(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220707BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2021134036
(22)【出願日】2021-08-19
(62)【分割の表示】P 2017237539の分割
【原出願日】2017-12-12
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2017012306
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 舞
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-322798(JP,A)
【文献】特開平05-085225(JP,A)
【文献】特開2015-071391(JP,A)
【文献】特開2014-194504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0118462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ装置であって、
下ケースと、
前記下ケースに装着されて前記下ケースとともに筐体を形成する上ケースと、
前記下ケースに固定される表示器と、
前記下ケースに収容され、前記表示器が出射した光を被投射部材に導く光学系と、
外光センサが実装された制御基板と、
前記制御基板を前記下ケースに固定するねじ、を備え、
前記制御基板は、前記上ケースの天面と前記表示器の上面との間に設けられ
、
前記ねじは、前記ヘッドアップディスプレイ装置から前記上ケースを取り外したときに外部に露出する頭部を備える、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記筐体内において、前記制御基板が位置する空間と前記表示器から出射される前記光が通る空間との間を仕切るブラインド部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
外光を受光する受光部と、前記受光部から受光した前記外光を出射する光出射部を備えた導光体、を備え、
前記上ケースは、貫通孔が形成され、
前記導光体は、前記受光部が前記貫通孔に位置し、前記光出射部が前記外光センサに位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実景に重畳するように虚像を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されるHUD装置は、表示光を出射する光源ユニットと、光源ユニットからの表示光をフロントガラスに導く反射体と、光源ユニットおよび反射体が収容されるケース体と、ケース体の外部に設けられ、光源ユニットを制御する制御基板と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のHUD装置においては、制御基板はケース体の外部に設けられている。このため、HUD装置のサイズが大型化していた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、小型のヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段は以下の通りである。
ヘッドアップディスプレイ装置であって、
下ケースと、
前記下ケースに装着されて前記下ケースとともに筐体を形成する上ケースと、
前記下ケースに固定される表示器と、
前記下ケースに収容され、前記表示器が出射した光を被投射部材に導く光学系と、
外光センサが実装された制御基板と、
前記制御基板を前記下ケースに固定するねじ、を備え、
前記制御基板は、前記上ケースの天面と前記表示器の上面との間に設けられ、
前記ねじは、前記ヘッドアップディスプレイ装置から前記上ケースを取り外したときに外部に露出する頭部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヘッドアップディスプレイ装置によれば、小型のヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【
図2】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置を表示器が見える位置においてxz平面で切断した断面図である。
【
図3】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の下ケースの斜視図である。
【
図4】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の上ケースの底面図である。
【
図5】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置を外光センサ周りが見える位置においてxz平面で切断した断面図である。
【
図6】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の上ケース、制御基板および平面鏡保持部材を外した平面図である。
【
