IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ APB株式会社の特許一覧 ▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7100686リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法
<>
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図1
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図2
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図3
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図4
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図5
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図6
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図7
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図8
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図9
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図10
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図11
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図12
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図13
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図14
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図15
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図16
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図17
  • 特許-リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20220706BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220706BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220706BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220706BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M50/103
H01M50/121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020185669
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075105
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121430
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 義之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】内藤 茉優
(72)【発明者】
【氏名】小林 真也
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-195477(JP,A)
【文献】特開平8-064213(JP,A)
【文献】特開平5-283087(JP,A)
【文献】特開平1-213955(JP,A)
【文献】特開昭63-128547(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/103
H01M 50/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が積層されてなり、前記正極集電体及び前記負極集電体の間に配置された前記セパレータの外縁部を固定し、且つ、前記正極活物質層、前記セパレータ、及び前記負極活物質層を封止する環状の枠材を有するリチウムイオン電池の製造装置であって、
前記リチウムイオン電池を積層方向の両側から挟持する保持具と、
前記リチウムイオン電池の外縁部に位置する前記枠材を加熱して前記外縁部をヒートシールする枠状のヒータを有するシール装置と、
前記リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して前記4つの辺の放熱を同時に促進可能である放熱具と、
前記放熱具が前記リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接した状態で前記リチウムイオン電池及び前記放熱具を搬出可能である搬送装置と、
を備えるリチウムイオン電池の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記枠材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を隔てる前記セパレータの外縁部を積層方向の両側から挟んで前記セパレータを保持し、且つ、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周を囲み、
前記リチウムイオン電池は、前記正極活物質層を覆うようにその外縁部において前記枠材の一方側に固定された前記正極集電体、及び前記負極活物質層を覆うようにその外縁部において前記枠材の他方側に固定された前記負極集電体を有する四角形の板状に形成され、
前記ヒータは、前記リチウムイオン電池の外縁部に圧接されると共に前記枠材を加熱するリチウムイオン電池の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記保持具は前記リチウムイオン電池の外縁部の内側の全面に当接して前記リチウムイ
