(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織を保存および輸送するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220707BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
C12M3/00 B
A01N1/02
(21)【出願番号】P 2019557685
(86)(22)【出願日】2018-01-09
(86)【国際出願番号】 FR2018050047
(87)【国際公開番号】W WO2018127675
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513288470
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・フランシュ・コンテ
(73)【特許権者】
【識別番号】519247899
【氏名又は名称】ティッシュアイギス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガービ,ティジャニ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/188365(WO,A1)
【文献】L'EST REPUBLICAIN[online],Besancon : une innovation en faveur de la greffe de cornee, 2015-06-14 uploaded, [retrieved on 2021-05-06],<https://www.estrepublicain.fr/edition-de-besancon/2015/06/14/besancon-une-innovation-en-faveur-de-la-greffe-de-cornee#:~:text=Une%20%C3%A9quipe%20du%20Nanomedecinelab%2C%20bas%C3%A9,corn%C3%A9e%20dans%20des%20conditions%20optimales.>
【文献】Universite de Franche-Comte [online],ULTRA HAUTE CONSERVATION DE GREFFONS DE CORNEE, 2016-04-13 uploaded, [retrieved on 2021-05-06],<https://actu.univ-fcomte.fr/article/ultra-haute-conservation-de-greffons-de-cornee-003320>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
A01N 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織を保存するためのデバイスであって、
前記デバイスが、少なくとも1つのチャンバを含み、
前記チャンバが、液体保存培地中に、少なくとも1つの前記組織を受け入れて保存するのに適し、少なくとも1つの前記チャンバ内で、前記培地を連続的に入れ替えるための手段を含み、
前記デバイスが、前記培地の外側で前記培地と接触するように、少なくとも1つの前記チャンバ内で、緩衝ガスを構成する二酸化炭素を連続的に循環させることによって、前記培地のpHを含む前記培地の少なくとも1つの物理化学的パラメータを調整するための調整手段をさらに含み、
前記調整手段が、前記緩衝ガスが、前記培地上で、少なくとも1つの前記チャンバに送達され、かつ前記チャンバから排出されるように、前記緩衝ガスを、少なくとも1つの前記チャンバ内外に送達および排出するための送達および排出開口部、ならびに
前記送達および排出開口部とそれぞれ連絡し、かつ前記デバイスが備える循環ユニットを介して、少なくとも1つの前記チャンバ内で、加圧下で連続的に、前記緩衝ガスを循環させることができる、前記緩衝ガスのための流体カップリング、を含むことを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの前記チャンバが、
基部から延在する周側壁によって連続する基部を有する容器、および
前記側壁上に取り付けられた少なくとも部分的に半透明または透明のカバー
を有し、
前記送達および排出開口部が、前記カバーに隣接する前記側壁の上側ゾーンに形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織が角膜試料であり、
前記容器が半球状の内面を有し、少なくとも部分的に半透明または透明のカバーが1回のみ開くように設計され、オペレータに既に開かれたことがあることを知らせるための手段を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記調整するための手段が、
少なくとも1つの前記チャンバの内部と連絡し、かつpHセンサを含む、少なくとも1つの前記物理化学的パラメータのための少なくとも1つのセンサ、
前記培地中で任意の細菌を検出することができる機能を有する、微生物学的センサ、および
少なくとも1つの前記チャンバ内で、前記少なくとも1つの組織を保存するため、および/または当該組織の再生を加速するための、治療用流体または非治療用流体を導入するための前記側壁における少なくとも1つの孔
をさらに含み、
