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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】充填装置
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/28 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
B67C3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021173465
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2021-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001682
【氏名又は名称】岩井ファルマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】中川 明郎
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231590(JP,A)
【文献】特開2011-051624(JP,A)
【文献】特開平09-002403(JP,A)
【文献】特開2016-150777(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007453(WO,A1)
【文献】特表2002-542118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留される貯留タンクと、前記貯留タンクと導入流路を介して接続され容器に前記液体を充填するための充填針を含む複数のノズル部を有する充填ユニットと、前記充填ユニットの動作を制御する制御部と、を備える充填装置であって、
前記ノズル部は、
前記充填針に繋がる供給流路と、
前記供給流路を開閉するための開閉バルブと、
前記供給流路の前記開閉バルブよりも上流側に設けられて、前記供給流路を通過する前記液体の流量に応じてパルス信号を出力する質量流量計と、を有し、
前記制御部は、前記容器に所定量の前記液体が充填されるように、前記質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて前記開閉バルブの開閉動作を制御するバルブ制御手段を有し、
前記バルブ制御手段は、前記開閉バルブを開動作させた後、前記質量流量計から出力されるパルス信号の数が予め設定された目標パルス数となるように前記開閉バルブを閉動作させ、前記容器への液体の充填が終了した時点でのパルス信号の実測数と前記目標パルス数との差分に基づいて前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更し、
前記容器への前記液体の充填が複数回終了したタイミングで、各回の前記差分の平均値を算出し、前記平均値の1/2の値分だけ前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更する
ことを特徴とする充填装置。
【請求項2】
請求項に記載の充填装置であって、
前記充填ユニットは、前記導入流路が接続されて当該導入流路よりも流路面積が広い分
配流路を有し、各ノズル部の前記供給流路は前記分配流路に接続されており、
前記バルブ制御手段は、前記ノズル部毎に、前記質量流量計から出力されるパルス信号
に基づいて前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更する
ことを特徴とする充填装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充填装置であって、
前記容器に充填された前記液体を秤量する秤量手段を備え、
前記バルブ制御手段は、前記秤量手段による秤量結果に基づいて前記目標パルス数を変
更する
ことを特徴とする充填装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の充填装置であって、
前記充填ユニットが防塵室に設置されていると共に、前記貯留タンクは前記防塵室の外
部に設置され、
且つ前記導入流路には、前記防塵室内の前記充填ユニット近傍に前記液体をろ過するフ
ィルター装置が設けられている
ことを特徴とする充填装置。
【請求項5】
請求項4に記載の充填装置であって、
前記充填ユニットは、前記導入流路が接続されて当該導入流路よりも流路面積が広い分
配流路を有し、各ノズル部の前記供給流路は前記分配流路に接続されており、
前記分配流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記貯留タンク内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備え、
