(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/18 20060101AFI20220706BHJP
H01L 25/04 20140101ALI20220706BHJP
H01L 25/10 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
H01L25/04 Z
H01L25/10 Z
(21)【出願番号】P 2019139877
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 昭平
(72)【発明者】
【氏名】牧本 陽一
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303939(JP,A)
【文献】特開2004-221366(JP,A)
【文献】特開平10-084078(JP,A)
【文献】特開2009-033171(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058454(WO,A1)
【文献】特開2000-333343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/18
H01L 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に半導体素子が収納され全体が樹脂で成型されたケースと、
前記ケースの上部に設けられ、平板で細長い金属導体のブスバーが取り付けられる第1の端子と、
前記ケースの上部に設けられ、前記第1の端子に隣接する第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子間に設けられるリブと、を備え、
前記リブは、前記ブスバーに向けて突出する突起を備えた半導体モジュール。
【請求項2】
前記突起は、上端から下方に傾斜する傾斜面を備えた請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記突起は、前記傾斜面から下方に伸びる垂直面を備えた請求項2記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記突起は、前記リブの中央付近に設けられる請求項1~3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記突起は、前記リブの複数個所に設けられる請求項1~3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1の端子と前記第2の端子の周囲に溝が設けられた、請求項1~5の何れかに記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関し、特に、樹脂製のケースにブスバーが取り付けられる半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器に実装される半導体モジュールは、モジュールの端子間の沿面距離と空間距離が所定の大きさを確保できるように設計される。沿面距離とは端子間の絶縁物の表面に沿った最短距離であり、空間距離とは端子間の空間を通る最短距離である。
【0003】
半導体モジュールは、樹脂製のケース内にダイオードやトランジスタ等の半導体素子を収納し、ケース底部に金属ベース板、ケース上部に複数の端子を配列して構成される。全体としてパッケージ構造となっている。
【0004】
このような構造の半導体モジュールにおいて、ケース上部に設けられている端子間の沿面距離と空間距離を確保するため、次の先行技術が提案されている。
【0005】
第1は、端子間にリブ(絶縁壁部)を設けて、端子間の沿面距離と空間距離を長くする(特許文献1)。第2は、ケース表面に溝を設けて、沿面距離を長くする(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-21603号公報
【文献】特開2003-303939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなリブや溝を設けた構成で、十分な沿面距離と空間距離を確保することが困難な場合がある。例えば、半導体モジュールを複数個配列して、各半導体モジュールの共通端子に一枚のブスバーをネジ止めして取り付ける構成では、以下の問題がある。
【0008】
すなわち、ブスバーを取り付けるときに、ブスバーが所定の位置からずれて取り付けられる可能性がある。このとき、ブスバーがリブの面に接触することがある。すると、ブスバーが取り付けられる第1の端子に隣接する第2の端子とブスバーとの間の沿面距離と空間距離が予め設定した設計値以下となる。特に、沿面距離を稼ぐために溝が設けられているときは、この溝の効果がなくなってしまう。
