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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】眼科手術用注射器システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021505645
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019044620
(87)【国際公開番号】W WO2020028636
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】16/053,312
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506085066
【氏名又は名称】カール・ツアイス・メディテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】グリック,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】スニオ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】マインケ,エマ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,マルコ
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046241(JP,A)
【文献】特開2016-019607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0270907(US,A1)
【文献】特表2015-527168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0172727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00 - 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術用注射器システム(100)であって、
- 注射器(1)であって、ハンドピース(2)、プランジャ(3)、及び分注デバイス(4)を含む注射器(1)と、
- 眼内レンズ(5)であって、光学体(6)、前記光学体(6)から突出しているC字型第1ハプティックアーム(71)、及び前記光学体(6)から突出しているC字型第2ハプティックアーム(72)を含む眼内レンズ(5)と、
- 前記眼内レンズ(5)を受けるように構成されたカートリッジ(8)であって、前記注射器(1)が前記カートリッジ(8)を受けるように構成されたカートリッジ(8)と、
前記プランジャ(3)の前進移動方向における厚みが前記前進移動方向の直交方向に向かって漸次減少する部分と、該部分に、該部分よりも前記前進移動方向に存する前記プランジャ(3)と接触可能な接触面(12)と、を有する駆動要素(11)と、
- 前記ハンドピース(2)又は前記カートリッジ(8)に対して前記プランジャ(3)の位置を係止するように構成された係止要素と
を含み、
前記分注デバイス(4)が、基端部に入口開口(41)を、及び末端部(31)に出口開口(42)を有し、
前記プランジャ(3)が、前記プランジャ(3)の前進移動により、前記眼内レンズ(5)を前記カートリッジ(8)を通じて、及び次いで前記分注デバイス(4)の前記入口開口(41)から前記出口開口(42)へ運ぶように構成され、
前記係止要素が、前記プランジャ(3)を第1位置において係止するように構成され、前記第1位置において、前記眼内レンズ(5)が前記カートリッジ(8)において、前記第1ハプティックアーム(71)から前記第2ハプティックアーム(72)への外側距離が8mmより大きく11mm未満である、圧縮され予備張力をかけられた状態において保持され、
前記駆動要素(11)が、前記プランジャ(3)の前記前進移動を第2位置まで少なくとも2mm~最大で4mmだけ達成するために、前記駆動要素(11)の前記直交方向への直線移動により前記駆動要素(11)の前記接触面(12)を前記プランジャ(3)と係合させるように構成され、その結果として前記第1ハプティックアーム(71)の小区域(51)及び前記第2ハプティックアーム(72)の小区域(51)が前記光学体(6)より上に配置され、
前記係止要素が前記プランジャ(3)を前記第2位置において係止するように構成される、眼科手術用注射器システム(100)。
【請求項2】
前記直線移動が牽引移動であり、
前記駆動要素(11)が、前記プランジャ(3)の前記前進移動を、前記プランジャ(3)の前記前進移動の方向に垂直な前記牽引移動に応答して実行するように構成される、請求項1に記載の眼科手術用注射器システム(100)。
