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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】ケイ素ひげぜんまいを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/06 20060101AFI20220706BHJP
   G04B 17/22 20060101ALI20220706BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B17/22 Z
B81C1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020549548
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019057160
(87)【国際公開番号】W WO2019180177
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】18163053.4
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】キュザン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラルド,マルコ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133495(JP,A)
【文献】特開2016-173356(JP,A)
【文献】特開2017-111131(JP,A)
【文献】特開2015-179067(JP,A)
【文献】特開平4-318491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/06
G04B 17/22
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひげぜんまいを製造する方法であって、
a)ケイ素製の「デバイス」層(11)、酸化ケイ素製のボンディング層(13)及びケイ素製の「ハンドル」層(12)を順次的に備えるSOIウェハー(10)を用意するステップと、
b)前記SOIウェハー(10)の面上に酸化ケイ素層を成長させるステップと、
c)前記「デバイス」層(11)に対してフォトリソグラフィーを行ってレジストマスクを形成するステップと、
d)形成された前記レジストマスクを通して前記酸化ケイ素層に対してエッチングをするステップと、
e)深掘り反応性イオンエッチングを行ってケイ素ひげぜんまい(1)を形成するステップと、
f)形成されるケイ素ひげぜんまい(1)を保護するようにはたらく酸化ケイ素層を前記「デバイス」層(11)および前記「ハンドル」層(12)におけるそれぞれのケイ素面上に成長させるステップと、
g)前記「ハンドル」層(12)をエッチングして、前記ボンディング層を露出させ、その後に、ひげぜんまい(1)を解放して、ひげぜんまい(1)が少なくとも1つのアタッチメントによってウェハー(10)に対して保持されるようにするステップと、
h)形成されたひげぜんまい(1)の剛性を判断し、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るために前記コイル(3)の過剰な材料を計算するステップと、
i)形成されたひげぜんまいを酸化して、除去する分のケイ素ベースの材料の厚み分を二酸化ケイ素に変態させて、酸化したひげぜんまいを形成するステップと、
j)最終的な剛性を得るために必要な全体的寸法構成を有するケイ素ベースのひげぜんまいを得ることを可能にするように、酸化したひげぜんまいから酸化物を除去するステップと、及び
k)前記ひげぜんまいを再び酸化して、ひげぜんまいの熱的性質を調整し、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るステップと
を行うことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記ステップe)は、化学的エッチングを用いて行う
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップg)は、
g1)前記「ハンドル」層(12)のケイ素を露出するようにフォトリソグラフィー及びエッチングを行う段階と、
g2)水酸化カリウム溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液又はDRIEエッチングを用いて、前記「ハンドル」層(12)をエッチングする段階と