【0009】
この発明の目的は、ブスバーの取り付け時に、ブスバーが取り付けられる第1の端子に隣接する第2の端子とブスバーとの間の沿面距離と空間距離を確実に確保できる半導体モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、内部に半導体素子が収納され全体が樹脂で成型されたケースと、
前記ケースの上部に設けられ、平板で細長い金属導体のブスバーが取り付けられる第1の端子と、
前記ケースの上部に設けられ、前記第1の端子に隣接する第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子間に設けられるリブと、を備え、
前記リブは、前記ブスバーに向けて突出する突起を備えている。
【0011】
ケースの上部には第1の端子と第2の端子とが設けられ、これらの端子間にリブが設けられている。第1の端子にブスバーが取り付けられた時、ブスバーはリブの突起に接する位置までが移動可能な範囲である。ブスバーはリブの突起が障害となるためリブの面に接触しない。これにより、ブスバーがリブの面に接触することを防止できる。ブスバーがリブの面に接触すると、ブスバーと第2の端子間の沿面距離及び空間距離が短くなる。しかし、この発明ではブスバーはリブの突起のためにリブの面に接触しない。このため、ブスバーと第2の端子間の沿面距離及び空間距離を所定の設計値とすることが出来る。
【0012】
突起に傾斜面を設けることで、リブとケースを樹脂成型するときに、全体を上下方向に抜くことが簡単となる。また、ブスバーを傾斜面に沿って取り付け位置まで降ろせば良いので取り付けが簡単となる。
【0013】
突起はリブの中央付近や複数個所に設けることが可能である。複数個所に設ければ、ブスバーの取り付け時にその回り止めになる。
【0014】
前記第1の端子と前記第2の端子の周囲に溝が設けられることで、ブスバーと第2の端子との間の沿面距離を溝の沿面長さ分稼ぐことが出来る。この溝によって稼ぐことのできる沿面距離は、ブスバーがリブの突起によってそれ以上リブ側に移動できないことで確実に確保できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明では、リブに突起を設けることで、ブスバーがリブの面に当接することを防止できるから、ブスバー又はブスバー用ネジ止め用の第1の端子と、これに近接する第2の端子との間の沿面距離と空間距離を確実に設計値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施形態である半導体モジュールの斜視図である。
【
図5】4個の半導体モジュールを第2の方向(Y方向)に一定の間隔で配列し、ブスバーを取り付けたときの上面図を示す。
【
図6】(A)(B)は、それぞれ、半導体モジュールの平面図において沿面距離を示す図、C―D断面図において沿面距離を示す図である。
【
図7】壁70を切り欠かないときの沿面距離を示す図である。
【
図8】(A)(B)は、それぞれ、半導体モジュールの平面図において、空間面距離を示す図、C―D断面図において空間距離を示す図である。
【
図9】(A)~(D)は、それぞれ、他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1はこの発明の実施形態である半導体モジュールの斜視図である。
図2は、前記半導体モジュールの平面図である。
【0018】
この半導体モジュールは、直方体形状の樹脂製のケース1と、ケース1に設けられ、第1の方向(X方向)である長手方向に所定の間隔で配置されるネジ止め用の第1の端子2、第2の端子3、第3の端子4とを備える。
【0019】
ケース1は、その上面に、第1の端子2、第2の端子3、第3の端子4をそれぞれ載置する、第1の端子面21、第2の端子面31、第3の端子面41が形成されている。第1の端子面21は第1の端子2を載置し、第2の端子面31は第2の端子3を載置し、第3の端子面41は第3の端子4を載置する。各端子2~4は、端子形状に予め成形した金属性垂直片をケース1内に挿入し、その上端部を折り曲げ加工して形成される。各端子2~4は、中央部にネジ挿入孔が形成される。
【0020】
ケース1内には、半導体として2個のダイオードD1、D2が収納されている。
図3は、回路図である。ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとが接続されて共通端子Cが形成され、ダイオードD1のアノードが第1アノード端子Aとして、また、ダイオードD2のアノードが第2アノード端子Bとして、それぞれ形成されている。
