(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20220706BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220706BHJP
B28B 13/04 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B38/00 304Z
C04B38/00 303Z
B28B13/04
(21)【出願番号】P 2019010606
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健介
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩唯
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165032(JP,A)
【文献】特開平04-201508(JP,A)
【文献】特開平04-297783(JP,A)
【文献】特開2002-228359(JP,A)
【文献】特開昭63-166745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00 - 19/00
C04B 38/00 - 38/10
B28B 3/00 - 5/12
F26B 1/00 - 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焼成の柱状ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、
前記未焼成の柱状ハニカム成形体が起立するように受台に載置するハニカム成形体載置工程と、
前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送するハニカム成形体搬送工程と、
前記ハニカム成形体搬送工程で搬送した前記未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥する、または、前記ハニカム成形体搬送工程で搬送しながら前記未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥することで、ハニカム乾燥体を得るハニカム乾燥体作製工程と、
前記ハニカム乾燥体を焼成し、ハニカム構造体を得る焼成工程と、
を含み、
前記受台は
複数の突起部を備え、
前記ハニカム成形体搬送工程において、前記受台の突起部を前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に差し込んで支えながら前記搬送を行い、
前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体は、前記ハニカム成形体の搬送方向における底面の長さをLとしたとき、前記底面の中心を基点として、前記中心から
0.13L~0.4L離れた位置までの範囲に前記突起部が差し込まれており、
前記突起部の高さが、前記受台に載置したときの前記未焼成の柱状ハニカム成形体の高さの0.5~3.0%であり、
前記突起部の断面積が、前記受台に載置したときの前記未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の0.04~1%であるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記突起部は、前記受台上の搬送方向における少なくとも前方及び後方に設けられた請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体は、前記ハニカム成形体の搬送方向における底面の長さをLとしたとき、前記底面の中心を基点として、前記中心から0.15
L~0.4L離れた位置までの範囲に前記突起部が差し込まれている請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記突起部が棒状である請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ハニカム乾燥体作製工程における前記乾燥は、誘電乾燥である請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記受台は台座部を備え、前記台座部上に前記突起部が設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記台座部の上面の、前記未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積が前記受台に載置したときの前記未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の40~70%である請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記台座部が誘電乾燥用の補助電極を兼ねている請求項6又は7に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。とりわけ、長さ方向に垂直な断面の形状の変形が良好に抑制された柱状ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造体は、一般に、ハニカム成形体を作製する工程、ハニカム成形体を受台に載置して搬送する工程、搬送したハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する工程、及び、ハニカム乾燥体を焼成する工程を経て作製されている。
【0003】
ハニカム成形体の成形方法の一例として、押出成形法が知られている。当該押出成形法では、押出方向を水平方向に設定した押出成形機の押出出口に所望の形状の金型を取り付け、押出成形機に投入されたセラミックス材料を連続して金型から押し出し、柱状ハニカム成形体を成形する。柱状ハニカム成形体は、必要に応じて所望の長さとなるように、軸方向に垂直に切断された後、それぞれ受台に起立するように載置される。受台に起立するように載置された柱状ハニカム成形体は、ベルトコンベア等で搬送され、この搬送中または搬送後に誘電乾燥や通風乾燥等で乾燥される。
