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特許7100656緑内障シャントのためのデリバリーエイド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】緑内障シャントのためのデリバリーエイド
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
A61F9/007 160
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019551399
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018022929
(87)【国際公開番号】W WO2018170433
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】62/473,090
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/922,696
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジェイ.ローバー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー シー.トウラー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-505159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0137981(US,A1)
【文献】特表2008-523917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、
前記本体に流体結合されており、第一の端部、第二の端部及び管腔を含む順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って前記本体に移動させることができるように流体が満たされた体腔の外部に配置可能である順応性流体導管と、
前記流体導管に取り外し可能に結合され、前記管腔内に配置されそして前記流体導管の長さを延長している補剛部材と、
を含み、
前記補剛部材は流体導管の管腔内にコイルを形成しており、および、
前記補剛部材は前記補剛部材の第一の端部及び第二の端部の一方に張力が加えられると解除されるように構成されている、生体流体ドレナージシステム。
【請求項2】
前記補剛部材及び流体導管は組み合わされてアセンブリを形成し、前記アセンブリのカラム強度、横剛性及びフープ強度のうちの1つはそれぞれ前記流体導管のカラム強度、横剛性及びフープ強度を超えている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記補剛部材の端部は、前記補剛部材の端部が移植手順中にアクセス可能であるように、流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、請求項1又は2記載のいずれか1項記載のシステム。
【請求項4】
前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である、請求項1~3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能であるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1~5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
第一の端部及び第二の端部を有しそして管腔を画定している順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って、流体が満たされた体腔の外部の領域に移動可能であるように、生体組織のリザーバの外部に配置可能である、順応性流体導管と、
前記流体導管に結合された補剛部材であって、前記流体導管の管腔内に配置されそして
前記補剛部材及び流体導管が組み合わされてアセンブリを形成するように流体導管の長さを延長し、前記アセンブリのカラム強度は前記流体導管のカラム強度を超えている補剛部材と、
を含み、
前記補剛部材は流体導管の管腔内にコイルを形成しており、および、
前記補剛部材は前記補剛部材の第一の端部及び第二の端部の一方に張力が加えられると解除されるように構成されている、生体流体ドレナージシステム。
【請求項9】
前記流体導管と流体結合された微孔質体をさらに含み、前記流体導管の第二の端部は微孔質体内に配置されている、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記補剛部材は流体導管に取り外し可能に結合されている、請求項8~9のいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である、請求項8~10のいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能になるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項8~12のいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている、請求項8~13のいずれか1項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
房水は、眼の前房を満たす流体であり、眼圧又は眼内の流体圧に寄与する。緑内障は、眼圧の上昇を特徴とする進行性の眼疾患である。眼圧のこの増加は、通常、体に再吸収される房水の量が不十分であることによって生じる。幾つかの場合には、房水は十分に速く吸収されないか又は全く吸収されず、他の場合には、房水は追加的又は代替的に急速に生成されすぎる。眼圧の増加は罹患した眼の緩やかなそして時に永久的な視力喪失に関連する。
【0002】
緑内障を治療するために多くの試みがなされてきた。しかしながら、従来のデバイスの幾つかは、デバイスと周囲組織との間の相対的な動きを回避するために必要な柔軟性、順応性及びデバイス/組織付着性を欠いている。このような動きは、周囲組織の持続的な刺激につながる可能性がある。刺激は、次に、慢性炎症性組織反応の増大、デバイス部位での過剰な瘢痕形成及び結膜を介したデバイス侵食のリスク増加及び眼内炎につながる可能性がある。侵食が起こらない場合に、瘢痕組織は房水の再吸収を有効に阻害する。これらの合併症は、デバイスの適切な機能を阻害するように作用することがある。結果として生じる効果は、眼圧の漸増及び緑内障の進行である。
【発明の概要】
【0003】
概要
一例(「例1」)によれば、生体流体ドレナージシステムは、本体と、前記本体に流体結合されており、第一の端部、第二の端部及び管腔を含む順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って前記本体に移動させることができるように流体が満たされた体腔の外部に配置可能である順応性流体導管と、前記流体導管に取り外し可能に結合され、前記管腔内に配置されそして前記流体導管の長さを延長している補剛部材を含む。
【0004】
例1に加えて、別の例(「例2」)によれば、前記補剛部材及び流体導管は組み合わされてアセンブリを形成し、前記アセンブリのカラム強度、横剛性及びフープ強度のうちの1つはそれぞれ前記流体導管のカラム強度、横剛性及びフープ強度を超えている。
【0005】
例1及び例2のいずれかに加えて、別の例(「例3」)によれば、前記補剛部材の端部は、前記補剛部材の端部が移植手順中にアクセス可能であるように、流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している。
【0006】
上記の例のいずれかに加えて、別の例(「例4」)によれば、前記補剛部材は流体導管の管腔内にコイルを形成している。
【0007】
例4に加えて、別の例(「例5」)によれば、前記補剛部材は、前記補剛部材の第一の端部及び第二の端部の一方に張力が加えられると解体されるように構成されている。
【0008】
上記の例のいずれかに加えて、別の例(「例6」)によれば、前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である。
【0009】
例6に加えて、別の例(「例7」)によれば、前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能であるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している。
【0010】
上記の例のいずれかに加えて、別の例(「例8」)によれば、前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0011】
上記の例のいずれかに加えて、別の例(「例9」)によれば、前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている。
【0012】
上記の例のいずれかに加えて、別の例(「例10」)によれば、前記補剛部材の軸方向長さは、流体導管とは独立して補剛部材に張力が加わると増加するように構成されている。
【0013】
別の例(「例11」)によれば、生体流体ドレナージシステムは、第一の端部及び第二の端部を有しそして管腔を画定している順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って、流体が満たされた体腔の外部の領域に移動可能であるように、生体組織のリザーバの外部に配置可能である、順応性流体導管と、前記流体導管に結合された補剛部材であって、前記流体導管の管腔内に配置されそして前記補剛部材及び流体導管が組み合わされてアセンブリを形成するように流体導管の長さを延長し、前記アセンブリのカラム強度は前記流体導管のカラム強度を超えている補剛部材とを含む。
【0014】
例11に加えて、別の例(「例12」)によれば、前記システムは流体導管と流体結合された微孔質体をさらに含み、前記流体導管の第二の端部は微孔質体内に配置されている。
【0015】
例11~12のいずれかに加えて、別の例(「例13」)によれば、前記補剛部材は流体導管に取り外し可能に結合されている。
【0016】
例11~13のいずれかに加えて、別の例(「例14」)によれば、前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である。
【0017】
例14に加えて、別の例(「例15」)によれば、前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能になるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している。
【0018】
例11~15のいずれかに加えて、別の例(「例16」)によれば、前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0019】
例11~16のいずれかに加えて、別の例(「例17」)によれば、前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている。
【0020】
別の例(「例18」)によれば、方法は、チューブを通して延在している管腔を有するチューブを提供すること、前記チューブの管腔が体に流体結合されるように、チューブを体に結合すること、及び、前記チューブの管腔内に補剛部材を配置し、それにより、前記補剛部材がチューブの管腔から取り外し可能であり、前記補剛部材及びチューブが組み合わされてアセンブリを形成することを含み、ここで、前記アセンブリのカラム強度はチューブのカラム強度を超える。
【0021】
例18に加えて、別の例(「例19」)によれば、前記アセンブリの横剛性はチューブの横剛性を超え、前記アセンブリのフープ強度はチューブのフープ強度を超える。
【0022】
例18~19のいずれかに加えて、別の例(「例20」)によれば、前記チューブの管腔内に補剛部材を配置することは、マンドレルの周りに長尺要素を巻いてマンドレルの周りにコイルを形成すること、前記コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔内に配置され、前記コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔から取り外し可能であるように、前記コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成すること、及び、前記長尺要素がチューブの管腔内にコイル巻きされた状態を維持するように前記マンドレルを除去することを含む。
【0023】
例20に加えて、別の例(「例21」)によれば、前記コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成することは、コイル巻きされた長尺要素の周りにフィルムを巻き付けることを含む。
【0024】
例21に加えて、別の例(「例22」)によれば、前記フィルムはテープである。
【0025】
例20~22のいずれかに加えて、別の例(「例23」)によれば、前記長尺要素は繊維であり、前記フィルム及び繊維の一方はフルオロポリマーである。
【0026】
例23に加えて、別の例(「例24」)によれば、前記フルオロポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレンである。
【0027】
例18~24のいずれかに加えて、別の例(「例25」)によれば、前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記方法は、第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しそして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するようにして、前記第二の補剛部材がチューブの側壁を通って延在するように、前記チューブの管腔内に第二の補剛部材を配置することをさらに含み、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である。
【0028】
例25に加えて、別の例(「例26」)によれば、前記第一の補剛部材及び第二の補剛部材は独立してチューブの管腔から取り外し可能である。
【0029】
別の例(「例27」)によれば、方法は、マンドレルの周りに長尺要素を巻いて、マンドレルの周りにコイルを形成すること、コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔内に配置され、コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔から取り外し可能であるように、コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成すること、及び、長尺要素が補剛部材を画定するように、長尺要素をチューブの管腔から取り除くことなくマンドレルを取り除くことを含む。
【0030】
例27に加えて、別の例(「例28」)によれば、前記長尺要素は繊維である。
【0031】
例27~28のいずれかに加えて、別の例(「例29」)によれば、前記コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成することは、コイル巻きされた長尺要素の周りにフィルムを巻き付けることを含む。
【0032】
例29に加えて、別の例(「例30」)によれば、前記フィルムはテープである。
【0033】
例30に加えて、別の例(「例31」)によれば、前記フィルムは膜である。
【0034】
例29~31のいずれかに加えて、別の例(「例32」)によれば、前記フィルム及び繊維の一方はフルオロポリマーである。
【0035】
例32に加えて、別の例(「例33」)によれば、前記フルオロポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレンである。
【0036】
例27~33のいずれかに加えて、別の例(「例34」)によれば、方法は、前記チューブの管腔が微孔質体に流体結合されるように、チューブを微孔質体に結合することをさらに含み、前記補剛部材は微孔質体の内部に延在している。
【0037】
例27~34のいずれかに加えて、別の例(「例35」)によれば、前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記方法は、第二の補剛部材の第一の部分がチューブの側壁を通して延在しそして前記第二の補剛部材がチューブの管腔から取り外し可能であるように第二の補剛部材をチューブの管腔内に配置することをさらに含む。
【0038】
例35に加えて、別の例(「例36」)によれば、第二の補剛部材をチューブの管腔内に配置することは、第二の補剛部材がチューブの側壁を穿孔するように、チューブが形成された後にチューブの管腔に第二の補剛部材を挿入することを含む。
【0039】
例35~36のいずれかに加えて、別の例(「例37」)によれば、前記第一の補剛部材及び第二の補剛部材は独立してチューブの管腔から取り外し可能である。
【0040】
別の例(「例38」)によれば、方法は、第一の端部、第二の端部及び前記第一の端部から第二の端部まで延在している管腔を有するチューブを提供すること、ここで、第一の補剛部材は、前記補剛部材及び前記チューブが組み合わされてチューブ状アセンブリを形成するようにチューブの管腔内に延在しており、前記チューブ状アセンブリのカラム強度がチューブのカラム強度を超え、前記チューブ状アセンブリの横剛性がチューブの横剛性を超え、また、前記チューブ状アセンブリのフープ強度がチューブのフープ強度を超えるかの少なくともいずれかである、
チューブの第一の端部の位置を固定することと、を含み、
【0041】
チューブの第二の端部を生物組織の流体リザーバ内の位置まで前進させること、及び、チューブが生体組織の流体リザーバ内の流体の排出のための流体導管として動作するように、チューブから第一の補剛部材を除去することを含む。
【0042】
例38に加えて、別の例(「例39」)によれば、前記チューブはチューブの管腔内に延在している第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材はチューブの側壁を通って延在しており、前記方法は、生体組織を第二の補剛部材の端部により穿刺すること、及び、前記チューブの第二の端部が前記流体リザーバ内の位置へと前進されるまで第二の補剛部材及びチューブの第二の端部を前進させることを含む。
【0043】
例38~39のいずれかに加えて、別の例(「例40」)によれば、前記チューブの第一の端部の位置を固定することは、患者の目の組織層の間にチューブの第一の端部を配置することを含み、前記流体は患者の眼の前房内の房水である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図面の簡単な説明
添付の図面は本開示の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を構成し、例を示し、記載とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0045】
図1図1は本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0046】
図2A図2Aは本開示の様々な態様と一貫する収縮状態の緑内障ドレナージシステムの図である。
【0047】
図2B図2Bは本開示の様々な態様と一貫する膨張状態の緑内障ドレナージシステムの図である。
【0048】
図3図3図2に示された緑内障ドレナージシステムの分解図である。
【0049】
図4図4A~4Dは本開示の様々な態様と一貫する狭窄性拡散膜界面表面の図である。
【0050】
図5図5は本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0051】
図6図6は本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0052】
図7A図7Aは本開示の様々な態様と一貫する収縮状態の緑内障ドレナージシステムの図である。
【0053】
図7B図7Bは本開示の様々な態様と一貫する膨張状態の緑内障ドレナージシステムの図である。
【0054】
図8図8は本開示の様々な態様と一貫する流体導管の図である。
【0055】
図9A図9Aは本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0056】
図9B図9Bは、図9Aの緑内障ドレナージシステムの領域9Bの詳細図であるが、それは断面ではない。
【0057】
図9C図9Cは、本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0058】