オン電池を保持するように構成されているリチウムイオン電池の製造装置。
【請求項4】
請求項において、
前記放熱具は四角形の枠状の部材であり、且つ、2つのコ字形状の部材に分割されているリチウムイオン電池の製造装置。
【請求項5】
正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が積層されてなり、前記正極集電体及び前記負極集電体の間に配置された前記セパレータの外縁部を固定し、且つ、前記正極活物質層、前記セパレータ、及び前記負極活物質層を封止する環状の枠材を有するリチウムイオン電池の製造方法であって、
保持具が前記リチウムイオン電池を積層方向の両側から挟持する保持工程と、
シール装置の枠状のヒータが前記リチウムイオン電池の外縁部に位置する前記枠材を加熱して前記外縁部をヒートシールするヒートシール工程と、
放熱具が前記リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して前記4つの辺の放熱を同時に促進する放熱工程と、
前記放熱具が前記リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接した状態で搬送装置が前記リチウムイオン電池及び前記放熱具を搬出する搬出工程と、
を含むリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項6】
請求項において、
前記枠材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を隔てる前記セパレータの外縁部を積層方向の両側から挟んで前記セパレータを保持し、且つ、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周を囲み、
前記リチウムイオン電池は、前記正極活物質層を覆うようにその外縁部において前記枠材の一方側に固定された前記正極集電体、及び前記負極活物質層を覆うようにその外縁部において前記枠材の他方側に固定された前記負極集電体を有する四角形の板状に形成され、
前記ヒートシール工程において、前記ヒータは、前記リチウムイオン電池の外縁部に圧接されると共に前記枠材を加熱するリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項7】
請求項またはにおいて、
前記保持工程において前記保持具が前記リチウムイオン電池の外縁部の内側の全面に当接して前記リチウムイオン電池を保持するリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項8】
請求項において、
前記放熱具は四角形の枠状の部材であり、且つ、2つのコ字形状の部材に分割されているリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートホン等の携帯機器やハイブリッド自動車、電気自動車等においてリチウムイオン電池が広く利用されている。近年、リチウムイオン電池はビル、オフィス、発電所の定置電源のための大容量の電池としても注目されている。このような大容量のリチウムイオン電池として平面視四角形のシート状またはプレート状で一方の面が正極集電体、他方の面が負極集電体であるリチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池の外縁部は、シール装置によって一辺ずつ順にヒートシールされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-212384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一辺ずつ順にヒートシールされることにより、前回ヒートシールされた一辺のうちの端部(角部)は重複してヒートシールされ、四辺ヒートシールされたときには、平面視四角形のリチウムイオン電池の角部は重複してヒートシールされることとなる。重複してヒートシールされる部分やその周辺部分は熱変形が大きくなりやすく、厚みのばらつきや形状の歪みの要因となる。このように重複してヒートシールされることに起因して生じる課題を解決することを意図して、外縁部だけでなくリチウムイオン電池の全面をプレスしつつヒートシールする手法も考えられる。しかしながら、この手法では、全面をプレスすることによる電極部への悪影響が懸念されるので、別の手法により前述した課題を解決する必要がある。
【0005】
本発明は、リチウムイオン電池の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制することができるリチウムイオン電池の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るリチウムイオン電池の製造装置は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が積層されてなり、正極集電体及び負極集電体の間に配置されたセパレータの外縁部を固定し、且つ、正極活物質層、セパレータ、及び負極活物質層を封止する環状の枠材を有するリチウムイオン電池の製造装置であって、リチウムイオン電池を積層方向の両側から挟持する保持具と、リチウムイオン電池の外縁部に位置する枠材を加熱して外縁部をヒートシールする枠状のヒータを有するシール装置と、を備える。
【0007】
このリチウムイオン電池の製造装置は、枠状のヒータを備えているので、ヒータがリチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して4つの辺を同時にヒートシール可能である。したがって、リチウムイオン電池の外縁部を均一にヒートシールすることができる。角部のみが外縁部の他の部分よりも多い回数ヒートシールされることがない。更に、この製造装置は、リチウムイオン電池を積層方向の両側から挟持するための保持具を備えている。したがって、ヒートシール工程におけるリチウムイオン電池の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制できる。
【0008】
なお、枠材は、正極活物質層及び負極活物質層を隔てるセパレータの外縁部を積層方向の両側から挟んでセパレータを保持し、且つ、正極活物質層及び負極活物質層の外周を囲み、リチウムイオン電池は、正極活物質層を覆うようにその外縁部において枠材の一方側に固定された正極集電体、及び負極活物質層を覆うようにその外縁部において枠材の他方側に固定された負極集電体を有する四角形の板状に形成され、ヒータは、リチウムイオン電池の外縁部に圧接されると共に枠材を加熱してもよい。