前記圧力調整手段は、前記圧力検出手段によって検出される前記分配流路内の圧力が所
定圧力となるように前記貯留タンク内の圧力を調整する
ことを特徴とする充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を各種容器に充填する充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を容器に充填する充填装置としては、液体が貯留される貯留タンクを備え、この貯留タンクから供給される液体を充填針(充填ノズル)によって各容器に充填するものがある。このような充填装置は、容器に充填される液体の量(充填量)をできるだけ一定とすることが望まれるが、特に、薬液等の液体をバイアル等の小容量の容器に充填する場合には、比較的高精度に充填量を管理することが望まれる。
【0003】
このような要望に対し、充填針の上流側に、質量流量計と、この質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて制御される開閉バルブと、を備え、この開閉バルブの開放時間を適宜変更することで、容器に充填される液体の量(充填量)を調整するようにした充填装置が知られている。例えば、質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて開閉バルブの開放時間を制御することで、容器に所定量の液体が充填されるようにしたものがある(例えば、特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-231590号公報
【文献】特開2006-335382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献に記載のように、質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて開閉バルブを制御することで、各容器に対する充填量の均一化を図ることはできる。しかしながら、各容器に対する充填量を高精度に管理することは難しく、さらなる向上が望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各容器の充填量をより均一化することができる充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体が貯留される貯留タンクと、前記貯留タンクと導入流路を介して接続され容器に前記液体を充填するための充填針を含む複数のノズル部を有する充填ユニットと、前記充填ユニットの動作を制御する制御部と、を備える充填装置であって、前記ノズル部は、前記充填針に繋がる供給流路と、前記供給流路を開閉するための開閉バルブと、前記供給流路の前記開閉バルブよりも上流側に設けられて、前記供給流路を通過する前記液体の流量に応じてパルス信号を出力する質量流量計と、を有し、前記制御部は、前記容器に所定量の前記液体が充填されるように、前記質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて前記開閉バルブの開閉動作を制御するバルブ制御手段を有し、前記バルブ制御手段は、前記開閉バルブを開動作させた後、前記質量流量計から出力されるパルス信号の数が予め設定された目標パルス数となるように前記開閉バルブを閉動作させ、前記容器への液体の充填が終了した時点でのパルス信号の実測数と前記目標パルス数との差分に基づいて前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更し、前記容器への前記液体の充填が複数回終了したタイミングで、各回の前記差分の平均値を算出し、前記平均値の1/2の値分だけ前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更することを特徴とする充填装置にある。
【0010】
本発明の第の態様は、第の態様の充填装置であって、前記充填ユニットは、前記導入流路が接続されて当該導入流路よりも流路面積が広い分配流路を有し、各ノズル部の前記供給流路は前記分配流路に接続されており、前記バルブ制御手段は、前記ノズル部毎に、前記質量流量計から出力されるパルス信号に基づいて前記開閉バルブを閉動作させるタイミングを変更することを特徴とする充填装置にある。
【0011】
本発明の第の態様は、第1又は2の態様の充填装置であって、前記容器に充填された前記液体を秤量する秤量手段を備え、前記バルブ制御手段は、前記秤量手段による秤量結果に基づいて前記目標パルス数を変更することを特徴とする充填装置にある。
【0012】
本発明の第の態様は、第1~3の何れか一つの態様の充填装置であって、前記充填ユニットが防塵室に設置されていると共に、前記貯留タンクは前記防塵室の外部に設置され、且つ前記導入流路には、前記防塵室内の前記充填ユニット近傍に前記液体をろ過するフィルター装置が設けられていることを特徴とする充填装置にある。
