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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】継手用台座
(51)【国際特許分類】
   F16L 43/02 20060101AFI20220707BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20220707BHJP
   F16L 3/16 20060101ALI20220707BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20220707BHJP
   F16M 13/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
F16L43/02
F16L3/00 B
F16L3/16 Z
A62C35/68
F16M13/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020153431
(22)【出願日】2020-09-14
(62)【分割の表示】P 2018208669の分割
【原出願日】2016-07-05
(65)【公開番号】P2020204408
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2016076741
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月4日に、株式会社オンダ製作所が、株式会社竹中工務店に、本願発明の継手用台座を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月4日に、株式会社オンダ製作所が、株式会社大林組に、本願発明の継手用台座を公開した。
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】上野 晃
(72)【発明者】
【氏名】早川 幸司
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特許第6773101(JP,B2)
【文献】特開2009-089788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140421(US,A1)
【文献】国際公開第2012/077152(WO,A1)
【文献】特開2008-253566(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0004556(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 43/02
F16L 3/00
F16L 3/16
A62C 35/68
F16M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面と透孔が形成された仕切板との間の空間において前記施工面に取り付けられ前記空間の外から前記透孔を介して前記施工面に対する継手の位置を調節可能な継手用台座であって、固定部材を回動可能に保持するとともに、前記固定部材とは別体であって前記施工面に対して中心軸線が垂直方向に延びてなおかつ前記中心軸線の方向において前記仕切板の側に工具が挿入される六角穴が形成された頭部が位置するボルトを回動操作可能に保持し、前記固定部材の回動によって前記継手を支持するスライダを押圧して前記継手の前記位置を固定するとともに、前記固定部材の前記回動とは逆の方向への回動を許容することで前記スライダの前記押圧を解除して前記継手の前記位置を調節可能とし、前記固定部材の前記回動は、前記工具を用いて前記頭部の前記六角穴を介して前記ボルトを締め付ける方向へその中心線周りに回動操作して前記ボルトをその中心線方向の一方に変位させ、よって前記ボルトが前記固定部材を押圧することでなされ、前記固定部材の前記回動とは逆方向への回動は、前記工具を用いて前記頭部の前記六角穴を介して前記ボルトを緩める方向へその中心線周りに回動操作して前記ボルトをその中心線方向の他方に変位させ、よって前記ボルトによる前記固定部材の押圧を解除することで許容される継手用台座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手用台座に関する。
【背景技術】
【0002】
