(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】端子、および端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/50 20060101AFI20220707BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H01R4/50 A
H01R13/11 A
(21)【出願番号】P 2019074920
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
(72)【発明者】
【氏名】魏 綾那
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6729895(US,B1)
【文献】特開2002-367714(JP,A)
【文献】特開2015-56209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48-4/56
H01R 13/11
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子と接続する相手方接続部と、電線と接続する電線接続部と、前記相手方接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、を有する端子本体と、
前記電線接続部の外側に嵌められるシェルと、を備え、
前記電線接続部は前記電線の延び方向に延びると共に前記電線を挟持する挟持部を有し、前記シェルは前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、
前記相手方接続部は相手方底壁と、前記相手方底壁から所定の起立方向に向かって立ち上がって形成された相手方側壁と、を有し、
前記電線接続部は電線側底壁と、前記電線側底壁から前記起立方向に向かって立ち上がる電線側側壁と、を有し、
前記連結部は、前記電線側底壁と前記相手方底壁とを、前記電線側底壁から前記相手方底壁に向かって、前記起立方向とは反対方向に傾斜して連結している端子。
【請求項2】
前記連結部は、前記相手方底壁と前記電線側底壁とを連結する連結底壁と、前記連結底壁から立ち上がる一対の連結側壁と、を有し、
前記一対の連結側壁のそれぞれは、互いに接近する方向に屈曲したくびれ部を有する、請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記一対の連結側壁に設けられた前記くびれ部の内面には、それぞれ、凹部が設けられている、請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記シェルの底面と、前記相手方接続部の底面とが同一平面上に配されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
前記シェルは、前記電線接続部に対して、前記電線の延び方向に沿ってスライド可能に配されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の端子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の端子と、
前記端子に接続された電線と、を備えた端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端末から露出する芯線に端子が接続された端子付き電線が知られている。このような端子として、例えば、電線の端末から露出する芯線に外側から圧着する圧着部を備えるものがある。
【0003】
上記の端子を電線に圧着するには、例えば以下のようにする。まず、金属板材をプレス加工することにより所定の形状の端子を成形する。続いて、上下方向に相対移動可能な一対の金型のうち下側に位置する下型の載置部に、端子を載置する。続いて、電線の端末から露出された芯線を、端子の圧着部に重ねて載置する。その後、一対の金型の一方又は双方を互いに接近する方向に移動させ、上型の圧着部と、下型の載置部との間で圧着部を挟み付けることにより、圧着部を電線の芯線に圧着する。以上により、電線の端末に端子が接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の圧着部に代えて、芯線を挟んで接続するとした場合、端子本体と、端子本体の後方に配されたスライド部との2部品で端子を構成することがあり得る。この場合に、2部品間で段差が生じると、コネクタに配したときに端子ががたつくという課題が生じる。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、段差が減少された端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる端子は、相手方端子と接続する相手方接続部と、電線と接続する電線接続部と、前記相手方接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、を有する端子本体と、前記電線接続部の外側に嵌められるシェルと、を備え、前記電線接続部は前記電線の延び方向に延びると共に前記電線を挟持する挟持部を有し、前記シェルは前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、前記相手方接続部は相手方底壁と、前記相手方底壁から所定の起立方向に向かって立ち上がって形成された相手方側壁と、を有し、前記電線接続部は電線側底壁と、前記電線側底壁から前記起立方向に向かって立ち上がる電線側側壁と、を有し、前記連結部は、前記電線側底壁と前記相手方底壁とを、前記電線側底壁から前記相手方底壁に向かって、前記起立方向とは反対方向に傾斜して連結している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、端子において段差を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる端子付き電線を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、連結部に芯線が挿通された状態を示す一部拡大平面図である。
