(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】恒温装置および温度分布改善方法
(51)【国際特許分類】
G05D 23/00 20060101AFI20220707BHJP
【FI】
G05D23/00 H
(21)【出願番号】P 2021177376
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山梨 明雄
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和希
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-096376(JP,A)
【文献】実開昭58-075599(JP,U)
【文献】特開平03-262940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置であって、
前記ジャケット構造体の前記外槽を複数の槽に分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ温度制御された恒温物を供給する恒温部と、
を備え
、
前記分離部は、前記外槽の上面部分の左右の中心に位置し、前後方向に配置された水平断熱部材と、前記水平断熱部材と接続されるとともに、前記外槽の背面部分の左右の中心に位置し、上下方向に配置された垂直断熱部材と、によって構成されることを特徴とする恒温装置。
【請求項2】
内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置であって、
前記ジャケット構造体の前記外槽を複数の槽に分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ温度制御された恒温物を供給する恒温部と、
を備え、
前記内槽は、矩形状に折り曲げてなる薄板の両端部の一部分を上面部分の左右の中心位置において貼り合わせた構成とされるとともに、その貼り合わせの部分における一方の端部が、前記外槽側に延出されて、前記外槽を支持するようにL字型に折り曲げられていることを特徴とする恒温装置。
【請求項3】
前記内槽の温度を検出する温度検出器と、
前記温度検出器によって検出された温度検出値に基づいて前記恒温部を制御する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする
請求項1または2に記載の恒温装置。
【請求項4】
前記恒温部は、前記内槽の下側に、前記外槽の複数の槽にそれぞれ対応して配置された加温器であることを特徴とする
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の恒温装置。
【請求項5】
前記ジャケット構造体は、前記内槽内の湿度を制御するための恒湿器をさらに備えることを特徴とする
請求項1または2に記載の恒温装置。
【請求項6】
前記分離部は、前記外槽の上面部分の左右の中心に位置し、前後方向に配置された水平断熱部材と、前記水平断熱部材と接続されるとともに、前記外槽の背面部分の左右の中心に位置し、上下方向に配置された垂直断熱部材と、によって構成されることを特徴とする
請求項2に記載の恒温装置。
【請求項7】
前記内槽は、矩形状に折り曲げてなる薄板の両端部の一部分を上面部分の左右の中心位置において貼り合わせた構成とされるとともに、その貼り合わせの部分における一方の端部が、前記外槽側に延出されて、前記外槽を支持するようにL字型に折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の恒温装置。
【請求項8】
前記分離部は、前記外槽の上面部分の左右の中心に位置し、前後方向に配置された水平断熱部材と、前記水平断熱部材と接続されるとともに、前記外槽の背面部分の左右の中心に位置し、上下方向に配置された垂直断熱部材とによって構成され、
前記水平断熱部材は、前記貼り合わせの部分を左右から挟み込むようにして配置された第1の水平断熱部材と第2の水平断熱部材とから構成されることを特徴とする
請求項2または7に記載の恒温装置。
【請求項9】
前記内槽の下側には、さらに前記恒温部で温度制御された前記恒温物を分流させるための分流板が配置されていることを特徴とする
請求項1から7のいずれか1項に記載の恒温装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の、内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置の、前記内槽の温度分布を改善する温度分布改善方法であって、
前記ジャケット構造体の前記外槽を分離部によって複数の槽に分離し、
前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ恒温部によって温度制御された恒温物を供給する
ことを特徴とする温度分布改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内槽と外槽とを有するジャケット構造の恒温装置および温度分布改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品などの保管対象物を一定の温度下において収納・保管する恒温装置として、内槽と外槽とを有するエアジャケット構造の恒温器が提案されている。
【0003】