図9D図9Dは、本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0059】
図10A図10Aは、本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの図である。
【0060】
図10B図10Bは、線10B-10Bに沿って取った図9Aの緑内障ドレナージシステムの断面図である。
【0061】
図10C図10Cは、線10C-10Cに沿って取った図9Aの緑内障ドレナージシステムの断面図である。
【0062】
図11図11は、本開示の様々な態様と一貫する緑内障ドレナージシステムの分解図である。
【0063】
図12図12は、本開示の様々な態様と一貫する眼組織内に移植された緑内障ドレナージシステムの図である。
【0064】
図13図13は、本開示の様々な態様と一貫する眼組織内に移植された緑内障ドレナージシステムの図である。
【0065】
複数の実施形態が開示されているが、さらに他の実施形態は例示的な実施例を示しそして説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は本質的に例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
詳細な説明
本開示で提供される発明概念の様々な実施形態は、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを当業者は容易に理解するであろう。また、本明細書で言及される添付の図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を示すために誇張されている可能性があり、その点で、図面は限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。本明細書で使用されるときに、用語「拡散膜」は1つ以上の増殖性拡散膜及び/又は1つ以上の狭窄性拡散膜を包含することが意図される。
【0067】
本開示の様々な態様は、緑内障ドレナージデバイス、ドレナージシステム及びドレナージ方法を対象とする。より具体的には、本開示は、体によって再吸収されうるように、患者の目の前房から房水を排出するためのデバイス、システム及び方法に関する。眼の前房から排出された房水の再吸収のためのメカニズムを提供することは、眼圧を低下させるか、又は、そうでなければ安定化させるように動作する。
【0068】
幾つかの実施形態による緑内障ドレナージシステム1000は図1に示されている。緑内障ドレナージシステム1000は、目の前房などの流体が満たされた体腔からの房水などの流体の排出を促進するように動作する移植可能な医療システムである。緑内障ドレナージシステム1000は、流体導管1500、及び、房水拡散部材1002などの本体を含む。以下の開示は、眼の前房から房水を排出するのに使用するための緑内障ドレナージシステム1000に言及しているが、描かれた緑内障ドレナージシステム1000は、他の流体で満たされた体腔から他の流体を排出するように構成及び利用できることは当業者によって理解及び認識されるべきである。幾つかの例において、以下により詳細に説明するように、緑内障ドレナージシステム1000はさらに、排出された流体の体による再吸収を促進するのに役立つ。例えば、幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000は、排出された房水と、房水を吸収する能力を有しかつ排出された房水と相互作用するのに十分に緑内障ドレナージシステム1000に近接している組織、導管及び/又は細胞との間の界面を提供する。したがって、幾つかの例において、眼の前房から排出された房水は体に再吸収される前に緑内障ドレナージシステム1000を通過する。
【0069】
幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000が移植されるときに、房水は流体導管1500を通って前房から排出される。次いで、排出された房水は、房水拡散部材1002のリザーバに入り、そして房水拡散部材1002の1つ以上の多孔質膜を通して浸透し、次いで、房水は体によって再吸収されうる。様々な実施形態において、房水透過性に加えて、緑内障ドレナージシステム1000の1つ以上の領域に沿って組織の内部成長は許容又は促進される。例えば、房水拡散部材1002の外部は1つ以上の膜を含むか又はそれによって画定されることができ、前記膜は多孔性であるか又はさもなければ流体で満たされた体腔の流体に対して透過性であり(以下、拡散膜と呼ぶ)、そして組織の内部成長を許容する又は促進するように構成されている。緑内障ドレナージシステム1000の表面に沿って又はその領域内での組織の内部成長を許容することは、緑内障ドレナージシステム1000の周囲組織(例えば、目の組織)への生体統合を促進し、排出された房水の周囲組織による再吸収を促進するのに役立つ。さらに、組織の内部成長及び付着を含む生体統合は、緑内障ドレナージシステム1000と、前記緑内障ドレナージシステム1000の周囲の組織との間の相対的な動きを最小限に抑えるのに役立ち、異物組織応答、瘢痕形成、及び/又は緑内障ドレナージシステム1000の侵食及び部位感染を引き起こしうる眼組織の刺激を回避するのに役立つ。
【0070】
幾つかの例において、以下でより詳細に議論されるように、緑内障ドレナージシステム1000の流体導管は柔らかくて順応性の生体適合性チューブ状構造である。したがって、幾つかの例において、緑内障ドレナージシステム1000は緑内障ドレナージシステム1000のデリバリー/移植を支援するのに役立つ、流体導管1500と取り外し可能に一体化された補剛部材をさらに含む。すなわち、幾つかの例において、緑内障ドレナージシステム1000は流体導管に一時的な剛性を提供するための取り外し可能な構成要素(例えば、補剛部材)を含み、そのことは医師が緑内障ドレナージシステムの流体導管及び/又は本体を操作するのに役立つ。そのような構成は、緑内障ドレナージシステム1000が移植される組織(例えば、眼組織)及び解剖学的構造のプロファイルに適合するのに順応性で動作可能であり、一方、刺激及び/又は正常な身体機能(例えば、目の瞬き)との干渉を避けるために最小限のプロファイルを維持し、容易に移植可能である緑内障ドレナージシステム1000を提供し、そのような柔らかく順応性の構造はさもなければ解剖学的構造内で操作し、適切に方向付けることが困難であろう。
【0071】
様々な実施形態において、房水拡散部材1002は流体導管1500を通って前房から排出される房水のリザーバを画定する内部領域を含む。房水拡散部材1002の内部領域は、多孔性であるか、又は、さもなければ流体で満たされた体腔の流体に対して透過性である1つ以上の膜(以下、拡散膜と呼ばれる)を含むことができる。例えば、以下により詳細に議論されるように、1つ以上の拡散膜は、ポリマー材料などの多孔質媒体から作られることができ、それは多孔質媒体の細孔空間を通して流体を輸送するのに適した微細構造を有する。したがって、幾つかの実施形態において、リザーバは房水拡散部材1002を形成する1つ以上の拡散膜の細孔空間によって画定されうる。幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は、リザーバが房水拡散部材1002を形成する2つ以上の拡散膜の間に追加的に又は代替的に形成されるように構成されうる。例えば、幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002を形成する隣接配置された拡散膜の間の表面領域の少なくとも一部は、隣接配置された拡散膜がそれらの表面領域の少なくとも一部に沿って互いに分離してリザーバを形成しそして画定するように動作可能となるように、結合又は付着されていないままである。幾つかの実施形態において、以下でさらに議論されるように、緑内障ドレナージシステム1000が正常な眼機能(例えば、回転及び瞬きを含む通常の眼運動)を妨げないように、隣接配置された拡散膜の間に画定されるリザーバは制御された様式で(膨張時に所定のプロファイルに)膨張又は拡張するように動作可能であろう。
【0072】
様々な実施形態において、房水拡散部材1002は患者の解剖学的構造内に移植可能であるようなサイズ及び形状である。例えば、幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は、切開された結膜下空間内(例えば、患者の眼の強膜と結膜との間)に移植可能なサイズ及び形状である。幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は薄い円形部材である。幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は厚さ(例えば、第一の外面1004と第二の外面1006との間で測定される距離)が0.5mm以下であり、例えば、0.1mm~0.5mmである。しかしながら、人体の異なる解剖学的構造を仮定すると、房水拡散部材1002は0.5mmを超えてもよいが、ただし、その厚さは眼の正常な機能(例えば、旋回及び瞬き)を妨げず、又は、移植時に緑内障ドレナージシステム1000と周囲組織との間に望ましくない相対運動が起こり、組織刺激、異物組織応答及び/又は過度の瘢痕形成をもたらす程度まで房水拡散部材1002の柔軟性を実質的に低下させない。
【0073】
幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は5mm~15mmの範囲、例えば10mmの直径を有することができる。幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は卵形であってよく、約30mm以下の主要寸法(例えば、楕円の長軸に沿った)及び対応して約10mm以下の短軸寸法(例えば、楕円の長軸に沿った)を含むことができる。上述のように、人体の異なる解剖学的構造を仮定すると、房水拡散部材1002は、そのような寸法(例えば、15mm、10mm及び30mm)を超えることができ、ただし、そのようなサイズは正常な眼の機能(例えば、旋回及び瞬き)を実質的に妨げず、又は、移植時に緑内障ドレナージシステム1000と周囲組織との間に望ましくない相対運動が起こり、組織刺激、異物組織応答及び/又は過度の瘢痕形成をもたらしうるほど房水拡散部材の柔軟性を実質的に低下させない。同様に、房水拡散部材1002は直径が5mm未満、3mm未満又はさらに3mm未満であることができ、ただし、房水拡散部材1002は、十分な程度の排出された房水を収容するように動作可能であり、そして患者の効果的な治療を構成するように房水の再吸収を促進するように動作可能である。
【0074】
様々な実施形態において、流体導管1500は、体内に移植されたときに、リザーバと、流体で満たされた体腔(例えば、眼の前房)と流体的に連結するように動作し、それにより、リザーバと、緑内障ドレナージシステム1000に対して外部環境(例えば、大気)との間の差圧は得られる。したがって、移植時に、リザーバ内の圧力は、少なくとも部分的に、流体で満たされた体腔内の圧力(例えば、眼の前房の眼圧)に基づいていることを理解されたい。幾つかの実施形態において、そのような差圧により、リザーバが膨張又は拡張する。さらに、幾つかの実施形態において、そのような差圧は、房水を房水拡散部材1002の拡散膜を通して浸透させる。すなわち、幾つかの実施形態において、排出された房水はリザーバに入り、そして房水拡散部材1002の拡散膜を通って浸透し、次いで、房水は体によって再吸収されうる。
【0075】
ここで、図2A及び2Bを参照すると、複数の拡散膜を含む房水拡散部材1002を含む緑内障ドレナージシステム1000が示されている。房水拡散部材1002は第一の外面1004、前記第一の外面1004の反対側の第二の外面1006及び周縁1008を含む。図2Aは収縮状態の緑内障ドレナージシステム1000を示す。図2Bは膨張状態の緑内障ドレナージシステム1000を示しており、房水は膨張可能又は拡張可能なリザーバ1010内に存在する。緑内障ドレナージシステム1000は、緑内障ドレナージシステム1000が均一に膨張されていない膨張状態で図2Bに示されているが(例えば、第一の増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜1100及び1200は概して非直線状形態を取るように示されており、一方、第二の増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜1300及び1400は概して直線状形態で示されている)、緑内障ドレナージシステム1000は均一に変形し得ることを理解されたい(例えば、第二の増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜1300及び1400は、第一の増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜1100及び1200の変形を鏡像化した様式で変形しうる)。房水拡散部材1002は、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400と、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300とを含む複数の拡散膜によって画定される本体を含む。幾つかの実施例において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400ならびに第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は図示されるように互いにスタックされて、房水拡散部材1002を形成する。さらに後述するように、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は組織の内部成長及び付着を許容するように構成されており、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成されている。
【0076】
幾つかの実施形態において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は、房水拡散部材1002の外側を形成又はさもなければ画定し、一方、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400の間に位置し、房水拡散部材1002の内部領域を画定している。様々な実施形態において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400ならびに第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、各々が、排出された房水(例えば、密閉されたリザーバ内に配置された房水)がそれを通して浸透し及び/又はそれを横切って拡散することができるように構成されている点でそれぞれ房水に対して透過性である。しかしながら、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は組織の内部成長及び付着を可能にするように構成されており、一方、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成されている。図2A及び図2Bに示されるように増殖性拡散膜の間に挟まれた又はさもなければ配置された狭窄性拡散膜の構成は、例えば、狭窄性拡散膜内に存在する穿孔又は小さな孔のサイズを超える細菌の侵入及び/又は目の前房へのその移行を最小限に抑制するのに役立つ。
【0077】
様々な例において、房水拡散部材1002の第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は、微孔質であり、房水に対して透過性であり、導管及び組織の内部成長及び/又は付着を許容するように構成されている。様々な実施形態において、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300も微孔質であり、房水に対して透過性であるが、導管及び組織構造の内部成長及び付着に抵抗性であるか、又はそうでなければ最小限に抑制するように構成されている。したがって、様々な実施形態において、房水拡散部材1002は、少なくとも第一の増殖性拡散膜1100及び少なくとも第一の狭窄性拡散膜1200を含む複数の別個の拡散膜から作製されている。
【0078】
図2A及び2Bに示す緑内障ドレナージシステム1000は、別離の区別される第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400を含むが、房水拡散部材1002は別離の区別される第二の増殖性拡散膜1400を必要とせずに、第一の増殖性拡散膜1100を含むことができることを理解されたい。例えば、第一の増殖性拡散膜1100は、第一の増殖性拡散膜1100が房水拡散部材1002の狭窄性拡散膜部分(例えば、第一及び/又は第二の狭窄性拡散膜1200及び1300)を包囲するように折り畳まれることができる。幾つかのそのような実施形態において、増殖性拡散膜1100の折り畳まれた部分の1つ以上の部分は、増殖性拡散膜1200の折り畳まれていない部分の隣接部分及び/又は房水拡散部材1002の狭窄性拡散膜部分の1つ以上の部分に結合又は溶接される。追加的に又は代わりに、図2A及び2Bに示す緑内障ドレナージシステム1000は、別離の区別される第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300を含むが、房水拡散部材1002は、別離の区別される第二の狭窄性拡散膜1300を必要とせずに、第一の狭窄性拡散膜1200を含むことができることを理解されたい。例えば、第一の狭窄性拡散膜1200は、それ自体の上に折り重ねられて、多層狭窄性拡散膜を形成することができ、狭窄性拡散膜1200の折り畳まれた部分の1つ以上の部分は、狭窄性拡散膜1200の折り畳まれていない部分の隣接部分に結合又は溶接される。さらに、増殖性拡散膜1100は折り畳まれた狭窄性拡散膜1200の周りにさらに折り畳まれてもよく、狭窄性拡散膜1200は流体導管1500とともにそれ自体の上に折り畳まれ、前記流体導管は狭窄性拡散膜1200の折り畳まれた部分と折り畳まれていない部分の間に位置する。幾つかのこのような実施形態において、狭窄性拡散膜1200の少なくとも折り畳まれた部分と折り畳まれていない部分との間にリザーバを画定することができる。
【0079】
図3は、図2A及び2Bに示される緑内障ドレナージシステム1000の分解図である。図3に示されるように、房水拡散部材1002は、第一の増殖性拡散膜1100、第一の狭窄性拡散膜1200、第二の狭窄性拡散膜1300及び第二の増殖性拡散膜1400によって画定されている本体を含む。図示されるように、様々な増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜は、それぞれ、界面表面及び周縁を含む。例えば、第一の増殖性拡散膜1100は、第一の界面表面1102、第二の界面表面1104及び周縁1106を含む。幾つかの例において、第一の増殖性拡散膜1100の第一の界面表面1102は、緑内障ドレナージシステム1000の外面1004に対応し又はさもなければそれを画定している。さらに、図3に示されるように、第一の狭窄性拡散膜1200は、第一の界面表面1202、第二の界面表面1204及び周縁1206を含む。同様に、図3に示されるように、第二の狭窄性拡散膜1300は、第一の界面表面1302、第二の界面表面1304及び周縁1306を含む。図示されるように、第二の増殖性拡散膜1400は、第一の界面表面1402、第二の界面表面1404及び周縁1406を含む。幾つかの例において、第二の増殖性拡散膜1400の第二の界面表面1404は、緑内障ドレナージシステム1000の第二の外面1006に対応するか又はさもなければそれを画定している。
【0080】
種々の実施形態において、房水拡散部材1002を形成する拡散膜(すなわち、増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜)は、スタック構成で互いに隣接して配置される。例えば、図2A、2B及び3に示すように、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400ならびに第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、スタック構成で互いに隣接して配置され、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は、房水拡散部材1002の外側を形成し又はさもなければそれを画定しており、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400の間に挟まれ、又はさもなければ配置される。このように、房水拡散部材1002の外部領域を形成している増殖性拡散膜は、組織の内部成長及び付着を支持又は許容するように構成されており、一方、房水拡散部材1002の内部領域を形成している狭窄性拡散膜は、増殖性拡散膜と狭窄性拡散膜との間の境界又は界面を超えて又はそれに対して内部への組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成されている。