前記循環ユニットがポンプを含む、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記培地を入れ替えるための前記手段が、導入される未使用の前記培地を含む前記デバイスの第1のリザーバから少なくとも1つの前記チャンバへ前記培地を導入すること、および少なくとも1つの前記チャンバから1度除去された使用済の前記培地を含む前記デバイスの第2のリザーバへ前記培地を導入することができる導入および除去開口部を含み、
前記導入および除去開口部が、前記容器において形成され、2つの前記培地のための流体カップリングとそれぞれ連絡し、
前記培地のための前記流体カップリングが、前記循環ユニットを介して、少なくとも1つの前記チャンバ内で、加圧下で連続的に、前記培地を循環させることができる、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、少なくとも1つの前記チャンバ内の前記培地の温度を、-20℃~50℃の少なくとも1つの所定値に調整するためのユニットをさらに含み、
前記調整するためのユニットが、少なくとも1つの前記チャンバの外側に、前記基部に対して取り付けられ、コネクタおよび少なくとも1つの前記チャンバの内側と連絡する温度センサを備えるペルチェモジュールを含む、請求項
5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、可搬式単一ハウジングをさらに有し、
前記可搬式単一ハウジングが、
断熱ブロックを取り外し可能な方法で受け入れるための第1の凹部であって、前記断熱ブロックは、前記チャンバを受け入る、第1の凹部、
前記チャンバ内で、少なくとも1つの前記保存培地および前記緩衝ガスを循環させるためのポンプを含む前記循環ユニット、
前記デバイスを機能させるための蓄電器、
前記チャンバへ導入される未使用の前記培地を含む第1のリザーバを取り外し可能な方法で受け入れるための第2の凹部、
前記チャンバから除去された使用済の前記培地を含む第2のリザーバを取り外し可能な方法で受け入れるための第3の凹部、
メモリーカードを有するマイクロコントローラであって、前記マイクロコントローラは、少なくとも1つの前記物理化学的パラメータ、前記培地の温度、ならびに微生物学的パラメータの測定値および調整可能値を含む少なくとも1つの前記組織の保存状態を、前記デバイスの輸送中において、追跡可能にし、かつ前記メモリーカードは、前記培地および少なくとも1つの前記組織および/または前記組織のドナーについてのデータを保持する、マイクロコントローラ、
前記保存状態を表示するための手段、および
オペレータと連絡するための連絡手段であって、前記マイクロコントローラと結合され、前記オペレータが前記保存状態にアクセスし、前記培地のpHを調整するために、前記緩衝ガスの流量および/または圧力を変更することで、前記保存状態を変更することを可能とする連絡手段
を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記断熱ブロックがポリマーから製造され、前記容器が金属であり、
前記蓄電器がバッテリを含み、
前記保存状態を表示するための手段がタッチスクリーンを含み、
前記連絡手段がアンテナを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスが、複数の前記組織を同時に保存および品質管理することに適しており、
前記デバイスが、
複数の前記チャンバを、円形または直線状の配置で受け入れるように構成されるプレートであって、前記チャンバは、前記保存培地中に浸漬された前記組織を含むようにそれぞれ適合され、前記培地の温度および前記物理化学的パラメータが同じであるようにまたは異なるように個別に調整される、プレート
各前記チャンバに結合される少なくとも1つの前記第1のリザーバおよび少なくとも1つの
前記第2のリザーバのためのレセプタクル、および
前記プレートに対して可動的に取り付けられる、前記組織中の生細胞を数えるための顕微鏡を含む、分析手段
を含む、請求項
6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記プレートが、前記チャンバを受け入れるための表面を有し、
前記表面が、対称軸を有する円環状であり、かつ前記チャンバのための一連の凹部を有し、
前記凹部が、前記円形の配置に沿って分布し、前記緩衝ガスのための前記流体カップリングならびに前記培地のための前記流体カップリング、前記pHセンサ、および前記温度センサと連結するように適合され、
前記分析手段が、前記対称軸を中心とする可動支持体上に回転するように取り付けられ、前記チャンバに対して定義された角度位置に前記分析手段を位置させるための刻み目を備える前記プレートの下に取り付けられ、
前記刻み目が、一連の前記凹部の放射状のペアに沿って配置される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織を保存する方法であって、
前記方法が
、チャンバ内
で培地が連続的に入れ替えられ、少なくとも1つの
前記チャンバ内の保存培地の流体浴中に、少なくとも1つの前記組織を配置することを含み、
緩衝ガスを構成する二酸化炭素を、少なくとも1つの前記チャンバ内外に送達および排出するための送達および排出開口部、および
前記送達および排出開口部とそれぞれ連絡し、少なくとも1つの
前記チャンバ内で、加圧下で連続的に、前記緩衝ガスを循環させることができる、前記緩衝ガスのための流体カップリングにより、
前記緩衝ガスが、前記培地上で、少なくとも1つの前記チャンバに送達され、かつ前記チャンバから排出され、
