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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20220706BHJP
   A41B 1/08 20060101ALI20220706BHJP
   A41D 27/10 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
A41D27/00 Z
A41B1/08 E
A41B1/08 Z
A41D27/10 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018168931
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020041231
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591160811
【氏名又は名称】山喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山内 知子
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142300(WO,A1)
【文献】実開昭48-12013(JP,U)
【文献】実開昭56-39402(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12、20/00、27/00-27/28
A41B1/00、1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と、後身頃と、袖を有するシャツであって、
前記前身頃と前記後身頃は、生地が脇線を介して接続されており、
前記袖は、筒状であって生地の周方向の一端側と他端側が袖線を介して接続されており、
以下の(1)又は(2)の条件を満たすことを特徴とするシャツ。
(1)前記前身頃は、前正面身頃と、前記前正面身頃とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地の脇正面身頃を有し、前記後身頃は、後背面身頃と、前記後背面身頃とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地の脇背面身頃を有し、前記脇正面身頃と前記脇背面身頃が接続されて前記脇線を構成している。
(2)前記袖は、本体袖部と、一端側袖部と、他端側袖部を有し、前記一端側袖部及び前記他端側袖部が前記本体袖部とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地で構成されており、さらに、前記一端側袖部と前記他端側袖部が接続されて袖線を構成している。
【請求項2】
前記(1)の条件及び前記(2)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
前記脇線と前記袖線が連続していることを特徴とする請求項2に記載のシャツ。
【請求項4】
少なくとも前記(1)の条件を満たすものであり、
前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、
前記経糸及び前記緯糸のそれぞれ延び方向が前記脇線の延び方向に対して交差するものであって、前記脇線の延び方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツ。
【請求項5】
前記前正面身頃及び前記後背面身頃は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、
前記前正面身頃及び前記後背面身頃の経糸と緯糸の延び方向は、前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃の経糸と緯糸の延び方向と異なっていることを特徴とする請求項4に記載のシャツ。
【請求項6】
少なくとも前記(1)の条件を満たすものであり、
前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃のうち少なくとも一方は、機能性生地で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツ。
【請求項7】
前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃は、最大熱吸収速度が0.2W/cm2以上の生地で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のシャツ。
【請求項8】
少なくとも前記(2)の条件を満たすものであり、
前記一端側袖部と前記他端側袖部は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、
前記経糸及び前記緯糸のそれぞれ延び方向が前記袖線の延び方向に対して交差するものであって、前記袖線の延び方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツ。
