(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】被覆食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220707BHJP
A23P 30/38 20160101ALI20220707BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23P30/38
(21)【出願番号】P 2018111449
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017130680
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 征一郎
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100357(JP,A)
【文献】特開2012-110252(JP,A)
【文献】特開2003-116471(JP,A)
【文献】特開2013-066396(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
請求項
3に記載の被覆食品を含む、トッピング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆食品及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状大豆蛋白に糖類等を含浸させることにより、ドライフルーツ様食感を有した糖類含浸粒状大豆蛋白の製造方法が知られていたが(特許文献1)、該製造方法では表面がウェットになるため、そのまま喫食すると手が汚れてしまうことに加え、振動フィーダー等の供給器に付着するために定量機械充填にも適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基材が水分を有する一方で、食品表面の被覆層の乾燥性は良好で、保存性に優れた被覆食品及びその製造方法、並びに該被覆食品を含むトッピング材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために検討した結果、基材である乾燥食材を液状物に浸漬し、液状物を含む基材を得た後、水溶性粉末を含む被覆用組成物と該基材とを混合、加熱し、焼結により基材表面を被覆することによって、基材が水分を有する一方で、食品表面の被覆層の乾燥性が良く、かつ低い水分活性で保存性の良い被覆食品が製造できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]の態様に関する。
[1]基材である乾燥食材を液状物に浸漬し、液状物を含む基材を得た後、水溶性粉末を含む被覆用組成物であって、被覆用組成物全体を100重量%とした場合に、油脂含有量が10重量%未満である被覆用組成物と該基材とを混合、加熱し、40~120℃で焼結させることにより基材表面を被覆することを特徴とする、被覆食品の製造方法。
[2]水分活性が0.75以下である、[1]記載の被覆食品の製造方法。
[3]乾燥食材1重量部に対し、0.2~15重量部の被覆用組成物からなる被覆層を有する、[1]又は[2]記載の被覆食品の製造方法。
[4]乾燥食材1重量部に対し、0.1~8重量部の液状物を含有する、[1]~[3]の何れかに記載の被覆食品の製造方法。
[5]液状物が液状糖質を含む、[1]~[4]の何れかに記載の被覆食品の製造方法。
[6]水溶性粉末を含む被覆用組成物であって、被覆用組成物全体を100重量%とした場合に、油脂含有量が10重量%未満である被覆用組成物が焼結してなる被覆層を有する食品であって、基材である乾燥食材が液状物を含み、水分活性が0.75以下である、被覆食品。
[7]乾燥食材1重量部に対し、0.2~15重量部の被覆用組成物からなる被覆層を有する、[6]記載の被覆食品。
[8]乾燥食材1重量部に対し、0.1~8重量部の液状物を含有する、[6]又は[7]記載の被覆食品。
[9]液状物が液状糖質を含む、[6]~[8]の何れかに記載の被覆食品。
[10][6]~[9]の何れかに記載の被覆食品を含む、トッピング材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の被覆食品は、基材に調味成分を浸み込ませることで基材への味付けが可能であるとともに、表面の調味も可能なため、内部に浸透しにくい抹茶粉末やナッツ粉末といった不溶性の調味成分も付与でき、被覆食品の表面と内部とで、異なる味付けも可能である。また、種々の液状物や被覆用組成物を用いることで、甘味系から塩味系まで幅広い被覆食品を製造できる。さらに、形状が崩れ難く、色や液の浸み出しが生じ難いため、食品への混ぜ込み用としても有用であるとともに、食品表面の乾燥性が良好なため、汚れが手に付着することなくそのまま喫食できることに加え、供給機へ付着しないため、定量機械充填が可能である。加えて、内部は水分を含む一方で、低水分のため、冷凍下でも凍り難く、冷凍食品やアイスクリーム、氷菓等への添加が可能である。また、最終工程に乾燥工程を含まないことで、コストダウンが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に記載の被覆食品は、基材である乾燥食材を液状物に浸漬し、液状物を含む基材を得た後、水溶性粉末を含む被覆用組成物と該基材とを混合、加熱し、焼結により基材表面を被覆することで得られる。
【0009】