図7】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の上ケースを外した凹面鏡周りの拡大斜視図である。
【
図8】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の上ケースを外した平面図である。
【
図9】(a)は、
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の平面鏡と平面鏡保持部材とを配置した下ケースの斜視図、(b)は、同平面図である。
【
図10】
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置の上ケースを外し、表示器の表示面をxz平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、「HUD装置」と称する。)を、図面を参照しながら説明する。なお、説明における上下前後左右およびx,y,z軸は、各図の矢印に従う。
【0010】
本実施形態に係るHUD装置100は、
図1に示す様に、車両300の例えば図示しないダッシュボード内に搭載され、車両300の被投射部材であるフロントガラス200に向けて表示光Lを出射する。運転者である視認者Uは、フロントガラス200で反射した表示光Lを受けて、フロントガラス200を通して見える虚像Vを視認する。
【0011】
HUD装置100は、
図2と
図5に示すように、筐体110と、表示器120と、平面鏡130と、凹面鏡140と、制御基板150と、外光センサ160と、導光体170と、平面鏡130を保持する平面鏡保持部材180と、を備える。HUD装置100は、表示器120から表示光Lを平面鏡130へ出射し、平面鏡130で表示光Lを反射し、その後凹面鏡140で表示光Lを反射する。凹面鏡140で反射された表示光Lは、筐体110の後述する上ケース111の開口部113を通過し、フロントガラス200で反射される。
【0012】
筐体110は、例えば黒色の合成樹脂により形成される。筐体110は、上方に開口した箱状に形成される下ケース112と、下ケース112を上方から閉じるように下ケース112の上部に装着される上ケース111と、を備える。
図2と
図5に断面図で、
図4に底面図で示すように、上ケース111には、凹面鏡140で反射された表示光Lを通過させる開口部113が設けられている。開口部113を覆うように、透光性のカバー114が配置される。カバー114は、例えば、開口部113にレーザ溶着されている。上ケース111は、開口部113と表示器120との間に遮光壁115を有する。遮光壁115は、開口部113から表示器120に太陽光が入射して虚像Vが見えにくくなる現象(ウォッシュアウト)を防止する。
【0013】
図2及び
図5に示すように、下ケース112は、平面鏡130や凹面鏡140などを収容する。さらに、下ケース112には、収容部112aが形成されている。収容部112aには、表示器120および放熱フィン117が収容される。下ケース112は、収容部112aの上板をなす制御基板載置部116を備える。制御基板載置部116は、下ケース112の底面112bよりも上方に位置する。制御基板載置部116は、その上面に制御基板150を設置するために設けられる。
【0014】
図3に平面図で示すように、下ケース112は、後方左側に、制御基板載置部116から下ケース112の底面112bまで垂下する間仕切壁119a,119bを有する。制御基板載置部116、間仕切壁119a,119bは、表示器120および放熱フィン117を収容する収容部112aを構成する。
図2に示すように、間仕切壁119aは、表示器120の投射レンズ121周りの壁面と一体に形成されている。間仕切壁119aには、
図3に示すように、表示器120から出射される表示光Lを通過させる窓部192が形成される。
【0015】
下ケース112は、さらに、前方に、凹面鏡140の一対の軸141a,141bを受けるための一対の軸受118a,118bを有する。一対の軸受118a,118bは、凹面鏡140をその長手方向において挟み込むように互いに離れて位置する。一対の軸受118a,118bは、半円柱状をなす第1および第2の軸受孔190a,190bを有する。第1の軸受孔190aにはその長手方向の中央に大径部受191aが形成されている。大径部受191aは、第1の軸受孔190aの周方向に沿って半円環状をなす。大径部受191aには、後述する軸141aの大径部145aが嵌合する。
【0016】
下ケース112は、その後方右下に平面鏡固定部112cを有する。平面鏡固定部112cは、下ケース112の底面112bにおいて、平面鏡130の下端部を固定する凹部112hを有する。下ケース112は、
図3に示す係止孔112d,112e,112f,112gに、
図4に示す上ケース111のフック111a,111b,111c,111dが係止されることで、上ケース111に固定される。下ケース112と上ケース111とで、筐体110を形成する。
【0017】
表示器120は、
図2に示すように、光を放射するバックライトと、バックライトからの光を、制御部からの画像信号に従って変調し、画像を表す表示光Lを生成するDMD(Digital Micro Mirror Device)素子と、生成された表示光Lを拡大する投射レンズ121と、を備える。