【請求項9】
前記本体袖部は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、
前記本体袖部の経糸と緯糸の延び方向は、前記一端側袖部と前記他端側袖部の経糸と緯糸の延び方向と異なっていることを特徴とする請求項8に記載のシャツ。
【請求項10】
少なくとも前記(2)の条件を満たすものであり、
前記一端側袖部及び前記他端側袖部の少なくとも一方は、機能性生地で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツ。
【請求項11】
前記一端側袖部と前記他端側袖部は、最大熱吸収速度が0.2W/cm2以上の生地で構成されていることを特徴とする請求項10に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレスシャツやカジュアルシャツ等のシャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からドレスシャツやカジュアルシャツ等のシャツは、前身頃、後身頃、袖、衿、肩ヨーク等を構成する生地を縫い合わせて形成される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-150097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、シャツの高性能化からシャツに伸縮機能や冷却機能などの所望の機能を付加することが求められている。従来のシャツは、所望の機能を付加する際には、前身頃や後身頃、袖の生地全体を変更していた。しかしながら、生地全体を変更すると、見栄えや着心地が大きく変わることが多く、違和感があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、見栄えを大きく変更せずに、容易に機能を付加できるシャツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、シャツにおける通常使用の際に、脇線や袖線の部分が腕に隠れている場合が多く、他の部分に比べて目立たないことに着目し、脇線部分や袖線部分に機能を付加させることで機能を付加することによる見栄えの低下を抑制できると考えた。
【0007】
このような考えのもと導き出された請求項1に記載の発明は、前身頃と、後身頃と、袖を有するシャツであって、前記前身頃と前記後身頃は、生地が脇線を介して接続されており、前記袖は、筒状であって生地の周方向の一端側と他端側が袖線を介して接続されており、以下の(1)又は(2)の条件を満たすことを特徴とするシャツである。
(1)前記前身頃は、前正面身頃と、前記前正面身頃とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地の脇正面身頃を有し、前記後身頃は、後背面身頃と、前記後背面身頃とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地の脇背面身頃を有し、前記脇正面身頃と前記脇背面身頃が接続されて前記脇線を構成している。
(2)前記袖は、本体袖部と、一端側袖部と、他端側袖部を有し、前記一端側袖部及び前記他端側袖部が前記本体袖部とは異なる種類の生地又は裁ち方が異なる生地で構成されており、さらに、前記一端側袖部と前記他端側袖部が接続されて袖線を構成している。
【0008】
本発明の構成によれば、(1)の条件を満たす場合において、脇正面身頃と前正面身頃との生地の種類又は裁ち方の違いや、脇背面身頃と後背面身頃との生地の種類又は裁ち方の違いにより、脇正面身頃及び脇背面身頃に所定の機能を付与することができる。また本発明の構成によれば、脇線を脇正面身頃と脇背面身頃で形成しており、脇正面身頃と脇背面身頃が前方及び後方から見えにくい位置に配されているので、生地の種類又は裁ち方の違いが目立ちにくい。
同様に本発明の構成によれば、(2)の条件を満たす場合において、一端側袖部及び他端側袖部と本体袖部との生地の種類又は裁ち方の違いにより、一端側袖部及び他端側袖部に所定の機能を付与することができる。また本発明の構成によれば、袖線を一端側袖部及び他端側袖部で形成しており、一端側袖部及び他端側袖部が前方及び後方から見えにくい位置に配されているので、生地の種類又は裁ち方の違いが目立ちにくい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記(1)の条件及び前記(2)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のシャツである。
【0010】
本発明の構成によれば、より機能を発揮できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記脇線と前記袖線が連続していることを特徴とする請求項2に記載のシャツである。
【0012】
