(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】型枠固定金具、型枠の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04G 17/02 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
E04G17/02 E
(21)【出願番号】P 2017147563
(22)【出願日】2017-07-31
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501249870
【氏名又は名称】日工開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】児玉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】松澤 庄次
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061181(JP,A)
【文献】実開昭54-119231(JP,U)
【文献】特開2003-074183(JP,A)
【文献】実開昭55-123555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/02
E04G 17/04
E04G 17/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠用の固定金具であって、
平板部と、
前記平板部に対して起立し、互いに所定の角度で形成される一対の壁部と、
前記平板部に形成され、前記所定の角度で前記壁部に略平行に形成される一対の直線部と、
前記平板部に形成され、前記直線部の延長線の交点近傍に形成される孔又は切欠き部と、
前記壁部と対向する位置に、前記平板部に対して起立し、前記直線部の延長線上に端部が位置する
一対の突起部と、
を具備
し、
それぞれ対応する、前記壁部と前記直線部との間の距離と、前記壁部と前記突起部の端部との間の距離はほぼ一致
することを特徴とする型枠固定金具。
【請求項2】
前記壁部には、型枠の固定用の固定孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の型枠固定金具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の型枠固定金具を用いた型枠の設置方法であって、
コンクリートの上面の型枠の設置位置に墨出しを行い、
墨線の交点に第1の前記型枠固定金具の前記孔または切欠きの位置を合わせ、前記直線部を、墨線の直線に合わせて前記型枠固定金具を配置して、コンクリートに前記型枠固定金具を固定し、
前記第1の型枠固定金具に、一対の型枠を設置して固定し、
前記一対の型枠の上部に、第2の前記型枠固定金具を配置し、前記一対の型枠の突合せ部に前記第2の型枠固定金具の前記孔または切欠きの位置を合わせて固定することを特徴とする型枠の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠の角部を固定することが可能な型枠固定金具およびこれを用いた型枠の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンクリート基礎を構築する際には、捨てコンクリート上にコンクリート用の型枠を設置し、型枠で囲まれた空間にコンクリートを打設することで、基礎が構築される。この際には、例えば捨てコンクリート上の所定の位置に、型枠を設置して固定する必要がある。
【0003】
型枠を固定する方法としては、例えば、型枠の外周部に、アングルやパイプなどのバタ材を縦横に配置して、コンクリートの打設空間を構築する方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、ブーメラン形状の本体の左右の翼部に、本体と直交する楔部を形成し、型枠の内側に配置した角締め金具をステーロッドに固定して型枠を挟み込み、ステーロッドのスリットに楔部を挿入して型枠を締結する方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-9384号公報
【文献】特開平9-144313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法は、型枠の固定構造が複雑であり、型枠を設置して固定するための作業工数を要する。このため、より簡易な構造による、型枠の固定方法が要求される。
【0007】
また、型枠の設置位置はあらかじめ決められ、型枠の設置位置には、例えばコンクリート等の上面に対する墨出しが行われる。しかし、型枠を配置した後に、型枠外周側に固定部材を配置して連結すると、作業時に型枠の配置がずれる場合があり、墨出し通りに型枠を設置することが困難な場合がある。特に、型枠の角部においては、一対の型枠を墨出し通りに正確に配置して固定する作業は容易ではない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、施工作業性に優れ、精度よく型枠を配置することが可能な型枠固定金具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、型枠用の固定金具であって、平板部と、前記平板部に対して起立し、互いに所定の角度で前記壁部に略平行に形成される一対の壁部と、前記平板部に形成され、前記所定の角度で形成される一対の直線部と、前記平板部に形成され、前記直線部の延長線の交点近傍に形成される孔又は切欠き部と、前記壁部と対向する位置に、前記平板部に対して起立し、前記直線部の延長線上に端部が位置する一対の突起部と、を具備し、それぞれ対応する、前記壁部と前記直線部との間の距離と、前記壁部と前記突起部の端部との間の距離はほぼ一致することを特徴とする型枠固定金具である。
