(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】円形力発生装置を用いる能動型防振
(51)【国際特許分類】
B60K 5/12 20060101AFI20220706BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B60K5/12 Z
F16F15/02 C
F16F15/02 A
(21)【出願番号】P 2020542866
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 US2019023085
(87)【国際公開番号】W WO2019183168
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-08-06
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507381329
【氏名又は名称】ロード コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】バーブレスク,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ビーバー,マーティン
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0370266(US,A1)
【文献】国際公開第2016/189075(WO,A1)
【文献】特表2012-512082(JP,A)
【文献】特開2004-341608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
車両フレームと、
乗員室と、
エンジンと、
前記車両フレームに取り付けられる複数の防振装置と、
を備え、
前記各防振装置は円形力発生装置を備え、前記円形力発生装置は少なくとも1つの塊と、前記塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを備え、前記防振装置は、前記エンジンが動作中のシリンダのサブセットを停止した結果として生じる、前記乗員室内の騒音および/または振動を低減するために、能動型防振を実施するように構成され
、少なくとも1つの前記防振装置は、前記エンジンが前記シリンダのサブセットを停止したときに、車両状況データを用いて、前記能動型防振を制御する、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、各防振装置は、入れ子式の対のロータと、制御システムとを含み、前記制御システムは、モータ制御回路と、加速度計と、少なくとも1つのプロセッサと、能動型防振ルーチンを記憶するメモリとを備え、前記モータ制御回路は、指令された回転力を生成するために、前記モータを制御するように構成される、車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両であって、車両制御システムに結合されるデータ通信バスを備え、前記各防振装置は前記データ通信バスに結合され、前記データ通信バス上で、
前記車両状況データを受領するように構成され、前記
車両状況データは、車両速度、トランスミッションギア、エンジン速度、およびエンジントルクのうち1または複数
を含む、車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、前記防振装置の少なくとも1つは、前記車両状況データを用いて、ギア変更が切迫していることを判断し、それに応じて、前記切迫したギア変更前に、前記円形力発生装置のための力指令を変更するように構成される、車両。
【請求項5】
請求項3に記載の車両であって、前記防振装置のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのプロセッサと、複数の車両状況を複数の力指令に関連付けるルックアップテーブルを記憶する
少なくとも1つのメモリとを備え、前記少なくとも1つの防振装置は、前記車両状況データを用いて、前記円形力発生装置の力指令を前記ルックアップテーブルによって決定するように構成される、車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両であって、前記防振装置は互いに通信して、前記防振装置のうちの1つをマスタ防振装置として選択するように構成され、それによって、前記マスタ防振装置のプロセッサにシステムレベルの能動型防振ルーチンを実行させ、力指令を前記他の防振装置に送信させ、それによって前記防振装置は全体として振動消去力を生成する、車両。
【請求項7】