前記方法が、前記培地の、そのpHを含む少なくとも1つの物理化学的パラメータを調整するため、前記培地の温度を、-20℃と50℃との間の少なくとも1つの所定の値に調整するために、前記培地の外側で前記培地と接触する少なくとも1つの前記チャンバにおいて、前記緩衝ガスを連続的に循環させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記緩衝ガスが、角膜試料の保存のために、調整可能な流量および分圧で循環され、前記緩衝ガスを構成する二酸化炭素のモル分率が2%~10%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記緩衝ガスを構成する二酸化炭素のモル分率が4%~6%である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織を保存および輸送するためのデバイスおよび方法に関する。本発明は非限定的な例として、移植または生体外実験まで、このような組織を特定の保存培地に保存すること、特に、ヒトまたは動物の角膜試料、例えば、角膜移植片を保存するために利用される。
【0002】
現在、角膜移植片は、主に以下の2つの方法で保管されている:
凍結保存(主に北米で使用される処置、通常+4℃):特定の培養培地中で短期間(最大10日間)角膜移植片を保存する。
温蔵臓器培養保存(ヨーロッパのほとんどの角膜バンクで使用される方法、通常31℃~37℃):角膜移植片は摘出された時点から角膜バンクによって受け取られる時点までサンプリング培地に最初に浸漬されることによって長期間(約5週間)保存される。そして、角膜移植片はサンプリング培地と同じ性質の保存培地へと直ちに移されるが、保存培地では、角膜移植片は最大30日間保存される。移植の2日前に、その保存により生じる浮腫を減少させることで、その後の外科的処置をより容易にするために、角膜移植片は、いわゆる「デタージェセンス(deturgescence)」培地中に置かれる。
【0003】
保存方法にかかわらず、角膜移植片は、検死時の摘出に続いて、通常、ガラスまたはプラスチック製のバイアル内の栄養液中に浸漬される。mm2当たりの生内皮細胞の数が、移植中の角膜移植片の使用の状態を左右するので、角膜の内皮の質は、これらの細胞の2回の計数によって評価される。前記2回の計数は、角膜の受け入れ時およびデタージェセンス培地への浸漬時に行われる。これらの計数は、種々の角膜を操作する工程、例えば、シャーレへの移動、トリパンブルーでの染色、洗浄、および生細胞を顕微鏡によって数えた後、角膜をバイアルに戻すこと、を必要とする。しかし、これらの操作は、角膜の外部汚染および内皮への損傷のリスクがある。
【0004】
多数の角膜を同時に保存するために、保存温度に維持されたインキュベータ内に置かれた、保存培地を含むバイアル内で、角膜を別々に管理することが知られている。このようにして保存された角膜の品質管理を進めるには、オペレータは特に、顕微鏡検査、生細胞の計数、および培地の色の確認を、各角膜に対して別々に行うために、インキュベータからバイアルを1つずつ取り出さなければならない。この結果、かなりの時間が失われ、品質管理全体のコストが高くなり、さらに、角膜を操作することによる角膜の劣化のリスクが少なからず存在する。
【0005】
国際公開第2014/140434 A1号は、角膜サンプルを保存するためのデバイスを開示しており、このデバイスは、主として、分析のために保存液の注入及び回収を伴う、角膜試料を調整可能な圧力で受け入れて封入するための手段と、半球形状の角膜を圧平するための手段と、デバイスに物質を注入するための手段とを備え、デバイスを開くことなく角膜試料の質を視覚的又は器具に基づいて評価することができる。前記文献の意図された目的は、保存液の物理化学的パラメータとは無関係に、デバイス内に2つのチャンバ、すなわち内皮チャンバおよび上皮チャンバを画定することによって、入れ替えられた保存液と角膜の2つの面とが接触できるようにすることである。そのいずれの物理化学的パラメータも連続的に調整されないため、当該デバイスは、保存液の深刻な劣化の可能性があるという欠点を有し、品質管理の間にこの劣化が検出されると、修正することは困難である。
【0006】
角膜移植片を含むバイアルは、実際には移植片の保存状態を評価することなく、一般的に周囲温度で輸送される。このことは、特に保存培地のpHを含む、角膜移植片の保存のための最適条件が考慮されないので、その生物学的品質の劣化のリスクを増大させる。
【0007】
したがって、角膜などの組織を保存するための従来技術のデバイスおよび方法の主な欠点は、組織を含むバイアルの開封および組織の品質管理のための連続操作、および必要とされる他の培地への移動(前述の温蔵保存方法の場合)において存在するだけでなく、培地の保存条件の継続的な順守においても存在する。
【0008】
本発明の目的は、移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織、例えば角膜試料を保存するためのデバイスを提供することであり、前記デバイスは少なくとも1つのチャンバを含み、前記チャンバは、液体保存培地中に、少なくとも1つの前記組織を受け入れ、保存するのに適し、少なくとも1つの前記チャンバ内で、前記培地を連続的に入れ替えるための手段を含む。前記デバイスは、前述の欠点を克服する。
【0009】
この目的を達するために、本発明によるデバイスは、前記培地の外側で前記培地と接触するように、少なくとも1つの前記チャンバ内で、緩衝ガスを連続的に循環させることによって、前記培地のpHを含む前記培地の少なくとも1つの物理化学的パラメータを調整するための手段をさらに含むデバイスである。
【0010】
「緩衝ガス」は、本明細書では一般的に、ガスが緩衝溶液、すなわち、実質的に一定のpHを有する溶液に変化することによって、保存培地を緩衝処理することができるガスとして理解される。