【0011】
第1の発明によれば、孔又は切欠き部が形成されるため、墨出しの交点の位置を合わせることが容易であり、正確な位置に型枠固定金具をコンクリートに容易に設置することができる。また、壁部に沿って型枠を配置することが可能であるため、型枠の設置が容易である。
【0012】
また、ガイド部を形成することで、型枠を壁部とガイド部との間に挿入することができるため、型枠の配置が容易である。
【0013】
第2の発明は、コンクリートの上面の型枠の設置位置に墨出しを行い、墨線の交点に第1の前記型枠固定金具の前記孔または切欠きの位置を合わせ、前記直線部を、墨線の直線に合わせて前記型枠固定金具を配置して、コンクリートに前記型枠固定金具を固定し、前記第1の型枠固定金具に、一対の型枠を設置して固定し、前記一対の型枠の上部に、第2の前記型枠固定金具を配置し、前記一対の型枠の突合せ部に前記第2の型枠固定金具の前記孔または切欠きの位置を合わせて固定することを特徴とする型枠の設置方法である。
【0015】
第2の発明によれば、まず型枠固定金具をコンクリート上に設置した後に、型枠固定金具に対して型枠を設置するため、型枠の設置が容易であり、型枠の位置決めも容易である。
【0016】
また、型枠の上部にも型枠固定金具を設置することで、型枠のずれを抑制し、確実の型枠を固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工作業性に優れ、精度よく型枠を配置することが可能な型枠固定金具等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】型枠固定金具1を設置した状態を示す平面図。
【
図3】型枠固定金具1に型枠17を設置した状態を示す平面図。
【
図4】型枠17に型枠固定金具1を固定した状態を示す平面図。
【
図5】型枠17に型枠固定金具1を固定した状態を示す正面図。
【
図7】型枠固定金具1aを設置した状態を示す平面図。
【
図8】型枠固定金具1aに型枠17を設置した状態を示す平面図。
【
図9】型枠17に型枠固定金具1aを固定した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態にかかる型枠固定金具1について説明する。
図1は、型枠固定金具1を示す斜視図である。型枠固定金具1は、型枠を固定するための金具であって、平板部3、壁部5等から構成される。
【0020】
平板部3は、略平坦な部位であり、平板部3の端部に、平板部3に対して略垂直に起立する一対の壁部5が形成される。一対の壁部5は、互いに所定の角度で形成される。図示した例では、一対の壁部5同士が、略90度の角度で形成される。
【0021】
平板部3の一部には、直線部7が形成される。直線部7は、それぞれの壁部5と略平行に形成される。すなわち、一対の直線部7同士は、一対の壁部5の形成角度と同様の角度で形成される。なお、壁部5と直線部7とは所定の間隔をあけて形成される。壁部5と直線部7との間隔は、型枠の厚みに対応する。
【0022】
それぞれの直線部7の延長線上であって、それぞれの延長線の交点近傍には、孔9が形成される。孔9は、例えば円形の貫通孔である。
【0023】
型枠固定金具1は、例えば、金属板からプレス加工によって一体で構成することができる。なお、平板部3や壁部5に、型枠等を固定するための固定用孔を形成してもよい。
【0024】
次に、型枠固定金具1を用い、捨てコンクリート上に型枠を設置する方法について説明する。まず、
図2に示すように、コンクリート11の上面の型枠の設置位置に墨出しを行い、墨線13を形成する。墨線13は、例えば、施工予定のコンクリート基礎のコンクリート打設外面位置に形成される。すなわち、墨線13が、型枠の内面位置となる。
【0025】
ここで、コンクリート基礎の打設範囲を囲むように複数枚の型枠が設置される。したがって、型枠同士を所定の角度で突き合せる部位が生じる。この場合、墨線13同士が所定の角度で交差することになる。
【0026】
型枠固定金具1は、孔9を有するため、墨線13の交点15を、孔9の略中心の位置に合わせて型枠固定金具1を配置することで、確実に型枠設置位置に型枠固定金具1を配置することができる。この際、型枠固定金具1は、それぞれの直線部7が、それぞれの墨線13の直線の位置に合うように調整される。この状態で、平板部3に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠固定金具1がコンクリート11に固定される。なお、コンクリート11へ固定するための固定用孔は、少なくとも2カ所あることが望ましく、その内の一つを、孔9で代用してもよい。
【0027】
次に、
図3に示すように、型枠固定金具1に型枠17を配置する。この際、型枠17の背面の一部は、壁部5の内面に接触させ、一対の型枠17の突合せ部が、孔9の略中心(交点15)の位置に来るように調整する。このようにすることで、型枠17の設置位置を容易に把握することができ、確実に型枠17を所望の位置に配置することができる。なお、型枠17は、木製であってもよく、金属製であってもよい。また、型枠17は、壁部5に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠固定金具1に固定される。