図6に示すように、下ケース112後方左下の表示器120は、表示画像を示す表示光Lを下ケース112後方右下の平面鏡130へ出射する。表示器120は、下ケース112後方左下の収容部112aに固定され、表示器120の周囲は放熱フィン117に覆われている。放熱フィン117は、表示器120の熱を放熱するべく、HUD装置100の外部に露出している。なお、表示光Lを生成するのは、DMD素子に限られず、液晶パネルであってもよい。
【0018】
図10に示すように、表示器120の表示面123は、ブラインド部181の延長線Eに対して鋭角Aをなすように斜め上に向けて配置されている。表示器120の表示面123には、画像が表示され、表示面123から表示光Lが出射される。
【0019】
平面鏡130は、
図5に示すように、略長方形の板状体である。平面鏡130は、
図6に示すように、下ケース112後方左下の表示器120から入射した表示光Lを、下ケース112前方の凹面鏡140へ反射する。平面鏡130は、合成樹脂やガラス等から形成された平板状の基材の一表面に金属の反射膜が形成されたものである。平面鏡130は、表示器120からの表示光Lを凹面鏡140に向けて反射する。
【0020】
凹面鏡140は、
図6に示すように、その長手方向に沿って湾曲する略長方形の板状の鏡面を有する。凹面鏡140は、平面鏡130からの表示光Lをフロントガラス200へ向けて反射する。凹面鏡140は、合成樹脂やガラス等から形成された基材の一表面に金属の反射膜が形成されたものである。平面鏡130と凹面鏡140とは、表示器120からの表示光Lを、被投射部材を構成するフロントガラス200へ導く光学系を構成している。
【0021】
凹面鏡140は、
図7に示すように、上記鏡面を有する本体部140aと、この本体部140aの両側端に位置する軸141a,141bと、を備えている。各軸141a,141bは、凹面鏡140本体に近い側が断面矩形状に形成されており、先端部が断面円形に形成されている。軸141aの先端部は、
図3に示す第1の軸受孔190aに回動可能に嵌合し、軸141bの先端部は第2の軸受孔190bに回動可能に嵌合する。軸141aは、その長手方向の中央に位置する大径部145aを備える。この大径部145aは、第1の軸受孔190aの大径部受191aに嵌まる。これにより、軸141a、ひいては凹面鏡140は、軸受118aのスラスト方向に沿って固定される。また、軸141aは、下ケース112の底面112bに向かって延びる矩形板状のレバー部142を有する。軸141a,141bは、
図3、
図6に示すように、それぞれ上から断面略Z字形の金具193a,193bおよびビス(ねじ)195a,195bで軸受孔190a,190bに摺動回転可能に固定される。
【0022】
図7に示すように、モータ143は、モータ143が駆動することで、進退機構144を介して、凹面鏡140をその軸141a,141bを中心に回転させる。モータ143は、下ケース112の前方左側の底面112bに固定されている。モータ143は、モータ143が駆動することで軸回転する出力軸143aを備える。進退機構144は、モータ143の出力軸143aの軸回転を直線運動に変換し、その直線運動をレバー部142に伝達する。これにより、凹面鏡140は、モータ143の動力によって、凹面鏡140の傾斜角を調整する。モータ143および進退機構144は、レバー部142に回転力を伝える回転力伝達部を構成する。
【0023】
制御基板150は、HUD装置100の全体の動作を制御する制御部が実装されたプリント回路基板である。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行し、表示器120を制御し、モータ143を通じて凹面鏡140の傾斜角を制御する。また、制御部は、外光センサ160から取得した車両300の前方の照度データに応じて、表示光Lの発光輝度を調整するように表示器120を制御する。より具体的には、制御部は、外光センサ160からの照度データが示す照度が高くなるに従って、即ち、車両300の前方の照度が高くなるに従って、表示画像Vの表示階調が高くなるように、表示器120に表示光Lの発光輝度を制御させる。制御基板150は、
図2に示すように、上ケース111の天面(前面壁部)111fと表示器120の上面122との間に設けられている。制御基板150には、
図5に示すように、外光センサ160が実装されている。本例では、外光センサ160は、制御基板150の上面のうち遮光壁115側に位置する。
【0024】
外光センサ160は、フォトトランジスタ等の光検出素子である。外光センサ160は、車両300の前方の照度を検出する。外光センサ160は、制御基板150と電気的に接続されており、検出した照度データを制御基板150の制御部へ出力する。
【0025】
導光体170は、