【0021】
共通端子Cは、ケース1内で第1の端子2に接続される。第1アノード端子Aは、ケース1内で第2の端子3に接続される。第2アノード端子Bは、ケース1内で第3の端子4に接続される。第1の端子2は、後述するようにブスバーがネジ止めにより取り付けられる端子である。第2、第3の端子3、4は、ケーブル端部がネジ止めにより取り付けられる端子である。端子面21、31、41において、端子2~4の下部にはネジ部20、30、40が形成されている。端子2~4にブスバーやケーブル端部をネジ止めするには、ブスバーやケーブル端部のネジ孔部を各端子2~4上に置き、ワッシャー等を介して、上部からネジによりネジ部20~40に締め付ける。
【0022】
ケース1の第1の方向(X方向)の両端部には、ケース固定用のネジ止め部100、101が設けられている。ネジ止め部100、101は、ケース1を電気機器の筐体内の基板にネジで固定するためのものである。
【0023】
ケース1は、その上部に第1のリブ5、第2のリブ6を備えている。この第1のリブ5、第2のリブ6は、前記第1の方向(X方向)に直交する第2の方向(Y方向)に設けられている。第1のリブ5は、第1の端子2と第2の端子3間に設けられ、第2のリブ6は、第2の端子3と第3の端子4間に設けられている。これらのリブ5、6は、各端子間の沿面距離と空間距離を稼ぐためのものである。また、これらのリブ5、6はケース1と一体的に成型される。
【0024】
前記第1のリブ5は、面50の中央部に突起51を備えている。突起51は、ブスバー用の第1の端子2に対向している。突起51は、面50の第2の方向(Y方向)の中央部において、垂直方向にリブ5と一体的に形成されている。また、突起51の上端部は上端から下方に傾斜する斜面51aとなっている。斜面51aに連続する下方の部分は垂直面となっている。突起51をこのように斜面51aとこれに連続する垂直面で構成している。これにより、斜面51aが抜き勾配となり、成型時の金型の抜きが容易である。
【0025】
ケース1の上面には、各端子2~4の周囲に、より詳細には各端子面21、31、41の周囲に、第1の溝7、第2の溝8、第3の溝9が設けられている。第1の溝7は、第1の端子2の前後と第1の端子2の左側(
図1:第1のリブ5側)とに設けられている。第2の溝8は、第2の端子3の前後と第2の端子3の左側及び右側(
図1:第2のリブ6側と第1のリブ5側)とに設けられている。第3の溝9は、第3の端子4の前後と第3の端子4の右側(
図1:第2のリブ6側)とに設けられている。
【0026】
第1の溝7は、ケース1の外側に設けられた第1の壁70を備えている。第1の壁70の中央部には切欠き71が形成されている。第1の壁70と切欠き71は、第1の端子2の前後に設けられている。切欠き71は、第1の溝7の水抜きのために設けられている。第2の溝8は、ケース1の外側に設けられた第2の壁80を備えている。第2の壁80の中央部には切欠き81が形成されている。第2の壁80と切欠き81は、第2の端子3の前後に設けられている。切欠き81は、溝8の水抜きのために設けられている。第3の溝9は、ケース1の外側に設けられた第3の壁90を備えている。第3の壁90の中央部には切欠き91が形成されている。第3の壁90と切欠き91は、第3の端子4の前後に設けられている。切欠き91は、第3の溝9の水抜きのために設けられている。
【0027】
各壁70、80、90の高さは、各端子面21、31、41よりも低く設定されている。
【0028】
図4は、
図2のA-B断面図である。図示のように、第1の端子面21の高さ(ケース1の底面からの高さ)はH1、第1の壁70の高さはH2であり、H1-H2=h1となっている。第1の端子2の高さ(厚さ)はh2である。h1+h2=h3である。h3は、ブスバー10の底面と第1の壁70の上面間の距離である。ブスバー10の底面と壁70の上面間の距離をh3とすることが、後述のように、沿面距離d1を確実に設計値とするための重要な構成となっている。
【0029】
以上の構成の半導体モジュールを電気機器内に設けられている基板上に取り付け、その後、各半導体モジュールにブスバーやケーブル端部をネジ止めする。
【0030】
図5は、4個の半導体モジュールを第2の方向(Y方向)に一定の間隔で配列し、ブスバーを取り付けたときの平面図を示す。
【0031】
4個の半導体モジュールM1~M4は、それぞれ、ケース1の両端に設けられているネジ止め部100、101により、電気機器の筐体内の基板にネジ固定される。
【0032】
平板で細長い金属導体のブスバー10は、