継手用台座として、施工面に取り付けられる台座本体と、その台座本体に移動可能に保持されて二つの部材を繋ぐ継手を支持するためのスライダと、を備えたものが知られている。こうした継手用台座は、施工面から所定の距離をおいて設置される仕切板と上記施工面との間に、例えば給水管とスプリンクラーヘッドといった二つの部材を繋ぐ継手を設置する際に用いられる。
【0003】
この場合、継手の第1端に給水管が接続される一方、継手の第2端にスプリンクラーヘッドが接続される。そして、台座本体を施工面に取り付けた後、その台座本体に対するスライダの相対移動を通じて継手の第2端に接続されたスプリンクラーヘッドの位置を適正に調整し、その位置にてスライダを台座本体に対し固定する。更に、上記施工面から所定の距離をおいて仕切板を設置する。この仕切板には、上述したように設置されたとき、継手の第2端に接続されたスプリンクラーヘッドの一部を露出させるための透孔が形成されている。
【0004】
ちなみに、台座本体に対するスライダの相対移動を通じて、継手の第2端に接続されたスプリンクラーヘッドの位置を調整する構造としては、例えば特許文献1、2に示される構造があげられる。
【0005】
特許文献1の構造を継手用台座に適用した場合、台座本体には仕切板における透孔の中心線方向(鉛直方向)に長い移動孔が形成されるとともに、その移動孔から枝分かれして上記透孔の周方向(水平方向)に延びる複数の係止孔が上記中心線方向に等間隔をおいて形成される。なお、各係止孔の延出方向の先端部には下方にへこんだ係止部が形成される。一方、スライダには上記移動孔を貫通する軸部が設けられており、その軸部は上記移動孔内及び上記係止孔内を変位することが可能となる。また、軸部の端部には、上記移動孔からの上記軸部の抜けを防止する係止用ねじが取り付けられる。
【0006】
この構造によれば、スライダ(軸部)を移動孔の延びる方向(鉛直方向)における所定の係止孔に対応する位置まで移動させる。その後、同係止孔内に軸部が挿入されるようスライダを透孔の周方向(水平方向)に移動させ、その係止孔の係止部に上記軸部を落とし込むことによりスライダの鉛直方向についての位置、言い換えればスプリンクラーヘッドの鉛直方向についての位置が定められる。従って、スライダ(軸部)を移動孔及び係止孔に沿って移動させ、各係止孔のうちのいずれかの係止孔の係止部に軸部を落とし込むかによって、スプリンクラーヘッドの鉛直方向についての位置を調整することができる。
【0007】
また、特許文献2の構造を継手用台座に適用した場合、台座本体には仕切板における透孔の中心線方向(鉛直方向)に延びる送りねじ軸が設けられる。一方、スライダは、上記送りねじ軸に螺合するナットと連結されるとともに、その送りねじ軸の回転に伴って一体的に回転しないようにされる。
【0008】
この構造によれば、送りねじ軸を回転操作することにより、ナットが送りねじ軸の軸線方向(鉛直方向)に変位するとともに、そのナットに連結されたスライダが上記送りねじ軸の軸線方向に変位する。従って、上記送りねじ軸を回転操作することにより、継手の第2端に接続されたスプリンクラーヘットの鉛直方向についての位置が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-123418号公報
【文献】特開平11-244408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、新規な継手用台座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、施工面に取り付けられ前記施工面に対する継手の位置を調節可能な継手用台座であって、固定部材を回動可能に保持するとともにボルトを回動操作可能に保持し、前記固定部材の回動によって前記継手を支持するスライダを押圧して前記継手の前記位置を固定するとともに、前記固定部材の前記回動とは逆の方向への回動を許容することで前記スライダの前記押圧を解除して前記継手の前記位置を調節可能とし、前記固定部材の前記回動は、前記ボルトを締め付ける方向へ回動操作して前記ボルトが前記固定部材を押圧することでなされ、前記固定部材の前記回動とは逆方向への回動は、前記ボルトを緩める方向へ回動操作して前記ボルトによる前記固定部材の押圧を解除することで許容される継手用台座である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】継手用台座全体を示す断面図。
図2】仕切板の透孔側から継手用台座を見た状態を示す底面図。
図3】スライダが最下点まで下がった状態を示す断面図。