請求項1に記載の車両であって、前記各防振装置は、少なくとも1つのプロセッサと、複数の車両状況を複数の力指令に関連づけるルックアップテーブルを記憶する
少なくとも1つのメモリとを備え、前記各防振装置は、
前記車両状況データを用いて、前記円形力発生装置のための力指令を前記ルックアップテーブルによって決定するように構成される、車両。
【請求項8】
請求項1に記載の車両であって、前記各防振装置は振動センサを備え、前記各防振装置は、前記振動センサからのセンサデータを用いて、前記円形力発生装置の力指令を決定するように構成される、車両。
【請求項9】
能動型防振のためのシステムであって、前記システムは、
データ通信ネットワークと、
複数の防振装置と、
を備え、
各防振装置は、
ハウジングと、
前記ハウジング内の円形力発生装置であって、少なくとも1つの塊と、前記塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを備える、円形力発生装置と、
前記ハウジング内の制御システムとを備え、
前記制御システムは、モータ制御回路と、少なくとも1つのプロセッサと、システムレベルの能動型防振ルーチンとを記憶するメモリとを備え、前記モータ制御回路は前記モータを制御して、指令された回転力を生成するように構成され、
前記防振装置は、前記データ通信ネットワークと通信し、前記防振装置のうちの1つをマスタ防振装置として選択するように構成され、それによって前記マスタ防振装置のプロセッサに、前記システムレベルの能動型防振ルーチンを実行させ、力指令を前記他の防振装置に送信させ、それによって前記防振装置は全体として振動消去力を生成する、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記各防振装置は振動センサを備え、前記各防振装置は、前記防振装置の前記振動センサからのセンサデータを前記マスタ防振装置に送信するように構成され、前記システムレベルの能動型防振ルーチンを実行することは、前記振動センサからの前記センサデータを用いて、前記力指令を決定することを含む、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記各振動センサは加速度計を備え、前記円形力発生装置と共に配向される、システム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムであって、前記システムレベルの能動型防振ルーチンを実行することは、前記振動センサからの前記センサデータを適応フィルタルーチンに提供することを含む、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記適応フィルタルーチンは、filtered-x最小二乗平均(LMS)ルーチンである、システム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムであって、前記各円形力発生装置は対の入れ子式のロータを備え、前記指令された回転力は、力の大きさと、相対位相とを備える、システム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムであって、前記各モータ制御回路は、前記塊の位置を検知するための位置センサと、前記位置センサを用いて前記モータを制御するサーボモータ回路とを備える、システム。
【請求項16】
請求項9に記載のシステムであって、前記ハウジングは、車両フレームに取り付けるための取付具と、ワイヤハーネスに接続するための電子機器コネクタとを備える、システム。
【請求項17】
車両の乗員室内の能動型防振のためのシステムであって、前記システムは、
車両通信ネットワークと、
車両のエンジンシリンダのサブセットの作動を停止した結果として生じる、前記乗員室内の騒音および/または振動を低減するために、能動型防振を実施するように構成された複数の防振装置と、
を備え、
前記各防振装置は、
ハウジングと、
前記ハウジング内の円形力発生装置であって、少なくとも1つの塊と、前記塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを備える、円形力発生装置と、
前記ハウジング内の制御システムとを備え、
前記制御システムは、モータ制御回路と、少なくとも1つのプロセッサと、複数の車両状況を複数の力指令と関連付けるルックアップテーブルを記憶するメモリとを備え、前記モータ制御回路は前記モータを制御して、指令された回転力を生成するように構成され、前記制御システムは、車両状況データを前記車両通信ネットワークで受領し、前記車両状況データを用いて、前記円形力発生装置のための力指令を前記ルックアップテーブルによって決定するように構成され、
