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特許7100864半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220707BHJP
   B24B 19/02 20060101ALI20220707BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20220707BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
H01L21/304 631
B24B19/02
B24B27/06 Q
B28D5/04 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021209574
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2021-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(73)【特許権者】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-099808(JP,A)
【文献】特開昭55-048930(JP,A)
【文献】特開2016-074068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 19/02
B24B 27/06
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの軸線方向と平行に配置された、円筒形状の一対の棒体であって、該一対の棒体は、前記複数の凹溝を形成する溝加工ドラム砥石の複数の凸部に対応した支持溝が側面全体に形成されていることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項2】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項3】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤー進行方向の変位と連動して進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項4】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの軸線方向と平行に配置された、円筒形状の一対の棒体であって、該一対の棒体は、側面全体に前記溝加工ドラム砥石の複数の凸部に対応した支持溝が形成されていることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ワイヤー支持部は、軸受けを介して、前記棒体が無負荷状態で回転自在に構成されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項6】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項7】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤー進行方向の変位と連動して進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施した半導体結晶ウェハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの軸線方向と平行に配置された、円筒形状の一対の棒体であって、該一対の棒体は、前記複数の凹溝を形成する溝加工ドラム砥石の複数の凸部に対応した支持溝が側面全体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、溝加工工程において、予め半導体結晶インゴットの側面全体に周回する凹溝を形成しておくことで、凹溝をガイドとしてワイヤーにより半導体結晶インゴットを精度よくスライス状に切断することができる。
【0009】
このとき、凹溝に配置されたワイヤーは、そのインゴットとの接触部の両端がワイヤー支持部により支持されることから、ワイヤーが接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0010】
そのため、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができ、平坦化工程において一般的に行われている遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0011】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
また、第2発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする。
さらに、第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断して半導体結晶ウェハを得る切断工程と、
を備え、
前記切断工程は、前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する際に、該ワイヤーと該半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部により支持され、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤー進行方向の変位と連動して進行することを特徴とする。
【0012】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの軸線方向と平行に配置された、円筒形状の一対の棒体であって、該一対の棒体は、側面全体に前記溝加工ドラム砥石の複数の凸部に対応した支持溝が形成されていることを特徴とする。
【0013】
発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法を実現する装置であって、具体的に、複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石により、半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝が形成される。
【0014】
そして、ワイヤーソー部により、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることで、凹溝をガイドとしてワイヤーにより半導体結晶インゴットを精度よくスライス状に切断することができる。
【0015】
ここで、ワイヤー支持部により、凹溝に配置されたワイヤーは、そのインゴットとの接触部の両端がワイヤー支持部により支持されることから、ワイヤーが接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0016】
そのため、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができ、平坦化工程において一般的に行われている遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0017】
このように、第発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0019】
また、発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤー支持部を一対の棒体とすることで、複数のワイヤーを同時に同一位置で支持することができる。
【0020】
このように、第発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを効率よく簡易かつ確実に製造することができる。
さらに、第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、棒体の側面全体に溝加工ドラム砥石の複数の凸部に対応した支持溝を形成することで、周回するワイヤーが切断の際に横ずれすることがなく確実に支持することができる。
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実により安定して製造することができる。
【0021】
発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第発明において、
前記ワイヤー支持部は、軸受けを介して、棒体が無負荷状態で回転自在に構成されることを特徴とする。
【0022】
発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、棒体が軸受けを介して無負荷の状態で回転可能に構成することで、ワイヤーの周回速度を維持させながらワイヤーを確実に支持することができる。加えて、ワイヤーによる棒体への削り込みも防止することができる。
【0023】
このように、第発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に安定して製造することができる。
【0027】
第6発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行することを特徴とする。
【0028】
第6発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤー支持部を半導体結晶インゴットの側面外形に沿って進行させることで、ワイヤーと半導体結晶インゴットとの接触部の両端にワイヤー支持部を常に位置させることができる。
【0029】
このように、第6発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを効率よく簡易かつ確実に製造することができることが実現できる。
【0030】
第7発明の導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記ドラム砥石により側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら進行させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記ワイヤーと前記半導体結晶インゴットとの接触部の両端において該ワイヤーを進行方向に支持するワイヤー支持部と
を備え、
前記ワイヤー支持部は、前記ワイヤーソー部の前記ワイヤー進行方向の変位と連動して進行することを特徴とする。
【0031】