本発明で用いる乾燥食材は、本発明の被覆食品の基材となる食材であって、液体との接触時に溶解し難い乾燥食材であれば特に限定されず、穀類、いも及びでん粉類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類等又はその加工品を、送風乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の乾燥、油ちょう、焼成、蒸煮、焙煎等又はそれらの組合せによって製造された乾燥食材であればよく、乾燥野菜、乾燥果実、膨化穀物、粒状大豆蛋白、フライ豆、煎りゴマ、アルファ型米粉(みじん粉、道明寺粉、寒梅粉等)、パン粉、あられ、パフ、クラム、クッキー、シリアル、パン等が例示できる。
【0010】
本発明では、基材を液状物に浸漬して基材内部に液状物を含ませることができれば特に限定されず、常圧下で浸漬してもよいが、減圧下で浸漬するのが好ましい。浸漬に用いる液状物は特に限定されず、水でもよいが、液状糖質を含むのが好ましく、異性化液糖、液状澱粉分解物、転化糖、糖アルコール等が例示でき、単体で又は二種以上を混合して用いてもよく、さらに液体又は粉末の調味成分、色素等を添加してもよい。浸漬後の基材が含む液状物のBrixは特に限定されないが、40°以上が好ましく、50°以上がより好ましく、60°以上がさらに好ましく、70°以上が特に好ましい。液状物全体を100重量%とした場合に、油脂は10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。浸漬時の温度は特に限定されず、例えば5~120℃が例示できるが、粘性のある液状物の場合、加熱して流動性を高めるのが好ましく、浸漬時の液状物の温度は、40~100℃が好ましく、45~80℃がより好ましく、50~60℃がさらに好ましい。さらに、浸漬後、液状物を含む基材が余分な液を含む場合は、メッシュ等に移し、液切りをするのが好ましい。基材が含む液状物の水分含量が多過ぎると、製造過程で基材と被覆用組成物全体が固着してしまい、被覆食品が得られない。これは、被覆時に被覆用組成物中の水溶性粉末の多くが液状物に溶解してしまうことで、被覆層が形成されないと考えられる。
【0011】
本発明では、液状物を含む基材と、水溶性粉末を含む被覆用組成物とをニーダー等で撹拌しながら、加熱し、水溶性粉末を焼結させ、基材表面に被覆層を形成し、全体を被覆用組成物で被覆する。加熱温度は、水溶性粉末が焼結する温度であれば特に限定されないが、30~120℃が好ましく、40~100℃がより好ましく、50℃~90℃がさらに好ましい。さらに、被覆後、メッシュ等で篩別すれば余分な粉を落とし粒度を揃えることができる。原料とする乾燥食材の大きさ等によって最適な目開きの篩で適宜篩別し、例えば4メッシュ(目開き4.75mm)、8メッシュ(目開き2.38mm)、12メッシュ(目開き1.68mm)の1つ以上を用いて、直径又は最大の長さが0.5~100mm、1~80mm、3~30mm等の粒状物を得ることができる。
【0012】
水溶性粉末は、焼結により基材を被覆できる粉末であれば特に限定されないが、糖質を含むのが好ましく、デキストリン、二糖類、単糖類及び糖アルコールの少なくとも1種類を含むのが好ましい。被覆用組成物中の糖質含量は、被覆できる含量であれば適宜設定できるが、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、30重量%以上が特に好ましく、糖質の水への溶解度によっては糖質100重量%の被覆用組成物でもよいが、水への溶解度が高い糖質が多いと、基材表面の液状物に溶解し過ぎるため、例えば果糖(20℃における水100gへの溶解度:375g)は、50重量%以下が好ましく、ショ糖(20℃における水100gへの溶解度:202g)は、75重量%以下が好ましい。詳細には、被覆用組成物中の糖質含量の上限値は、次式により、糖質の20℃における水100gへの溶解度から、目安を算出することができる。20℃における水100gへの溶解度が28g未満であれば、被覆用組成物中の糖質含量の上限を100重量%とすることが可能と考えられる。
【0013】
【0014】
さらに、被覆用組成物は調味成分、色素、香料等を含んでもよい。調味成分としては、ミルクパウダー、チーズパウダー、ココアパウダー、コーヒー粉末、抹茶粉末、果汁粉末、甘味料粉末、アミノ酸粉末、有機酸粉末、核酸粉末、塩粉末、エキスパウダー(畜産エキスパウダー、昆布エキスパウダー、野菜エキスパウダー等)、果実粉末、野菜粉末(パセリ粉末、バジル粉末、オニオン粉末、セロリ粉末等)、大豆粉末、ナッツ粉末、香辛料(唐辛子パウダー、コショウ、ガーリック、カレー粉等)等が例示できる。被覆用組成物が二種類以上の原料を含む場合、予め混合して用いるとよい。被覆用組成物全体を100重量%とした場合に、油脂は10重量%未満が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。
【0015】
本発明では、基材となる乾燥食材、液状物及び被覆用組成物を用いて、前記方法で被覆食品を製造できる。本発明の被覆食品は、そのまま喫食してもよく、また、トッピング等として、アイスクリーム、チョコレート、焼き菓子(せんべい、クッキー、スポンジ等)、パン、ホイップクリーム、餡、固形脂(ショートニング、マーガリン等)等へ混ぜ込んだり、ふりかけたりして使用でき、グラノーラ、シリアル等の具材としてもよく、サラダ、麺類、ご飯類、スープ類、煮込み料理等のふりかけ用としてのトッピングにも利用できる。
【0016】
本発明の被覆食品は、被覆用組成物中の水溶性粉末が焼結してなる被覆層を有しており、基材1重量部に対し、好ましくは0.2~15重量部、より好ましくは0.5~10重量部、さらに好ましくは0.8~8重量部の被覆用組成物からなる被覆層を有する。該被覆層を有することで、食品中への混ぜ込みに利用した場合においても、基材部分はソフトな食感を有し、形状が崩れ難く、さらに混ぜ込みにおいて色や液の浸み出しが生じ難く、また、不溶性の調味成分も付与できる。
【0017】