【0004】
ここで、押出成形直後のハニカム成形体は、粘土質であるため、非常に柔軟で変形しやすい。良質な最終成形体を得るには、押出成形直後の柱状ハニカム成形体を、変形させないように支持し、各工程へと搬送する必要がある。当該搬送工程で柱状ハニカム成形体の変形を抑制する技術として、特許文献1には、ハニカム成形体を搬送する際に、受台上に凸部形状の孔明板を設け、当該孔明板上に柱状ハニカム成形体を起立するように載置して搬送する構成が開示されている。また、当該孔明板の凸部上面が平面でハニカム成形体の下端面の面積より小さな面積を有している。そして、このような構成によれば、ハニカム成形体の下端面の孔明板と接触する面積が小さくなり、乾燥時にハニカム成形体が収縮する際に孔明板との摩擦抵抗がより小さくなるため、乾燥時に発生する寸法変形、クラックを適切に防ぐことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効率的にハニカム構造体製品を生産するために、押出成形機から押し出された一つの柱状ハニカム成形体から2~3個のハニカム成形体を切り出す場合がある。その際は切り出した柱状ハニカム成形体の縦方向の長さが大きくなる。ここで、切り出した柱状ハニカム成形体を搬送する工程において、搬送開始時、搬送途中での搬送停止時及び搬送再開時等、搬送方向における前後への揺れが生じることがある。その際、上記のように柱状ハニカム成形体の縦方向の長さが大きくなると、それに伴って搬送方向における前後への揺れも大きくなる。
【0007】
当該搬送時の揺れについて説明するために、例として
図1に特許文献1に記載されたハニカム成形体の搬送手段の構成を示す。
図1(a)は、未焼成の柱状ハニカム成形体を、孔明板を載せた受台上に起立するように載置して搬送する様子を搬送方向の側方側から見たときの外観を模式的に表している。
図1(b)は
図1(a)における未焼成の柱状ハニカム成形体の下部における、長さ方向に垂直な断面図である。押出成形機から押し出されたハニカム成形体から切り出した柱状ハニカム成形体は非常に柔軟で変形しやすい粘土質であるため、搬送時の揺れによって、特に受台に載置されたときの下部に搬送方向における前後から内部方向へ荷重がかかる。搬送方向における前後から内部方向へ荷重がかかった柱状ハニカム成形体の下部は、
図1(b)に示すように、搬送方向における前後方向では痩せていき、搬送方向における横方向には太っていく。この結果、柱状ハニカム成形体の上部と下部とで断面形状に差が生じてしまい、上下方向に均一な断面形状を有するハニカム構造体を製造することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、長さ方向に垂直な断面の形状の変形が良好に抑制されたハニカム構造体の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送する際に載置する受台に突起部を設けておき、当該受台の突起部を受台に起立するように載置した未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に差し込んで支えながら搬送を行うことで、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のように特定される。
未焼成の柱状ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、
前記未焼成の柱状ハニカム成形体が起立するように受台に載置するハニカム成形体載置工程と、
前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送するハニカム成形体搬送工程と、
前記ハニカム成形体搬送工程で搬送した前記未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥する、または、前記ハニカム成形体搬送工程で搬送しながら前記未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥することで、ハニカム乾燥体を得るハニカム乾燥体作製工程と、
前記ハニカム乾燥体を焼成し、ハニカム構造体を得る焼成工程と、
を含み、
前記受台は少なくとも1つの突起部を備え、
前記ハニカム成形体搬送工程において、前記受台の突起部を前記受台に載置した前記未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に差し込んで支えながら前記搬送を行うハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長さ方向に垂直な断面の形状の変形が良好に抑制されたハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は特許文献1に記載の搬送手段における、未焼成の柱状ハニカム成形体を、孔明板を載せた受台上に起立するように載置して搬送する様子を搬送方向の側方側から見たときの外観模式図である。(b)は(a)における未焼成の柱状ハニカム成形体の下部における、長さ方向に垂直な断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における未焼成の柱状ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程、未焼成の柱状ハニカム成形体が起立するように受台に載置するハニカム成形体載置工程、及び、受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送するハニカム成形体搬送工程を模式的に表した図である。
【