【
図6】
図6は、端子本体にスライド部が仮係止された状態の端子と、電線とを示す断面図である。
【
図7】
図7は、端子本体にスライド部が仮係止された状態の端子に電線が挿通された状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、端子本体にスライド部が本係止された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0011】
(1) 本開示にかかる端子は、相手方端子と接続する相手方接続部と、電線と接続する電線接続部と、前記相手方接続部と前記電線接続部とを連結する連結部と、を有する端子本体と、前記電線接続部の外側に嵌められるシェルと、を備え、前記電線接続部は前記電線の延び方向に延びると共に前記電線を挟持する挟持部を有し、前記シェルは前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、前記相手方接続部は相手方底壁と、前記相手方底壁から所定の起立方向に向かって立ち上がって形成された相手方側壁と、を有し、前記電線接続部は電線側底壁と、前記電線側底壁から前記起立方向に向かって立ち上がる電線側側壁と、を有し、前記連結部は、前記電線側底壁と前記相手方底壁とを、前記電線側底壁から前記相手方底壁に向かって、前記起立方向とは反対方向に傾斜して連結している。
【0012】
シェルは電線接続部の外側に嵌められているので、シェルは電線接続部の電線側底壁を覆っている。このため、シェルは電線側底壁よりも外方に突出する。しかし、電線側底壁と連結部により連結された相手方接続部の相手方底壁は、連結部が傾斜していることにより、電線側底壁よりも外方に突出する。これにより、電線側底壁に対して、シェルの底壁および相手方底壁の双方が外方に突出することになるので、シェルの底壁だけが外方に突出した形状に比べて、端子の段差を小さくすることができる。
【0013】
(2) 前記連結部は、前記相手方底壁と前記電線側底壁とを連結する連結底壁と、前記連結底壁から立ち上がる一対の連結側壁と、を有し、
前記一対の連結側壁のそれぞれは、互いに接近する方向に屈曲したくびれ部を有することが好ましい。
【0014】
連結部の連結底壁を傾斜させると、一対の連結側壁も屈曲する。このとき、一対の連結側壁のそれぞれについて、互いに接近する方向に屈曲したくびれ部を設けることにより、一対の連結側壁が互いに離れる方向に屈曲する場合に比べて、端子を小型化することができる。
【0015】
(3) 前記一対の連結側壁に設けられた前記くびれ部の内面には、それぞれ、凹部が設けられていることが好ましい。
【0016】
電線と電線接続部とを確実に接続するため、電線接続部に挿通された電線は、電線接続部を越えて連結部まで挿通されることが好ましい。連結部の一対の連結側壁の内面には凹部が形成されているので、一対の連結側壁の内面と電線とが干渉することを抑制できる。この結果、電線を端子に挿入する際に、電線が座屈することを抑制できる。
【0017】
(4) 前記シェルの底面と、前記相手方接続部の底面とが同一平面上に配されていることが好ましい。
【0018】
シェルの底面と相手方接続部の底面とが同一の平面上に配されているので、端子をコネクタ内に収容した場合に、相手方接続部の外面と、シェルの外面とを、コネクタにおいて端子を載置するために形成された平面上に、傾くことなく載置することができる。これにより、端子がコネクタ内でがたつく等の不具合が生じることを確実に抑制できる。
【0019】
(5) 前記シェルは、前記電線接続部に対して、前記電線の延び方向に沿ってスライド可能に配されていることが好ましい。
【0020】
シェルを電線の延び方向に沿ってスライドさせるという簡易な操作により、電線と端子とを電気的に接続することができる。これにより、電線と端子の接続作業の効率を向上させることができる。
【0021】
(6) 本開示にかかる端子付き電線は、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の端子と、前記端子に接続された電線と、を備える。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が
図1から
図8を参照しつつ説明される。本実施形態にかかる端子付き電線10は、電線11と、電線11に接続された端子12とを備える。端子12は、図示しない相手方端子と接続される。端子12は、
図1に示されるように、電線11の延び方向(矢線Yで示される向き)の前方端部に接続される。以下の説明では、矢線Zの示す向きを上とし、矢線Yの示す向きを前とし、矢線Xの示す向きを左として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0024】
[電線11]
図1に示されるように、電線11は、前後方向(延び方向の一例)に延びて配されている。電線11は、芯線13の外周を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14で包囲されている。本実施形態にかかる芯線13は、1本の金属線からなる。なお、芯線13は複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる芯線13は銅、または銅合金からなる。
【0025】
[端子12]
図1に示されるように、端子12は、金属製の端子本体15と、端子本体15に対して相対的にスライド移動可能なスライド部16(シェルの一例)と、を備える。
【0026】
[端子本体15]
