IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コア電子の特許一覧 ▶ 高知県公立大学法人の特許一覧

特許7100787加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置
<>
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図1
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図2
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図3
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図4
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図5
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図6
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図7
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図8
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図9
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図10
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図11
  • 特許-加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/04 20060101AFI20220707BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
F24F6/04
F24F6/00 D
F24F6/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017148636
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019027706
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515172153
【氏名又は名称】株式会社コアテック
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】有光 義城
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰典
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-128682(JP,A)
【文献】特開2002-048361(JP,A)
【文献】特開平08-219505(JP,A)
【文献】国際公開第2014/210157(WO,A1)
【文献】米国特許第05348691(US,A)
【文献】特開平08-233315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/04
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、2枚の吸水膜と、通水口とを含む加湿エレメントであって、
前記枠体は薄板を中抜きにした形状であり、
前記枠体は、該枠体の一対の対向する辺の一方の辺から他方の辺に向かって、及び他方の辺から一方の辺に向かって夫々伸びる複数のくし刃を備え、
前記2枚の吸水膜は、前記枠体の一方の面の上部と、前記枠体の他方の面の下部とに夫々設けられた、スペーサーとして機能し、前記枠体の厚さより厚いヘッド部により、前記枠体の中抜き部分を覆うように前記枠体の両面に夫々固定され、
前記2枚の吸水膜に覆われた枠体の中抜き部分には液流路が形成され、
前記通水口が、前記枠体の上部の辺及び下部の辺に設けられ、前記液流路と連通していることを特徴とする、加湿エレメント。
【請求項2】
前記複数のくし刃が、前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びることを特徴とする、請求項1に記載の加湿エレメント。
【請求項3】
前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びる複数のくし刃の突出長さが、前記枠体の幅方向の長さの50%以上の長さであることを特徴とする、請求項2に記載の加湿エレメント。
【請求項4】
前記吸水膜が紙、不織布、あるいは布であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加湿エレメント。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加湿エレメントと、
前記加湿エレメントが複数枚格納されている筐体とを含む加湿ユニットであって、
前記筐体内には、前記複数枚の加湿エレメントが通風路を形成するように間隔を開けながら直列及び/又は並列に複数枚連接されており、
前記複数枚の加湿エレメントの下方には下部通水路が設けられ、
前記複数枚の加湿エレメントの上方には上部通水路が設けられ、
前記筐体には該筐体の外部と下部通水路とを連通させる給排水口が設けられ、
前記筐体には該筐体の外部と上部通水路とを連通させる吸排気口が設けられていることを特徴とする、加湿ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、排水タンクと、吸排気管とを含む加湿機装置であって、
前記加湿ユニットと、前記給水タンクと、前記排水タンクとが、給水動作及び排水動作を可能にする手段を備えた給排水管を介して前記加湿ユニットの下部で互いに連通され、
前記加湿ユニットの上部には前記吸排気管が連結され、
前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられていることを特徴とする、加湿機装置。
【請求項7】
請求項5に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、給水ポンプと、吸気弁とを含む循環式の加湿機装置であって、
前記給水タンクは、前記加湿ユニットの下方に設けられており、
前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、給水動作を可能にする前記給水ポンプと排水弁を備えた給水管を介して前記加湿ユニットの下部で連通され、
前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、前記吸気弁を備えた排水管を介して前記加湿ユニットの上部で連通され、
前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられていることを特徴とする、加湿機装置。
【請求項8】
前記給排水管の上部には洗浄液又は除菌液を含む洗浄又は除菌タンクが設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の加湿機装置。
【請求項9】
前記吸排気管には洗浄液及び/又は除菌液が含まれる洗浄及び/又は除菌タンクが設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の加湿機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置に係り、より詳しくは、吸水膜の有効面積を増加させることによる優れた加湿能力を備え、メンテナンスが容易であり、長期間に亘って安定的に使用することができ、且つ部品点数を抑えることができ、製造コストも削減できる加湿エレメント及び該加湿エレメントを用いた加湿機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気化方式の加湿機装置が用いられている。気化方式の加湿機装置は、加湿用水を水蒸気に気化することにより加湿している。気化方式の加湿機装置には、滴下浸透気化式や透湿膜式等の加湿機構が用いられている。
【0003】
透湿膜式の加湿機装置には、疎水性高分子材料からなる多孔質シートを用いた透湿膜が設けられた加湿エレメントが用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この加湿エレメントは、水の通過は阻止するが水蒸気の通過は許容する疎水性高分子多孔質膜のシートによりチューブ状膜体を形成するように構成されている。加湿エレメントに設けられた注水口より加湿用水をチューブ状膜体内部に供給し、取付枠の開口部に空気を送り、チューブ状膜体内部の加湿用水が疎水性高分子多孔質膜を介して水蒸気として外部へ放出されることにより加湿が行われる。
【0004】
特許文献1には、薄板を中抜きにした形状の枠体の表面(表面、より正確には裏側の表面。すなわち裏面)に、該中抜き部分を覆うように防水透湿シートが固定されるとともに、該防水透湿シートの、枠体が設けられている側の表面に、該枠体の一対の対向する辺を装架するように複数のリブが配設された気液分離エレメント材料が、2枚、裏面同士を重ね合わせ、中抜きにした部分を除いて接着又は融着することにより一体化され、該枠体と該防水透湿シートで囲まれた液流路(枠体で囲まれた空間であって、その空間の中でさらに防水透湿シートで囲まれた空間が液流路になっていることの意。すなわち、液流路は防水透湿シートで囲まれている)が形成されており、且つ該枠体の一部に、該液流路と連通し、かつ給液又は排液のための給排液口が1ヵ所以上形成されていることを特徴とする気液分離エレメント(すなわち加湿エレメント)が開示されている。