図4】六角レンチでボルトを回動操作する状態を示す断面図。
図5】固定部材の他の例を示す断面図。
図6】継手の他の例を示す断面図。
図7】仕切板の透孔側から継手及び継手用台座を見た状態を示す底面図。
図8】スライダが最下点まで下がった状態を示す断面図。
図9】六角レンチでボルトを回動操作する状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、継手用台座の一実施形態について、図1図4を参照して説明する。
図1に示すように、継手用台座1は、施工面2から所定の距離をおいて設置される仕切板3と上記施工面2との間に、例えば給水管4とスプリンクラーヘッド5といった二つの部材を繋ぐ継手6を設置する際に用いられる。この継手6の第1端6aには給水管4が別の継手15を介して接続されており、継手6の第2端6bにはスプリンクラーヘッド5が接続されている。そして、スプリンクラーヘッド5には、同ヘッド5を保護するためのキャップ25が取り付けられている。一方、仕切板3には継手6の第2端6bに接続されたスプリンクラーヘッド5の一部を露出させるための透孔22が形成されている。
【0014】
継手用台座1は、施工面2に固定ボルト7によって取り付けられる台座本体8を備えている。台座本体8には、施工面2から突出する方向に延びる突出部9が設けられている。突出部9には、その突出部9の突出する方向に長い長孔10が形成されており、且つ、上記継手6を支持するためのスライダ11が移動可能に保持されている。
【0015】
このスライダ11は、上記継手6と一体形成された保持部12と、その保持部12から突出して上記長孔10を貫通するとともに長孔10内での変位が可能とされている軸部13と、その軸部13における保持部12側とは反対側の端部に螺入された蝶ボルト14と、を備えている。なお、軸部13及び保持部12には、上記蝶ボルト14が螺入されるねじ孔23が形成されている。このねじ孔23は、台座本体8における突出部9の突出方向と直交する方向(図1の左右方向)に延びている。
【0016】
ちなみに、突出部9に形成された上記長孔10は軸部13が貫通する貫通孔として機能する。この軸部13は、長孔10内で同長孔10の長手方向に移動することが可能となっている。そして、軸部13の一方の端部(図1の左端部)には、継手6を支持するための上記保持部12が繋がった状態となっている。また、軸部13のもう一方の端部(図1の右端部)と繋がる蝶ボルト14の頭部は、長孔10からの上記軸部13の抜けを防止する係止部として機能する。
【0017】
スライダ11の保持部12には、台座本体8における突出部9の突出方向に延びて同保持部12を貫通するねじ孔24が形成されている。このねじ孔24は、上記ねじ孔23と交差している。そして、ねじ孔24における施工面2と反対側の部分には、ボルト16が施工面2に向けてねじ込まれている。なお、ボルト16がねじ孔24にねじ込まれた状態のもとで、同ボルト16におけるねじ部16cの先端部は保持部12における施工面2側の部分から突出している。更に、ねじ部16cの上記先端部はポンチ等によって扁平加工されており、それによって上記先端部がねじ孔24の内径に対し拡径している。
【0018】
ボルト16の頭部16aには六角穴16bが形成されている。そして、六角穴16bに工具を挿入した状態で同工具を用いて、ボルト16をその中心線周りに回動操作することにより、同ボルト16が保持部12に対し上記中心線方向に変位し、その変位に伴ってボルト16の頭部16aが保持部12に対し接近離間する。なお、ボルト16におけるねじ部16cの先端部であってねじ孔24の内径よりも拡径した部分は、ねじ孔24からのボルト16の抜け止めとして機能し、ボルト16を緩める方向に過剰に回動操作したときにねじ孔24からのボルト16の脱落を防止する。
【0019】
継手用台座1には、ボルト16の回動操作に基づきスライダ11を軸部13の延びる方向に押圧し、それによってスライダ11(保持部12又は蝶ボルト14の頭部)を台座本体8の突出部9に押し付けて固定する固定部材17が設けられている。固定部材17は、台座本体8の突出部9とスライダ11の保持部12との間の隙間に配置された第1プレート18と、その第1プレート18の端部(図1の下端部)に繋がる第2プレート19と、を備えている。
【0020】
