(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】オレフィン重合のための触媒成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20220706BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2021578189
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067640
(87)【国際公開番号】W WO2021001232
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-29
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ミニョーニャ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】リゴリ、ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】モリーニ、ジャンピエロ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-533243(JP,A)
【文献】国際公開第2018/091375(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/093132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Tiおよび式(I)の電子供与体を含むオレフィン重合のための触媒成分であって、
【化1】
ここで、R
1基およびR
5基は、相互に等しいかまたは異なり、C
1-C
15炭化水素基から選択され、R
2基は、C
2-C
10炭化水素基から選択され、R
3基およびR
4基は、水素またはC
1-C
20炭化水素基から独立的に選択され、任意選択的に共に融合されて1つ以上のサイクルを形成し、ただし、R
3基~R
4基のうち少なくとも1つはC
1-C
20アルキル基である、
触媒成分。
【請求項2】
R
2は、C
3-C
10第一アルキル基または第一C
7-C
10アリールアルキル基から選択される、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項3】
R
3は、分岐C
3-C
15アルキル基またはアリールアルキル基から選択される、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項4】
R
3は、第一分岐C
4-C
10分岐アルキル基またはアリールアルキル基から選択される、請求項3に記載の触媒成分。
【請求項5】
オレフィン重合のための触媒であって、
(i) 請求項1~4のいずれか一項に記載の固体触媒成分と、
(ii) アルキルアルミニウム化合物と、
の間の反応の生成物を含む、触媒。
【請求項6】
オレフィンCH
2=CHRの(共)重合のためのプロセスであって、式中、Rは、水素または1~12個の炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルであり、前記プロセスは、触媒系の存在下において行われ、前記触媒系は、
i. 請求項1~5のいずれか一項に記載の固体触媒成分と、
ii. アルキルアルミニウム化合物と、
の間の反応の生成物を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィン(特にプロピレン)の重合のための触媒成分に関する。この触媒成分に含まれるMgジハライドベースの担体上において、Ti原子と、エステルおよびカラバメート官能基を含む電子供与体化合物とが担持される。本開示は、上記成分から得られた触媒と、オレフィン(特にプロピレン)の重合のためのプロセスにおける上記触媒の使用とにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンの立体特異性重合のための触媒成分が、当業界において開示されている。プロピレンの重合について、チーグラーナッタ触媒が用いられる。チーグラーナッタ触媒は、固体触媒成分を主に含む。この固体触媒成分は、二ハロゲン化マグネシウムによって構成され、二ハロゲン化マグネシウム上には、Al-アルキル化合物と共に用いられるチタン化合物および内部電子供与体化合物が担持される。しかし、従来から、ポリマーの結晶化度向上が望まれる場合、アイソタクチシティ向上のためには、外部供与体(例えば、アルコキシシラン)も必要になる。フタル酸のエステル(特に、フタル酸ジイソブチル)が、触媒調製において内部供与体として用いられる。これらのフタル酸塩は、外部供与体としてのアルキルアルコキシシランと共に、内部供与体として用いられる。この触媒系を用いると、活性、アイソタクチシティおよびキシレン非溶解性において高い性能が得られる。
【0003】
いくつかの場合において、ポリマー作製の際、フタル酸塩を電子供与体として用いない触媒系を使用することが所望される。
【0004】
その結果、プロピレン重合のための触媒成分の調製において用いられる別のクラスの内部供与体の発見のために、研究活動が捧げられている。
【0005】
試験対象触媒のいくつかにおいて、カルバミン基およびエステル基を同時に有する供与体構造が含まれる。PCT公開第WO2006/110234において、1つのカラバメート基および1つの自由エステル基を含む1、2-アミノエステル誘導体についての記載がある。これらの構造によって生成された触媒の場合、バルクプロピレン重合における活性および立体特異性が極めて低い(PCT公開第WO2006/110234の表2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、本出願人の発見によれば、アミノ酸由来の特定の構造内においてカラバメートおよびエステル基双方を含むあるクラスの供与体において、活性および立体特異性のバランスが優れた触媒が生成されることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって、本開示の目的は、Mg、Ti、式(I)の電子供与体を含むオレフィン重合用の触媒成分である。