本発明の構成によれば、通常のシャツと同様、脇線と袖線が連続しているので、通常のシャツと同様に脇線と袖線を形成できる。そのため、通常のシャツと同様の工程で脇線と袖線を形成できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、少なくとも前記(1)の条件を満たすものであり、前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、前記経糸及び前記緯糸のそれぞれ延び方向が前記脇線の延び方向に対して交差するものであって、前記脇線の延び方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツである。
【0014】
本発明の構成によれば、脇線の延び方向に伸縮可能であるため、腕を上げたときに、脇線方向に突っ張りにくく、動きやすい。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記前正面身頃及び前記後背面身頃は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、前記前正面身頃及び前記後背面身頃の経糸と緯糸の延び方向は、前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃の経糸と緯糸の延び方向と異なっていることを特徴とする請求項4に記載のシャツである。
【0016】
本発明の構成によれば、脇線方向において脇正面身頃及び脇背面身頃が前正面身頃及び後背面身頃に対して相対的に伸びるため、腕を上げたときにシルエットの崩れを少なくできる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、少なくとも前記(1)の条件を満たすものであり、前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃のうち少なくとも一方は、機能性生地で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツである。
【0018】
ここでいう「機能性生地」とは、ストレッチ生地、速乾性生地、撥水性生地、吸水性生地、UV保護生地、防臭生地、防水性生地などの所定の機能をもつ生地をいう。
【0019】
本発明の構成によれば、機能性生地を使用しているため、所定の機能を発揮できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記脇正面身頃及び前記脇背面身頃は、最大熱吸収速度が0.2W/cm2以上の生地で構成されていることを特徴とする請求項6に記載のシャツ。
【0021】
ここでいう「最大熱吸収速度(q-max)」は、単位面積あたりに移動する熱流量であり、室温+20℃に加熱したセンサーと対象布帛を接触させたときの瞬間的な熱の移動量である。「最大熱吸収速度(q-max)」は、例えば、カトーテック社製の精密迅速熱物性測定装置サーモラボIIB(KES-F7)を用いて測定できる。
【0022】
本発明の構成によれば、最大熱吸収速度が高いので、肌が接触したときに、涼しさを感じることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、少なくとも前記(2)の条件を満たすものであり、前記一端側袖部と前記他端側袖部は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、前記経糸及び前記緯糸のそれぞれ延び方向が前記袖線の延び方向に対して交差するものであって、前記袖線の延び方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツである。
【0024】
本発明の構成によれば、袖線の延び方向に伸縮可能であるため、肩を上げたときに、袖線方向に突っ張りにくく、動きやすい。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記本体袖部は、経糸と緯糸が交差するように織られた生地で構成されるものであり、前記本体袖部の経糸と緯糸の延び方向は、前記一端側袖部と前記他端側袖部の経糸と緯糸の延び方向と異なっていることを特徴とする請求項8に記載のシャツである。
【0026】
本発明の構成によれば、袖線方向において一端側袖部と他端側袖部が本体袖部に対して相対的に伸びるため、腕を上げたときにシルエットの崩れを少なくできる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、少なくとも前記(2)の条件を満たすものであり、前記一端側袖部及び前記他端側袖部の少なくとも一方は、機能性生地で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャツである。
【0028】
本発明の構成によれば、機能性生地を使用しているため、所定の機能を発揮できる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、前記一端側袖部と前記他端側袖部は、最大熱吸収速度が0.2W/cm2以上の生地で構成されていることを特徴とする請求項10に記載のシャツである。
【0030】