図5に示すように、例えばPMMA(PolyMethylMethAcrylate)等の透光性樹脂から構成され、車両300の前方の光を外光センサ160に導光する。導光体170は、外光センサ160の上方に配置されている。導光体170は、四角柱状部170aと、その四角柱状部170aの先端に位置する三角柱状部170bとが連結された形状をなす。導光体170は、外光を受光する受光部171と、受光部171により受光されて導光体170を通過する光を光出射部173に向けて反射する光反射部172と、導光体170により導かれた光を出射する光出射部173と、を備える。受光部171は、導光体170の四角柱状部170aの底面に位置する。受光部171は、カバー114の内側にある上ケース111の遮光壁115の貫通孔111eに挿嵌される。光反射部172は、三角柱状部170bの一方の傾斜面に位置する。光出射部173は、三角柱状部170bの他方の傾斜面に位置する。光出射部173は、外光センサ160に対向する。
【0026】
平面鏡保持部材180は、例えば黒色の合成樹脂からなり、
図9(a)に示すように、側面視で断面略L字状の薄板状に形成されている。平面鏡保持部材180は、制御基板150と表示器120との間に配置されているブラインド部181と、ブラインド部181の右側端部から下ケース112の底面112bに向かって延び、平面鏡130を保持する平面鏡保持部182とを備えている。ブラインド部181の上部には、
図8に示すように、制御基板150が載置されている。ブラインド部181は、制御基板150が位置する空間と表示器120から出射される光が通る空間との間を仕切っている。制御基板150は、
図5、
図8に示すように、ブラインド部181および下ケース112にビス195d,195e,195fで上から固定されている。ブラインド部181は、下ケース112にビス195d,195e,195f,195g,195h,195i,195jで上から固定されている。ビス195は、締結用具であって、頭部とねじ部を有する。ビス195は、ねじ部にすべて同方向のつる巻き線に沿った溝を有する雄ねじである。ビス195a~195kは、上ケース111を取り外したときに外部に頭部が露出する位置に配置されていて、同一方向に延びている。ブラインド部181は、制御基板150の裏面で、迷光を除去することができる。ブラインド部181は、その右側端部に短冊状の挿通孔183を備えている。
図5、
図9(b)に示すように、平面鏡130は、挿通孔183と下ケース112の底面112bに設けられた平面鏡固定部112cとに上下端を保持され、平面鏡保持部182に両側端および背面を保持されている。
【0027】
このHUD装置100によれば、制御基板150が筐体110の内部に設けられているので、HUD装置の小型化を図ることができる。また、外光センサ160が制御基板150に実装されているので、外光センサホルダや外光センサ用の基板が不要である。従って、外光センサ用の基板と制御基板150との間の配線も不要である。これにより、外光センサ用の基板と制御基板150との間の配線の取付作業が無くなるので、外光センサと制御基板との接続構造は、部品点数を削減しつつ簡単に組立できるものになる。また、制御基板150が取り付けられている場所は、従来のHUD装置内でのデッドスペースであるので、HUD装置100は、従来制御基板が設置されていたスペース分の体積を減らすことができる。
【0028】
また、HUD装置100は、外光センサ160に外光を導光する導光体170を備えているので、外光センサ160を筐体110の外部に露出させなくてよく、外光センサホルダが必要ない。また、導光体170の長さ等を調整することによって筐体110の外周付近に外光センサ160の配置を限定されることがなくなる。従って、外光センサ160を実装する制御基板150の配置も限定されなくなる。
【0029】
HUD装置100は、遮光壁115を備え、導光体170が遮光壁115に形成された貫通孔111eを介して外光センサ160に外光を導く。このため、開口部113や貫通孔111eから入射する太陽光による迷光によって表示光Lが見えにくくなるのを防止できる。なお、外光センサ160は、制御基板150の上面のうち、遮光壁115に近い端部に位置していると、外光が表示器120に入射する可能性をより低下させることが出来る。
【0030】
制御基板150は、表示器120の上に配置されているが、平面鏡保持部材180のブラインド部181が制御基板150の下部に配置されているので、HUD装置100はブラインド部181によって迷光を除去できる。また、ブラインド部181と平面鏡保持部182とは、一つの部材であるので、部品点数が削減でき、組立が容易になる。
【0031】
表示器120の表示面123は、ブラインド部181に対して鋭角Aをなすように斜め上に向けて配置されている。このため、開口部113から筐体110内に侵入した迷光Sが表示面123に照射された場合、表示面123は斜め上に迷光Sを反射する。よって、迷光Sを、直接に、又は平面鏡130を介して、ブラインド部181の下面に到達させることができる。従って、表示面123で反射された迷光Sは視認者Uに到達するおそれが小さくなり、視認者Uの視界は迷光Sに妨げられる可能性が小さくなる。また、従来、表示面は下ケースの底面に向けて配置されていたのに対し、本実施形態では、表示面123は、ブラインド部181に対して鋭角Aをなすように斜め上に向けて配置されていることにより、HUD装置100の組立時に、組立作業者は、下ケース112の上方から窓部192を介して表示器120の表示面123を目視しながら表示器120の取付作業をすることができる。従って、本実施形態のHUD装置100は、従来の表示面が下ケースの底面に向けて配置されていたHUD装置に比べて、作業効率が向上するとともに作業精度を高めることができる。