【化1】
ここで、R
1基およびR
5基は、互いに等しいかまたは互いに異なり、C
1-C
15炭化水素基から選択され、R
2基は、C
2-C
10炭化水素基から選択され、R
3-R
4基は、水素またはC
1-C
20炭化水素基から独立的に選択され、任意選択的に共に融合されて1つ以上のサイクルを形成し、ただし、R
3基~R
4基のうち少なくとも1つはC
1-C
20アルキル基である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願によれば、「炭化水素基」という用語は、ハロゲン、P、S、N、OおよびSiから選択されたヘテロ原子の上記のような基R1-R5中における炭素および水素に加えた存在の可能性も含む。
【0009】
本出願によれば、「アルキル基」という用語は、個別指定が無い場合、水素原子とアリール基との置換によってアルキル基から導出された同一炭素原子範囲のアリールアルキル基も含む。
【0010】
好適には、R1は、C1-C10アルキル基またはアリールアルキル基であり、より好適にはC1-C8アルキル基である。より好適には、アルキル基は、第一アルキル基である。
【0011】
好適には、R2は、C2-C10アルキルまたはC7-C10アリールアルキル基から選択され、より好適にはC3-C10アルキル基またはC7-C10アリールアルキル基から(特にC3-C10第一アルキルからまたは第一C7-C10アリールアルキル基から)選択される。
【0012】
好適には、R3は、分岐C3-C15アルキルまたはアリールアルキル基から選択され、より好適にはC4-C10分岐アルキルまたはアリールアルキル基から選択され、特に第一分岐C4-C10分岐アルキルまたはアリールアルキル基から選択される。
【0013】
R4は、水素またはC1-C15アルキル基であり得る。より好適には、R4は水素である。
【0014】
好適な構造は、R3が分岐C3-C15アルキルまたはアリールアルキル基から選択され、R4が水素である構造である。
【0015】
好適には、R5は、C1-C10アルキル基であり、より好適にはC1-C8アルキル基である。より好適には、アルキル基は、第一アルキル基である。
【0016】
式(I)の好適な構造は、R1およびR5が独立的にC1-C10アルキル基であり、R2がC2-C10アルキルまたはC7-C10アリールアルキル基から選択され、R3が分岐C3-C15アルキルまたはアリールアルキル基から選択され、R4が水素である構造である。
【0017】
好適には、固体触媒成分中の電子供与体化合物の最終量は、1~25重量%の範囲であり、好適には3~20重量%の範囲である。
【0018】
式(I)の構造の非限定的な例を、以下に示す。
【0019】
エチルN-(エトキシカルボニル)-N-プロピルフェニルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソプロピルフェニルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-エチルフェニルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-ヘキシルフェニルアラニナト、エチルN-デシル-N-(エトキシカルボニル)フェニルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソブチルフェニルアラニナト、エチルN-ブチル-N-(エトキシカルボニル)フェニルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソプロピルロイシネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-プロピルロイシネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-エチルロイシネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソブチルロイシネート、エチルN-ブチル-N-(エトキシカルボニル)ロイシネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-ヘキシルロイシネート、エチルN-デシル-N-(エトキシカルボニル)ロイシネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-プロピルバリネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-エチルバリネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソブチルバリネート、エチルN-ブチル-N-(エトキシカルボニル)バリネート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-ヘキシルバリネート、エチルN-デシル-N-(エトキシカルボニル)バリネート、エチル2-((エトキシカルボニル)(エチル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(プロピル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-(デシル(エトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(ヘキシル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(イソプロピル)アミノ)ヘキサン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