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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】農作業機及び農作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 71/02 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
A01B71/02 Z
A01B71/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018223678
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020080786
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池内 善活
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂喜
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-239388(JP,A)
【文献】特開2016-208874(JP,A)
【文献】特開2016-049029(JP,A)
【文献】特開2011-229403(JP,A)
【文献】特開2011-142884(JP,A)
【文献】特開2011-036192(JP,A)
【文献】実公昭64-005450(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 51/00 - 61/04
A01B 63/14 - 67/00
A01B 71/00 - 79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車制御部、動力取出部及び前記走行車制御部に電気的に接続された走行車側操作部を備える走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機であって、
農作業機側操作部と、
前記走行車制御部との間で通信可能であり、前記農作業機側操作部の操作に基づく所定の信号を受信した際に、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、かつ、前記走行車側操作部の操作に基づく所定の信号を受信した際にも、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信する制御部と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
走行車制御部、動力取出部及び前記走行車制御部に電気的に接続された走行車側操作部を備える走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機であって、
農作業機側操作部と、
前記走行車制御部に電気的に接続され、前記走行車制御部との間で通信可能な制御部と、
この制御部によって制御される駆動部とを備え、
前記制御部は、
前記農作業機側操作部の操作に基づく信号であって前記駆動部を作動させるための駆動部作動信号を受信した際に、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、前記動力取出部が停止していると判断した場合には、前記駆動部作動信号に基づいて前記駆動部を作動させ、かつ、前記走行車側操作部の操作に基づく信号であって前記駆動部を作動させるための駆動部作動信号を受信した際にも、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、前記動力取出部が停止していると判断した場合には、前記駆動部作動信号に基づいて前記駆動部を作動させる
ことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
制御部は、走行車制御部からの情報又は検知部からの情報に基づいて、動力取出部が停止しているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の農作業機。
【請求項4】
走行車制御部、動力取出部及び前記走行車制御部に電気的に接続された走行車側操作部を備える走行車と、
この走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機とを具備し、
前記農作業機は、
農作業機側操作部と、