図5においてリブ5に最も近づいたときに、各ケース1の第1のリブに5に設けられている突起51に接する。通常は、ブスバー10はその取り付け時にリブ5の突起51に接することがない。
【0033】
次に、
図6~
図8を用いて、第1の端子2とこれに隣接する第2の端子3間の沿面距離d1と空間距離d2について説明する。沿面距離d1は、端子2、3間の絶縁物の表面に沿った最短距離で、空間距離d2は、端子2、3間の空間を通る最短距離である。
【0034】
図6(A)は、一つのケース1の平面図であり、ケース1の上面から沿面距離d1を示している。また、
図6(B)は、
図6(A)のC-D断面図を示す。これらの図において、A、B、C、Dの各点は、沿面距離d1が上下方向に計測される溝7または8の位置を示す。
【0035】
沿面距離を考える際、1mm未満の空間距離があるかどうかが検討対象となる。すなわち、空間距離が1mm未満の場合は、その空間距離は沿面距離の一部となる。したがって、その部分では、沿面距離は絶縁物に沿った距離ではなくなる。ここで、第1の端子2の厚みが1mm未満の場合、ブスバー10が取り付けられた状態では、ブスバー10の下面と第1の端子面21間の距離h2が1mm未満である。したがって、距離h2は、沿面距離d1の一部となる(
図4参照)。すなわち、沿面距離d1の計測を第1の端子2側からスタートしたとき、沿面距離d1は、ブスバー10の底面⇒第1の端子面21⇒第1の溝7⇒第1のリブ5の側面⇒第2の溝8⇒第2の端子面31⇒第2の端子3までの合計距離となる。
図4において、太線で示す距離は、沿面距離d1の一部を示している。
【0036】
以下、第1の端子2の厚みが1mm未満の場合に、ブスバー10の底面が沿面距離d1のスタート点になることについて詳細に説明する。
【0037】
図4に示すように、ブスバー10の底面と第1の端子面21の距離h2は1mm未満である。このため、第1の端子2とブスバー10間は、絶縁が確保できない。したがって、沿面距離d1のスタート点Pは、第1の端子2の端部ではなく、第1の端子面21に対向するブスバー10の底面となる。沿面距離d1は、P点から第1の端子面21を経て、第1の溝7のA点からB点を経由し、第1の壁70上面に達する。
【0038】
一方、第1の壁70の高さH2は、第1の端子面21の高さH1よりもh1だけ低く形成されている。また、第1の端子2の高さはh2である。したがって、H2を、ブスバー10の底面と第1の壁70上面間の距離h3(=h1+h2)が1mm以上になるような高さに設定することで、h3の空間距離は沿面距離の一部とならない。つまり、沿面距離d1は、第1の壁70の上面に沿って計測される。
【0039】
上記の理由から、沿面距離d1は、
図4、
図6において、以下の(1)~(13)までの距離となる。
【0040】
(1)ブスバー10の底面のスタート点P(
図4参照)
(2)⇒A(第1の溝7の壁面を垂直に降りる)
(3)⇒第1の溝7の底面(第1の溝7の底面を斜めに通過する)
(4)⇒B(第1の溝7の壁面を斜めに上がる)
(5)⇒第1の壁70(第1の壁70上面を斜めに通過する)
(6)⇒E1(第1のリブ5の側面)
(7)⇒E2(第1のリブ5の側面外側を水平に通過する)
(8)⇒第2の壁80(第2の壁80上面を斜めに通過する)
(9)⇒C(第2の溝8の壁面を斜めに降りる)
(10)⇒第2の溝8の底面(溝8の底面を斜めに通過する)
(11)⇒D(第2の溝8の壁面を斜めに上がる)
(12)⇒第2の端子面31
(13)⇒第2の端子3
なお、
図6では、沿面距離d1はB~Dにおいて垂直に降りる(又は上がる)ように示しているが、実際は、上記(4)(9)(11)のように斜めに降りる(又は上がる)。
【0041】
変形例として、第1の端子2の厚みが1mm以上の場合には、h2は十分に長い距離である。この場合は、沿面距離d1のスタート点Pは第1の端子2の左端(
図4)となる。沿面距離d1は、上述の(1)に代わる下記の(1a)(1b)となる。
【0042】
(1a)第1の端子2の左端(
図4)のスタート点P(図示せず)
(1b)第1の端子面21上を第1の溝7まで結ぶ距離
以上のように、
図4に示す実施形態では、沿面距離d1は、ブスバー10の底面のスタート点P(
図4参照)から、第1のリブ5の左右両側において、溝7、8を経路とする。これにより、十分な長さの沿面距離d1を確保できる。
【0043】
参考例として、第1の壁70と第1の端子面21の高さが同じ場合、すなわちH1=H2とした場合の沿面距離d1について説明する。このような場合、沿面距離d1は短くなってしまう。この理由について
図7を参照して説明する。
【0044】