この種の恒温器は、外槽の空気層(対流空間層)の温度を制御することによって、間接的に恒温を得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエアジャケット構造の恒温器、特に、自然対流方式の恒温器においては、内槽と外槽との間の空間部分を対流する空気層により、内槽内の温度を制御するものであった。そのため、電源投入のタイミングやエアジャケットの部位による昇温時間差などにより、昇温むらが発生する場合があった。
【0006】
内槽内の昇温むらは、場合によっては、安定温度が1~2℃程度ずれる温度シフト(例えば、
図6(b)の(A)参照)や、温度分布(トレンド)の入れ替わりといったねじれ現象(例えば、
図7(b)参照)を招く要因となる。
【0007】
対策として、空気層をファンによって強制的に循環させる方法も考えられるが、ファンの設置は、恒温器としてのコストの増加、振動の発生や温度勾配を悪化させる原因となり、不向きであった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電源投入のタイミングやジャケットの部位による昇温時間差などに起因する昇温むらの発生を抑え、温度シフトやねじれ現象を改善できる恒温装置および温度分布改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、請求項1に記載の恒温装置は、内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置であって、前記ジャケット構造体の前記外槽を複数の槽に分離する分離部と、前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ温度制御された恒温物を供給する恒温部と、を備え、前記分離部は、前記外槽の上面部分の左右の中心に位置し、前後方向に配置された水平断熱部材と、前記水平断熱部材と接続されるとともに、前記外槽の背面部分の左右の中心に位置し、上下方向に配置された垂直断熱部材と、によって構成されることを特徴とする。
また、請求項2に記載の恒温装置は、内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置であって、前記ジャケット構造体の前記外槽を複数の槽に分離する分離部と、前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ温度制御された恒温物を供給する恒温部と、を備え、前記内槽は、矩形状に折り曲げてなる薄板の両端部の一部分を上面部分の左右の中心位置において貼り合わせた構成とされるとともに、その貼り合わせの部分における一方の端部が、前記外槽側に延出されて、前記外槽を支持するようにL字型に折り曲げられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項10に記載の温度分布改善方法は、請求項1から9のいずれか1項に記載の、内槽と外槽とを有するジャケット構造体を備えた恒温装置の、前記内槽の温度分布を改善する温度分布改善方法であって、前記ジャケット構造体の前記外槽を分離部によって複数の槽に分離し、前記分離部で分離された前記複数の槽にそれぞれ恒温部によって温度制御された恒温物を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源投入のタイミングやジャケットの部位による昇温時間差などに起因する昇温むらの発生を抑え、温度シフトやねじれ現象を改善できる恒温装置および温度分布改善方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る恒温装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した恒温装置の概略構成を示すもので、(a)は、一部を切り欠いて示す正面の断面図であり、(b)は、(a)の一部を取り出して示す拡大図である。
【
図3】
図1に示した恒温装置の概略構成を示すもので、一部を切り欠いて示す側面の断面図である。
【
図4】
図1に示した恒温装置の加温方法について説明するために示す概略図である。
【
図5】一実施形態に係る恒温装置の温度検出方法について説明するための概略図である。
【
図6】(a)は、一実施形態に係る恒温装置の温度検出結果を例示するグラフであり、(b)は、従来装置の温度検出結果を例示するグラフである。
【
図7】(a)は、
図6(a)中にVIIaで示す部分の拡大図であり、(b)は、
図6(b)中にVIIbで示す部分の拡大図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る恒温装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<一実施形態>
図1~
図3は、本発明の一実施形態に係る恒温装置1の構成例を示すものである。なお、
図1は、恒温装置1の外扉15を部分的に開いた状態を示す斜視図である。
図2(a)は、
図3のII-II線に沿う恒温装置1の前後方向(正面側)の断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)中の丸印の部分(b)を示す拡大図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う恒温装置1の左右方向(側面側)の断面図である。
【0014】
図1~
図3に示すように、この恒温装置1は、本体3と、本体3の下部に設けられる制御装置5と、を備えている。制御装置5は、例えば
図2(a)に示すように、前面に操作パネル25を備えるとともに、内部に制御基板(制御部)24などを備えている。また、制御装置5は、例えば
図3に示すように、背面にコンセントプラグ29を備えている。なお、制御装置5の一側面には、外部端子21なども配置可能である。
【0015】