を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップe)において、同じ1つのウェハーにおいて、必要とされる寸法構成よりも大きい寸法構成の複数のひげぜんまいを形成して、同じ初期剛性を有する複数のひげぜんまい、又は複数の初期剛性を有する複数のひげぜんまいを得る
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップh)は、
h1)所定の慣性を有するバランスと、前記ステップe)の間に形成されたひげぜんまいが組み合わさったアセンブリーの振動数を測定し、測定した振動数から、形成されたひげぜんまいの初期剛性を推定する段階と、及び
h2)ひげぜんまいの初期剛性についての前記判断から、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るコイル寸法構成を計算する段階と
を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ)の後に、さらに、
)気候変動及び静電的性質の干渉の影響が少ないひげぜんまいを形成することを可能にするように、最終的な剛性を有する前記ひげぜんまいの少なくとも一部上に、前記ひげぜんまいの外面の一部上の薄い層を形成するステップ
を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記薄い層は、クロム、チタン、タンタル又はこれらの合金を含有する
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップe)の後に、前記ステップc)で形成されたレジストマスクと、前記ステップb)において成長させられたのち前記ステップd)においてエッチングされた前記酸化ケイ素層とを除去することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素ひげぜんまいを製造する方法に関し、特に、所定の慣性を有するバランスと連係して所定の振動数を有する共振器を形成するような補償機能付きのひげぜんまいとして用いられるひげぜんまいに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許文献EP1422436を本出願に参照文献として組み入れる。これには、二酸化ケイ素で被覆されたケイ素コアを含む補償機能付きひげぜんまいを形成する方法が説明されている。このひげぜんまいは、所定の慣性を有するバランスと連係して、前記共振器のアセンブリーを熱的に補償する。
【0003】
このような補償機能付きひげぜんまいを製造することには多くの利点があるが、いくつかの課題もある。特に、ケイ素ウェハー内の複数のひげぜんまいをエッチングする工程によって、1つのウェハーのひげぜんまいの間で相当に大きい幾何学的な形のばらつきが発生し、さらには、別の時間にてエッチングされた2つのウェハーのひげぜんまいの間には、より大きいばらつきが発生する。また、同じエッチングパターンでエッチングされた各ひげぜんまいの剛性にはばらつきが発生し、このことによって、製造上のばらつきがかなり大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、改変を必要としないほど寸法構成が精密であるようなひげぜんまいを製造する方法を提供することによって、上述の課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況で、本発明は、所定の最終的な剛性を有するケイ素ひげぜんまいを製造する方法に関する。この方法は、
a)ケイ素製の「デバイス」層、酸化ケイ素製のボンディング層及びケイ素製の「ハンドル」層を順次的に備えるSOIウェハーを用意するステップと、
b)前記SOIウェハーの面上に酸化ケイ素層を成長させるステップと、
c)前記「デバイス」層に対してフォトリソグラフィーを行ってレジストマスクを形成するステップと、
d)形成された前記レジストマスクを通して前記酸化ケイ素層に対してエッチングをするステップと、
e)深掘り反応性イオンエッチングを行ってケイ素ひげぜんまいを形成するステップと、
f)当該コンポーネントを保護するようにはたらく酸化ケイ素層を前記ケイ素ひげぜんまいの面上に成長させるステップと、
g)前記「ハンドル」層をエッチングして、前記ボンディング層を露出させ、その後に、ひげぜんまいを解放して、ひげぜんまいが少なくとも1つのアタッチメントによってウェハーに対して保持されるようにするステップと、
h)形成されたひげぜんまいの初期剛性を判断し、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るために得るべきコイルの寸法構成を計算するステップと、
i)形成されたひげぜんまいを酸化して、除去する分のケイ素ベースの材料の厚み分を二酸化ケイ素に変態させて、酸化したひげぜんまいを形成するステップと、