【0005】
特許文献2には、薄板を中抜きにした形状の枠体の両主面に防水透湿膜を固定して成り、加湿板はその一端から枠体内の防水透湿膜間の加湿部に給水でき、枠体の厚みは給水部を規定する部分において加湿部を規定する部分より厚く、且つ加湿板は給水部同士が重なるように積層されて各加湿板に共通の給水部が形成され、かつ加湿板間に給水部と加湿部の枠体の厚みの差にもとづいて空間が形成されるように構成された加湿板(すなわち加湿エレメント)が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の加湿エレメントは、防水透湿膜の外側(すなわち液流路の外側)にリブが設けられているため、防水透湿膜が膨らむことでリブに強く接触し、防水透湿膜が破損する虞があり、長期間に亘って加湿エレメントを使用し難いという問題があった。
また、特許文献1の加湿エレメントは、2枚の枠体を重ねることによって形成されているため、加湿エレメントの部品点数が多くなるうえ、加湿エレメントの製造が複雑となり、その製造にコストがかかるという問題もあった。
加えて、特許文献1の加湿エレメントは、2枚の枠体を重ねることによって形成されているため、加湿エレメントの厚みが増し、単位容積当たりに設けることができる加湿エレメントの数が減少し、透湿膜の表面積を大きくし難くなるため、加湿機全体としての加湿能力が低下してしまうという問題もあった。
【0007】
特許文献2の加湿エレメントは、加湿板の給水部が開口構造となっているため、加湿板単体での加圧漏水検査が行えず、加湿機に組み上げた段階で加圧漏水検査を行うことになり、加湿板が1枚でも漏水を起こすと加湿機全体が使用不能となるという問題があった。
さらに、特許文献2の加湿エレメントは、給水部が加湿エレメントの上部にのみ設けられているため、加湿板に給水された加湿用水を完全に排水することが困難であり、加湿板に残った加湿用水にカビ等が発生し易いという問題もあった。
加えて、加湿板の下部に加湿用水に含まれる成分が沈着し、目詰まりを起こす等、長期間に亘って安定的に使用することが困難であるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4077187号
【文献】特許第3675529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、吸水膜の有効面積を増加させることによる優れた加湿能力を備え、メンテナンスが容易であり、長期間に亘って安定的に使用することができ、且つ部品点数を抑えることができ、製造コストも削減できる加湿エレメント、該加湿エレメントを用いた加湿ユニット、及び該加湿ユニットを用いた加湿機装置を提供することを目的とする。
尚、本発明は、特許文献1に記載の2枚の枠体を重ね合わせて液流路を形成するという要件と、特許文献2に記載の枠体の厚みは給水部を規定する部分において加湿部を規定する部分より厚いという要件をなくすることを特徴の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、枠体と、2枚の吸水膜と、通水口とを含む加湿エレメントであって、
前記枠体は薄板を中抜きにした形状であり、
前記枠体は、該枠体の一対の対向する辺の一方の辺から他方の辺に向かって、及び他方の辺から一方の辺に向かって夫々伸びる複数のくし刃を備え、
前記2枚の吸水膜は、前記枠体の中抜き部分を覆うように前記枠体の両面に夫々固定され、
前記2枚の吸水膜に覆われた枠体の中抜き部分には液流路が形成され、
前記通水口が、前記枠体の上部の辺及び下部の辺に設けられ、前記液流路と連通していることを特徴とする、加湿エレメントに関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記複数のくし刃が、前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びることを特徴とする、請求項1に記載の加湿エレメントに関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びる複数のくし刃の突出長さが、前記枠体の幅方向の長さの50%以上の長さであることを特徴とする、請求項2に記載の加湿エレメントに関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記吸水膜が紙、不織布、あるいは布であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加湿エレメントに関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記枠体の一方の面の上部と、前記枠体の他方の面の下部とに夫々ヘッド部が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加湿エレメントに関する。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加湿エレメントと、
前記加湿エレメントが複数枚格納されている筐体とを含む加湿ユニットであって、
前記筐体内には、前記複数枚の加湿エレメントが通風路を形成するように間隔を開けながら直列及び/又は並列に複数枚連接されており、
前記複数枚の加湿エレメントの下方には下部通水路が設けられ、
前記複数枚の加湿エレメントの上方には上部通水路が設けられ、
前記筐体には該筐体の外部と下部通水路とを連通させる給排水口が設けられ、
前記筐体には該筐体の外部と上部通水路とを連通させる吸排気口が設けられていることを特徴とする、加湿ユニットに関する。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、排水タンクと、吸排気管とを含む加湿機装置であって、
前記加湿ユニットと、前記給水タンクと、前記排水タンクとが、給水動作及び排水動作を可能にする手段を備えた給排水管を介して前記加湿ユニットの下部で互いに連通され、
前記加湿ユニットの上部には前記吸排気菅が連結され、
前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられていることを特徴とする、加湿機装置に関する。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、給水ポンプと、吸気管とを含む循環式の加湿機装置であって、
前記給水タンクは、前記加湿ユニットの下方に設けられており、
前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、給水動作を可能にする前記給水ポンプと排水弁を備えた給水管を介して前記加湿ユニットの下部で連通され、
前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、前記吸気弁を備えた排水管を介して前記加湿ユニットの上部で連通され、
前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられていることを特徴とする、加湿機装置に関する。
【0018】
請求項9に係る発明は、前記給排水管の上部には洗浄液又は除菌液を含む洗浄又は除菌タンクが設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の加湿機装置に関する。
【0019】
請求項10に係る発明は、前記吸排気管には洗浄液及び/又は除菌液が含まれる洗浄及び/又は除菌タンクが設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の加湿機装置に関する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、枠体と、2枚の吸水膜と、通水口とを含む加湿エレメントであって、前記枠体は薄板を中抜きにした形状であり、前記枠体は、該枠体の一対の対向する辺の一方の辺から他方の辺に向かって、及び他方の辺から一方の辺に向かって夫々伸びる複数のくし刃を備え、前記2枚の吸水膜は、前記枠体の中抜き部分を覆うように前記枠体の両面に夫々固定され、前記2枚の吸水膜に覆われた枠体の中抜き部分には液流路が形成され、前記通水口が、前記枠体の上部の辺及び下部の辺に設けられ、前記液流路と連通しているため、加湿エレメントを1つの枠体で形成することができ、加湿エレメントの厚みを減らすことができる。それゆえに、単位容積あたりにおける有効膜面積を増加させることができ、加湿能力を高めることができる。
加えて、加湿エレメントの部品点数を削減することができるため、製造コストを削減することが出来、且つ製造に手間がかからない。
さらに、枠体の両面に吸水膜を固定しているため、加湿エレメント内の加湿用水による水頭圧が枠体両面の吸水膜を引き剥がす方向に働いて釣り合い、枠体の変形による加湿エレメントの膨らみを防止できる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、前記複数のくし刃が、前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びているため、加湿エレメントの液流路の距離(流路の面積)を長くすることができ、液流路を流れる水の吸水効率を高めることができる。
さらに、くし刃を一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びるように設けることで、加湿エレメントの下部に設けられた通水口から供給された水をより容易に加湿エレメントの上部まで供給することができる。