【0009】
また、保持具はリチウムイオン電池の外縁部の内側の全面に当接してリチウムイオン電池を保持するように構成されていてもよい。この構成によりリチウムイオン電池の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制する効果を高めることができる。
【0010】
上記製造装置は、リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進可能である放熱具を更に備えていてもよい。リチウムイオン電池の歪みは、ヒートシール工程の後の放熱で生じることもある。リチウムイオン電池の製造装置が、リチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進可能である放熱具を備えていれば、外縁部の4つの辺の放熱が均一に行われるので、放熱によるリチウムイオン電池の厚みのばらつきや形状の歪みも抑制される。
【0011】
また、放熱具は四角形の枠状の部材であり、且つ、2つのコ字形状の部材に分割されていてもよい。放熱具が2つのコ字形状の部材に分割されていれば、保持具がリチウムイオン電池を厚さ方向の両側から挟んで保持した状態で、保持具との干渉を避けて放熱具をリチウムイオン電池に容易に当接させることができる。
【0012】
また、上記製造装置は、放熱具がリチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接した状態でリチウムイオン電池及び放熱具を搬出可能である搬送装置を更に備えていてもよい。
【0013】
放熱具がリチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接した状態でリチウムイオン電池及び放熱具が搬出されれば、搬出後もリチウムイオン電池の外縁部が均一に放熱されるので、外縁部の厚みのばらつきや形状の歪みが抑制される。更に、外縁部の厚みのばらつきや形状の歪みが放熱具により機械的に抑制される。
【0014】
また、本発明の一態様に係るリチウムイオン電池の製造方法は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体が積層されてなり、正極集電体及び負極集電体の間に配置されたセパレータの外縁部を固定し、且つ、正極活物質層、セパレータ、及び負極活物質層を封止する環状の枠材を有するリチウムイオン電池の製造方法であって、保持具がリチウムイオン電池を積層方向の両側から挟持する保持工程と、シール装置の枠状のヒータがリチウムイオン電池の外縁部に位置する枠材を加熱して外縁部をヒートシールするヒートシール工程と、を含む。
【0015】
なお、枠材は、正極活物質層及び負極活物質層を隔てるセパレータの外縁部を積層方向の両側から挟んでセパレータを保持し、且つ、正極活物質層及び負極活物質層の外周を囲み、リチウムイオン電池は、正極活物質層を覆うようにその外縁部において枠材の一方側に固定された正極集電体、及び負極活物質層を覆うようにその外縁部において枠材の他方側に固定された負極集電体を有する四角形の板状に形成され、ヒートシール工程において、ヒータは、リチウムイオン電池の外縁部に圧接されると共に枠材を加熱してもよい。
【0016】
また、保持工程において保持具がリチウムイオン電池の外縁部の内側の全面に当接してリチウムイオン電池を保持してもよい。
【0017】
また、上記製造方法は、放熱具がリチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進する放熱工程を更に含んでいてもよい。
【0018】
放熱具は四角形の枠状の部材であり、且つ、2つのコ字形状の部材に分割されていてもよい。
【0019】
上記製造方法は、放熱具がリチウムイオン電池の外縁部の4つの辺に当接した状態で搬送装置がリチウムイオン電池及び放熱具を搬出する搬出工程を更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リチウムイオン電池の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制することができるリチウムイオン電池の製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態のリチウムイオン電池の製造装置の構成を模式的に示す断面図
図2】同製造装置でヒートシールされるリチウムイオン電池の外縁部を拡大して模式的に示す断面図
図3】同製造装置の保持具及びシール装置の構成を模式的に示す図1のIII-IIIに沿う下面図
図4】同シール装置の構成を模式的に示す斜視図
図5】同製造装置の保持具及び放熱具の構成を模式的に示す断面図
図6】同保持具及び放熱具の構成を模式的に示す図5のVI-VIに沿う下面図
図7】同保持具及び放熱具の構成を模式的に示す斜視図
図8】複数のリチウムイオン電池が積層されたリチウムイオン電池モジュールの構成を模式的に示す断面図
図9】同製造装置によるリチウムイオン電池の製造方法を示すフローチャート
図10】ヒートシール工程を模式的に示す断面図
図11】同ヒートシール工程でヒートシールされるリチウムイオン電池の外縁部を拡大して模式的に示す断面図
図12】放熱工程を模式的に示す断面図
図13】搬出工程を模式的に示す断面図
図14】本発明の第2実施形態のシール装置の構成を模式的に示す斜視図
図15】本発明の第3実施形態のシール装置の構成を模式的に示す斜視図
図16】本発明の第4実施形態のシール装置の構成を模式的に示す斜視図
図17】本発明の第1~第4実施形態の製造装置でヒートシールされるリチウムイオン電池の外縁部の他の例を拡大して模式的に示す断面図
図18】実施例及び比較例のヒートシール後のリチウムイオン電池の厚みの測定部位を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~4に示されるように、本発明の第1実施形態のリチウムイオン電池の製造装置10は、正極集電体12、正極活物質層14、セパレータ16、負極活物質層18及び負極集電体20が積層されてなり、正極集電体12及び負極集電体20の間に配置されたセパレータ16の外縁部を固定し、且つ、正極活物質層14、セパレータ16、及び負極活物質層18を封止する環状の枠材22を有するリチウムイオン電池24を積層方向の両側から挟持するための保持具26と、リチウムイオン電池24の外縁部28に位置する枠材22を加熱して外縁部28をヒートシールするための枠状のヒータ30を有するシール装置32と、を備えている。更に、図5~7に示されるように、リチウムイオン電池の製造装置10は、リチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進可能である放熱具34を備えている。