図3】受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体の搬送方向における底面の長さをLとしたとき、底面の中心を基点として、中心から0.4L離れた位置までの範囲を模式的に示す図である。
【
図4】パンチングプレート及びピンの外観模式図である。
【
図5】パンチングプレート及びピンの外観模式図及び断面図である。
【
図7】パンチングプレートの外観模式図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明のハニカム構造体の製造方法の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0013】
(ハニカム構造体の製造方法)
本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法は、未焼成の柱状ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、未焼成の柱状ハニカム成形体が起立するように受台に載置するハニカム成形体載置工程と、受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送するハニカム成形体搬送工程と、ハニカム成形体搬送工程で搬送した未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥する、または、ハニカム成形体搬送工程で搬送しながら未焼成の柱状ハニカム成形体を乾燥することで、ハニカム乾燥体を得るハニカム乾燥体作製工程と、ハニカム乾燥体を焼成し、ハニカム構造体を得る焼成工程とを含む。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における未焼成の柱状ハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程、未焼成の柱状ハニカム成形体が起立するように受台に載置するハニカム成形体載置工程、及び、受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体を搬送するハニカム成形体搬送工程を模式的に表している。
【0015】
本発明の実施形態では、柱状ハニカム構造体の例として、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって長さ方向に伸びる複数のセルが区画形成された円柱状ハニカム構造体を作製する。ハニカム構造体は、コージェライト、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、ムライト、アルミナからなる群から選択される少なくとも1つのセラミックス材料で形成されていてもよい。
【0016】
ハニカム成形体作製工程では、まず、セラミックス原料を含有する坏土を、当該隔壁を有するハニカム形状に成形する。例えば、セラミックス原料としてコージェライトからなるハニカム構造体を作製する場合には、まず、坏土用材料としてコージェライト化原料を用意する。コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合するため、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等を配合する。
【0017】
次に、コージェライト化原料に添加する坏土用材料(添加剤)を用意する。添加剤として、少なくともバインダを用いる。そして、バインダ以外には、造孔剤、分散剤、界面活性剤等を使用することができる。次に、コージェライト化原料100質量部に対して、例えば、バインダを3~8質量部、造孔剤を3~40質量部、分散剤を0.1~2質量部、水を10~40質量部の割合で混合し、これら坏土用材料を混練し、坏土を調製する。
【0018】
次に、調製した坏土を、押出成形法でハニカム形状に成形し、生の(未焼成の)ハニカム成形体を得る。押出成形法は、ラム式押出成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。ハニカム形状の成形には、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いる方法が好適である。
【0019】
このような押出成形機から押し出された粘土質の柱状ハニカム成形体は、その中心軸を水平にした状態で搬送台に載置される。本実施形態では、ハニカム成形体が円柱状に形成されており、搬送台は、円柱状ハニカム成形体を載置しやすいようにハニカム成形体の載置面が凹状に形成されている。搬送台におけるハニカム成形体の載置面は、凹状に限定されず、ハニカム成形体の形状に対応するように形成することができる。ハニカム成形体の外形としては、特に限定されないが、本実施形態のように端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。
【0020】
押出成形機から押し出された柱状ハニカム成形体に対し、複数の搬送台が次々に下側から接近するように送り込まれて、押し出されたハニカム成形体を支えて水平方向へ移動する。水平方向に移動した搬送台上のハニカム成形体は、カッターによって所定の長さにカットされた後、搬送路を通って搬送される。ここで、カットされて搬送されるハニカム成形体の大きさは、特に限定されないが、中心軸方向長さが40~500mmであってもよい。また、例えば、ハニカム構造体の外形が円筒状の場合、その端面の半径が30~200mmであってもよい。
【0021】
次に、搬送された柱状ハニカム成形体を、横一列に整列(
図2では5つの柱状ハニカム成形体が横一列に整列)させた後、搬送台を一斉に起こすことで、準備しておいた受台上に起立するように載置する。受台の形状は特に限定されないが、ベルトコンベアで搬送するものであるため、例えば平板状に形成されているのが好ましい。受台の材質は特に限定されないが、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属材料、または軽量化が可能な発泡ポリウレタン樹脂、発砲スチロール樹脂等の樹脂材料で形成することができる。