少なくとも1つの前記防振装置は、前記エンジンが前記シリンダのサブセットを停止したときに、前記車両状況データを用いて、前記能動型防振を制御する、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記車両状況データは、車両速度と、トランスミッションギアと、エンジン速度と、エンジントルクとのうちの1または複数を含む、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、前記防振装置のうち少なくとも1つは、前記車両状況データを用いてギア変更が切迫していることを判断し、それに応じて、前記切迫したギア変更以前に、前記円形力発生装置のための力指令を変更するように構成される、システム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムであって、前記各防振装置は振動センサを備え、前記各防振装置の前記制御システムは、前記力指令を前記振動センサからのセンサデータを用いて決定するように構成される、システム。
【請求項21】
請求項20に記載のシステムであって、前記各振動センサは加速度計を備え、前記円形力発生装置と共に配向される、システム。
【請求項22】
請求項20に記載のシステムであって、前記各円形力発生装置は対の入れ子式のロータを備え、前記指令された回転力は、力の大きさと相対位相とを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年3月20日出願の米国仮特許出願第62/645,395号の利益を主張し、当該出願に記載されたすべての開示を本明細書に援用するものである。
【技術分野】
【0002】
本出願は一般に、能動型防振分野に関し、より具体的には、円形力発生装置を用いる能動型防振のためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
線形防振技術は、自動車用途において、低出力動作中に効率を高めるために、エンジンがシリンダを停止するときに誘発される振動を制御するために用いられる。その際に、エンジンが低周波励起を伝達するため、運転手および乗客は自動車に違和感を感じることもある。これは、V-8エンジンの場合に起こることがあり、たとえば、4つのシリンダを停止し、残りの4つのシリンダを操作するようにエンジンが指令を受けるときに起こることがある。この場合、残りの4つのシリンダは2エンジン回転毎分周波数を伝達し、運転手および/または乗客は自動車に問題があると認識することもある。
【0004】
広周波用途のための線形技術は一般に、動作範囲より低く調整されるため、重厚で、高価になることもある。これは、たとえば、大量の高品質な金属および希土類磁石素材を用いることが必要となるためである。線形技術はその性能において、広周波帯域にわたって複雑な動きを制御することに限定される。自動車製造業者は、この技術を車両の多様な構成で用いるためには、性能を改善するためにアクチュエータを再配向しなければならないことに気付いている。このような広範な周波数帯域にわたる動きは、車両の構造的構成が多様であるためかなり複雑になり、著しく変化する。そのため、たとえば、客車の多様な構成、トラックの荷台の長さなどの車両構成にしたがって、一連の複雑なアクチュエータ配向を実施しなければならないため、製造ラインの合理化に苦慮する製造業者もいる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書は、円形力発生装置を用いる能動型防振のためのシステム、装置、および方法を記載する。一態様では、車両は、車両フレームと、乗員室と、エンジンと、車両フレームに取り付けられた複数の防振装置とを含む。各振動装置は円形力発生装置を含む。円形力発生装置は、少なくとも1つの塊と、塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを備える。防振装置は、能動型防振を実行し、動作中のシリンダのサブセットをエンジンが停止することから生じる、乗員室内の騒音および/または振動を低減するように構成される。エンジンの駆動軸の事例のように、車両内の励起が円形の場合は、車両内の円形の励起を生成し、制御するためには、線形技術よりもCFG技術を備える方が良い結果を得られる。
【0006】