【0023】
保持具26は、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側の全面に当接してリチウムイオン電池24を保持するように構成されている。より詳細には保持具26は、保持部36と、支持部38と、を有している。保持部36は、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側の全面の形状とほぼ同じ形状の四角形の板状の当接部36Aと、当接部36Aの外縁部からリチウムイオン電池24に当接する側と反対側に突出する外壁部36Bと、を有している。支持部38は当接部36Aの中心部分からリチウムイオン電池24に当接する側と反対側に突出する棒状の部材である。一対の保持具26がリチウムイオン電池の製造装置10に備えられている。一対の保持具26は、支持部38に連結された駆動機構(図示省略)により上下方向に相互に接近/離間するように構成されており、これによりリチウムイオン電池24を保持/解放可能である。
【0024】
シール装置32は、四角い枠状の基部40と、基部40におけるリチウムイオン電池24に対向する側に取付けられた四角い枠状のヒータ30と、を有している。シール装置32は保持具26の外壁部36Bの外側に緩く嵌まるような形状である。一対のシール装置32がリチウムイオン電池の製造装置10に備えられている。一対のシール装置32は基部40に連結された駆動機構(図示省略)により上下方向に相互に接近/離間するように構成されている。一対のシール装置32が相互に接近することにより、ヒータ30がリチウムイオン電池24の外縁部28を挟んで外縁部28に圧接されると共に枠材22を加熱するように構成されている。ヒータ30は、リチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺を同時にヒートシール可能である。ヒータ30は内部に電熱線等の発熱体を備えている。
【0025】
放熱具34も、四角形の枠状の部材であり、リチウムイオン電池24の外縁部28の形状とほぼ同じ形状の枠状の当接部34Aと、当接部34Aの内縁部からリチウムイオン電池24に当接する側と反対側に突出する内壁部34Bと、を有している。放熱具34の内壁部34Bは保持具26の外壁部36Bの外側に緩く嵌まるような形状である。一対の放熱具34がリチウムイオン電池の製造装置10に備えられている。一対の放熱具34は搬送装置42に保持されて上下方向に相互に接近/離間するように構成されている。一対の放熱具34が上下方向に相互に接近することによりリチウムイオン電池24の外縁部28を挟んで外縁部28の両面に当接するようになっている。図6及び7に示されるように、各放熱具34は、2つのコ字形状の部材に分割されている。各放熱具34を構成する2つのコ字形状の部材は搬送装置42に保持されて水平方向に相互に接近/離間するように構成されている。2つのコ字形状の部材が水平方向に相互に接近することにより四角形の枠状の放熱具34を形成するようになっている。
【0026】
搬送装置42は、放熱具34のコ字形状の内壁部34Bの平行な部分を両側から挟んで放熱具34を保持するように構成されている。なお、下側の放熱具34を保持する搬送装置42は、内壁部34Bに緩く嵌合し、当接部34Aを下方から支持して放熱具34を保持する構成でもよい。搬送装置42は、放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接した状態でリチウムイオン電池24及び一対の放熱具34を搬出可能である(図13参照)。なお、下側の放熱具34を保持する搬送装置42で下側の放熱具34と共にリチウムイオン電池24及び上側の放熱具34を保持して搬出する構成でもよい。また、一対の放熱具34の当接部34Aを上下方向から挟持してリチウムイオン電池24及び一対の放熱具34を搬出する構成でもよい。
【0027】
図2に示されるように、リチウムイオン電池24の枠材22は、正極活物質層14及び負極活物質層18を隔てるセパレータ16の外縁部を積層方向の両側から挟んでセパレータ16を保持し、且つ、正極活物質層14及び負極活物質層18の外周を囲む。リチウムイオン電池24は、正極活物質層14を覆うようにその外縁部において枠材22の一方側に固定された正極集電体12、及び負極活物質層18を覆うようにその外縁部において枠材22の他方側に固定された負極集電体20を有する四角形の板状に形成されている。なお、正極集電体12及び負極集電体20は、枠材22よりも少し小さい。したがって、枠材22の外縁部の一部は正極集電体12及び負極集電体20から露出している。
【0028】
正極活物質層14は、正極活物質粒子と電解液とが混合されたものである。なお、正極活物質層14は、例えばスラリー、ファニキュラー、またはペンデュラーと称される半固体状である。正極活物質粒子は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、三元系材料等である。正極活物質粒子の表面は被覆用樹脂で被覆されていてもよい。また、正極活物質層14は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤は、例えばアセチレンブラック等のカーボン材料やアルミニウム等の金属である。なお、正極活物質粒子を被覆する被覆用樹脂も、導電助剤と同様の材料の導電性フィラーを含んでいてもよい。また、正極活物質層14は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン等である。電解液は、電解質及び非水溶媒を含有する。電解質は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等である。非水溶媒は、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等またはこれらの混合物である。正極活物質層14は、正極集電体12、セパレータ16及び枠材22で囲まれるスペースに収容されている。
【0029】