本発明の被覆食品は、基材である乾燥食材が液状物を含む、被覆食品であって、基材1重量部に対し、好ましくは0.1~8重量部、より好ましくは0.2~6重量部、さらに好ましくは0.3~5重量部、特に好ましくは0.5~3重量部の液状物を含有する。該液状物を含むことで、ソフトな食感を有する被覆食品を製造でき、また該液状物に調味成分を含ませれば基材に味付けが可能で、例えば、被覆食品の表面と内部とで、異なる味付けも可能である。
【0018】
本発明の被覆食品は、水分活性が好ましくは0.75以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.65以下である。水分活性の下限値は、0.50程度が好ましく、0.55がより好ましく、0.60がさらに好ましい。該水分活性値であることで、ソフトな食感を有しつつ、微生物汚染リスクを低減できる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【0020】
[試験例1]
(被覆時の温度の検討)
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5、株式会社舘山製)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°、三菱商事フードテック株式会社製)250g及び水20gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物167gを含んだ基材217gと、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD、株式会社有友商店製)200gとココアパウダー(株式会社明治製)100gとの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間(実施例1-1)、60℃達温まで約15分間(実施例1-2)、40℃達温まで約10分間(実施例1-3)又は加熱せず(15℃)約30分間(比較例1)処理した。篩別により8メッシュ(目開き2.36mm)オンを回収し、395g(実施品1-1)、357g(実施品1-2)、309g(実施品1-3)又は230g(比較品1)の各被覆食品を得た。尚、メッシュで液切り後の液状物を含む基材重量は、実施例1-2及び1-3は何れも215g、比較例1は217gだった。
【0021】
前記被覆前の基材が含む液状物のBrixは、糖アルコールのBrix及び水の増減量から、72°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品1-1は178g、実施品1-2は142g、実施品1-3は94gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、何れも水溶性粉末の焼結により被覆され、被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。尚、比較品1は13gの被覆用組成物が基材表面に付着した状態で、粉が見られ、温度が低いため、焼結しなかったと思われる。
【0022】
実施品1-1~1-3及び比較品1を評価した結果、実施品1-1~1-3は何れもソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、優れた品質だった(○)。比較品1はソフトな食感を有していたが、表面は粉っぽく、さらに徐々に表面が湿ってきた(×)。実施例1-1~1-3及び比較例1の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度、水分活性値及び評価結果を表1にまとめた。
【0023】
【0024】
被覆時に加熱(40、60、80℃)することで本発明の被覆食品が得られることが分かった。
【0025】
[試験例2]
(水溶性粉末の検討)
ココアパウダーと混合する糖質として、麦芽糖(サンマルト(登録商標)ミドリ、株式会社林原製)(実施例2-1)、乳糖(正栄食品株式会社製)(実施例2-2)、エリスリトール(三菱商事フードテック株式会社製)(実施例2-3)又はデキストリン(パインデックス(登録商標)#2、松谷化学工業株式会社製)(実施例2-4)を用い、実施例1-1と同様に処理し、409g(実施品2-1)、333g(実施品2-2)、405g(実施品2-3)及び315g(実施品2-4)の各被覆食品を得た。また、ココアパウダー又は大豆粉のみを被覆用組成物として用い、実施例1-1と同様に処理し、247g(比較例2-1)又は284g(比較品2-2)の被覆食品を得た。尚、メッシュで液切り後の液状物を含む基材重量は、実施例2-1~2-3は何れも220g、実施例2-4は208g、比較例2-1及び2-2は何れも210gだった。
【0026】
また、基材と混合する粉末として1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)210gとココアパウダー90g(実施例2-5)、1.5%デキストリン入りショ糖225gとココアパウダー75g(実施例2-6)、1.5%デキストリン入りショ糖240gとココアパウダー60g(比較例2-3)、果糖(純果糖S、加藤化学株式会社)150gとココアパウダー150g(実施例2-7)又は果糖165gとココアパウダー135g(比較例2-4)との混合物からなる被覆用組成物を用い、実施例1-1と同様に処理し、422g(実施品2-5)、479g(実施品2-6)又は493g(実施品2-7)の各被覆食品を得た。比較例2-3及び2-4は、80℃達温まで処理しようとしたところ、20~30分程度で全体が固着して大きな塊となり、被覆食品は得られなかった。尚、メッシュで液切り後の液状物を含む基材重量は、実施例2-5~2-7は何れも220gだった。