【0013】
本発明の第の態様は、第の態様の充填装置であって、前記充填ユニットは、前記導入流路が接続されて当該導入流路よりも流路面積が広い分配流路を有し、各ノズル部の前記供給流路は前記分配流路に接続されており、前記分配流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記貯留タンク内の圧力を調整する圧力調整手段と、を備え、前記圧力調整手段は、前記圧力検出手段によって検出される前記分配流路内の圧力が所定圧力となるように前記貯留タンク内の圧力を調整することを特徴とする充填装置にある。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明に係る充填装置では、容器への液体の充填が終了した時点でのパルス信号の実測数と目標パルス数との差分に基づいて開閉バルブを閉動作させるタイミングを適宜変更(補正)するようにした。これにより、各容器の充填量をより均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る充填装置を含む液体処理システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る充填装置の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る充填装置の動作を説明する図である。
図4】容器への液体充填時におけるノズル部の薬液の流量変化を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る充填装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る充填装置を含む液体処理システムの概略構成を示す図である。液体処理システムIは、液体の一例として液状の医薬品(以下、薬液)を製造するプラントの一部であり、充填装置1を含んで構成されている。
【0018】
具体的には、液体処理システムIは、調合タンク2と、殺菌器3と、貯留タンク4、フィルター装置5及び充填ユニット(充填機)6を含む充填装置1と、これらの機器類を接続する配管からなる製造ラインLと、を備えて構成されている。
【0019】
調合タンク2は、薬液の原料や水などの溶媒を調合して薬液を得るためのタンクである。殺菌器3は、熱処理やフィルターによるろ過処理などによって薬液を殺菌するための装置である。
【0020】
貯留タンク4、フィルター装置5及び充填ユニット6を含む充填装置1は、調合した薬液を容器に充填する装置であるが、詳細な構成は後述する。
【0021】
製造ラインLは、薬液や洗浄用の流体が流通する配管であり、調合タンク2と、殺菌器3と、充填装置1の貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6とを順次接続する。つまり調合タンク2内の薬液は、製造ラインLによって、殺菌器3、貯留タンク4及びフィルター装置5を介して充填ユニット6に流通するようになっている。
【0022】
また液体処理システムIは、第1洗浄ユニット71及び第2洗浄ユニット72を備えている。なおこれら第1洗浄ユニット71及び第2洗浄ユニット72とをまとめて洗浄ユニット7と称する。
【0023】
この洗浄ユニット7(71,72)は、液体処理システムIを定置洗浄(CIP)する洗浄装置及び定置滅菌(SIP)をするための滅菌装置である。図示は省略するが、洗浄ユニット7は、定置洗浄に用いる洗浄用液体の供給源、定置滅菌に用いる滅菌用流体の供給源、これらの洗浄用液体及び滅菌用流体を圧送するための装置(ポンプやガスによる圧送を行う装置)、定置洗浄及び定置滅菌を終えたあとの洗浄用液体及び滅菌用流体を廃棄又は再利用するための処理装置、洗浄用液体及び滅菌用流体の流れを制御するためのバルブ、送液を開始・停止させるために上記の各種装置を制御する制御装置等から構成されている。
【0024】
本実施形態では、第1洗浄ユニット71は、調合タンク2、殺菌器3及び充填装置1を構成する貯留タンク4を、定置洗浄及び定置滅菌するために用いられる。具体的には、第1洗浄ユニット71は、洗浄用液体を、第1洗浄ラインAを介して調合タンク2、殺菌器3及び貯留タンク4に送液する。そして、第1洗浄ユニット71は、貯留タンク4から排出される洗浄用液体を第1洗浄ラインBを介して回収する。第1洗浄ユニット71は、このような定置洗浄後に、洗浄用液体と同様にして滅菌用流体を供給及び回収することで定置滅菌を行う。
【0025】
第2洗浄ユニット72は、フィルター装置5及び充填ユニット6を定置洗浄及び定置滅菌するために用いられる。具体的には、第2洗浄ユニット72は、洗浄用液体を、第2洗浄ラインCを介してフィルター装置5、充填ユニット6に送液する。そして、第2洗浄ユニット72は、充填ユニット6から排出される洗浄用液体を第2洗浄ラインDを介して回収する。第2洗浄ユニット72は、そのような定置洗浄後に、洗浄用液体と同様にして滅菌用流体を供給及び回収することで定置滅菌を行う。