図2に示されるように、端子本体15はプレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。端子本体15を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15は、銅、又は銅合金からなる。端子本体15の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかる端子本体15にはスズめっきが施されている。
【0027】
図2に示されるように、端子本体15は、板状をなす相手方端子が挿入可能な筒部17(相手方接続部の一例)と、筒部17の後方に位置して電線11と接続される電線接続部20を有する。電線接続部20は後方に延出された上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bと、を備える。本実施形態にかかる端子12は、いわゆる雌端子と呼ばれるものであり、相手方端子は、いわゆる雄端子と呼ばれるものである。
【0028】
図3に示されるように、筒部17は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部17は、相手方底壁50と、相手方底壁50の側縁から上方(所定の起立方向の一例)に立ち上がる一対の相手方側壁53を有する。筒部17の前端は、相手方端子が挿入可能に開口されている。筒部17の内部には、弾性変形可能な弾性接触片19が配されている。弾性接触片19は、筒部17の内壁から内方に延びている。筒部17内に挿入された相手方端子は、弾性接触片19を押圧して弾性変形させる。弾性変形した弾性接触片19の弾発力によって、相手方端子は、筒部17の内壁と弾性接触片19との間に挟まれる。これにより相手方端子と端子12とが電気的に接続される。
【0029】
図2および
図3に示されるように、筒部17の後方には角筒状をなす電線接続部20が設けられている。
図3に示されるように、電線接続部20は、電線側底壁51と、電線側底壁51の側縁から上方に立ち上がる一対の電線側側壁54を有する。電線接続部20の上壁の後端部には上側挟持部18A(挟持部の一例)が後方に延びて設けられており、電線接続部20の電線側底壁51の後端部には下側挟持部18B(挟持部の一例)が後方に延びて設けられている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bの前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。
【0030】
上側挟持部18Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部23Aが設けられている。下側挟持部18Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部23Bが設けられている。下側保持突部23Bと、上側保持突部23Aとは、前後方向についてずれた位置に設けられている。
【0031】
上側挟持部18Aの下面、および下側挟持部18Bの上面が、芯線13の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線13の金属表面を露出させるようになっている。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bとが接触することにより、芯線13と端子本体15とが電気的に接続される。
【0032】
図4に示すように、端子本体15の側壁には、外方に突出する係止突起28が形成されている。この係止突起28は、後述する仮係止受け部26および本係止受け部27と係止することにより、スライド部16を、仮係止位置および本係止位置に保持するようになっている。
【0033】
図4に示されるように、筒部17と電線接続部20とは、連結部30により連結されている。連結部30は、連結底壁31と、連結底壁31の左右両側縁から上方に延びる右側壁33Rおよび左側壁33L(1対の連結側壁の一例)と、を有する。
【0034】
図3に示されるように、連結底壁31は、相手方底壁50と、電線側底壁51と連なっている。相手方底壁50は、電線側底壁51よりも下方に位置している。
【0035】
図3に示されるように、後方から前方に向かうに従って、連結底壁31は下降傾斜して形成されている。換言すると、電線側底壁51から相手方底壁50に向かって、電線側側壁54の立ち上がる向きと反対方向に傾斜している。
【0036】
図4に示されるように、右側壁33Rのうち、前後方向の中央付近は左方に凹んだ形状に曲がっている。また、左側壁33Lのうち、前後方向の中央付近は右方に凹んだ形状に曲がっている。このように、右側壁33Rと左側壁33Lのそれぞれは、互いに接近する方向に屈曲した、右くびれ部34R(くびれ部の一例)および左くびれ部34L(くびれ部の一例)を有する。
【0037】
図4に示されるように、右くびれ部34Rの内面には、右凹部35Rが右方に凹んで形成されている。
図3に示されるように、右凹部35Rは、前後方向については、右側壁33Rの前端部からやや後方の位置から、右側壁33Rの後端部よりもやや前方の位置まで形成されている。また、右凹部35Rは、上下方向については、右側壁33Rの上端部から、連結底壁31よりもやや上方の位置まで形成されている。
【0038】
図4に示されるように、左側壁33Lに形成された左凹部35Lは、上記の右凹部35Rと左右対称に形成されている。
【0039】
図5に示されるように、右凹部35Rと左凹部35Lとの左右方向の間隔は、芯線13の直径と同じか、または大きく設定されている。これにより、右側壁33Rと、左側壁33Lとの間を、芯線13が後方から前方に向けて挿通可能になっている。
【0040】
[スライド部16]
