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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】水素蓄圧器
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018187193
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020056457
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋流
(72)【発明者】
【氏名】細矢 隆史
(72)【発明者】
【氏名】荒島 裕信
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158243(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178092(WO,A1)
【文献】特開2017-133638(JP,A)
【文献】特開2017-141919(JP,A)
【文献】実開昭60-54384(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00-13/24
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水素が充填されるシリンダと、
前記シリンダの開口端に形成された雌ねじ部にねじ止めされた蓋と、
前記シリンダの内周面と前記蓋の外周面との間に設けられた円環状の樹脂製シール部材と、を備え、
前記シリンダの前記雌ねじ部と前記樹脂製シール部材との間に、前記シリンダの内周面と前記蓋の外周面とが離間した隙間部が設けられており、
前記シリンダには、
前記隙間部内のガスをリリーフ配管に排出する第1の貫通孔に加え、酸素を含むガスを前記隙間部に導入する第2の貫通孔が形成されている、
水素蓄圧器。
【請求項2】
前記第2の貫通孔に接続された逆止弁をさらに備える、
請求項1に記載の水素蓄圧器。
【請求項3】
前記第2の貫通孔に接続されたポンプをさらに備える、
請求項1又は2に記載の水素蓄圧器。
【請求項4】
前記リリーフ配管に設けられたリリーフ弁をさらに備える、
請求項3に記載の水素蓄圧器。
【請求項5】
前記第2の貫通孔は、前記隙間部と対向する前記シリンダの長手方向の中央部に設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の水素蓄圧器。
【請求項6】
前記シリンダの内周面における前記第2の貫通孔の角部は、R加工されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の水素蓄圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素蓄圧器に関し、例えばシリンダの開口端に蓋をねじ止めする水素蓄圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水素ステーションなどに用いられる高圧水素蓄圧器では、特許文献1や非特許文献1に開示されているように、シリンダ(円筒胴)の開口端に蓋をねじ止めする構造が採用されている。このような水素蓄圧器では、シリンダの内部に充填された水素ガスは、シリンダの内周面と蓋の外周面との間に設けられた樹脂製シール部材(例えばOリング)によってシールされている。そのため、シリンダの開口端に形成された雌ねじに水素が到達し難く、応力が集中するねじ底を起点とした水素誘起割れが発生し難い。
【0003】
ところで、非特許文献2には、水素ガス中に低濃度の酸素が含まれると、水素誘起割れの亀裂進展速度が低下することが開示されている。また、非特許文献3には、水素誘起割れの亀裂面に酸素が吸着し、材料中への水素の侵入を抑制することが開示されている。このように、酸素が水素誘起割れを抑制することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-158243号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】超高圧ガス設備に関する基準KHKS0220(2010)、平成22年3月31日、高圧ガス保安協会、p. 26
【文献】Fukuyama, S.、外2名、「Fracture toughness and fatigue crack growth of AISI 4340 steel in high pressure hydrogen at room temperature」、Pressure Vessel Technology、Vol. 2、1989年、p. 1181-1188
