(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220707BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2020152311
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000147
【氏名又は名称】伊藤忠商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520351015
【氏名又は名称】株式会社ランテル・メディエール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀島 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】周 芸
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0186414(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104082885(CN,A)
【文献】中国実用新案第213045345(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に接続された支持部と、
前記本体部の背面に配置された弾性シートを備え、
前記本体部は、上側領域と、下側領域とを含み、
前記支持部は、前記上側領域に接続されており、
前記弾性シートは、前記下側領域に配置された部分を含み、
前記弾性シートの上縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲して
おり、
前記弾性シートの下縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲しており、
前記弾性シートは、三日月状に構成されており、
前記下側領域は、下方に向けて凸となる凸形状を有しており、
前記弾性シートの前記下縁は、前記下側領域の下縁に沿うように配置されており、
前記弾性シートは、幅方向における前記本体部の両端部にわたって延在している
、マスク。
【請求項2】
前記弾性シートの上端は、前記支持部の下端よりも上方に位置している、請求項
1に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクは、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、風邪などの感染症対策などのために着用されている。例えば、特許第5921945号公報(特許文献1)には、インフルエンザ対策などのために着用されるマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感染症対策のため、可能な限りマスクを着用することが求められている。そのため、飲食時においてもマスクを着用することが求められている。しかしながら、上記の公報に記載されたようなマスクを着用したまま飲食することは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、着用したまま飲食することが容易となるマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマスクは、本体部と、本体部に接続された支持部と、本体部の背面に配置された弾性シートを備えている。本体部は、上側領域と、下側領域とを含んでいる。支持部は、上側領域に接続されている。弾性シートは、下側領域に配置された部分を含んでいる。弾性シートの上縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲している。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマスクによれば、着用したまま飲食することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るマスクの構成を概略的に示す正面図である。
【
図2】実施の形態に係るマスクの構成を概略的に示す背面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う拡大断面図である。
【
図4】実施の形態に係るマスクの着用状態における構成を概略的に示す正面側斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るマスクの着用状態における構成を概略的に示す背面側斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るマスクの着用時にマスクで口が覆われた状態を概略的に示す側面図である。
【
図7】実施の形態に係るマスクの着用時にマスクから口が露出した状態を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下においては、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0010】