【請求項3】
前記カートリッジ(8)が、
支持レールであって、前記プランジャ(3)の前記第1位置から前記第2位置への前記前進移動中に前記第1ハプティックアーム(71)及び前記第2ハプティックアーム(72)を支持するように構成された支持レール
をさらに含む、請求項1に記載の眼科手術用注射器システム(100)。
【請求項4】
前記眼内レンズ(5)が疎水性アクリルポリマーでできている、請求項1に記載の眼科手術用注射器システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年8月2日に出願された米国特許出願第16/053,312号明細書に対する優先権を主張するものであり、当該出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、眼科手術用注射器システムであって、注射器、眼内レンズ、カートリッジ、駆動要素、及び係止要素を有する眼科手術用注射器システムに関する。
【背景技術】
【0003】
医学の分野で白内障と呼ばれるヒトの目のレンズの白濁において、水晶体嚢から白濁したレンズを取り外すことが医学的に必要である場合がある。この目的のために一般に使用される方法はレンズの超音波水晶体乳化吸引術であり、超音波水晶体乳化吸引術においては患者の白濁したレンズは、超音波により乳化されて小さな粒子になり、次いで吸引される。外科医は、続いて人工眼内レンズをそのときレンズの無い水晶体嚢に挿入する。
【0004】
この目的のために、外科医は注射器を有する注射器システムを使用し得る。注射器はハンドピース、及びプランジャであって、ハンドピースにおいて案内されるとともにその中で長手方向に可動である、プランジャを有する。加えて、注射器は光学体を備えた眼内レンズを有する。眼内レンズは、2つのC字型ハプティックアームであって、光学体から突出するとともに互いに反対側にあるように配置される2つのC字型ハプティックアーム、すなわち第1ハプティックアーム及び第2ハプティックアームを有し得る。ハプティックアームは、患者がより良好な視力を取り戻し得るように、水晶体嚢の内側壁と接触する働き及び水晶体嚢内の中心に光学体を向ける働きをする。
【0005】
注射器システムはさらにカートリッジであって眼内レンズを受け入れるカートリッジを有し、カートリッジは注射器に挿入可能である。ハンドピース及びプランジャに加えて、注射器は分注デバイスを有し、分注デバイスは基端部に入口開口を、及び末端部に出口開口を有する。プランジャの前進移動により、眼内レンズはカートリッジを通じて運ばれ得、そこから分注デバイスを通じて出口開口の方向へ運ばれ得る。手術中、外科医は、注射器の出口開口を目の角膜を通じて水晶体嚢まで押し通すことにより注射器を使用する。次いで、プランジャの前進移動が増加するにつれ、外科医は眼内レンズが分注デバイスを通じて挿入され、そこから水晶体嚢内へ挿入されたことを確信する。眼内レンズは、ハプティックアームが水晶体嚢の内側壁に当接するようになるような方法で水晶体嚢内で広がり、このようにして、光学体は水晶体嚢内の中心に向けられる。
【0006】
眼内レンズは最初にカートリッジにおいて張力がかかっていない状態である。第1ハプティックアームから他方の、第2ハプティックアームへの外側距離又は眼内レンズの外径は張力がかかっていない状態においておよそ12mmである。眼内レンズは、例えば、2つの翼状部要素をカートリッジのヒンジを中心として枢動させることによりカートリッジにおいて折り畳まれることも巻き上げられることもできる。ハンドピース内へのプランジャの移動により、眼内レンズは次いで前方にシフトすることができ、したがって水晶体嚢に挿入され得る。これによる欠点は、このような方法で折り畳まれている眼内レンズが低い固有安定性を有するということである。このような方法で折り畳まれた眼内レンズが水晶体嚢に挿入されると、ハプティックアームが水晶体嚢において比較的迅速に広がる。その際、それらは、眼内レンズが制御されない態様で回転するように、眼内レンズ全体のその光学軸を中心とした揺動移動及び/又は眼内レンズのその長手方向軸を中心とした回転移動を引き起こす可能性がある。このとき手術をしている外科医にとって眼内レンズを望ましい位置へ戻すことは難しい。これが完全に達成されない場合、患者が最適な視力を取得しないという可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼科手術用注射器システムであって、それにより眼科手術用注射器システムに含まれる眼内レンズが、注射器システムの分注デバイスを通じて容易且つ安全に運ばれ得る眼科手術用注射器システムを利用可能にすることが本開示の目的であり、ここで、注射器システムはコンパクトなデザインのものであり、患者は、当該注射器システムでの眼内レンズの移植後最適な視力を与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本明細書において開示された眼科手術用注射器システムにより達成される。