前記走行車制御部との間で通信可能であり、前記農作業機側操作部の操作に基づく所定の信号を受信した際に、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、かつ、前記走行車側操作部の操作に基づく所定の信号を受信した際にも、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信する制御部とを備え、
前記走行車の前記走行車制御部は、
前記農作業機の前記制御部からの動力取出部停止信号を受信すると、前記動力取出部を停止させる、又は、作業者に対して前記動力取出部の停止指示を出す
ことを特徴とする農作業システム。
【請求項5】
走行車制御部、動力取出部及び前記走行車制御部に電気的に接続された走行車側操作部を備える走行車と、
この走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機とを具備し、
前記農作業機は、
農作業機側操作部と、
前記走行車制御部に電気的に接続され、前記走行車制御部との間で通信可能な制御部と、
この制御部によって制御される駆動部とを備え、
前記農作業機の前記制御部は、
前記農作業機側操作部の操作に基づく信号であって前記駆動部を作動させるための駆動部作動信号を受信した際に、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、前記動力取出部が停止していると判断した場合には、前記駆動部作動信号に基づいて前記駆動部を作動させ、かつ、前記走行車側操作部の操作に基づく信号であって前記駆動部を作動させるための駆動部作動信号を受信した際にも、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、前記動力取出部が停止していると判断した場合には、前記駆動部作動信号に基づいて前記駆動部を作動させ、
前記走行車の前記走行車制御部は、
前記農作業機の前記制御部からの動力取出部停止信号を受信すると、前記動力取出部を停止させる、又は、作業者に対して前記動力取出部の停止指示を出す
ことを特徴とする農作業システム。
【請求項6】
走行車側操作部は、タッチパネル式モニタであり
農作業機側操作部は、タッチパネル式リモコンである
ことを特徴とする請求項又は記載の農作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性の向上を図ることができる農作業機及び農作業システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、3分割の折畳式農作業機で、走行車であるトラクタの後部に連結される中央作業部と、この中央作業部に上下方向に回動可能に設けられ、回動により展開作業状態及び折畳非作業状態になる左右の延長作業部とを備えている。中央作業部は、左右方向両端側に中央側クラッチを有し、また、延長作業部は、展開作業状態時には中央側クラッチと係合し、折畳非作業状態時にはその係合を解除する延長側クラッチを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-304703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えばトラクタのPTO(動力取出部)を停止させずに、延長作業部を回動させると、例えばクラッチ等の部品が破損するおそれがあり、耐久性が良好であるとは言い難い。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、耐久性の向上を図ることができる農作業機及び農作業システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車制御部及び動力取出部を備える走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機であって、所定の信号を受信すると、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信する制御部を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、走行車制御部及び動力取出部を備える走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする農作業機であって、前記走行車制御部に電気的に接続される制御部と、この制御部によって制御される駆動部とを備え、前記制御部は、前記駆動部を作動させるための駆動部作動信号を受信すると、前記動力取出部が停止しているか否かを判断し、前記動力取出部が停止していないと判断した場合には、前記動力取出部を停止させるための動力取出部停止信号を前記走行車制御部に送信し、前記動力取出部が停止していると判断した場合には、前記駆動部作動信号に基づいて前記駆動部を作動させるものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、走行車制御部には、操作部が電気的に接続され、制御部は、前記操作部の操作に基づいて駆動部作動信号を受信するものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、制御部には、操作部が電気的に接続され、前記制御部は、前記操作部の操作に基づいて駆動部作動信号を受信するものである。