【0022】
受台は少なくとも1つの突起部を備えている。本実施形態では、後述するように受台が台座部を備え、当該台座部上に突起部が設けられた構成についても説明しているが、受台に台座部を設けずに、直接突起部が形成されていてもよい。このように受台に突起部があることで、ハニカム成形体搬送工程において、受台の突起部を受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に差し込んで支えながら搬送を行うことができる。このため、受台上に柱状ハニカム成形体が固定されて安定化し、搬送時の揺れが抑えられ、柱状ハニカム成形体の上部と下部とで断面形状に差が生じることを抑制することができる。その結果、長さ方向に垂直な断面の形状の変形が良好に抑制されたハニカム構造体を製造することができる。未焼成の柱状ハニカム成形体は粘土質で非常に柔軟であるため、柱状ハニカム成形体を載置した搬送台を起こして受台に起立するように載置するだけで、柱状ハニカム成形体の底面に突起部が差し込まれ、当該突起部で柱状ハニカム成形体を支えることができる。
【0023】
なお、本発明の実施形態では、受台の突起部を受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に「差し込んで支えながら」搬送を行うが、当該「差し込んで支えながら」は、突起部の全体が、柱状ハニカム成形体の底面から内部へ埋没するように差し込まれている状態であってもよい。または、突起部によって柱状ハニカム成形体の底面が押しつぶされるように凹んだ状態となることで、突起部によって支えられている状態であってもよい。
【0024】
突起部の形状は、特に限定されないが、柱状ハニカム成形体を載置した搬送台を起こして受台に起立するように載置するだけで、柱状ハニカム成形体の底面に差し込まれるような鋭さに形成されているのが好ましい。突起部の形状は、例えば、棒状であってもよい。ここで、棒状とは、円柱状または角柱状であってもよく、さらに細長く伸びる形状のものであれば、円錐状または角錐状であってもよく、さらに先端だけ尖った針状等であってもよい。また台座を有し、当該台座上に上記の棒状の部分が形成された突起部であってもよい。突起部の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属材料、またはフッ素樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0025】
突起部は、複数設けられているのが好ましい。複数の突起部により、より安定して柱状ハニカム成形体を支えることができるためである。また、突起部は、受台上の搬送方向における少なくとも前方及び後方に設けられているのが好ましい。搬送時の揺れは、搬送方向における前後方向で生じるため、突起部が受台上の搬送方向における少なくとも前方及び後方に設けられていることで、より効果的に安定して柱状ハニカム成形体を支えることができる。突起部の数は特に限定されないが、2対の突起部の単位で複数設け、当該2対の突起部が、柱状ハニカム成形体の底面に対して、当該底面の中心から互いに同じ距離だけ離れるように、且つ、底面の中心から対象な位置に設けるのが好ましい。このような構成によれば、柱状ハニカム成形体の底面の中心から常に複数の突起部が距離や方向において均等に配置されることとなるため、より安定して柱状ハニカム成形体を支えることができる。
【0026】
未焼成の柱状ハニカム成形体は、搬送中に乾燥することで内部に包含していた水分が抜けて収縮する。このとき、底面の外端まで突起部が差し込まれていると、突起部によってハニカム成形体の自然な収縮が阻害され、当該領域が変形するおそれがある。このため、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面における、突起部を差し込む範囲については、
図3に示すように、受台に載置した未焼成の柱状ハニカム成形体の搬送方向における底面の長さをLとしたとき、底面の中心を基点として、中心から0.4L離れた位置までの範囲であるのが好ましい。このような構成によれば、ハニカム成形体の搬送方向における底面の中心を基点として、中心から0.4Lを超えて0.5L(外端)までの範囲には突起部が差し込まれることがないため、搬送時の乾燥によるハニカム成形体の自然な収縮を阻害することなく、ハニカム成形体の変形を抑制することができる。更に、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面における、突起部を差し込む範囲は、底面の中心を基点として、中心から0.15L以上離れた位置であるのがより好ましい。中心から0.15L未満の範囲に差し込むと、突起部で固定する効果が弱くなり、未焼成の柱状ハニカム成形体が搬送方向に揺れやすくなるおそれがあるためである。
【0027】
突起部の高さは、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の高さの0.5~5%であるのが好ましい。突起部の高さが、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の高さの0.5%未満であると、未焼成の柱状ハニカム成形体を安定して支えることが困難となるおそれがあり、5%超であると、突起部が未焼成の柱状ハニカム成形体の下部を必要以上に潰してしまい、製品として使用可能な領域が減少するためコストの面で問題が生じるおそれがある。突起部の高さは、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の高さの1.5~3.0%であるのがより好ましい。また突起部を複数設けた場合には、それぞれの突起部の高さを変えることもできる。
【0028】