【0027】
前記被覆前の基材が含む液状物のBrixは、糖アルコールのBrix及び水の増減量から、何れも72°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品2-1は189g、実施品2-2は113g、実施品2-3は185g、実施品2-4は107g、実施品2-5は202g、実施品2-6は259g、実施品2-7は273gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、何れも水溶性粉末の焼結により被覆され、被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。尚、比較品2-1又は2-2は、37g又は74gの被覆用組成物が基材表面に付着した状態で、粉が見られ、被覆用組成物に水溶性粉末を含まないため、焼結しなかったと思われる。また、比較例2-3及び2-4は被覆用組成物として、溶解度の高い糖質を多く用いたため、用いた糖質が液状物に溶解し過ぎてしまうことで、全体が固着し、被覆食品が得られなかったと思われる。
【0028】
実施品2-1~2-7、比較例2-1及び2-2を評価した結果、実施品2-1~2-5及び2-7は何れもソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質だった(○)。実施品2-6は、ソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られなかったが、被覆食品同士が結着した塊が多数見られた(△)。比較品2-1及び2-2は何れもソフトな食感を有していたが、表面は粉っぽく、さらに徐々に表面が湿ってきた(×)。実施例2-1~2-7、比較例2-1~2-4の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度及び評価結果を表2にまとめた。
【0029】
【0030】
被覆用組成物として各種糖質を含むことで水溶性粉末が基材表面に焼結し、本発明の被覆食品が得られることが分かった。また、20℃における水100gへの溶解度が202gであるショ糖は、被覆用組成物中の含量が75%以下が好ましく、20℃における水100gへの溶解度が375gである果糖は、被覆用組成物中の含量が50%以下が好ましいことが分かった。
【0031】
よって、前記ショ糖と果糖の20℃における水100gへの溶解度と含量の上限値から、被覆用組成物中の糖質含量の目安の算出方法として、一次関数を用いて導き出したところ、糖質含量の上限値(%)は、-0.144×(糖質の20℃における水100gへの溶解度(g))+104で算出できると思われる。
【0032】
[試験例3]
(液状物の検討)
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、異性化液糖(フジフラクト(登録商標)、Brix75°、日本食品化工株式会社製)234gと水36g(実施例3-1)、液状澱粉分解物(グリスター(登録商標)、Brix80°、松谷化学工業株式会社製)234gと水36g(実施例3-2)を、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で各々20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物178gを含んだ基材228g(実施例3-1)又は液状物63gを含んだ基材113g(実施例3-2)を得た。また、基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5、株式会社舘山製)50gを水50gに常圧下で浸漬し、液状物50gを含んだ基材100gを得た(実施例3-3)。各基材と、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)200gとココアパウダー100gとの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら80℃達温まで約30分間処理した。篩別により8メッシュオンを回収し、408g(実施品3-1)又は215g(実施品3-2)の被覆食品を得た。また、篩別により12メッシュオンを回収し、361g(実施品3-3)の被覆食品を得た。尚、実施例3-3では、該処理で20gの水が蒸発した。
【0033】
前記被覆前の基材が含む液状物のBrixは、各液状糖質のBrix及び水の増減量から、実施例3-1が70°、実施例3-2が75°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品3-1は180g、実施品3-2は102gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、また、実施品3-3は焼結中に20gの水が蒸発したため、蒸発した水の重量を加算することで、281gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、何れも水溶性粉末の焼結により被覆され、被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。
【0034】
実施品3-1、3-2及び3-3を評価した結果、実施品3-1はソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質だった(○)。実施品3-2は被覆層を有するとともに、乾燥性も良好だったが、基材自体が縮んでおり、食感がやや固かった(△)。実施品3-3は被覆層を有するとともに、乾燥性も良好だったが、粒同士が固着したものがあり、食感はやや固かった(△)。実施例3-1、3-2及び3-3の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度及び評価結果を表3にまとめた。尚、実施品3-3は水分活性も測定した。