【0009】
眼科手術用注射器システムは、
注射器であって、ハンドピース、プランジャ、及び分注デバイスを有する注射器と、
眼内レンズであって、光学体、光学体から突出しているC字型第1ハプティックアーム、及び光学体から突出しているC字型第2ハプティックアームを有する眼内レンズと、
眼内レンズが受け入れられるカートリッジであって、注射器に挿入されるカートリッジと、
接触面を有する駆動要素と、
係止要素であって、それによりハンドピースに対して又はカートリッジに対してプランジャの位置が係止され得る係止要素と
を含み、
i)分注デバイスは、基端部に入口開口を、及び末端部に出口開口を有し、眼内レンズは、プランジャの前進移動により、カートリッジを通じて、及び次いで分注デバイスの入口開口を通じて出口開口へ運ばれ得、
ii)プランジャは、係止要素により第1位置において係止され得、第1位置において、眼内レンズは、カートリッジにおいて、第1ハプティックアームから第2ハプティックアームへの外側距離が8mmより大きく11mm未満である圧縮され予備張力をかけられた状態において保持され、
iii)駆動要素の直線移動又は枢動移動は、プランジャの前進移動を第2位置まで少なくとも2mm~最大で4mmだけ達成するために、駆動要素の接触面をプランジャと係合させ、その結果として第1ハプティックアームの小区域及び第2ハプティックアームの小区域は光学体より上に配置され、プランジャは係止要素により第2位置において係止され得る。
【0010】
プランジャが係止されるプランジャの第1位置において、本開示による注射器システムはこのとき眼内レンズがカートリッジにおいて予備張力をかけられるとともに、この状態において保管されることを可能にする。注射器システムが極めて長い時間保管された後でさえも、ハプティックアームは伸縮自在に変形されるのみであり、塑性的に変形されない。注射器システムでは、追加的に、プランジャを第2位置に置くことにより、移植前に眼内レンズをより強く圧縮することが可能である。これは手術の少し前に外科医により行われ得る。
【0011】
第2位置において、ハプティックアームは光学体より上に配置される。この第2位置は、眼内レンズがプランジャの前進移動により分注デバイスに容易に押し込まれ得るように、カートリッジの翼状部要素を枢動させることにより眼内レンズを折り畳む又は巻き上げるのに有利である。固定要素の使用は、ハプティックアームが少なくとも2mm~最大で4mmの所定の経路長さにわたって圧縮されることを確実にする。この追加的な圧縮が比較的短時間のみ施される場合、外科医はこの圧縮を手術の直前に行うことから、ハプティックアームのシャフト上のそれぞれの屈曲ジョイントにおいて塑性変形は生じない。ハプティックアームのシャフト上の屈曲ジョイントの塑性変形の原因となり得る、ハプティックアームが所定の経路長さを超えて偶発的に押される状況は、ハプティックアームは少なくとも2mm~最大で4mmの所定の経路長さにわたってのみ圧縮されることから、駆動要素の使用を通じて回避され得る。眼内レンズが比較的コンパクトな形で存在するように、ハプティックアーム間の外側距離はこの状態において比較的短い。したがって、水晶体嚢への移植中、ハプティックアームが時期尚早に展開しないことから、眼内レンズがそれ自体の長手方向軸を中心として又はその光学軸を中心としてねじれることを回避することが可能である。代わりに、患者が最適な視力を与えられるように、光学体が最初に水晶体嚢内で展開し、その後初めてハプティックアームがそれらの元の位置に完全に戻る。
【0012】
係止要素は典型的には、後ろの方向においてのみプランジャを阻止又はブロックする機械的掛け止め要素、例えばラチェットである。係止要素は、ハンドピースのみと又はカートリッジのみと又はハンドピースとカートリッジとの組合せと係合するようになり得る。係止要素がプランジャをカートリッジと接続する場合、係止は眼内レンズに直接近接して行われ得る。したがって、長期間にわたり得る注射器システムの保管中、眼内レンズは比較的確実で安定的なやり方で予備張力をかけられ得る。
【0013】
プランジャが第2位置に位置付けられた後、ハプティックアームは光学体より上に位置する。しかしながら、ハプティックアームにより覆われておらず、したがって、光学体の依然として十分に大きい表面積が、ハプティックアームにより、例えばひっかき傷によって、決して損傷を受け得ないままとなる。
【0014】