突起部の断面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の0.04~1%であるのが好ましい。ここで、当該突起部の断面積とは、突起部が伸びる方向に垂直な断面の最大面積を示す。また、突起部が複数個設けられている場合、各突起部の断面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の0.04~1%であるのが好ましい。柱状の突起部の断面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の0.04%未満であると、未焼成の柱状ハニカム成形体を安定して支えることが困難となるおそれがあり、1%超であると、搬送中の乾燥の際、または、搬送後の乾燥工程の際に、ハニカム成形体の水抜けが悪く、乾燥に支障をきたすおそれがある。柱状の突起部の断面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の0.1~0.25%であるのがより好ましい。また、当該柱状の突起部の断面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体に差し込まれたときに、未焼成の柱状ハニカム成形体の潰れるセルの数が10セル以下であるように形成されているのが好ましい。当該柱状の突起部について、未焼成の柱状ハニカム成形体に差し込まれたときにハニカム成形体の10セル超を潰してしまうような大きさの断面積としてしまうと、搬送中の乾燥の際、または、搬送後の乾燥工程の際に、ハニカム成形体の水抜けを悪化させてしまい、乾燥に支障をきたすおそれがある。当該柱状の突起部の断面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体に差し込まれたときに、未焼成の柱状ハニカム成形体の潰れるセルの数が3~8セルであるように形成されているのがより好ましく、3~5セルであるように形成されているのが更により好ましい。なお、当該未焼成の柱状ハニカム成形体のセルについて「潰れる」とは、当初のセル形状が柱状ハニカム成形体が伸びる方向に垂直な断面において変形した状態を示す。
【0029】
受台は台座部を備え、台座部上に突起部が設けられていてもよい。このような構成によれば、例えば台座部を、複数の貫通孔を有するパンチングプレートで形成することで、ハニカム成形体が乾燥して生じる水分をパンチングプレートの貫通孔から排出することができ、ハニカム成形体の底面に水分を溜め込まないようにすることができる。パンチングプレートの貫通孔の形状は、円形、多角形、スリット状等でもよい。パンチングプレートの貫通孔による開口率は20~90%が好ましく、40~80%がより好ましい。上述のように必要に応じて台座部を所定の構成とすることで、受台の構成を変えずに搬送工程における様々な機能を付加することができる。例えば、台座部が誘電乾燥用の補助電極を兼ねた構成とすることで、未焼成の柱状ハニカム成形体の搬送中または搬送後に誘電乾燥を行う際、別途電極を設ける必要がなく、誘電乾燥装置の構成が簡略化する。
【0030】
未焼成の柱状ハニカム成形体は、搬送中に乾燥することで内部に包含していた水分が抜けて収縮する。このとき、台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積と同じであると、台座部の上面との摩擦力によってハニカム成形体の自然な収縮が阻害される。その結果、未焼成の柱状ハニカム成形体の下部領域が変形するおそれがある。このため、台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の40~70%であるのが好ましい。台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の40%未満であると、台座部の上面でハニカム成形体を安定して支えることが困難となるおそれがある。また、台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の70%超であると、上述のように台座部の上面との摩擦力によってハニカム成形体の自然な収縮が阻害され、ハニカム成形体の下部領域が変形してしまうおそれがある。台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積は、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の50~60%より好ましい。
【0031】
台座部は、中央に凸部を有してもよく、当該凸部が上述の台座部の上面であって、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分となっていてもよい。すなわち、この場合は台座部の上面の、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面と接する部分の面積が当該凸部の上面の面積となり、当該凸部の上面の面積が、受台に載置したときの未焼成の柱状ハニカム成形体の底面積の40~70%であるのが好ましい。当該凸部は台座部へのプレス加工によって台座部と一体形成されていてもよく、別途台座部上に同材料または別材料によって形成されていてもよい。台座部の材質は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属材料、またはフッ素樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0032】
未焼成の柱状ハニカム成形体は、上述のように受台に載置して搬送した後、誘電乾燥により乾燥する、または、搬送しながら誘電乾燥により乾燥することで、所定の寸法に調整した柱状ハニカム乾燥体とする。乾燥は、誘電乾燥に加えて熱風乾燥を用いてもよい。その後、柱状ハニカム乾燥体を焼成し、柱状ハニカム構造体を得る。
【0033】
ハニカム構造体は、複数のセルの内壁を形成する多孔質の隔壁の表面または内部、もしくは表面及び内部に、触媒を設けたものであってもよい。ハニカム構造体は、触媒を担持した触媒担体や、排ガス中の粒状物質(カーボン微粒子)を浄化するために目封止部を設けたフィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF))として構成されたものであってもよい。