【0026】
なお、洗浄用液体は、水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加したもの、水に酸性薬剤を添加したもの、界面活性剤を含む水、またはそれらの薬剤を含まない水などである。もちろん、これらは併用してもよい。滅菌用流体は、精製水などを加熱して得られた温水又は蒸気である。
【0027】
上述した液体処理システムIの構成は一例であり、液体処理システムIはこの構成に限定されない。例えば、第1洗浄ユニット71、第2洗浄ユニット72は、定置洗浄、定置滅菌を行う対象ごとに設ける必要はない。また液体処理システムIは、上記以外の機器類を含んで構成されていてもよい。また、薬液を製造する製造ラインLの構成についても上述した構成に限定されない。
【0028】
次に液体処理システムIが備える本実施形態に係る充填装置1の構成について説明する。図2は、本発明の実施形態1に係る充填装置の概略構成図である。なお図2では、洗浄ユニット及び洗浄ラインの図示は省略する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に係る充填装置1は、例えば、バイヤル等の容器100に薬液を充填するための装置であり、上述のように貯留タンク4と、フィルター装置5と、充填ユニット6と、を備えている。貯留タンク4と、充填ユニット6とは、製造ラインLを構成する導入管(導入流路)8によって接続されている。フィルター装置5は、薬液の除菌等を行うための装置であり、導入管8の充填ユニット6近傍に設けられている。
【0030】
そして本実施形態に係る充填装置1において、充填ユニット6及びフィルター装置5はクリーンルーム(防塵室)CR内に設置され、貯留タンク4はクリーンルームCRの外部に設置されている。充填装置1をこのような構成とすることで、クリーンルームCR内に設置する機器類を少なく抑えることができる。それに伴い、クリーンルームCRを小型化することができるため、維持管理費等のコストの削減を図ることができる。さらには充填装置1の保守性を高めることができる。
【0031】
より詳しくは、クリーンルームCRには、無菌エアが一方向(例えば、水平方向)に流れるラミナーフローが形成されたラミナーフローブース(無菌エリア)が設けられ、充填ユニット6等の機器類は、このラミナーフローブースに設置されている。クリーンルームCR内に設置される機器類が少なく抑えられていることで、ラミナーフローブースの小型化を図ることができる。これにより、コストの削減を図ることができる。
【0032】
またクリーンルームCR内に設置される機器類が少なく抑えられていることで、無菌管理を行うにあたり、埃や微粒子を排除してクリーンルームCR内、特にラミナーフローブース内の清掃度を高め易くなる。さらに機器類が少ないことで、配管の継ぎ目も少なくなるため、液漏れリスクが低下する。これにより、クリーンルームCR内の汚染リスク、つまり容器100に充填される薬液の汚染リスク、が低下する。
【0033】
また機器類が少ないことで、クリーンルームCR内でのメンテナンス作業、特にラミナーフローブースにおけるメンテナンス作業が少なくなる。クリーンルームCR内で作業を行う場合、作業者はその都度、更衣が必要となるが、クリーンルームCR内でのメンテナンス作業が少なくなることで、更衣回数も少なくて済む。したがって、メンテナンス作業者の負担の軽減を図ることもできる。
【0034】
また充填装置1は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を含んで構成される制御装置(制御部)10を備えている。詳しくは後述するが、この制御装置10によって、充填装置1が備える各機器が制御されている。
【0035】
貯留タンク4は、上述のように調合タンク2によって調合され、殺菌器3によって殺菌された薬液が貯留される比較的大型のタンクであり、例えば、10~6000リットル程度のものが用いられる。勿論、貯留タンク4の容量は、特に限定されるものではなく、例えば、6000リットルよりも大きい容量であってもよい。なお各容器100に充填する薬液の量は、適宜調整することができるが、例えば、10~500ミリリットル程度である。
【0036】
また貯留タンク4には、内部の圧力を調整するための圧力調整手段が設けられている。本実施形態では、圧力調整手段としてのガス供給装置9が貯留タンク4に接続されている。このガス供給装置9によって所定のガス(例えば、圧縮空気等)が、貯留タンク4内に適宜供給されることで、貯留タンク4の内圧が略一定の値となるように調整される。
【0037】