【文献】Nelson H. G.、「Testing for hydrogen environment embrittlement: primary and secondary influences」、ASTM Special Technical Publication、vol. 543、1974年、p. 152-169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、高圧水素ガスが充填された水素蓄圧器では、微量ながら水素が樹脂製シール部材を透過することを見出した。そのため、シリンダの開口端に形成された雌ねじに水素が到達し、応力が集中するねじ底を起点として、シリンダに水素誘起割れが発生する虞があった。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る水素蓄圧器では、蓋がねじ止めされるシリンダの雌ねじ部と樹脂製シール部材との間に、シリンダの内周面と蓋の外周面とが離間した隙間部が設けられており、シリンダには隙間部内のガスをリリーフ配管に排出する第1の貫通孔に加え、酸素を含むガスを隙間部に導入する第2の貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施形態によれば、シリンダの水素誘起割れを抑制可能な水素蓄圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。
図2図1における領域IIの拡大図である。
図3】比較例に係る水素蓄圧器の断面図である。
図4】第2の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。
図5】第3の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。
図6】第4の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0011】
(第1の実施形態)
<水素蓄圧器の構成>
以下に、図1図2を参照して、第1の実施形態に係る水素蓄圧器の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。図2は、図1における領域IIの拡大図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る水素蓄圧器は、シリンダ10、蓋20、樹脂製シール部材30を備えている。本実施形態に係る水素蓄圧器は、例えば水素ステーション用の高圧水素蓄圧器である。水素蓄圧器の設計圧力は、例えば80~120MPa程度である。
【0012】
なお、各図面に示した右手系xyz3次元直交座標は、図面間において相互に対応しているが、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、xy平面が水平面を構成しz軸正方向が鉛直上向きとなる。図示した例では、水素蓄圧器の長手方向がx軸方向に平行である。このように、水素蓄圧器は、通常、横置きされる。
【0013】
まず、図1を参照して、水素蓄圧器の全体構成について説明する。
図1に示すように、内部に水素が充填されるシリンダ10の両開口端に、それぞれ蓋20が開閉可能にねじ止めされている。シリンダ10の内周面と、2つの蓋20の内側端面とによって囲まれた空間に高圧水素ガスが充填される。シリンダ10の内周面と蓋20の外周面との間に設けられた円環状の樹脂製シール部材30によって、シリンダ10の内部がシールされている。
【0014】
ここで、高圧水素ガスから応力を受けるシリンダ10の内周面及び蓋20の内側端面は耐圧部と呼ばれる。
また、蓋20は、詳細には後述するように、蓋本体21とナット22とを備えている。
なお、図1の例は、シリンダ10の両方の端部が開口した構成であるが、シリンダ10の一方の端部のみが開口した構成であってもよい。また、シリンダ10の外周面は、例えば炭素繊維強化プラスチック層(不図示)などによって補強されていてもよい。
【0015】
シリンダ10及び蓋20(蓋本体21及びナット22)は、例えば、それぞれマンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼などの鋼材からなる。シリンダ10、蓋本体21、及びナット22は、同種鋼材から構成されてもよいし、異種鋼材から構成されてもよい。
【0016】