【0081】
狭窄性拡散膜を超えて又はそれに対して内部への組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止することにより、緑内障ドレナージシステム1000はリザーバ1010への組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止し、そのことは緑内障ドレナージシステムの生体統合中又はその後に、その性能を維持するのに役立つ。例えば、狭窄性拡散膜への組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止し、このようにして、リザーバ1010は緑内障ドレナージシステム1000の柔軟性を維持するように動作し、これは、本明細書で議論されているように、緑内障ドレナージシステム1000及び周囲組織の間の相対的な動きを最小限に抑制するのに役立ち、このようにして周囲組織の刺激を最小限に抑制するのに役立つ。特に、狭窄性拡散膜への組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止することにより、隣接する狭窄性拡散膜の間の界面を超えて組織が増殖するのを回避するのに役立ち、したがって、このような組織の内部成長が狭窄性拡散膜をインターロックするのを回避するのに役立つ。狭窄性拡散膜のインターロックを回避することは、狭窄性拡散膜が互いに対して摺動しそして移動することができる能力を維持するのに役立ち、緑内障ドレナージシステム1000の柔軟性を維持するのに役立つ。
【0082】
幾つかの例において、以下でさらに議論されるように、房水拡散膜1002は隣接して配置された拡散膜の界面表面が互いに向き合うように構成されている。幾つかの例において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400ならびに第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、それらの周縁が互いに位置合わせされ及び/又は同軸になるように配向される。幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002の本体を形成する拡散部材の1つ以上の周縁は房水拡散部材1002の周縁1008を形成する。例えば、図2A及び2Bに示されるように、周縁1106、1206、1306及び1406は、集合的に、房水拡散部材1002の周縁1008を形成し又は画定している。しかしながら、房水拡散部材1002の周縁は房水拡散性部材1002の本体を形成している拡散膜のすべての周縁より少しの周縁から形成されうることを理解されたい。例えば、幾つかの例において、房水拡散部材1002の周縁1008は、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400の周縁1106及び1406によって形成又は画定されることができる。
【0083】
上述のように、様々な実施形態において、隣接して配置される拡散膜は、一般に、それらの界面表面の1つ以上が隣接して配置される拡散膜の界面表面に隣接して配置されるか、又は、さもなければ向かい合うように配向される。すなわち、様々な実施形態において、隣接して配置される拡散膜の界面表面は互いに向かい合っている。図2A、2B及び3に示される実施形態において、第一の増殖性拡散膜1100及び第一の狭窄性拡散膜1200は、第一の増殖性拡散膜1100の第二の界面表面1104が第一の狭窄性拡散膜1200の第一の界面表面1202に向かい合うように隣接して配置される。同様に、図2A、2B及び3に示されるように、第一の狭窄性拡散膜1200及び第二の狭窄性拡散膜1300は、第一の狭窄性拡散膜1200の第二の界面表面1204が第二の狭窄性拡散膜1300の第一の界面表面1302に向かい合うように隣接して配置される。同様に、図2A、2B及び3に示されるように、第二の狭窄性拡散膜1300及び第二の増殖性拡散膜1400は、第二の狭窄性拡散膜1300の第二の界面表面1304が第二の増殖性拡散膜1400の第一の界面表面1402に向かい合うように隣接して配置される。
【0084】
したがって、幾つかの実施形態において、上記のようなスタック構成は、第一及び第二の界面表面を有する第一の拡散膜ならびに第一及び第二の界面表面を有する第二の拡散膜を提供し、ここで、第一及び第二の拡散膜は、第一の拡散膜の第二の界面表面が第二の拡散膜の第一の界面表面に向かい合うように隣接して配置される。
【0085】
様々な実施形態において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400ならびに第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は他のポリマーの1つ以上の層又はシートを含むか、又は、それらから形成されることができ、上記の他のポリマーは、例えば、限定するわけではないが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン又はポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ポリオレフィン、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、アクリルコポリマー及びその他の適切なフルオロコポリマーである。これらのポリマーは、シート状、編物状又は織物状(個々又はマルチファイバーのストランドを含む)又は不織布状の多孔質形態でありうる。幾つかの例において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400及び/又は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の1つ以上は、ポリマー材料の複数の層又はシートから形成されうる。幾つかのそのような例において、ポリマー材料の層又はシートは、熱処理及び/又は高圧圧縮及び/又は接着剤及び/又は当業者に知られている他のラミネート化方法などにより、ラミネート化又はさもなければ機械的に一緒に結合されうる。幾つかの実施形態において、以下でより詳細に説明するように、ポリマー材料の層を明確な位置で一緒に結合して、得られる増殖性及び/又は狭窄性拡散膜を通って延在する安定化構造を形成することができる。同様に、幾つかの実施形態において、以下でより詳細に説明するように、増殖性及び/又は狭窄性拡散膜を明確な位置で一緒に結合して、得られる房水拡散部材1002を通って延在する安定化構造を形成することができる。上述のように、このような安定化構造は、リザーバ1010の膨張又は拡張時に房水拡散部材1002の形状又はプロファイルを拘束するように動作可能であることを理解されたい。
【0086】
幾つかの実施形態において、第一及び/又は第二の増殖性拡散膜1100及び1400及び/又は第一及び/又は第二の狭窄性拡散膜1200及び1300を形成するポリマー材料の層又はシートは、ポリマー材料の自然な透過性(例えば、房水の透過性)を増加又は減少させるためにそれらの微細構造(及び、したがって、その材料特性)を変更するための加工の前又は後に1つ以上のプロセスに供されることができる。幾つかの例において、そのようなプロセスとしては、限定するわけではないが、材料コーティングプロセス、表面事前条件調節プロセス及び/又は穿孔プロセスが挙げられる。当業者が理解するように、材料コーティングプロセスを利用して、ポリマー材料の多孔質空間を少なくとも部分的に充填し、それにより透過性を低減することができる。追加的に又は代わりに、材料コーティングプロセスを使用して、ポリマー材料の表面に1種以上の薬物又は抗菌コーティング(例えば、炭酸銀などの金属塩)及びポリマー材料に有機化合物(例えば、クロルヘキシジンジアセテート)を塗布することができる。
【0087】
幾つかの実施形態において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400の一方又は両方及び/又は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の一方又は両方は親水性でありうる。幾つかの実施形態において、第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400の一方又は両方及び/又は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の一方又は両方は疎水性であることができる。したがって、幾つかの例において、房水拡散部材1002は1つ以上の親水性膜及び1つ以上の疎水性膜を含むことができる。
【0088】
したがって、ポリマーマトリックスの湿潤を可能にする親水性コーティングは、ポリマー表面が本質的に疎水性である場合に適用されてもよい。抗酸化剤成分を含む表面コーティングは、術後の創傷治癒中に自然に発生する体の炎症反応を緩和するために適用されうる。目における周囲組織の応答を緩和するために、抗増殖性化合物(例えば、マイトマイシンC、5-フルオラシル)で表面を変性することができる。幾つかの例において、Zaglらの米国特許第9,849,629号明細書で説明されているように、1つ以上の表面事前条件調節プロセスを追加的又は代替的に利用して、好ましい微細構造(例えば、しわ、折り目又は他の幾何学的面外構造)を示す層を形成することができる。そのような表面事前条件調節は術後のより大胆な初期炎症期を促進し、多孔性デバイスと組織との間に早期に安定した界面を提供することができる。幾つかの例において、ヘパリンコーティング(例えば、耐血栓性)を追加的又は代替的に適用して、外科的移植手順後のフィブリノーゲン蓄積を含む細胞形成を最小限に抑制し又は低減するのに役立つことができる。
【0089】
幾つかの実施形態において、ポリマー材料に自然に発生する穿孔又は小孔に加えて、1つ以上の穿孔プロセスを追加的又は代替的に利用して、ポリマー材料に複数の穿孔又は小孔を形成することができる。そのことはポリマー材料の自然な透過性(例えば、房水に対する透過性)を増加させるように動作する。そのような穿孔プロセスは、ポリマー材料に存在する穿孔又は小孔の数を増加させることができ、及び/又は、ポリマー材料に存在する穿孔又は小孔の平均サイズを増加させることができ、そして、増殖性及び/又は狭窄性拡散膜の形成の前及び/又は後に行うことができる。幾つかの実施形態において、第一及び/又は第二の増殖性拡散膜1100及び1400及び/又は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の透過性は、房水のフラックス及び/又は流れ抵抗を所望の量に調整又はさもなければ変更するために変えることができる。
【0090】
様々な実施形態において、第一及び/又は第二の増殖性拡散膜1100及び1400は、サイズ(又は平均サイズ)が20ミクロン~100ミクロンの範囲の穿孔又は小孔を含むことができる。他の例において、第一及び/又は第二の増殖性拡散膜1100及び1400の穿孔又は小孔のサイズ(又は平均サイズ)は150ミクロンを超えることができる。様々な実施形態において、第一及び/又は第二の増殖性拡散膜1100及び1400は、20ミクロン未満であるが、1又は2ミクロンより大きい穿孔又は小孔を含むことができ、一般に、1ミクロン又は2ミクロンより小さい穿孔又は小孔は導管及び他の組織の内部成長を阻害し、抵抗し又はさもなければ防止するからである。
【0091】
したがって、様々な実施形態において、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、その中の穿孔又は小孔のサイズ(平均サイズ)が一般に1ミクロン又は2ミクロン未満であるように構成又は選択され、房水透過性を維持しながら、組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止する。
【0092】
第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400は同じ又は異なる透過性を有するように構成されうることを理解されたい。同様に、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は同じ又は異なる透過性を有するように構成されうることを理解されたい。幾つかの例において、本明細書で議論されている様々な増殖性及び狭窄性拡散膜は同じ固有の透過性を有することができるが、本明細書で議論される材料変更プロセスの1つ以上を受けて異なる相対透過性を達成することができる。幾つかの実施形態において、本明細書で議論される1つ以上の材料変更プロセスは、ポリマー材料の自然に発生する透過性を変更又はさもなければ変化させるように動作する。したがって、幾つかの実施形態において、増殖性及び/又は狭窄性拡散膜の透過性は、ポリマー材料の自然に発生する微細構造及び/又は本明細書で論じる1つ以上の材料変更プロセスに基づくことができる。当業者は、透過性は一般に多孔質媒体の細孔空間を通って輸送する流体の抵抗に関連し、低透過性に関連する材料は、より高い透過性を有する材料よりも大きな流れ抵抗を示すことを理解するであろう。
【0093】
幾つかの実施形態において、増殖性及び狭窄性拡散膜の穿孔又は小孔は1つ以上の塩包含プロセスにより、又はドリリング、ダイパンチング、ニードルパンチング又はレーザ切断プロセスの1つ以上の使用によって形成されうる。これは増殖性及び/又は狭窄性拡散膜の形成の前及び/又は後に行うことができる。
【0094】
一般に、上記のプロセスを利用して、周囲の導管及び他の組織の内部成長を可能にし、房水に対して透過性である微細構造を有する増殖性拡散膜を形成することができる。同様に、上記のプロセスを利用して、周囲の導管及び他の組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止する微細構造を有するが、房水に対して透過性である狭窄性拡散膜を形成することができる。狭窄性及び増殖性拡散膜を横切って浸透及び/又は拡散する房水は、増殖性拡散膜内に成長した導管及び/又は房水拡散部材1002に対して外部にある導管に吸収され、及び/又は、周囲組織を通して涙膜内に浸透することができる。
【0095】
上述のように、幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000のリザーバ1010と緑内障ドレナージシステム1000の外部環境(例えば、大気圧)との間で観察される差圧は、緑内障ドレナージシステム1000の房水拡散部材1002を通した房水の流れを促進するメカニズムである。幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000内及びその周囲に成長した導管によって、排出された房水の再吸収及び輸送のメカニズムは前房からの房水の排出を促進する。
【0096】
しかしながら、排出された房水の再吸収及び輸送を促進することに加えて、房水拡散部材1002の増殖性拡散膜内への組織、導管及び細胞の内部成長はまた、異物組織反応の発症を予防し、軽減し、最小限に抑制し又は制限するのに役立つことを理解されたい。具体的には、上述のように、組織の内部成長及び付着は、緑内障ドレナージシステム1000と眼の組織との間の相対的な動きを最小限に抑制するのに役立つ。このような相対的な動きを最小限に抑制することを助けることにより、緑内障ドレナージシステム1000は、発生する可能性があり、過剰な瘢痕形成及び/又は緑内障ドレナージ1000の侵食及び部位感染を引き起こす可能性のある異物組織反応につながることができる眼組織の刺激を回避するのに役立つ。
【0097】
幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002の本体を形成する1つ以上の隣接して配置された拡散膜は、一緒に連結又はさもなければ結合される。幾つかの実施形態において、隣接して配置された拡散膜は、それらの隣接して対向している界面表面に沿った1つ以上の区別される部分又は領域で結合される。幾つかの実施形態において、隣接して配置された拡散膜は、隣接した1つの縁(又は複数の縁)の少なくとも一部に沿って結合されうる。他の実施形態において、隣接して配置された拡散膜は、追加的又は代替的に、1つの縁(又は複数の縁)の内側の隣接する表面に沿った1つ以上の区別される位置で結合されうる。さらに他の実施形態において、隣接して配置された拡散膜は、それらの隣接して対向する界面表面の全体に沿って結合されうる(例えば、隣接して対向する界面表面の表面領域全体に接着剤を塗布する)。したがって、幾つかの実施形態において、1つ以上の隣接して配置された拡散膜は、それらの隣接して対向する界面表面のすべてよりも小さい領域で(例えば、区別される位置又はその一部で)結合されるか、又は、対向する界面表面全体に沿って結合されうる。
【0098】
隣接して配置された拡散膜が、それらの隣接して対向する界面表面のすべてよりも小さい部分に沿って結合されている実施形態において、隣接して対向する界面表面に沿った1つ以上の区別される位置は連結又はさもなければ結合される一方、隣接して対向する界面表面に沿った1つ以上の他の区別される位置は連結又はさもなければ結合されていない。すなわち、幾つかの実施形態において、隣接して対向する界面表面の少なくとも1つの領域又はエリアは意図的に付着されず、接着されず又はさもなければ結合されていないままである。
【0099】
幾つかのそのような実施形態において、これらの非結合領域又はエリアは、周縁に対して中央にある領域又はエリアを含むことができる。一般に、これらの非結合領域又はエリアは互いに対して自由に移動又は摺動し、互いに対して分離して、排出された房水の蓄積のためのリザーバとして機能することができる。様々な例において、そのような自由度(例えば、せん断時)の提供はかなりの柔軟性を提供する。というのは、目の自然な動きの際のように、房水拡散部材1002が曲げられて動くときに曲率の変化に適合するように拡散膜は互いに対して動くことができるからである。したがって、拡散膜の結合の不連続性は、より良好な眼の適合性を示し、患者が瞬きし、焦点を合わせ、眼窩で目を動かすときに、目2000の曲率の変化に動的に応答するのにより適している緑内障ドレナージシステム1000を提供する。より剛性のある従来の設計とは異なり、柔軟性の向上はまた、周囲組織に対する緑内障ドレナージシステム1000の動きも最小限に抑制する。
【0100】
ここで、図4A~4Dを参照すると、結合領域及び非結合領域(例えば、接合及び非接合)領域を含む界面表面の例は示されている。図4Aは、隣接して対向する第一及び第二の界面表面1204及び1302の間に位置する境界(4-4、図2)に沿って取った第二の界面表面1204の断面図であり、明確化のために流体導管1500は除去している。上述のように、幾つかの実施形態において、隣接して対向する界面表面が結合領域及び非結合領域を含むように、隣接して対抗する界面表面を複数の区別される位置で互いに結合することができる。図4Aは、第一の狭窄性拡散膜1200の第二の界面表面1204を示し、それは、第二の界面表面1204が、周縁1206に沿った結合に加えて、第二の狭窄性拡散膜1300の隣接して対向する第一の界面表面1302に結合されている結合領域1210(クロスハッチング領域として示される)を含む。図4Aに示されるように、第一の狭窄性拡散膜1200の第二の界面表面1204は非結合領域1208(クロスハッチング領域の間及び周囲の領域として示される)も含み、ここで、第二の界面表面1204は、第二の狭窄性拡散膜1300の隣接して対向する第一の界面表面1302に対して、隣接しているが結合されていない。図4Aのこの図示の例において、隣接して対向する第一及び第二の界面表面1204及び1302は、非結合領域1208に沿って互いに対して自由に摺動及び移動する。さらに、これらの非結合領域1208は、互いに自由に分離して房水の蓄積のためのリザーバ1010を形成する。
【0101】
図4A図4Dに示されている第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の間の非結合領域1208は、互いに自由に分離してリザーバ1010を形成するが、結合領域1210は結合したままであるように構成されることを理解されたい。様々な例において、これらの結合領域1210は、リザーバ1010が膨張又は拡張する際に緑内障ドレナージシステム1000のプロファイルを制御するように動作する。
【0102】
図4Bは、隣接して対向する第一及び第二の界面表面1204及び1302の間に位置する境界(4-4、図2)に沿って取った第二の界面表面1204の断面図である。図4Bは、第二の界面表面1204が中央に位置する結合領域1210(クロスハッチング領域として図示)を含み、第二の界面表面1204が周縁1206に沿って結合されていることに加えて、第二の狭窄性拡散膜1300の隣接して対向する第一の界面表面1302に結合されている別の構成を示す。図示されていないが、図4B及び4Aの結合構成は全体的又は部分的に組み合わせることができることを理解されたい。