加えて、くし刃を一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びるように設けることで、液流路を確保しつつ、枠体に吸水膜をより容易に固定することができ、吸水膜の形状をより容易に保持することができる。
また、加湿用水を蛇行させながら液流路に流すことによって、液流路内を加湿用水が均一に流れることができ、液流路内に気泡が溜まることを防止することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、前記一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びる複数のくし刃の突出長さが、前記枠体の幅方向の長さの50%以上の長さであるため、ジグザグ形状の液流路を確保しつつ、吸水膜をより容易に枠体に固定することができ、より容易に請求項2に係る効果を奏することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、前記吸水膜が紙、不織布、あるいは布であるため、毛細管現象による単位容積あたりの含水能力の増加により、加湿能力を向上させることができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、前記枠体の一方の面の上部と、前記枠体の他方の面の下部とに夫々ヘッド部が設けられているため、ヘッド部により、吸水膜をより容易に固定することができる。
加えて、ヘッド部が枠体から吸水膜方向に突出している場合は、加湿エレメントを複数枚連接した際に、ヘッド部が隣り合う加湿エレメントの枠体に接触し、加湿エレメントの吸水膜間に空気を通すためのスペースを形成することができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加湿エレメントと、前記加湿エレメントが複数枚格納されている筐体とを含む加湿ユニットであって、前記筐体内には、前記複数枚の加湿エレメントが通風路を形成するように間隔を開けながら直列及び/又は並列に複数枚連接されており、前記複数枚の加湿エレメントの下方には下部通水路が設けられ、前記複数枚の加湿エレメントの上方には上部通水路が設けられ、前記筐体には該筐体の外部と下部通水路とを連通させる給排水口が設けられ、前記筐体には該筐体の外部と上部通水路とを連通させる吸排気口が設けられているため、給排水口から加湿ユニットの下部に加湿用水を流すことで、下部通水路に加湿用水が流れ、加湿用水が加湿エレメントの内部の液流路を上昇して上部通水路に流れ、加湿ユニット内を加湿用水で容易に満たすことができる。
加えて、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加湿エレメントを用いているため、優れた加湿能力を有する加湿ユニットを提供できる。
さらに、加湿エレメントが1つの枠体からなるため、所望の加湿能力を有する加湿機装置とする場合に、従来よりも加湿機装置のサイズを小さくすることができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、請求項6に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、排水タンクと、吸排気管とを含む加湿機装置であって、前記加湿ユニットと、前記給水タンクと、前記排水タンクとが、給水動作及び排水動作を可能にする手段を備えた給排水管を介して前記加湿ユニットの下部で互いに連通され、前記加湿ユニットの上部には前記吸排気菅が連結され、前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられているため、単位容積あたりにおける有効膜面積を増加させることができ、加湿機装置の加湿能力を高めることができる。
また、給水タンクが給水動作及び排水動作を可能にする手段を備えた給排水管と取り込み排出部を介して前記加湿ユニットの下部で連通されているため、加湿エレメントへの給排水を容易且つスムーズに行うことができる。
加えて、加湿ユニットの上部には吸排気管が連結されているため、加湿用水の給水時には吸排気管から空気を抜くことができ、加湿用水の排水時には吸排気管から空気を吸気することができるため、容易且つ迅速に加湿用水を加湿ユニットに給水すること及び加湿ユニットから排水することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、請求項6に記載の加湿ユニットと、給水タンクと、給水ポンプと、吸気管とを含む循環式の加湿機装置であって、前記給水タンクは、前記加湿ユニットの下方に設けられており、前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、給水動作を可能にする前記給水ポンプと排水弁を備えた給水管を介して前記加湿ユニットの下部で連通され、前記加湿ユニットと前記給水タンクとが、前記吸気弁を備えた排水管を介して前記加湿ユニットの上部で連通され、前記加湿ユニットの前記通風路に通風するためのファンが設けられているため、単位容積あたりにおける有効膜面積を増加させることができ、循環式加湿機装置の加湿能力を高めることができる。
給水動作を可能にする手段を備えた給水管を介して給水タンクが加湿ユニットの下部で連通されているため、加湿エレメントへの給水を容易且つスムーズに行うことができる。
さらに、給水管には排水弁が設けられているため、加湿エレメントの排水を容易且つスムーズに行うことができる。
加えて、加湿ユニットの上部には排水管が連結されており、この排水管は給水タンクにも連結されているため、加湿ユニットから排水された加湿用水を繰返し加湿用水として使用することができる。
また、排水管には吸気弁が連結されているため、加湿用水の排水時には吸気弁から空気を入れることができ、容易且つ迅速に加湿用水を加湿ユニットから排水することができる。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、前記給排水管の上部には洗浄液又は除菌液を含む洗浄又は除菌タンクが設けられているため、給排水管を介して、洗浄液又は除菌液を容易に加湿ユニットに送達することができ、加湿機装置にタンクを別途取り付ける等の煩雑な作業を必要とせずに、容易に加湿機装置を洗浄又は除菌することができる。
【0029】
請求項10に係る発明によれば、前記吸排気管には洗浄液及び/又は除菌液が含まれる洗浄及び/又は除菌タンクが設けられているため、吸排気管を介して、洗浄液及び/又は除菌液を容易に加湿ユニットに送達することができ、加湿機装置にタンクを別途取り付ける等の煩雑な作業を必要とせずに、容易に加湿機装置を洗浄及び/又は除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の加湿エレメントの枠体を示す概略斜視図である。
図2】本発明の加湿エレメントの構成を示す概略斜視図である。
図3】本発明の加湿エレメントを示す図であって、(a)は加湿エレメントの概略斜視図、(b)は加湿エレメントの概略側面図である。
図4】本発明の加湿エレメントを用いた加湿ユニットを示す図であって、(a)は加湿ユニットの概略斜視図、(b)は加湿ユニットの構成を示す概略斜視図である。
図5】本発明の加湿ユニットの説明図である。
図6】本発明の加湿ユニットを用いた加湿機装置の説明図であって、(a)は加湿機装置の構成を示す説明図、(b)は加湿機装置の送風系を示す説明図である。
図7】本発明の加湿ユニット内の加湿エレメントにおける加湿用水の流れを示す説明図であって、(a)は加湿エレメントの液流路における加湿用水の流れを示す概略斜視図、(b)は加湿エレメント下部における加湿用水の流れを示す概略斜視図、(c)は加湿エレメント上部における加湿用水の流れを示す概略斜視図である。
図8】本発明の加湿ユニット上部通水路での水の流れを示す説明図である。
図9】本発明の加湿機装置における加湿ユニットへの給排水の一例を示す説明図である。
図10】本発明の加湿機装置の給排水管から洗浄液又は除菌液を流して加湿機装置を洗浄又は除菌する動作を示す説明図である。
図11】本発明の加湿機装置の吸排気管から洗浄液及び/又は除菌液を流して加湿機装置を洗浄及び/又は除菌する動作を示す説明図である。
図12】本発明の循環式の加湿機装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る加湿エレメントの好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の加湿エレメントの枠体を示す概略斜視図、図2は本発明の加湿エレメントの構成を示す概略斜視図、図3は本発明の加湿エレメントを示す図であって、(a)は加湿エレメントの概略斜視図、(b)は加湿エレメントの概略平側面図である。
【0032】
図2に示す如く、本実施形態に係る加湿エレメント(1)は、枠体(2)と、2枚の吸水膜(3)と、通水口(4)とを含む。
図1に示す如く、枠体(2)は、薄板を中抜きにした形状であり、枠体(2)の一対の対向する辺の一方の辺(21)から他方の辺(22)に向かって、及び他方の辺(22)から一方の辺(21)に向かって夫々伸びる複数のくし刃(2B)を備えている。
尚、枠体(2)の形状は、中抜き部(25)とくし刃(2B)を有し、中抜き部(25)に液流路(F)(図3の(a)参照)を形成できる形状であればよく、例えば、正面視略正方形状や楕円形状等、いかなる形状であっても良いが、加湿機装置(6)の容積あたりの透湿膜面積を大きく取るとることができる、正面視略矩形状であることが望ましい。
【0033】
