサーボモータ13は、移載機10の垂直のボールねじ軸13aを正逆に回転駆動し、ボールねじ軸13aに組み合わせる移載ユニット20上のボールナット13bを介して移載ユニット20を上下に昇降駆動することができる。なお、移載機10には、サーボモータ13を含む上部部材を支持するために、複数本の柱材14、14…が使用され、昇降中の移載ユニット20をガイドするために、図示しないスライドレールが一部の柱材14、14に付設されている。そこで、移載機10は、サーボモータ11、13を介して水平移動、垂直移動させることにより、左右の収納棚R、R内の任意の内函Dの収納位置に移載ユニット20を位置決めして内函Dに対面させることができる。
【0022】
移載ユニット20は、左右に突出可能な各一対のツメ21、21…を有する(図3)。ただし、図3(A)は、動作状態を示す移載ユニット20の要部側面図であり、図3(B)、(C)は、それぞれ同図(A)の右半部相当の要部平面図、同図(A)相当のツメ21、21…の動作説明図である。
【0023】
ツメ21、21…は、一連のギヤ列を介して共通のステッピングモータ22により回転駆動する垂直方向のウォーム軸22a、22a…に個別に組み合わされている。左右に突出する各ツメ21、21は、共通のステッピングモータ22を介して互いに逆方向に上下に揺動可能であり(図3(A)の各矢印K2 、K2 …方向)、互いに水平の待機レベルにセット可能である(図3(C))。一方、ステッピングモータ22からツメ21、21…までの一連の部材は、ユニット21aとして一体化されており、ユニット21aは、移載ユニット20の別のステッピングモータ23により、ベルト23aを介してスライドレール23b、23b上を左右に往復水平移動可能である(図3(A)、(B)の各矢印K3 方向)。
【0024】
各収納棚Rにおいて、各内函Dを支持する棚板R1 は、左右と後端とにそれぞれ起立部を有する前端開放の浅い樋状に形成されている(図1図3(A))。棚板R1 の前端部左右には、それぞれ前向きのフックR3 が上下に揺動自在に装着されており、フックR3 は、棚板R1 上の内函Dの前端部左右にそれぞれ水平に突設するピンD1 に対して上から係合し、地震などの際に内函Dが不用意に落下したりする事故を防止する。
【0025】
移載ユニット20には、水平のローラ24、24…が複列に搭載されている(図4(A)、(B))。ただし、図4(A)は、図3(A)相当の要部側面図であり、同図(B)は、同図(A)のX矢視相当の模式断面図である。
【0026】
ローラ24、24…は、各列ごとに共通の駆動軸24aに長短の2種が装着されている。ローラ24、24…は、ツメ21、21…用のユニット21aが左右に水平移動するスペース21cの上方に配設され、共通のDCモータ25、ベルト25aを介して一斉に正逆に回転駆動することができる。
【0027】
移載ユニット20は、左または右の収納棚R内の特定の内函Dに対面させると、ツメ21、21…を水平の待機レベルにして、ユニット21aを左または右に移動させ、内函D側のツメ21、21の先端が棚板R1 上の内函Dの左右のピンD1 、D1 を越えるとツメ21、21を上方に揺動させる(たとえば図3(A)の右半部)。これにより、各ツメ21を介して対応する棚板R1 側のフックR3 が上方に揺動して内函Dが棚板R1 上から引出し可能に解放されるから、そのまま内函Dの引出し方向にユニット21aを水平移動させ、内函Dを移載ユニット20上に引き出して移載することができる。ただし、内函Dを引き出すに際し、ローラ24、24…も一斉に内函Dの引出し方向に回転駆動するものとし、したがって、内函Dは、ローラ24、24…上に円滑に移載することができる(図4)。
【0028】
一方、移載ユニット20上の内函Dを収納棚Rの所定の棚板R1 上に格納するときは、ツメ21、21…を水平の待機レベルにしたままローラ24、24…を内函Dの格納方向に回転させて内函Dを棚板R1 上に送り込み、内函Dの進行方向後方において内函D側のツメ21、21を上方に揺動させてユニット21aを格納方向に水平移動すれば、各ツメ21の先端により内函Dの対応するピンD1 を押して内函Dを棚板R1 上に押し込み、棚板R1 側のフックR3 を押し上げて内函Dを定位置に格納することができる(たとえば図3(A)の左半部)。その後、ツメ21、21…を待機レベルに戻してフックR3 をピンD1 に係合させ、ユニット21aを移載ユニット20上に待避させればよい。
【0029】
金庫室A内のブースB側の収納棚Rには、内函Dを水平搬送する庫内コンベヤ31が組み込まれている(図1)。庫内コンベヤ31は、駆動用のDCモータ32を介して正逆に駆動する左右一対のコンベヤベルトを有し、庫内コンベヤ31の上方には、内函D用の左右一対のガイド板33、33が配置されている。ただし、図1には、ガイド板33、33の一方のみが図示されている。また、庫内コンベヤ31のブースB側には、入出庫扉34が配設されており、入出庫扉34は、たとえばDCモータ35によって駆動するカムフォロワ付きのアーム機構を介して上下に開閉駆動することができる。