負極活物質層18は、負極活物質粒子と電解液とが混合されたものである。なお、負極活物質層18も、例えばスラリー、ファニキュラー、またはペンデュラーと称される半固体状である。負極活物質粒子は、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、黒鉛等の炭素系活物質、金属、合金、または酸化物である。負極活物質粒子の表面も被覆用樹脂で被覆されていてもよい。また、負極活物質層18も、正極活物質層14に含まれる導電助剤と同様の導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質粒子を被覆する被覆用樹脂も、導電助剤と同様の材料の導電性フィラーを含んでいてもよい。また、負極活物質部は、バインダを含んでいてもよい。バインダは、例えばスチレンブタジエンコポリマー等の水系ポリマーである。負極活物質層18に含まれる電解液は、正極活物質層14に含まれる電解液と同様である。負極活物質層18は、負極集電体20、セパレータ16及び枠材22で囲まれるスペースに収容されている。
【0030】
セパレータ16はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの微多孔膜である。セパレータ16の厚みは、例えば10~25μmである。枠材22の材料は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)、イソシアネート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂等である。枠材22の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、もしくは無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0031】
正極集電体12は例えば導電性樹脂の樹脂集電体、あるいは非導電性の高分子材料と導電性のフィラーとが混合された樹脂集電体である。導電性樹脂は例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリオキサジアゾール等である。非導電性の高分子材料は例えばポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)等である。導電性のフィラーは金属及び/または導電性カーボンである。金属は例えばニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物である。導電性カーボンは例えばアセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種である。負極集電体20は正極集電体12と同様の樹脂集電体である。
【0032】
リチウムイオン電池24は一方の面が正極集電体12、他方の面が負極集電体20である単セルである。図8に示されるように、複数のリチウムイオン電池24が積層されることによりリチウムイオン電池モジュール44を構成する。隣接するリチウムイオン電池24の正極集電体12と負極集電体20とが接して電気的に直列に接続される。なお、リチウムイオン電池24の外縁部28は一対のシール装置32のヒータ30で挟まれて加圧されることにより、外縁部28の内側の部分よりも薄くなる(図11参照)。
【0033】
次に図9に示されるフローチャートに沿って、リチウムイオン電池の製造装置10を用いたリチウムイオン電池の製造方法について説明する。まずリチウムイオン電池24がリチウムイオン電池の製造装置10にセットされ、図1に示されるように、一対の保持具26がリチウムイオン電池24を積層方向の両側から挟持して保持する(S102:保持工程)。保持具26の保持部36はリチウムイオン電池24の外縁部28の内側の全面に当接してリチウムイオン電池24を保持する。なお、リチウムイオン電池の製造装置10へのリチウムイオン電池24のセットは図示しない搬送装置で行ってもよいし、人手で行ってもよい。
【0034】
次に、図10に示されるように、シール装置32の枠状のヒータ30がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺を同時にヒートシールする(S104:ヒートシール工程)。より詳細には一対のシール装置32が上下方向に相互に接近することにより枠状のヒータ30がリチウムイオン電池24の外縁部28に圧接されて外縁部28を加熱する。これにより正極集電体12の外縁部と負極集電体20の外縁部が枠材22に固着され、リチウムイオン電池24の外縁部28がシールされる。図11に示されるように、リチウムイオン電池24の外縁部28は一対のシール装置32のヒータ30で挟まれて加圧されることにより、外縁部28の内側の部分よりも薄くなる。シール装置32の枠状のヒータ30がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺を同時にヒートシールするので、リチウムイオン電池24の4つの辺が均一にヒートシールされる。角部のみが外縁部28の他の部分よりも多い回数ヒートシールされることがない。したがって、外縁部28の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制することができる。更に、保持具26がリチウムイオン電池24を厚さ方向の両側から挟んで保持する。したがって、ヒートシール工程S104における、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側の部分の厚みのばらつきや形状の歪みも抑制することができる。更に、保持具26がリチウムイオン電池24の外縁部28の内側の全面に当接してリチウムイオン電池24を保持するので、リチウムイオン電池24の歪みを抑制する効果が高い。なお、ヒートシール工程S104は、略真空状態の雰囲気中で行われることが好ましい。
【0035】
次に、図12に示されるように、一対のシール装置32がリチウムイオン電池24から上下方向に離間し、シール装置32に代わって放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進する(S106:放熱工程)。より詳細には、まずリチウムイオン電池24から上下方向に離間した位置で各放熱具34を構成する2つのコ字形状の部材が搬送装置42に保持されて水平方向に相互に接近し、四角形の枠状の各放熱具34を形成する。次に、一対の放熱具34が搬送装置42に保持されて上下方向に相互に接近し、リチウムイオン電池24の外縁部28の両面に当接する。放熱具が2つのコ字形状の部材に分割されているので、保持具26がリチウムイオン電池24を積層方向の両側から挟持した状態で、保持具26の支持部38との干渉を避けて放熱具34をリチウムイオン電池24に容易に当接させることができる。放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺の放熱を同時に促進するので外縁部28の放熱が均一に行われる。したがって、放熱によるリチウムイオン電池24の厚みのばらつきや形状の歪みも抑制される。