図6に示されるように、スライド部16は、前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部16は、切削加工、鋳造、プレス加工等、必要に応じて公知の手法により形成される。スライド部16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態にかかるスライド部16は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部16の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0041】
スライド部16の内面形状の断面は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bが設けられた領域の外形状の断面と同じか、やや大きく形成されている。これにより、スライド部16は、端子本体15のうち、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域の外方に配されるようになっている。
【0042】
図5に示されるように、スライド部16の上壁の下面には、下方に突出する上側加圧部25A(加圧部の一例)が設けられている。スライド部16の下壁の上面には、上方に突出する下側加圧部25B(加圧部の一例)が設けられている。
【0043】
図1に示されるように、スライド部16の側壁には、前後方向の前端部寄りの位置に、仮係止受け部26が開口されている。また、スライド部16の側壁には、仮係止受け部26よりも後方の位置に、本係止受け部27が開口されている。仮係止受け部26と、本係止受け部27は、端子本体15の側壁に設けられた係止突起28と弾性的に係止可能になっている。
【0044】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の仮係止受け部26とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持された状態となっている(
図6参照)。この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bは、端子本体15の上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの後端縁から後方に離間している。また、この状態においては、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている(
図7参照)。
【0045】
図8に示されるように、端子本体15の係止突起28とスライド部16の本係止受け部27とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が本係止位置に係止された状態となっている。この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aは、上側挟持部18Aの上方から上側挟持部18Aに接触している。また、スライド部16の下側加圧部25Bは、下側挟持部18Bの下方から下側挟持部18Bに接触している。
【0046】
上記のように、スライド部16は、端子本体15のうち上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、上記した仮係止位置と、本係止位置との間をスライド移動可能になっている。
【0047】
図8に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側加圧部25Aが上方から上側挟持部18Aを押圧することによって上側挟持部18Aが下方に変形するようになっている。また、下側加圧部25Bが下方から下側挟持部18Bを押圧することによって下側挟持部18Bが上方に変形するようになっている。これにより、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間に、芯線13を前後方向(延び方向)に延びた状態で配し、且つ、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持した状態では、芯線13は、弾性変形した上側挟持部18Aと下側挟持部18Bによって上下方向から挟持されるようになっている。すなわち、上側挟持部18Aは上側加圧部25Aに下方に押圧されることにより芯線13に上方から接触し、下側挟持部18Bは下側加圧部25Bに上方に押圧されることにより芯線13に下方から接触するようになっている。
【0048】
図8に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aが芯線13を上方から押圧し、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bが芯線13を下方から押圧する。このように、芯線13は、上側保持突部23Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部23Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部23Bによって下方から押圧されることにより、上下方向(延び方向と交差する方向の一例)について屈曲した状態に保持される。また、上側保持突部23Aと、下側保持突部23Bとによっても、芯線13と端子12とが電気的に接続されるようになっている。
【0049】
図8に示されるように、スライド部16の前端部には、上壁から上方に突出する治具接触部46が設けられている。治具接触部46に後方から治具45が接触して、この治具45によってスライド部16が前方に押されることにより、スライド部16が前方に移動可能になっている。
【0050】
図6に示されるように、スライド部16の後端部寄りの位置には、左右両側壁に、スライド部16の内方に突出する一対の誘い込み部47が設けられている。誘い込み部47は、後方から前方に向かうに従って幅狭に形成されている。誘い込み部47の内面に芯線13が摺接することにより、芯線13はスライド部16の内部へと案内される。
【0051】