(プロピル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソプロピルバリネート、エチル2-((エトキシカルボニル)(エチル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチル2-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチル2-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチル2-((エトキシカルボニル)(ヘキシル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチル2-(デシル(エトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソプロピルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-プロピルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-エチルアラニナト、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-イソブチルアラニナト、エチル2-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸、エチルN-(エトキシカルボニル)-N-ヘキシルアラニナト、エチルN-デシル-N-(エトキシカルボニル)アラニナト、エチル2-((エトキシカルボニル)(プロピル)アミノ)-3-(p-トリル)プロパン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)-3-(o-トリル)プロパン酸、エチル2-(デシル(エトキシカルボニル)アミノ)-3-メシチルプロパン酸、エチル2-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)-3-(ナフタレン(naphthalen)-2-イル)プロパン酸、エチル3-(4-クロロフェニル)-2-((エトキシカルボニル)(エチル)アミノ)プロパン酸エチル3-(3、4-ジメチルフェニル)-2-((エトキシカルボニル)(ヘキシル)アミノ)プロパン酸、メチル2-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)-3-フェニルブタン酸、イソブチル2-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)-4-フェニルブタン酸、エチル2-(イソブチル(メトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、メチル2-(エチル(メトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルペンタノエート、エチルN-ヘキシル-N-(プロポキシカルボニル)バリネート、エチルN-ヘキシル-N-(プロポキシカルボニル)バリネート、ブチル2-((エトキシカルボニル)(ヘキシル)アミノ)ヘキサン酸、イソブチル2-((ブトキシカルボニル)(デシル)アミノ)-5-メチルヘキサン酸、エチル1-(ブチル(エトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩、エチル1-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)シクロペンタン-1-カルボン酸塩、エチル2-((エトキシカルボニル)(イソブチル)アミノ)-2-エチルブタン酸、エチル2-((エトキシカルボニル)(エチル)アミノ)-2-イソブチル4-メチルペンタノエート、エチル2-((エトキシカルボニル)(ヘキシル)アミノ)-2-メチルプロパン酸
【0020】
式(I)中の化合物は、以下の合成経路を用いて調製され得る。
【化2】
【0021】
本開示の固体触媒成分において、上記触媒成分の総重量に対するTi原子の量は、好適には2%wtよりも高く、より好ましくは2.50%よりも高い。
【0022】
上記したように、本開示の触媒成分は、上記電子供与体に加えて、Ti、Mgおよびハロゲンを含む。詳細には、これらの触媒成分は、少なくともTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物と、Mgハライド上に担持された上述の電子供与体化合物とを含む。マグネシウムハライドは好適には、チーグラーナッタ触媒の担体として記述される活性型のMgCl2である。特許USP4,298,718号およびUSP4,495,338号は、チーグラーナッタ触媒作用におけるこれらの化合物の使用について初めて記載したものである。これらの特許から分かることとして、オレフィン重合用の触媒成分中において担体または共担体として使用される活性型二ハロゲン化マグネシウムの場合、X線スペクトルにおいて、非活性ハロゲン化物のスペクトルに表れる最も強い回折線の強度が低下し、(より強い線の角度に対して最大強度がより小さい角度へと変位する)ハロ(halo)によって置換される点において特徴付けられる。
【0023】
本開示の触媒成分において用いられる好適なチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3であり;さらに、式Ti(OR6)m-yXyのTi-ハロアルコラートが使用可能であり、ここで、mは、チタンの原子価であり、yは、1~m-1の数であり、Xは、ハロゲンであり、R6は、1~10個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである。
【0024】
固体触媒成分の調製は、いくつかの方法に従って行われ得る。1つの方法は、マグネシウムアルコラートまたはクロロアルコラート(詳細には、USP4,220,554号に従って調製されたクロロアルコラート)と、約80~120℃の温度において電子供与体化合物の存在下における過量のTiCl4との間の反応を含む。