本発明の構成によれば、最大熱吸収速度が高いので、肌が接触したときに、涼しさを感じることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシャツによれば、見栄えを大きく変更せずに、容易に機能を付加できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係るシャツを模式的に示した説明図であり、(a)は正面図を表し、(b)は背面図を表す。
図2図1のシャツの袖を上げた状態の側面図である。
図3図2の脇線付近に注目した側面図である。
図4図2の袖線付近に注目した側面図である。
図5図1のシャツの前身頃及び後身頃の説明図であり、(a)は脇線付近を広げた図であり、(b)は(a)の断面斜視図である。
図6図1のシャツの袖の説明図であり、(a)は袖を広げた図であり、(b)は(a)の断面斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るシャツを模式的に示した説明図であり、(a)は正面図を表し、(b)は背面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0034】
本発明の第1実施形態のシャツ1は、図1のように長袖のドレスシャツであり、主要構成部位として、前身頃2a,2bと、後身頃5と、肩ヨーク6と、袖7a,7bと、衿8を備え、これらの各部分が裁断した布状の生地を縫製することで形成されている。また、シャツ1は、前身頃2a,2bと後身頃5が周方向に接続されて脇線10,10を形成しており、袖7a,7bが筒状に丸められて袖線11,11を形成している。
そして、本実施形態のシャツ1は、脇線10,10付近の生地及び袖線11,11付近の生地に特徴の一つがある。
以下、このことを踏まえながら、シャツ1について詳細に説明する。
【0035】
前身頃2a,2bは、外郭形状が従来の前身頃と同様のものであり、複数の生地で構成されているところが従来の前身頃と異なる。すなわち、前身頃2a,2bは、前正面身頃15と、脇正面身頃16から構成されている。
前正面身頃15は、前身頃2a,2bの正面側の大部分を占める部位であり、前身頃2a,2bの面積の60%以上を占めている。
前正面身頃15は、図3のように、前正面身頃形成生地20で構成されている。
前正面身頃形成生地20は、経糸25と緯糸26が交差(本実施形態では直交)した平織り生地であり、繊維自体にストレッチ性をもたない布帛生地である。
前正面身頃形成生地20は、経取り又は緯取りされている。
【0036】
脇正面身頃16は、図3のように前正面身頃15の端部と接続される部位であり、前正面身頃15の縁に沿って幅をもって延びる部位である。
脇正面身頃16の幅(周方向の長さ)は、3cm以上8cm以下であることが好ましい。この範囲であれば、裁縫しやすく、通常使用時に脇正面身頃16が目立ちにくい。
【0037】
脇正面身頃16は、図3のように、前正面身頃形成生地20と同一又は同一種類の生地であって、裁ち方が異なる脇正面身頃形成生地30によって構成されている。
脇正面身頃形成生地30は、バイアス取りされた生地であり、経糸25と緯糸26が斜め方向に延びており、隣接する経糸25,25と隣接する緯糸26,26とでなす四角形の対角線の方向にストレッチ性を有している。
本実施形態では、脇正面身頃形成生地30は、正バイアス取りされており、経糸25と緯糸26が互いに直交し、緯糸26が脇線10,10の延び方向に対して45度の角度で傾斜している。
【0038】
後身頃5は、周方向の両端部が着用者の胴体を囲むように前身頃2a,2bと接続される部位である。後身頃5は、外郭形状が従来の後身頃と同様のものであり、複数の生地で構成されているところが従来の後身頃と異なる。すなわち、後身頃5は、図1のように、後背面身頃35と、脇背面身頃36a,36bから構成されている。
後背面身頃35は、後身頃5の大部分を占める部位であり、後身頃5の面積の60%以上を占めている。
後背面身頃35は、図3のように、後背面身頃形成生地40で構成されている。
後背面身頃形成生地40は、前正面身頃形成生地20と同一又は同一種類の生地であって、経糸25と緯糸26が交差(本実施形態では直交)した平織り生地であり、繊維自体にストレッチ性をもたない布帛生地である。すなわち、後背面身頃形成生地40は、前正面身頃形成生地20と同様、経取り又は緯取りされている。
【0039】
脇背面身頃36a,36bは、周方向の一方の端部が後背面身頃35の周方向の両端部のそれぞれと接続され、他方の端部が前身頃2a,2bの脇正面身頃16,16と接続される部位である。脇背面身頃36a,36bは、後背面身頃35の縁に沿って幅をもって延びている。
脇背面身頃36a,36bの幅(周方向の長さ)は、脇正面身頃16の幅と同程度であり、3cm以上8cm以下であることが好ましい。この範囲であれば、裁縫しやすく、通常使用時に脇背面身頃36a,36bが目立ちにくい。
【0040】
脇背面身頃36a,36bは、図3のように、後背面身頃形成生地40と同一又は同一種類の生地であって、裁ち方が異なる脇背面身頃形成生地50によって構成されている。
脇背面身頃形成生地50は、バイアス取りされた生地であり、経糸25と緯糸26が斜め方向に延びており、隣接する経糸25,25と隣接する緯糸26,26とでなす四角形の対角線の方向にストレッチ性を有している。