本体3は、例えば、ステンレス製の外槽11と、外槽11の内部に設けられるステンレス製の内槽13と、を備えている。内槽13は、例えば薬品などの保管対象物を収納・保管する恒温室10となっている。
【0016】
即ち、本実施形態に係る恒温装置1は、外槽11の空気層(対流空間層または熱流循環エリア)20の温度をコントロールすることによって、内槽13内の恒温室10の温度を均一に保持するエアジャケット構造を有する自然対流方式のインキュベータである。
【0017】
図1に示すように、本体3は、前面側に開閉可能な外扉15を備えており、外扉15内には、恒温室10の様子を観測可能な強化ガラス製の内扉19が設けられている。外扉15は、例えば鍵付き扉とされて、施解錠によるセキュリティ性の確保が可能とされている。内扉19は、単独で開閉可能な構成とされている。これにより、外扉15を開けた際にも、内扉19によって急激な温度変化を招くことなしに、恒温室10内を容易に観察できるとともに、恒温室10に対する保管対象物の出し入れが容易に可能とされている。
【0018】
ここで、本体3は、外扉15および内扉19に対応する一面に開口部10aを有しており、内扉19および外扉15が閉状態時に開口部10aを閉塞するようになっている。そして、この開口部10aの周囲に対応する外扉15の裏側部分には、開閉時の振動を考慮して、マグネットパッキン16が配置されている。即ち、外扉15には、少なくとも本体3と接触する箇所にシール部材としてのマグネットパッキン16が設けられている。外扉15が閉じられた場合は、外扉15がマグネットパッキン16を押し潰すことにより、恒温室10が密閉される。なお、外扉15の開閉端側の側面には、利用者が開閉時に手(指)をかける取手部15aが設けられている。
【0019】
一方、恒温室10には、保管対象物の大きさなどに応じて上下方向の位置を自由に変更可能な複数(例えば、2枚)の棚板27が配置されている。また、開口部10aの上縁部分には、閉状態時に内扉19を閉じ込むためのマグネット式の着脱部19aが配置されている。内扉19は、閉じる際には着脱部19aの磁力によって保持され、開ける際には、押し込まれることで着脱部19aから解放される。
【0020】
このように、外扉15および内扉19によって開口部10aが閉塞されることにより、内槽13内に恒温室10が形成される。
【0021】
なお、内槽13内には、
図2(a)に示すように、恒温室10の温度を検出する温度検出器30が設けられている。この温度検出器30によって検出された温度検出値は、後述するヒータ35L,35Rの加熱温度を調整するための制御基板24に提供される。
【0022】
また、外槽11の上面には、恒温室10を換気するための貫通孔12bと、貫通孔12bの開閉のための開閉蓋12aと、が配設されている。
【0023】
内槽13は、例えば
図2(b)に示すように、矩形状に折り曲げてなるステンレス製の薄板の両端部13a,13bを、その上面部分の左右の中心位置付近において、一部に開口部(貫通部)14aが形成されるように部分的に貼り合わせた構成とされている。そして、その貼り合わせの部分14における一方の端部13aが、外槽11側に延出されるとともに、外槽11の内面を支持するようにL字型に折り曲げられている。なお、内槽13の一方の面(前面)側は開口されて恒温室10の開口部10aとなり、他方の面(後面)側は、ステンレス製の薄板13Sによって塞がれている。
【0024】
この恒温装置1は、分離部をなす、例えば水平断熱部材31と垂直断熱部材33とによって、エアジャケット構造の空気層20が左右対称の左空気層20Lと右空気層20Rとに分離・分割されて、空気層20のコンパクト化が図られている。これにより、エアジャケット構造の部位による昇温時間差などに起因する、恒温室10内での昇温むらを軽減できる。
【0025】
水平断熱部材31は、例えば
図3に示すように、外槽11の上面部分の左右の略中心位置に、本体3の前後方向に沿うようにして配置されている。垂直断熱部材33は、例えば
図3に示すように、水平断熱部材31に連続するように、外槽11の後面部分の左右の略中心位置に、本体3の上下方向に沿うようにして配置されている。
【0026】
水平断熱部材31は、例えば
図2(b)に示すように、第1の水平断熱部材31aと第2の水平断熱部材31bとを有し、内槽13を形成するステンレス製の薄板の両端部13a,13bの貼り合わせの部分14を挟み込むようにして配置されている。
【0027】
なお、外槽11は、例えば
図4に示すように、内面(空気層20に対向する側の面)が外槽断熱材11aによって覆われており、水平断熱部材31および垂直断熱部材33は、その外側面が外槽断熱材11aに接するようにして配置されている。これにより、内槽13の外側の空気層20を、確実に左空気層20Lと右空気層20Rとに等分させることが可能となる。
【0028】
そして、外槽11内の、内槽13の下部に対応する部位には、例えば
図4に示すように、恒温部としての2個のヒータ(加温器)35L,35Rが左右方向に所定の距離を有して配置されている。また、2個のヒータ35L,35Rの相互間に対応するようにして、各ヒータ35L,35Rによって加温された空気(恒温物)L,Rを左空気層20Lと右空気層20Rとにそれぞれ案内する分流板37が配置されている。
【0029】
ここで、
図4は、本実施形態に係る恒温装置1の加温方法について示す概略図である。
【0030】