【0025】
好適な方法によれば、固体触媒成分の調製は、式Ti(OR7)m-yXyのチタン化合物(式中、mはチタンの原子価であり、yは1~mの数である(好適にはTiCl4))と、式MgCl2・pR8OHの付加物に由来する塩化マグネシウム(式中、pは、0.1~6、好適には2~3.5の数であり、R8は、1~18個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである)との反応によって行われ得る。付加物は、適切に球状に調製され得、この調製は、アルコール及び塩化マグネシウムの混合を付加物と非混和性である不活性炭化水素の存在下において行い、付加物の溶融温度(100~130℃)において攪拌条件下で操作を行うことにより行われ得る。その後、エマルジョンを急冷させることにより、付加物を球状粒子の形態で固化させる。この手順に従って調製された球状付加物の例について、USP4,399,054号およびUSP4,469,648号に記載がある。このようにして得られた付加物は、Ti化合物と直接反応させてもよいし、あるいは、(アルコールモル数が3未満(好適には0.1~2.5)の付加物が得られるように)熱制御下の脱アルコール反応(80~130℃)を事前に施してもよい。Ti化合物との反応を行うには、付加物(を例えば脱アルコール化状態で)低温TiCl4(約0℃)中に懸濁させ、得られた混合物の加熱を80~130℃まで行い、この温度で0.5~2時間保持すればよい。TiCl4による処理は、1回以上行われ得る。電子供与体化合物の付加は、好適にはTiCl4による処理時に行われる。触媒成分の球状形態での調製については、例えば欧州特許出願EP-A-395083、EP-A-553805、EP-A-553806、EPA601525およびWO98/44009に記載がある。
【0026】
上記方法に従って得られた固体触媒成分の表面積(B.E.T.法による)は、20~500m2/g(好適には50~400m2/g)であり得、全孔隙率(B.E.T.法による)は、0.2cm3/gよりも高く(好適には0.2~0.6cm3/g)であり得る。10.000Åまでの半径の細孔に起因する多孔性(Hg法)は、0.3~1.5cm3/g(好適にはfrom0.45~1cm3/g)であり得る。
【0027】
固体触媒成分の平均粒径は、5~120μm(より好適には10~100μm)である。
【0028】
これらの調製方法のうちいずれかにおいて、このようにして所望の電子供与体化合物が付加され得、あるいは、代替的方法において、例えば利用可能な化学反応によって所望の電子供与体化合物へ変換することが可能な適切な前駆物質の利用によりin situで入手することも可能である。
【0029】
使用される調製方法に関わらず、式(I)の電子供与体化合物の最終量は、Ti原子に対するモル比が0.01:1~2:1(好適には0.05:1~1.5:1)となるようにされる。本開示による固体触媒成分からオレフィン重合用の触媒への変換は、固体触媒成分と有機アルミニウム化合物との反応を利用可能な方法に従って行うことにより、行われる。
【0030】
詳細には、本開示の目的は、オレフィンCH2=CHRの重合用の触媒である。式中、Rは、1~12個の炭素原子を含む水素またはヒドロカルビルラジカルである。この触媒は、下記の接触によって得られる生成物を含む:
(i) 上記したような固体触媒成分、および
(ii) アルキルアルミニウム化合物および任意選択的に、
(iii) 外部電子供与体化合物。
【0031】
アルキル-Al化合物(ii)は、好適にはトリアルキルアルミニウム化合物から選択される(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム)。アルキルアルミニウムハライド、水素化アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリド(例えば、AlEt2ClおよびAl2Et3Cl3)を恐らくは記載のトリアルキルアルミニウムと混合して用いることも可能である。
【0032】
これらの外部電子供与体化合物は、ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミンおよび複素環化合物を含み得る。
【0033】
別のクラスの好適な外部供与体化合物として、式(R9)a(R10)bSi(OR11)cのケイ素化合物がある。式中、a及びbは、0~2の整数であり、cは、1~4の整数であり、(a+b+c)の和は4であり;R9、R10およびR11は、任意選択的にヘテロ原子を含有する1~18個の炭素原子を有するラジカルである。特に好適なケイ素化合物において、aは1であり、bは1であり、cは2であり、R7およびR8のうち少なくとも1つは、分岐アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選択され、3~10個の炭素原子は、任意選択的にヘテロ原子を含み、R9は、C1-C10アルキル基(特にメチル)である。このような好適なケイ素化合物の例として、左記がある:メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(C供与体)、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)、ジイソプロピルジメトキシシラン、(2-エチルピペリジニル)t-ブチルジメトキシシラン、(2-エチルピペリジニル)テキシルジメトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2-エチルピペリジニル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、N,N-ジエチルアミノトリエトキシシラン。さらに、左記も好適なケイ素化合物である:aが0であり、cが3であり、R8が任意選択的にヘテロ原子を含有する分枝状アルキルまたはシクロアルキル基であり、R9がメチルである。このような好適なケイ素化合物の例として、シクルロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン及びテキシルトリメトキシシランがある。