別の態様では、能動型防振のためのシステムは、データ通信ネットワークと、防振装置とを含む。各防振装置は、ハウジングと、ハウジング内の円形力発生装置と、ハウジング内の制御システムとを含む。円形力発生装置は、少なくとも1つの塊と、塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを含む。制御システムは、モータ制御回路と、少なくとも1つのプロセッサと、システムレベルの能動型防振ルーチンを記憶するメモリとを含む。モータ制御回路は、モータを制御し、指令された回転力を生成するように構成される。防振装置はデータ通信ネットワークで通信し、防振装置のうちの1つをマスタ防振装置として選択し、それによってマスタ防振装置のプロセッサにシステムレベルの能動型防振ルーチンを実行させ、力指令を他の防振装置に送信して、それによって防振装置全体として振動消去力を生成するように構成される。
【0007】
別の態様では、能動型防振のためのシステムは、車両通信ネットワークと、防振装置とを含む。各防振装置は、ハウジングと、ハウジング内の円形力発生装置と、ハウジング内の制御システムとを含む。円形力発生装置は、少なくとも1つの塊と、塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを含む。制御システムは、モータ制御回路と、少なくとも1つのプロセッサと、車両状況を力指令に関連付けるルックアップテーブルを記憶するメモリとを含む。モータ制御回路は、モータを制御して指令された回転力を生成するように構成される。制御システムは、車両状況データを車両通信ネットワークで受領し、車両状況データを用いて、円形力発生装置の力指令をルックアップテーブルによって決定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】円形力発生装置を用いる能動型防振システムを備える車両を例示する。
【
図1B】円形力発生装置を用いる能動型防振システムを備える車両を例示する。
【
図1C】円形力発生装置を用いる能動型防振システムを備える車両を例示する。
【
図4】防振ルーチンの実施例を例示するブロック図である。
【
図5A】エンジン回転毎分グラフを用いて、切迫したギア変更の前に力指令を変更する防振装置の効果を例示する。
【
図5B】エンジン回転毎分グラフを用いて、切迫したギア変更の前に力指令を変更する防振装置の効果を例示する。
【
図5C】エンジン回転毎分グラフを用いて、切迫したギア変更の前に力指令を変更する防振装置の効果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書は、円形力発生装置を用いる能動型防振のためのシステム、装置、および方法を記載する。円形力発生装置(CFG)技術は、線形技術に関連する制限の少なくとも一部を解決する。CFGは、平面力(およびモーメント)を生成する。平面力(およびモーメント)は、特に広範な動作周波数領域にわたって線形力技術よりも容易に、複雑な構造物の応答における振動を制御することができる。
【0010】
図1A~Cは、円形力発生装置を用いる能動型防振システムを備える車両100を例示する。車両100は、任意の適切な種類の自動車であってもよく、たとえば、乗用車またはトラックであってもよい。車両100は、例示を目的として、ピックアップトラックとして例示されている。
【0011】
図1Aは、車両100の俯瞰図に重ねた能動型防振システムのブロック図である。車両100は、車両フレーム102と、エンジン104と、トランスミッション106と、車両制御システム108とを含む。車両100は、ワイヤハーネス110と、複数の防振装置112a~eとを含む。複数の防振装置112a~eは、車両フレーム102に取り付けられ、ワイヤハーネス110に結合される。ワイヤハーネス110は、データおよび/または電力を防振装置112a~eに提供するために、任意の適切な配線システムを用いて実装されてもよい。各防振装置112a~eは電力を受領してもよく、たとえば、12ボルトの電力を車両100から受領してもよい。一部の事例では、各防振装置112a~eは、アナログエンジンタコメータ信号に個別にアクセスする。防振装置は、エンジン104が動作中のシリンダのサブセットを停止した結果として生じる乗員室118内の騒音および振動を低減するために、能動型防振を実施するように構成される。
【0012】
各防振装置112a~eは、円形力発生装置(CFG)を含む。CFGは、少なくとも1つの塊と、塊を回転させるように構成される少なくとも1つのモータとを含む装置である。
図1Bは、CFG114の実施例の斜視図を例示する概略図である。
図1Bは、CFG114の回転方向116を例示する。円形力発生装置の実施例を、
図2A~Fを参照して以下に説明する。
【0013】
各防振装置112a~eは、円形力発生装置を制御するための制御システムも含む。制御システムは、指令された回転力を生成するために、モータを制御するように構成されるモータ制御回路を含む。防振装置の実施例を、
図3を参照して以下に説明する。
【0014】