固定部材17の第1プレート18において、長孔10の長手方向及び軸部13の延びる方向に対しそれぞれ直交する方向の幅は、その方向における長孔10の幅よりも大きくされている。この第1プレート18における第2プレート19側の端部とは反対側の端部には、軸部13を径方向に挟み込むように収容する凹所21が形成されている。また、固定部材17の第2プレート19は、上記突出部9と上記保持部12との間の隙間外に配置されており、第1プレート18に対し傾斜してボルト16の頭部16aにおける保持部12に対する接近離間方向について同保持部12との間に隙間を有している。更に、第2プレート19は、上記ボルト16のねじ部16cを挿通するための挿通部20(この例では孔)を有している。
【0021】
そして、ボルト16の締め付ける方向への回動操作に基づき、同ボルト16の頭部16aが保持部12に接近すると、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に回動し、それに伴って第1プレート18が蝶ボルト14の頭部と突出部9とを軸部13の延びる方向に押圧する。詳しくは、第1プレート18が突出部9に押圧されることによって固定部材17が軸部13の延びる方向において保持部12を突出部9から離れる方向に押圧する。このように保持部12が突出部9から離れる方向に押圧されることに伴い、軸部13と繋がる蝶ボルト14の頭部が軸部13の延びる方向において突出部9に押圧され、それによってスライダ11(継手6)が台座本体8(突出部9)に対し固定される。
【0022】
一方、ボルト16の緩める方向への回動操作に基づき同ボルト16の頭部16aが保持部12から離間すると、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に上述した回動とは逆の方向への回動が許容される。その結果、第1プレート18による蝶ボルト14の頭部と突出部9との軸部13の延びる方向についての押圧が解除される。詳しくは、第1プレート18の突出部9に対する押圧が解除されることによって固定部材17が軸部13の延びる方向において保持部12を突出部9から離れる方向に押圧することも解除される。そして、同押圧が解除されることによって、軸部13と繋がる蝶ボルト14の頭部が軸部13の延びる方向において突出部9に押圧されることも解除される。その結果、スライダ11(継手6)の台座本体8(突出部9)に対する固定も解除され、スライダ11が長孔10の長手方向にスライド移動したり、軸部13の中心線周りに回動したりすることが可能となる。
【0023】
なお、図2は、仕切板3の透孔22側から継手用台座1を見た状態を示している。同図から分かるように、継手用台座1のボルト16は透孔22の中心線方向において同透孔22と重なるように配置されている。
【0024】
次に、継手用台座1を用いて継手6を設置する手順について説明する。
図1において、仕切板3を設置する前に施工面2に対し、継手用台座1の台座本体8を固定ボルト7によって取り付ける。その後、スライダ11の軸部13を台座本体8(突出部9)の長孔10に通し、軸部13のねじ孔23に蝶ボルト14をある程度までねじ込み、スライダ11が台座本体8の突出部9に対し相対移動することが可能となるようにしておく。
【0025】
図3は、スライダ11が自重により台座本体8の突出部9に対し最下点まで下がった状態を示している。このとき、第1プレート18は、保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に保持部12との間に隙間を有するよう回動して傾いた状態となる。すなわち、第1プレート18がそうした状態となるようボルト16のねじ部16cがねじ孔24にねじ込まれている。
【0026】
その後、台座本体8の突出部9に対するスライダ11の相対移動を通じて、継手6の位置が適正な位置(図1の位置)に調整され、その位置で蝶ボルト14の締め付けが行われる。このように蝶ボルト14が締め付けられると、第1プレート18が保持部12との間に隙間を有した状態で、蝶ボルト14の頭部と突出部9とを軸部13の延びる方向に押圧し、その押圧を通じてスライダ11が突出部9に対し固定される。
【0027】
なお、上述したようにスライダ11(継手6)が突出部9に固定されているとき、スライダ11の保持部12にあるボルト16を緩める方向に回動操作すれば、ボルト16の頭部16aが保持部12から離間し、上記第1プレート18の押圧によるスライダ11の突出部9に対する固定が解除される。その結果、突出部9に対しスライダ11を相対移動させることが可能となる。
【0028】