【0034】
電子供与体化合物(iii)は、有機アルミニウム化合物と電子供与体化合物(iii)との間のモル比が0.1~500、好適には1~300、より好適には3~100となる量で使用される。
【0035】
上記したように、本開示の触媒成分は、特にアルミニウムアルキル化合物及びアルキルアルコキシシランと関連してプロピレン重合に使用された場合、実験記載部分中に提示された重合条件下においてポリプロピレンを生成することができ、その際の重合活性は35Kgpol/gcatよりも高く、好適には40Kgpol/gcatよりも高く、25℃におけるキシレン非溶解性は96%wtよりも高く、好適には97%wtよりも高い。
【0036】
よって、本開示のさらなる目的は、オレフィンCH2=CHRの(共)重合のためのプロセスであり、式中、Rは、水素または1~12個の炭素原子を含むヒドロカルビルラジカルであり、下記間の反応の生成物を含む触媒の存在下において行われる:
(i) 本開示の固体触媒成分;
(ii) アルキルアルミニウム化合物、および
(iii) 任意選択的に電子供与体化合物(外部供与体)。
【0037】
この重合プロセスは、利用可能な技術に従って行われ得る(例えば、希釈剤として不活性炭化水素溶媒を使用するスラリー重合法または反応媒体として液状単量体(例えば、プロピレン)を使用するバルク重合法)。さらに、1つ以上の床反応器または機械的に攪拌された床反応器内においてこの重合プロセスを気相運転で行うことも可能である。
【0038】
重合を実行する温度は、20~120℃であり得、好適には40~80℃であり得る。重合を気相において実行する場合、動作圧力の範囲は0.5~5MPaであり得、好適には1~4MPaであり得る。バルク重合においては、動作圧力範囲は1~8MPaであり、好適には1.5~5MPaである。
【0039】
以下の例は、本開示をさらに例示するためのものであり、本開示を限定することは意図していない。
【0040】
特性評価
【0041】
X.I.の決定
2.5gのポリマー及び250mlのo-キシレンを、冷却器及び還流凝縮器を備えた丸底フラスコ中に配置し、窒素下に維持させた。得られた混合物を135℃に加熱し、約60分間攪拌下に維持した。最終溶液を連続的に攪拌しながら25℃まで冷却した後、不溶性ポリマーを濾過した。その後、濾過液を140℃の窒素気流下において蒸発させ、一定重量に到達させた。上記キシレン-可溶性画分の含有量を原料2.5グラムの百分率として表し、次に差としてX.I.%で表す。
【0042】
供与体の決定
電子供与体の含有量を、ガスクロマトグラフィにより行った。固体成分を酸性水に溶解させた。溶液を酢酸エチルで抽出し、内部標準物質を付加し、有機相のサンプルをガスクロマトグラフィにおいて分析して、出発触媒化合物に存在する供与体の量を決定した。
【0043】
メルトフローレート(MFR)
ポリマーのメルトフローレートMILの決定は、ISO1133(230℃、2.16Kg)に従って行った。
【0044】
実施例
【0045】
球状付加物の調製手順
初期量の微小球MgCl2.2.8C2H5OHの調製をWO98/44009の実施例2中に記載の方法に従って行ったが、動作はより大規模に行った。
【0046】
プロピレン重合の一般的手順
攪拌器、圧力計、温度計、触媒供給系、単量体供給ライン及び恒温ジャケットを備えた4リットルの鋼製オートクレーブを、70℃にて窒素流で1時間パージした。続いて、モル比20のAl/供与体および0.006÷0.010gの固体触媒成分を得るために、プロピレン流下において30℃にて75mLの無水ヘキサン、0.76gのAlEt3、外部電子供与体としてのジシクロペンチルジメトキシシラン、および0.006÷0.010gの固体触媒成分を順に供給した。オートクレーブを閉じた後、2.0NLの水素を付加した。次に、攪拌下において、1.2kgの液状プロピレンを供給した。温度を5分間において70℃まで上昇させ、この温度において重合を2時間行った。重合終了時において、未反応プロピレンを除去し;ポリマーを回収し、真空下において70℃にて3時間乾燥させた。続いて、ポリマーを秤量し、o-キシレンにより分別して、キシレン不溶性(X.I.)分画の量を決定した。
【0047】
固体触媒成分の調製の一般的手順
機械的攪拌器、冷却器及び温度計を備えた500cm3の丸底フラスコ中に、250cm3のTiCl4を室温にて窒素雰囲気下において導入した。0℃まで冷却させた後、表1に記載の内部供与体および10.0gの球状付加物を攪拌しつつフラスコ中に順次付加した。内部供与体の供給量は、Mg/供与体のモル比が6となるようにした。温度を100℃まで上昇させ、2時間維持した。その後、攪拌を停止し、固体生成物を沈澱させ、上清液を100℃において吸い上げた。上清液を除去した後、追加で新規のTiCl4を添加して、初期の液体体積に再び到達させた。続けて、混合物を120℃において加熱し、この温度で1時間維持させた。攪拌を再度中止し、固体を沈澱させ、上清液を吸い上げた。固体を無水ヘキサン(6x100cm3)により6回洗浄し、その際の温度勾配は60℃までとし、1回は(100cm3)において室温にて行った。次に、得られた固体を真空下で乾燥させた。このようにして得られた固体触媒成分について、上記の手順を用いてプロピレン重合において試験した。結果を表1に列挙する。
【0048】
実施例1~11および比較例1~9
【0049】
固体触媒成分の調製および重合
固体触媒成分1の調製の一般的手順を、表1中に内部供与体と記載している供与体を用いて行った。このようにして得られた固体触媒成分について、プロピレン重合においての試験を上記手順を用いて行った。結果を表1に列挙する。
【0050】
【0051】
nd:未決定