j)最終的な剛性を得るために必要な全体的寸法構成を有するケイ素ベースのひげぜんまいを得ることを可能にするように、酸化したひげぜんまいから酸化物を除去するステップと、及び
k)前記ひげぜんまいを再び酸化して、ひげぜんまいの熱的性質を調整し、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るステップと
を行う。
【0006】
このようにして、好ましいことに、本発明にしたがって、ケイ素ベースのコア及び酸化ケイ素ベースの被覆を備えるような補償機能付きひげぜんまいを得ることができる。好ましいことに、本発明にしたがって、当該補償機能付きひげぜんまいは、寸法構成の精度が非常に高く、また、共振器アセンブリーの熱補償が非常に精密である。
【0007】
このようにして、当該方法によって、ひげぜんまいの寸法構成の精度が非常に高いことを確実にすることができ、また、ひげぜんまいがバランスとともに形成するアセンブリーの剛性の変化を補償するような温度に応じた剛性の挙動を確実にすることができることがわかる。
【0008】
本発明の他の好ましい形態においては、以下の特徴を有する。
- 前記ステップe)は、化学的エッチングを用いて行う。
- 前記ステップg)は、
g1)前記「ハンドル」層のケイ素を露出するようにフォトリソグラフィー及び乾式エッチングを行う段階と、
g2)水酸化カリウム溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液又はDRIEエッチングを用いて、前記「ハンドル」層をエッチングする段階と
を行う。
- 前記ステップe)において、同じ1つのウェハーにおいて、必要とされる寸法構成よりも大きい寸法構成の複数のひげぜんまいを形成して、同じ初期剛性を有する複数のひげぜんまい、又は複数の初期剛性を有する複数のひげぜんまいを得る。
- 前記ステップh)は、
h1)所定の慣性を有するバランスと、前記ステップe)の間に形成されたひげぜんまいが組み合わさったアセンブリーの振動数を測定し、測定した振動数から、形成されたひげぜんまいの初期剛性を推定する段階と、及び
h2)ひげぜんまいの初期剛性についての前記判断から、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得るコイル寸法構成を計算する段階と
を行う。
- 前記ステップk)の後に、さらに、
l)気候変動及び静電的性質の干渉の影響が少ないひげぜんまいを形成することを可能にするように、所定の剛性を有する前記ひげぜんまいの少なくとも一部上に、前記ひげぜんまいの外面の一部上の薄い層を形成するステップ
を行う。
【0009】
添付の図面を参照しながら下記の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明確になるであろう。なお、これにはまったく限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る方法によって得られた多くのひげぜんまいを備えるウェハーを示している。
図2図2a及び図2bはそれぞれ、本発明に係る方法によって得られたひげぜんまいの斜視図及び断面図を示している。
図3】本発明に係る方法の様々なステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、図2aに示している補償機能付きひげぜんまい1、そして、これを製造する方法に関する。これによって、ひげぜんまいの寸法構成の精度が非常に高いことを確実にすることができ、また、ひげぜんまいの剛性の精度が高いことを確実にすることができる。
【0012】
本発明にしたがって、補償機能付きひげぜんまい1は、必要に応じて熱補償層で被覆される材料によって形成され、所定の慣性を有するバランスと連係するように意図されている。
【0013】
ひげぜんまいの製造のために、ケイ素、ガラス又はセラミックスをベースとする材料のような材料を用いることには、磁場の影響を受けない又は少ししか影響を受けないという性質を有しつつ、既存のエッチング方法を用いる場合に精密であり、機械的及び化学的性質が非常に良好であるという利点がある。しかし、補償機能付きひげぜんまいを形成することができるようにするためには、被覆したり表面修飾したりしなければならない。
【0014】
好ましくは、補償機能付きひげぜんまいとして用いられるケイ素ベースの材料は、結晶配向に関係なく単結晶ケイ素、結晶配向に関係なくドープされた単結晶ケイ素、アモルファスケイ素、多孔質ケイ素、多結晶ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、結晶配向に関係なく水晶、又は酸化ケイ素であることができる。当然、ガラス、セラミックス、サーメット、金属又は金属合金のような他の材料も考えられる。簡略化のために、以下の説明は、ケイ素ベースの材料に焦点を当てる。