【0036】
次に、図13に示されるように、保持具26がリチウムイオン電池24から上下方向に離間し、放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接した状態で搬送装置42がリチウムイオン電池24及び放熱具34を搬出する(S108:搬出工程)。放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接した状態でリチウムイオン電池24及び放熱具34が搬出されるので、搬出後もリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺が均一に放熱される。更に、リチウムイオン電池24の形状の歪みが放熱具34により機械的に抑制される。したがって、搬出後もリチウムイオン電池24の厚みのばらつきや形状の歪みが抑制される。以後、同様にリチウムイオン電池24のヒートシール等を繰り返す。
【0037】
次に本発明の第2実施形態について説明する。図14に示されるように、第2実施形態のシール装置50は、2つのコ字形状の部分に分割された枠状のヒータ52と、2つのコ字形状の部分に分割された枠状の基部54と、を有している。ヒータ52は第1実施形態の四角い枠状のヒータ30が2つの部分に分割された構成である。同様に、基部54は第1実施形態の四角い枠状の基部40が2つの部分に分割された構成である。他の構成は第1実施形態と同じであるので、同じ構成については図1~13と同一符号を付することとして説明を省略する。このように2つのコ字形状の部分が組み合わされて四角い枠状のヒータ52を構成する場合も、リチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺を同時にヒートシール可能である。また、この場合もリチウムイオン電池24の外縁部28が均一に加圧される。
【0038】
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態のシール装置50に加え、更に図15に示されるシール装置60が備えられる。シール装置60も、2つのコ字形状の部分に分割された枠状のヒータ62と、2つのコ字形状の部分に分割された枠状の基部64と、を有している。ヒータ62は第1実施形態の四角い枠状のヒータ30が第2実施形態のヒータ52とは90度異なる方向に2つに分割された構成である。同様に基部64は第1実施形態の四角い枠状の基部40が第2実施形態の基部54とは90度異なる方向に2つに分割された構成である。第3実施形態ではシール装置50によるヒートシールと、シール装置60によるヒートシールが行われる。すなわち、ヒートシールが2回行われる。他の構成は第1及び第2実施形態と同じであるので、同じ構成については図1~14と同一符号を付することとして説明を省略する。2つのコ字形状の部分に分割されたヒータでヒートシールする場合、2つのコ字形状の部分の接触部近傍と他の部分とで温度等の条件に差異が生ずることがある。このような場合でも、シール装置50によるヒートシールと、シール装置60によるヒートシールを行うことで、温度等の条件の差異の影響が緩和される。したがって、リチウムイオン電池24の厚みのばらつきや形状の歪みを抑制することができる。なお、リチウムイオン電池24が正方形である場合、シール装置50も正方形である。この場合、1つのシール装置50でヒートシールを2回行ってもよい。より詳細には、正方形のシール装置50で1回目のヒートシールを行い、その後、正方形のリチウムイオン電池24の向きを90度変更し、同じシール装置50で2回目のヒートシールを行ってもよい。また、正方形のシール装置50で1回目のヒートシールを行い、その後、同じシール装置50の向きを90度変更して2回目のヒートシールを行ってもよい。
【0039】
次に本発明の第4実施形態について説明する。図16に示されるように、第4実施形態のシール装置70は、第1実施形態の2つの四角い枠状のヒータ30が一体化された構成のヒータ72と、第1実施形態の2つの四角い枠状の基部40が一体化された構成の基部74と、を有している。また、第1実施形態の2つのリチウムイオン電池24が一体化された構成の中間製品が用意されている。2つのリチウムイオン電池24の連結部では、枠材22が一体化されている。第4実施形態では1回のヒートシール工程で2つのリチウムイオン電池24のヒートシールが行われる。ヒートシールされた後、2つのリチウムイオン電池24はカッタで切り離される。なお、2つのリチウムイオン電池24に応じて2対の保持具26が備えられる。また、第4実施形態では各放熱具は2つのE字形状の部材に分割された構成である(図示省略)。他の構成は第1実施形態と同じであるので、同じ構成については図1~13と同一符号を付することとして説明を省略する。このように第1実施形態の四角い枠状のヒータ30が2つ連結された構成のヒータ72も、各リチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺を同時にヒートシール可能である。また、この場合もリチウムイオン電池24の外縁部28が均一に加圧される。また、1回のヒートシール工程で2つのリチウムイオン電池24のヒートシールが行われるので生産効率の向上に寄与する。なお、シール装置は、第1実施形態の四角い枠状のヒータが3つ以上連結された構成の格子状のヒータと、第1実施形態の四角い枠状の基部40が3つ以上連結された構成の格子状の基部と、を有する構成でもよい。また、連結方向は1方向(X方向)でもよいし2方向(X-Y方向)でもよい。
【0040】
なお、上記第1~第4実施形態では、図2に示されるように、正極集電体12及び負極集電体20は、枠材22よりも少し小さく、枠材22の外縁部の一部は正極集電体12及び負極集電体20から露出している。これに代えて、図17に示される他の例のように、正極集電体12及び負極集電体20は、枠材22と同じ大きさでもよい。この場合、枠材22の外縁部は正極集電体12及び負極集電体20で完全に被覆される。
【0041】
また、上記第1~第4実施形態では搬出工程S108において、放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接した状態で搬送装置42がリチウムイオン電池24及び放熱具34を搬出しているが、搬出後のリチウムイオン電池24の歪みが問題にならない場合、放熱具34がリチウムイオン電池24から離間した状態でリチウムイオン電池24が搬出されてもよい。