本実施形態では、脇背面身頃形成生地50は、正バイアス取りされており、経糸25と緯糸26が互いに直交し、緯糸26が脇線10,10の延び方向に対して45度の角度で傾斜している。
【0041】
肩ヨーク6は、図1(b)のように、肩から背中にかけての切り替え部であり、前身頃2a,2bと後身頃5と袖7a,7bと衿8のそれぞれを接続する部位である。
肩ヨーク6は、前身頃2a,2b及び後身頃5とともに環状のアームホール12(図2参照)を構成しており、アームホール12が袖7a,7bと接続されている。
【0042】
袖7a,7bは、前身頃2a,2b、後身頃5、及び肩ヨーク6で構成されるアームホール12に接続され着用者の腕を囲んで覆う筒状部位である。
袖7a,7bは、外郭形状が従来の袖と同様のものであり、複数の生地で構成されているところが従来の袖と異なる。すなわち、袖7a,7bは、図1のように、本体部70と、剣ボロ71と、カフス72を備えている。
【0043】
本体部70は、図1のように、本体袖部75と、一端側袖部76と、他端側袖部77を備えている。
本体袖部75は、本体部70の大部分を占める部位であり、袖7a,7bの面積の60%以上を占めている。
本体袖部75は、図6(a)のように、袖丈方向の端部(アームホール12とは反対側の端部)から中間部にかけて延びた切り込み部74を備えている。
本体袖部75は、図4のように、本体袖部形成生地80で構成されている。
本体袖部形成生地80は、前正面身頃形成生地20と同一又は同一種類の生地であって、経糸25と緯糸26が交差(本実施形態では直交)した平織り生地であり、繊維自体にストレッチ性をもたない布帛生地である。すなわち、本体袖部形成生地80は、前正面身頃形成生地20と同様、経取り又は緯取りされている。
【0044】
一端側袖部76は、図4のように、本体袖部75の周方向の一方の端部に接続され、幅をもって袖丈方向に延びる帯状部位である。
一端側袖部76の幅(周方向の長さ)は、3cm以上8cm以下であることが好ましい。この範囲であれば、裁縫しやすく、通常使用時に一端側袖部76が目立ちにくい。
【0045】
一端側袖部76は、図4のように、本体袖部形成生地80と同一又は同一種類の生地であって、裁ち方が異なる一端側袖部形成生地90によって構成されている。
一端側袖部形成生地90は、バイアス取りされた生地であり、経糸25と緯糸26が斜め方向に延びており、隣接する経糸25,25と隣接する緯糸26,26とでなす四角形の対角線の方向にストレッチ性を有している。
本実施形態では、一端側袖部形成生地90は、正バイアス取りされており、経糸25と緯糸26が互いに直交し、緯糸26が袖線11,11の延び方向に対して45度の角度で傾斜している。
【0046】
他端側袖部77は、本体袖部75の周方向の他方の端部に接続され、幅をもって袖丈方向に延びる帯状部位である。
他端側袖部77の幅(周方向の長さ)は、3cm以上8cm以下であることが好ましい。この範囲であれば、裁縫しやすく、通常使用時に他端側袖部77が目立ちにくい。
【0047】
他端側袖部77は、本体袖部形成生地80と同一又は同一種類の生地であって、裁ち方が異なる他端側袖部形成生地91によって構成されている。
他端側袖部形成生地91は、一端側袖部形成生地90と同様、バイアス取りされた生地であり、経糸25と緯糸26が斜め方向に延びており、隣接する経糸25,25と隣接する緯糸26,26とでなす四角形の対角線の方向にストレッチ性を有している。
本実施形態では、他端側袖部形成生地91は、正バイアス取りされており、経糸25と緯糸26が互いに直交し、緯糸26が袖線11,11の延び方向に対して45度の角度で傾斜している。
【0048】
剣ボロ71は、本体袖部75の切り込み部74の縁部を覆うように取り付けられる部位である。
カフス72は、袖7a,7bの袖口を構成する部位である。
【0049】
衿8は、図1のように、肩ヨーク6の上端部及び前身頃2a,2bの上端部に跨って取り付けられ、着用者の首の周囲を囲む部位である。
【0050】
続いて、本実施形態のシャツ1の各部位の位置関係について説明する。
【0051】
前身頃2a,2bは、図1(a)のように、一方の端部に前立て17が設けられており、他方の端部に後身頃5が接続されている。
前身頃2a,2bは、図2のように、前立て17側から後身頃5側に向けて前正面身頃15、脇正面身頃16の順に接続されている。前身頃2a,2bは、図5のように脇正面身頃16の端部と前正面身頃15の端部がかがり縫いされており、その内側で脇正面身頃16と前正面身頃15が環縫いにより縫製されて縫い目60が形成されている。
【0052】
後身頃5は、図1(b)のように、後背面身頃35が肩ヨーク6の下端部に接続されており、後背面身頃35の周方向の端部に脇背面身頃36a,36bが接続されている。すなわち、脇背面身頃36a,36bは、肩ヨーク6に接続されていない。
【0053】
後身頃5は、前身頃2a側から前身頃2b側に向けて、脇背面身頃36a、後背面身頃35、及び脇背面身頃36bの順に接続されている。後身頃5は、図5のように脇背面身頃36a,36bの端部と後背面身頃35の両端部がそれぞれかがり縫いされており、その内側で脇背面身頃36a,36bと後背面身頃35が環縫いにより縫製されて縫い目61,62が形成されている。