【0015】
上述したようにベース材料を熱的に補償するために、あらゆるタイプの材料に対して表面修飾をしたり、特定の層で被覆したりすることができる。
【0016】
このような状況で、本発明は、図3に示しているケイ素ひげぜんまい1を製造する方法に関する。読みやすさと理解のしやすさのために、図示している当該方法の複数のステップにおいては、図1のウェハー10内に形成される単一のケイ素ひげぜんまい1の線Aに沿った中央の断面のみを示しており、ひげぜんまい1のコイル3の数は、図の解釈を容易にするように減じている。
【0017】
本発明にしたがって、図3に示しているように、SOIウェハー10は、酸化ケイ素層13と、これによって互いに結合された2つのケイ素層11及び12によって構成しており、当該方法は、SOIウェハー10を用意する第1のステップa)を行う。これらの3つの層のそれぞれには、一又は複数の非常に精密な役割がある。
【0018】
上側ケイ素層11は、「デバイス」と呼ばれ、シート状の単結晶ケイ素(その主配向にばらつきがあってもよい)によって形成され、製造するコンポーネントの最終厚みを決める厚みを有する。この最終厚みは、腕時計製造においては、通常、100~200μmである。
【0019】
下側ケイ素層12は、「ハンドル」と呼ばれ、本質的に機械的支持体として用いられ、これによって、十分に剛性のあるアセンブリーに対して当該方法を実行することができる(「デバイス」では厚みが薄くて確実に実行することができない)。また、下側ケイ素層12は、シート状の単結晶ケイ素によって形成され、これは一般的に、「デバイス」層と同様に配向している。
【0020】
酸化物層13によって、2つのケイ素層11及び12を密接に結合することができる。また、酸化物層13は、後の操作のときに止め層としてもはたらく。
【0021】
その後のステップb)においては、ウェハー10を高温で酸化雰囲気に露出させることによって、ウェハー10の面上に酸化ケイ素層を成長させる。この酸化ケイ素層の厚みは、構造化される「デバイス」の厚みに応じて変わる。この厚みは、通常、1~4μmである。
【0022】
当該方法のステップc)によって、例えば、ポジ型レジストにおいて、ケイ素ウェハー10内にて後で作ることが望ましいパターンを定めることが可能になる。このステップは、次の操作を行う。
- スピンコーティングなどによって、1~2μmの厚みを有する非常に薄い層としてレジストを堆積する。
- 乾燥後、フォトリソグラフィー特性を有するこのレジストを、光源を用いてフォトリソグラフィーマスク(クロム層で被覆され、所望のパターンを表す透明シート)を通して露光する。
- 精密なポジ型レジストを用いる場合、その後に、溶媒を用いてレジストの露光領域を除去し、そして、酸化物層を露出させる。この場合、まだレジストで被覆されている領域は、その後のケイ素に対する深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)の操作において攻撃されない領域を定める。
【0023】
ステップd)において、露出された領域、又は反対に、レジストで被覆された領域が利用される。第1のエッチング手順は、前のステップにおいてレジストに形成されたパターンを、前に成長させた酸化ケイ素に転写させることを可能にする。また、製造手順の再現性の観点から、この操作のためにマスクとしてはたらくレジストの側面の品質を再現する指向性のドライプラズマエッチングによって酸化ケイ素を構造化する。
【0024】
レジストの開いた領域において酸化ケイ素がエッチングされると、上層11のケイ素面が露出し、DRIEエッチングの準備が整う。DRIEエッチング中にマスクとしてレジストを用いることが望ましいかどうかに応じて、レジストを保持することができ、また、保持しないことができる。
【0025】
酸化ケイ素によって保護されていない露出したケイ素は、ウェハーの面に垂直な方向にてエッチングされる(Bosch(登録商標)DRIE異方性エッチング)。まずレジストにおいて、次に酸化ケイ素において、形成されたパターンは、「デバイス」層11の厚みに「射影」される。
【0026】
2つのケイ素層11及び12を結合する酸化ケイ素層13にまでエッチングが達すると、エッチングが止まる。具体的には、前記Bosch(登録商標)プロセス中にマスクとしてはたらきエッチング自体に抵抗する酸化ケイ素と同様に、同じ性質の埋め込まれた酸化物層13もエッチングに抵抗する。
【0027】
そして、ケイ素製の「デバイス」層11は、その厚み全体にわたって、製造しようとするコンポーネントを表す所定のパターンによって構造化され、ここで、このコンポーネントは、このDRIEエッチングによって露出し、コイル3とコレット2を含むひげぜんまい1である。
【0028】