【0042】
また、上記第1~第3実施形態では放熱具34が2つのコ字形状の部材に分割されているが、枠状の放熱具34は2つのL字形状の部材に分割された構成でもよい。また、枠状の放熱具34は1つのコ字形状の部材と1つの棒状の部材に分割された構成でもよい。
【0043】
また、上記第1~第4実施形態では放熱工程S106において、放熱具34がリチウムイオン電池24の外縁部28の4つの辺に当接して4つの辺の放熱を同時に促進しているが、放熱工程S106におけるリチウムイオン電池24の歪みが問題にならない場合、4つの辺の放熱を順々に行う放熱具が用いられてもよい。また、放熱具が用いられなくてもリチウムイオン電池24の外縁部28の放熱が充分に行われる場合、リチウムイオン電池の製造装置10は放熱具を備えていなくてもよい。
【0044】
また、上記第2及び第3実施形態ではヒータが2つのコ字形状の部分に分割されているが、枠状のヒータは2つのL字形状の部分に分割された構成でもよい。また、枠状のヒータは1つのコ字形状の部分と1つの棒状の部分に分割された構成でもよい。また、枠状のヒータは、4つのL字形状の部分に分割された構成でもよい。また、枠状のヒータは、角部に対応する4つのL字形状の部分と、辺の部分に対応する4つの棒状の部分に分割された構成でもよい。これらの場合、第3実施形態と同様に、ヒータを構成する複数の部分の接触部が異なる2種類のシール装置を備え、ヒートシールを2回行ってもよい。
【0045】
また、上記第1~第4実施形態では保持具26は、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側の全面に当接してリチウムイオン電池24を保持するように構成されているが、リチウムイオン電池24の歪みが充分に抑制されれば、保持具26は、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側の一部に当接してリチウムイオン電池24を保持するように構成されていてもよい。例えば、保持具の当接部は、リチウムイオン電池24の外縁部28の内側に沿う枠状の部分であってもよい。
【0046】
また、上記第1~第4実施形態では一対の保持具26の両方が上下動するように構成されているが、上側の保持具26のみが上下動するように構成され、下側の保持具26は固定されていてもよい。この場合、搬出工程S108において、搬送装置42が下側の放熱具34を下側の保持具26よりも高い位置まで上昇させてから、一対の放熱具34及びリチウムイオン電池24を搬出すればよい。
【0047】
また、上記第1~第4実施形態ではヒートシール工程S104の前に保持工程S102が開始されているが、保持工程S102はヒートシール工程S104の開始と同時に開始されてもよい。また、保持工程S102はヒートシール工程S104が開始された後に開始されてもよい。
【0048】
[実施例1]
図4に示されるような枠状の一体のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。ヒートシール工程の条件は以下のとおりである。
ヒータ形状:四角い枠状(一体)
シール温度:120℃
シール回数:1回
また、リチウムイオン電池の構成は以下のとおりである。なお、厚みはヒートシールの前のものである。枠材は2枚で構成される。より詳細には、正極側枠材と負極側枠材がセパレータを挟んでいる。
単セルのサイズ:900mm×900mm×900μm
枠材のサイズ:900mm×900mm×400μm×2枚
枠材の孔のサイズ:880mm×880mm
正極集電体及び負極集電体のサイズ:900mm×900mm×50μm
セパレータのサイズ:885mm×885mm×25μm×1枚
枠材の材料:エチレン-酢酸ビニル共重合体
枠材の融点:77、80℃
正極集電体及び負極集電体の材料:ポリプロピレン(商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー(株)製)(B-1)75質量%、アセチレンブラック(AB)(デンカブラック(登録商標))20質量%、変性ポリオレフィン樹脂(三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1001)5質量%
セパレータの材料:ポリプロピレンの微多孔膜
正極活物質:ニッケル・アルミ・コバルト酸リチウム(コア-シェル(樹脂)構造)100質量%、アセチレンブラック0.1質量%
負極活物質:難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)(コア-シェル(樹脂)構造)100質量%、アセチレンブラック1.6質量%
電解液:エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)、Li[(FSO)2N](LiFSI)2mol/L
【0049】
ヒートシール後、図18に示されるようにリチウムイオン電池24の角部A、辺の中央部B、及びAとBの中間部位Cの厚みを卓上厚み測定器(ミツトヨ製)により測定した。さらに、同じ条件でヒートシールされた5枚のリチウムイオン電池のAの部位の厚みの平均値、Bの部位の厚みの平均値、及びCの部位の厚みの平均値をそれぞれ算出した。さらに、これらの厚みの標準偏差をSTDEV関数により算出した。さらに、標準偏差を3つの部位(A、B、及びCの部位)の厚みの平均値で除した値を算出した。Aの部位の厚みの平均値、Bの部位の厚みの平均値、Cの部位の厚みの平均、標準偏差、及び標準偏差を厚みの平均値で除した値を表1に示す。
【0050】
さらに同じ条件でヒートシールされた10枚のリチウムイオン電池が積層されたリチウムイオン電池モジュールの抵抗値を測定した。具体的には、リチウムイオン電池モジュールを完全に放電させた後、充電して電圧を確認し、SOC50%に調整した。その後、0.1Cで10秒間放電させた。0.1C相当の電流値I0.1Cと、充電後の電圧と放電後の電圧との電圧変化ΔV0.1Cに基づいて、オームの法則により直流抵抗値(Ω)を算出した。さらに電極面積(正極活物質の面積)を乗じて面積抵抗値を算出した。面積抵抗値の測定結果も表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例2]
実施例1に対し下記のようにシール温度及びリチウムイオン電池の枠材の厚みが異なる条件でヒートシールを行った。他の条件は実施例1と同じである。
単セルの厚み:600μm
シール温度:110℃
枠材の厚み:250μm×2枚
【0053】
[実施例3]