【0011】
請求項5記載の農作業機は、請求項3又は4記載の農作業機において、操作部は、表示部を兼ねたもので、駆動部を作動させる際に操作する駆動部用表示を表示し、制御部は、前記駆動部用表示の操作に基づいて駆動部作動信号を受信するものである。
【0012】
請求項6記載の農作業機は、請求項1ないし5のいずれか一記載の農作業機において、制御部は、走行車制御部からの情報又は検知部からの情報に基づいて、動力取出部が停止しているか否かを判断するものである。
【0013】
請求項7記載の農作業システムは、走行車制御部及び動力取出部を備える走行車と、この走行車に連結され、前記動力取出部からの動力に基づいて農作業をする請求項1ないし6のいずれか一記載の農作業機とを具備し、前記走行車の前記走行車制御部は、前記農作業機の制御部からの動力取出部停止信号を受信すると、前記動力取出部を停止させる、又は、作業者に対して前記動力取出部の停止指示を出すものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機(代掻機)及びトラクタを具備する農作業システムの構成図である。
図2】同上農作業システムの構成を示すブロック図である。
図3】同上農作業機の背面図である。
図4】同上農作業機の側面図である。
図5】同上トラクタのタッチパネル式モニタに表示された操作用画面の一例を示す図である。
図6】同上農作業機の制御部のフローチャートである。
図7】同上農作業システムの変形例を示すブロック図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る農作業システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施の形態の農作業システムについて図1ないし図7を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図4において、1は農作業機で、この農作業機1は、圃場を走行可能な走行車であるトラクタ2に連結されて使用される3分割の折畳式の代掻機(折畳式作業機)である。そして、これら農作業機1とトラクタ2とによって、圃場を走行しながら農作業を行う農作業システムSが構成されている。
【0018】
トラクタ2は、エンジン(駆動源)3及び変速機4等を有するトラクタ本体5を備え、このトラクタ本体5には、エンジン3からの動力に基づいて回転する車輪(前輪、後輪)6が設けられている。トラクタ本体5の後部には、エンジン3からの動力に基づいて回転(作動)する軸状の動力取出部であるPTO(PTO軸)7が設けられている。
【0019】
また、トラクタ2は、エンジン3、変速機4及びPTO7等を含む制御対象を制御する走行車制御部であるトラクタ制御部8を備えている。トラクタ制御部8には、表示部を兼ねた操作部であるタッチパネル式モニタ(表示操作部)9が有線(無線でもよい)で電気的に接続されている。タッチパネル式モニタ9は、トラクタ2の運転席付近に配置され、運転席に乗った作業者によってタッチ操作される。
【0020】
農作業機1は、トラクタ2の後部の3点リンク10に連結され、トラクタ2の走行により前方(進行方向)に移動しながら、トラクタ2のPTO7からの動力(回転動力)に基づいて農作業(代掻作業)をするものである。
【0021】
この農作業機1は、3分割構造のもので、トラクタ2の3点リンク10に脱着可能に連結された中央作業部11と、この中央作業部11に回動中心軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられ、回動により展開作業状態(開状態)及び折畳非作業状態(閉状態)になる左右の延長作業部(左作業部、右作業部)12とを備えている。
【0022】
また、農作業機1は、延長作業部12を中央作業部11に対して回動中心軸13を中心として回動させる左右の駆動部である作業部回動用シリンダ15を備えている。2本の各作業部回動用シリンダ(開閉用シリンダ)15は、例えば電動油圧シリンダである。なお、延長作業部12を回動させる駆動部は、シリンダには限定されず、モータ等を用いてもよい。