前身頃2a,2bの脇正面身頃16,16は、後身頃5の脇背面身頃36a,36bと接続されて脇線10,10が形成されており、脇線10,10は、アームホール12から下方に向けて延びている。
脇正面身頃16,16の端部と脇背面身頃36a,36bの端部は、図5のように環縫いにより縫製されて縫い目63,64が形成されている。
【0054】
袖7a,7bは、図1のように、本体部70が袖丈方向の一方の端部がアームホール12に接続され、他方の端部がカフス72に接続されている。袖7a,7bは、袖丈方向の本体部70の一方の端部がアームホール12に接続されて縫製されており、他方の端部がカフス72に接続されて縫製されている。
本体部70は、図2のように、一端側袖部76が本体袖部75の周方向の一方の端部に接続されており、他端側袖部77が本体袖部75の周方向の他方の端部に接続されている。さらに本体部70は、一端側袖部76と他端側袖部77が接続されて袖線11を形成しており、袖線11は、アームホール12から袖丈方向に延びている。
本体部70は、図6(b)のように、一端側袖部76の端部と本体袖部75の端部がかがり縫いされており、その内側で一端側袖部76と本体袖部75が環縫いにより縫製されて縫い目65が形成されている。同様に、本体部70は、他端側袖部77の端部と本体袖部75の端部がかがり縫いされており、その内側で他端側袖部77と本体袖部75が環縫いにより縫製されて縫い目66が形成されている。本体部70は、一端側袖部76の端部と他端側袖部77の端部がかがり縫いされており、その内側で一端側袖部76と他端側袖部77が環縫いにより縫製されて縫い目67が形成されている。
【0055】
袖線11は、端部の位置が脇線10の端部の位置と概ね一致しており、脇線10と連続している。
【0056】
本実施形態のシャツ1によれば、脇背面身頃36a,36b及び袖部76,77の生地をバイアス取りにすることで脇線方向及び袖線方向に伸縮可能となっている。そのため、腕を伸ばしたり、曲げたりする際に、脇背面身頃36a,36bの生地や袖部76,77の生地が伸び、窮屈に感じにくく、快適な着心地となる。
また、本実施形態のシャツ1によれば、脇背面身頃36a,36b及び袖部76,77の生地を正バイアス取りしているため、脇線方向及び袖線方向に加えて脇線方向及び袖線方向に対する直交方向にも伸縮可能となっているため、より快適な着心地となる。
【0057】
本実施形態のシャツ1によれば、脇背面身頃36a,36b及び袖部76,77が脇線10,10及び袖線11,11に沿って延びているため、前正面身頃15や本体袖部75によって脇背面身頃36a,36b及び袖部76,77の大部分が隠れ、見えにくい。
【0058】
本実施形態のシャツ1によれば、前身頃2aの脇正面身頃16と後身頃5の脇背面身頃36a、前身頃2bの脇正面身頃16と後身頃5の脇背面身頃36bをそれぞれ環縫いによって縫製して脇線10,10を形成している。そのため、胴回りが伸縮しやすく、快適な着心地となる。
同様に、本実施形態のシャツ1によれば、袖7a,7bの一端側袖部76と本体袖部75、本体袖部75と他端側袖部77をそれぞれ環縫いによって縫製して袖線11,11を形成しているため、袖回りが伸縮しやすく、快適な着心地となる。
【0059】
本実施形態のシャツ1によれば、前身頃2a,2b及び後身頃5の外郭形状が従来の前身頃及び後身頃と同様の形状である。すなわち、脇線10,10の位置が従来の脇線の位置と同様の位置にあるため、あらかじめ前身頃2a,2b及び後身頃5を形成することで、これまでの従来の製造工程と同様にして前身頃2a,2b及び後身頃5を接続できる。
同様に、袖7a,7bの本体袖部75の外郭形状が従来の本体袖部と同様の形状である。すなわち、袖線11の位置が従来の袖線の位置と同様の位置にあるため、あらかじめ袖7a,7bの本体袖部75を形成することで、これまでの従来の製造工程と同様にして袖7a,7bの本体袖部75を筒状に接続できる。
【0060】
続いて、第2実施形態のシャツ100について説明する。なお、第1実施形態のシャツ1と同様の構成については、同一の付番を付して説明を省略する。
【0061】
第2実施形態のシャツ100は、図7で示される脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b及び袖部176,177の生地が第1実施形態のシャツ1の脇正面身頃116,116、脇背面身頃36a,36b及び袖部76,77の生地と異なる。
具体的には、シャツ100の脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177の生地は、他の生地と異なる生地を使用しており、接触冷感機能を有する機能性生地を使用している。
脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177の生地は、最大熱吸収速度(q-max)が0.2W/cm2以上の生地で構成されていることが好ましく、0.3W/cm2以上の生地で構成されていることがより好ましく、0.4W/cm2以上の生地で構成されていることがさらに好ましい。