図4に示すように、ヒータ35Lによって加温された空気は、図示矢印Lで示すように、分流板37によって左空気層20Lへと案内され、ヒータ35Rによって加温された空気は、図示矢印Rで示すように、分流板37によってと右空気層20Rへと案内される。これにより、恒温室10の左側半分は、ヒータ35Lで加温されて左空気層20Lへと案内される空気Lによって、恒温室10の右側半分は、ヒータ35Rで加温されて右空気層20Rへと案内される空気Rによって、それぞれ効果的に加温させることが可能となる。
【0031】
図5は、本実施形態に係る恒温装置1の温度検出方法について示す概略図である。
【0032】
本実施形態においては、例えば
図5に示すように、恒温室10内の9地点に温度検出用のセンサS1~S9を配し、加温時のそれぞれの地点での温度変化について検証した(9ポイント測定)。なお、9地点は、恒温室10の下面側の前後4点と、上面側の前後4点と、中央の1点とした。
【0033】
図6は、検証の結果を対比して示すもので、(a)は、本実施形態に係る恒温装置1の温度検出結果を例示するグラフであり、(b)は、一般的な自然対流方式の恒温器(図示省略)の温度検出結果を例示するグラフである。なお、
図6(a),(b)においては、横軸に時間(t)が、縦軸に温度(℃)が、それぞれ割り付けられており、時間の変化に対する温度の変化が示されている。
【0034】
検証は、恒温室10の設定温度(S9)が、例えば58.0℃程度となるように、ヒータ35L,35Rを一定の時間間隔ごとに繰り返し制御し、温度シフトとトレンドの入れ替わり(ねじれ現象)とについて、全センサS1~S9の出力をチェックした。
【0035】
本実施形態に係る恒温装置1によれば、例えば、ヒータ35L,35Rを3時間ごとに繰り返しオン/オフさせた場合においては、
図7(a)からも明らかなように、
図7(b)に示す従来装置のような、安定温度が1~2℃程度ずれる温度シフト(A)や、センサS9の出力よりもセンサS2の出力の方が小さくなるトレンドの入れ替わりといった温度分布のねじれ現象の発生は認められなかった。
【0036】
即ち、本実施形態に係る恒温装置1は、外槽11を左右の左空気層20Lと右空気層20Rとに等分させるようにしたので、設置場所の周囲(外気)の温度が不安定な場合であっても、温度上昇時のエアジャケットの部位による昇温速度のバラツキを抑制可能となる。したがって、電源投入のタイミングやエアジャケットの部位による昇温時間差などに起因する昇温むらの発生を抑えつつ、再現性のある温度の安定化が期待できる。
【0037】
上記したように、本実施形態の恒温装置1によれば、水平断熱部材31と垂直断熱部材33とによって、外槽11の空気層20を左右対称の左空気層20Lと右空気層20Rとに分離・分割させ、空気層20をよりコンパクト化させる。そして、コンパクト化された左空気層20Lと右空気層20Rとに対して、個々に加温された空気L,Rが提供されるようにしている。これにより、周囲の環境温度などの影響を受け難い構造とすることが可能となる。したがって、電源投入のタイミングやエアジャケットの部位による昇温時間差などに起因する昇温むらの発生を抑え、温度シフトや温度分布の入れ替わりを改善できるようになる。
【0038】
特に、ファンなどを設けることなく実現できるため、製造コストの増加、振動の発生や温度勾配を悪化させるといった不都合を招くこともない。
【0039】
<他の実施形態>
恒温装置1としては、外槽11を左右の左空気層20Lと右空気層20Rとに等分させる構造に限らず、例えば
図8に示すように、水平断熱部材31,36a,38aおよび垂直断熱部材33、36b,38bによって外槽11の空気層20を4分割し、分割した各層20を個別に加温するようにしてもよい。
【0040】
なお、分割する層20の個数に制限されないことは勿論である。
【0041】
上記した各実施形態においては、内槽13の貼り合わせの部分14における一方の端部13aによって外槽11を支持する構成に限らず、エアジャケット構造(エアジャケット自然対流構造)の各種の恒温装置に適用できる。
【0042】
また、エアジャケット構造の恒温装置1に限らず、例えば、水、オイル、不凍液、ガスなどを恒温物とする各種のジャケット構造の恒温装置に適用できる。
【0043】
また、ヒータを備えた恒温装置1を例示して説明したが、例えば、冷却器を備えた恒温装置の場合にも適用可能である。
【0044】
いずれの実施形態の場合においても、恒温装置1としては、例えば、結露を防止するための恒湿機能を備えた恒温恒湿装置とすることも可能である。
【0045】
以上、いくつかの実施の形態を例示して本発明の態様について説明したが、各実施の形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0046】
1…恒温装置
10…恒温室
11…外槽
13…内槽
14…貼り合わせの部分
20…空気層
20L…左空気層
20R…右空気層
24…制御基板(制御部)
31,36a,38a…水平断熱部材
31a…第1の水平断熱部材
31b…第2の水平断熱部材
33,36b,38b…垂直断熱部材
35L,35R…ヒータ(恒温部/加温器)
S1~S9…温度検出用のセンサ
【要約】
【課題】電源投入のタイミングやエアジャケットの部位による昇温時間差などに起因する昇温むらの発生を抑え、温度シフトや温度分布の入れ替わりを改善できるようにする。
【解決手段】内槽13と外槽11とを有するエアジャケットの、外槽11の空気層20の温度をコントロールすることによって、内槽13内の恒温室10の温度を均一に保持する恒温装置1であって、エアジャケットの空気層20を左空気層20Lと右空気層20Rの二槽に分離する水平断熱部材31および垂直断熱部材33と、水平断熱部材31および垂直断熱部材33で分離された左空気層20Lと右空気層20Rのそれぞれに温度制御された空気を供給するヒータ35L,35Rと、を備える。
【選択図】
図2