図1Cは、車両100の側面図と、車両フレーム102に3つのCFG120a~cを配置した実施例を例示する概略図である。一般に、CFG120a~cは車両100の任意の適切な位置に配置することができる。CFG120a~cの数および位置は、具体的な車両の種類の設計要件を満たすように選択することができる。
図1Cに示すように、2つのCFG120a~bは車両100の長さに沿って車両100の片側に対向する方向に取り付けられ、1つのCFG120cは、車両100の幅に沿ってその他のCFG120a~bに垂直に取り付けられる。
【0015】
CFG技術は、幅広い動作周波数領域にわたって、複雑な構造物の応答において取消運動を生成するため、線形技術よりも効率的に動作する。線形技術は線形力のみを生成することを意図する。CFG技術を用いてさらに複雑な平面力を生成することができ、指令可能な力の大きさを生成するだけではなく、フレーム/車両構造の複雑な動作による偏向した形状とも良好に結合するように配分可能であり、車両構成によって再配向する必要もない。
【0016】
CFG技術は、多様な方法で実装可能である。CFG技術は、2つの個別のモータで駆動される、2つの共回転する偏心した塊を備えて実装されてもよい。モータは制御周波数で回転し、各偏心した塊の大きさおよび相は、配列されたモータ制御電子機器によって制御される。一部の実施例では、中央システムコントローラはシステム内の各CFGと通信し、エンジンタコメータに対して力の大きさと相対位相を指令する。中央システムコントローラは、各CFGを駆動して、車両の乗員室内の騒音および/または振動を低減するために協働する。
図1Aに示す実施例では、車両100には中央システムコントローラがないが、以下にさらに記載するように、個別の防振装置112a~eを適切に構成することによってこの構成は可能となる。
【0017】
CFGおよび制御システムの様々な構築が可能である。以下の2つの例を検討する。
【0018】
第1の例では、システムは、同一に構成された防振装置112a~eを備え、各防振装置112a~eは車両フレーム102上で車両100に取り付けられる。各防振装置112a~eは、モータと、電子機器と、力の大きさと相対位相を生成するソフトウェアとを備える。さらに、各防振装置112a~eは、たとえば、Filtered-Xアルゴリズムを用いてシステム制御ソフトウェアを実行する能力を有する。さらに、各防振装置112a~eは統合加速度計を有する(加速度計の方向はCFG力と同一の平面内にある)。各防振装置112a~eは、たとえば12ボルト電池の車両電力バスレールから電力を得ることができ、たとえば、ワイヤハーネス110を通じてアナログエンジンタコメータおよび車両CANバスへのアクセスを有する。出力を上げている間、各防振装置112a~eはCANバスを通じて互いに通信し、どの装置が「マスタ」であり、どの装置が「スレーブ」装置であるかを決定する。マスタCFGは次に、システム内のすべての統合された加速度計で振動を低減するために、システム制御アルゴリズムを実施する。
【0019】
第2の例では、システムは、同一に構成された防振装置112a~eを備え、各防振装置112a~eは車両フレーム102上で車両100に取り付けられる。各防振装置112a~eは、モータと、電子機器と、力の大きさと相対位相を生成するソフトウェアとを備える。各防振装置112a~eは車両CANバスに、たとえば、ワイヤハーネス110を通じて結合し、それぞれ信号をアナログエンジンタコメータから受領する。各防振装置112a~eはルックアップテーブルを保存する。エンジン速度、トルク、およびギアなど、CANバスによって提供されるパラメータによって、防振装置は、それ自体に(単独で)エンジンパラメータにしたがって具体的な力の大きさおよび位相を生成するように指令する。このシステムは「オープンループ」制御機構を構成しえる。
【0020】
一部の実施例では、各防振装置112a~eはルックアップテーブルを保存するが、振動センサは有さない。それによって、防振装置112a~eは、エンジンパラメータおよびルックアップテーブルのみを用いて力の大きさおよび位相を生成する。一部の他の事例では、各防振装置112a~eはルックアップテーブルを保存し、追加の振動センサを含む。それによって、防振装置112a~eは、エンジンパラメータ、ルックアップテーブル、および振動センサからのセンサデータを用いて力の大きさおよび位相を生成する。一部の他の事例では、各防振装置112a~eは振動センサを含むが、ルックアップテーブルは含まない。それによって、防振装置112a~eは、振動センサからのセンサデータおよび場合によってはエンジンパラメータを用いて、力の大きさおよび位相を生成する。
【0021】