【0103】
図4Cは、第二の界面表面1204が周縁に配置された結合領域1210(クロスハッチング領域として示される)を含み、第二の界面表面1204が第二の狭窄性拡散膜1300の隣接して対向する第一の界面表面1302に結合されている別の構成を示す。図示されていないが、図4C、4B及び/又は4Aの結合構成は全体的又は部分的に組み合わせることができることを理解されたい。
【0104】
図4Dは、第二の界面表面1204が周縁に位置する結合領域1210及び同心環状内側結合領域1210(両方ともクロスハッチング領域として示される)を含み、第二の界面表面1204が第二の狭窄性拡散膜1300の隣接して対向する第一の界面表面1302に結合されている別の代替構成を示す。図4Dに示す構成は、房水の蓄積のための2つの区別されるリザーバの可能性を含むものである。第一のリザーバは、周縁1206付近の周縁に位置する結合領域1210の半径方向内側の同心環状内側結合領域1210の半径方向内側の非結合部分1208に対応する。第二のリザーバは、同心環状内側結合領域1210及び周縁に位置する結合領域1210の間に位置する、周囲に位置する非結合部分1208に対応する。図4Dに示される構成の第一の流体導管が第一のリザーバに流体的に結合され、一方、第二の流体導管が第二のリザーバに結合されることを理解されたい。あるいは、単一の流体導管が、流体導管の対応する開口部などにより、図4Dに示される第一及び第二のリザーバの両方と流体的に結合されてもよい。別の代替例において、第一及び第二のリザーバが流体的に結合されるように、同心環状内側結合領域1210のすべてよりも少ない部分が結合解除されてもよい。図示されていないが、図4D、4C、4B及び/又は4Aの結合構成は全体的又は部分的に組み合わせることができることを理解されたい。
【0105】
図4A~4Dは第二の界面表面1204の例示的な結合及び非結合(例えば、接合及び非接合)領域を示しているが、隣接して対向する第一の界面表面1302は、第二の界面表面1204の結合領域及び非結合領域にそれぞれ対応する結合領域及び非結合領域を含むことも理解されたい。さらに、図4A~4Dの例示の実施形態は本開示を図示の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。代わりに、当業者は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、実質的にいかなるパターンの結合領域及び非結合領域も利用できることを理解するであろう。
【0106】
第一の増殖性拡散膜1100と第一の狭窄性拡散膜1200との境界は図示されていないが、隣接して対向する第一及び第二の界面表面1202及び1104は、境界全体にわたって均一に結合されても、又は、上記の実施形態に応じて結合されてもよいことを理解されたい。同様に、第二の増殖性拡散膜1400と第二の狭窄性拡散膜1300との間の境界は図示されていないが、隣接して対向する第一及び第二の界面表面1402及び1304は、境界全体にわたって均一に結合されても、又は、上記の実施形態に応じて結合されてもよいことを理解されたい。
【0107】
前述のように、隣接する拡散膜は、1つ以上の熱処理プロセス及び/又は1つ以上の接着剤などの1つ以上の結合剤によって互いに連結又は結合することができる。幾つかの実施形態において、隣接して配置された拡散膜及び/又は拡散膜を形成する材料の層は、各材料がそれらの融解温度以上になると、熱的方法により部分的に又は完全に結合される。幾つかの実施形態において、そのような熱プロセスは、ポリマー材料又はポリマー材料の層の間の接着又は凝集結合の形成を促進する。幾つかの実施形態において、拡散膜を形成する隣接して配置された拡散膜は、材料の少なくとも1つがその融解温度以上になると、熱的方法により部分的に又は完全に結合される。幾つかの実施形態において、そのような熱プロセスは、材料又は材料の層の間の接着又は凝集結合の形成を促進する。幾つかの実施形態において、1つ以上の適切な接着剤を利用して、十分に結合された界面を提供し、前記界面は連続的であることか又は不連続的であることができる。
【0108】
上述のように、様々な実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000は、眼の前房(AC)から房水を排出するように動作可能又はさもなければ構成されている。幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム1000は、少なくとも図1に示されるように、流体導管1500を含む。様々な実施形態において、流体導管1500は、房水拡散部材1002の内部にまで延在し、房水拡散部材1002と眼の前房とを流体的に結合する順応性チューブ状構造(例えば、カテーテル)である。流体導管1500は前房からの流体の流出を提供する。図3に示すように、流体導管1500は第一の端部1502及び第二の端部1504、ならびに第一の端部1502から第二の端部1504まで延在している管腔を含む。一般に、流体導管1500は、シリコーン、ePTFE、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、PVDF、PHFP、PFA、ポリオレフィン、FEP、アクリルコポリマー及び他の適切なフルオロコポリマーから単独で又は組み合わせて形成され、又は、順応性流体導管1500を形成するのに適した他の生体適合性ポリマーから形成されることができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、流体導管1500はチューブ状溶融押出プロセスにより形成される。幾つかの実施形態において、押出された流体導管1500は最終目標寸法まで引き下げられることができる。幾つかの実施形態において、流体導管1500は、所望の壁厚、多孔性、剛性及び/又は寸法を生じさせるのに見合ったチューブペースト押出及び膨張(延伸)プロセスを介して形成される。幾つかの実施形態において、流体導管1500は、指定された寸法及び断面のマンドレルの周りにテープが巻き付けられる1つ以上のテープ巻き付けプロセスにより形成される。幾つかの実施形態において、マンドレルから取り外す前又は後に、1つ以上の熱又は接着方法によって巻き付けられたテープをそれ自体にさらに結合させることができる。様々な実施形態において、巻き付けられたテープ構成(例えば、本明細書で論じられるとおりのePTFE又は他の適切な材料)は、異なる多孔度を有する異なる層を有する流体導管1500構造を提供する。例えば、内側巻き付け層は、外側巻き付け層よりも多孔性であることができる。幾つかの実施形態において、流体導管1500は、適切なサイズのマンドレル上に材料を連続的に浸漬コーティングし、次いで、形成された流体導管1500から溶媒を除去し、マンドレルを抜き出すことにより形成される。
【0110】
幾つかの実施形態において、流体導管1500の管腔の直径は、前房から房水拡散部材1002への流体導管1500を通る房水の流れを可能にするのに十分なものであるが、正常な目の機能を有意に阻害し又は損なう外径を有する流体導管1500にはしない(例えば、瞬き又は規則的な目の動きを妨げない)ものである。
【0111】
上述のように、流体導管1500は、房水が前房から排出され、房水拡散部材1002に、特に房水拡散部材1002の内部領域内に画定されるリザーバにデリバリーされうるように、房水拡散部材1002を眼の前房に流体結合する。したがって、流体導管1500は、眼の前房と房水拡散部材1002が取り付けられる又はさもなければ統合される眼の位置との間に延在するように構成される。幾つかの実施形態において、流体導管1500の長さは1mm~30mmであることができるが、一般的に、流体導管1500の長さは、医師が患者の特有の解剖学的構造に要求される特定の長さまでその長さをトリミングできるように過剰サイズである(又は必要以上に長い)。しかしながら、様々な実施形態において、流体導管1500の管腔の長さ及び直径は、流体導管1500にわたる圧力降下が流体導管1500の長さの関数であるから、低血圧(例えば、危険なほど低い眼圧)のリスクを最小化するために長さにわたる圧力降下を制御するように事前に選択されている。幾つかの実施形態において、流体導管1500は、移植されるときに理論的に期待される圧力降下に対応するカットオフ長さ識別手段で事前にマークされうる。このような構成は、医師に、患者の特定のニーズに合わせて圧力降下を特別に調整する選択肢を与える。そのような実施形態において、流体導管1500を所望の圧力降下に対応する長さにトリミングした後に、医師は、場合により、流体導管1500の第一の端部1502をさらに前房内に進めるか、あるいは、房水拡散部材1002を流体導管1500の前房への貫通点から前房内(例えば、さらに目の周囲)に配置し、所望の長さを受け入れる。
【0112】
様々な実施形態において、流体導管1500は多孔質であっても又は非孔質であってもよく、又は多孔質部分と非孔質部分の組み合わせを含んでもよい。例えば、幾つかの実施形態において、流体導管1500は、第一の部分(又は領域)及び第二の部分(又は領域)によって画定される長さを有することができる。幾つかの実施形態において、第一の部分は非孔質部分であり、第二の部分は多孔質部分であることができる。幾つかの実施形態において、非孔質部分は房水に対して不透過性である一方、多孔質部分は房水に対して透過性である。したがって、幾つかの実施形態において、流体導管1500によって前房から排出された房水は、流体導管1500の多孔質部分を通って浸透することができる。例えば、前房内の流体導管1500の部分は房水又は細胞浸透に対して不浸透性である外面を有することができ、一方、前房の外部の流体導管1500の部分は、細胞浸潤及び組織の内部成長及び生体統合を許容するか、又はさもなければ可能にすることができる。幾つかの実施形態において、流体導管1500の内面は房水に対して不透過性であることができ、細菌の進入ならびに導管及び組織構造の内部成長を最小限に抑制するように構成されている。
【0113】
幾つかの実施形態において、流体導管1500の多孔質部分は、1つの領域(例えば、流体導管1500の長さの一部)を上記の1つ以上の穿孔プロセスに供して複数の穿孔を対象領域に形成することによって形成されうる。しかしながら、流体導管1500は房水に対して透過性である部分を含む必要はない。
【0114】
一般に、緑内障ドレナージシステム1000を通る房水の流れは、眼圧と房水拡散部材1002内の圧力との圧力差によって支配される(例えば、大気圧などの、房水拡散部材1002に対して作用する力の関数である)。これらの圧力領域間の圧力差により、房水が前房から緑内障ドレナージシステム1000に流れるようになる。幾つかの実施形態において、房水が緑内障ドレナージシステム1000を流れる速度はこの圧力差及び流れに対する抵抗によって支配される。幾つかの実施形態において、流れに対する抵抗は流体導管フラックス抵抗(例えば、チューブの幾何形状、直径及び長さに基づき、一般にハーゲンポアズイユ式に基づく)及び房水拡散部材1002を通る房水のフラックス抵抗の関数であり、当業者が理解するとおりである。幾つかの実施形態において、上述のように、房水拡散部材1002を通る房水のフラックス抵抗は房水拡散部材1002を形成している基礎をなす材料の透過性によって制御することができる。
【0115】
上述のように、流体導管1500は柔らかくて順応性がある生体適合性のチューブ状構造である。幾つかの実施形態において、流体導管1500は低いカラム強度を示し、一般にその自重を支えることができないという点で順応性がある。すなわち、幾つかの実施形態において、流体導管1500は、その自重の下で崩壊(例えば、流体導管1500を通って延在している内側管腔の崩壊)を回避するために必要である十分な量の構造的完全性(例えば、圧縮フープ強度)を欠いている。
【0116】
幾つかの実施形態において、前房の眼圧は、流体導管1500の略チューブ状の幾何学的形状を維持する(例えば、内腔1506Aの崩壊を回避する)ように膨張し又はさもなければ動作する。すなわち、幾つかの実施形態において、流体導管1500の管腔を通って流れる房水は管腔を膨張させるように動作する。そのような構成は、目の曲率に順応し、通常の目の機能(例えば、回転及び瞬き)を妨害するのを回避する、柔らかく柔軟な流体導管1500を提供する。幾つかの実施形態において、流体導管1500は、代わりに、その略チューブ状の幾何学的形状を維持し及び/又は内腔の崩壊を回避するのに十分な量の構造完全性を示すように構築されうることを理解されたい。
【0117】
図3を再度参照すると、幾つかの実施形態において、流体導管1500は第一の端部1502及び反対側の第二の端部1504を含む。幾つかの実施形態(図3に図示せず)において、流体導管1500は、第一の端部1502から第二の端部まで延在している管腔を含む。幾つかの実施形態において、第一の端部1502は前房内に挿入可能であり、そして第二の端部1504は房水拡散部材1002に挿入され又はさもなければ取り付けられる。幾つかの実施形態において、第一の端部1502は第一の端部1502が前房の内部領域内に延在するように前房内に配置可能である。
【0118】
幾つかの実施形態において、流体導管1500の第一の端部1502を前房内に配置した後に、流体導管1500を固定して、前房内からの流体導管1500の外れを回避することができる。幾つかの実施形態において、流体導管1500及び/又は房水拡散部材1002を眼組織に結合するために、1つ以上の縫合は利用される。幾つかの実施形態において、生体適合性組織接着剤を使用して流体導管1500及び/又は房水拡散部材1002を周囲又は隣接組織に結合する。幾つかの実施形態において、流体導管1500の配置の前に組織を通して作られるニードルトラックは、針管の長さにわたって流体導管1500との十分な界面適合を提供するようなサイズにすることができる。幾つかの実施形態において、流体導管1500の第一の端部1502は、追加的又は代替的に、流体導管1500の他の部分(例えば、中央部分)(又は流体導管1500が延在している組織内の管腔)よりも大きな直径に広がり、眼の前房内の第一の端部1502の配置を維持するのに役立つ干渉アタッチメントを作成することができる。幾つかの例において、流体導管1500の広がった第一の端部1502は流体導管1500が前房内の位置から外れることを回避するのに役立つ。
【0119】
幾つかの実施形態において、流体導管1500の第二の端部1504は、緑内障ドレナージシステム1000が体内に移植されたときに、房水拡散部材1002内に画定されるリザーバが流体導管1500、したがって、流体で満たされた体腔(例えば、目の前房)と流体結合されるように、房水拡散部材1002と結合される。幾つかの実施形態において、流体導管1500の第二の端部1504は、リザーバを画定する第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の間などの、房水拡散部材1002の内部に延在しているか、又はさもなければそこを終端とする。例えば、図5に示されるように、流体導管1500は、流体導管1500が房水拡散部材1002の内部を終端とするように、房水拡散部材1002に結合されている。すなわち、幾つかの実施形態において、第二の端部1504は、第二の端部1504で流体導管1500を出る排出房水が周縁1008に対して内部のある位置で始まる房水拡散部材1002に拡散するか又はさもなければ注入されるように房水拡散部材1002に結合されている。図5に互いに分離されて示されていないが、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、上述のように、リザーバが膨張可能又は拡張可能になるように互いに分離するように動作可能であることを理解されたい。
【0120】
図5に示すように、矢印1602に沿って流体導管1500を通って移動する房水は、流体導管1500の第二の端部1504を出て、リザーバ1010に拡散するか又はさもなければ注入される。上述のように、リザーバ1010は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の細孔空間及び/又は第一の狭窄性拡散膜1200と第二の狭窄性拡散膜1300との間に画定される領域を含むことができる。図5に示されるように、房水は、流体導管1500を出てリザーバ1010内に入るように示されており、リザーバは少なくとも第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の間に画定された領域を含む。
【0121】
排出された房水が房水拡散部材1002の狭窄性拡散膜を通って浸透するときに、房水は一般に、矢印1604A~1604Eで示されるように、房水拡散部材1002の外側に向かって浸出する。矢印1604A~1604Eは、房水の実際の経路を表すことを意図するものではなく、房水が房水拡散部材1002のリザーバ1010などの内部領域から離れて又は少なくとも流体導管1500の第二の端部1504から離れて浸透していくことを表すことを意図することを理解されたい。
【0122】
幾つかの他の実施形態において、流体導管1500の第二の端部1504は房水拡散部材1002の周縁1008に結合されている。例えば、図6に示すように、流体導管1500の第二の端部1504は、房水拡散部材1002にその周縁1008で結合されている。すなわち、幾つかの実施形態において、第二の端部1504は、第二の端部1504で流体導管1500を出る排出房水が、房水拡散部材1002の周縁1008で又はその近傍で始まる第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300中に拡散するか又はさもなければ注入されるように、房水拡散部材1002に結合されている。
【0123】
そのような幾つかの実施形態において、排出された房水が房水拡散部材1002を通って浸透するときに、房水は房水拡散部材1002の内部に向かって浸透することができ、及び/又は房水拡散部材1002の外部に向かって浸透することができる。幾つかの実施形態において、上述のように、流体導管1500を通って移動する房水は第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の間の流体導管1500の第二の端部1504から出る。同様に上述したように、房水は房水拡散部材1002のリザーバ1010に入り、前記リザーバは第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の間に画定されることができ、又は、追加的又は代替的に、第一の狭窄性拡散膜1200及び1300の細孔空間に対応することができる。上述のように、緑内障ドレナージシステム1000は、排出された房水が房水拡散部材1002の内部から房水拡散部材1002の外部に向かって浸透することができるように構成されている。
【0124】
図6の矢印1604A~1604Cは房水拡散部材1002を概して浸透している房水を表している。示されるように、矢印1604Aは、房水拡散部材1002をほぼ房水拡散部材1002の内部領域に向かって浸透している房水を表し、一方、矢印1604B及び1604Cは、房水拡散部材1002を通して、ほぼ房水拡散部材1002の外部に向かって浸透している房水を表す。上述のように、矢印1604A~1604Cは房水の実際の経路を表すことを意図したものではなく、代わりに、房水が流体導管1500の第二の端部1504から少なくとも離れて浸透していることを意図していることを理解されたい。図6では互いに分離していることを示していないが、第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300は、互いから分離してそれらの間にリザーバ1010を画定するように動作可能であることが理解されるであろう。
【0125】
様々な実施形態において、流体導管1500の第二の端部1504は、接着剤、溶接、縫合又は1つ以上の機械的締結によって房水拡散部材1002の周縁1008に結合されうる。幾つかの実施形態において、流体導管1500の第二の端部1504は、材料又は材料の層の間に接着又は凝集結合を作成するために上記の1つ以上の熱結合方法により周縁1008に結合されうる。
【0126】
様々な実施形態において、流体導管1500は、第二の端部1504で流体導管1500を出る排出房水が増殖性拡散膜に拡散する前に狭窄性拡散膜に拡散するように房水拡散部材1002に結合されている。例えば、図5及び図6に示されるように、流体導管1500の第二の端部1504は、第二の端部1504で流体導管1500を出る排出房水が第一及び第二の増殖性拡散膜1100及び1400に拡散する前に第一及び第二の狭窄性拡散膜1200及び1300の1つ以上に拡散するように房水拡散部材1002に結合されている。
【0127】