図7では、第1の溝7を設けているが、第1の壁70の高さH2と第1の端子面21の高さH1と同じである。先に述べたように、h2が1mm未満とすると、h2の空間距離は沿面距離の一部として計測される。このため、沿面距離d1のスタート点P´は、第1の壁70の端部に対向するブスバー10の底面となる。すなわち、沿面距離を稼ぐために設けられている溝7を沿面距離d1の一部とすることが出来ない。
【0045】
具体的には、沿面距離d1は、上記(1)~(7)が以下の(14)~(16)となる。上記(8)以降は参考例でも同じである。
【0046】
(14)ブスバー10の底面のスタート点P´(
図7参照)
(15)⇒F(P´から第1の壁70上面の外端部に垂直に下りる。)
(16)⇒第1の壁70から第1のリブ5側面を直線状に通過する。
【0047】
このように、参考例では、本実施形態を示す
図4と比較して、第1の溝7内の上下及び水平に結ぶ距離を活用できず、沿面距離d1が短くなる。
【0048】
他の参考例として、第1のリブ5に突起51を設けない場合の沿面距離d1について説明する。このような構成では、ブスバー10が第1のリブ5の面に接触する可能性がある。そして、ブスバー10が第1のリブ5の面に接触すると、第1の壁70の高さにかかわらず、沿面距離d1のスタート点は、その接触点となる。したがって、沿面距離d1は更に短い。
【0049】
本実施形態では、
図4のように、第1の壁70の高さをH2のように低くしているため、沿面距離d1のスタート点Pは、ブスバー10の第1の端子面21に対向する位置(第1の溝7の内側のAに対向する位置)となる。これにより、第1の溝7が確実に沿面距離d1の一部となる。
【0050】
以上のように、本実施形態では、第1のリブ5の突起51を設けたことと、第1の壁70の高さを第1の端子面21より低くしたことにより、ブスバー10を取り付けた場合に、第1の溝7を沿面距離d1の一部とすることが出来る。そして、第1の壁70の高さH2を、h1+h2=h3が1mm以上になる高さに設定すれば、安全規格を満足することができる。なお、h1を1mm以上にしておけば、h1+h2>1mmとなるから、第1の端子2がh2の薄い端子に変更されても、絶縁が確実となる沿面距離d1を確保できる。
【0051】
次に空間距離d2について説明する。
【0052】
図8(A)は、一つのケース1の上面図であり、ケース1の上面から空間距離d2を上面から示している。また、
図5(B)は、
図5(A)のC-D断面図を示す。
【0053】
空間距離d2は、第1の端子2とこれに隣接する第2の端子3間の、空間を通る最短距離である。ブスバー10が取り付けられた状態では、図示のように、ブスバー10の右端部で第1のリブ5の側面に対向する位置のQがスタート点となる、したがって、空間距離d2は、Q⇒ブスバー10の側面⇒第2の端子3までの空間上の最短距離である。正面視では、空間距離d2は、
図8(B)のように水平である。
【0054】
図8(A)(B)から、空間距離d2は、第1のリブ5の突起51の厚さの分、確実に確保できる。
【0055】
図9は、他の実施形態を示している。
図9(A)~(C)は、突起51の形状を示している。
図9(A)は、正面視で突起51が三角形状であり、
図9(B)は正面視で突起51が第1のリブ5の中央部分から下方に向けて形成されている。
図9(C)は平面視で、突起51がリブ5の左右の両側付近に形成されている。これによると、ブスバー10の取り付け時にその回り止めになる。この場合、二つの突起511、512は、図示のようにリブ5の左右端部から少し離し、前後の第1の溝7よりも内側であることが必要である。また、二つの突起511、512は、第1の端子面21と対向する位置に形成することが必要である。第1の溝7の効果(沿面距離を稼ぐ)を確実に得るためである。
図9(D)は、ブスバー10のネジ孔120の位置を右側に少し偏心させた例を示す。この例では、ブスバー10を、第1のリブ5から離れた位置に取り付けることができる。ブスバー10を上下反対にして取り付けようとすると、ブスバー10の左端部が第1のリブ5に当たってその取り付けが出来なくなる。それにより、沿面距離d1と空間距離d2を長くとることができる。また、ブスバー10の取り付け方向の間違いを防止できる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、第1のリブ5に突起51を設けたことにより、ブスバー10の取り付け時に、ブスバー10と近接の端子との間の沿面距離を確実に確保できる。また、空間距離も長く出来る。
【符号の説明】
【0057】
1-ケース
2-第1の端子
3-第2の端子
4-第3の端子
5-第1のリブ
6-第2のリブ
51-突起