【0011】
保存培地のpHを連続的に調整することは、本発明に係るデバイスを特徴付けるものであり、これは、特に、この角膜移植片の場合(すなわち、その移植まで)、5週間までの期間、最適な条件下で、その栄養培地中に、組織または各組織(例えば、角膜移植片)を保存することを可能にすると言えるだろう。
【0012】
また、この調整におけるpHの連続的な測定が、組織または各組織が浸漬されている培地の細菌汚染をいつでも検出することを可能にすると言えるだろう。
【0013】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの前記チャンバは、
基部から延在する周側壁によって連続する基部を有する容器であって、好ましくは実質的に半球状の内面を有する容器、および
前記側壁上に取り付けられた少なくとも部分的に透明のカバーであって、好ましくは1回のみ開くように設計され、オペレータに既に開かれたことがあることを知らせるための手段を備えるカバー
を有することができ、
前記調整するための手段は、二酸化炭素などの前記緩衝ガスを、少なくとも1つの前記チャンバ内外に送達および排出するための送達および排出開口部を含むことができ、
前記緩衝ガスが、前記培地上で、の少なくとも1つの前記チャンバに送達され、かつ前記チャンバから排出されるように、前記送達および排出開口部が、前記カバーに隣接する前記側壁の上側ゾーンに形成される。
【0014】
実質的に半球状の内面を有するこの容器は、培地の性質の均一性の欠如、および鋭い縁部または角度による組織または各組織の劣化の可能性を最小限にすることを可能にすると言えるだろう。
【0015】
また、前記カバーが透明であるという性質は、培地の透明性を介して、組織または各組織の生細胞を計数するための視覚的測定を可能にすると言えるだろう。
【0016】
さらに、本発明に係るデバイスのチャンバまたは各チャンバは、有利には1回のみ開くことができ、オペレータ(例えば、外科医、外科医の助手、または続く移植または生体外実験のために組織を必要とする任意の他の人)に開かれたことがあることを知らせるための手段は、例えば、最初に、カバー、または容器の側壁に堅固に接続された引き裂きタブを備えると言えるだろう。
【0017】
本発明の別の態様によれば、前記調整するための手段は、
前記送達および排出開口部とそれぞれ連絡し、かつ前記デバイスが備える例えばポンプを含む循環ユニットを介して、少なくとも1つの前記チャンバ内で、加圧下で連続的に、前記緩衝ガスを循環させることができる、前記緩衝ガスのための流体カップリング(例えば、ルアー型)、
少なくとも1つの前記チャンバの内部と連絡し、かつpHセンサを含む、少なくとも1つの前記物理化学的パラメータのための少なくとも1つのセンサ、
任意選択で、例えば前記培地中で任意の細菌を検出することができる機能を有する、微生物学的センサ、および
任意選択で、少なくとも1つの前記チャンバ内で、前記少なくとも1つの組織を保存するため、および/または当該組織の再生を加速するための治療用流体(例えば、予防効果または治療効果を有する薬剤の種類)または非治療用流体を導入するための、前記側壁における少なくとも1つの孔
をさらに含むことができる。
【0018】
デバイスが含む循環ユニットは、有利には圧電マイクロポンプを含むことができ、前記圧電マイクロポンプの圧力は、例えば、0~7ml/分の流速に対して、例えば、0~600mbar(すなわち、60000Pa)の間で変化することができると言えるだろう。
【0019】
本発明の別の態様によれば、前記培地を入れ替えるための前記手段は、導入される未使用の前記培地を含む前記デバイスの第1のリザーバから少なくとも1つの前記チャンバへ前記培地を導入すること、および少なくとも1つの前記チャンバから1度除去された使用済の前記培地を含む前記デバイスの第2のリザーバへ前記培地を導入することができる導入および除去開口部を含むことができ、
前記導入および除去開口部が、前記容器において形成され、2つの前記培地のための流体カップリング(例えば、ルアー型)とそれぞれ連絡し、
前記培地のための前記流体カップリングが、前記循環ユニットを介して、少なくとも1つの前記チャンバ内で、加圧下で連続的に、前記培地を循環させることができる。
【0020】
したがって、本発明に係るデバイスは、緩衝ガスのための2つの流体カップリングを介して、入れ替えられた培地を緩衝処理することを可能にする、チャンバ内での緩衝ガスの連続的な循環に続き、これらの2つの流体カップリングによって、保存培地を自動的かつ連続的に入れ替えることを可能にすると言えるだろう。
【0021】
本発明の別の好ましい特徴によれば、前記デバイスは、少なくとも1つの前記チャンバ内の前記培地の温度を、-20℃~50℃の少なくとも1つの所定値に調整するためのユニットをさらに含むことができ、
前記調整するためのユニットが、少なくとも1つの前記チャンバの外側に、前記基部に対して取り付けられ、好ましくはコネクタおよび少なくとも1つの前記チャンバの内側と連絡する温度センサを備えたペルチェモジュールを含む。
【0022】
この温度の測定は、有利には熱電対または別の温度センサによって実施される。
【0023】
角膜試料の例に関しては、チャンバまたは各チャンバ内が0℃~37℃である場合、角膜試料の長期保存(5週間まで)を有利に達成することができるだろう。
【0024】
本発明の別の態様によれば、前記デバイスが、可搬式単一ハウジングをさらに有することができ、
前記可搬式単一ハウジングが、
好ましくはポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)から製造される断熱ブロックを取り外し可能な方法で受け入れるための第1の凹部であって、前記断熱ブロックは、前記容器が好ましくは金属(例えば、チタン製)である前記チャンバを受け入る、第1の凹部、
前記チャンバ内で、少なくとも1つの前記保存培地および前記緩衝ガスを循環させるための循環ユニットであって、好ましくはポンプ(再使用するために、無菌条件下で滅菌することができる)を含む循環ユニット、
前記デバイスを機能させるための蓄電器であって、好ましくはバッテリ(例えば、72時間の充電を可能にする)を含む蓄電器、
前記チャンバへ導入される未使用の前記培地を含む第1のリザーバを取り外し可能な方法で受け入れるための第2の凹部、
前記チャンバから除去された使用済の前記培地を含む第2のリザーバを取り外し可能な方法で受け入れるための第3の凹部、
メモリーカードを有するマイクロコントローラであって、前記マイクロコントローラは、少なくとも1つの前記物理化学的パラメータ、前記培地の温度、ならびに任意選択で微生物学的パラメータの測定値および調整可能値を含む少なくとも1つの前記組織の保存状態を、特に前記デバイスの輸送中において、追跡可能にし、かつ前記メモリーカードは、前記培地および少なくとも1つの前記組織および/または前記組織のドナーについてのデータを保持する、マイクロコントローラ、
前記保存状態を表示するための手段であって、好ましくはタッチスクリーンを含む手段、および
オペレータと連絡するための連絡手段であって、前記マイクロコントローラと結合され、前記オペレータが前記保存状態にアクセスし、前記培地のpHを調整するために、例えば、前記緩衝ガスの流量および/または圧力を変更することで、前記保存状態を変更することを可能とする、例えばGSM(登録商標)、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、またはZigbee型のアンテナを含む連絡手段
を含む。
【0025】
オペレータ(すなわち、外科医または他の人)はまず、カバーによって、組織の保存培地に浸漬された試料である組織を含む容器を閉じ、次いで、単一保存チャンバをストッパで密封し、その後、熱損を低減するために、前記単一保存チャンバを前記ブロック内に挿入するだろう。次に、「ジャック」コネクタを介して、輸送ハウジングに、チャンバおよびブロックからなる複合体を接合することによって前記複合体が挿入され、このハウジング内での輸送中、前記チャンバには、保存培地および緩衝ガスが連続的に供給される。
【0026】
また、使用済の培地を含む第2のリザーバは、その輸送中であっても、組織の無菌性における品質管理に必要な微生物学的分析および生化学的分析を実施することを可能にすると言えるだろう。
【0027】
さらに、前記メモリーカードは、有利には前記輸送されるチャンバに含まれる前記保存培地に関する物理化学的パラメータのすべてを含むことができると言えるだろう。そして、このマイクロコントローラおよびこれらの連絡手段を含む電子システムは、前記物理化学的パラメータのすべてまたはいくつかを、例えば、前記チャンバ内で循環される緩衝ガスにおいて、リアルタイムで、遠隔的に検査し、修正することを可能にするだろう。
【0028】
したがって、本発明によるデバイスがその輸送のために有することができる可搬式単一ハウジングは、以下の利点を有する:
輸送中、培地および組織の温度が-20℃~50℃に維持された状態で、その保存培地中に浸漬された組織を含む単一保存チャンバの輸送(角膜の場合、最大約72時間)を介して、摘出された場所とそれに対応する組織バンク(例えば、角膜のための)との間、および当該バンクと移植を行う場所との間を、最適な保存条件下で、移植される組織(例えば、角膜移植片)を輸送することができること、
このハウジングが、温度、pH、および保存培地の色を含む関連するパラメータを、例えばタッチスクリーン上に表示し、このハウジングはまた、輸送条件(例えば、チャンバの温度、チャンバ内を循環する保存培地の流量および/または圧力、チャンバ内を循環する緩衝ガスの流量および/または圧力)に対する設定を変更することを可能にすること、および
このハウジングが、チャンバの輸送中に収集されたデータを、マイクロコントローラカード上に記録し、前記マイクロコントローラカードが、前記チャンバに関連する前述のパラメータのすべてを保存し、前記連絡手段を介してそれらをオペレータに送信するのに十分なメモリを有すること。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、前記デバイスは、複数の前記組織を同時に保存および品質管理することに適しており、
前記デバイスが、
複数の前記チャンバを、円形または直線状の配置で受け入れるように構成されるプレートであって、前記保存培地中に浸漬された前記組織を保持するようにそれぞれ適合され、前記培地の温度および前記物理化学的パラメータが同じであるようにまたは異なるように個別に調整される、プレート
各前記チャンバに結合される少なくとも1つの前記第1のリザーバおよび少なくとも1つの第2のリザーバのためのレセプタクル、および
前記プレートに対して可動的に取り付けられる、例えば前記組織中の生細胞を数えるための顕微鏡を含む、分析手段(前記分析手段は、任意の他の測定装置を含むことができる)
を含む。
【0030】
組織に関連するバンク(例えば、角膜組織バンク)に受け入れられると、角膜移植片などの組織を含む各単一保存チャンバが、この目的のためにデバイスのプレート上に備えられた位置に供給され(すなわち、細胞の成長に必要な、保存培地および緩衝ガス回路ならびに温度制御ユニットに、チャンバを連絡させるために、その基部壁上の接続配置を介して接続され)、こうして、マルチ組織インキュベータを形成する。