シリンダ10は、例えば、鍛造加工や押し出し加工などによって製造されたシームレス管である。シリンダ10の寸法は、例えば、内容積が50~1000L程度、全長が1800~5000mm程度、内径D(図2参照)が200~400mm程度、肉厚t(図2参照)が20~80mm程度である。水素誘起割れの起点となる表面傷を減らすため、シリンダ10の内周面を鏡面加工してもよい。例えば、深さ0.5mm以上、長さ1.6mm以上の表面傷を無くすことが好ましい。
【0017】
次に、図2を参照して、シリンダ10の開口端の詳細について説明する。ここで、図1に示すように、シリンダ10の両開口端の構成は同様であるため、図2では、シリンダ10のx軸正方向側の開口端の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、シリンダ10の開口端では、内径が拡径されており、内周面がねじ切られている。すなわち、シリンダ10の開口端には、雌ねじ部10aが形成されている。シリンダ10の開口端には、蓋20のナット22が螺合されている。
【0018】
蓋本体21及びナット22を備えた蓋20は、高圧ガス保安協会技術基準KHKS0220(非特許文献1)に規定された「ねじ構造」に準拠した構造を有している。
図2に示すように、蓋本体21は、シリンダ10と共通な中心軸Cを有する段付き円柱状部材である。蓋本体21は、フランジ部21aを備えている。ここで、蓋本体21において、フランジ部21aよりもx軸負方向側に位置する太径の部位を太径部、フランジ部21aよりもx軸正方向側に位置する細径の部位を細径部と呼ぶ。
【0019】
フランジ部21aの径は、シリンダ10の本体部(開口端以外の部位)の内径よりも大きく、シリンダ10の開口端の内径よりも小さくなっている。そのため、蓋本体21をシリンダ10の開口端からシリンダ10の内部に挿入することができる。フランジ部21aは、シリンダ10の本体部と拡径された開口端との段差10bに当接している。
【0020】
図2に示すように、蓋本体21の太径部は、シリンダ10の本体部の内径と径が略等しく、シリンダ10の本体部に嵌入されている。他方、蓋本体21の細径部は、ナット22の内径と軸径が略等しく、ナット22の貫通孔に嵌入されている。ここで、蓋本体21の細径部とナット22とは、相対的に回転可能である。また、図2の例では、蓋本体21の細径部の長さが、ナット22の高さ(x軸方向の長さ)と略等しくなっている。
【0021】
ナット22は、シリンダ10と共通な中心軸Cを有する雄ねじナットである。すなわち、ナット22の外周面がねじ切られている。ナット22の貫通孔に蓋本体21の細径部を挿入させつつ、シリンダ10の開口端にナット22をねじ込むことによって、シリンダ10に蓋20が固定される。詳細には、ナット22をねじ込むと、ナット22がx軸負方に前進する。ナット22がフランジ部21aをシリンダ10の段差10bに押し付けると、ナット22はそれ以上前進しなくなり、シリンダ10に蓋本体21及びナット22が固定される。このように、フランジ部21aは、ナット22をねじ込む際のストッパとして機能する。
【0022】
樹脂製シール部材30は、例えばOリングであって、シリンダ10と共通な中心軸Cを有する円環状の樹脂部材である。樹脂製シール部材30は、図2に示すように、シリンダ10の内周面と蓋20の外周面との間に設けられている。より詳細には、図2に示すように、蓋本体21の太径部の外周面に形成された環状溝21bに、樹脂製シール部材30が嵌め込まれている。すなわち、シリンダ10の本体部の内周面と蓋本体21の太径部の外周面との間に設けられた樹脂製シール部材30によって、シリンダ10の内部がシールされている。
【0023】
図2に示すように、樹脂製シール部材30とシリンダ10の雌ねじ部10aとの間には、シリンダ10の内周面と蓋20の外周面とが離間した隙間部Gが設けられている。具体的には、蓋本体21のフランジ部21aの外周に、帯状かつ円環状の隙間部Gが設けられている。
【0024】
ここで、本実施形態に係る水素蓄圧器では、シリンダ10に、隙間部G内のガスをリリーフ配管51に排出する貫通孔(第1の貫通孔)41に加え、酸素を含むガスを隙間部Gに導入する貫通孔(第2の貫通孔)42が形成されている。酸素を含むガスは、特に限定されないが、例えば空気である。リリーフ配管51は、シリンダ10の内部から隙間部Gに漏れ出した水素ガスを、大気中に安全に放出するための配管である。例えば、樹脂製シール部材30に不具合が発生した場合などの非常時にも、リリーフ配管51を介して水素ガスが放出される。
【0025】
上述の通り、発明者らは、高圧水素ガスが充填された水素蓄圧器では、微量ながら水素が樹脂製シール部材30を透過することを見出した。そのような場合、隙間部Gを介して、シリンダ10の雌ねじ部10aに水素が到達し、応力が集中するねじ底を起点として、シリンダに水素誘起割れが発生する虞がある。
【0026】