図1~
図5を参照して、実施の形態に係るマスク1の構成について説明する。
図1~
図3を参照して、実施の形態に係るマスク1の着用されていない状態における構成について説明する。
図1は、実施の形態に係るマスク1の構成を概略的に示す正面図である。
図1は、マスク1が広げられていない状態の構成を正面側から示している。
図2は、実施の形態に係るマスク1の構成を概略的に示す背面図である。
図2は、マスク1が広げられていない状態の構成を背面側から示している。
図3は、
図2のIII-III線に沿う拡大断面図である。
図3は、マスク1が広げられていない状態の構成を示している。
【0011】
図1および
図2を参照して、実施の形態に係るマスク1は、着用されていない状態では平面的な形状を有している。実施の形態に係るマスク1は、本体部10と、支持部20と、弾性シート30と、形状保持部材40とを備えている。以下、マスク1が着用された状態を基準に上下方向(重力方向)Xが規定される。上下方向Xは、幅方向Yと直交している。上下方向Xは、マスク1の短手方向である。また、幅方向Yは、マスク1の長手方向である。
【0012】
本体部10は、マスク1が着用された状態で顔の鼻孔および口を覆うことができるように構成されている。また、本体部10は、マスク1が着用された状態で口を露出させることができるように構成されている。本体部10は、飛沫などを捕捉することができるように構成されている。本体部10の材料は、不織布などである。本体部10は、正面(表面)Fおよび背面(裏面)Rを有している。正面Fは、顔と反対側に配置される面である。背面Rは、顔側に配置される面である。
【0013】
本実施の形態では、本体部10は、互いに積層された複数の層を含んでいる。複数の層は、正面Fを構成する外層と、背面Rを構成する内層と、外層と内層とに挟まれた中間層とを含んでいる。外層と内層と中間層とは溶着部Wで溶着されている。中間層は、フィルターである。なお、中間層は、複数枚のフィルターを含んでいてもよい。また、本体部10は、複数の層に限定されず、単一の層によって構成されていてもよい。
【0014】
本体部10は、上側領域11と、下側領域12とを含んでいる。上側領域11は、上下方向Xにおける本体部10の上側の領域である。本実施の形態では、上側領域11は、複数の折り畳み部13を含んでいる。複数の折り畳み部13は、上下方向Xに本体部10が伸縮するように折り畳み可能に構成されている。複数の折り畳み部13は、幅方向Yにおける本体部10の両端にわたって幅方向Yに延在している。上側領域11は、複数の折り畳み部13が折り畳まれた状態で略長方形状に構成されている。複数の折り畳み部13が折り畳まれた状態で上下方向Xにおける上側領域11の最大寸法D1は、例えば30mm以上50mm以下である。
【0015】
下側領域12は、上下方向Xにおける本体部10の下側の領域である。下側領域12は、上側領域11に接続されている。下側領域12は上側領域11の下方に配置されている。下側領域12は、下方に向けて凸となる凸形状を有している。下側領域12の下縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲している。下側領域12の下縁は、円弧状に構成されている。上下方向Xにおける下側領域12の最大寸法D2は、例えば40mm以上60mm以下である。
【0016】
マスク1は、マスク1が着用された状態で、下側領域12が下ろされたときに、顔の鼻孔および口を覆うことができるように構成されている。また、マスク1は、マスク1が着用された状態で、下側領域12がめくられたときに、口を露出させることができるように構成されている。
【0017】
支持部20は、マスク1が着用された状態で耳などに支持され得るように構成されている。なお、支持部20が支持される箇所は、耳に限られず、首などであってもよい。支持部20は、本体部10に接続されている。支持部20は、上側領域11に接続されている。
【0018】
支持部20は、一対の耳掛け部21を含んでいる。一対の耳掛け部21は、紐状に構成されている。一対の耳掛け部21の各々の各端部は、幅方向Yにおける上側領域11の両端部の各々に溶着されている。上下方向Xにおける一対の耳掛け部21の各々の各端部間の中心距離は、例えば25mm以上35mm以下である。本実施の形態では、一対の耳掛け部21は、伸縮自在に構成されている。一対の耳掛け部21の材料は、例えば、ポリエステル、ポリウレタンなどである。
【0019】
弾性シート30は、マスク1が着用された状態で弾性変形できるように構成されている。弾性シート30は、本体部10に沿って弾性変形できるように構成されている。弾性シート30は、本体部10よりも高い曲げ剛性を有している。
【0020】
弾性シート30は、本体部10の背面Rに配置されている。弾性シート30は、本体部10の背面Rに沿うように設けられている。本実施の形態では、弾性シート30は、本体部10の背面に糸Sで縫い付けられている。具体的には、弾性シート30は、弾性シート30の上縁および下縁に沿って本体部10の背面Rに糸Sで縫い付けられている。
【0021】