【0023】
そして、延長作業部12は、作業部回動用シリンダ15の伸び動作に基づく開方向への回動により、中央作業部11の側方に位置する展開作業状態となる。また、延長作業部12は、作業部回動用シリンダ15の縮み動作に基づく閉方向への回動により、中央作業部11の上方に位置する折畳非作業状態となる。
【0024】
このため、農作業機1は、中央作業部11と左右両方の延長作業部12とで農作業を行う状態と、中央作業部11と左右いずれか一方の延長作業部12とで農作業を行う状態と、中央作業部11のみで農作業を行う状態とに選択的に切換可能となっている。
【0025】
中央作業部11は、トラクタ2の3点リンク10に脱着可能に連結された中央機体21と、この中央機体21に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら耕耘作業をする中央耕耘体22と、この中央耕耘体22の後方で整地作業をする中央整地体23とを有している。
【0026】
中央機体21は、左右方向中央部にミッションケース等の軸支持部25を有し、この軸支持部25によって入力軸26が回転可能に支持されている。入力軸26は、連結手段であるジョイント27を介してトラクタ2のPTO7に連結されている。中央機体21は、中央耕耘体22の上方を覆う耕耘カバー部28を有し、この耕耘カバー部28の後端部には中央整地体23が上下方向に回動可能に設けられている。
【0027】
中央耕耘体22は、中央機体21の軸支持部(チェーンケース、ブラケット)30によって回転可能に支持された耕耘軸31を有し、この耕耘軸31には複数の耕耘爪(代掻爪)32が設けられている。耕耘軸31の軸方向の両端部には、中央側クラッチ33がそれぞれ設けられている。
【0028】
そして、中央耕耘体22の回転軸である耕耘軸31は、PTO7からの動力を伝達する動力伝達部34から動力を受けて回転する。動力伝達部34は、例えばジョイント27、入力軸26、ギア、伝動軸及びチェーン等を有している。
【0029】
中央整地体23は、耕耘カバー部28の後端部に回動可能に設けられた板状の第1整地体(均平板)36を有し、この第1整地体(均平板)36の下端部には板状の第2整地体(レーキ)37が回動可能に設けられている。
【0030】
延長作業部12は、中央作業部11の中央機体21の端部に回動中心軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長機体41と、この延長機体41に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら耕耘作業をする延長耕耘体42と、この延長耕耘体42の後方で整地作業をする延長整地体43とを有している。
【0031】
延長機体41は、延長耕耘体42の上方を覆う耕耘カバー部45を有し、この耕耘カバー部45の後端部には延長整地体43が上下方向に回動可能に設けられている。
【0032】
延長耕耘体42は、延長機体41の軸支持部(ブラケット)50によって回転可能に支持された耕耘軸51を有し、この耕耘軸51には複数の耕耘爪(代掻爪)52が設けられている。耕耘軸51の内端部には、延長作業部12の展開作業状態時には中央耕耘体22の中央側クラッチ33と係合し、延長作業部12の折畳非作業状態時にはその係合を解除する延長側クラッチ53が設けられている。
【0033】
そして、延長耕耘体42の回転軸である耕耘軸51は、延長作業部12の展開作業状態時には両クラッチ33,53を介して中央作業部11から動力を受けて所定方向へ回転するが、延長作業部12の折畳非作業状態時には両クラッチ33,53の係合解除により動力伝達が遮断されるため、その折畳非作業状態では回転しない。
【0034】
なお、中央耕耘体22と延長耕耘体42とで回転作業部(耕耘部)16が構成されている。また、動力伝達部34と回転作業部16とによって、トラクタ2のPTO7に連動して回転する連動手段17が構成されている。
【0035】
延長整地体43は、耕耘カバー部45の後端部に回動可能に設けられた板状の第1整地体(均平板)56を有し、この第1整地体(均平板)56の下端部には板状の第2整地体(レーキ)57が回動可能に設けられている。
【0036】
また、第2整地体57の外端部には、板状の追加整地体であるサイドレーキ58が上下方向に回動可能に設けられている。そして、サイドレーキ58は、回動装置61のサイドレーキ回動用モータ62の作動に基づく開方向への回動により、延長整地体43の第2整地体57の側方に位置する展開作業状態(開状態)となる。また、サイドレーキ58は、回動装置61のサイドレーキ回動用モータ62の作動に基づく閉方向への回動により、延長整地体43の第2整地体57の上方に位置する折畳非作業状態(閉状態)となる。