【0030】
ブースB内には、顧客用のテーブルB1 が設置されている(図1図2)。テーブルB1 の前方には、操作用のモニタB2 が設けられ、テーブルB1 上には、認証用のカードリーダB3 が置かれている。さらに、テーブルB1 上には、顧客が内函Dを利用するための開口部B4 が形成されている。
【0031】
テーブルB1 内には、金庫室A側の庫内コンベヤ31と連続して内函Dを双方向に水平搬送する庫外コンベヤ41が組み込まれている(図1図5)。庫外コンベヤ41は、庫内コンベヤ31と同様に、駆動用のDCモータ42を介して正逆に回転する左右一対のコンベヤベルトを有する。テーブルB1 の開口部B4 の下方には、ガイドロッド43a、43a付きのリフタ43が配設され、リフタ43は、ACモータ44により駆動するラック機構44aを介して昇降駆動する。また、テーブルB1 の開口部B4 には、水平に開閉するスライド蓋45が配設されており、スライド蓋45は、DCモータ46、ベルト46aを介して開閉する。
【0032】
リフタ43は、庫外コンベヤ41上の内函Dを開口部B4 の直下にまで上昇させる(図5の矢印K4 方向)。そこで、スライド蓋45を開放して、内函Dの蓋D2 を上方に開くことにより(同図の矢印K5 方向)、開口部B4 を介して内函Dの内部が利用可能である。また、蓋D2 を閉じてスライド蓋45を閉じると、リフタ43を介して内函Dを庫外コンベヤ41上に下降させることができる。なお、図5の内函Dは、図1の左右の収納棚R、Rのいずれの側に収納されるかにより、互いに異なる位置に突設されるピンD1 、D1 の双方が図示されている。
【0033】
貸金庫装置内の商用電源AC、ACによる電源系統図を図6に示す。ただし、図6には、移載機10、金庫室A、ブースB内の各駆動用のモータに加えて、移載機10の水平移動、垂直移動用の各サーボモータ11、13のドライバ16、17、移載機10用の制御装置15、全体制御用の無停電電源装置51、制御装置52、貸金庫装置の運転データなどを記録する営業用のコンピュータ53が図示されている。なお、無停電電源装置51、制御装置15、52には、それぞれバックアップ用の電池が内蔵されている。
【0034】
貸金庫装置による顧客用の内函Dの出庫動作、入庫動作は、それぞれ図7図8の概略フローチャートのとおりである。
【0035】
ブースBに入室した顧客がカードリーダB3 に認証用のIDカードを投入して認証が成立すると、図7の出庫動作が開始される。まず、移載機10が水平移動、垂直移動して移載ユニット20を一方の収納棚R内の顧客の内函Dの位置に移動させるとともに(図7のステップ(1)、以下単に(1)のように記す)、入出庫扉34を開放する。ただし、移載機10を水平移動、垂直移動させるときは、それに先き立って、常に、移載ユニット20上のツメ21、21…を待機レベルにするとともに、ツメ21、21…のいずれも移載ユニット20の左右に突出しない位置にユニット21aを水平移動させて退避させるものとする。
【0036】
次に、移載ユニット20を介し、内函Dを収納棚Rの棚板R1 上から引き出して移載ユニット20のローラ24、24…上に移載する(2)。
【0037】
つづいて、移載機10を庫内コンベヤ31の位置に水平移動、垂直移動させ(3)、その後、移載ユニット20のローラ24、24…、庫内コンベヤ31、庫外コンベヤ41を一斉に回転駆動して移載ユニット20上の内函DをブースBの開口部B4 の下側にまで一挙に搬出する(4)。次に、リフタ43を介して内函Dを開口部B4 の直下にまで上昇させるとともに(5)、入出庫扉34を閉じ、つづいて、スライド蓋45を開くことにより(6)、顧客は、蓋D2 を開いて内函Dの内部を利用することができる。
【0038】
顧客は、内函Dの利用が終了すると、蓋D2 を閉じて返却指示を発信し、図8の入庫動作を開始させる。
【0039】
まず、スライド蓋45が閉じ(図8のステップ(1)、以下単に(1)のように記す)、つづいて、移載機10を庫内コンベヤ31の位置に水平移動、垂直移動させるとともに(2)、リフタ43を介して内函Dを庫外コンベヤ41上に下降させ、入出庫扉34を開放する。次に、庫外コンベヤ41、庫内コンベヤ31、移載ユニット20のローラ24、24…を一斉に回転駆動して内函Dを移載ユニット20上に一挙に搬入し(3)、移載機10を内函Dの収納位置に水平移動、垂直移動して、入出庫扉34を閉じる(4)。その後、移載ユニット20を介して内函Dを棚板R1 上に格納する(5)。
【0040】
貸金庫装置の動作チェックシステムは、たとえば貸金庫装置の全体制御用の制御装置52、移載機10用の制御装置15内の図示しないコンピュータに対し、適宜分散してソフトウェアとして組み込むことができる。なお、営業用のコンピュータ53には、動作チェックシステムのチェック結果を含む運転データ記録用の必要な情報が、たとえば有線または無線のデータ回線を介して伝送されるものとする。