【0034】
触媒の種類については特に制限なく、ハニカム構造体の使用目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択させる2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0036】
(実施例1~7、10、11、参考例8、9、12)
まず、坏土用材料としてコージェライト化原料と、添加剤としてバインダ及び造孔剤と、分散剤とを混合して混練し、坏土を調製した。次に、調製した坏土を、押出成形機でハニカム形状に成形して押し出し、生の(未焼成の)円柱状ハニカム成形体を得た。当該円柱状ハニカム成形体は、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって長さ方向に伸びる複数のセルが区画形成されている。
【0037】
次に、押出成形機から押し出した未焼成の円柱状ハニカム成形体は、その中心軸を水平にした状態となっている。このハニカム成形体に対し、複数の搬送台が次々に下側から接近するように送り込み、押し出したハニカム成形体を支えて水平方向へ移動させた。水平方向に移動させた搬送台上の未焼成の円柱状ハニカム成形体を、カッターによって所定の長さにカットした後、搬送路を通って搬送した。
【0038】
次に、搬送された円柱状ハニカム成形体を、横一列に整列させた後、搬送台を一斉に起こすことで、準備しておいた樹脂製の平板状の受台上に起立するように載置し、ベルトコンベアで搬送した。
【0039】
ここで、実施例1~3、5~
7、10、11、参考例8、9、12については、受台上にアルミニウム製で、180mm四方の正方形のフラットなパンチングプレート(台座部)を設置し、当該パンチングプレート上に円柱状ハニカム成形体を起立するように載置した。また、実施例4については、受台上にアルミニウム製で、180mm四方の正方形で、中心に90mm径の凸部を有するパンチングプレート(台座部)を設置し、当該パンチングプレートの凸部上に円柱状ハニカム成形体を起立するように載置した。実施例1~3、5~
7、10、11、参考例8、9、12で用いたパンチングプレート及びピンの外観模式図を
図4に示す。実施例4で用いたパンチングプレート及びピンの外観模式図及び断面図を
図5に示す。
【0040】
実施例1~7、10、11、参考例8、9、12のパンチングプレート上には、円柱状に伸びる棒状のピン(突起部)を複数設けた。当該ピンは、表1に示す条件(ピン本数、ピン長さ、ピン直径、ピン配置、ピン配置/ハニカム直径比、ピン長さ/ハニカム長さ、ピン/ハニカム面積比)で設けた。ここで、表1の「ピン配置」は「パンチングプレートの中心からの距離」、「ピン配置/ハニカム直径比」は「ピンのパンチングプレートの中心からの距離/ハニカム構造体においてハニカム構造体が伸びる方向に垂直な断面の直径」、「ピン/ハニカム面積比」は「ピンの伸びる方向に垂直な断面の面積/未焼成のハニカム構造体においてハニカム構造体が伸びる方向に垂直な断面の面積」をそれぞれ示す。
【0041】
このように受台上のパンチングプレートに設けた棒状のピンを、未焼成の柱状ハニカム成形体の底面に差し込んで支えながら搬送時間1秒間、搬送速度600mm/秒程度で搬送を行い、誘電乾燥により乾燥することで、柱状ハニカム乾燥体とした。次に、当該柱状ハニカム乾燥体を焼成し、柱状ハニカム構造体を作製した。表1には、未焼成の円柱状ハニカム構造体のセル密度、隔壁厚さ、ハニカム成形体の直径、長さ及び質量が記載されている。
【0042】
(比較例1)
搬送工程において、受台上に、実施例1のピンを備えたパンチングプレートの代わりに、フラットでピンを設けないパンチングプレートを置いた以外は、実施例1と同様の手順でハニカム構造体を作製した。比較例1のパンチングプレートは、実施例1においてピンを設けないパンチングプレートと同様の構成とした。比較例1で用いたパンチングプレートの外観模式図を
図6に示す。
【0043】
(比較例2)
搬送工程において、受台上に、実施例1のパンチングプレートの代わりに、90mm径の円形の凸部を有し、ピンを設けないパンチングプレートを置いた以外は、実施例1と同様の手順でハニカム構造体を作製した。当該パンチングプレートの円形の凸部は実施例4の円形の凸部と同様の構成とした。比較例2で用いたパンチングプレートの外観模式図及び断面図を
図7に示す。
【0044】
(評価)
<上下真円度差>
乾燥後のハニカム構造体の上部(上側の端面から20mm地点)と下部(下側の端面から20mm地点)とで、ハニカム構造体の伸びる方向に垂直な断面における、上部及び下部の各真円度(最大径-最小径)を評価した。次に、上部の真円度と下部の真円度との差(上下真円度差)を算出した。上下真円度差が0.4mm以下であるものを良好な値、上下真円度差が0.4mmを超え、0.6mm以下であるものを使用可能な値であると判定した。
【0045】
<セル欠陥状態>
乾燥後のハニカム構造体の下部(下側の端面)から、ハニカム構造体の伸びる方向に所定の距離(20mm、30mm、40mm)における、ハニカム構造体の伸びる方向に垂直な断面を観察することでハニカム構造体のセル欠陥状態を確認した。観察した断面において、セルの変形および潰れ等がなく良好であるものを「良」、セルの変形又は潰れ等があるものを「不可」とした。
【0046】
<総合評価>
上下真円度差が0.4mm以下であり、ハニカム底面から20mmの距離におけるセル欠陥状態が「良」であるものを「良」、上下真円度差が0.4mmを超え0.6mm以下であるか、ハニカム底面から20mmの距離におけるセル欠陥状態が「不可」であるのもを「可」、上限真円度差が0.6mmを超えるものを「不可」とした。
【0047】
試験条件及び評価結果を表1に示す。以上の結果、実施例1~7、10、11、参考例8、9、12は、それぞれ総合評価が「良」または「可」であった。一方、比較例1~2は、それぞれ総合評価が「不可」であった。
【0048】