弾性シート30は、下側領域12に配置された部分を含んでいる。弾性シート30の大部分は、下側領域12に配置されている。弾性シート30の先端部以外は下側領域12に配置されている。弾性シート30の先端部は、上側領域11に配置されている。弾性シート30は、複数の折り畳み部13のうち最も下側に位置する折り畳み部13よりも下方に配置されている。
【0022】
弾性シート30は、マスク1が着用された状態で下側領域12が下ろされたときに口と重なるように配置されている。弾性シート30は、弾性シート30の厚さ方向に通気しないように構成されている。弾性シート30には、弾性シート30の厚さ方向に貫通する貫通孔は設けられていない。
【0023】
弾性シート30の上縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲している。弾性シート30の上縁は、円弧状に構成されている。弾性シート30の上端の上側から下側に向けて最も突き出す箇所は、幅方向Yにおける本体部10の中央に配置されている。言い換えると、弾性シート30の上端の上側から下側に向けて最も突き出す箇所は、マスク1が着用された状態で下側領域12がめくられたときに、幅方向Yにおける顔の中央と重なるように配置されている。
【0024】
弾性シート30の下縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲している。弾性シート30の下端は、円弧状に構成されている。弾性シート30の下端の円弧の曲率半径は、弾性シート30の上端の円弧の曲率半径よりも小さい。弾性シート30は、三日月状に構成されている。弾性シート30は、幅方向Yにおいて弾性シート30の中央を通る中心線を基準として幅方向Yに対称な形状に構成されている。
【0025】
弾性シート30の上端は、支持部20の下端よりも上方に位置している。弾性シート30の上端は、一対の耳掛け部21の下側の各端部よりも上方に位置している。弾性シート30は、幅方向Yにおける本体部10の両端部にわたって延在している。弾性シート30の下縁は、下側領域12の下縁に沿うように配置されている。
【0026】
弾性シート30の材料は、例えばポリプロピレンなどである。本実施の形態では、弾性シート30は、均一の厚さを有している。弾性シート30の厚みは、例えば0.1mm以上0.3mm以下である。本実施の形態では、弾性シート30は、透明である。弾性シート30の質量は、マスク1が着用された状態で、下側領域12がめくられた状態を維持することができるとともに、下側領域12が下ろされた状態にスムーズに移行することができるように設定されている。
【0027】
図2および
図3を参照して、形状保持部材40は、変形した状態で本体部10の形状を保持することができるように構成されている。形状保持部材40は、上側領域11の上部に配置されている。形状保持部材40は、マスク1が着用された状態で鼻に重なるように配置されている。形状保持部材40が鼻の形状に合わせて変形されることによって本体部10の形状が鼻の形状に合わせて変形された状態が保持される。形状保持部材40は、例えば、ポリエチレン芯材、針金などである。
【0028】
形状保持部材40は、本体部10の内部に配置されている。マスク1が広げられていない状態において、上側領域11は、複数の折り畳み部13で正面Fおよび背面Rが互いに向かい合う方向に折り畳まれるように構成されている。
【0029】
図4および
図5を参照して、実施の形態に係るマスク1の着用状態における構成について説明する。
図4は、実施の形態に係るマスク1の着用状態における構成を概略的に示す正面側斜視図である。
図4は、マスク1が広げられた状態の構成を正面側から示している。
図5は、実施の形態に係るマスク1の着用状態における構成を概略的に示す背面側斜視図である。
図5は、マスク1が広げられた状態の構成を背面側から示している。
【0030】
図4および
図5を参照して、実施の形態に係るマスク1は、着用状態では立体的な形状を有している。マスク1は、着用状態では、複数の折り畳み部13が広げられることで、正面F側に凸となる凸形状を有している。また、マスク1は、弾性シート30の弾性力により正面F側に凸となるように構成されている。マスク1が正面F側に凸となる状態では、弾性シート30の両端間の距離が縮められることによって、弾性シート30の中央が正面F側に突き出すように弾性シート30は弾性変形している。
【0031】
図6および
図7を参照して、実施の形態に係るマスク1の着用時に、下側領域12が下ろされた状態と、下側領域12がめくられた状態とを説明する。
図6は、実施の形態に係るマスク1の着用時に、マスク1で口が覆われた状態を概略的に示す側面図である。
図6は、マスク1の着用時に下側領域12が下ろされた状態を示している。
図7は、実施の形態に係るマスク1の着用時に、マスク1から口が露出した状態を概略的に示す側面図である。
図7は、マスク1の着用時に下側領域12がめくられた状態を示している。この状態では、マスク1で鼻孔が覆われつつ、下側領域12がめくられることでマスク1から口が露出している。
【0032】