【0035】
【0036】
Brix70°若しくは75°の液状物、又は水を用いることで本発明の被覆食品が得られることが分かった。また、液状物として水を用いた場合でも、水分活性値が0.65以下の保存性の良い被覆食品が得られることが分かった。
【0037】
[試験例4]
(基材となる乾燥食材の検討)
基材として、アルファ型米粉(澱粉真挽粉A-3、株式会社舘山製)50g(実施例4-1)、煎りゴマ(いりごま(白)、かどや製油株式会社製)50g(実施例4-2)、真空フライバナナ(バナナチップ、正栄食品工業株式会社製)120g(実施例4-3)又は大豆蛋白(ベジプラス(登録商標)2900、不二製油株式会社製)100g(実施例4-4)を用い、実施例1-1と同様に処理し、439g(実施品4-1)、261g(実施品4-2)、295g(実施品4-3)又は333g(実施品4-4)の各被覆食品を得た。尚、実施例4-3及び4-4の篩別は、4メッシュ(目開き4.75mm)オンを回収した。尚、メッシュで液切り後の液状物を含む基材重量は、実施例4-1は273g、4-2は81g、4-3は192g、4-4は223gだった。
【0038】
前記被覆前の基材が含む液状物のBrixは、糖アルコールのBrix及び水の増減量から、何れも72°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品4-1は166g、実施品4-2は180g、実施品4-3は103g、実施品4-4は110gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、何れも水溶性粉末の焼結により被覆され、被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。
【0039】
実施品4-1~4-4を評価した結果、実施品4-1~4-4は何れもソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質だった(○)。実施例4-1~4-4の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度及び評価結果を表4にまとめた。
【0040】
【0041】
アルファ型米粉、煎りゴマ、フライドバナナ及び粒状大豆蛋白といった、各種乾燥食材を用いて本発明の被覆食品が得られることが分かった。
【0042】
[試験例5]
(各種被覆食品の検討)
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)230g、濃縮レモン果汁(Brix40°、雄山株式会社製)60g及び色素(ナチュラルイエロー、池田糖化工業株式会社製)1gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した(実施例5-1又は5-2)。尚、該処理で30gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物173gを含んだ基材223g(実施例5-1)又は液状物166gを含んだ基材216g(実施例5-2)と、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)200g、大豆粉(脱臭大豆粉HS600、日清オイリオグループ株式会社製)100g及び香料(レモンオイル、池田糖化工業株式会社製)2gの混合物からなる被覆用組成物(実施例5-1)又は1.5%デキストリン入りショ糖150g、大豆粉150g及び香料(レモンオイル)2gの混合物からなる被覆用組成物(実施例5-2)とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した。篩別により8メッシュオンを回収し、346g(実施品5-1)又は420g(実施品5-2)の被覆食品を得た。
【0043】
前記被覆前の基材が含む液状物のBrixは、糖アルコール及び果汁のBrix及び水の増減量から、73°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品5-1は123g、実施品5-2は204gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、何れも水溶性粉末の焼結により被覆され、被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。
【0044】
実施品5-1及び5-2を評価した結果、実施品5-1及び5-2は何れもソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質だった(○)。尚、実施品5-1及び5-2は何れもレモン風味の顆粒だった。実施例5-1及び5-2の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度及び評価結果を表5にまとめた。
【0045】
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)250g、水20g、色素1(カロチン800、池田糖化工業株式会社製)0.2g、色素2(ナチュラルイエロー、池田糖化工業株式会社製)0.2g及び色素3(ナチュラルブルー、池田糖化工業株式会社製)0.4gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物150gを含んだ基材200gと、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)200g、大豆粉(脱臭大豆粉HS600)70g及び抹茶(株式会社あいや製)30gの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した(実施例6)。篩別により8メッシュオンを回収し、350g(実施品6)の被覆食品を得た。