さて、上述したように蝶ボルト14の締め付けによって台座本体8の突出部9にスライダ11が固定された後、施工面2に対し所定の距離をおいて仕切板3が設置される。このように仕切板3が設置されたときには、継手6の第2端6bに接続されたスプリンクラーヘッド5の一部が仕切板3の透孔22から露出する。すなわち、上述したように突出部9に対するスライダ11の相対移動を通じて継手6の位置を適正な位置に調整することにより、仕切板3が設置されたときにスプリンクラーヘッド5の一部が透孔22から露出するようにされる。
【0029】
ただし、突出部9に対するスライダ11の固定位置を誤ったり、仕切板3の設置位置の誤差が生じたりすることが原因で、上記仕切板3を設置したときにスプリンクラーヘッド5が透孔22に対し適正な相対位置になく、その透孔22からスプリンクラーヘッド5の一部を適正に露出させることができない場合がある。この場合、スプリンクラーヘッド5が適正な位置となるようスライダ11(継手6)の位置を適正に調整し直すことが、次のように行われる。
【0030】
すなわち、図4に示すように、仕切板3の透孔22を介して、スライダ11(保持部12)におけるボルト16の頭部16aの六角穴16bに六角レンチ31を挿入し、その状態で六角レンチ31を用いてボルト16を緩める方向に回動操作する。これにより、ボルト16がその中心線方向に変位し、それに伴ってボルト16の頭部16aが保持部12に対し離間する。そして、ボルト16の頭部16aが保持部12から離間すると、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点にして同保持部12から離間する方向に回動することが可能となる。その結果、第1プレート18による軸部13の延びる方向についてのスライダ11(蝶ボルト14の頭部)と台座本体8の突出部9との押圧が解除され、ひいては突出部9に対するスライダ11の固定が解除される。
【0031】
このようにスライダ11の固定を解除した状態のもとでは、スライダ11を仕切板3の透孔22を介して直接的に操作することにより、詳しくは六角レンチ31でスライダ11を上げ下げすることにより、同スライダ11を長孔10内での上記軸部13の変位が可能な範囲で自在に移動させることができる。そして、継手6の第2端6bに接続されたスプリンクラーヘッド5の一部が透孔22から露出するよう、スライダ11(継手6)の位置を調整した後、六角レンチ31による締める方向へのボルト16の回動操作を通じて、同ボルト16の頭部16aを保持部12に接近させる。これにより、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に回動し、第1プレート18がスライダ11と突出部9とを上記軸部13の延びる方向に押圧する。そして、この押圧に伴ってスライダ11における蝶ボルト14の頭部が台座本体8の突出部9に押し付けられる。
【0032】
こうしてスライダ11の位置が固定された後、継手6の第2端6bに接続されたスプリンクラーヘッド5からキャップ25が取り外され、スプリンクラーヘッド5に対し図1に二点鎖線で示すようにシーリングプレート26が取り付けられる。このシーリングプレート26は、スプリンクラーヘッド5を保護するとともに、同ヘッド5から水が放出されたとき、その水が透孔22を介して仕切板3と施工面2との間に入り込むことを防止するためのものである。
【0033】
次に、継手用台座1の作用・効果について説明する。
台座本体8が取り付けられた施工面2から所定の距離をおいて仕切板3を設置した後、継手6の第2端6bに接続されたスプリンクラーヘッド5の一部を仕切板3の透孔22から露出させるよう、台座本体8の突出部9に対するスライダ11(継手6)の固定位置を調整する必要が生じたとき、その調整を容易かつ速やかに行うことが可能となる。
【0034】
すなわち、上記スライダ11の固定位置を調整する際には、仕切板3の透孔22を介して保持部12にあるボルト16を六角レンチ31で回動操作することにより、スライダ11の固定が解除される。このようにスライダ11の固定を解除すれば、同スライダ11を上記透孔22を介して直接的に操作することにより、上記スライダ11を長孔10内での軸部13の変位が可能な範囲で自在に移動させることができる。このため、台座本体8の突出部9に対しスライダ11を容易かつ速やかに相対移動させることができ、そのスライダ11の移動を通じて同スライダ11の固定位置の調整を容易かつ速やかに行うことが可能となる。
【0035】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