このような問題に対し、本実施形態に係る水素蓄圧器では、シリンダ10に、リリーフ配管51に接続され貫通孔41に加え、貫通孔42が形成されている。貫通孔41がリリーフ配管51に接続されているため、例えば自然対流によって貫通孔42から隙間部Gに酸素を含むガスすなわち空気を取り込むことができる。ここで、隙間部Gはシリンダ10の雌ねじ部10aに連通しているため、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素が、雌ねじ部10aのねじ底に到達する。その結果、ねじ底を起点としたシリンダ10の水素誘起割れを抑制することができる。
【0027】
貫通孔41、42の形成位置は、樹脂製シール部材30とシリンダ10の雌ねじ部10aとの間であれば、特に限定されない。ここで、貫通孔41、42が、耐圧部に近い程すなわち樹脂製シール部材30に近い程、シリンダ10に充填される高圧水素ガスから受ける応力の影響が大きくなる。特に、シリンダ10の内周面における貫通孔41、42の角部に発生する応力が高くなる。そのため、貫通孔41、42の形成位置は、図2において、樹脂製シール部材30からx軸正方向に遠ざかる方が好ましい。
【0028】
具体的には、高圧水素ガスによる応力の影響が及ぶ範囲は、図2に示したシリンダ10の平均半径r[mm]、肉厚t[mm]を用いて、耐圧部からx軸正方向に2.5×(r×t)1/2[mm]程度と考えられる。ここで、シリンダ10の平均半径rは、シリンダ10の内半径と外半径との平均値である。そのため、平均半径r[mm]は、内径D[mm]及び肉厚t[mm]を用いて、r=(D+t)/2と表すことができる。
【0029】
他方、貫通孔41、42が雌ねじ部10aに近付き過ぎると、雌ねじ部10aに発生する応力が大きくなる。
そのため、貫通孔41、42は、例えば、図2に示すように、隙間部Gと対向するシリンダ10の長手方向(x軸方向)の中央部に形成する。
【0030】
リリーフ配管51に接続された貫通孔41は、特に限定されないが、例えば、鉛直方向下側に配置される。このような構成によって、結露などによって隙間部Gに溜まった水分を、ガスと共に排出することができる。他方、酸素を導入するための貫通孔42は、特に限定されないが、例えば、蓋20を介して貫通孔41と対向配置される。このような構成によって、貫通孔42から導入された酸素が貫通孔41に向かって流れ、酸素が隙間部G全体に行き渡り易くなる。
【0031】
貫通孔41、42の径が大きい程、応力集中部での応力が高くなり、金属疲労による亀裂が発生し易くなる。一方、貫通孔41、42の径が小さ過ぎると、水素ガスの放出や酸素の導入が進行し難くなると共に、シリンダ10の内周面における角部のR加工が困難となる。そのため、貫通孔41、42の直径は、例えば、シリンダ10の平均半径r[mm]の2~5%程度とする。一例として、貫通孔41、42の直径は2~12mm程度である。
【0032】
また、シリンダ10の内周面における貫通孔41、42の角部が鋭利であると、金属疲労による亀裂が発生し易くなるため、例えばR加工を施してもよい。
貫通孔41、42は、それぞれ複数設けてもよい。
【0033】
<比較例に係る水素蓄圧器の構成>
ここで、図3を参照して、比較例に係る水素蓄圧器の構成について説明する。図3は、比較例に係る水素蓄圧器の断面図である。図3は、図2に対応する図である。
図3に示すように、比較例に係る水素蓄圧器では、シリンダ10に、隙間部G内のガスをリリーフ配管51に排出する貫通孔41のみが形成されており、図2に示した酸素を含むガスを隙間部Gに導入する貫通孔42が形成されていない。
【0034】
そのため、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素を隙間部Gに導入することができない。その結果、応力が集中するねじ底を起点とした水素誘起割れがシリンダ10に発生している。特に、隙間部Gに近いねじ底程、割れが発生し易い。
なお、このような水素蓄圧器における水素誘起割れは、高圧水素ガスの充填及び放出の繰り返しに伴う疲労破壊である。
【0035】
上述の通り、本実施形態に係る水素蓄圧器では、シリンダ10に、酸素を含むガスを隙間部Gに導入する貫通孔42が形成されている。そのため、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素を貫通孔42から隙間部Gに導入することができる。隙間部Gに導入された酸素は、雌ねじ部10aのねじ底に到達するため、ねじ底を起点としたシリンダ10の水素誘起割れを抑制することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、図4を参照して、第2の実施形態に係る水素蓄圧器の構成について説明する。図4は、第2の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。図4は、第1の実施形態に係る図2に対応する図である。