本注射器システムのさらなる利点は、駆動要素の使用及び関連するプランジャの所定の長さの前進移動を通じて、眼内レンズが、折り畳まれる前に分注デバイス内の奥まで運ばれ過ぎるという危険はないという点である。代わりに、手術の直前に、外科医はプランジャを第2位置へ運び、粘弾性体をカートリッジへ挿入し、次いで眼内レンズを折り畳むために翼状部アームを互いに向かって移動させるだけでよい。代替的に、粘弾性体はまた眼内レンズが折り畳まれた後で挿入され得る。外科医は次いですぐに、眼内レンズを分注デバイスを通じて運び始めることができる。プランジャのこの移動中、かけられることになる力は比較的一定である。外科医は、ハプティックアームを圧縮するために比較的低い力をかける必要はもはやなく、したがって、外科医は、プランジャの移動中にかけられることになる力の間の大きな違いを考慮に入れる必要はもはやない。全体として、これは、外科医により注射器システムの分注デバイスを通じて眼内レンズが容易且つ安全に運ばれ得ることを意味する。
【0015】
加えて、本開示による注射器システムは注射器の長さを以前よりも短く保つことが可能である。張力がかかっていない状態にある眼内レンズは、第1ハプティックアームから第2ハプティックアームへおよそ12mmの外側距離を有し、圧縮され予備張力をかけられた状態においてより短くなる。注射器システムは、したがって、よりコンパクトな形において製造及び供給され得る。
【0016】
本開示の例示的な実施形態によると、翼状部要素の開位置において、カートリッジへの眼内レンズの挿入が許可されるとともに、翼状部要素を閉位置へ枢動させることにより、挿入された眼内レンズの折り畳みが許可されるように、カートリッジはヒンジに連結された翼状部要素を有する。翼状部要素を閉位置へ枢動させることは、外科医により極めて容易に実施され得、眼内レンズの折り畳みを達成するためにプランジャの前進移動は不要である。
【0017】
眼内レンズは典型的には疎水性アクリルポリマーでできている。これは数年にわたって眼内レンズを圧縮し、予備張力下におき、保管することを可能にし、それにも関わらずその後眼内レンズは、水晶体嚢に挿入されると、張力がかかっていない状態へと完全に広がることができる。
【0018】
本開示はここで図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示による注射器システムの概略図を示す。
図2】平面図において、張力がかかっていない状態の人工眼内レンズの概略図を示す。
図3】平面図において、第1圧縮状態の人工眼内レンズの概略図を示す。
図4】平面図において、第2圧縮状態の人工眼内レンズの概略図を示す。
図5】翼状部要素を備えたカートリッジ及びカートリッジに挿入され圧縮された眼内レンズの概略斜視図を示す。
図6】注射器システムのプランジャと係合した状態にある駆動要素の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本開示による眼科手術用注射器システム100の例示的実施形態の概略図を示す。注射器システム100は、ハンドピース2とプランジャ3とを有する注射器1を有する。加えて、注射器1は、分注デバイス4であって、それを通じて人工眼内レンズ5が運ばれ得る分注デバイス4を有する。眼内レンズ5は、光学体6と、そこから突出するとともに互いに反対側にあるように配置される2つのC字型ハプティックアーム7、すなわち第1ハプティックアーム71及び第2ハプティックアーム72(図2も参照)とを有する。眼内レンズ5は、分注デバイス4の前に注射器システム100において位置付けられるカートリッジ8に挿入される。前進移動(矢印9を参照)により、ハンドピース2において案内されるプランジャ3はその末端部31を第2ハプティックアーム72と接触させることができ、そのときハプティックアーム72及び71の両方が光学体6に向かう方向において屈曲する。
【0021】
眼内レンズ5は、第1ハプティックアーム71から第2ハプティックアーム72への外側距離が長さL1を有するように製造時には張力がかかっていない状態にある(図2を参照)。長さL1は12mmであり得る。プランジャ3の末端部31が、ハプティックアーム71、72のうちの1つに光学体6の光学軸Aに垂直な方向において力Fをかけると、第1ハプティックアーム71は屈曲ジョイント73を中心として屈曲する。屈曲ジョイント73は第1ハプティックアーム71のシャフト74上に設けられている。これと同様に、第2ハプティックアーム72上には第2屈曲ジョイント75があり、この第2屈曲ジョイント75は第2ハプティックアーム72の第2シャフト76上に設けられている。典型的には疎水性アクリルポリマーである眼内レンズの材料が伸縮性を有しているために、ハプティックアームのそのような屈曲は光学体6の方向において許され得る。
【0022】
図3は、プランジャが第1位置に位置するときの第1圧縮状態における眼内レンズ5を示す。第1ハプティックアーム71から第2ハプティックアーム72への外側距離はこのときL2であり、L2はL1未満である。L2は8mmより大きく11mm未満である。
【0023】