【0031】
有利には、前記プレートは、前記チャンバを受け入れるための表面を有することができ、
前記表面が、対称軸を有する円環状であり、かつ前記チャンバのための連続する凹部を有し、
前記凹部が、前記円形の配置に沿って分布し、前記緩衝ガスのための前記流体カップリングならびに前記培地のための前記流体カップリング、前記pHセンサ、および前記温度センサと連結するように適合され、
前記顕微鏡などの前記分析手段が、前記対称軸を中心とする可動支持体(30)上に回転するように取り付けられることができ、例えば、前記チャンバに対して定義された角度位置に前記分析手段を位置させるための刻み目(31)を備える前記プレートの下に取り付けられることができ、
前記刻み目(31)が、例えば、一連の前記凹部の放射状のペアに沿って配置される。
【0032】
本発明に係るこの特定のデバイスは、特に、以下の機能を提供することによって、複数の角膜移植片を同時に保存し、それらの品質管理をするうえでの問題を解決することを可能にする:
単一保存チャンバの温度が維持され(好ましくは-20℃~50℃)、それぞれ個別的に、これらの単一保存チャンバ内で、自動的かつ連続的に保存溶媒が入れ替えられ(他のチャンバの汚染のリスクを回避するために、各チャンバが、保存培地を循環させるための別個の回路を備える)、同様にしてそれぞれ個別的に、前記チャンバ内で、連続的に前記緩衝ガスが循環される状態で、n個(例えば、nは10~30で変化する)の単一保存チャンバを含むことができる前記プレートによっていくつかの組織の保存および品質管理を同時に行う機能、
デバイスの残りの部分の汚染のリスクなしに安全に再使用するために、保存培地を含む前記リザーバおよび循環ユニットの部材(好ましくは前記ポンプを含む)をオートクレーブによって殺菌することを可能にする機能、
コンピュータ上で閲覧可能な、保存される組織の品質管理パラメータ(例えば温度、pHなど)をリアルタイムで記録する機能、および
各チャンバのための前記第1のリザーバが存在することで、この第1のリザーバに適切な物質を注入することによる、将来的な治療を可能にする機能。
【0033】
本発明に係る方法は、移植または生体外実験を目的として、ヒトまたは動物の少なくとも1つの組織、例えば角膜試料を保存する方法であって、
前記方法が、前記チャンバ内で前記培地が連続的に入れ替えられ、少なくとも1つのチャンバ(1)内の保存培地の流体浴中に、少なくとも1つの前記組織を配置することを含み、
前記方法が、前記培地の、そのpHを含む少なくとも1つの物理化学的パラメータを調整するため、好ましくは、前記培地の温度を、-20℃と50℃との間の少なくとも1つの所定の値に調整するために、前記培地の外側で前記培地と接触する少なくとも1つの前記チャンバにおいて、二酸化炭素などの緩衝ガスを連続的に循環させることを含む。
【0034】
有利には、前記緩衝ガスが、調整可能な流量および分圧で循環されることができ、
好ましくは前記角膜の保存のために、緩衝ガスとしての二酸化炭素のモル分率が2%~10%、例えば4%~6%である。
【0035】
本発明の他の態様、利点、および詳細は、例示的な実施形態の以下の説明を読むことで明確となるだろう。これらの例示的な実施形態は、単なる一例であり、非限定的である。説明は、添付の図面を参照して行われる:
図1は、本発明に係るデバイスに含まれる単一保存チャンバの斜視側面図である。
図2は、
図1のチャンバの斜視平面図である。
図3は、
図1のチャンバの斜視底面図であり、前記チャンバに備えられる接続配置を示す。
図4は、
図1~
図3に係るチャンバを受け入れるのに適した、本発明に係るブロックの斜視側面図である。
図5は、
図4に係るブロックに収容された
図1~
図3に係るチャンバを組み込む可搬式ハウジングを形成する、本発明に係るデバイスの斜視平面図である。
図6は、
図5のデバイスの斜視正面図である。
図7は、
図6のデバイスの斜視側面図である。
図8は、ハウジングの外壁が内部部品のいくつかを示すために、ハウジングの外壁が取り除かれている以外は、
図7と同様の図である。
図9は、
図8のハウジング内にみられ得るマイクロコントローラの一例を示す斜視平面図である。
図10は、
図1~
図3に係る多数のチャンバを受け入れるのに適したマルチ組織インキュベータを形成する、本発明の別の態様に係るデバイスの斜視平面図である。
【0036】
図1~3に示される単一保存チャンバ1は、本発明に係る保存デバイス1’、1”の主要な構成要素であり、組織のための特定の液体保存培地の槽に浸漬された角膜などの組織を受け入れることを意図されている。前記単一保存チャンバ1は、以下を含む:
基部2aから延在する周側壁2bによって連続する基部2aを有する、金属(例えば、チタン)から製造される容器2であって、前記容器2は、実質的に半球状の内面2cを有し、前記側壁2bは、一般的に中高の外面2dを有する(この実施例において、円柱の孤の形状である2つの対向する中高の側面が、互いに、丸みを帯びた接続ゾーンを介して、平坦な側面によって接続されることで定義される)容器2、および
少なくとも部分的に半透明または透明のカバー3(例えば、ガラスまたはサファイヤなどの他の素材でできた窓3aを含む)であって、前記カバー3は、保持手段3bを介してロックするために適合された側壁2bの内面2cの上部においてロックされ、前記保持手段3bは、1回のみ開くことを目的として、既に開かれたことがあることをオペレータに知らせる(例えば、引き裂きタブ(図示せず)を破断することによって)ことができる、カバー3。
【0037】
この容器2(