図6を参照して、支持部20の耳掛け部21が耳に支持された状態で、マスク1は鼻の上部から顎にわたって顔を覆っている。この状態では、マスク1は、鼻孔および口を覆っている。飲食物が口に入れられないときには、下側領域12が下ろされることで、マスク1によって鼻孔および口を覆うことができる。マスク1は弾性シート30の弾性力により正面F側に凸となるように構成されているため、マスク1と口との距離が確保されている。
【0033】
図7を参照して、支持部20の耳掛け部21が耳に支持された状態で、弾性シート30が顔と向かい合ったまま上側に移動するように、下側領域12が上側にめくられる。このように、下側領域12が上側にめくられることによって、マスク1から口が露出する。このとき、弾性シート30の弾性力は、下側領域12がめくられた状態を維持するように作用する。飲食物が口に入れられるときには、下側領域12がめくられることで、マスク1から口が露出する。したがって、マスク1を着用したまま飲食することが容易となる。
【0034】
また、本体部10の下側領域12および弾性シート30が舌および下唇により押し下げられることで、下側領域12がめくられた状態から下側領域12が下ろされた状態に戻される。マスク1は弾性シート30の弾性力により正面F側に凸となるように構成されているため、下側領域12がめくられた状態から下側領域12が下ろされた状態に戻り易い。下側領域12は弾性シート30の質量により下方に移動し易いため、下側領域12がめくられた状態から下側領域12が下ろされた状態に戻り易い。
【0035】
なお、正面Fからマスク1を見たときに、マスク1から口が露出している必要はない。マスク1と口との間の隙間からストローなどを挿入して飲食することができるように、マスク1から口が露出していればよい。
【0036】
次に、実施の形態に係るマスクの作用効果について説明する。
実施の形態に係るマスク1によれば、支持部20は、本体部10の上側領域11に接続されている。このため、本体部10の下側領域12をめくることが容易となる。また、弾性シート30は、本体部10の下側領域12に配置された部分を含んでいる。このため、弾性シート30の弾性力により本体部10の下側領域12がめくられた状態を維持することができる。さらに、弾性シート30の上縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲しいてる。このため、本体部10の下側領域12をめくることが容易となる。したがって、本体部10の下側領域12をめくることにより、マスク1を着用したまま飲食することが容易となる。
【0037】
実施の形態に係るマスク1では、弾性シート30は、本体部10の背面Rに配置されている。このため、本体部10の下側領域12および弾性シート30が舌および下唇により押し下げられることで下側領域12がめくられた状態から下側領域12が下ろされた状態に戻すことが容易となる。したがって、飲食物が口に入れられないときに、下側領域12を下ろすことが容易となる。
【0038】
実施の形態に係るマスク1では、弾性シート30は、本体部10の背面Rに配置されている。このため、弾性シート30に舌および下唇が接触することで、本体部10が汚れることを防止することができる。
【0039】
実施の形態に係るマスク1によれば、弾性シート30の下縁は、上側から下側に向けて突き出すように湾曲している。弾性シート30は、三日月状に構成されている。したがって、本体部10の下側領域12をめくることが容易である。
【0040】
実施の形態に係るマスク1によれば、弾性シート30の上端は、支持部20の下端よりも上方に位置している。このため、弾性シート30は、上方に移動し易い。したがって、弾性シート30が配置された本体部10の下側領域12をめくることが容易である。
【0041】
実施の形態に係るマスク1によれば、本体部10の下側領域12は、下方に向けて凸となる凸形状を有している。弾性シート30の下縁は、下側領域12の下縁に沿うように配置されている。したがって、本体部10の下側領域12をめくることが容易である。
【0042】
実施の形態に係るマスク1では、本体部10の上側領域11は、複数の折り畳み部13を含んでいる。複数の折り畳み部13は、上下方向Xに本体部10が伸縮するように折り畳み可能に構成されている。したがって、複数の折り畳み部13が折り畳まれることで本体部10の下側領域12をめくることが容易となる。
【0043】
実施の形態に係るマスク1では、弾性シート30は、マスク1が着用された状態で下側領域12が下ろされたときに口と重なるように配置されている。弾性シート30は、弾性シート30の厚さ方向に通気しないように構成されている。したがって、飛沫、ウイルスなどが弾性シート30を通過することを防止することができる。これにより、マスク1による感染症対策の効果をさらに向上させることができる。
【0044】
実施の形態に係るマスク1では、弾性シート30は透明である。このため、マスク1の見た目の違和感を抑制することができる。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 マスク、10 本体部、11 上側領域、12 下側領域、13 折り畳み部、20 支持部、21 耳掛け部、30 弾性シート、40 形状保持部材、F 正面、R 背面、X 上下方向、Y 幅方向。