枠体(2)の寸法は、本発明に係る加湿エレメント(1)を使用する加湿機装置(6)の大きさに応じて適宜設定することができる。
例えば、枠体(2)の厚みは0.5~10mm程度、長手方向の長さ(L)は20~500mm程度、幅方向の長さ(W)は20~500mm程度である。枠体(2)の厚みは薄いほど、加湿機装置の容積あたりの吸水シート面積が大きくなり加湿効率が高くなるが、0.5mmよりも薄いと、圧力損失が高くなりすぎるとともに、加湿エレメントの強度が不足して水圧によりエレメントが変形するという問題が生じる虞がある。
尚、枠体(2)(すなわち加湿エレメント(1))の形状は特に限定されず、円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、矩形状、あるいはこれらの1種以上の組み合わせ等、いかなる形状であってもよい。
【0034】
枠体(2)の材質は、特に限定されないが、例えばABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、結晶性ポリスチレン等の脂肪族ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン66、ナイロン6、POM、PPS、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネート等のプラスチックや、アルミニウム、ステンレススチール、チタン等の金属合金材料を使用することができ、加湿エレメントとして通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0035】
くし刃(2B)は、枠体(2)の一対の対向する辺の一方の辺(21)から他方の辺(22)に向かって、及び他方の辺(22)から一方の辺(21)に向かって夫々伸びるように設けられている。
くし刃(2B)は、枠体(2)と一体的に設けられていても良く、別体として設けられていても良い。別体として設ける場合は、接着、熱融着、溶接等の方法を用いることができる。
【0036】
図1に示す如く、くし刃(2B)は、一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びるように設けられている。枠体(2)に、一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びるようにくし刃(2B)を設けることで、吸水膜(3)の枠体(2)及びくし刃(2B)に対する接着面積を増加させることができ、これによって、容易且つ強固に吸水膜(3)を枠体(2)に接着(もしくは溶着)させることができ、吸水膜(3)を枠体(2)の外に引き剥がす方向への応力を分散することができるため、加湿エレメント(1)を長期間に亘って安定に使用することができる。
また、加湿エレメント(1)の液流路(F)(図3の(a)参照)の距離を長くすることができ、液流路(F)を流れる水の吸水効率を高めることができる。
さらに、くし刃(2B)を一対の対向する辺の両辺(21、22)から互い違いに伸びるように設けることで、加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から供給された加湿用水をより容易に加湿エレメント(1)の上部まで供給する(吸い上げる)ことができる。
くし刃(2B)と吸水膜(3)は直接又は他の部材を介して、接着あるいは熱融着により接着しても良い。くし刃(2B)と吸水膜(3)を接着あるいは熱融着させることにより、吸水膜(3)が加湿エレメント(1)の液流路(F)を流れる加湿用水によって膨らみ過ぎることを防止することができる。これによって、加湿エレメントの膨らみを防止するストッパー等が不要となり、空気の流路を大きく確保することができるため通過風量の低下を最小限に抑えることができ、またストッパー等のコストを抑えることができる。
【0037】
一対の対向する辺の両辺(21、22)から互い違いに伸びる複数のくし刃(2B)の突出長さは、枠体(2)の幅方向の長さ(W)の50%以上の長さであることが望ましい。くし刃(2B)の枠体(2)の幅方向の長さ(W)の50%以上の長さとすることにより、吸水膜(3)の枠体(2)及びくし刃(2B)に対する接着面積を増加させることができ、吸水膜(3)を枠体(2)の外に引き剥がす方向への応力を分散することができるため、加湿エレメント(1)を長期間に亘って安定に使用することができる。
また、くし刃(2B)の突出長さは、くし刃(2B)によって形成される液流路(F)の幅が一定になる長さであることが最も望ましい。液流路(F)の幅を一定にすることにより、より容易且つ安定に加湿用水を加湿ユニット(5)に供給することができる。
一対の対向する辺の両辺から互い違いに伸びる複数のくし刃(2B)の突出長さが、枠体(2)の幅方向の長さ(W)の50%未満(即ち、互い違いに伸びる複数のくし刃(2B)の先端が重なり合わない長さ)である場合、上記効果を奏することができないため、好ましくない。
より容易に液流路(F)を流れる加湿用水の吸水効率を高めることができ、且つ加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から供給された水をより容易に加湿エレメント(1)の上部まで供給することができる。
【0038】
くし刃(2B)は、枠体(2)の一対の対向する辺の両辺(21、22)からくし刃(2B)の突出端にかけて先細りする形状であることが望ましい。この形状により、くし刃(2B)の上方に存在する加湿用水がくし刃(2B)表面の傾斜によって、くし刃(2B)の突出端側に流れやすくなるため、排水時に水が残留し難くなる。
【0039】
くし刃(2B)の枚数は、一方の辺(21)と他方の辺(22)に夫々10~20枚設けられていることが望ましい。くし刃(2B)の数を10~20枚とすることにより、加湿エレメント(1)の膜有効面積を大きく減少させずに加湿エレメント(1)の液流路(F)の距離を長くすることができ、液流路(F)を流れる水の吸水効率を高めることができ、且つ加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から供給された水をより容易に加湿エレメント(1)の上部まで供給することができる。
加えて、吸水膜(3)の枠体(2)及びくし刃(2B)に対する接着面積を増加させることができ、吸水膜(3)を枠体(2)の外に引き剥がす方向への応力を分散することができるため、加湿エレメント(1)を長期間に亘って安定に使用することができる。
しかしながらくし刃(2B)の枚数はこれに限定されず、加湿エレメントの寸法によって適宜くし刃(2B)の枚数は選択され、叙上の効果を奏することができる数であれば、任意の数を設けてもよい。
【0040】
くし刃(2B)の材質は、特に限定されないが、例えばABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、結晶性ポリスチレン等の脂肪族ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン66、ナイロン6、POM、PPS、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネート等のプラスチックや、アルミニウム、ステンレススチール、チタン等の金属合金材料を使用することができ、加湿エレメントとして通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。枠体(2)と同じ材料を使用してもよいし、別の材料を使用してもよい。
【0041】
2枚の吸水膜(3)は枠体(2)の中抜き部分(25)を覆うように枠体(2)の両面に夫々固定される。
2枚の吸水膜(3)に覆われた枠体(2)の中抜き部分(25)が液流路(F)となる。
枠体(2)に吸水膜(3)を固定する方法は、特に限定されず、枠体(2)の成形時に吸水膜(3)と一体成型によって固定する方法や、ホットメルト接着剤、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エポキシ、シリコーン、溶剤、アクリル等の接着剤を用いて枠体に接着固定する方法、超音波融着、高周波融着、熱融着等の方法によって融着する方法等、当業者に自明の方法であれば、いかなるものでも用いることができる。
【0042】
吸水膜(3)は、紙、不織布、又は布、あるいはこれらの組み合わせであることが望ましい。吸水膜(3)に紙、不織布、又は布、あるいはこれらの組み合わせを用いることにより、毛細管現象による単位容積あたりの含水能力の増加により、加湿能力を向上させることができる。
吸水膜(3)に用いる紙、不織布、又は布は、特に限定されず、加湿用水を吸って保持しながら、吸水膜(3)の表面から水を蒸発させることが出来るもの(即ち、吸水性または保水性を有するもの)であればいかなるものでも用いることができる。
吸水膜(3)に用いる紙として、吸水性あるいは親水性を有する紙等が挙げられ、より具体的には、パルプ製の紙等が挙げられるが、これに限定されず、当業者に自明のものであり、吸水膜として使用できるものであればいかなるものでも用いることができる。
吸水膜(3)に用いる不織布として、綿、麻など天然スパン糸による不織布、化学繊維による不織布等が挙げられ、より具体的には、アクリル繊維、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリイミド、フッ素樹脂、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維等を含む不織布が挙げられるが、これに限定されず、当業者に自明のものであり、吸水膜として使用できるものであればいかなるものでも用いることができる。