【0032】
軸受118a,118bは、上ケース111を取り外したときに外部に露出する位置に形成されているので、凹面鏡140の軸141a,141bを上から軸受118a,118bに配置するだけで、凹面鏡140の設置ができる。
【0033】
また、軸141aは、大径部145aを備えており、第1の軸受孔190aは、大径部145aが嵌合する大径部受191aを備えているので、凹面鏡140のスラスト方向へのズレを防ぐことができ、凹面鏡140を下ケース112の軸受118a,118bに容易に取り付けることができる。
【0034】
回転力伝達部であるモータ143および進退機構144は、下ケース112の底面112bに設けられ、レバー部142は、底面112bに向かって延びているので、凹面鏡140を回転させる機構の組立が容易になる。
【0035】
次に、HUD装置100の組立方法について説明する。
【0036】
下ケース112の収容部112aに表示器120および放熱フィン117が固定される。その下ケース112内にモータ143を固定し、凹面鏡140の軸141a,141bを、それぞれ軸受118a,118bに嵌め込む。そして、金具193a,193bで軸受118a,118bに固定する。
【0037】
次に、ブラインド部181が制御基板載置部116の上面に位置するように平面鏡保持部材180を下ケース112に嵌め込む。そして、ブラインド部181の上面に制御基板150が設置される。
【0038】
この状態で、ビス195a~195kが一斉に螺合される。最後に、上ケース111が下ケース112に嵌め込まれる。以上でHUD装置100の組立が完了する。
【0039】
このように、モータ143、凹面鏡140、平面鏡保持部材180、制御基板150を、下方向に嵌め込み、上からビス195で下ケース112に固定するだけでよいので、HUD装置100の組立が容易になる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されず、種々の応用及び変形が可能である。
【0041】
本実施形態では、平面鏡保持部材180は、側面視で断面略L字状の薄板状に形成され、平面鏡130は挿通孔183と平面鏡固定部112cとに上下端を保持され、平面鏡保持部182に両側端を保持される構成であった。しかし、平面鏡保持部材180は、平面鏡130を保持でき、かつ、ブラインド部181によって迷光を除去できるものであれば、その形状は問わない。ブラインド部181と平面鏡保持部182とは、一つの部材であると部品点数が削減でき、組立が容易になるが、別々の部材であってもよい。
【0042】
本実施形態では、制御基板150の制御部が外光センサ160からの照度データに応じて表示光Lの発光輝度を調整していたが、制御基板150は外光センサ160を実装しておらず視認者Uが自ら表示光Lの発光輝度を調整してもよい。あるいは、制御部が外光センサ160からの照度データに応じて表示光Lの発光輝度を調整することができ、かつ、視認者Uが自ら表示光Lの発光輝度を調整できる構成としてもよい。
【0043】
本実施形態では、被投射部材をフロントガラスとしたが、被投射部材はコンバイナなどであってもよい。
【0044】
本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置は、車載されていたが、車載用に限られず、飛行機、船舶等の任意の移動体に搭載されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、凹面鏡140は、レバー部142を有していたが、凹面鏡140は、レバー部を有さず、レバー部の機能を代替できる他の部品が別個配置されていてもよい。
【0046】
本実施形態では、ブラインド部181(平面鏡保持部材180)は、反射率の低い色である黒色の合成樹脂で形成されていたが、ブラインド部181は、ニッケルとリンとの合金などの反射率の低い物質で形成されていてもよい。あるいは、ブラインド部181の下面だけが、反射率の低い色が印刷されていたり、反射率の低い物質で形成されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、間仕切壁119aは、上方(ブラインド部181の下面)に向けて所定の角度で傾斜していたが、間仕切壁119aは、垂直に形成されていて、側面視逆三角形状の傾斜調整用の部材などを間に挟んで表示面123を配置することで、表示面123が上方に向けて所定の角度で傾斜するようにしてもよい。あるいは、間仕切壁119aは下ケース112に形成されておらず、表示面123が上方に向けて所定の角度で傾斜して配置できる位置決め用の部材が下ケース112に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 ヘッドアップディスプレイ装置
110 筐体
111 上ケース
111e 貫通孔
112 下ケース
113 開口部
115 遮光壁
120 表示器
123 表示面
130 平面鏡
140 凹面鏡
150 制御基板
160 外光センサ
170 導光体
171 受光部
173 光出射部
180 平面鏡保持部材
181 ブラインド部
182 平面鏡保持部
195a~195k ビス(ねじ)
200 フロントガラス(被投射部材)
300 車両
L 表示光
S 迷光
U 視認者