一部の実施例では、特にギア変更によるCFG追跡性能を改善するために、各防振装置112a~eは車両CANバスへのアクセスを有し、防振装置112a~eはギア変更事象を事前に知ることができる。車両制御システム108は、CANバスを用いてギアを変更するように車両トランスミッションに指令する。この事象自体は、数ミリ秒内の時間で発生することもあるが、ギア変更事象中に、CFGが制御を良好に追跡し続けるように、回転を上げる(または下げる)ためには十分である(CFGに「追いつかせる」ためにエンジンタコメータのみを用いる場合に発生する遅延とは対照的である)。この様式での制御の追跡は、
図5A~Cを参照して以下で詳細に述べる。
【0022】
図2A~Fは、CFG114の実施例を例示する。
図2Aは、CFG114およびCFG144用のハウジング122を示す。CFG114は、車両フレームに取り付けるための取付具124を含んでいてもよい。動作中は、ハウジング122はCFG114の構成部品を、たとえば、破片から保護する。ハウジング122を用いて、モータと回転する塊に加えて、制御電子機器を保持することができる。
図2Bは、例示目的のためにハウジングを取り除いたCFG114を示す。
図2CはCFG114の切断図であり、CFG114の構成部品をさらに例示する。
【0023】
図2DはCFG114用のロータアセンブリ200の斜視図である。ロータアセンブリ200は、固定車軸202と、入れ子式の対のロータとを含む。ロータアセンブリ200は、第1のロータ塊204と、第1のモータロータ206と、第1のモータロータ206の回転位置を感知するように構成される第1のモータトーンホイール208と、第1のロータ回転軸受ハウジング210と、第1のロータ非回転軸受ハウジング212とを含む。ロータアセンブリ200は、第2のロータ塊214と、第2のモータロータ216と、第2のモータロータ216の回転位置を感知するように構成される第2のモータトーンホイール218と、第2のロータ回転軸受ハウジング220と、第2のロータ非回転軸受ハウジング222とを含む。
【0024】
第1のロータ塊204と第2のロータ塊214はそれぞれ固定車軸202の周りを回転可能であり、合成回転力を生成する。第1のロータ塊204と第2のロータ塊214との間の相対角位置は、合成回転力の大きさおよび位相を変更するために、選択的に調整可能である。
【0025】
図2Eは、例示する目的で分解されたロータアセンブリ200の図を示す。
図2Fは、例示する目的で分解されたCFG114の図を示す。
図2Fは、第1のモータステータ224と、第2のモータステータ226とを備えるロータアセンブリ200を示す。第1のモータステータ224と第2のモータステータ226は、CFG114のハウジング122に取り付け可能である。組み立て時には、第1および第2のモータは一般に、フレームのない種類の環状のモータであり、たとえば、正弦波逆起電力(BEMF)を有する3相ブラシレスモータなどの永久磁石同期電動機(PMSM)である。
【0026】
図3は防振装置112の実施例のブロック図である。防振装置112は、CFG114と、制御システム302と、データ通信システム304と、振動センサ306とを含む。データ通信システム304は、たとえば、車両CANバスで、または任意の適切な有線または無線通信システムで通信するための通信回路を含んでいてもよい。振動センサ306は、たとえば、加速度計であってもよい。
【0027】
制御システム302はモータ制御回路308を含む。モータ制御回路308は、たとえば、CFG114の2つのモータを制御して、CFG114の2つの回転する塊の間に選択された相対位相差を生成することによって、指令された回転力を生成するために、CFG114を制御するように構成される。たとえば、モータ制御回路308は、塊の位置を感知する位置センサと、位置センサを用いてモータを制御するサーボモータ回路とを用いて実装されてもよい。制御システム302は、少なくとも1つのプロセッサ310と、プロセッサ310のための実行可能命令を記憶するメモリ312とを含む。プロセッサ310およびメモリ312は、たとえば、マイクロコントローラまたはチップ上のその他のシステムとして実装されてもよい。
【0028】
制御システムは、プロセッサ310とメモリ312とを用いて実装されるマスタ選択ルーチン314を含む。マスタ選択ルーチン314は、他の防振装置と通信して、防振装置のうちの1つをマスタ防振装置として選択するように構成される。たとえば、制御システム302は、電源が入れられたことに応じて、マスタ選択ルーチン314を実行することができる。マスタ選択ルーチン314は、たとえば、乱数を生成すること、乱数を他の防振装置と共有すること、最大または最小の乱数を生成する防振装置を選択することによって、任意の適切な選択アルゴリズムを用いてもよい。