【0028】
次に、
図4に示すように、一対の型枠17の上部に、型枠固定金具1を設置する。この際、孔9からは、型枠17同士の突合せ部を視認することができるため、型枠17のずれなどを抑制することができる。なお、型枠固定金具1は、壁部5や平板部3に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠17に固定される。
【0029】
図5は、型枠17の設置状態を示す正面図である。なお、型枠17同士の突合せ部(コーナー部)には、別途、Lアングルなどの補強金具を外側から設置して、隙間を埋めてもよい。また、打設されるコンクリート基礎の角が90度以外の場合には、壁部5および直線部7の形成角度を、当該角度に合わせて設計すればよい。
【0030】
以上、本実施の形態によれば、型枠17の設置位置を容易に把握することができるため、型枠固定金具1を容易に精度よく設置することができる。また、型枠固定金具1の壁部5に沿って型枠17を配置し、型枠17の先端を孔9に合わせればよいため、型枠17の位置合わせが容易である。このため、型枠17を精度よく配置することができる。
【0031】
また、型枠17の上端部にも、型枠固定金具1を配置することで、型枠17のずれを抑制することができる。この際、孔9によって、型枠17の突合せ位置を視認することができるため、精度よく、型枠17を固定することができる。
【0032】
また、平板部3に固定用孔を形成することで、型枠固定金具1をコンクリート11上に固定する際に使用することができる。また、平板部3や壁部5に固定用孔を形成することで、型枠17と型枠固定金具1とを固定する際に使用することができる。
【0033】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる型枠固定金具1aの斜視図である。なお、以下の説明において、型枠固定金具1等と同一の機能を奏する構成については、
図1~
図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
型枠固定金具1aは、型枠固定金具1とほぼ同様の構成であるが、突起部19が形成される点で異なる。また、突起部19の形成に伴い、孔9に代えて、切欠き部9aが形成される点で異なる。
【0035】
突起部19は、平板部3に対して略垂直に起立し、それぞれの壁部5と対向する位置に形成される。また、壁部5に対向する突起部19の位置は、直線部7の延長線上に位置する。すなわち、壁部5と直線部7との間の距離と、壁部5と突起部19との間の距離はほぼ一致する。
【0036】
なお、図示した例では、突起部19は平板部3の一部が折曲げられて形成される。この際、折曲げ部が、壁部5に略垂直な方向となるように、突起部19が起立する。この場合には、突起部19と壁部5は略垂直な向きとなる。なお、突起部19の形成位置や形成方向は、図示した例には限られない。
【0037】
切欠き部9aは、直線部7の延長線の交点近傍に形成される。切欠き部9aは、前述した孔9と同様の機能を奏する。すなわち、直線部7の延長線の交点近傍に、孔9または切欠き部9aのような、平板部3に対する貫通部が形成されればよい。
【0038】
次に、型枠固定金具1aを用い、コンクリート上に型枠17を設置する方法について説明する。まず、
図7に示すように、コンクリート11の上面の型枠の設置位置に墨出しを行い、墨線13を形成する。墨線13は、例えば、施工予定のコンクリート基礎のコンクリート打設外面位置に形成される。すなわち、墨線13が、型枠の内面位置となる。
【0039】
次に、前述したように、墨線13の交点15を、切欠き部9aの略中心の位置に合わせて型枠固定金具1aを配置する。この状態で、平板部3に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠固定金具1aがコンクリート11に固定される。
【0040】
次に、
図8に示すように、型枠固定金具1aに型枠17を配置する。この際、型枠17の背面の一部を、壁部5の内面に接触させ、壁部5と突起部19との間に型枠17を挿入する。また、一対の型枠17の突合せ部が、切欠き部9aの略中心(交点15)の位置に来るように調整する。このようにすることで、確実に型枠17を所望の位置に配置することができる。なお、型枠17は、壁部5に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠固定金具1aに固定される。
【0041】
次に、
図9に示す様に、一対の型枠17の上部に、型枠固定金具1aを設置する。この際、切欠き部9aからは、型枠17同士の突合せ部を視認することができるため、型枠17のずれなどを抑制することができる。なお、型枠固定金具1aは、壁部5や平板部3に形成された固定用孔(図示省略)によって、型枠17に固定される。
【0042】
以上、第2の実施の形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、突起部19が形成されるため、型枠17の位置決めがより容易となり、位置ずれを抑制することができる。
【0043】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1、1a………型枠固定金具
3………平板部
5………壁部
7………直線部
9………孔
9a………切欠き部
11………コンクリート
13………墨線
15………交点
17………型枠
19………突起部