吸水膜(3)に用いる布として、吸水性あるいは親水性を有する布等が挙げられ、より具体的には、ポリエステルモノフィラメント等を含むフィラメント糸を編成した布(三次元構造が好ましい)が挙げられるが、これに限定されず、当業者に自明のものであり、吸水膜として使用できるものであればいかなるものでも用いることができる。
【0043】
吸水膜(3)は叙上の通り、紙、不織布、又は布、あるいはこれらの組み合わせであることが望ましいが、水等の液体は通過させず水蒸気は透過させる防水透湿機能を持つ、例えば、多孔質性の高分子材料等の透湿性の膜を用いても良い。透湿性の膜としては、特定のものに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の疎水性多孔質膜等、防水透湿膜として通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。また、複数の原料を組み合わる、あるいは繊維長や太さなどの形状を調整することにより、目的・用途に応じた機能を持たせることもできる。
【0044】
また、吸水膜(3)は積層構造としても良い。例えば、吸水膜と保護シートを積層したものを用いることができる。保護シートとしては、織物、編物、不織布、ネット、発泡シート、多孔質フィルム等の形態とすることができるが、織布、編物、不織布が、補強効果に優れ、柔軟で安価であるため好ましく用いられる。また、その材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料や、金属、ガラス等を用いることができる。
保護シートを用いる場合、その厚みは5μm~5mm、好ましくは10μm~1mm程度とすることが好ましい。厚みが5μm未満では保護シートの保護機能が不十分となり、5mmを超えると吸水膜の厚みが厚くなり、加湿機が大型化してしまう。
保護シートは、吸水膜の片面に積層しても、また両面に積層してもよいが、片面に保護シートを積層し、吸水膜を空気側に向けて使用するほうが加湿効率に優れているため好ましい。これは空気側が吸水膜の場合、空気側の拡散抵抗が低いため、透湿膜を通過した水蒸気が空気中に速やかに拡散するためである。
【0045】
保護シートと吸水膜を積層する方法としては、吸水膜にグラビアパターンを施したロールで接着剤を塗布し、その上に保護シートを合わせてロールで圧着する方法、吸水膜に接着剤をスプレーし、その上に保護シートを合わせてロールで圧着する方法、吸水膜と保護シートを重ね合わせた状態で、ヒートロールにより熱融着する方法等、通常用いられ、当業者に自明である方法であれば、いかなるものでも用いることができる。
接着剤を用いる場合、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エポキシ、シリコーン等の接着剤を用いることができるが、これに限定されず、例えば、瞬間系、ホットメルト系、2液常温硬化樹脂系、熱硬化性樹脂系、エラストマー系、熱可塑性樹脂系、弾性系、エマルジョン系等の接着剤を用いることもできる。
吸水膜と保護シートの接着面積は、3~95%、好ましくは10~50%である。接着面積が3%未満では吸水膜と保護シートとの接着強度が不十分となり、95%を超えると十分な加湿性能が得られない。
【0046】
吸水膜(3)として透湿性の膜を用いる場合、その透湿度は高いほど好ましいが、通常は、5000~150000g/m2・day、好ましくは10000~100000g/m2・day、さらに好ましくは20000~70000g/m2・dayである。透湿度の測定方法は、JIS 1099-B1法による。
【0047】
図1に示す如く、通水口(4)は、枠体(2)の上部の辺(23)及び下部の辺(24)に設けられ、液流路(F)(図3の(a)参照)と連通している。
図2に示す如く、ヘッド部(4H)は、枠体(2)の一方の面の上部と、枠体(2)の他方の面の下部とに夫々固定される(図3の(a)参照)。また、ヘッド部(4H)は、枠体(2)よりも厚いことが望ましい。
このように、ヘッド部(4H)を枠体(2)の一方の面の上部と、枠体(2)の他方の面の下部とに夫々設けることで、ヘッド部(4H)がスペーサーとなり、加湿エレメント(1)を複数直列方向に並べた際に、隣接する加湿エレメント(1)間の距離を決めることができ、加湿エレメント(1)間に通風路(P)を形成することが出来る(図5参照)。
また、ヘッド部(4H)は、枠体(2)とは別体として設けることが望ましい。別体とすることにより、ヘッド部(4H)の厚みを変更することにより、エレメント間の距離(即ち、通風路(P)の幅)を所望の距離に設定することができる。
さらに、ヘッド部(4H)を設けることにより、枠体(2)(特に、通水口(4)付近)を補強することができる。
【0048】
通水口(4)を枠体(2)の下部に設け、後述する給水タンク(7)を加湿エレメント(1)よりも高い位置に配置することで、加湿エレメント(1)の下部に加湿用水を供給した際に、加湿用水が水頭圧(ヘッド)によって加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から液流路(F)に流入し、液流路(F)内を上昇する(すなわち、供給された加湿用水が加湿エレメント(1)の上部に達する)ことができる。
加湿用水の排水時には、通水口(4)が枠体(2)の下部に設けられているため、加湿用水の自重により、容易に加湿用水を枠体(2)の下部に設けられた通水口(4)から排出することができる。
【0049】
上記の通り、本発明に係る加湿エレメント(1)は、1枚の枠体(2)から構成されているため、2枚の枠体から構成される従来の加湿エレメントよりも厚みを薄くすることができる。それゆえに、本発明に係る加湿エレメント(1)を加湿ユニットに用いた場合、加湿ユニットが同一の外形寸法を有する場合や、加湿ユニット内に同一のエレメント枚数を設置する場合に、加湿エレメント間の通風路を、2枚の枠体から構成される従来の加湿エレメントよりも広く形成することができる。
さらに、本発明に係る加湿エレメント(1)は、外リブ構造(即ち、枠体の外側から吸水膜を固定するために枠体の外側に設けられたリブ構造)を有しておらず、加湿エレメント(1)の厚み方向への突起物が少ないため、従来の外リブ構造を有する加湿エレメントよりも通風路を広く形成することができる。
【0050】
以下、本発明に係る加湿エレメント(1)を用いた加湿ユニット(5)の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明の加湿エレメントを用いた加湿ユニットを示す図であって、(a)は加湿ユニットの概略斜視図、(b)は加湿ユニットの構成を示す概略斜視図である。図5は、本発明の加湿ユニットの説明図である。
【0051】
図4の(a)及び(b)に示す如く、本発明に係る加湿ユニット(5)は、本発明に係る加湿エレメント(1)と、トレー部(5T)及びサイド部(5S)を含む筐体(5C)とを含む。
より具体的には、筐体(5C)には、複数枚の加湿エレメント(1)が通風路(P)を形成するように間隔を開けながら直列(即ち、加湿エレメント(1)の厚さ方向)及び/又は並列(即ち、加湿エレメント(1)の幅方向)に複数枚連接されており、複数枚の加湿エレメント(1)の下方には下部通水路(CL)が設けられ、複数枚の加湿エレメント(1)の上方には上部通水路(CU)が設けられている(図5参照)。
筐体(5C)のサイド部(5S)には筐体(5C)の外部と下部通水路(CL)とを連通させる給排水口(51)、又は筐体(5C)の外部と上部通水路(CU)とを連通させる吸排気口(52)が設けられている(図5参照)。
下部通水路(CL)及び上部通水路(CU)は、連接された加湿エレメント(1)の通水口(4)同士が連結することによって形成される。
トレー部(5T)は、複数枚の加湿エレメント(1)を固定するために加湿エレメントの上方及び下方に夫々設けられている。サイド部(5S)は、複数枚の加湿エレメント(1)を固定するため、並びに叙上の給排水口(51)及び吸排気口(52)を設けるために、筐体(5C)内に連接される加湿エレメント(1)の両端の加湿エレメント(1)に取り付けられる。
加湿ユニット(5)の寸法は特に限定されず、複数枚の加湿エレメント(1)を連接(即ち、厚み方向に隣り合う加湿エレメントにおいて、一方の加湿エレメントのヘッド部と他方の加湿エレメントの枠体が接触するように固定/接着されている状態)して格納することができる寸法(例えば、120枚の加湿エレメント(1)を連接して格納できる寸法等)であれば、いかなる寸法であっても良い。
【0052】
図4の(a)に示す如く、加湿ユニット(5)は略直方体形状を呈しているが、これに限定されず、例えば、略立方体形状等、加湿ユニット(5)内に設けられる加湿エレメント(1)の形状や加湿ユニット(5)の設置場所に合わせて、所望の形状や寸法とすることができる。上述したように、加湿エレメント(1)の形状は正面視略矩形状に限定されるものではなく、これ以外の形状になり得ることは言うまでもない。
例えば、加湿ユニット(5)の寸法を、加湿エレメント(1)を幅方向に2枚設置することが出来る寸法とし、加湿エレメント(1)を厚み方向に5枚設置することができる寸法とすることで、加湿エレメント(1)を、通風間隔を開けながら、並列に2つ、直列に夫々5つ設けることができる。
【0053】
以下、本発明に係る加湿ユニットを用いた加湿機装置(6)の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明の加湿ユニットを用いた加湿機装置の説明図であって、(a)は加湿機装置の構成を示す説明図、(b)は加湿機装置の送風系を示す説明図である。
【0054】