実施例1に対し下記のようにヒータ形状が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、図14に示されるようなシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。なお、シール回数は実施例1と同様に1回である。他の条件も実施例1と同じである。
ヒータ形状:四角い枠状(コ字形状の2つの部分に分割)
【0054】
[実施例4]
実施例3に対し下記のようにシール温度及びシール回数が異なる条件でヒートシールを行った。より詳細には、第3実施形態のように、正方形のシール装置で1回目のヒートシールを行い、その後、正方形のリチウムイオン電池の向きを90度変更し、同じシール装置で2回目のヒートシールを行った。他の条件は実施例1及び3と同じである。
シール温度:110℃
シール回数:2回
【0055】
[実施例5]
実施例1に対し下記のようにヒータ形状が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、図16に示されるようなシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。実施例1の2つのリチウムイオン電池が一体化された構成の中間製品がヒートシールされた。ヒートシールされた後、2つのリチウムイオン電池はカッタで切り離された。他の条件は実施例1と同じである。
ヒータ形状:実施例1の四角い枠状のヒータが2つ一体化された構成
【0056】
[比較例1]
実施例1に対し下記のようにヒータ形状が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、リチウムイオン電池の一辺に対応する棒状のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部を1辺ずつ4回に分けてヒートシールした。他の条件は実施例1と同じである。
ヒータ形状:棒状
シール回数:4回
【0057】
[比較例2]
比較例1に対し下記のようにシール温度及びリチウムイオン電池の枠材の厚みが異なる条件でシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、リチウムイオン電池の1辺に対応する棒状のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部を1辺ずつ4回に分けてヒートシールした。他の条件は比較例1と同じである。
単セルの厚み:600μm
シール温度:110℃
枠材の厚み:250μm×2枚
【0058】
[比較例3]
比較例2に対し下記のようにヒータ形状及びシール回数が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、リチウムイオン電池の2辺に対応するL形のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部を2辺ずつ2回に分けてヒートシールした。他の条件は比較例2と同じである。
ヒータ形状:L形
シール回数:2回
【0059】
[比較例4]
比較例1に対し下記のようにヒータ形状及びシール回数が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部をヒートシールした。より詳細には、リチウムイオン電池の1辺に対応する棒状のヒータを有するシール装置と、リチウムイオン電池の3辺に対応するコ字形状のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の外縁部を2回(1辺と3辺)に分けてヒートシールした。他の条件は比較例1と同じである。
ヒータ形状:棒状、及びコ字形状
シール回数:2回
【0060】
[比較例5]
実施例1に対し下記のようにヒータ形状が異なるシール装置によりリチウムイオン電池の全面をヒートシールした。より詳細には、リチウムイオン電池の全面に対応する四角い板状のヒータを有するシール装置によりリチウムイオン電池の全面をヒートシールした。他の条件は実施例1と同じである。
ヒータ形状:四角い板状(全面)
【0061】
実施例2~5及び比較例1~5について実施例1と同様にヒートシール後、リチウムイオン電池24のA、B、及びCの部位においてリチウムイオン電池24の厚みを測定した。さらに、5枚のリチウムイオン電池のAの部位の厚みの平均値、Bの部位の厚みの平均値、及びCの部位の厚みの平均値を算出した。なお、比較例1~4のAの部位の厚みは、重複して2回ヒートシールされた角部の厚みである。さらに、これらの厚みの標準偏差をSTDEV関数により算出した。さらに、標準偏差を3つの部位(A、B、及びCの部位)の厚みの平均値で除した値を算出した。実施例2~5及び比較例1~5のAの部位の厚みの平均値、Bの部位の厚みの平均値、Cの部位の厚みの平均、標準偏差、及び標準偏差を厚みの平均値で除した値も表1に示す。
【0062】
表1に示されるように、実施例1~5は比較例1~4に対し、ヒートシールされたリチウムイオン電池の厚みの標準偏差、及び標準偏差をA、B、及びCの部位の厚みの平均値で割った値がいずれも著しく小さく抑制されていた。すなわち、実施例1~5のリチウムイオン電池の厚みのばらつきは、比較例1~4のリチウムイオン電池の厚みのばらつきよりも著しく小さかった。また、実施例1~5は比較例1~4に対し、10枚のリチウムイオン電池が積層されたリチウムイオン電池モジュールの面積抵抗値が低かった。なお、比較例5は実施例1~5よりも、ヒートシールされたリチウムイオン電池の厚みの標準偏差、及び標準偏差を厚みの平均値で割った値がいずれも小さかったが、10枚のリチウムイオン電池が積層されたリチウムイオン電池モジュールの面積抵抗値は実施例1~5よりも著しく高かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、リチウムイオン電池のヒートシールに利用できる。
【符号の説明】
【0064】
10 リチウムイオン電池の製造装置
12 正極集電体
14 正極活物質層
16 セパレータ
18 負極活物質層
20 負極集電体
22 枠材
24 リチウムイオン電池
26 保持具
28 外縁部
30、52、62、72 ヒータ
32、50、60、70 シール装置
34 放熱具
36 保持部
36A 当接部
36B 外壁部
38 支持部
40、54、64、74 基部
42 搬送装置
44 リチウムイオン電池モジュール
S102 保持工程
S104 ヒートシール工程
S106 放熱工程
S108 搬出工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18