図2参照)では:
側壁2bおよび基部2a内において、保存培地のための導入開口部4aおよび除去開口部4bがそれぞれ形成され、前記導入開口部4aおよび除去開口部4bは、例えばルアー型の流体カップリング5aおよび5bとそれぞれ連絡し、前記流体カップリング5aおよび5bは、基部2aの外面に対して密封状態で取り付けられ、基部2aを貫通して延びる(
図3参照)、
カバー3の保持手段3bのすぐ下に位置する側壁2bの上側ゾーンにおいて、CO
2などの緩衝ガスをチャンバ1に送達し、チャンバ1から排出するための送達および排出開口部6aおよび6bが形成され、前記送達および排出開口部6aおよび6bは、例えばルアー型の流体カップリング7aおよび7bと同様に結合し、基部2aの外面に対して密封状態で取り付けられ、基部2aを貫通して延び(
図3参照)、
基部2aまたは側壁2bの下側ゾーンにおいて、保存培地のpHのためのセンサ8(好ましくは電位差マイクロセンサ)が形成され、前記センサ8は、基部2aに対して貫通するように取り付けられたコネクタ9と連絡し、かつ
チャンバ1内の培地の温度を、-20℃~50℃の間の所定の値に調整するためのユニット10が形成され、前記調整するためのユニットは、ペルチェモジュール11を含み(
図3参照)、前記モジュールは、基部の外面に取り付けられ、モジュールのための第1のコネクタ12およびチャンバ1の内部と連絡する温度センサのための第2のコネクタ13を備える。
【0038】
ペルチェモジュール11は、電流の存在下における熱変位の物理的現象である熱電効果を、公知の方法で利用する。
図4~
図8および
図10に示す本発明のデバイス1’、1”では、このモジュール11は電子部品を利用し、前記電子部品は、モジュールに正の電圧を加えることによってモジュールが最高温度を得ることを可能にし、モジュールの端子においてこの電圧を反転することによって最低温度を得ることを可能にする。角膜の保存のための使用例として、ペルチェモジュール11(Adaptive社製、型番:ET-071-10-13-RS、タイプ:21.2W-3.9A-8.8V-20×20mm)について試験を実施した。このモジュール11は、フィードバックループを備え、前記フィードバックループは、本発明の文脈において、保存培地の温度を、-20℃~50℃の設定温度に確実に調整するために、熱電対およびマイクロコントローラを含む。
【0039】
デバイス1’および1”はそれぞれ、流体カップリング5a、5bおよび7a、7bならびに開口部4a、4bおよび6a、6bを介して、保存培地および緩衝ガスを循環させるための循環ユニット14(
図5~7参照)をさらに含み、前記循環ユニット14は好ましくはポンプを含む。特に、保存培地を入れ替えるための圧電ポンプ(Bartels Mikrotechnmik製、Mp6 Micropump、同じ凹部に2つの圧電アクチュエータを有する)について、0~600mbar(0~60000Pa)の圧力を液体またはガスに加えた状態で、0~7ml/分の流量で、試験を実施した(ポンプが機械的である場合、圧力は数バールに達し得ることに留意されたい)。
【0040】
チャンバ1内を循環する緩衝ガスに関して、チャンバ1の温度制御された湿潤雰囲気中でモル分率5%のCO2、すなわち、790mmHg(すなわち、1013×105Pa)の大気圧に対するCO2の分圧を利用して、角膜保存における、特にCO2について試験された:
PCO2=0.05×760(mmHg)=38mmHg(すなわち、約5065Pa)。
【0041】
上記で説明したように、チャンバ1内に含まれる保存培地上で保存培地と接触するように、チャンバ1内で、前記緩衝ガスを連続的に循環させる(すなわち、保存液内で、直接的にガスを循環させることを回避する)ことで、移植時まで(例えば、角膜の場合、最大5週間まであり得る期間)、最適な条件下でその栄養培地内に組織を保存するために、前記培地のpHを連続的に調整することができる。さらに、組織が浸漬されている保存培地のpHを連続的に測定することによって、前記培地の細菌汚染をいつでも検出することができる。
【0042】
このように、本発明者によって行われた試験は、5%に等しいCO2のモル分率は、角膜移植片を含む、前述のペルチェモジュール11 ET-071-10-13-RSによって、保存培地の温度が31℃に調整された、保存培地(製品名:CorneaMax(登録商標)、Eurobio社製)を、実質的に一定の最適pHに維持することを可能にすることを明らかにした(この31℃への調整は、欧州の角膜バンクにおける実務に特に適しており、例えば、北アメリカの実務に沿った、わずか4℃というはるかに低い温度に調整することも可能であることに留意されたい)。
【0043】
図4は、断熱ブロック15(例えば、Teflon(登録商標)製)の構造を示す。前記断熱ブロックは、ブロックカバー17(空の開いた位置で表される)を備える直方体のコンテナを実質的に含み、前記ブロックカバー17は、蝶番18を介して連結され、前記断熱ブロックは、チャンバ1のカバー3が閉じられ、密封された後、前記ブロック15に受け入れられるチャンバ1のカバー3にならった、半透明または透明な窓19を有する。チャンバ1の接続配置20(
図3に示すように、この接続配置20は、特にカップリング5a、5b、7a、7bおよびコネクタ9、12~13、さらにバッテリならびにメモリーカード(図示せず)を含む)は、コンテナ16の底面16aを貫通する。そのため、前記接続配置20が、ブロック15によるチャンバ1の輸送中、組織を保存し、かつ保存状態を記録するために提供されることを可能にする。
【0044】