充填ユニット6は、貯留タンク4からフィルター装置5を介して供給された薬液を容器100に充填するものであり、容器100に薬液を充填するための充填針61を含む複数のノズル部62を備えている。すなわち充填ユニット6は、複数個(n個)の充填針61を備えており、同時に複数個(n個)の容器100に薬液を充填できるように構成されている。また本実施形態では、複数個の充填針61が一列に配置されている。勿論、複数本の充填針61の配置は特に限定されるものではない。
【0038】
なお充填装置1は、図示しない搬送装置(搬送手段)を備えており、液体が充填される容器100は、この搬送装置によって連続的に搬送され、充填ユニット6の各充填針61に対応する位置に搬入される。また薬液が充填された各容器100は、搬送装置によって充填針61に対応する位置から充填ユニット6の外部に搬出される。搬送装置の構成は特に限定されず、既存の構成を採用すればよいため、詳細な説明は省略する。
【0039】
各ノズル部62は、充填針61と、充填針61に繋がる供給管(供給流路)63と、供給管63を開閉するための開閉バルブ64と、供給管63の開閉バルブ64よりも上流側に設けられて供給管63を通過する薬液の流量に応じてパルス信号を出力する質量流量計65と、を有する。
【0040】
また各ノズル部62を構成する供給管63は、所定間隔で分配管(分配通路)66に接続されている。つまり各充填針61は、供給管63を介して分配管66に接続されている。この分配管66は、導入管8よりも広い流路面積(断面積)で形成され、導入管8を介して貯留タンク4に接続され、貯留タンク4から供給された薬液を各ノズル部62に分配する役割を果たす。つまり分配管66には、各ノズル部62に供給される量の薬液が一時的に貯留される。
【0041】
ここで、分配管66内の圧力は、各充填針61から容器100に薬液を充填する際に多少の変動が生じるものの、貯留タンク4の薬液が導入管8を介して分配管66に適宜供給されることで、常に略一定の値となる。すなわち分配管66内の圧力が常に略一定となるように、貯留タンク4の内圧が、ガス供給装置9によって適宜調整されている。
【0042】
本実施形態では、分配管66に、その内圧を検出するための圧力センサ(圧力検出手段)67が設けられている。上述したガス供給装置9は、この圧力センサ67の検出結果に基づいて作動する。すなわち圧力センサ67の検出結果は制御装置10に送られ、制御装置10がこの検出結果に基づいてガス供給装置9を適宜作動させる。これにより、分配管66内の圧力が略一定の値となるように、貯留タンク4内の圧力が調整される。
【0043】
なお分配管66の大きさ(容積)は、各ノズル部62(充填針61及び供給管63)に供給される薬液を一時的に貯留できる大きさ以上であればよいが、分配管66に接続される全てのノズル部62の容積の合計よりも十分に大きいことが望ましい。これにより分配管66内の圧力を略一定の値に維持し易くなる。
【0044】
また各ノズル部62における開閉バルブ64と質量流量計65との配置は、特に限定されないが、本実施形態では、開閉バルブ64よりも上流側に質量流量計65が配置されている。
【0045】
そして本実施形態に係る充填装置1では、このような構成の充填ユニット6が制御装置10によって適宜制御され、各容器100に所定量の薬液が充填される。具体的には、制御装置10は、容器100に所定量の薬液が充填されるように、質量流量計65から出力されるパルス信号に基づいて各開閉バルブ64の開閉動作を制御するバルブ制御手段11を備えている。
【0046】
ここで、各ノズル部62の供給管63は、例えば、ゴム等の可撓性を有する材料からなるチューブで形成されている。開閉バルブ64は、例えば、供給管63の径方向に移動可能な押圧部材を備え、押圧部材で供給管63が押圧されていない状態では供給管63が開放されており、開閉バルブ64を閉動作させて供給管63を押圧部材で押圧することで供給管63が閉鎖されるように構成されている。勿論、開閉バルブ64の構成は、上記のものに限定されない。また質量流量計65の構成は特に限定されず、既存のものを採用すればよいため、詳細な説明は省略する。
【0047】
このような構成の複数のノズル部62を含む充填ユニット6を備える充填装置1では、バルブ制御手段11が、次のように開閉バルブ64を開閉動作させることで、各容器100に薬液を充填する。図3は、容器に対する薬液の充填手順を説明する図であり、開閉バルブ64が開放された状態を白塗りで表し、開閉バルブ64が閉鎖された状態を黒塗りで表している。
【0048】
まず図3(a)に示すように、開閉バルブ64が閉鎖された状態で、搬送装置によって容器100を充填針61に対応する位置まで搬入し、容器100を上昇或いは充填針61を下降させ、充填針61を容器100内に挿入する。この状態で、図3(b)に示すように、開閉バルブ64を開動作させることで、分配管66からノズル部62の供給管63に薬液が供給されて、各充填針61から容器100内に薬液が充填される。
【0049】