当該コンポーネントは、「ハンドル」層12にしっかりと取り付けられたままであり、これらのコンポーネントと「ハンドル」層12は、埋め込まれた酸化ケイ素層13によって結合される。
【0029】
当然、当該方法は、ステップe)において、DRIEエッチングに限定されない。一例として、ステップe)は、同じケイ素ベースの材料における化学的エッチングによっても同様に実現することができる。
【0030】
ステップe)において、同じウェハーにおいて、必要とされる寸法構成よりも大きい寸法構成の複数のひげぜんまいを形成することができ、これによって、同じ初期剛性を有する複数のひげぜんまいを得ることができ、また、複数の初期剛性を有する複数のひげぜんまいを得ることができる。
【0031】
ステップe)の後に、シーケンスe1)において、Bosch(登録商標)の手順によって得られた不動態化レジストの残りを除去し、DRIEエッチングにおいてマスクとしてはたらいた酸化物をフッ化水素酸ベースの水溶液中で除去する。
【0032】
ステップf)において、ケイ素の面上にて(「デバイス」層11と「ハンドル」層12のまわり)再び酸化ケイ素層を成長させ、この酸化ケイ素層は、コンポーネントを「ハンドル」層12から分離することによってコンポーネントを解放するために役立つ操作中に、コンポーネントを保護するようにはたらく。
【0033】
ステップc)の間に実行した第1のフォトリソグラフィー操作と同様の第2のフォトリソグラフィー操作をウェハー10の裏面(したがって、「ハンドル」層12上)に対して実行する。これを行うために、ウェハー10を裏返し、その上にレジストを堆積させ、その後にマスクを介して露出する。
【0034】
そして、露出されたレジストの領域が溶媒を用いて除去され、その後に、前に形成された酸化物層を露出させ、ドライエッチングによって構造化する。
【0035】
次のステップg)において、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウムベースの水溶液などを用いて、又はDRIEエッチングによって、露出した「ハンドル」層12の完全なエッチングを行う。これらの溶液は、酸化ケイ素を保持しつつケイ素を容易にエッチングすることができるものとしてよく知られている。
【0036】
次に、コンポーネントを完全に解放するステップg1)において、フッ化水素酸ベースの溶液を用いた湿式エッチングを用いて、様々な酸化ケイ素層に対してエッチングする。好ましいことに、形成されたひげぜんまい1は、少なくとも1つのアタッチメントを介してフレームに保持される。このフレームとアタッチメントは、DRIEエッチングステップe)において、ひげぜんまいと同時に既に形成されていたものである。
【0037】
当該方法は、ひげぜんまいの初期剛性を判断するように意図されたステップh)を行う。このステップh)は、ウェハー10又はアセンブリー上に依然として取り付けられているひげぜんまいに対して、又はウェハー10に依然として取り付けられたひげぜんまいのサンプルに対して、又はウェハーから取り外されているひげぜんまいに対して、直接実行することができる。
【0038】
好ましくは、本発明にしたがって、ステップh)は、所定の慣性を有するバランスとつながったひげぜんまいを含むアセンブリーの振動数を測定し、その後に、それからひげぜんまいの初期剛性を推定することを意図している第1の段階h1)を行う。
【0039】
このようなバランスとひげぜんまいのアセンブリーの振動の振動数によって、試験されたひげぜんまいの角度的剛性を判断し、これによって、ひげぜんまい1のコイル3の断面の精密な寸法構成を判断することが可能になる(主にその厚みであり、高さは、ベース基材の「デバイス」層の厚みであるため、既に知られている)。
【0040】
欧州特許文献EP2423764を参照文献として本出願に組み入れる。前記のような測定段階は、特に、動的であることができ、この文献の教示内容にしたがって行うことができる。しかし、代わりに、ひげぜんまいの剛性を判断するために、この欧州特許文献EP2423764の教示内容にしたがって行う静的方法を用いることもできる。
【0041】
当然、上述したように、当該方法は、ウェハーごとに1つのひげぜんまいをエッチングすることには限定されず、ステップh)は、同じ1つのウェハー上に形成されるひげぜんまいの代表的なサンプル又はすべてについての平均初期剛性を判断することを行うことができる。
【0042】
第2の段階h2)において、ひげぜんまいの初期剛性の判断から、得られるコイルの寸法構成を計算して、これによって、所望の剛性(すなわち、最終的な剛性)を有するひげぜんまいを得るために必要な全体的な寸法構成を得る。
【0043】
当該方法は、最終的な剛性を有するひげぜんまいを得ることを念頭に、必要な寸法構成までひげぜんまいから過剰な材料を除去するように意図されたシーケンスに続く。