図5に示すように、固定部材17の第1プレート18は、台座本体8の突出部9とスライダ11における蝶ボルト14の頭部との間の隙間に配置されていてもよい。この場合、固定部材の第2プレート19は、突出部9の長孔10を貫通した状態で第1プレート18の端部に繋がる。なお、この例の第2プレート19では、長孔10を貫通することができるよう幅を狭くする一方、そのように幅を狭くしても挿通部20を形成できるよう同挿通部20を貫通孔ではなく切り欠きとする。
【0036】
この構成によれば、回動操作されたボルト16の頭部16aが保持部12に接近すると、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に回動し、それに伴って第1プレート18が蝶ボルト14の頭部に押圧される。これにより、固定部材17が軸部13の延びる方向において蝶ボルト14を突出部9から離れる方向に押圧し、その蝶ボルト14と軸部13を介して繋がる保持部12が突出部9に押圧される。その結果、スライダ11(継手6)が台座本体8(突出部9)に対し固定される。
【0037】
一方、回動操作されるボルト16の頭部16aが保持部12から離間すると、第2プレート19が保持部12における第1プレート18の端部寄りの縁部分P1を支点に上述した回動とは逆の方向への回動が許容される。その結果、第1プレート18の蝶ボルト14の頭部に対する押圧が解除され、ひいては固定部材17が保持部12を軸部13の延びる方向において突出部9に押圧することも解除される。これにより、スライダ11(継手6)の台座本体8(突出部9)に対する固定が解除され、スライダ11が長孔10内での軸部13の変位可能な範囲で自在に移動することが可能となる。
【0038】
図6に示すように、継手6における第1端6a寄りの部分を、第1端6aに近づくほど施工面2に近づくよう同施工面2に対し傾斜させてもよい。この場合、給水管4が施工面2に配設され、且つ、継手6が施工面2から離れた位置に固定される場合であっても、その給水管4を大きな曲率で曲げることなく継手6の第1端6aに繋ぐことができる。
【0039】
図7~9に示すように、継手6にボルト16(操作部材)の位置についてのガイドを行うガイド部27を設けてもよい。なお、このときの継手6は、スライダに支持されるとともにガイド部が設けられた継手本体としての役割を担う。上記ガイド部27は、図7に示すように、継手6の第2端6bにおけるボルト16側の面から突出するように設けられている。また、ガイド部27は、透孔22を介して見える位置に形成された凹曲面28を有している。この凹曲面28は、ガイド部27の突出方向の先端部に形成されており、ボルト16のねじ部16c(図8図9)の周方向に湾曲している。更に、凹曲面28は、図7において、ボルト16の六角穴16bにおける左半分を囲んだ状態に見えるよう形成されている。また、凹曲面28は、図8に示すように、ボルト16の軸線方向(図8の上下方向)に延びている。
【0040】
図8は、スライダ11が自重により台座本体8の突出部9に対し最下点まで下がった状態を示している。この状態のもとで、台座本体8の突出部9に対するスライダ11の相対移動を通じて継手6の位置が適正な位置に調整され、その位置で蝶ボルト14が締め付けられることによってスライダ11が突出部9に対し固定される。その後、図9に示すように、施工面2に対し所定の距離をおいて仕切板3が設置される。
【0041】
仕切板3の設置後にスライダ11(継手6)の位置を適正に調整し直す際には、図9に示すように、仕切板3の透孔22を介して、スライダ11(保持部12)におけるボルト16の頭部16aの六角穴16bに六角レンチ31を挿入し、その状態で六角レンチ31を用いてボルト16を回動操作する。このようにボルト16を回動操作すべく六角穴16bに六角レンチ31を挿入する際には、ガイド部27によってボルト16における六角穴16bの位置についてのガイドが以下のように行われる。
【0042】
すなわち、ガイド部27の凹曲面28が目印となり、その凹曲面28の目視によって六角穴16bの位置の確認が容易になるため、その六角穴16bに六角レンチ31を挿入しやすくなる。また、凹曲面28の内側に六角レンチ31を挿入し、その状態で六角レンチ31を凹曲面28に沿わせて同凹曲面28の延びる方向(ボルト16の軸線方向)に移動させることにより、六角レンチ31を容易に六角穴16bに挿入することができるようになる。
【0043】