【0037】
図4に示すように、第2の実施形態に係る水素蓄圧器では、酸素を含むガスを隙間部Gに導入する貫通孔42が導入配管52を介して逆止弁CVに接続されている。それ以外の構成は図2に示した第1の実施形態に係る水素蓄圧器と同様である。
【0038】
第2の実施形態に係る水素蓄圧器では、第1の実施形態に係る水素蓄圧器と同様に、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素を貫通孔42から隙間部Gに導入することができる。その結果、ねじ底を起点としたシリンダ10の水素誘起割れを抑制することができる。
【0039】
さらに、第2の実施形態に係る水素蓄圧器では、貫通孔42が逆止弁CVに接続されているため、隙間部G内のガスが貫通孔42から排出されることがない。そのため、例えば、樹脂製シール部材30に不具合が発生した場合などの非常時に、貫通孔42から水素ガスは放出されず、貫通孔41を介してリリーフ配管51から大気中に安全に放出される。
【0040】
これに対し、第1の実施形態に係る水素蓄圧器では、そのような場合、貫通孔42を介して水素ガスが放出され得る。但し、第1の実施形態に係る水素蓄圧器において、貫通孔42を介して水素ガスが放出されたとしても、少量であるため、安全上特に問題はない。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、図5を参照して、第3の実施形態に係る水素蓄圧器の構成について説明する。図5は、第3の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。図5は、第1の実施形態に係る図2に対応する図である。
【0042】
図5に示すように、第3の実施形態に係る水素蓄圧器では、酸素を含むガスを隙間部Gに導入する貫通孔42が導入配管52を介してポンプPに接続されている。それ以外の構成は図2に示した第1の実施形態に係る水素蓄圧器と同様である。
なお、第2の実施形態に係る水素蓄圧器と同様に、貫通孔42とポンプPとの間の導入配管52に逆止弁CVを設けてもよい。
【0043】
第3の実施形態に係る水素蓄圧器は、ポンプPを備えているため、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素を強制的に貫通孔42から隙間部Gに導入することができる。その結果、第1の実施形態に係る水素蓄圧器に比べ、ねじ底を起点としたシリンダ10の水素誘起割れをより効果的に抑制することができる。
【0044】
(第4の実施形態)
次に、図6を参照して、第4の実施形態に係る水素蓄圧器の構成について説明する。図6は、第4の実施形態に係る水素蓄圧器の断面図である。図6は、第1の実施形態に係る図2に対応する図である。
【0045】
図6に示すように、第4の実施形態に係る水素蓄圧器では、リリーフ配管51にリリーフ弁RVが設けられている。リリーフ弁RVは、隙間部Gの圧力が大気圧の場合には閉じており、隙間部Gの圧力が大気圧から所定の圧力まで上昇した場合に開く。それ以外の構成は図5に示した第3の実施形態に係る水素蓄圧器と同様である。
なお、第2の実施形態に係る水素蓄圧器と同様に、貫通孔42とポンプPとの間の導入配管52に逆止弁CVを設けてもよい。
【0046】
第4の実施形態に係る水素蓄圧器は、第3の実施形態に係る水素蓄圧器と同様に、ポンプPを備えている。そのため、水素誘起割れを効果的に抑制する酸素を強制的に貫通孔42から隙間部Gに導入することができる。
【0047】
さらに、第4の実施形態に係る水素蓄圧器は、リリーフ配管51にリリーフ弁RVを備えている。そのため、隙間部G内の圧力を高めることによって、樹脂製シール部材30における水素の透過を抑制しつつ、隙間部G内の酸素分圧を高めることができる。その結果、第3の実施形態に係る水素蓄圧器に比べ、ねじ底を起点としたシリンダ10の水素誘起割れをさらに効果的に抑制することができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10 シリンダ
10a 雌ねじ部
10b 段差
20 蓋
21 蓋本体
21a フランジ部
21b 環状溝
22 ナット
30 樹脂製シール部材
41、42 貫通孔
51 リリーフ配管
52 導入配管
CV 逆止弁
G 隙間部
P ポンプ
RV リリーフ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6