従来の設計とは異なり、緑内障ドレナージシステム1000は柔らかくて柔軟性であり、その房水拡散部材1002の内部にある中空房水リザーバの保持を必要としない。従来の透過性中空房水リザーバは、それゆえ、その体積を保持するために十分に剛性でなければならない。したがって、緑内障ドレナージシステム1000と比較して、従来の設計は比較的硬く、組織とデバイスとの間の相対的な動きを引き起こしやすく、したがって、従来のデバイスの過剰な瘢痕形成及び侵食につながる可能性がある組織刺激を引き起こしやすい。
【0128】
上述のように、様々な実施形態において、房水拡散部材1002は互いに摺動又はさもなければ移動することができる隣接して対向する界面表面を有する1つ以上の隣接して配置された拡散膜を含む。幾つかの実施形態において、前房から排出されて房水拡散部材1002に導入される房水は、そのような界面表面間の摩擦を低減し、非結合部分又は領域間の摺動又は相対運動をさらに促進する潤滑剤として作用する。具体的には、房水が房水拡散部材1002に入るときに、房水は様々な拡散膜を横切って浸透しそして拡散する。房水が拡散膜を横切って浸透しそして拡散するときに、隣接して配置された拡散膜を分離する境界を横切って幾らかの房水は拡散する。幾つかの実施形態において、房水が境界を横切って拡散するときに、房水は境界の界面表面間の摩擦を減らす潤滑剤として作用し、房水拡散部材1002の柔軟性がさらに増す。
【0129】
上述のように、幾つかの実施形態において、流体導管1500は柔らかくて柔軟性であり、一般に、自重下に崩壊することを回避するのに十分な量の構造完全性(例えば、フープ強度)を欠く。幾つかの実施形態において、この構造完全性の欠如は、それを通して延在している管腔がその断面積の有意な部分を失う程度まで、流体導管1500の変形をもたらす。幾つかの実施形態において、この構造完全性の欠如により、前房内の房水が流体導管1500の管腔に入ることも有意に制限される程度まで、流体導管1500が変形する。幾つかの実施形態において、これらの潜在的リスクを回避するために、流体導管1500は、管腔完全性を維持し、管腔の崩壊又は有意な変形を回避するように動作できるという点で、その1つ以上の端部は十分に構造的に健全であるように構成されうる。そのような実施形態において、第一及び/又は第二の端部1502及び1504の間に位置する流体導管1500の中間部分はその自重を支えることができないという点で一般に構造的に健全ではない。例えば、前房内に配置される流体導管1500の端部(又は末端部分)は、管腔完全性を維持し、管腔の崩壊又はさもなければ有意な変形を回避するように動作可能であるように構成されている。この例において、流体導管1500の構造的に健全な端部が前房の房水内に懸架され、したがって組織刺激を引き起こしうるようには組織と相互作用しないため、剛性による相対運動及び組織刺激に関連する上記のリスクは一般に回避される。
【0130】
様々な実施形態において、流体導管1500の材料は、1つ以上の材料条件調整プロセスを受けて、構造的に健全な第一及び/又は第二の端部を達成することができる。幾つかの実施形態において、1つ以上のステント又はストラット又は補強リングなどの1つ以上の構造部材を第一及び/又は第二の端部1502及び1504に組み込んで、統合し又は結合して、上述の構造完全性を達成することができる。これらのステント、ストラット及び/又は補強リングは、本明細書で論じられる任意の適切な生体適合性金属又はポリマー材料(例えば、FEP)から形成されうる。幾つかの実施形態において、流体導管1500の第一及び/又は第二の端部1502及び1504に対する局所的高密度化は、体組織によって端部に加えられる閉鎖力に抵抗するのに十分な程度までその構造完全性を高めることができる。
【0131】
本明細書で図示及び記載される房水拡散部材1002は、4つの拡散膜によって画定された本体を含むが、代替的に、房水拡散部材1002の本体は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、3つだけの拡散膜又は4つを超える拡散膜によって画定されてもよい。例えば、上記の実施形態は、複数の狭窄性拡散膜及び複数の増殖性拡散膜を含む房水拡散部材1002を含むが、幾つかの実施形態において、房水拡散部材1002は、複数の増殖性拡散膜の間に挟まれた狭窄性拡散膜を含む。例えば、ここで、図7A及び7Bを参照すると、緑内障ドレナージシステム7000は示されており、第一の増殖性拡散膜7100、第一の狭窄性拡散膜7200及び第二の増殖性拡散膜7300によって画定されている房水拡散部材7002を含む。示されるように、第一の狭窄性拡散膜7200は第一及び第二の増殖性拡散膜7100及び7300の間に配置されている。第一の狭窄性拡散膜7200は、組織の内部成長及び付着を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成され、一方、第一及び第二の増殖性拡散膜7100及び7300は組織の内部成長及び付着を許容するように構成されている。図7Aは収縮状態の緑内障ドレナージシステム7000を示している。図7Bは膨張状態の緑内障ドレナージシステム7000を示し、房水は第一の増殖性拡散膜7100と第一の狭窄性拡散膜7200との間で画定されている膨張可能又は拡張可能なリザーバ7010内に存在する。緑内障ドレナージシステム7000は緑内障ドレナージシステム7000が均一に膨張していない膨張状態(例えば、第一の増殖性膜7100は概して非線形構成を採用し、第二の増殖性拡散膜7300及び狭窄性拡散膜7200は概して線形構成で示される)で図7Bに示されているが、緑内障ドレナージシステム7000は均一に変形することができることを理解されたい(例えば、第二の増殖性拡散膜7300及び狭窄性拡散膜7200は第一の増殖性拡散膜7100の変形を鏡像化するように変形することができる)。流体導管7500は第一の狭窄性拡散膜7200と第一及び第二の増殖性拡散膜7100及び7300の一方との間に配置されうる。示されるように、流体導管7500は、第一の狭窄性拡散膜7200と第一の増殖性拡散膜7100との間に配置される。狭窄性拡散膜及び増殖性拡散膜は、上記の議論と一貫するように、それらの隣接する表面領域全体に沿って一緒に結合されてもよく、又は、1つ以上の非接着又は非結合エリア又は領域を含んでもよい。
【0132】
図7Bに示されるように、第一の狭窄性拡散膜7200及び第一の増殖性拡散膜7100は、それらの周縁に沿って結合されているが、その内部に非接着又は非結合領域を含み、リザーバ7010を画定している。したがって、第一の狭窄性拡散膜7200と第一の増殖性拡散膜7100との間の非接着又は非結合領域は、房水がリザーバ7010に入ると、リザーバ7010が膨張又は拡張するときに、互いに分離することができる。
【0133】
図7A及び図7Bに示される緑内障ドレナージシステム7000の構成は狭窄性拡散膜と増殖性拡散膜との間に画定されるリザーバ7010を含むことを理解されたい。そのような構成により、組織の内部成長がリザーバの一方の側に沿って許容され、組織の内部成長がリザーバのもう一方の側に沿って最小限に抑制され、抵抗され又は防止される。さらに、狭窄性拡散膜及び増殖性拡散膜は異なる透過性に関連しているので、排出された房水は狭窄性拡散膜及び増殖性拡散膜を異なる速度で浸透するであろう。
【0134】
幾つかの実施形態において、房水が異なる膜に拡散又は浸透するこれらの異なる速度を利用して、房水拡散部材を通る房水に影響を与え、指向させ又はさもなければ「操縦」することができる。幾つかの実施形態において、房水拡散部材は、房水のより高い割合(又はより高い体積)が房水拡散部材の第二の外面に向かうよりも房水拡散部材の第一の外面に向かうように構成されうる。同様に、幾つかの実施形態において、房水拡散部材は、房水の一部が房水拡散部材の周縁に向けられるように構成されうる。そのような構成により、排出房水をより吸収し、涙膜への吸収をより促進するように適合された周囲組織の領域など、周囲組織の指定された領域に向けて、排出房水を操縦できる。
【0135】
例えば、図7A及び7Bを引き続いて参照すると、幾つかの実施形態において、第一の増殖性拡散膜7100は、第一の狭窄性拡散膜7200のフラックスよりも高いフラックスであり、したがって、房水のより高い割合(又はより高い体積)が第二の増殖性拡散膜7400に沿って延在している外面に向かって操縦される房水の割合(又は体積)に比べて、第一の増殖性拡散膜7100に沿って延在している外面に向かって操縦される。幾つかの実施形態において、このような構成は、追加的に又は代替的に、第二の狭窄性拡散膜のフラックスよりも高いフラックスを有する第一の狭窄性拡散膜を形成することにより達成されうることを理解されたい。幾つかの実施形態において、このような構成は、追加的又は代替的に、第二の増殖性拡散膜のフラックスよりも高いフラックスを有するように第一の増殖性拡散膜を形成することによって達成される。幾つかの実施形態において、そのような構成は、追加的又は代替的に、異なる境界が異なるフラックスに関連付けられるように、隣接して配置された拡散膜の間に境界を形成することによって達成されうる。異なるフラックスに関連する異なる境界は、隣接して配置された拡散膜が互いに接着又は結合される方法によって達成されうる。
【0136】
図7A及び7Bに示される緑内障ドレナージシステム7000は、第一の増殖性拡散膜7100と第一の狭窄性拡散膜7200との間に配置された流体導管7500と、第一の増殖性拡散膜7100と第一の狭窄性拡散膜7200との間に画定されているリザーバ7010とを含むが、第一の狭窄性拡散膜は、ポリマー材料の複数のラミネート化層から形成されてよく(上記のように)、流体導管7500はポリマー材料の隣接する層の間に配置されてよいことを理解されたい。追加的又は代替的に、幾つかの例において、狭窄性膜を形成するポリマー材料の1つ以上の隣接して対向する層は、上記の議論と一貫して、1つ以上の非接着、非結合又は非ラミネート化エリア又は領域を含むことができ、それにより、ポリマー材料の隣接して対向する層の非接着、非結合又は非ラミネート化エリア又は領域は互いから自由に分離され、互いに対して摺動又は移動し、少なくとも部分的にリザーバ7010を画定することができる。
【0137】
本明細書に例示及び記載される房水拡散部材は、一般に薄く、平らで、円形(又は卵形)であるが、房水拡散部材は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、いかなる適切な形状であってもよいことを理解されたい。例えば、房水拡散部材は、正方形、矩形、台形又は他の多角形であってよく、辺の間に面取り又は丸みを帯びた縁を含んでよく、辺は本質的に直線状又は概して湾曲していてもよい。あるいは、房水拡散部材は、円形又は卵形であるか、又は別の適切な形状(例えば、豆形)であるという点で、ほぼ連続した湾曲した縁を有することができる。したがって、本明細書に含まれる実施形態及び例示は、限定として解釈されるべきではなく、当業者は、房水拡散部材が排出された房水を十分な程度に収容し、房水の再吸収を促進して、患者に対する有効な治療を構成するのに役立つかぎり、房水拡散部材はいかなる所望の形状であってもよいことを理解するであろう。
【0138】
幾つかの代替実施形態において、房水拡散部材は、同心円状に配置された複数の拡散膜を含むチューブ状又は円筒状プロファイルを有することができる。例えば、房水拡散部材は、チューブ状狭窄性拡散膜及びチューブ状増殖性拡散膜を含むことができ、ここで、チューブ状狭窄性拡散膜は増殖性拡散膜と同心の内側拡散膜に対応し、増殖性拡散膜は房水拡散膜部材の外側を画定している。ここで、図8を参照すると、緑内障ドレナージシステム8000は示されており、内側チューブ状狭窄性拡散膜8200と同心である外側チューブ状増殖性拡散膜8100によって画定されている房水拡散部材8002を含む。房水拡散部材8002の一部は房水拡散部材800の内部領域を露出するように切り取られて示されている。示されるように、リザーバ8010は、内側チューブ状狭窄性拡散膜8200の中央管腔内に画定されており、流体導管8500は、房水拡散部材8002の第二の端部8006でリザーバ8010と流体結合されている。幾つかの実施形態において、図8に示される房水拡散部材8002の同心状拡散膜は、本明細書で論じられるように、互いに非結合又は部分的に非結合であることができる。幾つかの実施形態において、房水拡散部材8002の少なくとも1つの端部(例えば、流体導管8500と反対側の第一の端部8004)は、房水拡散部材8002の同心拡散膜を通して排出房水を浸透させるためにシールされている。
【0139】
上述のように、様々な実施形態において、流体導管は眼の前房に挿入可能な柔軟で順応性のチューブ状部材である。一般に、医師が採用する特定の外科的アプローチに関係なく、1つ以上の流体導管及び房水拡散部材は移植手順中に前進又は押される。柔らかく、薄く、順応性の構成要素は、一般に、移植手順中に組織を通って前進することが困難である。したがって、様々な実施形態において、本明細書に記載の緑内障ドレナージシステムは、緑内障ドレナージシステムと取り外し可能に一体化された補剛部材をさらに含むことができる。取り外し可能な補剛部材は、流体導管とともに動作して、流体導管のカラム強度を超えるカラム強度を有する設置アセンブリを一時的に形成する。
【0140】
さらに、本明細書で議論される緑内障ドレナージシステムは房水拡散部材を含み、生体流体(例えば、房水)に対して透過性であり、組織の内部成長を許容するように構成された1つ以上の拡散膜を含み、また、生体流体(例えば、房水)に対して透過性であり、組織の内部成長に抵抗するように構成された1つ以上の拡散膜を含むものとして記載されているが、本明細書で議論される補剛部材はいかなる柔らかく、順応性の流体導管とともに利用されて、流体導管のカラム強度を超えるカラム強度を有する設置アセンブリを形成することができることを理解されたい。すなわち、本明細書に開示される補剛部材は、本明細書に開示される様々な緑内障ドレナージシステムのいずれかとともに使用するように構成されうるが、本明細書に開示される補剛部材は、生体流体(例えば、房水)に対して透過性であり、組織の内部成長を許容するように構成された1つ以上の拡散膜と、生体流体(例えば、房水)に対して透過性であり、組織の内部成長に抵抗するように構成された1つ以上の拡散膜とを含む房水拡散部材を有するシステムに限定されないことを理解されたい。
【0141】
ここで、図9A~9Cを参照すると、緑内障ドレナージシステム9000のデリバリーを支援するための補剛部材9700などの1つ以上の補剛部材を含む様々な緑内障ドレナージシステム9000は示されている。緑内障ドレナージシステム9000は流体導管9500及び本体9002を含む。本体9002は、流体導管9500を通して排出された房水などの生体流体を受容するように構成されている。したがって、本体9002は、構造、形態及び構成が様々な房水拡散部材(例えば、房水拡散部材1002など)に対応しうるが、本体9002は、代わりに、流体導管9500を通して排出された生体流体を受容するように構成されるあらゆる適切なデバイスに対応しうることを理解されたい。すなわち、補剛部材は、本体9002が、生体流体に対して透過性でありそして組織の内部成長を許容するように構成された1つ以上の拡散膜、及び、生体流体に対して透過性でありそして組織の内部成長に抵抗するように構成された1つ以上の拡散膜を含むことを要求しない。
【0142】
具体的に図9Aを見ると、緑内障ドレナージシステム9000は、緑内障ドレナージシステム9000の眼へのデリバリーを支援するらせん状にコイル巻きされた補剛部材9700を含むことができる。補剛部材9700は、流体導管9500内に延在している取り外し可能な長尺要素を含む。図示のように、補剛部材9700はらせん状にコイル巻きされ、その構造は、軸方向、横方向及び半径方向の剛性を増加させるように動作し、一方、患者の眼の前房などの流体が満たされた体腔内の位置に流体導管9500を曲げ又はさもなければ操作することができるように、横方向の柔軟性を維持している。特に、補剛部材9700のそのようならせん状構成は、補剛部材9700がらせんコイルの長手方向軸に沿って軸方向に圧縮されることを可能にする一方で、ある程度のカラム強度を提供する。軸方向の圧縮は、らせんコイルが圧縮されるときに、互いに係合しそして互いに作用しているらせんコイルの隣接するループ又は巻線により達成される。したがって、補剛部材9700が流体導管9500内に配置される例において、これらの隣接するらせんコイルのループ又は巻線は、流体導管9500が圧縮されるときに、互いに係合しそして互いに作用するように構成される。補剛部材9700のらせん構成はまた、補剛部材9700が過度の剛性を伴うことなく、ある程度の横方向の剛性を有することを可能にする。横方向の柔軟性は、横方向の力が補剛部材9700に加えられたときに、らせんコイルの隣接するループ又は巻線が、互いに対してわずかに並進及び/又は傾斜できることによって達成される。したがって、補剛部材9700が流体導管9500内に配置される例において、補剛部材9700のらせんコイルの隣接するループ又は巻線は、流体導管9500に横方向の力が加えられると互いに対して並進及び/又は傾斜するように構成されており、それにより、流体導管9500のある程度の曲げを可能にする。半径方向の剛性はらせんコイルのらせん巻きのフープ強度によって達成される。したがって、補剛部材9700が流体導管9500内に配置される例において、らせん巻きのフープ強度は、一時的に増加したフープ強度を流体導管9500に提供するのに役立つことができる。
【0143】
様々な実施形態において、図9Aに示すように、補剛部材9700は、第一の端部9702及び第二の端部9704を含む。流体導管9500内に配置されるときに、補剛部材9700の第一の端部9702は流体導管9500の第一の端部9502から延在している。補剛部材9700の第二の端部9704は、緑内障ドレナージシステム9000内で終端とする。図9Aに示されるように、幾つかの実施形態において、流体導管9500内に延在している補剛部材9700の部分はらせん状にコイル巻きされている。幾つかの実施形態において、示されるように、流体導管9500の第一の端部から延在している補剛部材9700の部分はコイルが解除されている。
【0144】
幾つかの実施形態において、補剛部材9700の第二の端部9704は、流体導管の第二の端部9504に近接するなど、流体導管9500内の位置まで延在している。幾つかの実施形態において、補剛部材9700の第二の端部9704は、流体導管9500の第二の端部9504から緑内障ドレナージシステム9000の本体9002内の位置まで延在している。例えば、幾つかの実施形態において、補剛部材9700の第二の端部9704は、流体導管9500の第二の端部9504から隣接する拡散膜の間の位置まで延在している。
【0145】
補剛部材9700は、1つ以上の繊維(例えば、最小限又は比較的に最小限のカラム強度を有する構造)、1つ以上のワイヤ(例えば、ある程度のカラム強度を示す構造)、又は繊維とワイヤの組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態において、補剛部材は、シリコーン、ePTFE、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、PVDF、PHFP、PFA、ポリオレフィン、FEP、アクリルコポリマー及び他の適切なフルオロコポリマー、又は、任意の他の適切なポリマー又はステンレススチール又はニチノール(ストレート又は編組)などの金属成分を含むことができる。補剛材料及び/又はゲージの材料特性を変化させて、所望の軸方向、横方向及び/又は半径方向の剛性のある補剛部材を製造することができることが理解されるであろう。他の実施形態において、補剛部材は、追加的又は代替的に、アブレート可能又は代替的に吸収性材料から形成されうる。
【0146】
流体導管9500を形成する柔らかく、薄く、順応性構造に対して補剛部材9700を組み込むことにより、流体導管9500は、補剛部材9700と組み合わせて、1つ以上の組織を通して又は組織の間を前進されることができる。すなわち、1つ以上の組織を通して又は組織の間に引き込まれることに加えて、又はその代わりに、流体導管9500は、補剛部材9700と組み合わせて、1つ以上の組織を通して又は組織の間を前進されることができる。例えば、そのような構成は、緑内障ドレナージシステム9000の流体導管9500は強膜組織と結膜組織の間で前進可能であり、強膜の穿孔、切開部又は孔を通して、患者の目の前房(AC)中に前進可能であることを提供する。幾つかの例において、流体導管9500は、補剛部材9700と組み合わせて、緑内障ドレナージシステム9000を移植する医師により把持デバイスなどで把持され、流体導管9500の第一の端部9502が患者の目の前房(AC)内に配置される位置まで前進されることができる。
【0147】
幾つかの実施形態において、流体導管が前房内まで前進された後に、前方透明角膜アプローチを通して補剛部材9700にアクセスし、それを流体導管から除去する。例えば、デバイスを配置して前房に挿入した後に、透明角膜の角膜輪部付近に小さな切開を行う。医師は、1つ以上の小さな把持デバイスで前房に入り、取り外し可能な補剛部材9700の露出端を引っ掛けて、流体導管9500からの補剛部材9700の取り外しを促進することができる。このような小さな角膜切開部は、典型的に、縫合糸の閉鎖を必要としない。補剛部材9700などのコイル状補剛部材が関与する実施形態において、補剛部材は、取り外しの間にコイル解除し、部分的にコイル解除し、又は、コイル状のままであることができる。