【0046】
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)150g、黒糖(共栄商事株式会社製)77g及び水43gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物149gを含んだ基材199gと、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)200g及びきな粉(株式会社有田屋)100gの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した(実施例7)。篩別により8メッシュオンを回収し、320g(実施品7)の被覆食品を得た。
【0047】
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)240g、食塩(日本食塩製造株式会社製)10g、色素(カロチン800)1g及び水24gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物134gを含んだ基材184gと、麦芽糖(サンマルト(登録商標)ミドリ)90g、大豆粉(脱臭大豆粉HS600)90g及びチーズパウダー(株式会社ラクトサンサノボジャパン製)90gの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した(実施例8)。篩別により8メッシュオンを回収し、360g(実施品8)の被覆食品を得た。
【0048】
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-3)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)250g、クエン酸(昭和化工株式会社製)6g及び水20gを、脱気缶に投入し、減圧下で60℃、15分間処理した。尚、該処理で20gの水が蒸発した。メッシュで液切り後、液状物243gを含んだ基材293gと、乳糖200g、大豆粉(脱臭大豆粉HS600)100g、乾燥卵黄(キューピー株式会社製)60g、食塩(粉砕塩)40g、粉末酢(佐藤食品株式会社製)8g、グルタミン酸ナトリウム(味の素株式会社製)5g及び香料(マヨネーズフレーバー、高砂香料株式会社製)4gの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した(実施例9)。篩別により12メッシュ(目開き1.40mm)オンを回収し、600g(実施品9)の被覆食品を得た。
【0049】
基材であるアルファ型米粉(澱粉真挽粉A-5)50g、糖アルコール(アマミール(登録商標)、Brix72°)130g、ストロベリー果汁(Brix35°)16g、リンゴ酸(昭和化工株式会社製)6g、クエン酸(昭和化工株式会社製)6g、色素1(ナチュラルレッドT-37M、ヤエガキ醗酵技研株式会社製)4g及び香料(ストロベリーオイルKC-1151、高田香料株式会社製)4gを、ステンレス缶に投入し、常圧下で80℃、10分間処理した。尚、該処理で2gの水が蒸発した。液状物155gを含んだ基材205gと、1.5%デキストリン入りショ糖(粉糖ARD)200g、大豆粉(脱臭大豆粉HS600)100g、色素2(ホモレッドM-10、ヤエガキ醗酵技研株式会社製)18g、パーム油(パームエース10、不二製油株式会社製)12g及びリンゴ酸(昭和化工株式会社製)7.5gの混合物からなる被覆用組成物とをステンレス容器に投入し、常圧で撹拌しながら、80℃達温まで約30分間処理した(実施例10)。篩別により12メッシュオンを回収し、407g(実施品10)の被覆食品を得た。
【0050】
前記実施例6~10の被覆前の基材が含む液状物のBrixは、糖アルコールのBrix及び水の増減量から、何れも70~73°と考えられ、被覆後のBrixはそれ以上と考えられる。また、得られた被覆食品の重量から液状物を含む基材の重量を引くことで、投入した混合物のうち、実施品6は150g、実施品7は121g、実施品8は176g、実施品9は307g、実施品10は202gの被覆用組成物で基材全体が被覆されたと算出でき、水溶性粉末の焼結により被覆され、何れも被覆表面に被覆層を有し、粉のままの被覆用組成物は見られなかった。
【0051】
実施品6~10を評価した結果、何れもソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、表面の乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質だった(○)。尚、実施品6は抹茶風味、実施品7は黒蜜きな粉風味、実施品8はチーズ風味、実施品9はマヨネーズ風味、実施品10は苺風味の顆粒だった。実施例6~10の原料(g)、基材1重量部に対する液状物(重量部)又は被覆用組成物(重量部)、被覆用組成物の組成、被覆時の温度及び評価結果を表5にまとめた。
【0052】
【0053】
レモン風味、抹茶風味、黒蜜きな粉風味、チーズ風味、マヨネーズ風味、苺風味といった、種々の風味を有する本発明の被覆食品が得られ、多くの食品へのトッピングとして有効であることが分かった。
【0054】
以上より、基材である乾燥食材を液状物に浸漬し、液状物を含む基材を得た後、水溶性粉末を含む被覆用組成物と該基材とを混合、加熱し、水溶性粉末を焼結させ、基材表面を被覆することで、被覆食品が得られ、ソフトな食感を有し、被覆層を有するとともに、乾燥性も良好で、経時変化も見られず、優れた品質を有する被覆食品が得られることが分かった。