【0037】
左右の各回動装置61は、延長機体41に固定したケース63内に収納された駆動手段であるサイドレーキ回動用モータ(電動モータ)62を有し、このモータ62の作動に基づいてサイドレーキ58が回動してその状態が切り換わる。
【0038】
さらに、第2整地体57の内端部には、延長作業部12の展開作業状態時には中央整地体23の中央側嵌合部66と嵌合し、延長作業部12の折畳非作業状態時にはその嵌合を解除する延長側嵌合部67が設けられている。
【0039】
また、農作業機1は、中央整地体23及び延長整地体43を耕耘整地作業状態である代掻作業状態(フリー状態)及び土引作業状態(ロック状態)に選択的に切換可能な切換装置68を備えている。そして、切換装置68は、駆動手段である作業状態切換用モータ(電動モータ)69を有し、このモータ69の作動に基づいて整地体23,43の作業状態が切り換わる。なお、この切換装置68は、中央作業部11に設けられている。
【0040】
さらに、農作業機1は、各シリンダ15及び各モータ62,69を制御する制御部(農作業機制御部)71を備えている。つまり、この制御部71は、複数、例えば5つのアクチュエータ(シリンダ15、モータ62,69)等を制御するものであり、中央機体21のトップマスト70に取り付けられている。
【0041】
そして、この制御部71には、トラクタ2のトラクタ制御部8が例えば有線で電気的に接続されている。つまり、図1に示すように、トラクタ2のトラクタ制御部(トラクタ側コントローラ)8からの配線72と、農作業機1の制御部(作業機側コントローラ)からの配線73とが、接続コネクタ74を介して接続されている。
【0042】
接続コネクタ6は、例えばAG-PORT規格のコネクタであり、これにより、トラクタ制御部8と制御部71との間で双方向に通信可能となっている。換言すると、農作業機1の制御部71は、トラクタ2のトラクタ制御部8と通信するものであり、当該トラクタ制御部8との間で信号や情報のやりとりを行う。それゆえ、例えばトラクタ2の運転席に乗った作業者は、トラクタ2のタッチパネル式モニタ9に表示された操作用画面を操作して農作業機1を遠隔操作することが可能である。なお、トラクタ2のトラクタ制御部8と農作業機1の制御部71との接続は、有線(AG-PORT等)には限定されず、無線でもよい。
【0043】
ここで、図5は、トラクタ2のタッチパネル式モニタ(タッチパネル部)9に表示された操作用画面(農作業機操作用の画面)の一例である。
【0044】
この操作用画面は、農作業機1の状態等を表示する表示部分80を左側に有し、かつ、トラクタ2の運転席に乗った作業者が指先でタッチ操作可能な操作部分である複数、例えば10個のボタン81~90、すなわち開ボタン81、閉ボタン82、左選択ボタン83、右選択ボタン84、左サイドレーキ開ボタン85、左サイドレーキ閉ボタン86、右サイドレーキ開ボタン87、右サイドレーキ閉ボタン88、代掻ボタン89及び土引ボタン90を右側に有している。
【0045】
なお、これら複数のボタン81~90のうち、例えば2つのボタン(延長作業部開閉スイッチ)81,82によって、作業部回動用シリンダ(駆動部)15を作動させる際に操作する駆動部用表示91が構成されている。
【0046】
開ボタン(駆動部用操作部分)81は、左右の両延長作業部12を同時に展開作業状態にするためのボタンである。但し、左選択ボタン83又は右選択ボタン84により、左右のいずれか一方が選択されている場合には、その選択された側のみが開く。また、閉ボタン(駆動部用操作部分)82は、左右の両延長作業部12を同時に折畳非作業状態にするためのボタンである。但し、左選択ボタン83又は右選択ボタン84により、左右のいずれか一方が選択されている場合には、その選択された側のみが閉じる。
【0047】
そして、開ボタン81が操作された場合、又は閉ボタン82が操作された場合には、制御部71は、その操作に基づいて、トラクタ制御部8から送られてくる、作業部回動用シリンダ15を作動させるための駆動部作動信号であるシリンダ作動信号(所定の信号)を受信する。
【0048】
左選択ボタン83は、左右の両延長作業部12のうち左側の延長作業部12のみを回動させる際に、当該左側の延長作業部12を選択するためのボタンである。この左選択ボタン83は、そのボタン自体がオン状態では点灯し、オフ状態では消灯する。また、右選択ボタン84は、左右の両延長作業部12のうち右側の延長作業部12のみを回動させる際に、当該右側の延長作業部12を選択するためのボタンである。この右選択ボタン84は、そのボタン自体がオン状態では点灯し、オフ状態では消灯する。