図6の(a)及び(b)に示す如く、本実施形態に係る加湿機装置(6)は、加湿ユニット(5)と、給水タンク(7)と、排水タンク(8)と、吸排気管(9)とを含む。
より詳しくは、加湿ユニット(5)と、給水タンク(7)と、排水タンク(8)とが、給水動作を可能にする手段(10)及び排水動作を可能にする手段(11)を備えた給排水管(12)を介して加湿ユニット(5)の下部(即ち、給排水口(51))で互いに連通され、加湿ユニット(5)の上部(即ち、吸排気口(52))には吸排気菅(9)が連結され、加湿ユニット(5)の通風路(P)に通風するためのファン(13)が設けられている。
尚、本実施形態に係る加湿機装置(6)には、上記した構成以外に、加湿機装置(とりわけ、気化式加湿機装置)に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでもその構成に含めることができる。
【0055】
図6の(a)に示す如く、給水動作を可能にする手段(10)及び排水動作を可能にする手段(11)を備えた給排水管(12)とを介して、加湿ユニット(5)と、給水タンク(7)と、排水タンク(8)とが加湿ユニット(5)の下部(即ち、給排水口(51))で連通されている。
給排水管(12)が、給水動作を可能にする手段(10)及び排水動作を可能にする手段(11)を備えているため、手動あるいは自動で、給水タンク(7)からの給水動作と排水タンク(8)への排水動作を容易に切り替えることができる。
尚、給水動作を可能にする手段(10)及び排水動作を可能にする手段(11)は、例えば、電磁弁や電動弁等の自動で開閉操作をするもの、あるいは手動で開閉操作をするもの等、給排水用管等に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0056】
図6の(a)に示す如く、加湿ユニット(5)の上部には、吸排気菅(9)が連結されている。
吸排気管(9)は、加湿ユニット(5)の吸排気口(52)に連結されている。
吸排気管(9)が加湿ユニット(5)の吸排気口(52)に連結されることにより、給水タンク(7)から加湿ユニット(5)に加湿用水を供給する際に、加湿ユニット(5)内の空気を吸排気管(9)より排出することができ、加湿ユニット(5)内に容易且つ迅速に加湿用水を供給することができる。
加えて、吸排気管(9)が加湿ユニット(5)の吸排気口(52)に連結されることにより、加湿ユニット(5)内に給水された加湿用水を排水タンク(8)に排出する際に、吸排気管(9)より加湿ユニット(5)内に空気を供給(吸気)することができ、容易且つ迅速に加湿用水を加湿ユニット(5)内より排出することができる。
【0057】
給水タンク(7)は、給排水管(12)と連結されており、加湿ユニット(5)よりも上方に設けられている。加湿ユニット(5)よりも上方に給水タンク(7)を設けることで、水の自重によりモータ等を使わずに、給排水口(51)から加湿ユニット(5)内に加湿用水を供給することができる。
加えて、給水タンク(7)を加湿ユニット(5)よりも上方に設けることで、給排水口(51)から加湿ユニット(5)内に加湿用水を供給することによって、下部通水路(CL)に流入した加湿用水が、水頭圧によって加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から液流路(F)を通って、加湿エレメント(1)内を上昇し(すなわち、供給された加湿用水が加湿エレメント(1)の上部に達する)、加湿エレメント(1)の上部に設けられた通水口(4)を通って、上部通水路(CU)に達し、加湿ユニット(5)内を満たすことができる。
即ち、加湿ユニット(5)よりも上方に給水タンク(7)を設けることで、水頭圧により、加湿用水を、給水タンク(7)内の水位と同じ高さまで上昇させることができる。これにより、モータや電動ポンプ等を使用せずとも、容易に加湿ユニット(5)内を常時加湿用水で満たすことができる。また、加湿用水は水頭圧により、加湿用水は、給水タンク(7)内の水位と同じ水位まで常に供給され続けるため、加湿運転により減少した加湿用水の分だけ、加湿用水を供給し続けることができる。
【0058】
給水タンク(7)の材質や寸法等は特に限定されず、加湿機装置(6)のサイズや設置場所に合わせて適宜選択され得、給水タンクとして通常用いられているもので、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
尚、加湿用水として用いる水は水道水で良いが、蒸留水や井戸水等の天然水等、加湿ユニットに供給されても加湿機装置(6)に不具合が生じないものであれば、いかなるものを用いても良い。
また、モータや電動ポンプ等を用いることにより、加湿ユニット(5)よりも下方に給水タンク(7)を設置することもできる(図12参照)。
【0059】
排水タンク(8)は、給排水管(12)と連結されており、加湿ユニット(5)よりも下方に設けられている。加湿ユニット(5)よりも下方に排水タンク(8)を設けることで、水の自重によりモータや電動ポンプ等を使わずに加湿ユニット(5)内の加湿用水を排水タンク(8)に排出することができる。
排水タンク(8)の材質や寸法等は特に限定されず、加湿機装置(6)のサイズや設置場所に合わせて適宜選択され得、排水タンクとして通常用いられているもので、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0060】
尚、給排水管(12)は、給水管(図示せず)と排水管(図示せず)のように、それぞれ別の部材として設けても良い。
つまり、加湿ユニット(5)と給水タンク(7)とが、給水動作を可能にする手段(例えば、バルブを備えた排水管等)を備えた給水管と給水口(図示せず)を介して加湿ユニット(5)の下部で連通され、加湿ユニット(5)と排水タンク(8)とが、排水動作を可能にする手段(例えば、バルブを備えた排水管等)を備えた排水管と排出口(図示せず)を介して加湿ユニット(5)の下部でそれぞれ連通されていても良い。
この場合、給水管は排水管よりも加湿ユニット(5)の上部に設けられていることが望ましいが、これに限定されず、加湿ユニット(5)に給排水できる配置であれば、いかなる配置であってもよい。
【0061】
図6の(b)に示す如く、ファン(13)は、例えば、加湿ユニット(5)の前面下部に設けられる。加湿ユニット(5)の前面から供給された空気は、加湿エレメント(1)間の通風路(P)を通る際に吸水膜(3)に吸水された加湿用水の水蒸気を含み加湿される。加湿された空気は、そのまま通風路(P)を通り抜け、加湿ユニット(5)の背面に抜ける。尚、図6の(b)中の矢印は、ファン(13)によって供給される空気の流れを示す。
また、加湿ユニット(5)の前面及び/又は背面に、通風用のダクトを設けても良い。ダクトの形状等は特に限定されず、加湿された空気を加湿ユニット(5)外に供給できるものであれば、いかなるものであっても良い。
尚、ファン(13)の配置場所は特に限定されず、空気を加湿ユニット(5)の通風路(P)に送風することができ、送風した空気に吸水膜(3)が吸水した加湿用水の水蒸気を含ませて空気を加湿し、加湿した空気を加湿機装置(6)の外部に供給することができる配置であれば、いかなる位置に配置しても良い。
本実施形態に係る加湿機装置(6)に用いるファン(13)の種類等は特に限定されず、例えば、シロッコファン、遠心送風機、軸流送風機、斜流送風機、横断流送風機等、加湿機装置に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものを用いても良い。
また、ファン(13)による空気の供給方式は特に限定されず、吹き当て方式や吸い出し方式等、加湿ユニット(5)に空気を供給でき、加湿された空気を加湿ユニット(5)外に供給できるものであれば、いかなるものであっても良い。
【0062】
以下、加湿ユニット(5)及び加湿ユニット(5)内に連接される加湿エレメント(1)における加湿用水及び空気の流れについて説明する。
図7は、本発明の加湿ユニット内の加湿エレメントにおける加湿用水の流れを示す説明図であって、(a)は加湿エレメントの液流路における加湿用水の流れを示す概略斜視図、(b)は加湿エレメント下部における加湿用水の流れを示す概略斜視図、(c)は加湿エレメント上部における加湿用水の流れを示す概略斜視図である。図8は、本発明の加湿ユニット上部における加湿用水の流れを示す説明図である。
【0063】
加湿ユニット(5)に加湿用水を供給する際の加湿用水の流れについて説明する。
給水タンク(7)から供給された加湿用水は、加湿ユニット(5)の給排水口(51)から加湿ユニット(5)内に供給され、下部通水路(CL)に流入し、水頭圧により加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から液流路(F)内に供給され、液流路(F)を上昇する(図6の(a)、図7の(a)及び(b)参照)。加湿用水が液流路(F)の上端に達すると、加湿エレメント(1)の上部に設けられた通水口(4)から上部通水路(CU)に加湿用水が供給され、上部通水路(CU)と連通する吸排気口(52)から吸排気管(9)に加湿用水が供給される(図6の(a)、図7の(c)及び図8参照)。尚、図7及び図8中の矢印は加湿用水の流れを示している。
【0064】
加湿ユニット(5)から加湿用水を排出する際の加湿用水の流れについて説明する。
排水動作を可能にする手段(11)を操作して排水タンク(8)に加湿用水を排出する。吸排気管(9)に供給された加湿用水が、吸排気口(52)から上部通水路(CU)に排出され、上部通水路(CU)から加湿エレメント(1)の上部に設けられた通水口(4)を通り、液流路(F)に排出される(図7の(c)参照)。さらに、加湿用水は液流路(F)を下降し、加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から下部通水路(CL)に排出され、下部通水路(CL)から加湿ユニット(5)の給排水口(51)を通り、給排水管(12)から排水タンク(8)に排出される(図7の(a)及び(b)参照)。