所定期間だけ開閉バルブ64の開放状態を維持し、所定量の薬液がノズル部62に供給されると、図3(c)に示すように、開閉バルブ64を閉動作させる。これにより供給管63が閉鎖され、所定量の薬液が容器100に充填された時点で充填針61への薬液の供給が停止される。つまり所定量の薬液が容器100に充填された時点で充填針61への薬液の供給が停止されるタイミングで開閉バルブ64を閉動作させる。その後は、容器100を下降又は充填針61を上昇させ、充填針61を容器100から抜き取り、搬送装置によって容器100を充填ユニット6から搬出する。
【0050】
図4は、容器100に薬液を充填する際に、ノズル部62の供給管63に供給される薬液の流量の変化を示す図である。図4に示すように、タイミングT1で開閉バルブ64を開動作させると、タイミングT2で開閉バルブ64の開動作が完了するまで、つまり供給管63が開放されるまで、薬液の流量は徐々に増加する(T1-T2間)。開閉バルブ64が開放された状態では、供給管63に供給される流量は最大流量F1で維持される(T2-T3間)。
【0051】
その後、所定量の薬液がノズル部62に供給されたと判断して、タイミングT3で開閉バルブ64を閉動作させると、タイミングT4で開閉バルブ64が完全に閉鎖されるまで、ノズル部62に供給される薬液の流量が徐々に減少する(T3-T4間)。つまり、この間(T3-T4間)にも、充填針61から容器100には薬液が充填され、タイミングT4で開閉バルブ64が完全に閉鎖されると、容器100への薬液の充填が終了する。
【0052】
ここで、バルブ制御手段11によって開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3、すなわち開閉バルブ64が開放されている期間を、各質量流量計65から出力されるパルス信号の数に基づいて決定している。
【0053】
具体的には、タイミングT1で開閉バルブ64を開動作させた後、タイミングT4で質量流量計65から出力されるパルス信号の数が予め設定された目標パルス数P1となるように、バルブ制御手段11によって開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を決定している。
【0054】
より詳しくは、予め、質量流量計65から出力される1つのパルス信号に対応する薬液の流量を、実験等により求めておく。また開閉バルブ64を閉動作させてから開閉バルブ64が完全に閉鎖されるまでの間(T3-T4間)に、ノズル部62に供給される薬液の流量を実験等により予め求めると共に、この結果から、T3-T4間に質量流量計65から出力されるパルス信号の数(予測パルス数)P2を算出する。
【0055】
そしてタイミングT1で開閉バルブ64を開動作させた後、質量流量計65から出力されるパルス信号の数が目標パルス数P1から予測パルス数P2を減算した所定パルス数P3(=P1-P2)となるタイミングを、開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3と決定する。
【0056】
これにより、バルブ制御手段11は、開閉バルブ64をタイミングT1で開動作させた後、質量流量計65から出力されるパルス信号の数が所定パルス数P3となるタイミングT3にて開閉バルブ64を閉動作させることになる。その結果、タイミングT4で質量流量計65から出力されるパルス信号の数が目標パルス数P1となるようにしている。
【0057】
ところで、このようにタイミングT3で開閉バルブ64を閉動作させても、タイミングT4において実際に測定されるパルス信号の数(実測数)P4が目標パルス数P1とは一致しない場合がある。すなわち各容器100に充填される薬液の量にばらつきが生じてしまう場合がある。その要因は様々であるが、例えば、パッキン等の消耗品の劣化に伴うバルブの応答性低下、クリーンルームCR内の室圧、分配管66内の液圧、薬液の温度、溶存酸素等が挙げられる。
【0058】
そこで、バルブ制御手段11は、ノズル部62毎に、容器100への薬液の充填が終了した時点でのパルス信号の実測数P4と目標パルス数P1との差分D1に基づいて開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を適宜変更(補正)している。本実施形態では、バルブ制御手段11は、容器100への薬液の充填が複数回(例えば、3回)終了する毎に上記差分D1を算出し、この差分D1に基づいてタイミングT3を変更している。具体的には、複数回の充填における差分D1の平均値Av1を求め、所定パルス数P3からこの平均値Av1以下の値を減算することでタイミングT3を変更する。
【0059】
減算する値は、適宜決定されればよく、例えば、平均値Av1としてもよいし、平均値Av1の1/2の値としてもよい。すなわち、開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を平均値Av1の値分だけ変更してもよいし、開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を平均値Av1の1/2の値分だけ変更してもよい。