【0148】
様々な実施形態において、補剛部材9700は流体導管9500から取り外し可能である。医師が緑内障ドレナージシステム9000を設置した後、又は、少なくとも流体導管9500の端部(例えば、第一の端部9502)が前房又は他の流体が満たされた体腔中に前進された後に、補剛部材9700を流体導管9500から取り外すことができる。幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム9000が移植されたときに、前房中に突出され又は前房内に配置された流体導管の端部に近接している補剛部材9700の端部などの補剛部材9700の一端を引っ張ることにより、補剛部材9700は排出チャンバから取り外される。様々な実施形態において、補剛部材9700の第一の端部9702に張力を加えると、補剛部材9700の連続的ならせん巻きが解除される。様々な実施形態において、補剛部材9700が漸進的に解除されると、図9Bに示されるように、流体導管9500から除去又は引き抜かれる。幾つかの実施形態において、補剛部材9700を解除すると、補剛部材の軸方向の長さが増加する。例えば、コイル状構成の場合に、補剛部材9700は第一の軸方向長さを有し、コイル解除された構成に解除された場合に、補剛部材9700は第一の軸方向長さを超える第二の軸方向長さを有する。幾つかの実施形態において、補剛部材9700のコイル解除又は解しにより、補剛部材9700の有効直径が減少する。例えば、コイル状構成の場合に、補剛部材9700は、巻線の直径に基づく第一の有効直径を有し、そしてコイル解除構成に解除された際に、補剛部材9700は、補剛部材9700を形成する要素(例えば、繊維)の直径に基づく第二の有効直径を有し、ここで、第二の有効直径は第一の有効直径よりも小さい。したがって、第一の有効直径から第二の有効直径への有効直径の減少のために、コイル状の際の補剛部材9700よりも、解され又はコイル解除された際に、補剛部材9700を流体導管9500から取り外すことが容易であることを理解されたい。
【0149】
幾つかの実施形態において、流体導管の管腔内に位置する補剛部材の代わりに、緑内障ドレナージシステム9000の1つ以上の部分の外側の周り、例えば、流体導管9500の外側の周りに補剛部材を配置することができる。例えば図9Cに示されるように、補剛部材9700は、流体導管9500の外側の周りに配置され、それに沿って延在して示されている。
【0150】
幾つかのそのような実施形態において、緑内障ドレナージシステム9000は、緑内障ドレナージシステム9000の流体導管及び/又は他の構成要素の目へのデリバリーを容易にするのに十分なカラム剛性及び/又は他の機械的剛性を有する針状注射器/挿入ツールを含むデリバリーシステムを含むか、又はそれと関連付けられる。幾つかの実施形態において、針状の注射器/挿入ツールは、少なくとも流体導管の周りに配置され、これにより、流体導管9500の前房(AC)への配置が容易になる。
【0151】
ここで図9Dを参照すると、幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム9000は、第一の補剛部材2100及び第二の補剛部材2200などの複数の補剛部材を含む。示されるように、第一の補剛部材2100は流体導管9500内に延在しており、第一の端部2102及び第二の端部2104を含む。第一の端部2102は、流体導管9500の第一の端部9502から延在しており、流体導管9500内のある位置を終端とし、ただし、第一の補剛部材2100は後にアクセスして取り外すことができる。図9Dに示されるように、第一の補剛部材2100の第二の端部2104は、緑内障ドレナージシステム9000の内部又は内側の位置まで延在している。図示されていないが、幾つかの実施形態において、第一の補剛部材2100は流体導管の第二の端部9504に近接した位置まで延在していることができる。他の実施形態において、第一の補剛部材2100の第二の端部2104は、流体導管9500の第二の端部9504から緑内障ドレナージシステム9000の隣接するレイヤ、膜又は層の間の位置まで延在していることができる。図9Dに示されるように、第一の補剛部材2100の第二の端部2104は本体9002中の位置まで延在している。幾つかの実施形態において、第一の補剛部材2100の第二の端部2104は隣接する拡散膜の間の本体9002の中の位置まで延在していることができる。
【0152】
上述の補剛部材9700と同様に、第一の補剛部材2100は、1つ以上の組織の間に流体導管9500を形成する、柔らかく、薄く、順応性のある構造を前進又は押す機構として動作可能である。したがって、幾つかの実施形態において、補剛部材2100は、緑内障ドレナージシステム9000の流体導管9500を強膜組織と結膜組織との間などの標的デリバリー位置に前進させるのを支援するように動作可能である。幾つかの実施形態において、流体導管9500の第一の端部9502が流体で満たされた体腔内へ前進されるために配置されるようにして、流体導管9500及び本体9002を結膜下ポケット内に配置した後に、第一の補剛部材2100を緑内障ドレナージシステム9000から取り外しそして廃棄することができる。あるいは、緑内障ドレナージシステム9000からの第一の補剛部材2100の除去は、緑内障ドレナージシステム9000の流体導管9500が流体で満たされた体腔内に適切に配置された後に行うことができる。
【0153】
第一の補剛部材2100に加えて、図9Dに示されている緑内障ドレナージシステム9000は第二の補剛部材2200を含む。示されるように、第二の補剛部材2200は、流体導管9500の一部の中で延在し、第一の端部2202及び第二の端部2204を含む。図9Dに示されるように、第一の端部2202は流体導管9500の第一の端部9502から延在している。しかしながら、第一の端部2202は流体導管9500内のある位置を終端とすることができることを理解されたい。
【0154】
幾つかの実施形態において、補剛部材2200は流体導管9500の壁を通して延在している。例えば、幾つかの実施形態において、流体導管9500は開口部9510を含み、補剛部材2200は流体導管9500の開口部9510を通して延在している。図9Dに示されるように、第一の補剛部材2100の第二の端部2104は、補剛部材2200が流体導管9500の開口部9510を通して延在しているように流体導管9500の外部に延在している。様々な実施形態において、開口部9510は流体導管9500の第一の端部9502と第二の端部9504との間に位置する。幾つかの実施形態において、開口部9510は第二の端部9504よりも第一の端部9502に近接して位置する。すなわち、幾つかの実施形態において、開口部9510は、本体9002と結合されている流体導管9500の端部よりも、流体で満たされた体腔内に配置されるように構成された流体導管の端部に近い位置にある。幾つかの実施形態において、流体導管9500の第二の端部9502よりも第一の端部9502の近くに開口部9510を配置することにより、緑内障ドレナージシステム9000を移植したときに、流体で満たされた体腔(例えば、眼の前房)内に開口部9510が位置するように、開口部9510を配置することができる。そのような構成により、開口部9510は、流体導管9500を通って移動する流体がそこから漏れる通路を提供しない。しかしながら、開口部9510は、代替的に、第一の端部9504よりも第二の端部9504に近接して配置してもよく、又は、第一の端部9502と本体9002との間に等距離に配置してもよいことを理解されたい。
【0155】
上述のように、第二の補剛部材2200は、流体導管9500の開口部9510から延在している第二の端部2204を含む。緑内障ドレナージシステム9000の移植中に、第二の補剛部材2200を利用して流体導管9500の第一の端部9502を、流体で満たされた体腔内の位置(例えば、眼の前房)へと前進させることができる。例えば、第二の補剛部材2200は医師によって操作され、利用されて、流体導管9500の第一の端部9502を、流体で満たされた体腔の組織を通して予め形成された貫通路に導くことができる。
【0156】
幾つかの実施形態において、流体で満たされた体腔の組織において、事前形成された切開部を通して流体導管9500の前進を促進することに加えて、第二の補剛部材2200を利用して組織(例えば、強膜組織)に穿刺を形成して、体液が満たされた体腔(例えば、眼の前房)にアクセスすることができる。すなわち、別個の器具で組織を切開又は穿孔する代わりに、補剛部材2200は組織を貫通し、流体で満たされた体腔にアクセスするために使用できるように構成されることができ、前記体腔内に流体導管9500は配置される。例えば、幾つかの実施形態において、補剛部材2200の第一の端部2202は、強膜組織などの組織を穿刺するように構成されている、尖った又は鋭い先端を含む。
【0157】
流体導管9500を第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200に取り付けるための適切なデバイスとしては、限定するわけではないが、テザー、縫合糸、留め具、及び/又は、房水などの生体流体に可溶性の生体適合性接着剤が挙げられる。幾つかの実施形態において、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200の直径はその直径が流体導管9500の直径を超えるようにテーパ型であることができ、このことは、第一及び/又は第二の補剛部材が、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200と流体導管9500との間の干渉のために、指定された量を超えて流体導管9500中で前進することを最小限に抑制し又はさらには防止する。しかしながら、そのような実施形態において、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200は流体導管9500の引き抜きを引き起こすことなく、流体導管9500から取り外し可能又は引き抜き可能であることを理解されたい。幾つかの実施形態において、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200の直径は、連続的又は非連続的にテーパ型となりうる。例えば、幾つかの実施形態において、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200は、第一の直径を有する第一の領域及び第二の直径を有する第二の領域を含む1つ以上の区別される領域を含むことができる。幾つかの実施形態において、第一の領域と第二の領域との間の遷移は、第一の領域及び第二の領域が区別される領域であるように構成される。例えば、第一の領域と第二の領域との間の遷移は補剛部材の長手方向軸に対して半径方向に垂直に延在する段の形態であることができる。幾つかの他の実施形態において、代替的に、遷移部は、補剛部材の長手方向軸に対してテーパ状又は角度を付けられてもよい。そのようなテーパ型は、第一及び/又は第二の補剛部材2100及び2200が流体導管9500に取り外し可能に結合されており、そして、流体導管9500が強膜を通って目の前房内に前進された後などの、組織を通して前進された後に、流体導管9500から取り外すことができることを提供する。
【0158】
様々な実施形態において、流体で満たされた体腔内に流体導管9500の第一の端部9502を配置した後に、第二の補剛部材2200を緑内障ドレナージシステム9000から取り外して廃棄することができる。幾つかの実施形態において、医師は、流体導管9500の第一の端部9502が流体で満たされた体腔内に適切に配置されるまで、第一の補剛部材2100の取り外しを遅らせることができる。
【0159】
上述のように、第一及び第二の補剛部材2100及び2200の両方の1つはナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリウレタン、PVDF、ポリオレフィン、アクリルコポリマー、又は、任意の他の適切なポリマー、又は、ステンレス鋼、ニチノール又は他の生体適合性合金(ストレート又は編組)などの金属成分を含み又はから形成されうる。補強材料及び/又はゲージの材料特性は、当業者が理解するように、所望の軸方向、横方向及び/又は半径方向の剛性の補剛部材を製造するために変更されうる。幾つかの実施形態において、第一及び第二の補剛部材2100及び2200の少なくとも一方の外面は、それぞれの補剛部材で流体導管9500のより良い牽引を提供するためにテクスチャー加工されうる。
【0160】
本出願の新規な概念は、概略的にも、特定の実施形態に関しても上記で説明されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内にある限り、そのような変更及び変形を包含することが意図されている。
【0161】
様々な実施形態において、本明細書で議論される様々な緑内障ドレナージシステムの流体導管は、それらが複数の管腔を含むように構成されうる。したがって、補剛部材に関して上述した実施形態は、単一管腔流体導管に関連して示しそして記載されているが、本明細書で議論されている緑内障ドレナージシステムは複数管腔流体導管を含むことができ、複数管腔流体導管の1つ以上の管腔と取り外し可能に一体化された1つ以上の補剛部材を含むことができ、それにより、複数管腔流体導管のカラム強度を超えるカラム強度を有する設置アセンブリを一時的に形成することができることを理解されたい。
【0162】
幾つかの実施形態において、本明細書で議論される緑内障ドレナージシステムは、当業者が理解するように、透明角膜切開などにより内部から(ab-internally)(例えば、眼の内側から)移植され、強膜を通して、切開された結膜下空間に配置される。他の幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステムは、当業者が理解するように、結膜切開などにより外部から(例えば、眼の外側から)移植可能である。幾つかの実施形態において、結膜の放射状切開は、典型的には、角膜縁接合部の近くで行われ、結膜の鈍的切開が行われて、強膜が露出し、房水拡散部材を配置する部位が提供される。幾つかの実施形態において、これには、房水拡散部材を強膜に縫合する必要がある場合がある。幾つかの実施形態において、典型的には22ゲージ又は23ゲージの針である小さな針も強膜棘突起の近くに挿入され、前房内への流体導管のその後の挿入及び配置のための軌道を提供する。
【0163】
上述のように、様々な実施形態において、本明細書で議論される房水拡散部材は、増殖性拡散膜及び狭窄性拡散膜を含む複数の拡散膜から形成され、増殖性拡散膜の多孔度又は房水に対する透過性は狭窄性拡散膜の多孔度を超える。したがって、開示の房水拡散部材は、異なる程度の多孔度(例えば、異なる量の細孔及び/又は異なるサイズを有する細孔)を有する複数の異なる膜を含む。一般に、異なる多孔度を有する異なる拡散膜は、房水が関連する膜に拡散する異なる速度(フラックスとも呼ばれる)に関連付けられる。例えば、房水拡散部材は、房水の量が増殖性拡散膜に拡散する速度(例えば、より高いフラックス)とは異なる速度(例えば、より低いフラックス)で房水の量が狭窄性拡散膜に拡散するように構成されてもよい。したがって、房水拡散部材は、房水が房水拡散部材の第二の領域に拡散するのとは異なる速度で、房水が房水拡散部材の第一の領域に拡散するように構成されうる。
【0164】
上述のように、様々な実施形態において、拡散膜を形成するポリマー材料の層は、拡散膜を通して延在している安定化構造を形成するために、1つ以上の区別される位置で互いに結合されうる。幾つかの実施形態において、ラミネート化プロセス中に、拡散膜を形成する様々な層は、拡散膜の第一の界面表面から拡散膜の第二の界面表面まで1つ以上の別個の柱又は柱状構造が拡散膜を通って延在するようにして一緒にラミネート化されうる。様々な実施形態において、これらの柱又は柱状構造は接着剤で形成することができる。幾つかの実施形態において、1つ以上のこれらの柱は、緑内障ドレナージデバイスが柔軟であり、排出された房水を収容するように動作できるように、有効な歪み可能、せん断可能、摺動可能な界面を効果的に解放したままにするか又はさもなければ維持することができる。さらに、幾つかの実施形態において、指定された量を超える又は指定されたプロファイルを超える房水拡散部材の意図しない拡張(例えば、バルーニング)は、上述したように、隣接して配置された拡散膜の隣接して対向する界面表面を個別に結合することによって最小限に抑制し及び/又は回避することができる。
【0165】
上述のように、様々な実施形態において、房水拡散部材の流体導管及び/又は本体は、軟らかくて順応性の材料から形成されて、目の曲率に適合する構造を作成することができ、組織刺激、異物組織反応、過剰な瘢痕形成及び/又は侵食を引き起こす可能性がある緑内障ドレナージシステムと周囲組織との間の相対運動を最小限に抑制することに役立つ。従来の設計で経験される別の潜在的な問題としては、結膜を通る流体導管の侵食が挙げられる。結膜は、一般に、流体導管が強膜を通過して眼の前房内に延びる領域に近接している。このような結膜の侵食は、前房の直接暴露につながり、細菌が眼に入る経路、眼内炎のリスク、及び、眼の視力喪失の可能性をもたらす。
【0166】
結膜を介したそのような侵食の可能性を最小限に抑制するために多くのアプローチが試みられてきたが、既知の解決策のいずれも、流体導管の侵食から保護しながら房水排出を組み合わせる単一のデバイス又はシステムを含んでいない。
【0167】
ここで、図10A~11を参照すると、様々な実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は房水拡散部材10002及び流体導管10500を含む。流体導管10500は、上記の様々な流体導管(例えば、流体導管1500)と構造、形態、構成及び機能において一貫しうる。同様に、房水拡散部材10002は、上述の様々な房水拡散部材(例えば、房水拡散部材1002)と構造、形態、構成及び機能が一貫していてもよいが、房水拡散部材10002は1つ以上の侵食要素10600をさらに含むという例外がある。
【0168】
様々な実施形態において、侵食要素10600は、流体導管10500の一部を覆う緑内障ドレナージシステム10000の要素、特徴、構成要素又は部分であり、緑内障ドレナージシステム10000が移植されたときの眼の1つ以上の組織を通る流体導管10500の侵食を最小限に抑制するのに役立つ。上述のように、様々な実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は、当業者が理解するように、眼の結膜と強膜との間に形成されたポケット内に移植可能である。
【0169】
幾つかの場合において、例えば、侵食要素10600は、緑内障ドレナージシステム10000の本体から延在して、流体導管10500を覆う。侵食要素10600は、流体導管10500と眼の1つ以上の周囲組織との間の保護バリアとして動作する。例えば、緑内障ドレナージシステム10000は、移植されたときに流体導管10500と眼の結膜との間で流体導管10500に沿って侵食要素10600が延在するように構成されることができる。幾つかのそのような実施形態において、侵食要素10600は、以下にさらに議論されるように、緑内障ドレナージシステム10000が眼に移植されたときに流体導管10500と結膜との間にバリアを形成することにより、結膜を通る流体導管10500の侵食を最小限に抑制するか又はさらには防止するのに役立つ。
【0170】
幾つかの実施形態において、侵食要素10600は緑内障ドレナージシステム10000の一体的で分離不可能な要素、特徴、構成要素又は部分を形成する。幾つかの他の実施形態において、侵食要素10600は緑内障ドレナージシステム10000の1つ以上の部分に結合される別個の要素又は構成要素として形成される。幾つかのそのような実施形態において、侵食要素10600は緑内障ドレナージシステム10000の1つ以上の部分と結合され、それによって緑内障ドレナージシステム10000と一体化することができる。あるいは、幾つかの実施形態において、侵食要素10600を緑内障ドレナージシステム10000の1つ以上の部分と結合して、侵食要素10600をその後に緑内障ドレナージシステム10000から分離及び除去できるようにしてもよい。
【0171】