【0049】
左サイドレーキ開ボタン85は、左側のサイドレーキ58を展開作業状態にするためのボタンである。左サイドレーキ閉ボタン86は、左側のサイドレーキ58を折畳非作業状態にするためのボタンである。右サイドレーキ開ボタン87は、右側のサイドレーキ58を展開作業状態にするためのボタンである。右サイドレーキ閉ボタン88は、右側のサイドレーキ58を折畳非作業状態にするためのボタンである。代掻ボタン89は、整地体を代掻作業状態にするためのボタンである。土引ボタン90は、整地体を土引作業状態にするためのボタンである。
【0050】
なお、図5に図示した画面は、代掻機に対応するものであるが、例えばトラクタ2に畦塗り機を連結した際にはその畦塗り機に対応する画面が表示される。つまり、トラクタ2のタッチパネル式モニタ9には、トラクタ2に連結する農作業機1の各種類に対応する画面が表示される。
【0051】
次に、上記農作業システムSの作用等を説明する。
【0052】
図6に示すように、農作業機1の制御部71は、トラクタ2のタッチパネル式モニタ9に表示された操作用画面中の駆動部用表示(開ボタン81、閉ボタン82)91の操作に基づいて、トラクタ制御部8からのシリンダ作動信号(駆動部の作動指令信号)を受信する(ステップ1)。
【0053】
すると、制御部71は、トラクタ制御部8からの情報、すなわちPTO7の状態に関するPTO情報(例えばPTOの回転数信号、PTO停止完了信号等)に基づいて、PTO7が停止しているか否かを判断する(ステップ2)。
【0054】
そして、制御部71は、PTO7が停止していないと判断した場合には、PTO7を停止させるための動力取出部停止信号であるPTO停止信号をトラクタ制御部8に送信する(ステップ3)。トラクタ2のトラクタ制御部8は、農作業機1の制御部71からのPTO停止信号を受信すると、回転しているPTO7を自動停止させる。
【0055】
また、制御部71は、PTO7が停止していると判断した場合には、シリンダ作動信号に基づいて作業部回動用シリンダ15を作動させる(ステップ4)。その結果、PTO7、動力伝達部34及び回転作業部16が回転を停止した状態で、延長作業部12が中央作業部11に対して回動して所望の状態となる。
【0056】
具体的には、例えば閉ボタン82が操作された場合は、左右の両延長作業部12が中央作業部11に対して閉方向に回動して折畳非作業状態となり、例えばこの状態で代掻作業を開始する際には、作業者は、PTO7の作動操作(PTO作動スイッチのオン操作等)を行う。なお、PTO作動スイッチとして機能するボタンをタッチパネル式モニタ9に表示させてもよい。
【0057】
そして、このような農作業システムSによれば、PTO7、動力伝達部34及び回転作業部16が完全に停止している場合にのみ、駆動部作動信号に基づいて駆動部(2つのシリンダ15,15のうちの少なくともいずれか一方)が作動するため、PTO7の停止操作をし忘れた場合であっても、クラッチ33,53等の部品が破損する不具合を回避でき、よって、耐久性の向上を図ることができる。
【0058】
なお、上記第1の実施の形態では、トラクタ制御部8にはタッチパネル式モニタ(表示部を兼ねた操作部)9が有線又は無線で電気的に接続され、かつ、制御部71は、タッチパネル式モニタ9の駆動部用表示(ボタン81,82)の操作に基づいて駆動部作動信号(シリンダ作動信号)を受信してPTO停止の有無を判断する構成について説明したが、この構成には限定されず、例えば図7に示す構成でもよい。
【0059】
この図7に示すものは、制御部71には、タッチパネル式モニタ9と同じ操作用画面(例えば図5に示す画面)を表示するタッチパネル式リモコン(表示部を兼ねた操作部)92が有線又は無線で電気的に接続され、かつ、その制御部71は、タッチパネル式リモコン92の駆動部用表示(ボタン81,82)の操作に基づいて駆動部作動信号(シリンダ作動信号)を受信してPTO停止の有無を判断する構成となっている。タッチパネル式リモコン92は、タッチパネル式モニタ9と同様、トラクタ2の運転席付近に配置され、運転席に乗った作業者によってタッチ操作される。なお、例えばタッチパネル式のモニタ9及びリモコン92の両方を用いるようにしてもよい。
【0060】
また、例えば図示しないが、農作業機1が、タッチパネル式リモコン92の代わりに、表示部を有しないリモコン(操作部)を備えた構成でもよく、また、トラクタ2が、タッチパネル式モニタ9の代わりに、操作部を有しないモニタ(表示部)を備えた構成等でもよい。さらに、表示部や操作部として、例えば携帯電話等の携帯端末機(スマートフォン、タブレット等)を使用してもよい。