【0065】
次に、本発明に係る加湿ユニット(5)の給排水に関する動作を説明する。
図9は、本発明の加湿機装置における加湿ユニットへの給排水の一例を示す説明図である。
【0066】
図9の(a)は、本発明に係る加湿ユニット(5)に加湿用水が一切供給されていない様子(即ち、ユニットドライ)を示す図である。加湿用水が加湿ユニット(5)に一切供給されていないこの状態は、例えば加湿機の運用開始時や空気清浄運転をしている時の状態である。
この図9の(a)の状態で、給水動作を可能にする手段(10)を操作して給水タンク(7)と加湿ユニット(5)を連通させることにより、図9の(b)に示す如く、加湿用水が給排水管(12)を通って加湿ユニット(5)の給排水口(51)から加湿ユニット(5)の下部通水路(CL)に供給される。図9の(b)は、下部通水路(CL)に供給された加湿用水が水頭圧により加湿エレメント(1)の下部に設けられた通水口(4)から液流路(F)に入り、液流路(F)を上昇している様子を示している。この際、加湿ユニット(5)内の空気が、加湿ユニット(5)内に供給された加湿用水に押し出されるが、押し出された空気が吸排気管(9)から加湿機装置外に排出されるため、給水がスムーズに行われる。
図9の(b)の状態から更に加湿用水が加湿ユニット(5)に供給されることにより、図9の(c)に示す如く、加湿ユニット(5)内が加湿用水で満たされる(即ち、ユニットウェット)。最終的に、加湿用水は、吸排気管(9)にまで達し、給水タンク(7)内の加湿用水の水位と同じ水位となる。
加湿運転中は図9の(c)に示す状態が維持され、加湿エレメント(1)間に形成された通風路(P)に空気が供給されることにより、吸水膜(3)に吸水された加湿用水によって空気が加湿される。
【0067】
次に、図9の(c)の状態から加湿ユニット(5)内の加湿用水を排水する動作について説明する。
まず、給水動作を可能にする手段(10)を操作して給水タンク(7)と加湿ユニット(5)を遮断する。続いて排水動作を可能にする手段(11)を操作して排水タンク(8)と加湿ユニット(5)を連通させる。これにより、図9の(d)に示す如く、加湿ユニット(5)に供給された加湿用水が自重により給排水管(12)を通って排水タンク(8)に排出される。
図9の(d)は、排水タンク(8)に加湿用水が排出されている様子を示しており、加湿ユニット(5)に供給された加湿用水が、加湿エレメント(1)の液流路(F)を下降している様子を示している。この際、加湿ユニット(5)内に、吸排気管(9)を介して加湿機装置(6)外の空気が加湿ユニット(5)内に流入することで、加湿用水の排出がスムーズに行われる。
加湿ユニット(5)内の加湿用水が完全に排出されることで、図9の(a)の状態に戻る。尚、図9中の矢印は加湿用水の流れを示す。
【0068】
次に、本発明に係る加湿機装置(6)の洗浄(除菌)機能の一例について説明する。
図10は、本発明の加湿機装置の給排水管から洗浄液又は除菌液を流して加湿機装置を洗浄又は除菌する動作を示す説明図である。
【0069】
図10に示す加湿機装置(6)の洗浄(除菌)動作の一例では、洗浄液又は除菌液を含む洗浄又は除菌タンク(14)が加湿ユニット(5)の上方に設けられている。
また、洗浄又は除菌タンク(14)は、給排水管(12)の上方に設けられ、給排水管(12)と連通されており、洗浄液又は除菌液の供給を可能にする手段(15)(例えば、バルブを備えた排水管等)によって、加湿ユニット(5)への供給が制御されている。
図10の(a)は、加湿ユニット(5)に加湿用水及び洗浄液又は除菌液が供給されていない状態(即ち、ユニットドライ)を示している。尚、この洗浄(除菌)機能の一例では、洗浄液又は除菌液はユニットドライの状態で加湿ユニット(5)に供給される。
図10の(a)の状態から、洗浄液又は除菌液の供給を可能にする手段(15)を操作して洗浄又は除菌タンク(14)と加湿ユニット(5)を連通させることにより、洗浄液又は除菌液が給排水管(12)を通って給排水口(51)から加湿ユニット(5)の下部通水路(CL)に供給される。下部通水路(CL)に供給された洗浄液又は除菌液が水頭圧により加湿エレメント(1)の通水口(4)から液流路(F)に入り、液流路(F)を上昇し、加湿ユニット(5)内が洗浄液又は除菌液で満たされる。最終的に、図10の(b)に示す如く、洗浄液又は除菌液は、吸排気管(9)にまで達し、洗浄又は除菌タンク(14)内の洗浄液又は除菌液の水位と同じ水位となる。
【0070】
加湿ユニット(5)内が洗浄液又は除菌液で満たされた状態を一定時間(例えば10分、30分、1時間、あるいは1時間以上等)保持した後、洗浄液又は除菌液を加湿ユニット(5)から排出する。洗浄液又は除菌液の排出は以下の手順で行う。
まず、洗浄液又は除菌液の供給を可能にする手段(15)を操作して洗浄又は除菌タンク(14)と加湿ユニット(5)を遮断する。続いて排水動作を可能にする手段(11)を操作して排水タンク(8)と加湿ユニット(5)を連通させる。これにより、加湿ユニット(5)に供給された洗浄液又は除菌液が自重により給排水管(12)を通って排水タンク(8)に排出される。
尚、加湿ユニット(5)内に残留した洗浄液又は除菌液を完全に取り除きたい場合等、必要に応じて、加湿用水の給排水によるすすぎを行っても良い。
このように、加湿機装置(6)に洗浄又は除菌タンク(14)を設けることで、加湿機装置(6)のメンテナンスを容易且つ迅速に行うことができる。この洗浄(除菌)動作によれば、加湿ユニット(5)内を洗浄液又は除菌液でつけ置きすることができる。そのため、かけ流しでは除去し難い、加湿用水に由来するカルシウム等の付着(沈着)を除去することができる。
また、タイマー等を加湿機装置(6)に設けることにより、任意のタイミングで容易に加湿ユニット(5)を洗浄又は除菌することができる。
なお、加湿機装置(6)の外部に洗浄又は除菌タンク(14)を設け、電動ポンプ等を用いて加湿ユニット(5)に洗浄液又は除菌液を供給して洗浄又は除菌を実施しても良い。
【0071】
次に、本発明に係る加湿機装置(6)の洗浄(除菌)機能のその他の例について説明する。
図11は、本発明の加湿機装置の吸排気管から洗浄液及び/又は除菌液を流して加湿機装置を洗浄及び/又は除菌する動作を示す説明図である。
【0072】
図11に示す加湿機装置(6)の洗浄(除菌)動作のその他の例では、洗浄液及び/又は除菌液が含まれる洗浄及び/又は除菌タンク(16)が加湿ユニット(5)の上方に設けられている。また、洗浄及び/又は除菌タンク(16)は、吸排気管(9)と連通されており、洗浄液及び/又は除菌液の供給を可能にする手段(17)(例えば、バルブを備えた給水管等)によって、加湿ユニット(5)への供給が制御されている。
図11の(a)は、加湿ユニット(5)が加湿用水で満たされている状態(即ち、ユニットウェット)で加湿運転している様子を示している。尚、この洗浄(除菌)動作のその他の例では、洗浄液及び/又は除菌液は、ユニットウェットの状態で加湿ユニット(5)に供給される。
図11の(a)の状態から、給水動作を可能にする手段(10)を操作して加湿用水の供給を停止させ、洗浄液及び/又は除菌液の供給を可能にする手段(17)を操作して洗浄及び/又は除菌タンク(16)と加湿ユニット(5)を連通させることにより、図11の(b)に示す如く、洗浄液及び/又は除菌液が、吸排気管(9)に供給される。
【0073】
加湿機装置(6)は加湿運転しているため、加湿ユニット(5)内の加湿用水は通風路(P)から蒸発し、加湿ユニット(5)内の加湿用水の水量は減少する。それゆえに、吸排気管(9)に供給された洗浄液及び/又は除菌液が、加湿ユニット(5)内の加湿用水の減少に伴い、吸排気口(52)から加湿ユニット(5)の上部通水路(CU)に供給され、上部通水路(CU)に供給された洗浄液及び/又は除菌液が、加湿エレメント(1)の通水口(4)から液流路(F)に入り、液流路(F)を下降する(図11の(c)参照)。
図11の(c)の状態で加湿運転を継続することで、加湿ユニット(5)内の加湿用水の水量はさらに減少し、加湿ユニット(5)内の加湿用水は、洗浄液及び/又は除菌液に完全に置換される(図11の(d)参照)。このように、加湿運転を行いながら、加湿用水を洗浄液及び/又は除菌液に徐々に置換することによって、加湿ユニット(5)内に洗浄液及び/又は除菌液を均質に満たすことができる。この洗浄(除菌)動作によれば、洗浄液及び/又は除菌液をかけ流し方式で加湿ユニット(5)に供給することができる。それゆえに、この洗浄(除菌)動作は、次亜塩素酸水等の、つけ置きよりもかけ流し方式で用いた方が有効である洗浄液及び/又は除菌液に好適に用いることができる。
【0074】
加湿ユニット(5)内が洗浄液及び/又は除菌液に完全に置換された後、洗浄液及び/又は除菌液を加湿ユニット(5)から排出する。洗浄液及び/又は除菌液の排出は以下の手順で行う。
まず、排水動作を可能にする手段(11)を操作して排水タンク(8)と加湿ユニット(5)を連通させる。これにより、加湿ユニット(5)に供給された洗浄液及び/又は除菌液が自重により給排水管(12)を通って排水タンク(8)に排出される。
尚、加湿ユニット(5)内に残留した洗浄液及び/又は除菌液を完全に取り除きたい場合等、必要に応じて、加湿用水の給排水によるすすぎを行っても良い。
このように、加湿機装置(6)に洗浄及び/又は除菌タンク(16)を設けることで、加湿機装置(6)のメンテナンスを容易且つ迅速に行うことができる。