【0029】
制御システム302は、プロセッサ310とメモリ312を用いて実装される防振ルーチン316を含む。一部の実施例では、防振ルーチン314は、システムレベルの能動型防振ルーチンである。防振装置112が全体としてマスタ防振装置として選択されたと、マスタ選択ルーチン314が判断すると、制御システム302はシステムレベルの能動型防振ルーチンを実行し、力指令を他の防振装置に送信し、それによって防振装置は全体として振動消去力を生成する。力指令は、たとえば、力の大きさおよび位相、または2つの回転塊の間の力の大きさおよび相対位相差、またはCFGを制御するための任意の他の適切なデータを特定することができる。
【0030】
システムレベルの能動型防振ルーチンは、振動センサ306および他の防振装置の振動センサからセンサデータを受領してもよい。次に、システムレベルの能動型防振ルーチンを実行することは、センサデータを用いて、力指令を決定することを含む。たとえば、センサデータは適応フィルタルーチン、たとえば、filtered-x最小二乗平均(LMS)ルーチンに提供されてもよい。
【0031】
制御システム302は、ルックアップテーブル318を含む。ルックアップテーブル318は、防振ルーチン316によって用いられて、力指令を決定してもよい。ルックアップテーブル318は、車両状況を力指令に関連付ける。防振ルーチン316は車両状況データを、たとえば、車両CANバスから受領し、車両状況データを用いて、CFG114の力指令をルックアップテーブル318によって決定する。車両状況データは、車両速度、トランスミッションギア、エンジン速度、およびエンジントルクのうち1または複数を含んでいてもよい。防振ルーチン316は、車両状況データを用いて、ギア変更が切迫していることを判断するように構成されてもよく、それに応じて、切迫したギア変更の前に円形力発生装置の力指令を変更してもよい。
【0032】
図4は、防振ルーチン314の実施例を例示するブロック図である。防振ルーチン314は、車両状況データの入力、たとえば、アナログタコメータ信号を受領するための参照処理ブロック402を含む。防振ルーチン314は、入力信号振幅と位相を修正し、振動除去信号を出力する制御フィルタ404を含む。防振ルーチン314は、CFG114の能力に基づいて出力信号を制限するための出力制限ブロック406を含んでいてもよい。
【0033】
防振ルーチン314は、フィルタ適応ブロック410を含む。フィルタ適応ブロック410は、制御フィルタ404を調整して、1または複数の振動センサ306から受領するエラー信号を低減または最小限にする。防振ルーチン314はシステムモデル408を含む。システムモデル408は、出力信号からエラー信号までの転送機能を含んでいてもよく、システムモデル校正中に作成される。フィルタ適応ブロック410はシステムモデル408およびエラー信号を用いて、制御フィルタ404におけるフィルタ係数を調節する。
【0034】
図5A~Cは、エンジン回転毎分グラフを用いて、切迫したギア変更以前の力指令を変化させる防振装置の効果を例示する。
図5Aは、エンジン回転毎分を縦軸に、時間を横軸に備えるグラフを示す。グラフは、時間t1における3速ギアから、時間t4における2速ギアへのギア変更を例示する。時間t2において、車両制御システムは車両CANバスで、ギア変更が切迫していることを示すデータ、たとえば、トランスミッションにギア変更を行わせる指令を送信する。時間t3では、トランスミッションはギア変更の実行を開始する。
【0035】
図5Bは、防振装置が、車両CANバスでギア変更が切迫していることを示すデータを用いない事象における、追跡エラーを例示するグラフの一部を示す。追跡エラーは、エンジン回転毎分と防振装置力指令との間の斜線区域502として例示される。防振装置は、エンジン回転毎分の迅速な変化に追いつくよう試みる。
【0036】
図5Cは、防振装置が車両CANバスでギア変更が切迫していることを示すデータを用いるとき、低減した追跡エラーを例示するグラフの一部を示す。追跡エラーは、エンジン回転毎分と防振装置力指令との間の斜線区域504として例示される。防振装置は、ギア変更の前に力指令の変更を開始することができ、それによって、エンジン回転毎分の迅速な変化に追いつく必要はない。
【0037】
本明細書に記載する実施形態は例にすぎず、限定するものではない。本明細書に記載するシステム、機器、およびプロセスの多くの変形および修正は可能であり、本開示の範囲内である。したがって、保護の範囲は本明細書に記載する実施形態に限定されず、以下の請求項によってのみ限定され、保護の範囲は請求項の主題の同等物すべてを含むものとする。