【0062】
本実施形態のシャツ100によれば、脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177を接触冷感の生地で構成しているため、猛暑でもひんやりとした着心地となる。
【0063】
上記した第1実施形態では、脇正面身頃形成生地30、脇背面身頃形成生地50、及び袖部形成生地90,91として、繊維自体にストレッチ性がない布帛生地であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタン製繊維を含ませることによって、繊維自体にもストレッチ性を持たせてもよい。
【0064】
上記した第1実施形態では、前正面身頃15と脇正面身頃16とで同一色の生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。前正面身頃15と脇正面身頃16とで異なる色の生地を使用してもよい。
同様に、後背面身頃35と脇背面身頃36a,36bとで同一色の生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。後背面身頃35と脇背面身頃36a,36bとで異なる色の生地を使用してもよい。
本体袖部75と一端側袖部76と他端側袖部77とで同一色の生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。本体袖部75と一端側袖部76と他端側袖部77とで異なる色の生地を使用してもよい。
【0065】
上記した第2実施形態では、脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177の生地として接触冷感機能をもつ機能性生地を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177の生地として他の機能をもつ機能性生地を使用してもよい。例えば、脇正面身頃116,116、脇背面身頃136a,136b、及び袖部176,177の生地としてストレッチ生地、速乾性生地、撥水性生地、吸水性生地、UV保護生地、防臭生地、及び防水性生地の少なくとも一つの生地を使用してもよい。
【0066】
上記した第2実施形態では、脇正面身頃116(116)と脇背面身頃136a(136b)の双方に機能性生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。脇正面身頃116(116)と脇背面身頃136a(136b)のうち一方にのみ機能性生地を使用してもよい。
同様に一端側袖部176と他端側袖部177の双方に機能性生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。一端側袖部176と他端側袖部177のうち一方にのみ機能性生地を使用してもよい。
【0067】
上記した第2実施形態では、脇正面身頃116(116)と脇背面身頃136a(136b)の双方に同一の機能性生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。脇正面身頃116(116)と脇背面身頃136a(136b)とで使用する機能性生地を異ならせてもよい。
同様に、一端側袖部176と他端側袖部177の双方に同一の機能性生地を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。一端側袖部176と他端側袖部177とで使用する機能性生地を異ならせてもよい。
【0068】
上記した実施形態では、各生地20,30,40,50,80,90,91は、平織りの生地であったが、本発明はこれに限定されるものではない。各生地20,30,40,50,80,90,91は、綾織りの生地であってもよいし、朱子織の生地であってもよい。
【0069】
上記した実施形態では、脇線10と袖線11が連続していたが、本発明はこれに限定されるものではない。脇線10は袖線11に対してわずかにずれていてもよい。
【0070】
上記した実施形態では、シャツ1として長袖のドレスシャツの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。シャツ1は、カジュアルシャツであってもよい。また、シャツ1は、半袖シャツであってもよい。
【0071】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0072】
1 シャツ
2a,2b 前身頃
3 衿
5 後身頃
6 肩ヨーク
7a,7b 袖
8 衿
10 脇線
11 袖線
15 前正面身頃
16 脇正面身頃
20 前正面身頃形成生地
25 経糸
26 緯糸
30 脇正面身頃形成生地
35 後背面身頃
36a,36b 脇背面身頃
40 後背面身頃形成生地
50 脇背面身頃形成生地
70 本体部
75 本体袖部
76 一端側袖部
77 他端側袖部
80 本体袖部形成生地
90 一端側袖部形成生地
91 他端側袖部形成生地
100 シャツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7