また、タイマー等を加湿機装置(6)に設けることにより、任意のタイミングで容易に加湿ユニット(5)を洗浄及び/又は除菌することができる。
【0075】
本発明に係る加湿ユニット(5)を洗浄するための洗浄水としては、クエン酸等、気化式の加湿機装置の洗浄に通常用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
本発明に係る加湿ユニット(5)を除菌するための除菌水としては、電解次亜水、次亜塩素酸水、過酢酸水等、気化式の加湿機装置の除菌に通常用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0076】
次に、本発明に係る加湿機装置の変形例について説明する。より詳しくは、この変形例は、給水タンクと加湿ユニット間で加湿用水を循環させる加湿機装置に関する。
図12は、本発明の循環式の加湿機装置を示す説明図である。
【0077】
図12に示す如く、本発明に係る循環式の加湿機装置(6)は、加湿ユニット(5)と、給水タンク(7)と、給水ポンプ(18)と、吸気弁(21)とを含む。
より詳しくは、給水タンク(7)は、加湿ユニット(5)の下方に設けられ、加湿ユニット(5)と給水タンク(7)とが、給水動作を可能にする給水ポンプ(18)と排水弁(19)を備えた給水管(20)を介して加湿ユニット(5)の下部(即ち、給排水口(51))で連通され、加湿ユニット(5)と給水タンク(7)とが、吸気弁(21)を備えた排水管(22)を介して加湿ユニット(5)の上部(即ち、吸排気口(52))で連通され、加湿ユニット(5)の通風路(P)に通風するためのファン(13)が設けられている。
尚、本実施形態に係る加湿機装置(6)には、上記した構成以外に、加湿機装置(とりわけ、気化式加湿機装置)に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでもその構成に含めることができる。
【0078】
図12に示す如く、給水タンク(7)と加湿ユニット(5)は、給水管(20)を介して加湿ユニットの下部(即ち、給排水口(51))で連通されている。
給水管(20)には給水ポンプ(18)が設けられており、この給水ポンプ(18)によって、給水タンク(7)内の加湿用水が汲み上げられ、加湿ユニット(5)内に加湿用水が供給される。このように、本実施形態に係る加湿機装置(6)では、加湿用水の加湿ユニット(5)内への供給に給水ポンプ(18)を用いるため、加湿用水の供給に水頭圧を利用する必要がなくなり、給水タンク(7)を加湿ユニット(5)の上方に設けるという位置的制限をなくすことができる。
給水タンク(7)には、加湿用水の補給のための補給口(図示せず)等を設け、加湿運転により減少した加湿用水を容易に補給できるようにすることが望ましい。
給水タンク(7)の材質や寸法等は特に限定されず、加湿機装置(6)のサイズや設置場所に合わせて適宜選択され得、給水タンクとして通常用いられているもので、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0079】
給水ポンプ(18)による加湿用水の供給量は、加湿運転中における加湿ユニット(5)内の加湿用水の蒸発量よりも多い量であればよい。
尚、給水ポンプ(18)は、例えば、小型圧力タンク制御方式、大型圧力タンク制御方式、増圧直結方式、回転数制御方式、定圧方式等、加湿機装置等の給水に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0080】
給水管(20)には排水弁(19)が設けられており、排水弁(19)から排出された加湿用水は、給水タンク(7)に排出される。給水管(20)に排水弁(19)を設けることにより、加湿ユニット(5)内の加湿用水を容易且つ迅速に排出することができる。
尚、排水弁(19)は、例えば、電磁弁や電動弁等の自動で開閉操作をするもの、あるいは手動で開閉操作をするもの等、排水等に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0081】
図12に示す如く、加湿ユニット(5)と給水タンク(7)とが、吸気弁(21)を備えた排水管(22)を介して加湿ユニット(5)の上部(即ち、吸排気口(52))で連通されている。
これにより、加湿ユニットの下部から供給された加湿用水が、加湿ユニット(5)上部と連結されている排水管(22)を介して給水タンク(7)に排出される。そのため、給水タンク(7)の加湿用水を繰返し加湿に用いることができる。
吸気弁(21)は排水管(22)に設けられている。
これにより、加湿ユニット(5)内に給水された加湿用水を、排水弁(19)を介して給水タンク(7)に排出する際に、吸気弁(21)より加湿ユニット(5)内に空気を供給することができ、容易且つ迅速に加湿用水を加湿ユニット(5)内から排出することができる。
尚、吸気弁(21)は、例えば、電磁弁や電動弁等の自動で開閉操作をするもの、あるいは手動で開閉操作をするもの等、吸気等に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0082】
ファン(13)は、例えば、加湿ユニット(5)の前面下部に設けられる。加湿ユニット(5)の前面から供給された空気は、加湿エレメント(1)間の通風路(P)を通る際に吸水膜(3)に吸水された加湿用水の水蒸気を含み加湿される。加湿された空気は、そのまま通風路(P)を通り抜け、加湿ユニット(5)の背面に抜ける。
また、加湿ユニット(5)の前面及び/又は背面に、通風用のダクトを設けても良い。ダクトの形状等は特に限定されず、加湿された空気を加湿ユニット(5)外に供給できるものであれば、いかなるものであっても良い。
尚、ファン(13)の配置場所は特に限定されず、空気を加湿ユニット(5)の通風路(P)に送風することができ、送風した空気に吸水膜(3)が吸水した加湿用水の水蒸気を含ませて空気を加湿し、加湿した空気を加湿機装置(6)の外部に供給することができる配置であれば、いかなる位置に配置しても良い。
本実施形態に係る加湿機装置(6)に用いるファン(13)の種類等は特に限定されず、例えば、シロッコファン、遠心送風機、軸流送風機、斜流送風機、横断流送風機等、加湿機装置に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものを用いても良い。
また、ファン(13)による空気の供給方式は特に限定されず、吹き当て方式や吸い出し方式等、加湿ユニット(5)に空気を供給でき、加湿された空気を加湿ユニット(5)外に供給できるものであれば、いかなるものであっても良い。
【0083】
本実施形態に係る加湿機装置()は、上記構成を備えることにより、給水タンク(7)と加湿ユニット(5)間で、加湿用水を循環させることができる。
加湿ユニット(5)内の加湿用水の蒸発量は、外気の条件によって変動する。それゆえに、給水ポンプ(18)による加湿用水の供給量(即ち、循環量)は、加湿ユニット(5)内の加湿用水の蒸発量の変動に応じて手動又は自動で適宜変更しても良い。加湿用水の供給量を変更する場合は、例えば湿度センサー等を用いて外気の条件を測定し、これに基づいて供給量を変更する等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る加湿エレメントは、枠体と、2枚の吸水膜と、通水口とを含む加湿エレメントであって、前記枠体は薄板を中抜きにした形状であり、前記枠体は、該枠体の一対の対向する辺の一方の辺から他方の辺に向かって、及び他方の辺から一方の辺に向かって夫々伸びる複数のくし刃を備え、前記2枚の吸水膜は、前記枠体の中抜き部分を覆うように前記枠体の両面に夫々固定され、前記2枚の吸水膜に覆われた枠体の中抜き部分には液流路が形成され、前記通水口が、前記枠体の上部の辺及び下部の辺に設けられ、前記液流路と連通しているため、加湿エレメントを1つの枠体で形成することができ、加湿エレメントの厚みを減らすことができる。それゆえに、単位容積あたりにおける有効膜面積を増加させることができ、加湿能力を高めることができる。
加えて、加湿エレメントの部品点数を削減することができるため、製造コストを削減することが出来、且つ製造に手間がかからない。
さらに、枠体の両面に吸水膜を固定しているため、加湿エレメント内の加湿用水による水頭圧が枠体両面の吸水膜を引き剥がす方向に働いて釣り合い、枠体の変形による加湿エレメントの膨らみを防止できる。
それゆえに、本発明に係る加湿エレメントは、例えば、加湿機装置の構成要素として用いることができる。
加えて、本発明に係る加湿エレメントを用いた加湿機装置は、家庭等の比較的狭い空間から、テナントビル等の広い空間まで、あらゆる容積を備えた空間に用いる加湿機装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 加湿エレメント
2 枠体
21 一方の辺
22 他方の辺
23 上部の辺
24 下部の辺
25 中抜き部
2B くし刃
3 吸水膜
4 通水口
4H ヘッド部
5 加湿ユニット
51 給排水口
52 吸排気口
5C 筐体
6 加湿機装置
7 給水タンク
8 排水タンク
9 吸排気管
10 給水動作を可能にする手段
11 排水動作を可能にする手段
12 給排水管
13 ファン
14 洗浄液又は除菌液を含む洗浄又は除菌タンク
16 洗浄液及び/又は除菌液が含まれる洗浄及び/又は除菌タンク
18 給水ポンプ
19 排水弁
20 給水管
21 吸気弁
22 排水管
CL 下部通水路
CU 上部通水路
F 液流路
L 長手方向の長さ
P 通風路
W 幅方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12