以上から分かるように、ガイド部27によるボルト16の位置についてのガイドとは、目視によるボルト16(六角穴16b)の位置の確認を容易とする目印の表示、及び、ボルト16の頭部16aの周辺に位置する上記凹曲面28の形状によって六角レンチ31をボルト16の操作位置(六角穴16bの位置)に臨ませやすくすること、を意味する。こうしたガイド部27によるボルト16の位置についてのガイドにより、透孔22の内壁と第2端6bの外壁との間という狭い箇所に六角レンチ31を差し込んで六角穴16bに挿入しなければならないとしても、その挿入を行いやすくすることができ、ボルト16を六角レンチ31を用いて回動操作することが容易になる。
【0044】
なお、ガイド部27によるボルト16の位置についてのガイドは、目視によるボルト16(六角穴16b)の位置の確認を容易とする目印の表示のみであってもよい。この場合、例えば、図2に示す継手6の第2端6bにおけるボルト16側の部分であって六角穴16bに対応する部分にポンチ等で凹部を設け、その凹部をガイド部とすることが考えられる。更に、上記凹部を目立たせるべく、同凹部に塗料や畜光塗料を入れるようにしてもよい。また、第2端6bにおけるボルト16側の部分であって六角穴16bに対応する部分に、上述したような凹部を設けることなく塗料や畜光塗料で印をつけるようにし、その部分を上記ガイド部として機能させてもよい。
【0045】
図8及び図9において、ボルト16を更に長くして同ボルト16が保持部12から延びた状態となるようにし、それによってボルト16の頭部16aをガイド部27の凹曲面28に到達させるようにしてもよい。この場合、ボルト16の頭部16aと固定部材17の第2プレート19との間に円筒状のスペーサを設け、そのスペーサをボルト16のねじ部16cが貫通する構造とすることが好ましい。
【0046】
上述したように、ボルト16の頭部16aがガイド部27の凹曲面28に到達していれば、六角レンチ31を凹曲面28の内側に挿入することにより、ボルト16の操作位置である頭部16a(六角穴16b)に六角レンチ31を容易に臨ませることができるようになる。また、上記スペーサを設けることにより、回動操作を通じてボルト16の頭部16aを保持部12に接近させたとき、上記スペーサによって第2プレート19が押されるようになる。従って、ボルト16の頭部16aがガイド部27の凹曲面28に到達するよう、同ボルト16が保持部12から延びた状態となっていても、ボルト16の頭部16aを保持部12に接近させることにより第2プレート19の押圧を行うことができる。
【0047】
なお、上記スペーサを設ける代わりに、頭部16aに第2プレート19側に突出して同第2プレート19に当たる突部を設けたり、第2プレート19に頭部16a側に突出して同頭部16aに当たる突部を設けたりしてもよい。ちなみに、上記スペーサを設ければ、それらの突部を設ける必要がなくなるため、頭部16aや第2プレート19の形状を複雑なものにすることなく、保持部12に対するボルト16の頭部16aの接近によって第2プレート19の押圧を行うことができる。
【0048】
図8及び図9において、ガイド部27及び凹曲面28を保持部12側に延ばしてボルト16の頭部16aを凹曲面28に到達させたり、継手6におけるガイド部27及び凹曲面28が設けられた第2端6bを更に保持部12寄りの位置に設けてボルト16の頭部16aを凹曲面28に到達させたりしてもよい。
【0049】
・ボルト16におけるねじ部16cの先端部を扁平加工する代わりに、その先端部に割りピンを設けることにより、ねじ孔24からのボルト16の抜け止めを実現するようにしてもよい。
【0050】
・継手6として、給水管4とスプリンクラーヘッド5との二つの部材を繋ぐものを例示したが、それら給水管4及びスプリンクラーヘッド5以外の二つの部材を繋ぐものであってもよい。この場合、継手用台座1の台座本体8が取り付けられる施工面2は、必ずしも水平面である必要はなく、垂直面など水平面以外の面であってもよい。
【0051】
次に、上記実施形態から把握できる技術思想について記載する。
(イ)施工面に取り付けられる台座と、前記台座に移動可能に保持されたスライダと、前記スライダに支持された継手本体と、を備える継手において、前記スライダは、前記台座に形成されている貫通孔を貫通するとともに同貫通孔内での変位が可能である軸部と、その軸部の一方の端部に繋がって前記継手本体を支持する保持部と、前記軸部のもう一方の端部に繋がって前記貫通孔からの前記軸部の抜けを防止する係止部と、を備えており、前記スライダの前記保持部には回動操作される操作部材が設けられており、前記操作部材の回動操作に基づき前記スライダを前記軸部の延びる方向に押圧し、それによって前記保持部又は前記係止部を前記台座に押し付けて固定する固定部材が設けられており、前記継手本体には前記操作部材の位置についてのガイドを行うガイド部が設けられていることを特徴とする継手。