上記のように、緑内障ドレナージシステム10000は、複数の侵食要素10600を含むことができる。幾つかのそのような実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000の流体導管10500は、複数の侵食要素10600を取り込むことにより、眼の周囲組織(例えば、強膜又は結膜)との界面から隔離されうる。すなわち、幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は、緑内障ドレナージシステム10000の流体導管10500を目の組織から隔離する1つ以上の侵食要素10600を含むことができる。例えば、緑内障ドレナージシステム10000は、侵食要素10600が、流体導管10500をその長手方向軸に沿って二分割する平面の両側で流体導管10500に隣接するように構成されうる。そのような構成において、例えば、侵食要素10600の第一の侵食要素は、流体導管10500と眼の強膜との間で流体導管10500に沿って延在していることができる。同様に、侵食要素10600の第二の侵食要素は流体導管10500と眼の結膜との間で流体導管10500に沿って延在していることができる。そのような構成は、緑内障ドレナージデバイス10000が眼に移植されたときに(例えば、結膜と強膜の間に形成されたポケット内に移植されたときに)、目の結膜と強膜に直接界面形成するのを防ぐので、眼の結膜と強膜の両方に対して侵食保護を提供する。
【0172】
上述のように、侵食要素10600を除いて、緑内障ドレナージシステム10000は、本明細書で議論される他の緑内障ドレナージシステム(例えば、緑内障ドレナージシステム1000)と構造、形態及び構成が類似している。したがって、様々な実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は多層構造を含み、眼の前房内からの房水の排出を促進するだけでなく、例えば、排出された房水を体によって再吸収すること促進することによって、眼の前房からの房水の排出を助けるように構成されている。緑内障ドレナージシステム1000と同様に、様々な実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は、房水排出及び再吸収を最適化するように編成された1つ以上の狭窄性拡散膜及び1つ以上の増殖性拡散膜を同様に含む(上記の議論を参照されたい)。
【0173】
様々な実施形態において、侵食要素10600は、本明細書で論じられる様々な他の薄くて柔軟な多孔質膜(例えば、上記で論じられた拡散膜)と構造、形態及び構成が一貫している薄くて柔軟な多孔質膜を含む。例えば、侵食要素10600は組織の内部成長に抵抗するように構成された微細構造(例えば、狭窄性拡散膜)を含むことができ、あるいは、組織の内部成長を促進又は許容するように構成された微細構造(例えば、増殖性拡散膜)を含むことができる。あるいは、幾つかの実施形態において、侵食要素10600は、組織の内部成長を促進又は許容するように構成された第一の膜(例えば、増殖性拡散膜)、及び、組織又は細胞の内部成長に抵抗するように構成された第二の膜(例えば、狭窄性拡散膜)を含む多層構造を含むことができる。そのような実施形態における許容性/抵抗性膜は、緑内障ドレナージデバイス10000が眼に移植されたときに、それらの効果を最適化するように配向される。例えば、以下により詳細に説明するように、様々な実施形態において、侵食要素10600は、侵食要素10600と眼の組織(例えば、強膜又は結膜など)との間で界面に沿って組織の内部成長を促進又は許容するように構成されている。したがって、侵食要素10600の材料はいかなる材料を含むこともでき、上述の拡散膜に適していると本明細書で論じされたあらゆる方法に従って構築できることが理解されるであろう。
【0174】
したがって、様々な実施形態において、侵食要素10600は、本明細書で論じられる様々な増殖性拡散膜又は狭窄性拡散膜のいずれかと結合されうる(又は代替として、その延長部であってよく又はそれと一体であってもよい)。したがって、幾つかの実施形態において、侵食要素10600はそれ自体が狭窄性拡散膜(例えば、組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成される)又は増殖性拡散膜(例えば、組織の内部成長を許容するように構成される)であることができる。幾つかのそのような実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材の狭窄性拡散膜に結合された又はそれと一体化した狭窄性拡散膜である。追加的又は代替的に、幾つかの実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材の増殖性拡散膜に結合された狭窄性拡散膜である。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材の狭窄性拡散膜に結合された増殖性拡散膜である。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材の増殖性拡散膜に結合された又はそれと一体化した増殖性拡散膜である。
【0175】
図10A~10C及び11を参照すると、緑内障ドレナージシステム10000は示されている。図10Aは緑内障ドレナージシステムの上面図である。図10Bは、図10Aの線10B-10Bに沿った緑内障ドレナージシステム10000の断面図である。図10Cは、図10Aの線10C-10Cに沿った緑内障ドレナージシステム10000の断面図である。図11は、緑内障ドレナージシステム10000の分解図である。
【0176】
示されるように、緑内障ドレナージシステム10000は、房水拡散部材10002、流体導管10500(例えば、シャント)及び侵食要素10600を含む。房水拡散部材10002は、第一の層10010及び第二の層10020を含む複数の層を含む。第一及び第二の層10010及び10020はそれぞれ、組織の内部成長を促進又は許容するように構成された1つ以上の拡散膜(例えば、増殖性拡散膜)及び/又は組織の内部成長に抵抗するように構成された1つ以上の拡散膜(例えば、狭窄性拡散膜)を含む。したがって、第一の層10010は、組織の内部成長を促進又は許容するように構成された1つ以上の拡散膜、及び、組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成された1つ以上の拡散膜を含むことができることが理解されるであろう。同様に、セクション層10020は、追加的又は代替的に、組織の内部成長を促進又は許容するように構成された1つ以上の拡散膜、及び、組織の内部成長を最小限に抑制し、抵抗し又は防止するように構成された1つ以上の拡散膜から形成されうることが理解されるであろう。したがって、房水拡散部材10002は、本明細書で論じられる様々な他の房水拡散部材と構造、形態及び機能が類似していてよいことが理解されるであろう。
【0177】
図10A~12を参照すると、緑内障ドレナージシステム10000は侵食要素10600を含む。侵食要素10600は、示されるように、緑内障ドレナージシステム10000の房水拡散部材10002から離れる方向に延在している。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は、流体導管10500と房水拡散部材10002との間で流体導管10500に沿って房水拡散部材10002から離れる方向に延在している。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材10002と流体導管10500の端部(例えば、流体導管10500の第一の端部又は第二の端部)との間で延在しており、当業者に理解されるように他の実施形態の中でもとりわけ、眼の前房などの生物学的流体で満たされた体腔にアクセスするように構成されている。
【0178】
矩形形状を含むものとして図10A~10C及び11を参照すると、侵食要素10600は、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、あらゆる適切な形状であってもよいことが理解されるであろう。例えば、侵食要素10600は、正方形、矩形、台形又は他の多角形であることができ、辺の間に面取り又は丸みを帯びた縁を含むことができ、辺は本質的に直線又はほぼ湾曲していることができる。侵食要素10600は、円形又は卵形であるか、又は別の適切な形状(例えば、豆形)であるという点で、ほぼ連続した湾曲した縁部を有することができる。侵食要素10600は、本明細書に記載されるように、侵食要素10600が流体導管の周囲の組織を通る流体導管の侵食から保護するのに役立ち、侵食要素10600が結膜下空間(結膜と強膜の間に形成されるポケットなど)内に配置することができるかぎり、いかなる所望の形状であってもよいことを当業者は理解するであろう。
【0179】
幾つかの実施形態において、侵食要素10600は流体導管の長さに沿って延在しているが、房水拡散部材10002から延在している流体導管の部分の長さよりも短い長さを含む。他の実施形態において、侵食要素10600は流体導管の長さに沿って延在しており、房水拡散部材10002から延在している流体導管の部分の長さ以上の長さを含む。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は流体導管10500の直径以上の幅を有する。しかしながら、幾つかの実施形態において、侵食要素10600の幅は、侵食要素10600が周囲組織を通る流体導管の侵食に対する保護を支援することに対して無効にならない限り、流体導管の直径より小さくてもよい。上述の侵食要素10600の適切なサイズ及び形状の多様性と一貫して、侵食要素10600の幅は、侵食要素10600の長さに沿って一定のままであっても、あるいは、侵食要素10600の幅は侵食要素10600の長さに沿って変化させてもよいことが理解されるであろう。例えば、侵食要素の長手方向の長さに沿って幅を(線形又は非線形に)先細にすることができる。
【0180】
幾つかの実施形態において、侵食要素10600は、高摩耗又は高摩耗領域(例えば、流体導管10500が侵食プレート10600に対して移動する可能性がある領域)でより耐摩耗性があるように構成されうる。そのような領域における耐摩耗性は、材料組成及び/又は材料厚さを含む、いずれかの既知の方法に従って達成されうる。したがって、侵食要素10600の厚さは、侵食要素10600の長さに沿って変化することができ、及び/又は、その幅にわたって横方向に変化することができる。例えば、厚さは侵食要素10600の長さに沿って、及び/又は、それを横切る横断方向に(線形又は非線形に)先細にすることができる。例えば、長手方向に延在する中心線に沿った侵食要素10600の厚さは、その長手方向に延在する1つ以上の縁に沿った侵食要素10600の厚さを超えることができる。あるいは、長手方向に延在する中心線に沿った侵食要素10600の厚さは、その長手方向に延在する1つ以上の縁に沿った侵食要素10600の厚さよりも薄くてよいことが理解されるであろう。追加的又は代替的に、侵食要素10600のその長手方向の長さのセクションに沿った厚さは、その長手方向の長さの第二セクションに沿った侵食要素10600の厚さを超えることができる。例えば、流体導管10500が流体で満たされた体腔にアクセスする領域が高摩耗領域に対応する場合に、流体で満たされた体腔にアクセスするように構成されている流体導管10500の端部により近い侵食要素10600のセクションは、房水拡散部材10002により近い侵食要素10600のセクションよりも厚くてもよい。侵食プレート10600の厚さは、流体導管10500による侵食プレート10600の摩耗による緑内障ドレナージシステム10000の早期故障のリスクを減らすために、高摩耗又は高摩擦領域で最適化できることを理解されたい。厚さのこれらの変化は侵食要素10600を集合的に形成する材料の選択的層状化又は他の既知の方法により達成することができる。
【0181】
幾つかの実施形態において、侵食要素10600は房水拡散部材10002から長手方向に間隔を空けて配置されることができ、又は、減少した幅(例えば、図10に示す)及び/又は厚さの領域(図示せず)を含むことができ、前記領域は侵食要素10600と房水拡散部材10002との間で、周囲組織を通る侵食のリスクが低い流体導管10500の領域に沿って延在している。例えば、房水拡散部材10002に隣接する流体導管10500の部分が周囲組織を侵食するリスクが低い場合に、侵食要素10600の幅及び/又は厚さの減少した領域は流体導管10500のこの領域に隣接して配置されることができる。あるいは、侵食要素10600は、侵食のリスクが低いこの領域において、流体導管10500が周囲組織に露出されるように構成されることができる。したがって、幾つかの例において、侵食要素10600は房水拡散部材10002から延在していなくてよい。
【0182】
幾つかの実施形態において、侵食要素10600は流体導管10500に結合されている。侵食要素10600は、流体導管10500の長さに沿って連続的に、あるいは、流体導管10500に沿って1つ以上の個別の位置で流体導管10500に結合されうる。侵食要素10600は、限定するわけではないが、導管の長さに沿って侵食要素の縫い付け又は縫合を含む、いかなる既知の方法に従って流体導管10500に結合されてもよい。幾つかの実施形態において、縫合は、一連の断続的な縫合又は連続的なぐし縫いであることができる。追加的又は代替的に、流体導管10500は、流体導管10500を侵食要素10600の微孔構造中に部分的に溶解することにより、侵食要素10600に機械的に接着することができる。幾つかの実施形態において、侵食要素10600は、流体導管10500が侵食要素10600に剥離可能に付着できるように粘着性の接着剤でコーティングされうる。幾つかの実施形態において、材料(例えば、微孔質材料)の1つ以上のバンドは、材料バンドと侵食要素10600との間にアイレットが形成されるように、侵食要素10600に接着された端部を有することができ、流体導管10500はギャップに通されることができる。
【0183】
上述のように、緑内障などの状態を治療するために使用されるときに、緑内障ドレナージシステム10000は結膜下空間(例えば、眼の結膜と強膜との間に形成されるポケット)内に配置されうる。緑内障ドレナージシステム10000は、結膜下空間内で比較的平坦で最小放射状プロファイルを採用し、眼の前房が流体導管10500によりアクセスできるように配置される。ここで、図11及び12を参照すると、緑内障ドレナージシステムは移植構成で例示されている。図12は、房水拡散部材10002、流体導管10500及び侵食要素10600を有する緑内障ドレナージシステム10000を含む。図13は、房水拡散部材10002、流体導管10500及び複数の第一及び第二の侵食要素10600A及び10600Bを有する緑内障ドレナージシステム10000を含む。
【0184】
図12を参照すると、例えば、緑内障ドレナージシステム10000は、眼2000の結膜2002と強膜2004との間の結膜下空間2006に配置されて示されている。緑内障ドレナージシステム10000は、第一の層10010が強膜2004に沿って延在し、第二の層10020が結膜2002に沿って延在するように配向されて示されている。結膜2002と界面形成する第二の層10020の部分は、上述のように、組織の内部成長を促進又は許容するように構成されうることが理解されるであろう。強膜と界面形成する第一の層10010の部分は、上述のように、追加的又は代替的に、組織の内部成長を促進又は許容するように構成されうることも理解されるであろう。そのような構成は、房水拡散部材10002と周囲組織との間の相対移動を最小限に抑えるのに役立つ。
【0185】
さらに、流体導管10500は、房水拡散部材10002から延在し、強膜アクセス、穿孔又は孔2008(例えば、既知の方法による移植手順中に医師によって作られた)を通して延在するものとして図12に示されており、それにより、第一の端部10502は前房(AC)にアクセスする。さらに、示されるように、侵食要素10600は、流体導管10500と眼2000の結膜2002との間に延在している。特に、侵食要素10600は、流体導管10500と結膜2002との間に延在しており、それにより、侵食要素10600の一部は強膜アクセス2008に隣接して又は近接して配置されており、及び/又は、強膜アクセス2008を通して延在している流体導管の部分10506に隣接して又は近接して配置されている。そのような構成は、結膜2002が流体導管10500に直接露出されないことを提供する。代わりに、図示されるように、侵食要素10600は結膜2002に沿って延在している。この構成は、侵食要素10600が結膜2002と流体導管10500との間の保護バリアとして動作するときに、結膜2002を通る流体導管10500の侵食に対する保護に役立つ。例えば、侵食要素10600は、図示されるように、強膜アクセス2008に隣接して又は近接して配置されている流体導管と結膜の部分2010との間の保護バリアとして動作する。
【0186】
結膜2002と界面形成する侵食要素10600の部分は、上述のように、組織の内部成長を促進又は許容するように構成されうることが理解されるであろう。そのような構成は、流体導管10500と侵食要素10600との間に相対運動が存在しうる場合でも、侵食要素10600と結膜との間の相対運動を最小限に抑えるのに役立つ。
【0187】
侵食要素10600は、強膜アクセス2008を超えて延在する部分(したがって、強膜アクセスを通して延在している流体導管10500の部分)を含むものとして図12に示されているが、幾つかの実施形態において、侵食要素10600は侵食要素10600が侵食に対する保護を支援するのに無効にならない限り、強膜アクセス2008まで又はそれよりも短く延在していることができる。
【0188】
幾つかの実施形態において、移植されると、房水は流体導管10500の第一の端部10502に入り、房水拡散部材10002と流体連通している流体導管の第二の端部10504に移動する。幾つかの実施形態において、第二の端部10504は、流体導管1500の第二の端部1504及び房水拡散部材1002に関して上述したのと同様に、房水拡散部材10002内に配置される。したがって、上述のように、排出された房水は、房水拡散部材10002内で画定されているリザーバに入り、房水拡散部材10002の様々な拡散膜を通って浸透し、そこで房水は周囲及び/又は内部成長された組織によって吸収可能である。
【0189】
ここで図13を参照すると、緑内障ドレナージシステム10000は、眼2000の結膜2002と強膜2004との間の結膜下空間2006に配置されて示される。図13に示される緑内障ドレナージシステム10000の構成は、図13に示す緑内障ドレナージシステム10000が2つの侵食要素(例えば、第一の侵食要素10600A及び第二の侵食要素10600B)を含むことを除いて、図12に示す緑内障ドレナージシステム10000の構成と同様である。第一の侵食要素10600Aは図12に関して上述した侵食要素10600に、構造、形態及び機能の点で対応する。図13に示す緑内障ドレナージシステム10000は、第一の侵食要素10600Aと組み合わせて第二の侵食要素10600Bを含むが、緑内障ドレナージシステムは、第一の侵食要素10600Aを必要とせずに第二の侵食要素10600Bを含むことができることが理解されるであろう。すなわち、幾つかの実施形態において、緑内障ドレナージシステム10000は、流体導管10500と結膜2002との間に延在している侵食要素を必要とせずに、流体導管10500と強膜2004との間に延在している侵食要素を含むように構成されうる。
【0190】
さらに、図13に示すように、流体導管10500は、強膜アクセス、穿孔又は孔2008(例えば、移植手順中に既知の方法に従って医師によって作製)を通って、前房(AC)中に延びる前に、第二の侵食要素10600Bの開口部10602Bを通って延在している。したがって、様々な実施形態において、侵食要素(例えば、第二の侵食要素10600B)は、流体導管10500を収容するように構成された1つ以上の切開部、穿孔又は開口部を含むことができることが理解されるであろう。幾つかの実施形態において、第二の侵食要素10600Bは、そのような予め形成された開口部を有して構築又は製造される。幾つかの他の実施形態において、移植手順中又はその直前に、侵食要素に切開部、穿孔、又は開口部は形成されうる。幾つかの実施形態において、切開部、穿孔又は開口部は医師又は医師の助手によって形成される。
【0191】
示されるように、第二の侵食要素10600Bは流体導管10500と強膜2004との間に延在し、一方、第一の侵食要素10600Aは、流体導管10500と結膜2002との間に延在している。図13に示される第二の侵食要素10600Bは開口部10602Bを含み、したがってその一部が強膜アクセス2008を超えて延在しているが、第二の侵食要素10600Bは強膜アクセス2008まで又はそれを超えて延在していなくてもよく、したがって開口部10602Bを必要としなくてもよいことは理解されるであろう。そのような構成において、第二の侵食要素10600Bは、強膜2004と流体導管10500との間で強膜アクセス2008(図示せず)の手前の位置まで延在していてよい。
【0192】
流体導管10500と強膜2004との間に配置可能な侵食要素を含む構成は、強膜2004が流体導管10500に直接露出されないことを提供する。そのような構成は、そのような侵食要素が強膜2004と流体導管10500との間の保護バリアとして動作するので、強膜2004を通る流体導管10500の侵食に対する保護に役立つ。