プランジャが第2位置に位置するとき、これは眼内レンズ5のなおより大きい圧縮をもたらし、ハプティックアーム71、72の各々の小区域51は光学体6上にあるとともに、そこで光学体6を部分的に覆う(図4を参照)。予備張力をかけられた眼内レンズ5の光学体6は、平面図において、ハプティックアーム71、72により覆われていない円形の表面領域61を有し、この円形の表面領域61は典型的には少なくとも4.5mmの直径D1を有する。円形の表面領域61の外周は図4において点線で示されている。眼内レンズ5のこの圧縮された状態において、第1ハプティックアーム71から反対側の第2ハプティックアーム72までの外側距離は長さL3を有し、これは長さL2又はL1よりも短い。長さL1が12mmであるとき、眼内レンズ5のそのような圧縮はおよそ6mm~9mm、典型的には6mm~7.5mm未満の長さL3をもたらす。小区域51は、光学体6の外径D2のリングと円形の表面領域61の直径D1のリングとの間に形成された円形のリングの一部を表す表面である(図2及び図4を参照)。
【0024】
図5は、カートリッジ8に挿入され圧縮された眼内レンズ5の斜視図を示す。プランジャ3の末端部31は第2ハプティックアーム72と接触している。カートリッジ8は、図5において開いた位置において示されている2つの翼状部要素81を有する。翼状部要素81を関連するヒンジ82、典型的にはフィルムヒンジを中心として枢動させることにより、眼内レンズ5は、それが分注デバイス4の入口開口41に押し込まれ得るように、折り畳まれることも巻き上げられることもできる。プランジャ3を矢印9の方向に引き続き移動させることにより、眼内レンズ5は分注デバイス4の末端部に出現し、分注デバイス4の出口開口42で、目の水晶体嚢へ導入されることになる。
【0025】
図6は、プランジャ3と係合した状態にある駆動要素11の概略斜視図を示す。駆動要素11は、平面の接触面12であって、プランジャ3の対応する接触面32に対して形の合った係合で連結され得る平面の接触面12を有する。接触面12及び32は典型的には弾性的に予備張力をかけられている。典型的には前進移動(矢印9を参照)の方向に垂直な矢印91の方向における駆動要素11の直線移動により、プランジャ3は矢印9の方向において、少なくとも2mm~最大で4mmの所定の距離だけ移動する。接触面12は典型的には傾斜部として構成され、接触面12の傾斜面とプランジャ3の長手方向軸との間の角度αは45°より大きい。平らな表面を有する代わりに、接触面12は自由な形状の表面、又は違ったように曲がっている表面として構成されることもできるが、但し、駆動要素を直線移動又は枢動移動で駆動させることは、少なくとも2mm及び最大で4mmの所定の距離だけプランジャの変位をもたらす。
【0026】
本開示の例示的な実施形態の前述の説明は本発明を例証及び説明するものである。追加的に、本開示は例示的な実施形態のみを示すとともに説明しているが、上で言及したとおり、本開示は様々な他の組合せ、修正形態及び環境での使用も可能であり、本明細書において表されている概念の範囲内において変更又は修正することも可能であり、上記の教示及び/又は関連する技術分野の技能若しくは知識と同等であることを理解されたい。
【0027】
「含む(comprising)」(及びその文法的バリエーション)という用語は本明細書で使用される際、「有する」又は「含む(including)」の包括的な意味において使用され、「からのみ構成される」という排他的な意味においては使用されない。「a」及び「the」という用語は、本明細書で使用される際、単数のみならず複数も包含すると理解される。
【0028】
この明細書において引用されている全ての出版物、特許及び特許出願は、各独立した出版物、特許又は特許出願が参照により組み込まれるものであると具体的及び別個に示されるかのように、参照により、全ての目的のために、本明細書に組み込まれる。矛盾があった場合、本発明の開示が優先される。
【符号の説明】
【0029】
1 注射器
2 ハンドピース
3 プランジャ
4 分注デバイス
5 眼内レンズ
6 光学体
7 ハプティックアーム
8 カートリッジ
9 前進移動のための矢印
11 駆動要素
12 駆動要素の接触面
31 プランジャの末端部
32 プランジャの接触面
41 分注デバイスの入口開口
42 分注デバイスの出口開口
51 ハプティックアームの小区域
61 円形の表面領域
71 第1ハプティックアーム
72 第2ハプティックアーム
73 第1ハプティックアーム上の屈曲ジョイント
74 第1ハプティックアームのシャフト
75 第2ハプティックアーム上の屈曲ジョイント
76 第2ハプティックアームのシャフト
81 翼状部要素
82 ヒンジ
91 駆動要素の牽引方向
100 注射器システム
A 光学軸
D1 ハプティックアームにより覆われていない光学体の円形の表面領域の直径
D2 光学体の外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6