【0061】
さらに、上記第1の実施の形態では、複数のボタン81~90のうち、開ボタン81又は閉ボタン82が操作された場合にのみ、制御部71がPTO停止の有無の判断を行い、それ以外のボタン操作であればPTO停止の有無の判断を行わない構成について説明したが、この構成には限定されず、例えば複数のボタン81~90のうち、いずれのボタンが操作された場合であっても、制御部71がPTO停止の有無を判断するようにしてもよい。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態の農作業システムについて図8を参照して説明する。
【0063】
この図8に示す農作業システムSの農作業機1は、トラクタ2に連結されて使用される後進作業可能(リターン作業可能)な畦塗り機(オフセット作業機)である。つまり、この農作業機1は、トラクタ2の後部の3点リンク10に連結され、トラクタ2の走行により移動(前進作業時には前方へ移動、後進作業時には後方へ移動)しながら、トラクタ2のPTO7からの動力(回転動力)に基づいて農作業(畦塗り作業)をするものである。
【0064】
この農作業機1は、トラクタ2の3点リンク10に脱着可能に連結された機枠101と、この機枠101に連結手段102を介して連結された可動機枠103と、この可動機枠103に設けられ、前進作業状態、格納非作業状態及び後進作業状態になる回転作業部(畦塗り部)104とを備えている。
【0065】
回転作業部104は、トラクタ2のPTO7からの動力を伝達する動力伝達部106から動力を受けて回転するもので、例えば所定方向に回転しながら土を盛り上げる盛土体108と、所定方向に回転しながら盛土体108による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体109とを有している。なお、盛土体108は、土を耕耘して盛り上げる複数の耕耘爪108aを有している。畦形成体109は、截頭円錐状の畦側面形成部109aと、円筒状の畦上面形成部109bとを有している。
【0066】
動力伝達部106は、例えばジョイント27、入力軸26、中間ジョイント100、ギア、中間入力軸、盛土体用伝動軸及び畦形成体用伝動軸等を有している。なお、動力伝達部106と回転作業部104とによって、トラクタ2のPTO7に連動して回転する連動手段110が構成されている。
【0067】
また、農作業機1は、回転作業部104を前進作業状態及び格納非作業状態に選択的に切り換えるための駆動部である第1シリンダ111と、回転作業部104を格納非作業状態及び後進作業状態に選択的に切り換えるための駆動部である第2シリンダ112とを備えている。2本の各シリンダ111,112は、例えば電動油圧シリンダである。
【0068】
さらに、農作業機1は、アクチュエータである各シリンダ111,112を制御する制御部(農作業機制御部)113を備えている。この制御部113には、上述した第1の実施の形態と同様、トラクタ制御部8が有線(無線でもよい)で電気的に接続され、これら両制御部8,113は互いに通信可能となっている。すなわち例えば、トラクタ制御部8からの配線72と、制御部113からの配線73とが、AG-PORT規格の接続コネクタ74を介して接続されている。それゆえ、トラクタ2の運転席に乗った作業者は、トラクタ2のタッチパネル式モニタ9に表示された操作用画面を操作して農作業機(畦塗り機)1を遠隔操作することが可能である。
【0069】
なお、タッチパネル式モニタ9に表示される畦塗り機用の画面は、少なくとも前進ボタン、格納ボタン及び後進ボタンを有しており、これら3つのボタンによって、シリンダ(駆動部)111,112を作動させる際に操作する駆動部用表示が構成されている。
【0070】
そして、この第2の実施の形態に係る農作業システムSでも、上述した第1の実施の形態と同様、図6に示すように、農作業機1の制御部113は、トラクタ2のタッチパネル式モニタ9に表示された操作用画面中の駆動部用表示の操作に基づいて、トラクタ制御部8からのシリンダ作動信号を受信する(ステップ1)。
【0071】
すると、制御部113は、トラクタ制御部8からの情報、すなわちPTO7の状態に関するPTO情報に基づいて、PTO7が停止しているか否かを判断する(ステップ2)。
【0072】
そして、制御部113は、PTO7が停止していないと判断した場合には、PTO7を停止させるためのPTO停止信号をトラクタ制御部8に送信する(ステップ3)。トラクタ2のトラクタ制御部8は、農作業機1の制御部113からのPTO停止信号を受信すると、回転しているPTO7を自動停止させる。