【0044】
ステップi)は、ひげぜんまいを酸化して、除去される分のケイ素ベースの材料の厚み分を二酸化ケイ素に変態させて、酸化したひげぜんまいを形成することを行う。このような段階は、例えば、熱的酸化によって行うことができる。このような熱的酸化は、例えば、水蒸気又は二酸素ガスを用いて酸化雰囲気下で800~1200℃の間で実行することができ、これによって、ひげぜんまい上に酸化ケイ素を形成することができる。このステップにおいて、酸化ケイ素が均等に成長するということを利用し、このことによってもたらされる酸化の速度及び厚みは、当業者であれば完全に制御することができ、このことによって、酸化物層の均質性を確実にすることができる。
【0045】
ステップi)は、ひげぜんまいから酸化物を除去するように意図されたステップj)に続き、このことによって、最終的な剛性を得るために必要な全体的な寸法構成を有するケイ素ベースのひげぜんまいを得ることが可能になる。このようなステップは、化学的エッチングによって得られる。このような化学的エッチングは、例えば、ひげぜんまいから酸化ケイ素を除去することを可能にするフッ化水素酸ベースの溶液を用いて、行うことができる。
【0046】
ステップi)及びj)によって、コイル3の寸法構成を計算ステップh2)で決められる中間値にすることができる。
【0047】
最後に、ステップk)は、ひげぜんまいを再度酸化して二酸化ケイ素層で被覆し、このことによって、熱的に補償されるひげぜんまい1を形成することを行う。このようなステップは、例えば、熱的酸化によって得られることができる。このような熱的酸化は、例えば、水蒸気又は二酸素ガスを用いて酸化雰囲気下で800~1200℃にて行うことができ、これによって、ひげぜんまい上に酸化ケイ素を形成することが可能になる。
【0048】
このようにして、図2a及び図2bに示している補償機能付きひげぜんまい1が得られ、これは、本発明によって好ましいことに、ケイ素ベースのコア30と、酸化ケイ素ベースの被覆31を備える。
【0049】
この第2の酸化によって、将来のひげぜんまい1の機械的性質(剛性)と熱的性質(温度補償)の両方を調整することが可能になる。この段階において、コイル3の寸法構成は、所望の角度的剛性の要件に対応するものであり、成長した酸化ケイ素層によって、温度に応じたバランス/ひげぜんまいの寸法構成の変化の関数として剛性を調整することが可能になる。
【0050】
本発明にしたがって、好ましいことに、さらに複雑にせずに、特に以下を備えるひげぜんまい1を製造することが可能になる。
- 単一のエッチングによって得られる断面よりも精密な断面を有する一又は複数のコイル3
- コイルに沿った厚み及び/又はピッチのばらつき
- 一体化されたコレット2
- グロスマン(Grossmann)曲線タイプの内側コイル
- 一体化されたスタッド-ピニングのアタッチメント
- 一体化された外側セッティング要素
- 残りのコイルと比べて厚みが大きい外側コイルの一部
【0051】
また、当該方法は、金属化ステップl)を行うことができる。特に、ひげぜんまいの面上にかなりの量の酸化ケイ素層を成長させると、利点のみが発生する訳ではない。この酸化ケイ素層は、電荷をトラップし固定し、その結果、ひげぜんまいの周囲との、又はコイルどうしとの、静電結合現象が発生する。
【0052】
また、この層は親水性であり、水分を吸収すると、ひげぜんまいの剛性、したがって、携行型時計のランニングに変化が発生してしまうことが知られている。
【0053】
したがって、クロム、チタン、タンタル又はこれらの合金のような金属の薄い層が、ひげぜんまい1の面を防水にし導電性にして、上記の影響をなくす。欧州特許文献EP2920653を参照文献として本出願に組み入れる。この文献の教示内容にしたがって前記のような層を得ることができる。
【0054】
この薄い層の厚みは、上にて調整された性質を害さないように、できるだけ薄いように選択される。適切な熱処理によって、薄い層の接着性が良好であることが確実になる。
【0055】
最後に、当該方法は、さらに、ひげぜんまい1をウェハー10から分離し、これらのひげぜんまい1と、所定の慣性を有するバランスとを組み付け、これによって、必要に応じて熱補償されるバランス-ひげぜんまいタイプの共振器を形成するように意図されるステップ)を行うことができる。すなわち、共振器の振動数が必要に応じて温度変動の影響を受けて変動する。
【0056】
当然、本発明は、図示している例に限定されるものではなく、当業者にとって明白な様々な代替形態及び改変が可能である。特に、上で説明したように、バランスは、その構成が所定の慣性を有していても、計時器の販売の前又は後にセッティングパラメーターを提供することを可能にする可動な慣性ブロックを備えることができる。
図1
図2a-2b】
図3