【0193】
幾つかの実施形態において、強膜2004と界面形成する第二の侵食要素10600Bの部分は、上述のように、組織の内部成長を促進又は許容するように構成されうる。このような構成は、流体導管10500と第二の侵食要素10600Bとの間に相対運動が存在しうる場合でも、第二の侵食要素10600Bと強膜2004との間の相対運動を最小限に抑制するのに役立つ。
【0194】
様々な実施形態において、本明細書で論じられる緑内障ドレナージシステムの1つ以上の部分は、当業者が理解するように、1つ以上の緑内障薬などの1つ以上の治療剤を含むか又はそれによってコーティングされてもよい。追加的又は代替的に、様々な実施形態において、本明細書で議論される緑内障ドレナージシステムの1つ以上の部分は、解剖学的構造内での緑内障ドレナージシステムの適切な配置を視覚的又は電子的に決定するための1つ以上のマーカー(例えば、放射線不透過性マーカー)を含むことができる。
【0195】
様々な実施形態において、拡散膜材料は、追加的又は代替的に、材料内の様々な空隙内に閉じ込められた空気を除去するための1つ以上のプロセス(例えば、脱核)を受けることができる。これらのプロセスは、上記の親水性コーティングプロセスの1つ以上と組み合わせることができることを理解されたい。閉じ込められた空気は、時に、房水による材料の湿潤又は浸潤を妨げることがあり、房水が房水拡散部材中に拡散しそして体によって再吸収されることの効率を損なう可能性がある。幾つかの実施形態において、閉じ込められた空気は、一連の浴に材料を浸すことによって除去することができる。幾つかの実施形態において、これらの浴は1つ以上のアルコール浴から1つ以上の滅菌水浴に進むことができる。
【実施例
【0196】
例1
メディカルデバイスは、以下の方法に従って構築された。PTFE膨張テープの小さなクーポンをレーザ切断することにより、厚い膨張PTFEテープの底部犠牲圧縮層を調製した。特に、犠牲PTFE層からレーザ切断された緑内障ドレナージデバイスの形状は、図10に示された第一の層9010の形状に対応していた。すべてのチャドを取り除き、犠牲層を位置合わせし、小さなクーポンを収容するように構成されたジグプレートに配置した。次いで、微孔質拡散材料の第一のクーポン(例えば、多層ePTFE)を、犠牲PTFE材料の小さなクーポンの上に置いた。緑内障ドレナージデバイスの形状は、微孔質拡散材料の第一のクーポンへとレーザ切断されなかった。微孔質拡散材料の第一のクーポンは、微孔質拡散材料の第一のクーポンの組織内部成長側が犠牲PTFEクーポンに向かって下向きになるように配向された。
【0197】
次いで、緑内障ドレナージデバイスの形状を、犠牲PTFEクーポンにおいてレーザ切断したものとサイズ及び位置が同一である接着フィルムへとレーザ切断することにより、接着フィルム(例えば、FEP)の層を調製した。次いで、すべてのチャドを取り除き、接着フィルム層を微孔質拡散材料の上で位置合わせしてそして配置し、接着フィルムがしわや折り重ねのない平らな状態になるようにした。次いで、微孔質拡散材料の第二のクーポン(例えば、多層ePTFE)を接着フィルム上に配置した。緑内障ドレナージデバイスの形状は、微孔質拡散材料の第二のクーポンへとレーザ切断されなかった。微孔質拡散材料の第二のクーポンは、微孔質拡散材料の第二のクーポンの組織内部成長側が接着フィルムから離れて上を向くように配向された。次に、厚く膨張したPTFEテープの上部犠牲圧縮層を、微孔質拡散材料の第二クーポンの上に置いた。緑内障ドレナージデバイスの形状は、厚く膨張したPTFEテープの上部犠牲圧縮層にレーザ切断されなかった。このラミネート化スタックの構成では、緑内障ドレナージデバイスのサイズ及び形状に対応するレーザ切断領域を除いて、微孔質拡散材料の第一及び第二のクーポンは均一に圧縮されるように、ジグを圧縮した。すなわち、緑内障ドレナージデバイスの形状の切り取りを第一の下部犠牲層で行うと、サイズ及び形状が緑内障ドレナージデバイスに対応する領域に、微孔質拡散材料の第一のクーポンと第二のクーポンとの間に結合を形成するのに不十分な最小限の力しか適用されない。同様に、緑内障ドレナージデバイスのサイズ及び形状に対応するチャドがレイアッププロセス中に接着剤層から除去されたため、微孔質拡散材料の第一及び第二のクーポンの対応する領域に接着フィルムは適用されない。
【0198】
次いで、ジグ及びレイアップを、約280℃に予熱したデスクトップホットプレスなどの加熱プレス板上に置き、ラミネートの犠牲層への有意な結合を回避しながら、微孔質拡散材料の第一のクーポン及び第二のクーポンと接着フィルムとの間に結合が生じるように少なくとも5分間の指定期間にわたって十分に圧縮した。次に、ラミネートをプレスから取り出し、室温まで冷却させた。
【0199】
次に、得られたラミネートを最終サイズにレーザ切断した。特に、切断線は、PTFEの第一の犠牲層に形成された緑内障ドレナージデバイス形状のトレースに従い、デバイス形状の周囲が、一緒に結合された微孔質拡散材料の第一のクーポンと第二のクーポンの部分を含むように外側に短い距離(約1mm)オフセットされていた。
【0200】
非圧縮層をわずかに分離し、微孔質拡散材料の第一のクーポン及び第二のクーポンが一緒に結合されていることにより画定された内周までチューブを挿入することにより、シリコーンチューブから形成された流体導管を非圧縮層の間に挿入し、緑内障ドレナージデバイスの内部に導いた。次に、既知の方法に従って、チューブを緑内障ドレナージデバイスに固定した。
【0201】
例2
メディカルデバイスは、以下の方法に従って構築された。PTFE膨張テープの小さなクーポンをレーザ切断することにより、厚い膨張PTFEテープの底部犠牲圧縮層を調製した。上記と一貫している緑内障ドレナージデバイスの形状は小さなクーポンからレーザ切断され、約8mm円形寸法を備えた。特に、小さなクーポンからレーザ切断された緑内障ドレナージデバイスの形状は、図10に示された第二の層9020の形状に対応していた。すなわち、小さなクーポンからレーザ切断された緑内障ドレナージデバイスの形状は卵型の房水拡散領域、及び、上記と一貫する矩形侵食要素を含んだ。すべてのチャドを取り除き、犠牲層を位置合わせし、小さなクーポンを収容するように構成されたジグプレートに配置した。次いで、微孔質拡散材料の第一のクーポン(例えば、多層ePTFE)を、犠牲PTFE材料の小さなクーポンの上に置いた。緑内障ドレナージデバイスの形状は、微孔質拡散材料の第一のクーポンへとレーザ切断されなかった。微孔質拡散材料の第一のクーポンは、微孔質拡散材料の第一のクーポンの組織内部成長側が犠牲PTFEクーポンに向かって下向きになるように配向された。
【0202】
次いで、犠牲PTFEクーポンにおいてレーザ切断したものとサイズ及び位置が同一である(しかし、矩形侵食要素の特徴を除く)接着フィルムへと、矩形侵食要素の特徴を除く緑内障ドレナージデバイスの形状をレーザ切断することにより、接着フィルム(例えば、FEP)の層を調製した。特に、接着フィルムからレーザ切断された緑内障ドレナージデバイスの形状は、図10に示されている第一の層9010の形状に対応していた。次いで、すべてのチャドを取り除き、接着フィルム層を位置合わせして、微孔性拡散材料の上に置き、接着フィルムがしわや折り重ねのない平らな状態になるようにした。次いで、微孔質拡散材料の第二のクーポン(例えば、多層ePTFE)を接着フィルム上に配置した。矩形侵食要素の形状は、犠牲PTFEクーポンにおいてレーザ切断したものとサイズ及び位置が同一の微孔質拡散材料の第二のクーポンへとレーザ切断された。次いで、すべてのチャドを除去し、微孔質拡散材料の第二のクーポンを、微孔質拡散材料の第二のクーポンの組織内部成長側が接着フィルムから離れて上を向くように配向した。
【0203】
次に、厚く膨張したPTFEテープの上部犠牲圧縮層を、微孔質拡散材料の第二のクーポンの上に置いた。緑内障ドレナージデバイスの形状は、厚く膨張したPTFEテープの上部犠牲圧縮層へとレーザ切断されなかった。このラミネート化スタック構成では、ジグを圧縮して、第一の犠牲層へと切断された緑内障ドレナージデバイスのサイズ及び形状に対応するレーザ切断領域を除き、微孔質拡散材料の第一のクーポン及び第二のクーポンを均一に圧縮した。
【0204】
次いで、ジグ及びレイアップを、約280℃に予熱したデスクトップホットプレスなどの加熱プレス板上に置き、ラミネートの犠牲層への有意な結合を回避しながら、微孔質拡散材料の第一のクーポン及び第二のクーポンと接着フィルムとの間に結合が生じるように少なくとも5分間の指定期間にわたって十分に圧縮した。次に、ラミネートをプレスから取り出し、室温まで冷却させた。
【0205】
次に、得られたラミネートを、侵食要素を画定する矩形部分の周りでオフセットが切断されなかったことを除いて、例1のレーザ切断プロセスと一致する最終サイズにレーザ切断した。得られたラミネートは、図10に示された第二の層9020の形状とサイズ及び形状が一致する底部微孔質拡散材料層及び図10に示された第一の層9010の形状とサイズ及び形状が一致する上部微孔性拡散材料層を含んでいた。
【0206】
非圧縮層をわずかに分離し、微孔質拡散材料の第一のクーポン及び第二のクーポンが一緒に結合されていることにより画定された内周までチューブを挿入することにより、シリコーンチューブから形成された流体導管を非圧縮層の間に挿入し、緑内障ドレナージデバイスの内部に導いた。次に、既知の方法に従って、チューブを緑内障ドレナージデバイスに固定した。
【0207】
例3
例1又は2からの疎水性ePTFEデバイスアセンブリを以下のように親水性コーティングした。ePTFEは、デバイスの流体導管(例えば、シリコンチューブ)を通して約1mlの100%イソプロピルアルコールを直接デリバリーすることで湿潤化され、ePTFEリザーバを通してフラッシュされた。次に、流体導管及びePTFEリザーバを通して約1mlの脱イオン水(公称抵抗、約10オーム)で過剰なアルコールをデバイスから洗い流した。次に、約1mlの0.2wt%ポリビニルアルコール水溶液を流体導管及びePTFEリザーバに通して直接洗い流し、約10分間平衡化させた。約1mlの蒸留水を、流体導管及びePTFEリザーバに通して洗い流した。約1mlの架橋性水溶液(約0.3モル濃度の塩酸中の2vol%グルタルアルデヒド)を約40℃に昇温し、デバイスを通して直接洗い流し、約15分間平衡化させた。約2.5mlの脱イオン水を流体導管及びePTFEリザーバに通して洗い流した。次に、約40mlの新鮮な脱イオン水のビーカで材料を平衡化した。
【0208】
次に、得られたアセンブリを115℃のエアオーブンで約10分間乾燥させた。
【0209】
例4
例3からのデバイスを、ニュージーランド白ウサギの結膜下平面の側頭上部四分円(superotemporal quadrant)に移植し、14日間の生存期間について評価した。移植中に、25ゲージの針を使用して角膜輪部にトンネルを作成し、ここで、流体導管を前房に通した。房水のリザーバを視覚化するために、0.01%フルオレセインナトリウム水溶液を使用した。注入されたフルオレセインは紫外線によって励起され、強力な蛍光を発し、暗くした環境で容易に見える。犠牲の前に、0.01%フルオレセインナトリウム水溶液を、約10μL/分の公称流量で約10分間、30ゲージ針を通して、移植された眼の前房に注入した。14日の時点で、強い蛍光のリザーバは、移植リザーバ領域から発する蛍光導管とともに観察された。
【0210】
本出願の発明の範囲は、概略的に、また、特定の例に関して上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施例において様々な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかであろう。同様に、本明細書で議論されている例で議論されている様々な構成要素は組み合わせ可能である。したがって、実施例は、本発明の範囲の変更及び変形を網羅することが意図されている。
【0211】
例5
0.045インチのステンレス鋼ワイヤ上にePTFE縫合糸をきつくらせん状に巻き付けることにより、細いコイルを作製した。次に、縫合コイルを約2層のePTFE(ePTFE上のFEPコーティングが外側を向いている)でらせん状に覆った。次に、ePTFEを別のePTFE層で覆った。アセンブリ全体を約5分間320℃に加熱した。冷却したら、0.045インチのステンレス鋼ワイヤの中心ワイヤを除去し、ePTFE流体導管を残し、前記流体導管の管腔に縫合コイル補剛部材を有した。
【0212】
流体導管の管腔から縫合コイル補剛部材を除去するために、医師は流体導管の端部で縫合糸の端部をつかんで引っ張り、これにより、縫合コイルが流体導管から解除されて現れる。
【0213】
例6
長さ約2.3cmの未処理の6ミルのニチノールワイヤ(「第一のマンドレル」)を、例1の流体導管の端部を通して挿入し、例1のデバイスのリザーバの中心まで前進させた。第一のマンドレル(例えば、第一の補剛部材)はデバイスに一時的な剛性を付加し、移植手順中のデバイスの配置を容易にするように構成されている。デバイスが移植されると、流体導管が強膜組織を通って前房に挿入される前に、第一のマンドレルは取り外し可能である。
【0214】
長さ約0.9cmの直線状の7ミルのニチノールワイヤ(「スタブマンドレル」)を、実施例の流体導管の端部を通して挿入し、流体導管の端部から約0.2cm前進させ、次いで、導管の壁を通して前進させた。スタブマンドレル(例えば、第二の補剛部材)は、医師が強膜組織を通して前房に流体導管の端部を前進させるのを支援するために、流体導管と結合したままであるように構成される。スタブマンドレルは、流体導管の端部が強膜
組織を通って前房に入ると取り外し可能である。スタブマンドレルのために流体導管に形成された開口部は完全に前房内にあることができる流体導管の端部に十分に近く、房水漏れのリスクを回避することができる。
(態様)
(態様1)
本体、
前記本体に流体結合されており、第一の端部、第二の端部及び管腔を含む順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って前記本体に移動させることができるように流体が満たされた体腔の外部に配置可能である順応性流体導管と、
前記流体導管に取り外し可能に結合され、前記管腔内に配置されそして前記流体導管の長さを延長している補剛部材と、
を含む、生体流体ドレナージシステム。
(態様2)
前記補剛部材及び流体導管は組み合わされてアセンブリを形成し、前記アセンブリのカラム強度、横剛性及びフープ強度のうちの1つはそれぞれ前記流体導管のカラム強度、横剛性及びフープ強度を超えている、態様1記載のシステム。
(態様3)
前記補剛部材の端部は、前記補剛部材の端部が移植手順中にアクセス可能であるように、流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、態様1又は2記載のいずれか1項記載のシステム。
(態様4)
前記補剛部材は流体導管の管腔内にコイルを形成している、態様1~3のいずれか1項記載のシステム。
(態様5)
前記補剛部材は前記補剛部材の第一の端部及び第二の端部の一方に張力が加えられると解体されるように構成されている、態様4記載のシステム。
(態様6)
前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である、態様1~5のいずれか1項記載のシステム。
(態様7)
前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能であるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、態様6記載のシステム。
(態様8)
前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、態様1~7のいずれか1項記載のシステム。
(態様9)
前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている、態様1~8のいずれか1項記載のシステム。
(態様10)
第一の端部及び第二の端部を有しそして管腔を画定している順応性流体導管であって、前記第一の端部は生体組織の流体が満たされた体腔内に配置可能であり、前記第二の端部は流体が満たされた体腔からの流体が流体導管の管腔を通って、流体が満たされた体腔の外部の領域に移動可能であるように、生体組織のリザーバの外部に配置可能である、順応性流体導管と、
前記流体導管に結合された補剛部材であって、前記流体導管の管腔内に配置されそして
前記補剛部材及び流体導管が組み合わされてアセンブリを形成するように流体導管の長さを延長し、前記アセンブリのカラム強度は前記流体導管のカラム強度を超えている補剛部材と、
を含む、生体流体ドレナージシステム。
(態様11)
前記流体導管と流体結合された微孔質体をさらに含み、前記流体導管の第二の端部は微孔質体内に配置されている、態様10記載のシステム。
(態様12)
前記補剛部材は流体導管に取り外し可能に結合されている、態様10~11のいずれか1項記載のシステム。
(態様13)
前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記システムは流体導管に取り外し可能に結合された第二の補剛部材をさらに含み、前記第二の補剛部材は、前記第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しており、そして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するように、流体導管の側壁を通って延在しており、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である、態様10~12のいずれか1項記載のシステム。
(態様14)
前記第二の補剛部材の第二の端部は、前記補剛部材の第二の端部が移植手順中にアクセス可能になるように流体導管の第一の端部及び第二の端部の一方から延在している、態様13記載のシステム。
(態様15)
前記流体導管は延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、態様10~14のいずれか1項記載のシステム。
(態様16)
前記流体が満たされた体腔は眼の前房であり、前記流体は房水であり、前記生体流体ドレナージシステムは移植時に患者の目の眼圧を調整するように構成されている、態様10~15のいずれか1項記載のシステム。
(態様17)
チューブを通して延在している管腔を有するチューブを提供することと、
前記チューブの管腔が体に流体結合されるように、前記チューブを体に結合することと、
前記チューブの管腔内に補剛部材を配置し、それにより、前記補剛部材がチューブの管腔から取り外し可能であり、前記補剛部材及びチューブが組み合わされてアセンブリを形成することと、を含み、ここで、前記アセンブリのカラム強度はチューブのカラム強度を超える、方法。
(態様18)
前記アセンブリの横剛性はチューブの横剛性を超え、前記アセンブリのフープ強度はチューブのフープ強度を超える、態様17記載の方法。
(態様19)
前記チューブの管腔内に補剛部材を配置することは、マンドレルの周りに長尺要素を巻いてマンドレルの周りにコイルを形成することと、
前記コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔内に配置され、前記コイル巻きされた長尺要素がチューブの管腔から取り外し可能であるように、前記コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成することと、
前記長尺要素がチューブの管腔内にコイル巻きされた状態を維持するように前記マンドレルを除去することと、を含む、態様17~18のいずれか1項記載の方法。
(態様20)
前記コイル巻きされた長尺要素の周りにチューブを形成することは、前記コイル巻きされた長尺要素の周りにフィルムを巻き付けることを含む、態様19記載の方法。
(態様21)
前記フィルムはテープである、態様20記載の方法。
(態様22)
前記長尺要素は繊維であり、前記フィルム及び繊維の一方はフルオロポリマーである、態様19~21のいずれか1項記載の方法。
(態様23)
前記フルオロポリマーは延伸ポリテトラフルオロエチレンである、態様22記載の方法。
(態様24)
前記補剛部材は第一の補剛部材であり、前記方法は、第二の補剛部材の第一の部分がチューブの管腔内に延在しそして前記第二の補剛部材の第二の部分がチューブの側壁に沿ってチューブの外側に延在するようにして、前記第二の補剛部材がチューブの側壁を通って延在するように、前記チューブの管腔内に第二の補剛部材を配置することをさらに含み、前記第二の補剛部材の第二の部分は移植手順中にアクセス可能である、態様17~23のいずれか1項記載の方法。
(態様25)
前記第一の補剛部材及び第二の補剛部材は独立してチューブの管腔から取り外し可能である、態様24記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13