図8に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、筒部17の相手方底壁50の下面と、スライド部16の底壁52の下面とは、同一の平面60上に位置するようになっている。
【0052】
[電線11と端子12の接続工程]
続いて、電線11と端子12との接続工程の一例について説明する。電線11と端子12との接続工程は以下の記述に限定されない。
【0053】
公知の手法により、端子本体15と、スライド部16とが形成される。端子本体15に対して、後方からスライド部16が組み付けられる。端子本体15の係止突起28に後方からスライド部16の前端縁が当接し、スライド部16の側壁が拡開変形する。更にスライド部16が前方に押し込まれると、スライド部16の側壁が復帰変形し、端子本体15の係止突起28に、スライド部16の仮係止受け部26が係止する。これにより、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持される(
図6参照)。これにより端子12が得られる。
【0054】
公知の手法で絶縁被覆14が皮剥ぎ加工されることにより電線11の芯線13が露出される。
【0055】
電線11が更に前方に押し込まれると、芯線13の前端部は、スライド部16の後端部からスライド部16の内部へと導入される。芯線13はスライド部16の誘い込み部47と当接することにより、スライド部16へと案内される。更に電線11が前方に押し込まれると、芯線13の前端部は端子本体15の内部へと進入して上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間内に至る。
【0056】
図7に示されるように、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持された状態では、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間隔は、芯線13の外径寸法よりも大きく設定されている。
【0057】
図5に示されるように、芯線13の前端部が連結部30にまで至ると、芯線13は、連結部30の右側壁33Rと左側壁33Lとの隙間へと挿入される。
図5には、二点鎖線で、右側壁33Rの内面に右凹部35Rが設けられなかった場合の右側壁33Rの外形線と、左側壁33Lの内面に左凹部35Lが設けられなかった場合の左側壁33Lの外形線とが記載されている。右側壁33Rおよび左側壁33Lに、それぞれ、右凹部35Rおよび左凹部35Lが設けられなかった場合には、右凹部35Rと左凹部35Lの左右方向の幅寸法は、芯線13の直径よりも小さい。このため、芯線13が右側壁33Rと左側壁33Lとの隙間へ挿入される際に、芯線13が右側壁33Rと左側壁33Lとの隙間に引っかかってしまうことが懸念される。
【0058】
本実施形態においては、右側壁33Rおよび左側壁33Lには、それぞれ、右凹部35Rおよび左凹部35Lが設けられているので、芯線13が右側壁33Rと左側壁33Lとの隙間に確実に挿入されるようになっている。
【0059】
次に、
図8に示すように、治具45を後方から治具接触部46に当接させて、スライド部16を前方にスライド移動させる。スライド部16は端子本体15に対して相対的に前方に移動させられる。このとき、端子本体15の係止突起28と、スライド部16の仮係止受け部26との係止が外れ、スライド部16の側壁が係止突起28に乗り上げて拡開変形する。
【0060】
スライド部16が前方に移動させられると、スライド部16の側壁が復帰変形して端子本体15の係止突起28と、スライド部16の本係止受け部27とが弾性的に係止する。これによりスライド部16が端子本体15に対して本係止位置に保持される。
【0061】
スライド部16が端子本体15に対して本係止位置に保持された状態で、スライド部16の上側加圧部25Aが、端子本体15の上側挟持部18Aに上方から当接して下方へと押圧する。また、スライド部16の下側加圧部25Bが、端子本体15の下側挟持部18Bに下方から当接して上方へと押圧する。これにより、芯線13が、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持される。
【0062】
図8に示されるように、上側挟持部18Aの下面と、下側挟持部18Bの上面とに芯線13が挟まれることにより、芯線13の表面に形成された酸化被膜が剥がされ、芯線13を構成する金属表面が露出する。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bが接触することにより、電線11と端子12とが電気的に接続される。
【0063】
芯線13が上側挟持部18Aと下側挟持部18Bに上下から挟持された状態においては、芯線13は、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aと、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bとに挟まれることにより、前後方向に延びた状態で、且つ、上下方向に屈曲した状態で保持される。これにより、芯線13を強固に保持することができるので、電線11に引っ張り力が作用した場合に、電線11と端子12との保持力を高めることができる。これにより端子付き電線10が完成する。
【0064】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態にかかる端子12は、相手方端子と接続する筒部17と、電線11と接続する電線接続部20と、筒部17と電線接続部20とを連結する連結部30と、を有する端子本体15と、電線接続部20の外側に嵌められるスライド部16と、を備え、電線接続部20は前後方向に延びると共に電線11を挟持する上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを有し、スライド部16は上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを電線11に向けて加圧する上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bを有し、筒部17は相手方底壁50と、相手方底壁50から上方に立ち上がって形成された相手方側壁53と、を有し、電線接続部20は電線側底壁51と、電線側底壁51から上方に立ち上がる電線側側壁54と、を有し、連結部30は、電線側底壁51と相手方底壁50とを、電線側底壁51から相手方底壁50に向かって、下方に傾斜して連結している。