第7発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤーの進行方向変位量とワイヤー支持部の進行方向変位量とを連動させることで、進行方向の位置関係を維持することができ、常にワイヤーを一定の支持力で安定して支持させることができる。
【0032】
このように、第7発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
図2図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程の内容を示す説明図。
図3図1のSiCウェハの製造方法における切断工程の内容を示す説明図。
図4図3の切断工程の内容を示す説明図。
図5図1のSiCウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したウェハの一面のうねり除去を施したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP110/図1)と、切断工程(STEP120/図1)と、第1面加工工程(STEP130/図1)と、第2面加工工程(STEP150/図1)とを備える。
【0035】
図2図5を参照して各工程の詳細および各工程で用いられる装置について説明する。
【0036】
まず、図2に示すSTEP100の溝加工工程では、予め結晶させたSiC結晶に対して、インゴット加工工程において、結晶方位を定めて円筒研削加工を施して得られる円筒形状のSiCインゴット10を準備する。
【0037】
そして、STEP100の溝加工工程では、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0038】
具体的に、STEP100の溝加工工程では、凹溝11に対応した凸部21が側面に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0039】
なお、溝加工工程により得られたSiCインゴット10(特に凹溝11)に対して化学処理的手法によりノンダメージの鏡面加工を施すことが望ましい。
【0040】
次に、図3に示す、STEP110の切断工程では、溝加工工程において形成された複数の凹溝11に配置された複数のワイヤー31によりSiCインゴット10をスライス状に切断してSiCウェハ100を得る。
【0041】
具体的に切断工程では、切断加工装置であるワイヤーソー装置は、ワイヤーソー部30が、複数のワイヤー31を溝加工工程で形成した複数の凹溝11にそれぞれ合せて、ワイヤー31を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断する。
【0042】
なお、ワイヤー31を周回させるワイヤーソーボビン32の側面全体に複数の凸21に対応した複数の凹型のボビン溝が形成されている。また、SiCインゴット10は、SiCインゴット10が嵌まり込むスライス用ベース35に接着剤などを介して嵌まり込んで固定されている。
【0043】
このとき、ワイヤーソー装置が備えるワイヤー支持部40が、ワイヤー31とSiCインゴット10との接触部の両端においてワイヤー31を進行方向に支持する。
【0044】
より具体的にワイヤー支持部40は、SiCインゴット10の軸線方向と平行に配置された、円筒形状の一対の棒体41,41であって、棒体41の両端には、棒体41の軸受け42,42(例えばボールベアリングなど)が設けられている。軸受け42,42により棒体41は、無負荷状態で回転自在に構成される。
【0045】
また、棒体41の側面全体に溝加工ドラム砥石20の複数の凸21に対応した凹型の支持溝が形成されている。
【0046】
ここで、ワイヤーソー部30のワイヤーソーボビン32と、ワイヤー支持部40の棒体41は、それぞれ図示しないフレームおよびフレーム動作手段により支持されて、以下のように、ワイヤー31(ワイヤーソーボビン32)とワイヤー支持部40とが動作進行する。
【0047】
まず、ワイヤー31の進行方向変位量とワイヤー支持部40の進行方向変位量とが連動するように、ワイヤー支持部40(棒体41)が進行する。これにより、進行方向におけるワイヤー31とワイヤー支持部40(棒体41)との位置関係が維持される。
【0048】
さらに、図4に示すように、ワイヤー支持部40は、SiCインゴット10の側面外形に沿って進行する。
【0049】
なお、ワイヤーソーボビン32およびワイヤー支持部40の進行動作は、予めSiCインゴット10に応じて、フレーム動作手段にティーチングにより記憶保持させてもよく、SiCインゴット10の規格寸法に応じた動作データテーブルから動作進行を選択して動作データを読み出すように構成してもよい。
【0050】
以上のようにワイヤーソー部30に加えてワイヤー支持部40を構成されたワイヤーソー装置によれば、棒体41により複数のワイヤー31を同時に同一位置で支持することができる。
【0051】
また、棒体41が軸受け42を介して無負荷の状態で回転可能に構成されることで、ワイヤー31の周回速度を維持させながらワイヤー31を確実に支持することができる。加えて、ワイヤー31による棒体41への削り込みも防止することができる。
【0052】
さらに、棒体41は、側面全体にSiCインゴット10の凹溝11と同一の支持溝が形成され、ワイヤーソーボビン32にも凹溝11と同じボビン溝が形成されている。このため、周回するワイヤー31をボビン溝により確実に凹溝11に位置させることに加えて、支持溝によりワイヤー31が切断の際に横ずれすることがなく確実に支持させることができる。
【0053】
加えて、ワイヤー支持部40を、ワイヤーソー部30のワイヤー31の進行方向の変位と連動させつつ、SiCインゴット10の側面外形に沿って進行させることで、ワイヤーとSiCインゴット10との接触部の両端にワイヤー支持部を常に位置させることができる。
【0054】
なお、ワイヤー31およびワイヤー支持部40は、最後にスライス用ベース35に沿って進行して、SiCインゴット10を切断し切っても、ワイヤー31がスライス用ベースに残ることで、SiCインゴット10の切断終了部位の剥がれなどを防止することができる。
【0055】
これにより、ワイヤー31は、SiCインゴット10との接触部の両端がワイヤー支持部40により常に支持されることから、ワイヤー31が接触部において弓なりになるのを防止して、水平に近い状態を維持することができる。
【0056】
ひいては、切断時にワイヤーが弓なりになって両端部側に切断応力が偏ることを防止して、うねりや筋のない切断面を実現することができる。
【0057】
このように、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー31で精度よくSiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができ、改めて面取り工程を行う必要もない。
【0058】
次に、図に示すように、STEP120の第1面加工工程では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0059】
具体的には、第1面加工工程では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0060】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0061】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0062】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより残る他面120に研削加工が施される。
【0063】
なお、研削加工後には、ドレッサーなどによりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0064】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0065】
次に、STEP130の第2面加工工程では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0066】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0067】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサーなどをダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0068】
かかるSTEP120の第1面加工工程およびSTEP130の第2面加工工程のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断工程により得られた高い平坦性を有する切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0069】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0070】
なお、STEP120の第1面加工工程およびSTEP130の第2面加工工程の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0071】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法によれば、高品質なSiCウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0072】
なお、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェ洗浄工程が行われてもよい。
【0073】
また、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…SiC結晶(半導体結晶)、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、20…溝加工ドラム砥石、21…凸部、30…ワイヤーソー部(ワイヤーソー装置)、31…ワイヤー、32…ワイヤーソーボビン、35…スライス用ベース、40…ワイヤー支持部(ワイヤーソー装置)、41…棒体、42…軸受け、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【要約】
【課題】本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/図1)と、切断工程(STEP120/図1)と、第1面加工工程(STEP120/図1)と、第2面加工工程(STEP130/図1)とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5