【0060】
このように開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を適宜変更することで、各容器100に対して均一な量の薬液を充填することができる。特に、開閉バルブ64を閉動作させるタイミングT3を、ノズル部62毎に適宜変更することで、各容器100に対する充填量をより均一化することができる。
【0061】
また本実施形態では、薬液の充填が複数回終了した際に、タイミングT3を変更するようにしたが、勿論、薬液の充填が1回終了する毎に、タイミングT3を変更するようにしてもよい。この場合、所定パルス数P3から差分D1以下の値を減算することでタイミングT3を変更すればよい。
【0062】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る充填装置の概略構成を示す図である。なお図中同一部材には同一符号を付し、実施形態1と重複する説明は省略する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態に係る充填装置1は、秤量部(秤量手段)20を備えており、この秤量部20以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0064】
秤量部20は、例えば、電子天秤等の秤量装置を備えて構成され、各ノズル部62で容器100に充填された薬液を秤量する。秤量部20には、薬液が充填された容器100が、複数回(例えば、3回)の充填毎にサンプリングされて搬送装置によって搬入され、秤量部20にて薬液の秤量が行われる。秤量部20による薬液の秤量手順は、特に限定されないが、例えば、薬液が充填された容器100の質量を測定し、その測定結果から予め記憶されている容器100の質量を減算することで薬液の質量を求める。
【0065】
そしてバルブ制御手段11は、必要に応じて、この秤量部20による秤量結果に基づいて予め設定されている目標パルス数P1を変更する。例えば、秤量部20で薬液の秤量を所定回数行った後、これらの秤量結果の平均値を求める。その平均値が目標パルス数P1から算出される薬液の充填量と一致しない場合には、秤量結果の平均値から、所望の充填量に対応するパルス数を算出し、算出したパルス数を新たな目標パルス数P1として設定する(目標パルス数P1を変更する)。
【0066】
このように目標パルス数P1を適宜変更することで、各容器100への充填量をより均一化することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、充填装置1が秤量部20を備えた構成を例示したが、秤量部20は、充填装置1とは独立する装置であってもよい。またバルブ制御手段11が、秤量部20の秤量結果に基づいて目標パルス数P1を変更するようにしたが、勿論、秤量部20の秤量結果に基づいて目標パルス数P1を任意のタイミングで手動で変更することもできる。
【0068】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0069】
例えば、上述の実施形態では、薬液を容器に充填する充填装置を一例として本発明を説明したが、本発明は、薬液以外の液体、例えば、化粧品、飲料、インク等を充填するための装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
I…液体処理システム、 1…充填装置、 2…調合タンク、 3…殺菌器、 4…貯留タンク、 5…フィルター装置、 6…充填ユニット、 61…充填針、 62…ノズル部、 63…供給管、 64…開閉バルブ、 65…質量流量計、 66…分配管、 67…圧力センサ、 7…洗浄ユニット、 71…第1洗浄ユニット、 72…第2洗浄ユニット、 8…導入管、 9…ガス供給装置、 10…制御装置、 11…バルブ制御手段、 20…秤量部、 100…容器
【要約】
【課題】各容器の充填量をより均一化することができる充填装置を提供する。
【解決手段】ノズル部62は、充填針61に繋がる供給流路63と、開閉バルブ64と、質量流量計65と、を有し、制御部10は、質量流量計65から出力されるパルス信号に基づいて開閉バルブの開閉動作を制御するバルブ制御手段11を有し、バルブ制御手段11は、開閉バルブ64を開動作させた後、質量流量計65から出力されるパルス信号の数が目標パルス数となるように開閉バルブ64を閉動作させ、容器100への液体の充填が終了した時点でのパルス信号の実測数と目標パルス数との差分に基づいて開閉バルブ64を閉動作させるタイミングを変更する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5