【0052】
上記構成によれば、台座に対するスライダの固定位置を調整する際、そのスライダの固定を解除すべく、仕切板の透孔を介して保持部にある操作部材が回動操作される。そして、このように操作部材を回動操作するときには、ガイド部によって操作部材の位置についてのガイドが行われるため、操作部材の位置を把握して同操作部材の回動操作をすることが容易になる。なお、ガイド部による操作部材の位置についてのガイドとしては、目視による操作部材の位置の確認を容易とする目印の表示、及び、操作部材の周辺形状によって回動操作用の工具を操作部材の操作位置に臨ませやすくすること、等々があげられる。
【0053】
(ロ)前記操作部材は、前記回動操作に基づき前記スライダの前記保持部に対し頭部が接近離間するボルトであって、前記ガイド部は、前記継手本体における前記ボルト側の面から突出するように設けられ、且つ、突出方向の先端部に前記ボルトのねじ部の周方向に湾曲する凹曲面を有しており、前記ボルトは、その頭部が前記ガイド部の凹曲面に到達するよう前記保持部から延びた状態となっている前記(イ)に記載の継手。
【0054】
上記構成によれば、継手本体におけるガイド部の凹曲面の内側にボルトを回動操作するための工具を挿入すれば、その工具を容易にボルトの操作位置である上記頭部に臨ませることができるようになる。
【0055】
(ハ)前記固定部材は、前記台座と前記スライダとの間の隙間に配置された第1プレートと、前記台座と前記スライダとの間の隙間外に配置されて前記第1プレートの端部に繋がるとともに同第1プレートに対し傾斜して前記ボルトの前記頭部における前記保持部に対する接近離間方向について同保持部との間に隙間を有する第2プレートと、からなり、前記第2プレートには前記ボルトの前記ねじ部を挿通するための挿通部が設けられており、且つ、前記第2プレートと前記ボルトの前記頭部との間にはスペーサが設けられており、前記第2プレートは、前記ボルトの回動操作に基づき同ボルトの前記頭部が前記保持部に接近したとき、前記保持部における前記第1プレートの端部寄りの縁部分を支点に回動することによって、前記第1プレートが前記スライダと前記台座とを前記軸部の延びる方向に押圧するよう構成されている前記(ロ)に記載の継手。
【0056】
上記構成によれば、回動操作によってボルトの頭部を保持部に接近させると、その頭部と第2プレートとの間のスペーサによって同第2プレートが押されることにより、第2プレートが保持部における第1プレートの端部寄りの縁部分を支点に回動し、第1プレートがスライダと台座とを上記軸部の延びる方向に押圧する。そして、この押圧に伴ってスライダにおける上記保持部又は上記係止部が台座に押し付けられ、スライダの位置が固定されるようになる。従って、ボルトの頭部がガイド部の凹曲面に到達するよう、同ボルトが保持部から延びた状態となっていても、ボルトの頭部を保持部に接近させることにより第2プレートの押圧を行うことができる。また、上記スペーサを設けることにより、ボルトの頭部や固定部材の第2プレートの形状を複雑なものにすることなく、保持部に対するボルトの頭部の接近によって第2プレートの押圧を行うことができる。
【0057】
(ニ)施工面に取り付けられる台座と、前記台座に移動可能に保持されたスライダと、前記スライダに支持された継手本体と、を備える継手において、前記スライダには操作部材が設けられており、前記操作部材の回動操作に基づき前記スライダを前記台座に押し付けて固定するものであり、前記継手本体には前記操作部材の位置についてのガイドを行うガイド部が設けられていることを特徴とする継手。
【符号の説明】
【0058】
1…継手用台座、2…施工面、3…仕切板、4…給水管、5…スプリンクラーヘッド、6…継手、6a…第1端、6b…第2端、7…固定ボルト、8…台座本体、9…突出部、10…長孔、11…スライダ、12…保持部、13…軸部、14…蝶ボルト、15…継手、16…ボルト、16a…頭部、16b…六角穴、16c…ねじ部、17…固定部材、18…第1プレート、19…第2プレート、20…挿通部、22…透孔、23…ねじ孔、24…ねじ孔、25…キャップ、26…シーリングプレート、27…ガイド部、28…凹曲面、31…六角レンチ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9