【0065】
また、本実施形態にかかる端子付き電線10は、上記の端子12と、端子12に接続された電線11とを備える。
【0066】
スライド部16は電線接続部20の外側に嵌められているので、スライド部16は電線側底壁51を外側から覆っている。このため、スライド部16の底壁52は電線側底壁51よりも外方に突出する。しかし、電線側底壁51と連結部30により連結された筒部17は、連結部30が傾斜していることにより、電線側底壁51よりも外方に突出する。これにより、電線側底壁51に対して、スライド部16の底壁52および相手方底壁50の双方が外方に突出することになるので、スライド部16の底壁52だけが突出した形状に比べて、端子12の段差を小さくすることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、連結部30は、相手方底壁50と電線側底壁51とを連結する連結底壁31と、連結底壁31から立ち上がる右側壁33Rおよび左側壁33Lと、を有し、右側壁33Rおよび左側壁33Lのそれぞれは、互いに接近する方向に屈曲したくびれ部34L,34Rを有する。
【0068】
連結部30の連結底壁31を傾斜させると、右側壁33Rおよび左側壁33Lも屈曲する。このとき、右側壁33Rおよび左側壁33Lのそれぞれについて、互いに接近する方向に屈曲した右くびれ部34Rおよび左くびれ部34Lを設けることにより、右側壁33Rおよび左側壁33Lが互いに離れる方向に屈曲する場合に比べて、端子12を小型化することができる。
【0069】
本実施形態によれば、右側壁33Rおよび左側壁33Lにそれぞれ設けられた右くびれ部34Rおよび左くびれ部34Lの内面には、それぞれ、右凹部35Rおよび左凹部35Lが設けられている。
【0070】
電線11の芯線13と電線接続部20とを確実に接続するため、電線接続部20に挿通された芯線13は、電線接続部20を越えて連結部30まで挿通されることが好ましい。連結部30の右側壁33Rおよび左側壁33Lのそれぞれの内面には右凹部35Rおよび左凹部35Lが形成されているので、右側壁33Rおよび左側壁33Lの内面と芯線13とが干渉することを抑制できる。この結果、電線11の芯線13を端子12に挿入する際に、電線11または芯線13が座屈することを抑制できる。
【0071】
本実施形態によれば、スライド部16の底面と、筒部17の底面とが同一平面上に配されている。
【0072】
スライド部16の底面と筒部17の底面とが同一の平面上に配されているので、筒部17の下面とスライド部16の下面とは、同一の平面60上に配されている。これにより、端子12を図示しないコネクタ内に収容した場合に、筒部17の下面と、スライド部16の下面とを、コネクタにおいて端子12を載置するために形成された平面上に、傾くことなく載置することができる。これにより、端子12がコネクタ内でがたつく等の不具合が生じることを確実に抑制できる。
【0073】
本実施形態によれば、スライド部16は、電線接続部20に対して、前後方向に沿ってスライド可能に配されている。
【0074】
スライド部16を前後方向に沿ってスライドさせるという簡易な操作により、電線11と端子12とを電気的に接続することができる。これにより、電線11と端子12の接続作業の効率を向上させることができる。
【0075】
<他の実施形態>
(1)本実施形態では連結底壁31が全体として傾斜する構成であったが、連結底壁31の一部が傾斜している構成としてもよい。
【0076】
(2)本実施形態にかかる端子12は、いわゆる雌端子であったが、雄端子でもよい。
【0077】
(3)本実施形態においては、右凹部35Rおよび左凹部35Lが設けられる構成としたが、これに限られず、右凹部35Rまたは左凹部35Lの一方が設けられる構成としてもよい。また、右凹部35Rおよび左凹部35Lの双方を省略してもよい。
【0078】
(4)端子12は、1つ、または3つ以上の挟持部を有してもよい。
【0079】
(5)筒部17の底面と、スライド部16の底面とは、同一の平面上に配されていなくてもよい。
【0080】
(6)相手方側壁53は、相手方底壁50の側縁から立ち上がっていなくてもよい。また、電線側側壁54は、電線側底壁51の側縁から立ち上がっていなくてもよい。また、左側壁33Lおよび右側壁33Rは、連結底壁31の側縁から立ち上がっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10: 端子付き電線
11: 電線
12: 端子
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: 端子本体
16: スライド部
17: 筒部
18A: 上側挟持部
18B: 下側挟持部
19: 弾性接触片
20: 電線接続部
23A: 上側保持突部
23B: 下側保持突部
25A: 上側加圧部
25B: 下側加圧部
26: 仮係止受け部
27: 本係止受け部
28: 係止突起
30: 連結部
31: 連結底壁
33L: 左側壁(連結側壁の一例)
33R: 右側壁(連結側壁の一例)
34L: 左くびれ部
34R: 右くびれ部
35L: 左凹部
35R: 右凹部
45: 治具
46: 治具接触部
47: 誘い込み部
50: 相手方底壁
51: 電線側底壁
52: スライド部の底壁
53: 相手方側壁
54: 電線側側壁
60: 平面