【0073】
また、制御部113は、PTO7が停止していると判断した場合には、シリンダ作動信号に基づいてシリンダ111,112を作動させる(ステップ4)。その結果、PTO7、動力伝達部106及び回転作業部104が回転を停止した状態で、回転作業部104が機枠101に対して移動して所望の状態となる。
【0074】
そして、この第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様、PTO7、動力伝達部106及び回転作業部104が完全に停止している場合にのみ、駆動部作動信号に基づいて駆動部(2つのシリンダ111,112のうちの少なくともいずれか一方)が作動するため、PTO7の停止操作をし忘れた場合であっても、中間ジョイント100等の部品が破損する不具合を回避でき、よって、耐久性の向上を図ることができる。
【0075】
なお、上記第2の実施の形態においても、図7に示す構成の如く、表示部を兼ねた操作部であるタッチパネル式リモコンを用いてもよい。また、タッチパネル式のモニタ及びリモコンの両方を備える構成のほか、農作業機1が表示部を有しないリモコン(操作部)を備えた構成や、トラクタ2が操作部を有しないモニタ(表示部)を備えた構成等でもよい。
【0076】
また一方、上記第1、第2の実施の形態では、農作業機1の制御部(農作業機側制御部)71,113は、トラクタ制御部8からの情報に基づいて、PTOが停止しているか否かを判断する構成について説明したが、例えば光学系のセンサ等の検知部からの情報に基づいて、PTOが停止しているか否かを判断する構成でもよい。
【0077】
この検知部は、PTO(動力取出部)の回転に連動する連動手段17,110の状態を検知するもので、例えば入力軸やギア等の回転を検知する回転検知センサである。例えば図1に示す農作業機(代掻機)1では、検知部は中央機体21の軸支持部25内に設けられ、また、例えば図8に示す農作業機(畦塗り機)1では、検知部は機枠101の軸支持部99内に設けられる。
【0078】
また、上記第1、第2の実施の形態では、トラクタ2のトラクタ制御部(走行車側制御部)8は、制御部71,113からのPTO停止信号を受信すると、PTOを停止させる(自動停止制御する)構成について説明したが、例えば制御部からのPTO停止信号を受信すると、作業者に対してPTOの停止指示を出す構成、すなわち例えば作業者にPTOの停止操作を促すPTO停止指示表示をタッチパネル式モニタ9に表示させる構成等でもよい。
【0079】
このPTO停止指示表示は、具体的には、例えばトラクタの運転席に乗った作業者にPTO作動スイッチ等をオフ操作させるためのもので、「PTOを停止して下さい。」等の表示であり、また、例えばその表示と同時に、PTO作動スイッチとして機能するボタンが表示されるようにしてもよい。なお、作業者に対するPTOの停止指示は、例えばタッチパネル式モニタ9のスピーカ部から出力される音声でもよい。
【0080】
さらに、いずれの実施の形態においても、農作業機は、シリンダやモータ等の駆動部を備える駆動タイプには限定されず、例えば作業者が人力で延長作業部を開閉したり、人力で回転作業部(畦塗り部)の状態を所望状態に切り換えたりする手動タイプでもよい。この手動タイプの場合、例えば作業者が延長作業部や回転作業部の把持部(コ字状のハンドル等)を把持した際に所定の信号が出力され、制御部はその所定の信号を受信すると、動力取出部が停止しているか否かを判断する。
【0081】
また、農作業システムが具備する農作業機は、代掻機や畦塗り機には限定されず、例えば耕耘機(ロータリー)、草刈機、溝掘機、収穫機等でもよく、また、農作業システムが具備する走行車もトラクタには限定されない。
【0082】
なお、本発明のいくつかの実施の形態およびその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施の形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
S 農作業システム
1 農作業機
2 走行車であるトラクタ
7 動力取出部であるPTO
8 走行車制御部であるトラクタ制御部
9 操作部であるタッチパネル式モニタ
15 駆動部である作業部回動用シリンダ
71,113 制御部
91 駆動部用表示
92 操作部であるタッチパネル式リモコン
111 駆動部である第1シリンダ
112 駆動部である第2シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8