【0041】
貸金庫装置の動作チェックシステムは、少なくとも図9図10のフローチャートのプログラムを含む。
【0042】
図9のプログラムは、貸金庫装置の電源投入、または、その後の営業開始とともにスタートする。プログラムは、まず、移載機10を収納棚R、Rの最手前の列から最奥の列まで水平移動させるとともに(図9のプログラムステップ(1)、以下単に(1)のように記す)、移載ユニット20を最下段位置から最上段位置にまで垂直移動させ、このときの水平移動用、垂直移動用の各サーボモータ11、13のトルクを全ストロークについてチェックし(2)、たとえばトルクが制御値を超えているときは、外部に警報を発信することができる(3)。なお、トルクの異常は、あらかじめ設定する制御値を超えているとき以外に、たとえば前回から一定以上増加したことに着目して判断してもよい。
【0043】
一方、図10のプログラムは、図7図8に示す内函Dの出庫動作、入庫動作中に含まれる主要動作の動作時間をチェックする。なお、ここで取り扱う主要動作としては、たとえば図11の各行に例示するとおりである。ただし、図11の1、2行の「移載機水平移動」、「移載機垂直移動」は、図7のステップ(1)、(3)、図8のステップ(2)、(4)において、それぞれ一括して「移載機移動」と表現されている。
【0044】
図10のプログラムは、図11のいずれかの動作項目の開始指令とともにスタートする。
【0045】
プログラムは、まず、指定の動作を実行し(図10のプログラムステップ(1)、以下単に(1)のように記す)、動作の開始から終了までの動作時間をチェックし(2)、正常でないと判断されると外部に警報を発信する(3)。なお、動作時間のチェックは、あらかじめ設定する制限時間と比較すればよいが、たとえば移載機10の水平移動、垂直移動の各動作については、それぞれ移動距離によって動作時間が当然に変動するから、水平移動距離、垂直移動距離の関数として算出される制限時間を設定することが好ましい(図11の1、2行)。ただし、図10のプログラムは、他の制御装置などによって開始され、終了される特定の動作の開始によってスタートさせ、プログラムステップ(1)は、その動作の開始、終了の各情報を検知することに代えてもよい。
【0046】
なお、貸金庫装置の動作チェックシステムには、たとえば図12に例示する各監視項目の監視機能を含んでいてもよい。これらの各項目の異常や設定レベルからの逸脱等が検知されると、図9図10の各プログラムステップ(3)と同様にして、その情報を外部に発信し、たとえば運転データ記録用の営業用コンピュータ53内にデータを集積して以後の参照に備えることができる。
【0047】
以上の説明において、移載機10は、ボールねじ軸13aを使用するに代えて、ワイヤロープを介してキャリッジを昇降自在に吊下する一般的なスタッカクレーン式であってもよい。また、移載ユニット20は、たとえば特開2006-328753号公報に開示のように、収納棚R、Rに沿う長方形のキャリッジ上を前後左右に水平移動する形式であってもよく、ツメ21、21…に代えて、内函Dの前面の下向きのフックに係脱する昇降式の係合部材を使用する形式であってもよい。なお、移載機10の水平移動用、垂直移動用のサーボモータ11、13は、それぞれ任意の形式の一般的な駆動用のモータを使用してもよく、移載ユニット20上のステッピングモータ22、23も、それぞれ他の任意の形式の駆動用のモータに代えてもよい。
【0048】
また、庫内コンベヤ31、入出庫扉34や、庫外コンベヤ41、リフタ43、スライド蓋45などは、図示以外の任意の形式を使用してもよい。さらに、移載機10用の制御装置15は、全体制御用の制御装置52に統合してもよい。
【0049】
一方、貸金庫装置の動作チェックシステムは、制御装置52内のコンピュータに集中して組み込んでもよく、制御装置15、52とは別体の独立のコンピュータ上に構成してもよい。また、貸金庫装置の動作チェックシステムは、たとえばインターネットなどの通信回線を介し、外部に発信する情報を遠隔地のオペレータに向けて発信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、全自動式の貸金庫装置の動作状況をチェックして必要なメンテナンス情報を提供することができるから、既設、新設の貸金庫装置に対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
A…金庫室
R…収納棚
B…ブース
D…内函
10…移載機
20…移載ユニット
31…庫内コンベヤ
41…庫外コンベヤ

特許出願人 株式会社 オカムラ
株式会社 富士精工本社
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12