本発明の別の態様によれば、保存培地中に浸漬された組織で満たされたチャンバを含むブロック15は、それ自体が、本発明に係るデバイス1に含まれ得る可搬式単一ハウジング21に接続される。
【0045】
図5~
図8に示すように、前記ハウジング21は、特に、以下のものを含む:
ブロック15を受け入れる凹部22であって、前記ブロックには、保存培地および緩衝ガスを循環させ、培地の温度を調整するための単一チャンバ1が収容および接続される、凹部22、
チャンバ1内で、保存培地および緩衝ガスを循環させるための循環ユニット14、
デバイス1’を機能させるための(アクセスハッチ23によって特定される)電気バッテリ(例えば、72時間の充電を可能にする)、
チャンバ1に導入される「新鮮な」(すなわち、未使用の)保存培地を含む第1の管状リザーバ24bを受け入れる凹部24a、
チャンバ1から除去された使用済の保存培地を含む第2の管状リザーバ25bを受け入れる凹部25a、
特にデバイス1’の輸送中、組織の保存状態を追跡可能とするための、メモリーカード26aを有するマイクロコントローラ26であって、前記マイクロコントローラ26は、培地のpHおよび温度および任意の微生物学的パラメータの測定値および調整可能値を含む、マイクロコントローラ26(前記カード26aは、培地ならびに任意で組織および/またはそのドナーに関するデータを含む)
保存状態を表示するための、例えばタッチスクリーンなどのスクリーン27、および
マイクロコントローラ26を介して、保存条件をオペレータに連絡するための、例えば、GSM、Wi-Fi、Bluetooth、またはZigbeeアンテナなどのアンテナ28であって、前記アンテナ28は、このオペレータが例えば、デバイス1’によってpH警告が発せられた場合に、培地のpHを調整するために、緩衝ガスの流量および/または圧力を変更することによって、それらを修正することができる(緩衝ガスの流量の増加させることで、「すすぎ」により、設定pHを回復させることを可能にする)アンテナ28。
【0046】
図9に詳細に示される、マイクロコントローラ26のメモリーカード26aは、例えばSSDメモリ(Solid State Drive、すなわちフラッシュメモリディスク)であり、GSMおよびWi-Fi型のモジュール26bに結合することができる。
【0047】
上記で説明したように、カバーが開口を知らせるための手段(例えば、引き裂きタブ)が存在すること、およびマイクロコントローラ26のメモリーカード26aが組織の保存状態を記録することによって、単一保存チャンバ1を開ける外科医などのオペレータが、上述の通り保存された組織を使用して、計画された移植または生体外実験を進められることを知る。
【0048】
図10に示される本発明の別の態様によるデバイス1”は、多数の組織を同時に保存および品質管理することを可能にするマルチ組織インキュベータを形成する。この目的のために、このデバイス1”は、多数の単一保存チャンバ1(チャンバ1が2つのみ示される)を保持するように構成されている。各単一保存チャンバは、それらの保存培地中に浸漬する組織を含み、その温度および特にpHは、別個に調整される。この例では、チャンバ1が、円形プレート29上に取り付けられ、前記プレート29は、組織中の生細胞を計数するための小型顕微鏡(図示せず)を含む分析手段を備える。前記分析手段は、プレート29の下に取り付けられ、チャンバ1に対して決定された角度位置に従ってこれらの分析手段を位置させるための刻み目31を介して、プレート29に対して回転移動が可能である。
【0049】
プレート29は、チャンバ1を受け入れるための表面29aを有し、前記表面29aは、円環状であり、かつチャンバのための一連の凹部30aおよび30bを備え、前記凹部は、円形の配置に沿って、(軸Xに対して)放射状にペアとなるように分布する。
図10から分かるように、各凹部30a、30bは、これらの凹部30a、30bに形成されたソケット32を介して、プレート29を貫通してチャンバ1の接続配置20に連結するように適合される。これにより、組織が対応する組織バンクに受け入れられると、組織に必要な保存条件が確実に維持される(特に、保存培地および緩衝ガスのための回路および温度管理ユニット10を介して)。
【0050】
図10aの例はまた、4つのリザーバ24bおよび25bのための2つの配置位置のペア34を画定するレセプタクル33を示す。前記レセプタクル33は、例えば、共同で回転するために支持体30に接続される。各配置位置のペア34は、第1の管状リザーバ24b(未使用の培地)および第2の管状リザーバ25b(使用済の培地)を受け入れるように意図され、各配置位置のペア34は、チャンバ1の各放射状のペアにおける2つのチャンバのうちの1つのためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明に係るデバイスに含まれる単一保存チャンバの斜視側面図である。
【
図3】
図1のチャンバの斜視底面図であり、前記チャンバに備えられる接続配置を示す。
【
図4】
図1~
図3に係るチャンバを受け入れるのに適した、本発明に係るブロックの斜視側面図である。
【
図5】
図4に係るブロックに収容された
図1~
図3に係るチャンバを組み込む可搬式ハウジングを形成する、本発明に係るデバイスの斜視平面図である。
【
図8】ハウジングの外壁が内部構成要素のいくつかを示すために、ハウジングの外壁が取り除かれている以外は、
図7と同様の図である。
【
図9】
図8のハウジング内にみられ得るマイクロコントローラの一例を示す斜視平面図である。
【
図10】
図1~
図3に係る多数のチャンバを受け入れるのに適したマルチ組織インキュベータを形成する、本発明の別の態様に係るデバイスの斜視平面図である。